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明細書 :フラクタル次元算出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3503826号 (P3503826)
公開番号 特開2003-194920 (P2003-194920A)
登録日 平成15年12月19日(2003.12.19)
発行日 平成16年3月8日(2004.3.8)
公開日 平成15年7月9日(2003.7.9)
発明の名称または考案の名称 フラクタル次元算出装置
国際特許分類 G01S  7/292     
FI G01S 7/292 A
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願2001-397752 (P2001-397752)
出願日 平成13年12月27日(2001.12.27)
審査請求日 平成13年12月27日(2001.12.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
発明者または考案者 【氏名】荒木 完
【氏名】伊藤 秀雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100075258、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 研二 (外2名)
審査官 【審査官】中村 直行
参考文献・文献 特開 平11-14739(JP,A)
特開 平8-278366(JP,A)
調査した分野 G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
特許請求の範囲 【請求項1】
時系列データの周波数スペクトルを算出する周波数スペクトル算出手段と、
前記周波数スペクトルのうち所定遮断周波数を越える周波数領域が白色雑音であるか否かを判断する白色検定手段と、
前記白色検定手段により前記周波数領域が白色雑音であると判断されるよう前記所定遮断周波数を決定する遮断周波数決定手段と、
該遮断周波数決定手段により決定される前記所定遮断周波数以下の周波数領域の前記周波数スペクトルに基づいて前記時系列データのフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出手段と、
を含むことを特徴とするフラクタル次元算出装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明はフラクタル次元算出装置に関し、特に、時系列データの周波数スペクトルから白色雑音を除去して高精度なフラクタル次元を算出することのできるフラクタル次元算出装置に関する。

【0002】

【従来の技術】航空機等の飛しょう体の直下の地表面がどの様な種類の地表面であるかを推測する場合、従来は航空機等に搭載する電波高度計を利用して反射波の強度を測定し、その強度に基づいて地表面の種類を識別していた。この方法は例えば、海面上や湖水面上では反射波が強く、森林地帯では逆に反射波が弱くなる等の性質を利用したものである。

【0003】
しかしながら、反射波の強度は、電波高度計の出力変動や飛しょう体の高度変動等、種々の条件によって同一の地表に対する場合でも大きく変動する。また、互いに異なる種類の地表が、ほぼ同程度の反射波の強さを持つこともしばしばある。従って、反射波の強さだけからでは地表を正確に識別することが困難であり、さらに何か別の情報(パラメータ)によって、地表識別の識別度を向上させる必要がある。

【0004】
この点、特開平8-278366号公報に係る地表識別装置では、地表面からの反射波の強度のゆらぎ(fluctuation)の分散(dispersion)が該地表面の種類によって異なることを利用し、地表識別の精度向上を図っている。かかる技術によれば、反射波の強度を用いたフラクタル次元解析を行うことにより、電波高度計の出力変動や飛しょう体の高度変動に起因する反射波強度の変化の影響を低減して、より確実に地表面の種類を識別することができる。

【0005】
この従来技術では、所定のサンプリング周期Δt毎に反射波の強度データを取得し、それを時系列データX[j]とするとともに、それが予め定めた所定数N個に達したときに、それら時系列データX[j]の各時刻jでの変位Z[j](=X[j]-X[j-1])の集合をデータ集合ΣZとしている。そして、データ集合ΣZの要素のうち絶対値がZp以上のものが、例えばn個存在する場合、次式(1)の関係を仮定してフラクタル次元を算出している。

【0006】

【数1】P(=n/N)∝Zp-D … (1)
ここで、Pはデータ集合ΣZの各要素の絶対値がZp以上である確率を表し、Dはフラクタル次元を表している。

【0007】
具体的には、上式の両辺の対数をとると、
【数2】logP∝-DlogZp … (2)
となることから、図4に示すように両対数グラフの両軸にPとZpをプロットし、その傾きをフラクタル次元Dとして算出している。

【0008】
その他、等価な処理として、時系列データX[j]にFFT(高速フーリエ変換)を施して得られる周波数スペクトルを、図5に示すようにして両対数グラフに表し、その包絡線(エンベロープ)形状に基づいてフラクタル次元Dを算出する方法もある。

【0009】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来技術に係るフラクタル次元解析では、雑音成分の分離/除去を十分にすることができなかったため、高精度にフラクタル次元を算出することができないという問題があった。すなわち、図5において周波数が高い領域Bは白色雑音であると考えられ、かかる周波数領域をフラクタル次元Dの算出の基礎とすれば計算精度は著しく劣化する。このため、例えば同図において周波数領域Bをフラクタル次元の計算の基礎から外し、周波数領域Aのみに基づいてフラクタル次元を高精度に算出することが望ましい。

【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、時系列データに含まれる雑音成分の影響を除去して高精度に該時系列データのフラクタル次元を算出することのできるフラクタル次元算出装置を提供することにある。

【0011】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係るフラクタル次元算出装置は、時系列データの周波数スペクトルを算出する周波数スペクトル算出手段と、前記周波数スペクトルのうち所定遮断周波数を越える周波数領域が白色雑音であるか否かを判断する白色検定手段と、前記白色検定手段により前記周波数領域が白色雑音であると判断されるよう前記所定遮断周波数を決定する遮断周波数決定手段と、該遮断周波数決定手段により決定される前記所定遮断周波数以下の周波数領域の前記周波数スペクトルに基づいて前記時系列データのフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出手段と、を含むことを特徴とする。

【0012】
本発明では、前記遮断周波数決定手段により白色雑音の影響を除去するよう遮断周波数が決定され、前記フラクタル次元算出手段により、その遮断周波数以下の周波数領域の前記周波数スペクトルに基づいて前記時系列データのフラクタル次元が算出される。このため、時系列データに含まれる雑音成分の影響を除去して高精度に該時系列データのフラクタル次元を算出することができる。

【0013】

【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。

【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るフラクタル次元算出装置の構成を示す図である。同図に示すフラクタル次元算出装置12は航空機等の飛しょう体に搭載されるものであって、電波高度計1を含んで構成されている。電波高度計1は、地表に向けて飛しょう体の底部に取り付けられた送受信アンテナを備えており、該送受信アンテナより地表面に向けて所定強度の電波を放射するとともに、地表面からの反射波を受信し、該反射波の信号強度を地表面の散乱係数として出力する。ここでは、この散乱係数の出力を時系列データX[j]として、フラクタル次元算出の基礎とする。算出されたフラクタル次元は、上述した従来技術に係る地表識別装置と同様、地表面の識別に用いられる。

【0015】
さらに、電波高度計1は、上記送受信アンテナから地表面に向けてパルス電波を放射するとともに地表面からの反射波を受信し、放射時刻と受信時刻との差に基づいて飛しょう体の高度を算出し、それを他の時系列データX’[j]として出力する。この時系列データX’[j]もフラクタル次元算出の対象とされ、それが地表面の識別処理に供される。ここでは、フラクタル次元算出の対象として電波高度計1の出力を用いるが、その他にも、時系列データを出力する種々の装置を電波高度計1の代わりに用いることができる。

【0016】
図2は、時系列データX[j]の一例を示す図である。同図に示すように、電波高度計1から出力される時系列データX[j]の値は、時刻jにおける電波高度計1の出力であり、ある程度の乱雑さを持って推移している。この乱雑さは、送受信される電波自体が有するゆらぎと、地表面における反射の不均一性、主として地表面の不均一性等に起因している。

【0017】
時系列データX[j]はFFT3と差分回路6に供給され、そこで連続するN個が演算対象とされる。すなわち、FFT3では時間的に連続するN個の時系列データX[j](例えばj=1~N)を高速フーリエ変換し、図3に示す周波数スペクトルデータを得る。また、差分回路6では時系列データX[j]の差分T[j]を次式に従って算出する。

【0018】

【数3】
T[j]=X[j]-X[j-1] … (3)
FFT3の出力である周波数スペクトルデータは遮断周波数検出器4に供給されている。ここで遮断周波数検出器4は、図3に示す周波数スペクトルデータにおいて、フラクタル次元算出の対象とすべき周波数領域Aと白色雑音の周波数領域Bとを分ける遮断周波数fcを検出する。すなわち、遮断周波数fcは白色領域と有色領域との境界に当たる周波数である。かかる遮断周波数fcの算出は公知技術により行えばよい。例えば、FFT3の出力がN0個のデータ集合{f}からなり、それが、遮断周波数fcよりも低い周波数領域AのNs個のデータ集合{fc}と、遮断周波数fcよりも高い周波数領域Bの(N0-Ns)個のデータ集合{{f}-{fc}}とに分けられるとすると、データ集合{fc}の平均傾きと、データ集合{{f}-{fc}}の平均傾きと、が所定関係となる等の条件により遮断周波数fcを求めることができる。各データ集合の平均傾きは、例えば最小二乗法により求めればよい。検出された遮断周波数fcはLPF(ローパスフィルタ)7に供給され、さらに遮断周波数検出器4はFFT3の出力のうち遮断周波数fcよりも低い周波数領域のスペクトルデータを後段のフラクタル次元算出器5に供給する。

【0019】
LPF7には遮断周波数fcとともに差分回路6の出力である差分T[j]が入力されている。LPF7ではシリアルに入力される差分T[j]に対し、遮断周波数fc以上の周波数成分をカットするようフィルタを施す。これにより、LPF7の出力は有色性を有し(信号成分を含む)、白色雑音を(ある程度)除去したものとなる。逆フラクタルフィルタ8はLPF7の出力に対して所定伝達関数を施して白色化を試みる。この伝達関数は、例えば学習により予め用意されるものである。

【0020】
白色検定部9では、逆フラクタルフィルタ8でのフィルタ結果に基づいて白色検定を行う。例えば、公知技術である「残差の白色性の検定」を数値計算に適した形にアレンジして利用する。このアレンジも周知技術を利用すればよい。白色検定部9では検定結果が真、すなわち逆フラクタルフィルタ8の出力が白色雑音であると判断すると、フラクタル次元算出器5に対してフラクタル次元の算出及びその出力を指示する信号(真信号)を送出する。一方、検定結果が偽、すなわち逆フラクタルフィルタ8の出力に有色性が認められると判断すると、遮断周波数検出器4に対して遮断周波数fcの再設定を要求する信号(偽信号)を送出する。遮断周波数検出器4では、例えば内部パラメータを変更し、或いは徐々に遮断周波数fcの値を小さくするなどして遮断周波数fcを再計算し、それをLPF7に再供給する。

【0021】
一方、フラクタル次元算出器5では、白色検定部9から検定結果が真信号を受け取ると、遮断周波数検出器4から出力される、遮断周波数fcよりも低い周波数領域のスペクトルデータに基づき、フラクタル次元を算出する。例えば、図3における周波数領域Aのデータ群の傾きがフラクタル次元Dと一致するので、データ集合{fc}の平均傾きを、最小二乗法(LSM,Least Mean Square)等を用いて算出し、それをフラクタル次元Dとすればよい。このフラクタル次元Dは出力端子10から出力され、図示しない後段の地表識別装置での地表識別処理に供される。

【0022】
以上説明したフラクタル次元算出装置12によれば、差分回路6、LPF7、逆フラクタルフィルタ8、及び白色検定部9にて、FFT3から出力される周波数スペクトルのうち遮断周波数fcを越える周波数領域が白色雑音であるか否かが判断される。そして、白色検定部9により真信号が送出されるまで遮断周波数検出器4での遮断周波数fcの算出が繰り返され、正確な遮断周波数fcが決定される。そして、その遮断周波数fcよりも高い周波数領域のデータがフラクタル次元算出器5での計算の基礎から外されるため、白色雑音の影響を排して高精度にフラクタル次元を算出することができる。

【0023】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、また、以上説明したフラクタル次元算出装置12も種々の変形実施が可能である。例えば以上の説明では、フラクタル次元算出装置12を飛しょう体に搭載して地表識別処理の用に供したが、その他、時系列データのフラクタル次元を算出することを必要とする全ての装置に利用可能である。また、遮断周波数検出器4、フラクタル次元算出器5、白色検定部9等のフラクタル次元算出装置12の各部の処理は、以上説明した内容に限定されず、種々の技術を利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4