TOP > 国内特許検索 > 熱型赤外線センサの製造方法 > 明細書

明細書 :熱型赤外線センサの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3236860号 (P3236860)
公開番号 特開平10-132653 (P1998-132653A)
登録日 平成13年10月5日(2001.10.5)
発行日 平成13年12月10日(2001.12.10)
公開日 平成10年5月22日(1998.5.22)
発明の名称または考案の名称 熱型赤外線センサの製造方法
国際特許分類 G01J  1/02      
G01J  5/02      
FI G01J 1/02 C
G01J 5/02
請求項の数または発明の数 8
全頁数 5
出願番号 特願平08-286681 (P1996-286681)
出願日 平成8年10月29日(1996.10.29)
審査請求日 平成8年10月29日(1996.10.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】和田 英男
【氏名】長嶋 満宏
【氏名】佐々木 得人
【氏名】小田 直樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100077838、【弁理士】、【氏名又は名称】池田 憲保
審査官 【審査官】藤原 伸二
参考文献・文献 特開 平9-257565(JP,A)
特開 平9-145481(JP,A)
特開 平8-128889(JP,A)
特開 平8-105794(JP,A)
調査した分野 G01J 1/02
G01J 5/02
G01J 5/20 - 5/26
H01L 31/00 - 31/02
H01L 31/08
H01L 31/18
H01L 37/00 - 37/02
H01C 7/02 - 7/22
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも金属よりなるボロメータ材料膜の形成と加工を行い、該ボロメータ材料膜の上に赤外線吸収膜を含む被膜が形成された感熱部を形成した後に、水素ガスを含む還元雰囲気中における水素ガスの気圧、流量を選択する工程と、当該還元雰囲気で熱処理を行うことによって前記被膜で覆われたボロメータ材料膜の抵抗温度係数を大きくし、これによって、感度を改善する工程を有することを特徴とする熱型赤外線センサの製造方法。

【請求項2】
前記金属としてチタン(Ti)を使用することを特徴とする請求項1記載の熱型赤外線センサの製造方法。

【請求項3】
前記熱処理を350~400℃で行うことを特徴とする請求項2記載の熱型赤外線センサの製造方法。

【請求項4】
少なくとも金属酸化物よりなるボロメータ材料膜の形成と加工を行い、該ボロメータ材料膜の上外線吸収膜を含む被膜が形成された感熱部を形成した後に、水素ガスを含む還元雰囲気中における水素ガスの気圧、流量を変化させる工程と、当該還元雰囲気で熱処理を行うことにより、前記被膜によって覆われたボロメータ材料膜の抵抗温度係数を保ったまま比抵抗のみを化させる工程とを有することを特徴とする熱型赤外線センサの製造方法。

【請求項5】
前記金属酸化物として酸化バナジウムを用いることを特徴とする請求項4記載の熱型赤外線センサの製造方法。

【請求項6】
前記熱処理を350~450℃で行うことを特徴とする請求項5記載の熱型赤外線センサの製造方法。

【請求項7】
真空排気された容器にアルゴンと水素混合ガスよりなる還元性ガスを導入することによって還元性雰囲気とすることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の熱型赤外線センサの製造方法。

【請求項8】
前記混合ガス中の水素濃度が2~5%であることを特徴とする請求項7記載の熱型赤外線センサの製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、金属膜または金属酸化膜を用いた熱型赤外線センサの製造方法に関する。

【0002】

【従来の技術】熱型赤外線センサのボロメータ材料としては、白金等の金属薄膜、酸化バナジウム等の金属酸化膜を用いることが知られている。

【0003】
例えば、センサーズ・アンド・アクチュエーターズ(Shie and Weng,Sensors and Actuators A33(1992)p183)では、図2(a)及び(b)に示すように、ヒートシンクであるSi基板10に空間13を形成してこの空間13上に梁8を設け、この梁8に感熱部9が設けられたボロメータ型赤外線アレイセンサが提案されている。この構造では、Si基板から熱的に離れた位置に感熱部9が設けられている。ここで、感熱部9はボロメータ材料によって形成され、且つ、バイアス電極も兼ねた白金電極11とNiCr赤外線吸収膜12で構成されている。

【0004】
ところで、このようなボロメータ型赤外線センサにおいて、上記ボロメータ材料として酸化バナジウムを用いる場合、比抵抗の制御が不可欠である。すなわち、バナジウムの原子価数が4~5までの間に多数の酸化物結晶相が存在するため、比抵抗が結晶相に応じて変化するためである。この制御方法として、ジョーゲンセン、リー等によるソーラー・エナジー・マテリアルズ14巻205頁1986年(Jorgenson and Lee,Solar Energy Materials 14(1986)p205)にNb、Ta、W、Mo等の金属不純物元素をドーピングすることによる制御方法が開示されている。

【0005】

【発明が解決しようとする課題】ボロメータ材料のうち、白金は酸化されにくいという利点を持つ反面、加工性に乏しく、Si-IC製造工程では一般に使われていない金属であるため、白金に代わる金属材料が望まれていた。

【0006】
また、金属酸化膜の場合は、薄膜形成手法のゾルゲル法、スパッタ法、化学堆積法などでの不純物ドーピング量の制御が困難であるため、前記の制御方法では十分な比抵抗の制御ができないという問題があった。また、ドーピング量の増加と共に抵抗温度係数が小さくなってしまうという問題もあった。更に、これらボロメータ材料の膜形成・加工を行った後、少なくとも保護膜ないし赤外線吸収膜を被せるまでの工程期間でボロメータ材料自身の特性が劣化するという問題があった。

【0007】
本発明の目的は、ボロメータ材料を熱型赤外線センサに適用する際に生じる問題を解決できる製造方法を提供することにある。

【0008】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、白金に代わるボロメータ材料として、熱伝導率が小さく、Si-IC製造工程に良く用いられている金属材料のうちTiをボロメータ材料として使用することを試みた。しかし、Tiは化学的に活性で、Ti成膜後の加工や保護膜形成工程等で酸化されてしまい、ボロメータ材料として使用するのに重要なファクターである抵抗温度係数が低下し、感度が落ちてしまうという問題があることがわかった。しかし、感熱部を形成した後に還元処理を行うことで抵抗温度係数をほぼもとの値に戻すことができることを見いだした。加えてこの方法は、従来の酸化バナジウム等の金属酸化物材料をボロメータ材料として用いた場合には抵抗温度係数を保ったまま比抵抗を線形的に制御することが可能であることが認められた。

【0009】
すなわち、本発明の熱型赤外線センサの製造方法は、従来と同様な方法によって少なくとも金属もしくは金属酸化物よりなるボロメータ材料と、赤外線吸収膜とを備えた感熱部を形成した後に、水素ガスを含む還元性雰囲気中で熱処理を行う工程を有することを特徴としている。還元性雰囲気は、真空排気された容器にアルゴンと水素混合ガスよりなる還元性ガスを導入することや、薄膜を形成したウェハを常圧の拡散炉に置き、水素ガスよりなる還元性ガスを一定量流すことによって得ることが可能である。

【0010】
この時、熱処理温度は、Tiの場合350~400℃で水素ガス中で熱処理を行うことで短時間で抵抗温度係数を本来の値である0.2%/℃以上にすることが可能となる。

【0011】
また、酸化バナジウムは350~450℃程度で熱処理を行うことで抵抗値が0.002~0.5Ωcmの酸化バナジウム膜を得ることができる。また、熱処理を行う雰囲気は還元性の雰囲気であればよいが、水素を系内に2~5%程度含むことがボロメータ材料との反応が促進されるために好ましい。

【0012】
なお、ボロメータ材料の成膜方法は適宜最適な方法(ゾルゲル法、スパッタ法、化学堆積法、パルスレーザーアブレーション法等)を選択することができる。

【0013】

【発明の実施の形態】以下、本発明による熱型赤外線センサの製造方法についてより具体的に説明する。

【0014】
(実施の形態1)図2(a)及び(b)のような構造の熱型赤外線センサ素子を、センサ材料、即ち、ボロメータ材料として膜厚500オングストローム(以下、Aと略記する)のTi薄膜を用いて形成した。ここでこの素子を単体で、もしくは同素子が一次元もしくは二次元に配列されたアレイセンサを形成した後、センサを形成した試料ウェハ1を試料ホルダ2に図1(a)のようにセットし、真空容器に入れて10-6Torr以下の圧力まで真空排気した後、水素ガスを0.25気圧導入した。

【0015】
次に、ウェハ1をヒータ5によって400℃に加熱し、24時間熱処理を行った。その結果、還元処理前のTi薄膜の抵抗温度係数0.07%/℃が、3倍の0.21%/℃に向上した。以後、Ti薄膜は真空容器内に封止され、赤外線センサと構成した。このようにして得られた熱型赤外線センサは3倍の感度を有していた。

【0016】
(実施の形態2)図1(b)に示すように熱型赤外線センサのウェハ1を試料ホルダ2に搭載し、拡散炉の石英管6の中に設置する。同拡散炉はヒータ5により予め400℃に昇温されており、水素ガス7を定常的に毎分12リットル流しておく。センサ材料として実施の形態1と同様な500AのTi薄膜を用いた。24時間の熱処理後、処理前のTi薄膜の抵抗温度係数0.07%/℃が約4倍の0.3%/℃に改善された。以後、実施の形態1と同様に赤外線センサを構成したところ、センサの感度が4倍に向上した。

【0017】
(実施の形態3)バナジウムを含むゾル液を使用ウェハ1上に滴下し、ゾルゲル法によって成膜し、これを大気中で熱処理することによって膜厚100nmの酸化バナジウム膜を形成した。図1(a)に示すようにこの試料ウェハ1を使用ホルダ2にセットし、真空容器3に入れて10-6Torr以下の圧力まで真空排気した後、水素を含む雰囲気としてアルゴンと水素混合ガスを導入した。水素濃度は5%程度とした。封入時の圧力を0.25~0.5気圧の範囲で変化させ、処理温度400℃で8時間の熱処理を行った。その結果、図3(a)に示すように、比抵抗を封入時の圧力に比例して0.17~0.4Ωcmの間で変化させることができた。

【0018】
また、抵抗温度係数は図3(b)に示すように-1.8~-2.0%/Kと圧力にほとんど無関係で一定とすることができた。また、本発明により還元された膜4価バナジウムのVO2 よりも酸素がわずかに少ない、(001)に配向した数1式であらわされるような結晶相を有していた。

【0019】

【数1】
JP0003236860B2_000002t.gifこの結果をX線回折で調べた結果を図5に示す。この相は半導体-金属相転移が100℃以上と高く、極めて安定であった。このように、抵抗温度係数に影響を与えることなく、膜の比抵抗を制御することができた。

【0020】
(実施の形態4)金属酸化膜として酸化バナジウム膜が形成された試料ウェハ1を図1(b)に示すように、試料ホルダ2に設置し、拡散炉の石英管6内に設置した。同拡散炉はヒータ5により予め400℃に昇温されており、水素ガス7が定常的に流されている。水素量を変化させることにより還元力の制御が可能となる。図4(a)に示すように、水素流量を毎分0.2~2.0リットルまで変化させることにより、比抵抗は0.12~0.3Ωcmの範囲で制御することができた。また、図4(b)に示すように抵抗温度係数は水素流量に無関係に-2.2%/Kで一定とすることができた。

【0021】
また本発明の製造方法により膜の結晶相は実施の形態3と4で示した図5の4価のVO2 よりも酸素がわずかに少ない数2式の結晶相で構成されていた。

【0022】

【数2】
JP0003236860B2_000003t.gifこの相は、半導体-金属相転移が100℃以上と高く、極めて安定であった。

【0023】

【発明の効果】以上のように、本発明による熱型赤外線センサの製造方法によれば、プロセスが終了した後に水素ガスを含む還元性雰囲気中で熱処理を行うことによって、金属または金属酸化膜の抵抗温度係数として所望の値を得ることができるので、ボロメータ型赤外線センサの感度を数倍向上することが可能となる。また、金属酸化膜の場合には、容易に同膜の比抵抗の制御が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4