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明細書 :地表識別装置及び遠隔物識別装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3542083号 (P3542083)
公開番号 特開2003-194931 (P2003-194931A)
登録日 平成16年4月9日(2004.4.9)
発行日 平成16年7月14日(2004.7.14)
公開日 平成15年7月9日(2003.7.9)
発明の名称または考案の名称 地表識別装置及び遠隔物識別装置
国際特許分類 G01S 13/89      
B64D 47/00      
G01V  3/16      
FI G01S 13/89
B64D 47/00
G01V 3/16
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2001-397745 (P2001-397745)
出願日 平成13年12月27日(2001.12.27)
審査請求日 平成13年12月27日(2001.12.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
発明者または考案者 【氏名】荒木 完
【氏名】伊藤 秀雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100075258、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 研二
【識別番号】100096976、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 純
審査官 【審査官】中村 直行
参考文献・文献 特開平08-278366(JP,A)
調査した分野 G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
G01V 3/16
特許請求の範囲 【請求項1】
飛しょう体の高度を逐次計測して出力する高度計と、
前記飛しょう体から該飛しょう体の下方に広がる地表面に向けて電波を放射するとともに、前記地表面からの反射波を受信する送受信機と、
前記高度の変化の乱雑さ及び前記反射波の強度変化の乱雑さに基づいて前記飛しょう体の下方に広がる地表面の種類を識別する識別手段と、
を含むことを特徴とする地表識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地表識別装置において、
前記高度計は電波高度計であり、前記送受信機は前記高度計に含まれる送受信機であることを特徴とする地表識別装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地表識別装置において、
前記識別手段は、さらに前記反射波の強度に基づいて前記飛しょう体の下方に広がる地表面の種類を識別することを特徴とする地表識別装置。
【請求項4】
遠隔物への距離を逐次計測して出力する距離計と、
前記遠隔物表面に向けて電波を放射するとともに、該遠隔物表面からの反射波を受信する送受信機と、
を含み、
前記距離の変化の乱雑さ及び前記反射波の強度変化の乱雑さに基づいて前記遠隔物の表面状態を識別することを特徴とする遠隔物識別装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば航空機等の飛しょう体上で地表面の種類を識別する地表識別装置、及び遠隔物の表面状態を識別する遠隔物識別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
航空機等の飛しょう体の直下の地表面がどの様な種類の地表面であるかを推測する場合、従来は航空機等に搭載する電波高度計を利用して反射波の強度を測定し、その強度に基づいて地表面の種類を識別していた。この方法は例えば、海面上や湖水面上では反射波が強く、森林地帯では逆に反射波が弱くなる等の性質を利用したものである。
【0003】
しかしながら、反射波の強度は、電波高度計の出力変動や飛しょう体の高度変動等、種々の条件によって同一の地表に対する場合でも大きく変動する。また、互いに異なる種類の地表が、ほぼ同程度の反射波の強さを持つこともしばしばある。従って、反射波の強さだけからでは地表を正確に識別することが困難であり、さらに何か別の情報(パラメータ)によって、地表識別の識別度を向上させる必要がある。
【0004】
この点、特開平8-278366号公報に係る地表識別装置では、地表面からの反射波の強度のゆらぎ(fluctuation)の分散(dispersion)が該地表面の種類によって異なることを利用し、地表識別の精度向上を図っている。かかる技術によれば、反射波の強度を用いたフラクタル次元解析を行うことにより、電波高度計の出力変動や飛しょう体の高度変動に起因する反射波強度の変化の影響を低減して、より確実に地表面の種類を識別することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、反射波の強度を用いて算出されるフラクタル次元といえども、上記種々の条件によって少なからず変動し、また地形の起伏によっても変動する。このため、上記従来の地表識別装置では必ずしも十分正確に地表面の種類を識別することはできなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、第1の目的は、新たな情報を利用して地表面の種類の識別精度を向上させることのできる地表識別装置を提供することにある。また、第2の目的は、遠隔物の表面状態を高精度で識別することのできる遠隔物識別装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る地表識別装置は、飛しょう体の高度を逐次計測して出力する高度計と、前記飛しょう体から該飛しょう体の下方に広がる地表面に向けて電波を放射するとともに、前記地表面からの反射波を受信する送受信機と、前記高度の変化の乱雑さ及び前記反射波の強度変化の乱雑さに基づいて前記飛しょう体の下方に広がる地表面の種類を識別する識別手段と、を含むことを特徴とする。こうすれば、例えばフラクタル次元等の前記高度の変化の乱雑さを表すパラメータを用いることにより、反射波の強度やそのゆらぎの分散とは異なる、新たな情報を利用して、地表面の種類の識別精度を向上させることができる。さらに、本発明者らによれば、例えば冬季の雑木林では前記反射波の強度変化の乱雑さと前記高度の変化の乱雑さとが共に比較的小さい等、前記反射波の強度変化の乱雑さと前記高度の変化の乱雑さとが一定の相関関係を有することが確認されているため、本態様によれば、地表面の種類の識別精度をさらに向上させることができる。
【0010】
なお、前記高度計は電波高度計であり、前記送受信機は前記高度計に含まれる送受信機であってもよい。こうすれば、装置を安価なものとすることができるとともに、小型化することができる。
【0011】
また、本発明に係る地表識別装置では、前記識別手段は、さらに前記反射波の強度に基づいて前記飛しょう体の下方に広がる地表面の種類を識別してもよい。こうすれば、さらに地表面の種類の識別精度を向上させることができる。
【0012】
一方、本発明に係る遠隔物識別装置は、遠隔物への距離を逐次計測して出力する距離計と、前記遠隔物表面に向けて電波を放射するとともに、該遠隔物表面からの反射波を受信する送受信機と、を含み、前記距離の変化の乱雑さ及び前記反射波の強度変化の乱雑さに基づいて前記遠隔物の表面状態を識別することを特徴とする。こうすれば、従来に無い新たな情報を用い、遠隔物の表面状態を高精度で識別することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る地表識別装置の構成を示す図である。同図に示すように、この地表識別装置10は航空機等の飛しょう体に搭載されるものであって、電波高度計1を含んで構成されている。電波高度計1は、飛しょう体の底部にて地表に向けて取り付けられた送受信アンテナを備えており、例えば、地表面に向けてパルス電波を放射するとともに、地表面からの反射波を受信し、放射時刻と受信時刻との差に基づいて飛しょう体の高度を算出する。この高度は高度出力端子22にて取り出されるようになっている。
【0015】
さらに、電波高度計1は、上記送受信アンテナにより、地表面に向けて所定強度の電波を放射するとともに、地表面からの反射波を受信し、該反射波の信号強度を地表面の散乱係数として出力する。この散乱係数は散乱係数出力端子21にて取り出されるようになっている。
【0016】
図2は、散乱係数出力端子21で得られる散乱係数σの経時変化を示す図である。同図に示すように散乱係数σの値はある程度の乱雑さを持って推移している。この乱雑さは、送受信される電波自体が有するゆらぎと、地表面における反射の不均一性と、に基づくものと考えられる。A/D変換回路31は、散乱係数出力端子21から出力される散乱係数σを所定時間Δtσ毎にサンプリングし、それをデジタル値として出力する。同図において黒点はサンプリング値を表している。以下では、時刻tjにおけるA/D変換回路31の出力値をσjと記す。
【0017】
一方、図3は、高度出力端子22で得られる高度Hの経時変化を示す図である。同図に示すように高度Hの値もある程度の乱雑さを持って推移している。この乱雑さは、主として地表面の不均一性に基づくものと考えられる。A/D変換回路32は、高度出力端子22から出力される高度Hを所定時間ΔtH毎にサンプリングし、それをデジタル値として出力する。同図において黒点はサンプリング値を表している。以下では、時刻tjにおけるA/D変換回路32の出力値をHjと記す。
【0018】
演算回路41では、A/D変換回路31からの出力を次式(1)に代入して、変化量Zσjを算出し、それをメモリ51に順次一時記憶させる。
【0019】
【数1】
Zσj=|σj+1-σj| … (1)
そして、メモリ51に対して予め定めるNσ個の変化量Zσjが格納されると、演算回路41では、そのNσ個の変化量Zσjの中でZσ以上のデータの個数nσを求める。このZσは零から十分に大きな所定値までの所定間隔をおいた値であり、各値に対して次式(2)によって確率Pσが算出される。この確率PσはZσ=0のときに1となり、Zσが十分に大きな所定値のときに0となる。
【0020】
【数2】
Pσ=nσ/Nσ … (2)
こうして各変化量Zσに対して確率Pσを算出すると、それらの値は次式(3)の関係を満足する。ここで、Dσは本発明者らの研究により地表面の種類によって定まることが明らかにされている定数であり、散乱係数σのフラクタル次元を表す。
【0021】
【数3】
Pσ∝(Zσ)-Dσ … (3)
図4は、上式(3)の両辺の対数をとったものを両対数グラフ上に表したものである。同図において、直線50a上に表された6個の黒点は変化量Zσと確率Pσとの組を表しており、その傾きがフラクタル次元Dσとなる。そして、本発明者らにより地表面の種類に応じてフラクタル次元は異なることが明らかになっており、例えば地表面Aと地表面Bとが種類が異なると、それらから得られる変化量Zσと確率Pσの組は、同図に示すように、互いに異なる直線50a,50b上に表されることになる。演算回路41では、図4における傾きを算出することによりフラクタル次元Dσを求め、それを出力する。
【0022】
高度Hについても同様の処理が施される。すなわち演算回路42では、A/D変換回路32からの出力を次式(4)に代入して、変化量ZHjを算出し、それをメモリ52に順次一時記憶させる。
【0023】
【数4】
ZHj=|Hj+1-Hj| … (4)
そして、メモリ52に対して予め定めるNH個の変化量ZHjが格納されると、演算回路42では、そのNH個の変化量ZHjの中でZH以上のデータの個数nHを求める。このZHは零から十分に大きな所定値までの所定間隔をおいた値であり、各値に対して次式(5)によって確率PHが算出される。この確率PHはZH=0のときに1となり、ZHが十分に大きな所定値のときに0となる。
【0024】
【数5】
PH=nH/NH … (5)
こうして各変化量ZHに対して確率PHを算出すると、それらの値は次式(6)の関係を満足する。ここでも、DHは、フラクタル次元Dσと同様、本発明者らの研究により地表面の種類によって定まることが明らかにされている定数であり、高度Hのフラクタル次元を表す。
【0025】
【数6】
PH∝(ZH)-DH … (6)
図5は、上式(6)の両辺の対数をとったものを両対数グラフ上に表したものである。同図において、直線54a上に表された6個の黒点は変化量ZHと確率PHとの組を表しており、その傾きがフラクタル次元DHとなる。そして、本発明者らにより地表面の種類に応じてフラクタル次元は異なることが明らかになっており、例えば地表面Aと地表面Bとが種類が異なると、それらから得られる変化量ZHと確率PHの組は、同図に示すように、互いに異なる直線54a,54b上に表されることになる。演算回路42では、図5における傾きを算出することによりフラクタル次元DHを求め、それを出力する。
【0026】
演算判定回路6では、演算回路41から出力される散乱係数σのフラクタル次元Dσと、演算回路42から出力される高度Hのフラクタル次元DHと、メモリ7の記憶内容と、に基づいて電波高度計1の直下に広がる地表面の種類を識別する。図6は、メモリ7に記憶されるマップを示す図である。同図において、縦軸は散乱係数σのフラクタル次元Dσであり、横軸は高度Hのフラクタル次元DHである。同図に示すように、例えば田、森、市街地等の異なる種類の地表面に対して電波を放射することにより、高度Hを測定し、また散乱係数σを測定した場合、フラクタル次元DH及びDσのペアは、同グラフ上、それぞれ領域56,58,60のようにある程度の互いに近接する。このため、演算判定回路6では、演算回路41から出力される散乱係数σのフラクタル次元Dσと、演算回路42から出力される高度Hのフラクタル次元DHと、により定められる点を図6のグラフ上にプロットし、それが領域56,58,60のいずれに属するかによって、飛しょう体の直下に広がる地表面の種類が田、森、市街地のいずれであるかを識別する。そして、その識別結果を表す信号を判定結果出力端子8に出力する。
【0027】
以上説明した地表識別装置10によれば、特に高度Hのフラクタル次元DHを用いることにより、電波高度計1に含まれる送信機の出力変動や飛しょう体の高度変動等に起因する反射波強度の変動の影響を低減して、地表面の種類の識別精度を向上させることができる。
【0028】
また、高度Hのフラクタル次元DHと散乱係数σのフラクタル次元Dσとは一定の相関を有するため、これらを組み合わせて地表識別の判定材料とすることで、さらに地表面の種類の識別精度を向上させることができる。
【0029】
なお、以上説明した地表識別装置10は種々の変形実施が可能である。たとえば、上記地表識別装置10では、電波高度計1が、散乱係数σのフラクタル次元Dσと高度Hのフラクタル次元DHとに基づいて、地表面の種類を識別するようにしたが、その他、地表面の反射係数も地表面の種類の識別にあたって判断材料としてもよい。こうすれば、例えば図6において領域56,58,60等のオーバーラップ部分に散乱係数σのフラクタル次元Dσ及び高度Hのフラクタル次元DHが位置する場合等に、さらに正確に地表面の種類を識別することができる。
【0030】
また、以上の説明では、本発明の基本思想を地表識別装置に応用する例を中心として説明したが、遠隔物の表面状態を高精度で識別することのできる遠隔物識別装置も同様にして実現できる。すなわち、この場合、電波高度計1から遠隔物の表面に向けて電波を放射し、該遠隔物までの距離及び該遠隔物表面での散乱係数を、それぞれ高度H及び散乱係数σの代わりに出力すればよい。こうすれば、金属や布などの材質に応じた、距離のフラクタル次元と散乱係数のフラクタル次元との相関を表すマップをメモリ7に記憶しておくことにより、演算判定回路6にて遠隔物の表面状態を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る地表識別装置の構成を示す図である。
【図2】散乱係数の経時変動を示す図である。
【図3】高度の経時変動を示す図である。
【図4】散乱係数のフラクタル次元を算出する方法を説明する図である。
【図5】高度のフラクタル次元を算出する方法を説明する図である。
【図6】地表面の種類毎の散乱係数のフラクタル次元と高度のフラクタル次元との間の相関関係を示す図である。
【符号の説明】
1 電波高度計、7,51,52 メモリ、6 演算判定回路、8 判定結果出力端子、21 散乱係数出力端子、22 高度出力端子、31,32 A/D変換回路、41,42 演算回路、50,54 直線、56,58,60 領域。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5