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明細書 :円筒形ハイドロホン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3030428号 (P3030428)
公開番号 特開平10-210589 (P1998-210589A)
登録日 平成12年2月10日(2000.2.10)
発行日 平成12年4月10日(2000.4.10)
公開日 平成10年8月7日(1998.8.7)
発明の名称または考案の名称 円筒形ハイドロホン
国際特許分類 H04R  1/44      
G01S  3/801     
G01S  7/521     
H04R 17/00      
FI H04R 1/44 330Y
G01S 3/801
H04R 17/00
G01S 7/52
請求項の数または発明の数 1
全頁数 5
出願番号 特願平09-008629 (P1997-008629)
出願日 平成9年1月21日(1997.1.21)
審査請求日 平成9年1月21日(1997.1.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】三上 宏幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100067323、【弁理士】、【氏名又は名称】西村 教光
審査官 【審査官】松澤 福三郎
参考文献・文献 特開 平5-300584(JP,A)
特開 昭59-42464(JP,A)
特開 平4-142485(JP,A)
特公 昭49-1223(JP,B1)
特許請求の範囲 【請求項1】
ハイドロホンの円筒受感部として、軽量で硬質な合成樹脂製の円筒基盤を補強材とし、その内周面上及び外周面上に、水中音受波用の電気音響変換素子である可撓性を有する高分子圧電材を装着した円筒形ハイドロホンにおいて、
前記構造の2個の円筒受感部をそなえ、該2個の円筒受感部をその対向する一端で環状ベースに取りつけ、該2個の円筒受感部の内周面上及び外周面上に、それぞれ水中音受波用の電気音響変換素子である可撓性を有するシート状の高分子圧電材を装着し、この4個のシート状の高分子圧電材を直列に接続するとともに、それらを包囲する籠形のケースを設け、該ケースを音響通過の良好なる発泡体でブーツ内に保持し、該ケース及びブーツ内に充填した液体を音響媒体として、上記ブーツ外からの音波を上記高分子圧電材に伝達させ、音波により生じた機械的なひずみを電気的出力に変換して導出するよう構成したことを特徴とする円筒形ハイドロホン。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、えい航式パッシブソーナー用受波器、可変深度ソーナー用受波器、各種のソーナー試験用受波器として利用される円筒形ハイドロホンに関するものである。

【0002】

【従来の技術】図1に、圧電磁器振動子を用いた従来の円筒形ハイドロホンの一例を示す。同図の円筒形ハイロドホンは、ベース2とワッシャ3aで円筒形圧電磁器振動子1a、また、ベース2とワッシャ3bで円筒形圧電磁器振動子1bをそれぞれ挟むようにして、金属棒からなるシャフト4を貫通させ、その両端部にて雄ネジ5a,5bで締めつけ固定している。さらに、上記ベース2と取付座8は、4本の金属棒からなる支持棒7a,7b、及び図示していない7c,7dによって吊持されており、シリコン油等の充填液11を充填したブーツ10に収納した構造であって、円筒形圧電磁器振動子1a,1bからの電気的出力は、リード線14と貫通端子6a,6b,6c,6dを経由してブーツ10と同様に水密性を維持するキャップ12を貫通するケーブル13に接続してある。なお、円筒形圧電磁器振動子1a,1bの内周面は空気であり、16は充填剤、15は気密保持のための“0”リングである。このような構造の円筒形ハイドロホンにおいて、外部よりの到来音波はケース10、および充填液11を透過し円筒形圧電磁器振動子1a,1bにより捕捉され、音波により生じた機械的なひずみが電気的出力に変換され、ケーブル13を介して送出される。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の円筒形ハイドロホンでは、ハイドロホンを計測船等から吊下して音響計測する場合、船の動揺や水流によるケーブル振動等が発生し、全体に与えられた振動は、取付座8から支持棒7a,7b,7c,7dとベース2を経て円筒形圧電磁器振動子1a,1bに伝達され、振動に基づく雑音出力を生じてS/Nを低下させる結果となる。また、前記の構造にあっては、円筒形圧電磁器振動子の組立部全体として複雑な共振を生じ、それが音響信号に重畳することによって、極めて好ましくない周波数特性のハイドロホンになる。このような組立部全体の振動による共振特性を有する場合には、水温や水圧によっても特性が著しく変わるため、計測のつど補正や補正のための余分な計測作業と共に煩雑で細かい計算作業が発生する。しかし、複合による影響を個々の要因毎に分離することが至難であり、正確な補正を行うことは難しい。さらに、上記の従来の円筒形ハイドロホン各部の材質は、合成ゴム又は合成樹脂製のブーツ、キャップ、ゴム座及びチタン・ジルコン酸鉛系磁器振動子等の構成部品の他は、主として、黄銅とアルミ合金であり、このため、比較的大重量になり、それに伴って強度のある太いケーブルを使うはめになって、ますます重量増となり、持ち運びやケーブル捌き作業にそれだけ人手を余分に要する。特に、試験の目的によっては、ハイドロホンを水中に浮遊させて音響計測をする必要のある時もあるが、上記の材質の場合には、重量の点で浮遊ハイドロホンの実現が難しい。さらに、ハイドロホンの受波センサの材質が磁器のため、衝撃によりひび割れや破損の発生が起こりやすく、特に、船上から水中に吊下・揚収の際に動揺で舷側にぶち当てたり、甲板上に落下させたりした場合には、その都度、作動のチェックを行うのであるが、それに要する時間は、本来の計測すべき時間に食い込んでおり、計測効率を低下させている。しかも、船上では、感度校正装置がないので、正確な特性の確認には至らない。このために、不審の場合に備えて代替品を用意しているが、購入に要する費用も少なくない。

【0004】
本発明は、上述した従来の円筒形ハイドロホンの問題点を一挙に解決すべく、広範囲の周波数に渡って受波感度を平坦特性にすることができるように工夫したものであり、受波感度水圧特性を改善させ、堅牢型水中受波器を実現させ、さらに、受波感度を向上させ、加速度感度を低減させ、受波感度周波数特性を改善させる等の優れた特性を有する円筒形ハイドロホンを提供することを目的とするものである。

【0005】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、ハイドロホンの受波センサにおいて、軽量で硬質のポリ塩化ビニル円筒基盤を補強材として、その内周面と外周面上に電気音響変換素子として、軽量で可撓性を有するシート状の高分子圧電材(PVDF)を装着する。

【0006】
これを、図2の実施の形態を参照して説明すれば、本発明の円筒形ハイドロホンは、ハイドロホンの円筒受感部として、軽量で硬質な合成樹脂製の円筒基盤17a,17bを補強材とし、その内周面上及び外周面上に、水中音受波用の電気音響変換素子である可撓性を有する高分子圧電材18a,18b,18c,18dを装着したことを特徴としている。

【0007】
さらに、上記2個の円筒受感部をそなえ、該2個の円筒受感部をその対向する一端で環状ベース20に取りつけ、該2個の円筒受感部の内周面上及び外周面上に装着した上記高分子圧電材18a,18b,18c,18dを直列に接続するとともに、それらを包囲する籠形のケース21を設け、該ケース21を音響通過の良好なる発砲体19でブーツ10内に保持し、該ケース21及びブーツ10内に充填した液体を音響媒体として、上記ブーツ外からの音波を上記高分子圧電材に伝達させ、音波により生じた機械的なひずみを電気的出力に変換して導出するよう構成したことを特徴としている。

【0008】

【作用】ハイドロホンをプラットホームから吊下して水中音波を捕捉する場合、プラットホームの移動や水流等で、ハイドロホンが動揺し、加速度雑音が発生することがある。この加速度雑音が発生すると、電気音響変換素子にて受波される水中音波に重畳された形で上記加速度雑音が加わり、S/N(信号対雑音)を低下させる欠点があり、微弱音波の検出を困難にさせる。一般に、ハイドロホンにおける雑音出力電圧は音響雑音と加速度雑音の和で示される。ここで、音響雑音レベル(N:μPa)、受波感度(M0 :V/μPa)、加速度(A:G=重力加速度)、加速度感度(G0 :V/G)とすると雑音出力電圧(VN )は次の数1のようになる。

【0009】

【数1】
JP0003030428B2_000002t.gif【0010】の(S/N)E の向上のためには、式の分母の加速度感度(G0 )と受波感度(M0 )の比を大きくする事によって得られる。したがって、加速度感度(G0 )を低減し、受波感度(M0 )を高くすることによって、雑音出力電圧を低減させることができる。これによってS/Nが向上するため、微弱な信号音の検出が可能となる。

【0011】
そこで、上記従来の円筒形ハイドロホンでは、電気音響変換素子として2個の円筒形圧電磁器振動子を金属円板製のベースを介して互いにタンデムに連結し、上記ベースをケース内に支持棒と取付座で支持して、ブーツ内に充填した音響媒体である充填液を介してブーツ外の音波を上記円筒形圧電磁器振動子に伝達する時、円筒形圧電磁器振動子の軸方向の加速度雑音については、これを各円筒形圧電磁器振動子の振動から発生する信号で相殺するようにして、S/Nの低下を回避することがなされている。この場合、上記ベースはワッシャ及び金属棒からなるシャフトを介してブーツ内に機械的に支持されなければならず、そのために金属棒からなる支持棒などが装備されている。

【0012】
これに対し、本発明の円筒形PVDFハイドロホンの受波センサに適用している高分子圧電材を上記従来の圧電磁器と比較すると、主たる特徴としては、次のようになる。
(1)可撓性を有するので、他の物体に沿わせたり接着することが容易
(2)衝撃に強く、落としても割れない
(3)g(電圧出力)定数が大きいので、受波感度が高い
(4)密度は約1.9g/cm3 であり、比較的軽量のため加速度波感度が低いなお、ハイドロホンを作る場合には、高分子圧電材をそのまま使うことは出来ないので、水圧等に耐えうる何らかの補強材が必要であり、本発明の例では軽量で硬質のポリ塩化ビニル円筒を用いている。

【0013】
すなわち、受波センサは、2個の円筒受感部をそなえ、円筒受感部をその対向する一端で環状ベースに取りつけ質量中心点で支持する。また、軽量である高分子圧電材の加速度出力はかなり小さいが、さらに、各受感部の振動によって発生する信号で相殺するようにしてS/Nの低下を回避するとともに、それらを包囲する籠形のケースで構成し、器体等からの伝達振動の影響を回避するため、他の固体と直接触れないように該ケースを発砲体でブーツ内に保持し、該ケース及びブーツ内に充填した液体を音響媒体として、上記ブーツ外からの音波を上記高分子圧電材に伝達するよう構成するものである。

【0014】
このように、本発明は、ハイドロホンの受波センサにおいて、軽量で硬質のポリ塩化ビニル円筒基盤を補強材とし、その内周面と外周面上に電気音響変換素子として、軽量で可撓性を有するシート状の高分子圧電材を装着し、加速度感度の低減及び受波感度を向上させ、それによってS/Nを向上させるものである。

【0015】
受波感度の向上のためには、各圧電子が同等の受波感度で4個の圧電子の場合、これを直列接続する事によって受波感度を4倍とさせるものである。すなわち、受波感度(M0 )は
0 =M01+M02+M03+M04
となり、4倍の受波感度が得られる。高分子圧電材の加速度出力電圧はかなり小さいが、さらに、加速度感度の低減のために、受波センサには2個の円筒受感部をそなえ、円筒受感部をその対向する一端で環状ベースに取りつけ質量中心点で支持する。機械的振動によって各受感部に発生する信号で相殺するような電気的回路接続にして加速度出力電圧を抑制させて、S/Nの低下を回避するとともに、さらに、受感部を包囲する籠形ケースと共に振動を減衰させる効果もある発砲体内に埋納保持して受感部に伝わる加速度をさらに低減させる。従って、加速度出力は受感部の加速度出力電圧の相殺効果と発砲体による振動減衰効果により、加速度出力抑制効果は従来の受波器よりも大幅に改善される。水中用受波器としての特性を悪化させるのは、器体等からの振動の影響を受けるためであり、本発明の構造によれば、水中音の受感部は発砲体及び油内に浮いている状態にさせて、他の固体と直接触れることの無いようにしてある。受感部には器体の振動に基づく雑音出力が生じないので、広範囲に渡って平坦特性を有する広帯域の受波感度周波数特性になる。

【0016】
本発明のハイドロホンには、水圧によって変化するような遮音材等の空気を含む部材を用いていないこと、また、支持部材は無垢、受感部の内外面等全周に渡って水圧が均等に加わるので、従来品に比べて水圧による特性の変化は極めて小さい。本発明のハイドロホンの軽量化を図るために、各部材は合成ゴムまたは合成樹脂製であり、センサは比重約2.5の高分子圧電材であって、従来の圧電磁器振動子の比重約7.5に比して2.5と小さい上、非金属材料を用いて製作できるので極めて軽量である。このため、受波センサを長尺のホース等に市販品の絶縁油等と共に収納するだけで、水中浮遊ハイドロホンや中性浮力のハイドロホンが容易に実現できる。ハイドロホンの受波センサが衝撃によるひび割れや破損の発生が起こりにくい高分子圧電材であるから、軽量で作業の煩雑性の解消及びハイドロホンの破損や損傷の対策のための代替品の用意等も不必要である。

【0017】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を示す図2に基づいて説明する。2個の円筒受感部をそなえるため、軽量で硬質のポリ塩化ビニル円筒基盤17aの内周面に高分子圧電材(PVDF)18b,外周面に18aを装着、また、同様に17bの内周面に18d、18cをそれぞれ装着して円筒受感部とし、それらの円筒受感部をその対向する一端で軽金属製の環状ベース20に装着し、それらを包囲する籠形のケース21に挿入して、同ケース21と環状ベース20と円筒受感部を含めた質量中心点をネジ23a,23bで締結させてある。該ケース21を音響透過の良好なる発砲体19でブーツ10内に保持し、該ケース21及びブーツ10内に充填した充填液11を音響媒体として、上記ブーツ10外からの音波を上記高分子圧電材18a,18b,18c,18dに伝達する。音波によって生じた機械的ひずみが電気的出力に変換され、ケーブル13を介して送出される。

【0018】

【発明の効果】このように、本発明は、ハイドロホンの受波センサにおいて、軽量で硬質のポリ塩化ビニル円筒基盤を補強材とし、その内周面と外周面上に電気音響変換素子として、軽量で可撓性を有するシート状の高分子圧電材を装着し、加速度感度の低減及び受波感度を向上させ、それによってS/Nを向上させることができるもので、下記の優れた効果が得られる。
1.受波感度水圧特性の改善
本発明のハイドロホンには、従来品に比べて遮音材等の空気を含む部材がないこと、支持部材がむくで有ること、及び受波センサの高分子圧電材には均等な水圧が加わるので従来品に比べて水圧による特性の変化は極めて小さく、水圧に対し安定な特性が得られ、計測精度の向上が図れると共に計測深度毎の感度補正の手間が省ける。
2.堅牢型水中用受波器の実現
ハイドロホンの受波センサが高分子圧電材により、衝撃によるひび割れや破損の発生が起こりにくく、特に、船上から水中に吊下・揚収の際に動揺で舷側にぶち当てたり、甲板に落下させたりした場合においても破損の心配も無く、従来のように計測時間に食い込んでのチェックの必要も無く、作業の煩雑性の解消及びハイドロホンの破損や損傷の対策のための予備品用意等も不必要となる。

【0019】
3.受波感度の向上
4個の圧電子を直列接続する事により受波感度(M0 )は
0 =M01+M02+M03+M04
となり、各圧電子の受波感度が同じ場合には4倍の受波感度が得られる。
4.加速度感度の低減
発泡体4には振動を減衰させる効果もあり、受感部に伝わる加速度はかなり小さくなっているが、その加速度による出力をさらに抑制をする。すなわち、受波器全体に与えられた振動は、発泡体4によりかなり減衰されるが、ゼロにはならないので取付けネジ5を介して円筒形ベース2に伝わり、受感部には振動に基づく雑音出力が生じる。上下方向の振動の場合には、円筒形ベース2を中心に各圧電子は自己の質量により互いに逆方向の歪みを生ずる。従って、それぞれの出力は逆相になり、これを並列あるいは直列に接続する事により、互いに逆相の出力電圧は、ほとんど現れなくなる。従って、加速度出力は、発泡体による減衰効果と受感部の加速度出力電圧の相殺により、加速度出力抑制効果は従来の受波器よりも大幅に改善される。本発明によって、加速度出力が抑制され、かつ、受波感度が向上するので雑音出力電圧は大幅に改善される。以上のごとく、精度のより高い計測が可能になるほか、従来では計測が困難であった微弱音の検出が可能となるほか、S/Nが向上した水中用受波器が得られて、微弱な信号音が検出可能となる。
5.受波感度周波特性の改善
水中用受波器としての特性を悪化させるのは、器体等からの振動の影響を受けることであり、本発明の構造によれば、水中音の受感部は発泡体4及び油11内に浮いた状態になって、他の固体と直接触れることが無い。したがって、各高分子圧電材には器体の振動に基づく雑音出力が生じないので、平坦特性を有する広帯域の受波感度周波数特性が得られる。

【0020】
本発明の実施の形態の効果は下記のとおりである。
6.軽量型水中用受波器の実現
本発明のハイロドホン各部の材質は、合成ゴムまたは合成樹脂製のブーツ、キャップであり、センサは比重2.5の高分子圧電材であって、従来の圧電磁器振動子の比重7.5に比して小さく、極めて軽量である。このため、受波センサを長尺のホース等に市販品の絶縁油等と共に収納するだけで、水中浮遊ハイドロホンや中性浮力のハイドロホンが容易に実現できる。

【0021】
以上のように、本発明によれば、軽量で堅牢な受波感度周波数特性の良好な広帯域加速度抑制形とする円筒形PVDFハイドロホンを実現すると共に、経済性に効果があるほか、軽量化による利便性のメリットも大きい。
図面
【図1】
0
【図2】
1