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明細書 :比熱測定装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3380903号 (P3380903)
公開番号 特開2002-156345 (P2002-156345A)
登録日 平成14年12月20日(2002.12.20)
発行日 平成15年2月24日(2003.2.24)
公開日 平成14年5月31日(2002.5.31)
発明の名称または考案の名称 比熱測定装置及び方法
国際特許分類 G01N 25/20      
FI G01N 25/20 A
請求項の数または発明の数 10
全頁数 10
出願番号 特願2000-351582 (P2000-351582)
出願日 平成12年11月17日(2000.11.17)
審査請求日 平成12年11月17日(2000.11.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】久野 九万雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100067323、【弁理士】、【氏名又は名称】西村 教光
審査官 【審査官】郡山 順
参考文献・文献 特開 平10-160695(JP,A)
特開 平11-201923(JP,A)
特開 平5-203594(JP,A)
特開 平4-184246(JP,A)
実公 昭42-4070(JP,Y1)
調査した分野 G01N 25/20
特許請求の範囲 【請求項1】
被測定試料が封入される第1試料セルと、
該第1試料セルと実質的に同一な空の第2試料セルと、
前記第1試料セル及び前記第2試料セルを加熱する熱源と、
前記熱源を加熱制御する熱源制御手段と、
加熱された前記第1試料セルの温度と前記第2試料セルの温度とを検出する試料セル温度検出手段と、
前記熱源の加熱状態を熱源データとして検出する熱源データ検出手段と、
前記検出された各温度及び前記熱源データを集積するデータ集積手段と、
該データ集積手段から、前記第1試料セルの温度と前記第2試料セルの温度が同一であるときの各時刻を抽出し、該各時刻における前記熱源データを抽出する熱源データ抽出手段と、
前記各時刻における前記熱源の抽出熱源データと、前記第1及び第2試料セルの温度の時間的変化率と、に基づき、前記被測定試料の比熱を算出する比熱算出手段と、を具備することを特徴とする比熱測定装置。

【請求項2】
標準試料と被測定物質とを混合した被測定試料が封入される第1試料セルと、
前記標準試料が封入されており、前記第1試料セルと実質的に同一な第2試料セルと、
前記第1試料セル及び前記第2試料セルを加熱する熱源と、
前記熱源を加熱制御する熱源制御手段と、
加熱された前記第1試料セルの温度と前記第2試料セルの温度とを検出する試料セル温度検出手段と、
前記熱源の加熱状態を熱源データとして検出する熱源データ検出手段と、
前記検出された各温度及び前記熱源データを集積するデータ集積手段と、
該データ集積手段から、前記第1試料セルの温度と前記第2試料セルの温度が同一であるときの各時刻を抽出し、該各時刻における前記熱源データを抽出する熱源データ抽出手段と、
前記各時刻における前記熱源の抽出熱源データと、前記第1及び第2試料セルの温度の時間的変化率と、に基づき、前記被測定試料中の前記被測定物質の比熱を算出する比熱算出手段と、を具備することを特徴とする比熱測定装置。

【請求項3】
前記熱源データは前記熱源の温度であり、熱源データ検出手段は前記熱源の温度を検出する温度検出素子であることを特徴とする請求項1又は2記載の比熱測定装置。

【請求項4】
前記熱源データは前記熱源からの熱輻射エネルギーであり、熱源データ検出手段は前記熱輻射エネルギーを検出する熱輻射検出器であることを特徴とする請求項1又は2記載の比熱測定装置。

【請求項5】
前記第1試料セルは複数設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の比熱測定装置。

【請求項6】
被測定試料が封入された第1試料セルと、該第1試料セルと実質的に同一な空の第2試料セルと、を熱源により加熱し、
加熱された前記第1試料セルの温度と前記第2試料セルの温度と前記熱源の加熱状態を示す熱源データとを連続的に検出し、
前記各温度及び前記熱源データを集積し、
前記第1試料セルの温度と前記第2試料セルの温度が同一であるときの各時刻を抽出して、該各時刻における前記熱源データを抽出し、
前記各時刻における前記熱源の抽出熱源データと、前記第1及び第2試料セルの温度の時間的変化率と、に基づき、前記被測定試料の比熱を算出する比熱測定方法。

【請求項7】
標準試料と被測定物質とを混合した被測定試料が封入された第1試料セルと、前記標準試料が封入され、前記第1試料セルと実質的に同一な空の第2試料セルと、を熱源により加熱し、
加熱された前記第1試料セルの温度と前記第2試料セルの温度と前記熱源の加熱状態を示す熱源データとを連続的に検出し、
前記各温度及び前記熱源データを集積し、
前記第1試料セルの温度と前記第2試料セルの温度が同一であるときの各時刻を抽出して、該各時刻における前記熱源データを抽出し、
前記各時刻における前記熱源の抽出熱源データと、前記第1及び第2試料セルの温度の時間的変化率と、に基づき、前記被測定試料中の前記被測定物質の比熱を算出する比熱測定方法。

【請求項8】
前記熱源データは前記熱源の温度であることを特徴とする請求項6又は7記載の比熱測定方法。

【請求項9】
前記熱源データは前記熱源からの熱輻射エネルギーであることを特徴とする請求項6又は7記載の比熱測定方法。

【請求項10】
前記第1試料セルは複数設けられていることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の比熱測定方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、固体,液体,粉体等の被測定試料の温度や熱輻射エネルギーを一定のプログラムに従って変化させながら、その試料を熱分析する比熱測定装置及び方法であり、特に、熱源の温度や熱輻射エネルギーに基づいて熱分析し、被測定試料の比熱を測定する比熱測定装置及び方法に関するものである。

【0002】

【従来の技術】従来、双子セルを用いた熱分析方法としては、示差熱分析法(DTA)と示差走査熱量測定法(DSC)が知られている。

【0003】
示差熱分析法(DTA)は、一定のプログラムで加熱又は冷却するとき、2つの物質の温度差を温度(又は時間)に対して記録する技法である。すなわち、図10に示すように、試料Sと熱的に不活性な標準物質Rとをセル31,32に詰め、対照的に炉33内におく。炉33を昇(降)温させると、基準物質Tは炉33の温度に対し少し遅れて昇(降)温する。試料Sは、転移・融解・反応等のとき、定常的な昇(降)温とは異なる温度変化をする。よって、熱電対34,35により両者の温度差をとれば、試料Sの熱的変化を観察することができる。

【0004】
示差走査熱量測定法(DSC)は、標準物質Rと試料Sの温度差に必要な熱エネルギーを、補助ヒータの電気エネルギーとして測定し、この結果から比熱の値を導出する方法である。

【0005】
両方法は、ともに一方のセル31に熱的性質が既知である標準物質Rを詰め、他方のセル32には、未知の物質(試料S)を詰めて、未知の物質を熱分析することとされている。また、両方法は、ともに両セル31,32の熱源からの同一熱エネルギー授受の状態で熱分析がなされる。

【0006】
しかしながら、示差熱分析法(DTA)では、試料Sの熱的変化を算出するのみで、測定結果として試料Sの比熱を測定することができない。また、示差走査熱量測定法(DSC)では、装置に両セルの温度差を打ち消すための別の補助熱源(補助電気ヒータ)を取り付ける必要がある。したがって、装置が大がかりになり、また、補助電気ヒータからの放熱や銅線を通して散逸するエネルギーにより測定誤差が生じることとなる。更に、上記両方法では、試料Sの他に標準物質Rをも使用するため、測定に手間がかかり、コストがかかることとなる。

【0007】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記欠点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、熱源の温度を用いることにより、被測定試料の比熱の測定が容易な比熱測定装置及び方法を提供することにある。特に、基準試料や補助熱源を使用せず、低コストで高精度な測定を可能にすることにある。

【0008】
また他の目的は、標準試料と、標準試料を溶媒とする被測定試料(溶液)と、を用いることにより、被測定試料に含まれている溶質の比熱を容易に測定することにある。

【0009】

【課題を解決するための手段】請求項1記載の比熱測定装置は、被測定試料Sが封入される第1試料セル7と、該第1試料セル7と実質的に同一な空の第2試料セル8と、前記第1試料セル7及び前記第2試料セル8を加熱する熱源3と、前記熱源3を加熱制御する温度制御手段13と、加熱された前記第1試料セル7の温度Ts(T's)と前記第2試料セル8の温度Tso(T'so )を検出する試料セル温度検出手段9と、前記熱源3の加熱状態を熱源データとして検出する熱源データ検出手段10と、前記検出された各温度Ts(T's),Tso(T'so )及び前記熱源データを集積するデータ集積手段14と、該データ集積手段14から、前記第1試料セル7の温度Ts(T's)と前記第2試料セル8の温度Tso(T'so )が同一であるときの各時刻t1 ( t1), t2(t'2) を抽出し、該各時刻t1 ( t1), t2(t'2) における前記熱源3の熱源データを抽出する熱源データ抽出手段15と、前記各時刻t1(t'1),t2(t'2) における熱源3の抽出熱源データと、両試料セル7,8の温度の時間的変化率dTs /dt(dT' s /dt),dTso/dt(dT' so/dt)に基づき、前記被測定試料Sの比熱CMを算出する比熱算出手段16と、を具備することを特徴とする。

【0010】
請求項2記載の比熱測定装置は、標準試料Rと被測定物質Bとを混合した被測定試料S' が封入される第1試料セル7と、前記標準試料Rが封入されており、前記第1試料セル7と実質的に同一な第2試料セル8と、前記第1試料セル7及び前記第2試料セル8を加熱する熱源3と、前記熱源3を加熱制御する温度制御手段13と、加熱された前記第1試料セル7の温度Ts(T's)と前記第2試料セル8の温度Tso(T'so )を検出する試料セル温度検出手段9と、前記熱源3の加熱状態を熱源データとして検出する熱源データ検出手段10と、前記検出された各温度Ts(T's),Tso(T'so )及び前記熱源データを集積するデータ集積手段14と、該データ集積手段14から、前記第1試料セル7の温度Ts(T's)と前記第2試料セル8の温度Tso(T'so )が同一であるときの各時刻t1 ( t1), t2(t'2) を抽出し、該各時刻t1 ( t1), t2(t'2) における前記熱源3の熱源データを抽出する熱源データ抽出手段15と、前記各時刻t1(t'1),t2(t'2) における熱源3の抽出熱源データと、両試料セル7,8の温度の時間的変化率dTs /dt(dT' s /dt),dTso/dt(dT' so/dt)に基づき、前記被測定試料S' 中の前記被測定物質のB比熱Cb を算出する比熱算出手段16と、を具備することを特徴とする。

【0011】
請求項3記載の比熱測定装置は、請求項1又は2記載の比熱測定装置において、前記熱源データは前記熱源3の温度T( T')であり、熱源データ検出手段10は前記熱源3の温度Tを検出する温度検出素子であることを特徴とする。したがって、熱源データ抽出手段15では、前記各時刻t1(t'1),t2(t'2) における熱源3の温度Th ( T'h),Tho( T'ho)が抽出される。

【0012】
請求項4記載の比熱測定装置は、請求項1又は2記載の比熱測定装置において、前記熱源データは前記熱源3からの熱輻射エネルギーWであり、熱源データ検出手段10は前記熱輻射エネルギーWを検出する熱輻射検出器であることを特徴とする。したがって、熱源データ抽出手段15では、前記各時刻t1(t'1),t2(t'2) における熱源3の熱輻射エネルギーWh(W'h),Who( W'ho)が抽出される。

【0013】
請求項5記載の比熱測定装置は、請求項1~4のいずれかに記載の比熱測定装置において、前記第1試料セルは複数設けられていることを特徴とする。

【0014】
請求項6記載の比熱測定方法は、被測定試料Sが封入される第1試料セル7と、該第1試料セル7と実質的に同一な空の第2試料セル8と、を熱源3で加熱し、加熱された前記第1試料セル7の温度Ts(T's)と前記第2試料セル8の温度Tso(T'so )と前記熱源3の加熱状態を熱源データとを検出し、前記検出された各温度Ts(T's),Tso(T'so )及び前記熱源データを集積し、前記第1試料セル7の温度Ts と前記第2試料セル8の温度Tsoが同一であるときの各時刻t1(t'1),t2(t'2) を抽出し、該各時刻t1(t'1),t2(t'2) における前記熱源3の熱源データを抽出し、前記各時刻t1(t'1),t2(t'2) における熱源3の抽出熱源データと、両試料セル7,8の温度の時間的変化率dTs /dt(dT' s /dt),dTso/dt(dT' so/dt)に基づき、前記被測定試料Sの比熱CMを算出することを特徴とする。

【0015】
請求項7記載の比熱測定方法は、標準試料Rと被測定物質Bとを混合した被測定試料S' が封入される第1試料セル7と、前記標準試料Rが封入されており、前記第1試料セル7と実質的に同一な第2試料セル8と、を熱源3で加熱し、加熱された前記第1試料セル7の温度Ts(T's)と前記第2試料セル8の温度Tso(T'so )と前記熱源3の加熱状態を熱源データとを検出し、前記検出された各温度Ts(T's),Tso(T'so )及び前記熱源データを集積し、前記第1試料セル7の温度Ts と前記第2試料セル8の温度Tsoが同一であるときの各時刻t1(t'1),t2(t'2) を抽出し、該各時刻t1(t'1),t2(t'2) における前記熱源3の熱源データを抽出し、前記各時刻t1(t'1),t2(t'2) における熱源3の抽出熱源データと、両試料セル7,8の温度の時間的変化率dTs /dt(dT' s /dt),dTso/dt(dT' so/dt)に基づき、前記被測定試料S' 中の前記被測定物質Bの比熱Cb を算出することを特徴とする。

【0016】
請求項8記載の比熱測定方法は、請求項6又は7記載の比熱測定方法において、前記熱源データは前記熱源3の温度T( T' )であることを特徴とする。したがって、各時刻t1(t'1),t2(t'2) においては熱源3の温度Th ( T'h),Tho( T'ho)が抽出される。

【0017】
請求項9記載の比熱測定方法は、請求項6又は7記載の比熱測定方法において、前記熱源データは前記熱源3からの熱輻射エネルギーWであることを特徴とする。したがって、各時刻t1(t'1),t2(t'2) においては熱源3の熱輻射エネルギーWh(W'h),Who( W'ho)が抽出される。

【0018】
請求項10記載の比熱測定方法は、請求項6~9のいずれかに記載の比熱測定方法において、前記第1試料セルは複数設けられていることを特徴とする。

【0019】

【発明の実施の形態】図1は本発明による比熱測定装置1の実施の形態を示す概略ブロック構成図である。真空槽2内には、熱源となるヒータ3が設けられている。ヒータ3は、一対の平行なセラミックス製の放熱板4と、電熱線5と、駆動回路6で構成されている。電熱線5としては、例えばシースニクロム線が用いられ、放熱板4の内部に敷設されている。なお、電熱線5は放熱板4(4a,4b)の表面に形成してもよい。駆動回路6は電熱線5に結線されており、後述する制御部11の指令に応じて、電熱線5に電流を供給する。

【0020】
真空槽2には、双子セル7,8が収納される。双子セル7,8は、ともに、パイレックス(登録商標)硝子管(直径8mm,内径6mm,長さ30mm)の両端に薄いシリコンゴム栓で封じたものである。双子セル7,8の一方(第1試料セル7)には、比熱を測定すべき被測定試料Sが封入される。他方のセル(第2試料セル8)は空にしておく。

【0021】
試料セル温度検出手段9は、例えば熱電対等の温度検出素子で構成され、ヒータ3により加熱された双子セル7,8の温度Ts(T's),Tso(T'so )を所定時間連続的に検出する。また、熱源データ検出手段10も、例えば熱電対等の温度検出素子で構成され、ヒータ3の温度T( T' )を所定時間連続的に検出する。

【0022】
次に制御部11について説明する。制御部11は、不図示のCPU等の演算処理部と、ROM,RAM等の記憶部と、ROM内に格納された比熱測定プログラムからなる。なお、図1では、制御部11内のブロック構成を機能的の表現したものであり、例えばROM内に記憶された実行プログラムにより、制御部11内の各手段13~16に相当する機能がソフトウェア処理により実行される。

【0023】
入力手段12は、例えば押しボタンスイッチ等で構成されており、このボタンを押下することで測定が開始される。

【0024】
温度制御手段13は、CPUからの指令に基づき、ヒータ3を加熱冷却制御する。具体的には、CPUから温度上昇の指令を受け、ヒータ3の駆動回路6を駆動させる。駆動回路6は、その指令に基づき、所定量の電流を電熱線5に供給する。電熱線5の熱伝導により放熱板4の温度Tは、単位時間当たり所定温度、例えば1.5℃程度づつ連続的に上昇する。また、冷却するときは、徐々に電流量を減らし、同様に単位時間当たり1.5℃づつ下降させる。

【0025】
データ集積手段14は、検出された各温度T,Ts ,Tso( T',T's,T'so)を集積する。具体的には、単位時間当たり所定温度(例えば1.5℃)づつプロットされたヒータ3の温度に対し、第1試料セル7の温度と第2試料セル8の温度をプロットして、記憶部に格納する。図2は、第1試料セル7,第2試料セル8及びヒータ3の各温度T,Ts ,Tso( T',T's,T'so )の時間的変化を表すグラフである。(’)は温度下降時のデータである。

【0026】
熱源データ抽出手段15は、データ集積手段14から、ヒータ3の温度上昇時における第1試料セル7の温度Ts と第2試料セル8の温度Tsoが同一であるとき(Ts =Tso)の各時刻t1 ,t2 を抽出し、その各時刻t1 ,t2 におけるヒータ3の温度Th ,Thoを抽出する。具体的には、記憶部に格納された各温度データを参照して時刻t1 ,t2 の抽出及び温度Th ,Thoの抽出を行う。同様に、データ集積手段14から、ヒータ3の温度下降時における第1試料セル7の温度T'sと第2試料セル8の温度T'so が同一であるとき(T's=T'so)の各時刻t'1,t'2を抽出し、その各時刻t'1,t'2におけるヒータ3の温度T'h,T'ho を抽出する。具体的には、記憶部に格納された各温度データを参照して時刻t'1,t'2の抽出及び温度T'h,T'ho の抽出を行う。

【0027】
比熱算出手段16は、データ集積手段14で集積された温度データに基づき、両試料セル7,8の温度の時間的変化率dTs /dt ,dTso/dt (dT' s /dt ,dT'so/dt )を算出する。そして、ヒータ3の温度上昇時の抽出温度Th ,Tho,時間的変化率dTs /dt ,dTso/dt と、ヒータ3の温度下降時の抽出温度T'h,T'ho ,時間的変化率dT' s /dt ,dT' so/ dtと、に基づき、被測定試料Sの比熱CMを算出する。算出方法は後述する。

【0028】
表示手段17は、例えばCRTや液晶ディスプレイ等で構成されており、データ集積手段14,熱源データ抽出手段15や比熱算出手段16からの種々の出力結果が視認可能な形態で表示されるものである。

【0029】
次に本実施の形態の作用について、図3のフローチャートを用いて説明する。まず、第1試料セル7に被測定試料Sを入れてゴム栓をする。真空槽2に両試料セル7,8を収納する。そして、真空槽2内部を真空にする(ST1)。

【0030】
入力手段12の測定開始ボタンを押し、被測定試料Sの比熱CM の測定を開始する。まず、ヒータ3の加熱制御を行う(ST2)。ヒータ3に電流を供給し、単位時間当たり1.5℃づつ温度を上昇させる。このときの第1試料セル7の温度Ts と第2試料セル8の温度Tsoを検出して、記憶部に格納する。ヒータ3の温度が上限温度に達したら、電流量を減少させて、単位時間当たり1.5℃づつ温度を下降させる。このときの第1試料セル7の温度Ts と第2試料セル8の温度Tsoを検出して、記憶部に格納する(ST3)。

【0031】
記憶部から、第1試料セル7の温度Ts と第2試料セル8の温度Tsoが同一であるときの時刻t1 ,t2 を抽出する(ST4)。各時刻t1 ,t2 におけるヒータ3の温度Th ,Thoをそれぞれ抽出する(ST5)。この両時刻t1 ,t2でのヒータ3の温度Th ,Thoは異なっている。第1試料セル7と第2試料セル8の熱容量が同一でないからである。

【0032】
一方、データ集積手段14で集積された温度データに基づき、両試料セル7,8の温度の時間的変化率dTs /dt ,dTso/dt を算出する(ST6)。そして、抽出されたヒータ3の温度Th ,Tho,時間的変化率dTs /dt ,dTso/dt ,被測定試料Sの質量M,第2試料セル8の質量m及び第2試料セル8の比熱Cm から、被測定試料Sの比熱CM を算出する(ST7)。

【0033】
なお、ヒータ3の冷却によるヒータ3の温度下降時においても、ST3~ST7の処理が行われる。

【0034】
ここで、被測定試料Sの比熱CMの算出方法について説明する。まず、ヒータ3の温度T,第1試料セル7の温度Ts ,第2試料セル8の温度Tso及び真空槽2内の温度Tr とすると、ヒータ3の温度上昇時において、第1試料セル7がヒータ3から単位時間に授受するエネルギー及び真空槽2内面に放出するエネルギーの関係は、以下の(1)式で表される。

【0035】

【数1】
JP0003380903B2_000002t.gif【0036】下降時は、以下の(1’)式で表される。

【0037】

【数2】
JP0003380903B2_000003t.gif【0038】また、ヒータ3の温度下降時において、第2試料セル8がヒータ3から単位時間に授受するエネルギー及び真空槽内面に放出するエネルギーの関係は、以下の(2)式で表される。

【0039】

【数3】
JP0003380903B2_000004t.gif【0040】下降時は、以下の(2’)式で表される。

【0041】

【数4】
JP0003380903B2_000005t.gif【0042】ここで、温度はすべて絶対温度を示す。σは、ステファン,ボルツマン定数である。dQs/dtは被測定試料Sが封入されている第1試料セル7を支持しているワイヤーを通じて散逸する熱エネルギーである。dQso/dt は空の第2試料セル8を支持しているワイヤーを通じて散逸する熱エネルギーである。Mは被測定試料Sの質量、mは第2試料セル8の質量である。

【0043】
また、CM はヒータ3の温度上昇時における被測定試料Sの比熱、C' M はヒータ3の温度下降時における被測定試料Sの比熱、Cm は第1試料セル7及び第2試料セル8のセル自体の比熱である。Aは試料セル7,8の表面積である。

【0044】
Eh は、第1試料セル7の熱エネルギーの授受に関与する有効放射率、Es は第2試料セル8の熱エネルギーの授受に関与する有効放射率である。Eh とEsは、ヒータ3及び試料セル7,8の輻射率が一定で、これらの幾何学的配置が変わらない限り、両試料セルともに同一かつ一定の値を持つものである。

【0045】
ここで、(1)式と(2)式との差から得られる(3)式を下記に示す。

【0046】

【数5】
JP0003380903B2_000006t.gif【0047】また、ヒータ3の冷却による温度下降時では、(1’)式と(2’)式との差から(3’)式となる。

【0048】

【数6】
JP0003380903B2_000007t.gif【0049】Th とThoは、ヒータ3の温度上昇時において、それぞれ熱源データ抽出手段15により抽出されたヒータ3の抽出温度である。また、T'hとT'ho は、ヒータ3の温度下降時において、それぞれ熱源データ抽出手段15により抽出されたヒータ3の抽出温度である。なお、(3)式及び(3’)式では、ワイヤーから散逸するエネルギーは微小であるので無視することとする。

【0050】
記憶部には(3)式が格納されており、比熱測定プログラムにしたがって、(3)式の右辺が演算される。そして温度上昇時のデータに基づく比熱CM (左辺)が算出される。

【0051】
また、記憶部には(3’)式が格納されており、比熱測定プログラムにしたがって、(3’)式の右辺が演算される。そして温度下降時のデータに基づく比熱CM ’(左辺)が算出される。

【0052】
そして、比熱CM と比熱CM ’とを平均化して最終的に比熱CMを算出する。比熱CMはCRT17の画面上に表示される。

【0053】
なお、係数Eh は予め算出しておく。算出方法は、空の第2試料セル8のみを用いる。ヒータ3で温度を上昇させた後、温度を下降させる。そして、図4に示すように、温度上昇時の第2試料セル8の温度Tsoと、温度下降時の第2試料セル8の温度T'so と、が同一となるとき(Tso=T'so )の時刻t3 ,t4 を抽出する。この時刻t3 ,t4 での温度上昇時のヒータ3の温度Thoと、下降時のヒータ3の温度T'ho を抽出する。温度Thoを(2)式に代入し、また温度T'ho を(2' )式に代入し、(2)式と(2' )式の差を求めると、下記に示す(4)式となる。(4)式はすべて測定可能な量であるから、予め係数Eh を測定しておくことができる。なお、(’)は、下降時のデータを示す。

【0054】

【数7】
JP0003380903B2_000008t.gif【0055】以上のことから、被測定試料Sの質量Mと、第2試料セル8の質量mと、第2試料セル8の比熱Cm がわかっていれば、ヒータ3の温度上昇時及び下降時のそれぞれにおいて、(3)式及び(3’)式の右辺は測定結果より演算することができ、被測定試料Sの比熱CMを導出することが可能である。

【0056】
次に、第2実施の形態について説明する。本実施の形態は、第2試料セル8に標準試料R(例えば水(溶媒))を詰め、第1試料セル7に標準試料Rと被測定物質B( 例えば、リゾチーム) とが混合された被測定試料S' (溶質)を詰める。なお、第1実施の形態と装置と同一部分の説明は省略する。

【0057】
被測定試料S' (溶液)の熱容量をCM Mとし、溶媒(水)の熱容量をCa a とし、被測定物質B(溶質)の熱容量をCb b とする。これらには、以下の関係がある。
M M=Ca a +Cb b …(5)式(ヒータ3の温度上昇時)
C' M M=Ca ' ma +C' b b …(5' )式(ヒータ3の温度下降時)

【0058】
ここで、本実施の形態の作用について図5のフローチャートを用いて説明する。まず、第1試料セル7に被測定試料S' を封入し、第2試料セル8に標準試料Rを封入して、真空槽2内に入れる(ST1’)。ST2~ST6までの処理は第1実施の形態と同様である。ST5,ST6の後はST7’に示す処理となる。ここで、ST7’について説明する。

【0059】
ヒータ3の加熱による温度上昇時では、被測定試料S' が封入された第1試料セル7がヒータ3から単位時間に授受するエネルギー及び真空槽2内面に放出するエネルギーの関係は、上述した(1)式で表される。同様に、温度下降時には(1’) 式となる。

【0060】
また、ヒータ3の加熱による温度上昇時では、第2試料セル8がヒータ3から単位時間に授受するエネルギー及び真空槽2内面に放出するエネルギーの関係は、以下の(6)式で表される。

【0061】

【数8】
JP0003380903B2_000009t.gif【0062】同様に、温度下降時には(6’) 式となる。

【0063】

【数9】
JP0003380903B2_000010t.gif【0064】(1)式と(6)式との差から、熱容量の差として以下の(7)式が得られる。

【0065】

【数10】
JP0003380903B2_000011t.gif【0066】また、(1’)式と(6’)式との差から、熱容量の差として以下の(7’)式が得られる。

【0067】

【数11】
JP0003380903B2_000012t.gif【0068】この(7)式の左辺は、(5)式より質量Mb の被測定物質Bの熱容量Cb b となる。同様に、(7’)式の左辺は、(5’)式より質量Mb の被測定物質Bの熱容量C’b b となる。これらをそれぞれ質量Mb で割算して、温度上昇時と下降時の被測定物質B(溶質)の比熱Cb ,C’b を算出する。これらを平均化すれば、最終的な被測定物質Bの比熱Cbが算出される。

【0069】
なお、温度上昇時の被測定試料S(溶液)の比熱CM は、以下の(8)式となる。また、温度下降時の被測定試料S(溶液)の比熱C' M は、以下の(8' )式となる。

【0070】

【数12】
JP0003380903B2_000013t.gif【0071】
【数13】
JP0003380903B2_000014t.gif【0072】この結果を平均化すれば、被測定試料S’の比熱CMを算出することができる。

【0073】
なお、上述の例では、熱源データ検出手段10として温度検出素子(熱電対)を用いてヒータ3の温度を検出することとしていたが、ヒータ3からの熱輻射エネルギーを被接触で検出することとしてもよい。この場合、熱電対に変えて、熱輻射検出器を設ける。そして、真空槽2にガラス製の赤外線透過窓を設け、ヒーた3から放射される熱輻射エネルギー(赤外線)を検出する。したがって、この変形例では、図3で示したST5が、図5に示すST5’となる。

【0074】
そして、(3)式,(3’)式,(4)式,(6)式,(6’)式,(7)式,(7’)式,(8)式,(8’)式のσT4h,σT4ho ,σT'4h ,σT'4hoを、それぞれWh /G, Who/G, W'h/G, W'ho /Gに置き換えることにより、被測定試料の比熱CMや被測定物質Bの比熱Cb を導出することができる。ここで、Wh , Who, W'h, W'ho は熱輻射検出器の出力で、Gは熱輻射検出器の増幅度である。この場合において、係数Eh は(Eh /G)に置き換える。

【0075】
また、上述したいずれの実施の形態でも、ヒータ3に一対の平行な放熱板4を用いたが、図6に示すように、円筒状の放熱部材であってもよい。

【0076】
更に、上述したいずれの実施の形態でも、被測定試料S,S’が封入される第1試料セル7を1つとしたが、図7に示すように、これを複数設けた構成としてもよい。これにより、複数の異なる被測定試料Sや溶質の比熱を同時に測定することができる。また、どの被測定試料7も同一測定時の第2試料セル8を基準にするため、別個に測定する場合に比し測定精度が向上する。

【0077】
また、上述したいずれの実施の形態において、各試料セル7,8の温度は、各試料セル7,8自体の温度を測定することとしてもよく、又はその内部に封入されている試料(被測定試料S,S’,標準試料R)に直接熱電対9を接触させて、試料自体の温度を直接測定することとしてもよい。

【0078】
なお、上述したいずれの実施の形態においても、被測定試料S,S’や被測定物質B,標準試料Rは、固体,液体,粉体等または、これらの中から選ばれた混合物であればどのような物質であってもよい。

【0079】

【実施例】次に、上述した第1実施の形態における、具体的な実施例について説明する。この実施例においては、パイレックス硝子管(直径8mm,内径6mm,長さ30mm)の両端に薄いシリコンゴム栓で封じた試料セル7,8を用いて、純水Sの比熱CM を測定した。2個の試料セル7,8は、放熱板4に囲まれた状態で、真空槽2内に設置される。ヒータ3と試料セル7,8の温度は熱電対9,10を用いて測定される。ヒータ3に電流を流すことで、両試料セル7,8の温度を毎分1.5℃程度で上昇、下降させる。ヒータ3と両試料セル7,8の温度が測定され、この結果から温度の変化率も計算される。

【0080】
有効放射率Eh を予め測定するため、比熱の値の温度変化が既知であるパイレックス管を用いて測定した。なお、この値は、図4に示すように、ヒータ3の温度上昇,下降時のデータから求めることができる。(’)下降時のデータを示す。(4)式により導出した有効放射率Eh の値の温度変化を図8に示す。10℃から100℃までほぼ一定の値を示している。

【0081】
水を封入した第1試料セル7と空の第2試料セル8を並べて測定し、(3)式より温度上昇時について求めた結果を図9に示す。この実験結果により、本発明にかかる方法が有効に成り立つことを確認している。

【0082】

【発明の効果】以上説明したように本発明による比熱測定装置及び方法では、熱源の温度を用いることにより、基準試料や補助熱源を使用することなく、被測定試料の比熱の測定が容易となる。特に補助ヒータが不要なので、コストがかからず、また、補助ヒータに電力を供給するときに生じる放熱や銅線を通して散逸するエネルギーがなく、測定誤差を抑えることができる。

【0083】
また、標準試料と、被測定試料と、を用いることにより、被測定試料に含まれる被測定物質の比熱を容易に測定することができる。

【0084】
更に、被測定試料が封入される第1試料セルを複数設けることにより、複数の異なる被測定試料や溶質の比熱を同時に測定することができる。また、どの被測定試料も同一測定時の第2試料セルを基準にするため、別個に測定する場合に比し測定精度が向上する。
図面
【図2】
0
【図10】
1
【図1】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図8】
6
【図6】
7
【図7】
8
【図9】
9