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明細書 :航走体放射雑音からの航跡標定方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3511090号 (P3511090)
公開番号 特開2002-071784 (P2002-071784A)
登録日 平成16年1月16日(2004.1.16)
発行日 平成16年3月29日(2004.3.29)
公開日 平成14年3月12日(2002.3.12)
発明の名称または考案の名称 航走体放射雑音からの航跡標定方法及び装置
国際特許分類 G01S  5/22      
G01S  7/526     
FI G01S 5/22
G01S 7/52
請求項の数または発明の数 4
全頁数 18
出願番号 特願2000-260448 (P2000-260448)
出願日 平成12年8月30日(2000.8.30)
審査請求日 平成12年8月30日(2000.8.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】倉野 重光
個別代理人の代理人 【識別番号】100079290、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
審査官 【審査官】松下 公一
参考文献・文献 特開2000-266833(JP,A)
特開 平11-23700(JP,A)
特開 平3-195986(JP,A)
特開 昭63-284481(JP,A)
特開 平6-347530(JP,A)
特開 平9-21863(JP,A)
特許2723866(JP,B2)
調査した分野 G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 5/30
G01S 7/52 - 7/64
G01S 15/00 - 15/96
特許請求の範囲 【請求項1】
航走体の放射雑音を3台以上の受波器で受信し、受信された受波信号間の相互相関をとることにより音源の位置を求める航走体放射雑音からの航跡標定方法において、
各受波信号を航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域でバンドパスフィルター処理した後ドップラー補正して、3台以上の受波器の内の各2台の組み合わせに対し、それぞれドップラー補正された受波信号について相互相関処理を行い周波数分析間隔dt毎の相関係数を算出し放射雑音計測開始時間tにおける到達時間差を0とした仮定到達時間差曲線を算出し、各受波信号のn個のサンプル信号の内の初期のi個を用いて航走体位置変動量と未知バイアス変動量を求め、前記航走体位置変動量と未知バイアス変動量から真の放射雑音到達時間差を検出し、全放射雑音計測時間にわたって航走体の位置を算出して航跡を標定することを特徴とする航走体放射雑音からの航跡標定方法。

【請求項2】
請求項1記載の航走体放射雑音からの航跡標定方法において、(a)前記3台以上の受波器の内、各2台の組み合わせにおいて、航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域でバンドパスフィルター処理された後ドップラー補正された全放射雑音計測時間Tの受波信号X(t)とX(t)のFFT処理信号を読み込んで、前記周波数分析間隔dt毎にn回(T=n×dt)逆FFT処理したn個のサンプル信号χin(t)とχjn(t)の相互相関係数Cijnを算出し、該相互相関係数の実数部を当該相互相関係数の実数部の最大値で割り相対相互相関係数△dijnで表示した時間-相対相関係数信号を算出するステップと、(b)前記相対相互相関係数△dijn信号を読み込んで、放射雑音計測開始時間tでの受波器SとSの航走体放射雑音到達時間差を0とし、サンプル信号χin(t)とχjn(t)について1番目の相対相互相関係数△dij1と2番目の相対相関係数△dij2の相関を計算し、そのズレ幅△wij1を求め、同様に、2番目の相対相関係数△dij2と3番目の相対相関係数△dij3の相関からズレ幅△wij2、さらに△dij2と△dij3の相関からズレ幅△wj3、これを順次、△dijiと△diji+1のズレ幅△wijiまで算出して、仮定到達時間差曲線τij’=wij(t)を求めるステップと、(c)前記3台以上の受波器により計測された各受波信号のn個のサンプル信号χ(t),χ(t),χ(t),…,χ(t)の内の初期のi個について求めた仮定到達時間差τiji’と航走体が微小時間(t-1)から(t+1)間は直線上を進行するとした航走体位置P(k)にラプラシアンフィルターによる非線形最小二乗法を適用し航走体の位置変動量と未知バイアス変動量を求めるステップと、(d)求められた航走体位置変動量と未知バイアス変動量を基に、航走体の任意設定初期位置Pについて順次、ラプラシアンフィルター残差が最小になる航走体の位置P(0)からP(i)を決定し、その値から真の到達時間差を検出するステップと、(e)航走体放射雑音の各受波器までの真の到達時間差と各受波器の位置S(x,y,z)及び任意に設定した航走体初期位置P(x,y,z)とから未知バイアス変動量△Bijを0として、目標と受波器の距離であるレンジRijに関する三次元方程式を解くことにより、全放射雑音計測時間Tにわたり航走体の位置P(t)を決定するステップとを具備することを特徴とする航走体放射雑音からの航跡標定方法。

【請求項3】
航走体の放射雑音を3台以上の受波器で受信し、受信された受波信号間の相互相関をとることにより、音源の位置を求める航走体放射雑音からの航跡標定装置において、
航走体の放射雑音を受信する受波器S,S,…,S(但し、N:3以上の整数)と、
前記受波器からの受波信号をそれぞれ一定レベルまで振幅増幅する受信回路(5-1,5-2,…,5-N)と、
前記受信回路からのアナログ受波信号をそれぞれデジタル受波信号に変換するA/D変換器(6-1,6-2,…,6-N)と、
前記A/D変換器からのデジタル受波信号をそれぞれFFT処理し時間-周波数信号に変換するFFT処理器(11-1,11-2,…,11-N)と、
前記FFT処理器でFFT処理された時間-周波数信号をそれぞれ記憶する記憶装置(12-1,12-2,…,12-N)と、
航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域を検出する検出器(14)と、
航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域で前記記憶装置からの信号をバンドパスフィルター処理をするバンドパスフィルター処理器(13-1,13-2,…,13-N)と、
受波信号のドップラー周波数により航走体の速度を検出する航走体速度検出器(15)と、
前記航走体速度検出器で検出された航走体の速度により受波信号をドップラー補正するドップラー補正演算器(16)と、
該ドップラー補正された受波信号について3台以上の受波器の内の各2台の組み合わせに対して、該ドップラー補正された受波信号について相互相関処理を行い放射雑音計測開始時間tにおける到達時間差を0とした仮定到達時間差曲線を算出する相互相関による仮定到達時間差検出器(17)と、
前記仮定到達時間差検出器で算出された仮定到達時間差から各受波信号のn個のサンプル信号の内の初期のi個を用いて航走体位置変動量と未知バイアス変動量を求める航走体位置変動量と未知バイアス変動量演算器(18)と、
前記航走体位置変動量と未知バイアス変動量演算器で演算された航走体位置変動量と未知バイアス変動量から真の放射雑音到達時間差を検出する真の到達時間差検出器(19)と、
前記真の到達時間差検出器で検出された真の到達時間差から全放射雑音計測時間にわたって航走体の位置を求め航跡を標定する航走体の航跡標定器(20)とを具備し、
航走体が水中又は水上を航走した場合に、3台以上の受波器で受信した受波信号から、航走体放射雑音の各受波器までの到達時間差を検出し、航走体の位置を標定することを特徴とする航走体放射雑音からの航跡標定装置。

【請求項4】
請求項3記載の航走体放射雑音からの航跡標定装置において、前記ドップラー補正された受波信号の相互相関処理を行う相互相関による仮定到達時間差検出器(17)は、(a)N台の受波器の内、各2台の組み合わせに基づいて、前記航走体固有振動特性に起因する周波数帯域でバンドパスフィルター処理された後ドップラー補正演算器(16)でドップラー補正された全放射雑音計測時間Tの受波信号X(t)とX(t)のFFT処理信号を読み込んで、該信号を周波数分析間隔dt毎にn回(T=n×dt)逆FFT処理して求めたn個のサンプル信号χin(t)とχjn(t)の相互相関係数Cijnを算出し、該相互相関係数の実数部を当該相互相関係数の実数部の最大値で割り相対相互相関係数△dijnで表示した時間-相対相関係数信号を算出する手段と、(b)前記相対相互相関係数△dijn信号を読み込んで、放射雑音計測開始時間tでの受波器SとSの航走体放射雑音到達時間差を0とし、サンプル信号χin(t)とχjn(t)について1番目の相対相互相関係数△dij1と2番目の相対相関係数△dij2の相関を計算し、そのズレ幅△wij1を求め、同様に、2番目の相対相関係数△dij2と3番目の相対相関係数△dij3の相関からズレ幅△wij2、さらに△dij3と△dij4の相関からズレ幅△wj3、これを順次、△dijiと△diji+1のズレ幅△wijiまで算出して、仮定到達時間差曲線τij’=wij(t)を求める手段とを具備し、
前記航走体位置変動量と未知バイアス変動量演算器(18)は、前記3台以上の受波器により計測された各受波信号X(t)のn個のサンプル信号χ(t),χ(t),χ(t),…,χ(t)の内の初期のi個について求めた仮定到達時間差τiji’と航走体が微小時間(t-1)から(t+1)間は直線上を進行するとした航走体位置P(k)にラプラシアンフィルターによる非線形最小二乗法を適用し航走体の位置変動量と未知バイアス変動量を求める手段を具備し、
前記真の到達時間差検出器(19)は、求められた該航走体位置変動量と未知バイアス変動量を基に、航走体の任意設定初期位置Pについて順次、ラプラシアンフィルター残差が最小になる航走体の位置P(0)からP(i)を決定し、その値から真の到達時間差を検出する手段を具備し、
前記航走体の航跡標定器(20)は、前記航走体放射雑音の各受波器までの真の到達時間差と各受波器の位置S(x,y,z)及び任意に設定した航走体初期位置P(x,y,z)とから未知バイアス変動量△Bijを0として、目標と受波器の距離であるレンジRijに関する三次元方程式を解くことにより、全放射雑音計測時間Tにわたり航走体の位置P(t)を決定する手段を具備することを特徴とする航走体放射雑音からの航跡標定装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、航走体の放射雑音を用いて、航走体の航跡を標定する航走体放射雑音からの航跡標定方法及び装置に関するものである。

【0002】

【従来の技術】従来の音響航跡標定装置は、「海洋音響(基礎と応用)」海洋音響学会P209~P213(以下、公知文献1)と、特許第2723866号公報「発明の名称:信号検出装置」(以下、公知文献2)に開示されているものがあり、両装置とも原理はLBL測位方式(Long Base-Line System)と呼ばれるものである。その原理等を図8、図9を用いて説明する。また、公知文献2で開示された従来の技術の構成を図10に示す。

【0003】
図8において、水中又は水上を航走する目標航走体の位置P(x,y,z)と海底に設置した複数の受波器位置S(x,y,z),S(x,y,z),S(x,y,z),…,S(x,y,z)及びレンジR,R,R,…,Rの関係は次式(1)によって表される。

【0004】

【数1】
JP0003511090B2_000002t.gifここで航走体に取り付けられたピンガー音発信器からのピンガー音の計測結果から各受波器までの到達時間差τが求められたとすると、水中の音波伝搬速度をWとして到達時間差τとレンジRの関係は次式(2)が成り立つ。
-R=τijW …(2)
(但し、τijはレンジR,R間の到達時間差)
三次元方程式を解くために図8に示す3台の受波器について考えると次式(3)が得られる。

【0005】

【数2】
JP0003511090B2_000003t.gifこれを、i台の受波器について解くことによりレンジRが算出される。

【0006】
ピンガー音の各受波器までの到達時間差τは、ピンガー音が絶対時間に同期して送波される場合には、各受波器の受波信号から直接検出することが出来る。ピンガー音が非同期方式の場合には、各受波器の受波信号間の相互相関係数を算出し、その値が最大となる到達時間差からレンジRを検出することができる。さらに、航走体深度をダブルピングの間隔として送信することにより航走深度を求めることもできる。

【0007】
図9にダブルピンガー送受波信号の概要を示す。図中の記号を以下に説明する。ts,ts ,tm,tmはピンガー音の送信及び受信時刻の同期絶対時間、tdはダブルピングの間隔、Lは送信周期、δtは送波から受波までの時間である。従って、レンジRの計算式は次式(4)による。
R=δt×W …(4)
ここで、
δt=tm-ts …(5)
但し、tm-ts<L

【0008】
公知文献2は、公知文献1で開示された原理におけるピンガー音の代わりに航走体の放射雑音を含む広帯域雑音を用いるもので、異なる2カ所に配置された受波器で受信した該広帯域雑音に生じる音源の移動に伴うドップラー効果の影響を補正する信号検出装置に関するものである。すなわち、2カ所で受信した信号の一方の入力信号をあらかじめ定めた複数の比率でそれぞれ時間圧縮又は時間延伸する複数のドップラー補正部と、複数のドップラー補正部の出力と他方の信号の相互相関をそれぞれ求める複数の相互相関部と、各相互相関部の出力から最大値を選択する最大選択部を有しており、その結果、該広帯域雑音に生じる音源の移動に伴うドップラー効果の影響を補正することができるものとしている。

【0009】
図10において公知文献2で開示された装置の各構成機器の作動状況を説明する。図中、1は水中、2は水面、3は海底を示す。水中1又は水面2を航走体4が航走している場合、航走体4からは航走雑音が発生しており、受波器S,S,…,Sで受信された信号は受信回路5-1,5-2,…,5-Nで一定レベルまで振幅増幅された後、A/D変換器6-1,6-2,…,6-Nに入力される。A/D変換器6-1,6-2,…,6-Nでアナログ信号はそれぞれデジタル信号に変換され、2台毎の受波器からの信号を対として考えたときの一方のデジタル信号はドップラー補正部7を介して相互相関演算部8に入力され、他方のデジタル信号は直接相互相関演算部8に入力される。ドップラー補正部7では2台の受波器で受信した一方の受波信号を予め定めた複数の比率で時間圧縮又は延伸してドップラー補正を行い相互相関演算部8に出力する。相互相関演算部8では複数の比率でドップラー補正された一方の受波信号と直接入力された他方の信号についてそれぞれ相互相関係数を算出し、その最大値を検出することによって到達時間差を決定し表示部9に出力する。表示部9は入力された到達時間差から次式(6)より目標の方位及び位置を測位し、その結果を表示する。
θ=cos-1(τW/d) …(6)
図11に目標音源の方位を測位する原理図が示され、式(6)中のθは図11に示すように、複数の受波器A,Bの配列方向と音波の到来方向とのなす方位角であり、dは隣り合う受波器の配列間隔であり、r=τWである。また、図12に目標音源の方位及び位置を測位する原理が示され、受波器A,Bの配列方向と音波の到来方向とのなす方位角θ、受波器C,Dの配列方向と音波の到来方向とのなす方位角θとから目標位置(音源の位置)を求めることができる。

【0010】

【発明が解決しようとする課題】しかし、公知文献1で開示された発明の問題点は、予め目標航走体にピンガー音発信器を取り付ける必要があるので目標航走体が限定されることである。

【0011】
公知文献2で開示された発明の問題点は、各受波器により計測される航走体放射雑音信号中には、該放射雑音が放射された同期絶対時間のデータが無いので2台の受波器Sと受波器Sへの該航走体放射雑音の到達時間差から各受波器間のレンジ差(R-R)は求められるが、各受波器から音源までの距離であるレンジRは求められない。また公知文献2の発明によると目標航走体の方位を検出するためには各2台の受波器間の距離を目標航走体までの距離に依存して決定しなくてはならない。さらに周波数範囲が非常に広く音圧レベルが複雑に変化する航走体放射雑音からの目標方位検出による航跡標定は極めて精度が低い欠点がある。

【0012】
本発明は、上記の点に鑑み、各受波器により計測される航走体放射雑音信号中に、該放射雑音が放射された同期絶対時間のデータが無くとも各受波器への該放射雑音の到達時間差からレンジを求めることを可能とし、ひいては航走体の装備条件に依存することなく、目標の航跡を正確に標定することが可能な航走体放射雑音からの航跡標定方法及び装置を提供することを目的とする。

【0013】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。

【0014】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、航走体の放射雑音を3台以上の受波器で受信し、受信された受波信号間の相互相関をとることにより音源の位置を求める航走体放射雑音からの航跡標定方法において、各受波信号を航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域でバンドパスフィルター処理した後ドップラー補正して、3台以上の受波器の内の各2台の組み合わせに対し、それぞれドップラー補正された受波信号について相互相関処理を行い周波数分析間隔dt毎の相関係数を算出し放射雑音計測開始時間tにおける到達時間差を0とした仮定到達時間差曲線を算出し、各受波信号のn個のサンプル信号の内の初期のi個を用いて航走体位置変動量と未知バイアス変動量を求め、前記航走体位置変動量と未知バイアス変動量から真の放射雑音到達時間差を検出し、全放射雑音計測時間にわたって航走体の位置を算出して航跡を標定することを特徴としている。

【0015】
本願請求項2の発明は、請求項1記載の航走体放射雑音からの航跡標定方法において、(a)前記3台以上の受波器の内、各2台の組み合わせにおいて、航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域でバンドパスフィルター処理された後ドップラー補正された全放射雑音計測時間Tの受波信号X(t)とX(t)のFFT処理信号を読み込んで、前記周波数分析間隔dt毎にn回(T=n×dt)逆FFT処理したn個のサンプル信号χin(t)とχjn(t)の相互相関係数Cijnを算出し、該相互相関係数の実数部を当該相互相関係数の実数部の最大値で割り相対相互相関係数△dijnで表示した時間-相対相関係数信号を算出するステップと、(b)前記相対相互相関係数△dijn信号を読み込んで、放射雑音計測開始時間tでの受波器SとSの航走体放射雑音到達時間差を0とし、サンプル信号χin(t)とχjn(t)について1番目の相対相互相関係数△dij1と2番目の相対相関係数△dij2の相関を計算し、そのズレ幅△wij1を求め、同様に、2番目の相対相関係数△dij2と3番目の相対相関係数△dij3の相関からズレ幅△wij2、さらに△dij2と△dij3の相関からズレ幅△wj3、これを順次、△dijiと△diji+1のズレ幅△wijiまで算出して、仮定到達時間差曲線τij’=wij(t)を求めるステップと、(c)前記3台以上の受波器により計測された各受波信号のn個のサンプル信号χ(t),χ(t),χ(t),…,χ(t)の内の初期のi個について求めた仮定到達時間差τiji’と航走体が微小時間(t-1)から(t+1)間は直線上を進行するとした航走体位置P(k)にラプラシアンフィルターによる非線形最小二乗法を適用し航走体の位置変動量と未知バイアス変動量を求めるステップと、(d)求められた航走体位置変動量と未知バイアス変動量を基に、航走体の任意設定初期位置Pについて順次、ラプラシアンフィルター残差が最小になる航走体の位置P(0)からP(i)を決定し、その値から真の到達時間差を検出するステップと、(e)航走体放射雑音の各受波器までの真の到達時間差と各受波器の位置S(x,y,z)及び任意に設定した航走体初期位置P(x,y,z)とから未知バイアス変動量△Bijを0として、目標と受波器の距離であるレンジRijに関する三次元方程式を解くことにより、全放射雑音計測時間Tにわたり航走体の位置P(t)を決定するステップとを具備することを特徴としている。

【0016】
本願請求項3の発明は、航走体の放射雑音を3台以上の受波器で受信し、受信された受波信号間の相互相関をとることにより、音源の位置を求める航走体放射雑音からの航跡標定装置において、航走体の放射雑音を受信する受波器S,S,…,S(但し、N:3以上の整数)と、前記受波器からの受波信号をそれぞれ一定レベルまで振幅増幅する受信回路(5-1,5-2,…,5-N)と、前記受信回路からのアナログ受波信号をそれぞれデジタル受波信号に変換するA/D変換器(6-1,6-2,…,6-N)と、前記A/D変換器からのデジタル受波信号をそれぞれFFT処理し時間-周波数信号に変換するFFT処理器(11-1,11-2,…,11-N)と、前記FFT処理器でFFT処理された時間-周波数信号をそれぞれ記憶する記憶装置(12-1,12-2,…,12-N)と、航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域を検出する検出器(14)と、航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域で前記記憶装置からの信号をバンドパスフィルター処理をするバンドパスフィルター処理器(13-1,13-2,…,13-N)と、受波信号のドップラー周波数により航走体の速度を検出する航走体速度検出器(15)と、前記航走体速度検出器で検出された航走体の速度により受波信号をドップラー補正するドップラー補正演算器(16)と、該ドップラー補正された受波信号について3台以上の受波器の内の各2台の組み合わせに対して、該ドップラー補正された受波信号について相互相関処理を行い放射雑音計測開始時間tにおける到達時間差を0とした仮定到達時間差曲線を算出する相互相関による仮定到達時間差検出器(17)と、前記仮定到達時間差検出器で算出された仮定到達時間差から各受波信号のn個のサンプル信号の内の初期のi個を用いて航走体位置変動量と未知バイアス変動量を求める航走体位置変動量と未知バイアス変動量演算器(18)と、前記航走体位置変動量と未知バイアス変動量演算器で演算された航走体位置変動量と未知バイアス変動量から真の放射雑音到達時間差を検出する真の到達時間差検出器(19)と、前記真の到達時間差検出器で検出された真の到達時間差から全放射雑音計測時間にわたって航走体の位置を求め航跡を標定する航走体の航跡標定器(20)を具備し、航走体が水中又は水上を航走した場合に、3台以上の受波器で受信した受波信号から、航走体放射雑音の各受波器までの到達時間差を検出し、航走体の位置を標定することを特徴としている。

【0017】
本願請求項4の発明は、請求項3記載の航走体放射雑音からの航跡標定装置において、前記ドップラー補正された受波信号の相互相関処理を行う相互相関による仮定到達時間差検出器(17)は、(a)N台の受波器の内、各2台の組み合わせに基づいて、前記航走体固有振動特性に起因する周波数帯域でバンドパスフィルター処理された後ドップラー補正演算器(16)でドップラー補正された全放射雑音計測時間Tの受波信号X(t)とX(t)のFFT処理信号を読み込んで、該信号を周波数分析間隔dt毎にn回(T=n×dt)逆FFT処理して求めたn個のサンプル信号χin(t)とχjn(t)の相互相関係数Cijnを算出し、該相互相関係数の実数部を当該相互相関係数の実数部の最大値で割り相対相互相関係数△dijnで表示した時間-相対相関係数信号を算出する手段と、(b)前記相対相互相関係数△dijn信号を読み込んで、放射雑音計測開始時間tでの受波器SとSの航走体放射雑音到達時間差を0とし、サンプル信号χin(t)とχjn(t)について1番目の相対相互相関係数△dij1と2番目の相対相関係数△dij2の相関を計算し、そのズレ幅△wij1を求め、同様に、2番目の相対相関係数△dij2と3番目の相対相関係数△dij3の相関からズレ幅△wij2、さらに△dij3と△dij4の相関からズレ幅△wj3、これを順次、△dijiと△diji+1のズレ幅△wijiまで算出して、仮定到達時間差曲線τij’=wij(t)を求める手段とを具備し、前記航走体位置変動量と未知バイアス変動量演算器(18)は、前記3台以上の受波器により計測された各受波信号X(t)のn個のサンプル信号χ(t),χ(t),χ(t),…,χ(t)の内の初期のi個について求めた仮定到達時間差τiji’と航走体が微小時間(t-1)から(t+1)間は直線上を進行すとした航走体位置P(k)にラプラシアンフィルターによる非線形最小二乗法を適用し航走体の位置変動量と未知バイアス変動量を求める手段を具備し、前記真の到達時間差検出器(19)は、求められた該航走体位置変動量と未知バイアス変動量を基に、航走体の任意設定初期位置Pについて順次、ラプラシアンフィルター残差が最小になる航走体の位置P(0)からP(i)を決定し、その値から真の到達時間差を検出する手段を具備し、前記航走体の航跡標定器(20)は、前記航走体放射雑音の各受波器までの真の到達時間差と各受波器の位置S(x,y,z)及び任意に設定した航走体初期位置P(x,y,z)とから未知バイアス変動量△Bijを0として、目標と受波器の距離であるレンジRijに関する三次元方程式を解くことにより、全放射雑音計測時間Tにわたり航走体の位置P(t)を決定する手段を具備することを特徴としている。

【0018】
以下、本発明に係る航走体放射雑音からの航跡標定方法及び装置の原理説明を行う。

【0019】
以下の原理説明の中で使用する記号の定義は次のとおりである。
P(k) :航走体の位置
dP(k):航走体の位置変動量
:受波器(音響センサー)の位置
:航走体と受波器の距離
f(t) :航走体放射雑音信号
x(t) :受波器の航走体放射雑音受波信号
W :水中音波伝搬速度
c :水中音波減衰係数〔dB/m]{x(t)=(R)f(t)}
X(t) :ドップラー補正後の受波器の航走体放射雑音受波信号
X(t)’:航走体放射雑音受波信号のFFT処理信号
χ(t) :受波信号X(t)のサンプル信号
△t :サンプリングレート
N :受波器数
m :受波器のペア数
n :受波信号のサンプル数
dt :受波信号の周波数分析間隔
T :全放射雑音計測時間
C :相互相関係数
△d :相対相互相関係数
△w :△dと△dn+1相関ズレ幅
τ :到達時間差(τ=τ’+Bij/W)
τ’ :仮定到達時間差
△τ’ :仮定到達時間差変動量
ij :未知バイアス
△Bij :未知バイアス変動量
b(k) :ラプラシアンフィルター残差
F(k) :到達時間残差

【0020】
本発明においては、最初に全受波器の受波信号X(t)のn個のサンプル信号χ(t),χ(t),…,χ(t)の最初のi個(例:i=30)を用いて、航走体の初期位置P(k)からP(k)までの航跡と未知バイアスBを計算する。

【0021】
次に、求められた予期位置P(k)を含む航跡から、全放射雑音計測時間における到達時間差τを用い航走体の位置P(i+1)を求める。その原理を手順に従って、以下に説明する。

【0022】
(a)時刻tにおける航走体放射雑音の受波器Sによる受波信号をx(t)、航走体の任意に設定した初期位置P(x,y,z)、全受波器の位置S(x,y,z)を初期値として設定する。

【0023】
時刻tでのレンジR(t)=|P(t)-S|において、航走体が発した放射雑音f(t)は、時刻{t+R(t)/W}で、音波の減衰係数をc(dB/m)とすると、受波器に届く波形は{R(t)}f(t)となる。ここで、t=t,t,…に対しては、

【0024】

【数3】
JP0003511090B2_000004t.gifとなる。この波形を改めてサンプリングレート△tで分割しなおして、受波器の受信波としたものが受波信号x(t),x(t),x(t),…,x(t)である。

【0025】
(b)N台の受波器の内、各2台の組み合わせに対し、受波信号x(t),x(t)を読み込む。

【0026】
(c)受波信号x(t),x(t)について周波数分析間隔dt毎にFFT処理を行う。

【0027】
(d)航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域の最小周波数成分fmiHzと最大周波数成分fmaxHzを検出する。この検出には、本発明者が先に提案している特願平11-069924号に記載の構成を利用できる。

【0028】
(e)航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域最小周波数成分fminHzと最大周波数成分fmaxHzの範囲で航走放射雑音受波信号をバンドパスフィルター処理をする。

【0029】
(f)3台以上の受波器の内の各2台の組み合わせにおいて、各バンドパスフィルター処理された時間-周波数受波信号をドップラー補正する。このドップラー補正には、公知文献2や本発明者が先に提案している特願平11-069924号に記載の構成を利用できる。

【0030】
(g)3台以上の受波器の内の各2台の組み合わせにおいて、各ドップラー補正された2台の受波器SとSの時間-周波数受波信号X(t)’とX(t)’を逆FFT処理し、X(t)とX(t)の相互相関係数Cijを算出する。

【0031】

【数4】
JP0003511090B2_000005t.gifさらに、Cij’を逆FFT処理して相互相関係数Cijを算出する。

【0032】
(h)相互相関係数を相対値で表現するために、△dijを求める。
△d=real(C)/real(Cmax) …(9)
但し、
real(Cmax)はC(t)の実数部の最大値
real(C)はC(t)の実数部

【0033】
(i)本発明である航走体放射雑音からの航跡標定方法及び装置は、トリガー機能が無いことを前提としているので受波器の受波信号上の計測開始絶対時間tが未知であることから、航走体の初期位置Pは未知数となる。従って、航走体の初期位置Pを任意に仮定した未知の初期値とする。

【0034】
(j)最初に仮定到達時間差τ’を算出する。その算出方法を次に示す。前記相対相互相関係数△dijn信号を読み込んで、放射雑音計測開始時間tでの受波器SとSの航走体放射雑音到達時間差を0とし、サンプル信号χin(t)とχjn(t)について1番目の相対相互相関係数△dij1と2番目の相対相関係数△dij2の相関を計算し、そのズレ幅△wij1を求め、同様に、2番目の相対相関係数△dij2と3番目の相対相関係数△dij3の相関からズレ幅△wij2、さらに△dij3と△dij4の相関からズレ幅△wij、これを順次、△dijiと△diji+1のズレ幅△wijiまで算出して、仮定到達時間差曲線τij’=wij(t)が求められる。

【0035】
(k)仮定到達時間差τ’からレンジRを求める方法について以下に説明する。仮定到達時間差τij’は、N(N-1)/2組のセンサーペアMijに対して求まる。ここで、受波信号上の時間tにおける仮定到達時間差τij’に未知バイアスBijを付加することによって、次式が成り立つ。

【0036】

【数5】
JP0003511090B2_000006t.gif但し、Bijは、tには依存しない定数とする。これをt=kdtとおき書き直す。
|P(k)-S|-|P(k)-S|=τij’(k)+Bij …(11)

【0037】
本発明の放射雑音計測範囲において、航走体の進路上の位置P(k)には、微小時間(t-1)から(t+1)の間にラプラシアンフィルター残差をb(k)として次式が成り立つ。
α{P(k-1)-2P(k)+P(k+1)}=b(k) …(12)
(11)式と(12)式のk=1,2,…,nについて連立方程式を立てて解く。ここで、未知数P(k)とBijの数は、3n+で、式の数は、・n+3(n-2)となる。N=3のとき、未知数の数は3n+3で、式の数は3n+3(n-2)である。よって、n≧3ならば式の数≧未知数の数となり、(11),(12)式から未知数が明らかとなる。

【0038】
また、N=4のときには、未知数の数は、3n+6で、式の数は、6n+3(n-2)となる。nを大きく取る場合、(10)式より次式が定義できる。
F(k)=|R(k)|-|R(k)|-τij’(k)-Bij …(13)
ここで、F(k)は、到達時間残差である。

【0039】
(l)航走体の位置変動量dP(k)と未知バイアス変動量△Bijを計算する。その方法を次に説明する。(12)式を次式に書き直す。
X(k)=α{x(k-1)-2x(k)+x(k+1)}
Y(k)=α{y(k-1)一2y(k)+y(k+1)} …(14)
Z(k)=α{z(k-1)-2z(k)+z(k+1)}
(14)式を全微分する。
dX(k)=αdx(k-1)-2αdx(k)+αdx(k+1)
dY(k)=αdy(k-1)-2αdy(k)+αdy(k+1) …(15)
dZ(k)=αdz(k-1)-2αdz(k)+αdz(k+1)
(13)式を微分すると仮定到達時間差τ’は消去されて次式となる。

【0040】

【数6】
JP0003511090B2_000007t.gif dF(k)={(x-x)/R-(x-x)/R}dx(k)
+{(y-y)/R-(y-y)/R}dy(k)
+{(z-z)/R-(z-z)/R}dz(k)-△Bij

…(17)
ここで(15)式と(17)式を連立させて、最小二乗法によりdx(k),dy(k),dz(k)及び△Bijを決める。

【0041】
(m)航走体の位置P(i)を決定する。前記項目(a)から(l)までの処理で求められたdx(k),dy(k),dz(k)及び△Bijを基に、初期位置Pについて順次、(18)式のごとく更新し求められる残差が最小になる航走体の位置P(0)からP(i)を決定する。
x(k)=x(k)+dx(k)
y(k)=y(k)+dy(k) …(18)
z(k)=z(k)+dz(k)

【0042】
(n)航走体の位置P(i+1)を決定する。求められた航走体初期位置P(x,y,z)と真の到達時間差τから△Bij=0として、時刻tにおける航走体の位置P(t)を決定する。

【0043】
以下に処理法を説明する。航走体の位置P(x,y,z)に収束した初期値P(i+1)=2P(i)-P(i-1)を与える。

【0044】
次に(17),(18)式より次式を得る。
dF(k)=Aijdx+Bijdy+Cijdz …(19)
ここで、
ij=(x-x)/R-(x-x)/R
ij=(y-y)/R-(y-y)/R
ij=(z-z)/R-(z-z)/R
(19)式をマトリックスで表示すると

【0045】

【数7】
JP0003511090B2_000008t.gifこれをF=M・dPとする。

【0046】

【数8】
JP0003511090B2_000009t.gif(23)式からdPを求めるために、両辺に転置行列Mをかける。
MF=MMdP
より
dP=(MM)-1(MF) …(24)

【0047】
(o)二乗平均残差 (ΣdF(k)/Sij)1/2 を計算する。

【0048】
(p)残差が前回の残差と変わらなかったら終了する。

【0049】
(q)次式のマトリックスMを計算する。

【0050】

【数9】
JP0003511090B2_000010t.gif【0051】
(r)dP=(MM)-1(MF) を計算する。

【0052】

(s)P(k)=P(k)+dP(k)とする。

【0053】
(t)前記項目(n)へ戻る。

【0054】

(u)残差が前回の残差と変わらなかったら終了する。

【0055】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る航走体放射雑音からの航跡標定方法及び装置の実施の形態を図面に従って説明する。

【0056】
図1は本発明に係る航走体放射雑音からの航跡標定方法及び装置の一実施の形態の構成を示している。

【0057】
この図において、1は水中、2は水面、3は海底、4は航走体、S,S,…,Sは受波器(音響センサー)、5-1,5-2,…,5-Nは受信回路、6-1,6-2,…,6-NはA/D変換器、11-1,11-2,…,11-NはFFT処理器、12-1,12-2,…,12-Nは記憶装置、13-1,13-2,…,13-Nはバンドパスフィルター処理器、14は航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域検出器、15はドップラー周波数による航走体速度検出器、16はドップラー補正演算器、17は相互相関による仮定到達時間差検出器、18は航走体位置変動量と未知バイアス変動量演算器、19は真の到達時間差検出器、20は航走体の航跡標定器である。なお、Nは3以上の整数である。

【0058】
受波器S,S,…,Sは水面又は水中を航走する航走体4の放射雑音をそれぞれ検出するものであり、例えばハイドロホン等の音響センサーである。

【0059】
受信回路5-1,5-2,…,5-Nは受波器S,S,…,Sから入力された受波信号を一定レベルまでそれぞれ振幅増幅した後、A/D変換器6-1,6-2,…,6-Nに信号をそれぞれ出力する。

【0060】
A/D変換器6-1,6-2,…,6-Nは、受信回路5-1,5-2,…,5-Nから転送されたアナログ受波信号をそれぞれデジタル受波信号に変換し、該デジタル受波信号をFFT処理器11-1,11-2,…,11-Nにそれぞれ転送する。

【0061】
図2に受波器Sと受波器Sと受波器Sによる受波信号の一例を示す。

【0062】
FFT処理器11-1,11-2,…,11-Nは、デジタル受波信号をdt秒毎にFFT処理し、時間-周波数信号に変換して記憶装置12-1,12-2,…,12-Nにそれぞれ転送する。

【0063】
航走体固有振動特性(航走体固有振動数)に起因する航走雑音周波数帯域検出器14は、記憶装置12-1,12-2,…,12-Nから時間-周波数信号に変換された受波信号を個々に検出器14内に取り込んで、航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域の上限値と下限値を検出しバンドパスフィルター処理器13-1,13-2,…,13-Nに出力する。

【0064】
ここでの処理は特願平11-069924号の構成を用いることができる。つまり、航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域検出器14は、
第1の受波器(例えばS)による受波信号に基づいて、前記記憶装置からFFT処理された時間-周波数受波信号を読み込んで、所定サンプリング時間毎のローファーグラムを作成する手段と、
前記ローファーグラムにおいて周波数0~FHz間のスペクトルラインにおけるパワー値極大値列を抽出する手段と、
前記及び手段の処理を前記ローファーグラムにおいて周波数0~FHzの範囲にある航走雑音のパワー値の極大値列群の全部について実施する手段とを備え、
第2の受波器(例えばS)による受波信号に基づいて、上記,及びの手段による処理を行い、前記第1の受波器の受波信号に基づいて検出された航走雑音周波数帯域の上限値と下限値が、前記第2の受波器の受波信号に基づいて検出された航走雑音周波数帯域の上限値と下限値とに一致した場合に、航走体振動特性に起因する航走雑音の周波数帯域と判定する手段とを具備する構成とする。ここで、3個以上の各受波器について上記,及びの手段による処理を行って、各受波器毎に検出された航走雑音周波数帯域の上限値と下限値が互いに一致するかどうかを判定するようにしてもよい。

【0065】
バンドパスフィルター処理器13-1,13-2,…,13-Nは航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域検出器16から入力された周波数帯域の上限値と下限値の範囲で、記憶装置12-1,12-2,…,12-Nに記憶された受波信号についてバンドパスフィルター処理を行いドップラー補正演算器16に転送する。

【0066】
図3に航走体固有振動数に起因する航走雑音周波数帯域の上限値と下限値の範囲でバンドパスフィルター処理を実施した受波器Sと受波器Sそして受波器Sによる受波信号を示す。

【0067】
ドップラー補正演算器16は航跡標定におけるドップラー現象の影響を除去するために、受波信号をドップラー補正し相互相関による仮定到達時間差検出器17に出力する。このドップラー現象の影響を除去する処理は、公知文献2や本発明者提案の特願平11-69924号に記載された技術を用いることができる。つまり、受波信号からドップラー周波数により航走体の速度を検出する航走体速度検出器15のドップラー周波数による航走体速度の検出結果に基づいて、ドップラー補正演算器16はドップラー現象による時間伸縮率を求めて、受波信号のドップラー補正を行うようにしている。なお、本実施の形態では、航走体速度検出器15は、航走体固有振動特性に起因する航走雑音周波数帯域検出器14の出力を受けて航走体の速度を検出するようにしているが、バンドパスフィルター処理された受波信号からドップラー周波数により航走体の速度を検出するようにしてもよい。

【0068】
図4は受波器SとSによる放射雑音のドップラー補正受波信号X(t)とX(t)の説明図である。

【0069】
ドップラー補正された受波信号の相互相関処理を行う相互相関による仮定到達時間差検出器17は、(a)N台の受波器の内、各2台の組み合わせに基づいて、前記航走体固有振動特性に起因する周波数範囲でバンドパスフィルター処理された後ドップラー補正された全放射雑音計測時間Tの受波信号X(t)とX(t)のFFT処理信号を読み込んで、該信号を周波数分析間隔dt毎にn回(T=n×dt)逆FFT処理して求めたn個のサンプル信号χin(t)とχjn(t)の相互相関係数Cijnを算出し、該相関係数の実数部を該相関係数の実数部の最大値で割り相対相互相関係数△dijnで表示した時間-相対相関係数信号を算出する手段と、(b)前記相対相互相関係数△dijn信号を読み込んで、放射雑音計測開始時間tでの受波器SとSの航走体放射雑音到達時間差を0とし、サンプル信号χin(t)とχjn(t)について1番目の相対相互相関係数△dij1と2番目の相対相関係数△dij2の相関を計算し、そのズレ幅△wij1を求め、同様に、2番目の相対相関係数△dij2と3番目の相対相関係数△dij3の相関からズレ幅△wij2、さらに△dij3と△dij4の相関からズレ幅△wdij3、これを順次、△dijiと△diji+1のズレ幅△wijiまで算出して、仮定到達時間差曲線τij’=wij(t)を求める手段とを具備する。例えば、i=1,j=2であれば、相互相関による仮定到達時間差検出器17では、ドップラー補正演算器16において補正された受波信号X(t)とX(t)について相互相関係数の最大値を算出し、その時の仮定到達時間差を求める。

【0070】
図5に相互相関による仮定到達時間差検出器17により受波器Sと受波器Sにより受信された受波信号X(t)とX(t)について受波器間の仮定到達時間差曲線を求めた結果を示す。

【0071】
航走体位置変動量と未知バイアス変動量演算器18は、仮定到達時間差検出器17で算出された仮定到達時間差から各受波信号のn個のサンプル信号の内の初期のi個を用いて航走体位置変動量と未知バイアス変動量を求める。つまり、航走体位置変動量と未知バイアス変動量演算器18は、3台以上の受波器により計測された各受波信号X(t)のn個のサンプル信号χ(t),χ(t),χ(t),…,χ(t)の内の初期のi個について求めた仮定到達時間差τiji’と航走体が微小時間(t-1)から(t+1)間は直線上を進行するとした航走体位置P(k)にラプラシアンフィルターによる非線形最小二乗法を適用し航走体の位置変動量と未知バイアス変動量を求める手段を具備する。

【0072】
図6に受波器S、受波器S、受波器S間の真の放射雑音到達時間差と受波器SとSの仮定到達時間差及び未知バイアスの関係を示す。

【0073】
真の到達時間差検出器19は、求められた航走体位置変動量と未知バイアス変動量を基に、航走体の任意設定初期値Pについて順次、ラプラシアンフィルター残差が最小になる航走体の位置P(0)からP(i)を決定し、その値から真の到達時間差を検出する手段を具備する。

【0074】
航走体航跡標定器20は、前記真の到達時間差検出器19で検出された航走体放射雑音の各受波器までの真の到達時間差と各受波器の位置S(x,y,z)及び任意に設定した航走体初期位置P(x,y,z)とから未知バイアス変動量△Bijを0として、目標と受波器の距離であるレンジRに関する三次元方程式を解くことにより、全放射雑音計測時間Tにわたり航走体の位置P(t)を決定する手段を具備しており、これにより全放射雑音計測時間にわたって航走体の位置を求め航跡を標定する。

【0075】
図7に航走体の任意設定初期位置P及び予測標定航跡と最適予測標定軌跡を示す。

【0076】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。

【0077】

【発明の効果】以上説明した如く、本発明によれば、航走体の放射雑音を3台以上の受波器で受信し、該受波信号間の相互相関をとることにより、目標航走体の航跡を求める標定方法及び装置において、本発明により各受波器により計測される航走体放射雑音信号中に、該放射雑音が放射された同期絶対時間のデータが無くとも2台の受波器Sと受波器Sへの該航走体放射雑音の到達時間差からレンジRを求めることができるので、航走体の装備条件に依存することなく、目標の航跡を正確に標定することができる。
図面
【図2】
0
【図7】
1
【図1】
2
【図3】
3
【図6】
4
【図4】
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【図9】
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【図5】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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