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明細書 :クラッタ抑圧装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3145943号 (P3145943)
公開番号 特開平10-227851 (P1998-227851A)
登録日 平成13年1月5日(2001.1.5)
発行日 平成13年3月12日(2001.3.12)
公開日 平成10年8月25日(1998.8.25)
発明の名称または考案の名称 クラッタ抑圧装置
国際特許分類 G01S  7/285     
G01S 13/53      
FI G01S 7/285 Z
G01S 13/53
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願平09-033926 (P1997-033926)
出願日 平成9年2月18日(1997.2.18)
審査請求日 平成10年3月25日(1998.3.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
発明者または考案者 【氏名】溝上 収
【氏名】仲 功
【氏名】高橋 和之
【氏名】水谷 明義
個別代理人の代理人 【識別番号】100102439、【弁理士】、【氏名又は名称】宮田 金雄 (外2名)
審査官 【審査官】宮川 哲伸
参考文献・文献 特開 平5-203733(JP,A)
特開 平5-142339(JP,A)
特開 昭62-109553(JP,A)
調査した分野 G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
特許請求の範囲 【請求項1】
レーダ送信周波数から求まるドップラ周波数を中心に所定のドップラ範囲を設定し、このドップラ範囲内において電力スペクトルが最大値の周波数をクラッタピーク周波数とし、該クラッタピーク周波数を中所定のモーメント処理ゲートを設定し、このモーメント処理ゲート内でモーメント法を適用してクラッタ中心周波数を算出するクラッタ中心周波数算出部と、上記クラッタ中心周波数算出部で算出されたクラッタ中心周波数と、上記入力信号の電力スペクトルとによりクラッタのレベルを推定するクラッタレベル推定部と、予め記憶された複数の減衰量と、上記クラッタレベル推定部で推定されたクラッタレベルとを比較し、上記推定されたクラッタレベルに相当する減衰量に対応したフィルタ係数を選択するノッチフィルタ係数選択部と、上記ノッチフィルタ係数選択部で選択されたフィルタ係数により、ノッチフィルタのノッチが上記クラッタ中心周波数となるノッチフィルタ係数を発生するノッチフィルタ係数発生部と、上記ノッチフィルタ係数発生部で得られたノッチフィルタ係数を持つノッチフィルタにより、上記入力信号からクラッタを除去するフィルタ処理部と、を備えたことを特徴とするクラッタ抑圧装置。

【請求項2】
レーダ送信周波数から求まるドップラ周波数を中心に所定のドップラ範囲を設定し、このドップラ範囲内において電力スペクトルが最大値の周波数をクラッタピーク周波数とし、該クラッタピーク周波数を中所定のモーメント処理ゲートを設定し、このモーメント処理ゲート内でモーメント法を適用してクラッタ中心周波数を算出するクラッタ中心周波数算出部と、上記クラッタ中心周波数算出部で算出されたクラッタ中心周波数と、上記入力信号の電力スペクトルとによりモーメント法を適用してクラッタの帯域幅を推定するクラッタ帯域幅推定部と、予め記憶された複数の阻止帯域幅と、上記クラッタ帯域幅推定部で推定されたクラッタの帯域幅とを比較して、上記推定されたクラッタの帯域幅に相当する阻止帯域幅を選択し、該選択に対応したフィルタ係数を出力するノッチフィルタ係数選択部と、上記ノッチフィルタ係数選択部で選択されたフィルタ係数により、ノッチフィルタのノッチが上記クラッタ中心周波数となるノッチフィルタ係数を発生するノッチフィルタ係数発生部と、上記ノッチフィルタ係数発生部で得られたノッチフィルタ係数を持つノッチフィルタにより、上記入力信号からクラッタを除去するフィルタ処理部と、を備えたことを特徴とするクラッタ抑圧装置。

【請求項3】
入力信号の電力スペクトルより雑音レベルを算出する雑音レベル推定部と、別途算出されたクラッタレベルと、上記雑音レベル推定部で推定された雑音レベルとを比較するC/N比算出部と、上記算出されたC/N比算出部出力を所定のしきいと比較し、設定値より低い場合はクラッタ抑圧切、設定値より高い場合はクラッタ入の判定を行う抑圧処理判定部と、上記抑圧処理判定部が判定した上記クラッタ抑圧の入、切、の指示によりフィルタ処理後にクラッタの除去の入り切りを行うスイッチと、を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のクラッタ抑圧装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】この発明は、短波帯のレーダの信号処理におけるシークラッタのクラッタ抑圧処理に関するものである。

【0002】

【従来の技術】レーダにおいて地面等からの不要反射信号であるクラッタは、目標の検出に対し大きな障害となる。クラッタの抑圧に対しては、クラッタが静止物からの反射であり、クラッタのドップラ周波数がゼロであることが多いことから、反射信号のドップラ周波数で航空機等の移動目標と弁別、抑圧する処理が一般的である。図8は、例えばレーダ技術(吉田考監修、社団法人電子通信学会編)に記載の単一消去器を用いた従来技術のクラッタ抑圧装置を用いた移動目標指示装置(Moving Target Indicator;以下MTIという)の機能系統図である。図において、1は位相検波された入力信号である位相検波ビデオ信号、2は1サンプル毎に位相検波ビデオ信号1を遅延させる遅延回路(通常、遅延時間はレーダのパルス繰り返し周期に等しい)、3は現在の入力信号と1サンプル前の位相検波ビデオ信号1との差をとる減算回路、4は位相検波ビデオ信号1からクラッタを除去した出力信号である。

【0003】
従来の上記のように構成されたクラッタ抑圧装置の動作を説明する。位相検波ビデオ信号1は、減算回路3において、1サンプル前の位相検波ビデオ信号1が減算される。電波が移動目標から反射してくるとき、その反射波の周波数fはドップラ効果によって、次式(1)だけ偏移する。

【0004】

【数1】
JP0003145943B2_000002t.gif【0005】ここにcは光速度、vは目標の電波進行方向の分速度、fc は送信周波数を表す。一方、固定目標からの反射波(クラッタ)は、周波数偏移を受けない。従ってドップラ効果による周波数偏移、あるいはこれに対応する位相偏移を検出すれば、移動目標だけを検出することができる。パルスレーダにおいては、反射波を位相検波し、1周期だけの遅延を与え、次の周期の検波出力と逆極性にして加え合わせると固定目標からのクラッタは抑圧されることになる。簡単のため、入力の位相検波ビデオ信号1を、ドップラ各周波数をωd =2πfd として
1 =Asinωd t (2)
と表すと、1周期前の遅延回路2の出力は、遅延時間をTとして
2 =Asinωd (t-T) (3)
となる。これをベクトル表示にすれば次式(4)となる。従って、減算回路2の出力信号4は式(5)となる。

【0006】

【数2】
JP0003145943B2_000003t.gif【0007】これは遅延系をexp(-jωd t)なる伝送特性を持つ素子と考えることができる。いま、Zを式(6)とすると、遅延回路2と減算回路3で構成される消去器の伝送特性は式(7)となり、その速度レスポンスは式(8)で表され、この単一消去MTIの特性を図9に示す。

【0008】

【数3】
JP0003145943B2_000004t.gif【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来のクラッタ抑圧装置は、以上のように構成されているので、短波帯のレーダではクラッタのドップラ効果周波数がゼロでない、例えばBragg・lineとよばれるシークラッタを抑圧できないという課題があった。また、クラッタの電力スペクトルの形状に対してフィルタのカットオフ特性が緩慢なため、目標のドップラ周波数がクラッタのドップラ中心周波数の近傍に存在する場合は、クラッタとともに目標信号も抑圧されるという課題があった。

【0010】
この発明は上記の課題を解消するためになされたもので、ドップラ周波数がゼロでないクラッタでもその影響を抑圧し、また目標信号のドップラ周波数とクラッタのドップラ中心周波数が近い場合でも、クラッタ成分だけ抑圧するクラッタ抑圧装置を得ることを目的とする。

【0011】

【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係るクラッタ抑圧装置は、レーダ送信周波数から求まるドップラ周波数を中心に所定のドップラ範囲を設定し、このドップラ範囲内において電力スペクトルが最大値の周波数クラッタピーク周波数とし、該クラッタピーク周波数を中心所定のモーメント処理ゲートを設定し、このモーメント処理ゲート内でモーメント法を適用してクラッタ中心周波数を算出するクラッタ中心周波数算出部と、上記クラッタ中心周波数算出部で算出されたクラッタ中心周波数と、上記入力信号の電力スペクトルとによりクラッタのレベルを推定するクラッタレベル推定部と、予め記憶された複数の減衰量と、上記クラッタレベル推定部で推定されたクラッタレベルとを比較し、上記推定されたクラッタレベルに相当する減衰量に対応したフィルタ係数を選択するノッチフィルタ係数選択部と、上記ノッチフィルタ係数選択部で選択されたフィルタ係数により、ノッチフィルタのノッチが上記クラッタ中心周波数となるノッチフィルタ係数を発生するノッチフィルタ係数発生部と、上記ノッチフィルタ係数発生部で得られたノッチフィルタ係数を持つノッチフィルタにより、上記入力信号からクラッタを除去するフィルタ処理部と、を備えたことを特徴とする。

【0012】
または、レーダ送信周波数から求まるドップラ周波数を中心に所定のドップラ範囲を設定し、このドップラ範囲内において電力スペクトルが最大値の周波数をクラッタピーク周波数とし、該クラッタピーク周波数を中心所定のモーメント処理ゲートを設定し、このモーメント処理ゲート内でモーメント法を適用してクラッタ中心周波数を算出するクラッタ中心周波数算出部と、上記クラッタ中心周波数算出部で算出されたクラッタ中心周波数と、上記入力信号の電力スペクトルとによりモーメント法を適用してクラッタの帯域幅を推定するクラッタ帯域幅推定部と、予め記憶された複数の阻止帯域幅と、上記クラッタ帯域幅推定部で推定されたクラッタの帯域幅とを比較して、上記推定されたクラッタの帯域幅に相当する阻止帯域幅を選択し、該選択に対応したフィルタ係数を出力するノッチフィルタ係数選択部と、上記ノッチフィルタ係数選択部で選択されたフィルタ係数により、ノッチフィルタのノッチが上記クラッタ中心周波数となるノッチフィルタ係数を発生するノッチフィルタ係数発生部と、上記ノッチフィルタ係数発生部で得られたノッチフィルタ係数を持つノッチフィルタにより、上記入力信号からクラッタを除去するフィルタ処理部と、を備えたことを特徴とする。

【0013】
また更に、入力信号の電力スペクトルより雑音レベルを算出する雑音レベル推定部と、別途算出されたクラッタレベルと、上記雑音レベル推定部で推定された雑音レベルとを比較するC/N比算出部と、上記算出されたC/N比算出部出力を所定のしきいと比較し、設定値より低い場合はクラッタ抑圧切、設定値より高い場合はクラッタ抑圧入の判定を行う抑圧処理判定部と、上記抑圧処理判定部が判定した上記クラッタ抑圧の入、切、の指示によりフィルタ処理後にクラッタの除去の入り切りを行うスイッチと、を備えたことを特徴とする。

【0014】


【0015】


【0016】


【0017】

【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1におけるクラッタ抑圧装置のブロック図である。図において、5はレーダ送信周波数、6はレーダ送信周波数情報からシークラッタの中心周波数算出式によりクラッタの中心周波数を算出するクラッタ中心周波数算出部(a)、7はクラッタ中心周波数と予め設定したノッチフィルタ係数とから、ノッチフィルタのノッチがクラッタの中心となるフィルタの係数を算出するノッチフィルタ係数発生部(a)、8は位相検波ビデオ信号1に対し、算出されたフィルタ係数から構成されるフィルタによりクラッタを除去するフィルタ処理部である。1、4の入力信号は従来装置と同等である。

【0018】
上記の構成のクラッタ抑圧装置の動作を説明する。まず、クラッタ中心周波数算出部(a)6におけるクラッタの中心周波数の算出方法を説明する。図2は短波帯のレーダ装置において海面からの反射信号に含まれるシークラッタのドップラスペクトルを説明する図である。図においてドップラスペクトルの正負に顕著なピーク23が見られる。これはBragg・lineと呼ばれるシークラッタである。2つのピーク23のドップラ周波数fdは、次式(9)であることが知られている。
±√{(g・f)/(π・c)} (9)
f:レーダの送信周波数
g:重力加速度
π:円周率
c:光速
従ってレーダの送信周波数5によりBragg・lineのピーク23のドップラ周波数は一意に決まる。クラッタ中心周波数算出部(a)6はドップラ周波数fd をクラッタの中心周波数fdcとして次式(10)のように出力する。fdc=fd (10)

【0019】
ノッチフィルタ係数発生部(a)7は、入力されるクラッタ中心周波数と、予め設定したノッチフィルタ係数とからフィルタ処理部8に出力するノッチフィルタ係数を算出する。まず、クラッタを抑圧するノッチフィルタの係数を予め設計しておく。例えば文献「DONALD E.BARRICK,JAMES M.HEADRICK,ROBERT W.BOGLE,DOUGLASS D.CROMBIE(1977),Sea Backscatter at HF:Interpretation and Utilization of theEcho」からクラッタの形状はガウス分布で近似でき、指定される減衰量及び阻止帯域幅よりノッチフィルタの係数を設計できる。この設計したノッチフィルタ係数はノッチフィルタ係数発生部(a)7に予め記憶しておく。

【0020】
このノッチフィルタ係数はノッチの中心が周波数0Hzにあるため、そのまま係数をノッチフィルタの荷重値として用いるとクラッタ中心周波数からはずれてクラッタを抑圧できない。そこで予め設定したノッチフィルタ係数とクラッタ中心周波数から次式により、ノッチフィルタのノッチがクラッタ中心周波数fdcとなるようにノッチフィルタ係数を調整する。

【0021】

【数4】
JP0003145943B2_000005t.gif【0022】ここで、h0 (i)は予め設定したノッチフィルタ係数、Lはノッチフィルタの段数を表す。上記のノッチフィルタ係数h(i)はフィルタ処理部8へ出力される。フィルタ処理部8ではノッチフィルタ係数h(i)を用いて次式のディジタルフィルタ処理を行い、次のように位相検波ビデオ信号からクラッタ信号を除去する。
Z(i)=H(i)・S(i) (12)
ここで、H(i)はノッチフィルタ係数h(i)を高速フーリエ変換した結果、S(i)は位相検波ビデオ信号s(i)を高速フーリエ変換した結果を表す。フィルタ処理部8はこのZ(i)を逆高速フーリエ変換し、クラッタ信号だけを除去した信号として出力する。このように従来技術では抑圧できなかったドップラ周波数がゼロでないクラッタを抑圧できる。また、単一消去器MTIではクラッタの電力スペクトルの形状よりカットオフ特性が緩慢なため、目標のドップラ周波数がクラッタの中心周波数の近傍に存在する場合は目標信号も抑圧する可能性があるが、ノッチフィルタではクラッタの電力スペクトルの形状にあったフィルタを形成できるため、目標信号の抑圧を極力少なくしてクラッタを抑圧できる。

【0023】
実施の形態2.次に、クラッタのレベルの変動によるクラッタの消え残りや過剰抑圧を押さえたクラッタ抑圧装置を説明する。図3は、この発明の本実施の形態におけるクラッタ抑圧装置のブロック図である。図において、図1と同等要素は同一符号を付してその説明を省略する。新規な要素として、9は位相検波ビデオ信号1の電力スペクトルを算出する電力スペクトル算出部、10は電力スペクトルからクラッタのレベルを算出するクラッタレベル推定部、11はクラッタのレベルに相当する減衰量となるようなフィルタ係数を出力するノッチフィルタ係数選択部(a)である。12はクラッタ中心周波数とフィルタ係数とからノッチフィルタのノッチがクラッタの中心となるフィルタ係数を算出するノッチフィルタ係数発生部(b)である。

【0024】
上記構成の装置の動作を説明する。図3において、電力スペクトル算出部9は位相検波ビデオ信号1から高速フーリエ変換等の手法により入力信号の電力スペクトルを算出する。クラッタレベル推定部10はクラッタ中心周波数算出部(a)6より算出されたクラッタの中心周波数における電力スペクトルの値をクラッタのレベルとする。クラッタレベルは海面の状況により変動するため実施の形態1で予め推定した減衰量ではクラッタの過剰抑圧または、クラッタの消え残りを生じるおそれがある。フィルタ係数選択部(a)11はクラッタレベルと予め設定した複数の減衰量とを比較し、クラッタレベルに相当する減衰量を選択してその減衰量に対応したフィルタ係数をノッチフィルタ係数発生部(b)12へ出力する。減衰量と減衰量に対応したフィルタ係数はノッチフィルタ係数選択部(a)11に予め記憶しておく。

【0025】
クラッタレベルに相当する減衰量を選択するのは、具体的には以下のように行う。次式(13)よりクラッタレベルCPc と予め設定した減衰量CP(j)の差を求め、クラッタレベルを下回らない最小の減衰量を選択する。
CPdef =CPc -CP(j) (13)
J=1,2,・・・,JJ
ここで、CPc はクラッタレベル、CP(j)は予め設定した減衰量、JJは予め設定した減衰量の数を表す。CPdef が最小となるCP(j)に対応するノッチフィルタ係数をフィルタ処理部8へ出力する。

【0026】
ノッチフィルタ係数発生部(b)12はノッチフィルタ係数選択部(a)11から出力されたノッチフィルタ係数とクラッタ中心周波数とからノッチフィルタのノッチがクラッタ中心周波数となるように調整する。ノッチフィルタ係数の算出方法は実施の形態1と同様であるため動作の詳細記述を省略する。図3に示す装置では、クラッタレベルが変動してもクラッタレベルにあわせてクラッタ抑圧を変動させるので、消え残りや過剰抑圧を押さえることができる。

【0027】
実施の形態3.上記実施の形態では、レーダの送信周波数から求まるドップラ周波数をクラッタの中心周波数としている。しかし、実際のBragg・lineのドップラ周波数は海面の状態によりレーダ送信周波数から求まるクラッタ中心周波数からずれる。本実施の形態ではこのずれを補正する場合について説明する。図4はこの発明の本実施の形態におけるクラッタ抑圧装置のブロック図である。図において、先の実施の形態での要素と同じ要素は同一符号を付してその説明を省略する。新規な要素として、13はレーダ送信周波数に基いて得られたシークラッタの中心周波数と、電力スペクトルとからクラッタの中心周波数を算出するクラッタ中心周波数算出部(b)である。

【0028】
上記構成の装置の動作を説明する。クラッタ中心周波数算出部(b)13は位相検波ビデオの電力スペクトルからクラッタ中心周波数を算出する。まずレーダの送信周波数から求まるBragg・lineのドップラ周波数fd を中心として予め設定したドップラ範囲内±IFGATEで電力の最大値を検出し、その周波数をクラッタピーク周波数fpcとする。最大値は次式(14)より算出する。
c =Max(|s(f)|2
f=fd -IFGATE~fd +IFGATE) (14)
ここで、Max()は()内の数式の最大値をとる関数、s(f)は位相検波ビデオ信号の電力スペクトル、fd は計算式より算出したクラッタのドップラ周波数、IFGATEは予め設定したドップラ範囲を表す。電力がPc となる周波数をfpcとする。

【0029】
上記で求めたfpcを中心に、別に設定したモーメント処理ゲート内でモーメント法を適用し、クラッタ中心周波数fdcを算出する。まず1次モーメントM1 は、次式(15)で表される。ここで、MOMWはモーメント処理ゲートを表す。これを用いて式(16)が得られ、クラッタ中心周波数fdcが算出される。

【0030】

【数5】
JP0003145943B2_000006t.gif【0031】図4ではクラッタの中心周波数が変動する場合でも、ノッチフィルタのノッチを常にクラッタの中心周波数に形成することができる。

【0032】
次に、クラッタの帯域幅の変動によるクラッタの消え残りや過剰抑圧を押さえたクラッタ抑圧装置を説明する。図5は本実施の形態における他のクラッタ抑圧装置のブロック図である。図において14は電力スペクトルからクラッタの帯域幅を算出するクラッタ推定部、15はクラッタの帯域幅に相当する阻止帯域幅となるようなフィルタを係数出力するノッチフィルタ係数選択部(b)である。他の要素は上記実施の形態の対応番号の要素と同じものである。

【0033】
図5において、クラッタ帯域幅推定部14ではクラッタ中心周波数と位相検波ビデオ信号の電力スペクトルからクラッタの帯域幅を推定し、ノッチフィルタ係数選択部(b)15に出力する。クラッタ帯域幅の推定はクラッタの形状がガウス分布で近似できることを利用する。クラッタのピーク周波数fpcを中心に、別に設定したモーメント処理ゲート内でモーメント法を適用し、クラッタの帯域幅BWc を算出する。まず1次モーメントM1 は、次式(17)で表される。ここで、s(f)は位相検波ビデオの電力スペクトル、MOMWはモーメント処理ゲートを表す。クラッタの帯域幅は2次モーメントを用いて求める。2次モーメントを用いて式(18)が得られる。σはクラッタ分布の標準偏差を示すから、クラッタの帯域幅BWc とすると、これは式(19)となり、クラッタの帯域幅が推定される。

【0034】

【数6】
JP0003145943B2_000007t.gif【0035】ノッチフィルタ係数選択部(b)15は電力スペクトルより推定したクラッタの帯域幅BWc と予め設定した複数の阻止帯域幅とを比較し、クラッタの帯域幅に相当する阻止帯域幅を選択してその阻止帯域幅に対応したフィルタ係数をノッチフィルタ係数発生部(b)12へ出力する。阻止帯域幅と阻止帯域幅に対応したフィルタ係数はノッチフィルタ係数選択部(b)15に予め記憶しておく。

【0036】
クラッタの帯域幅に相当する阻止帯域幅を選択するのは、具体的には以下のように行う。次式(20)よりクラッタ帯域幅BWc と予め設定した阻止帯域幅BW(j)の差を求め、クラッタの帯域幅を下回らない最小の阻止帯域幅を選択する。
BWdef =BWc -BW(j) (20)
J=1,2,・・・,JJ
ここで、BWc はクラッタの帯域幅、BW(j)は予め設定した阻止帯域幅、JJは予め設定した阻止帯域幅の数を表す。BWdef が最小となるBW(j)に対応するノッチフィルタ係数をフィルタ処理部8へ出力する。図5に示す装置では、クラッタの帯域幅は変動しても、クラッタの帯域幅にあわせてクラッタ抑圧を変動させるので、クラッタの消え残りや過剰抑圧を押さえることができる。

【0037】
次に、クラッタのレベルと帯域幅の変動によるクラッタの消え残りや過剰抑圧を押さえたクラッタ抑圧装置を説明する。図6は本実施の形態における他のクラッタ抑圧装置のブロック図である。図において、16は電力スペクトルからクラッタのレベルと帯域幅を算出するクラッタレベル帯域幅推定部、17はクラッタのレベルに相当する減衰量とクラッタの帯域幅に相当する阻止帯域幅に対応したフィルタ係数を出力するノッチフィルタ係数選択部(c)である。他の要素は上記実施の形態の対応番号の要素と同じものである。

【0038】
図6において、ノッチフィルタ係数選択部(c)17は電力スペクトルより推定したクラッタレベル、帯域幅と、予め設定した複数の減衰量、阻止帯域幅とを比較し、クラッタレベル、帯域幅に相当する減衰量、阻止帯域幅に対応したフィルタ係数をノッチフィルタ係数発生部(b)12へ出力する。減衰量、阻止帯域幅に対応したフィルタ係数はノッチフィルタ係数選択部(c)17に予め記憶しておく。図6に示す装置では、クラッタのレベル相当の減衰量と、クラッタの帯域幅相当の阻止帯域幅となるノッチフィルタを形成するので、クラッタのレベルと帯域幅が変動しても常に追従し、クラッタの消え残りや過剰抑圧を押さえることができる。

【0039】
実施の形態4.上記実施の形態では、つねにクラッタ抑圧処理を行っている。このため、クラッタ抑圧後の目標検出処理において誤警報を誘発する恐れのない小クラッタも抑圧する。一方でクラッタ抑圧処理により信号も減衰する。そこでクラッタ抑圧判定処理で抑圧した方がよいかどうかを判断する回路を加えることで、抑圧の必要がない小クラッタの過剰抑圧を押さえ、クラッタの近傍または、クラッタ内に存在する目標信号の減衰を防ぐことができる。図6に示す装置にクラッタ抑圧判定処理を加えた場合について説明する。なお、図1、3~5に示す装置にクラッタ抑圧判定処理を加えた場合も同様な効果が得られる。図7はこの発明の本実施の形態におけるクラッタ抑圧装置のブロック図である。新規な要素として、18は位相検波ビデオ信号1の電力スペクトルより雑音レベルを算出する雑音レベル推定部、19は算出されたクラッタレベルと雑音レベルとからC/N比を算出するC/N比算出部、20はクラッタ抑圧処理の入・切を判定する抑圧処理判定部、21は抑圧処理判定部20の判定結果よりクラッタ抑圧の入り切りを行うスイッチ、22はスイッチ21により出力される位相検波ビデオ信号1またはフィルタ処理部8により位相検波ビデオ信号1からクラッタが除去された出力信号である。その他の要素は先の実施の形態における同番号の要素と同じものである。

【0040】
図7において、抑圧処理判定部20は算出されたC/N比がユーザにより設定されたしきい値より高い場合にはクラッタ抑圧”入”の判定を行い、低い場合にクラッタ抑圧”切”の判定を行う。スイッチ21は抑圧処理判定部20の結果より、クラッタ抑圧入り判定の場合は位相検波ビデオ信号1からクラッタが除去された信号を出力し、クラッタ抑圧切り判定の場合は位相検波ビデオ信号1を出力する。図7に示す装置では、C/N比が一定値以下の場合はクラッタを抑圧せず、従って目標検出に影響の少ない小クラッタは抑圧しないので、過剰抑圧を押さえ、小クラッタの近傍または、小クラッタ内の目標はそのまま検出される。

【0041】

【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、モーメント法を適用してクラッタ中心周波数を算出するクラッタ中心周波数算出部と、クラッタレベル推定部と、ノッチフィルタ係数選択部と、ノッチフィルタ係数発生部とを備えたので、クラッタ変動に合わせてクラッタ中心周波数が変動する場合でも必要な目標信号が得られる効果がある。

【0042】


【0043】


【0044】
また更に、クラッタ・レベル相当の減衰量を設定したフィルタ係数に換えてクラッタ帯域幅相当の阻止帯域幅を設定したフィルタ係数として選択するノッチフィルタ係数選択手段とし、クラッタレベル推定手段に換えて、クラッタの帯域幅を推定するクラッタ帯域幅推定手段とし、推定クラッタの帯域幅対応のノッチフィルタ係数を発生させたので、クラッタに周波数と帯域変動があっても必要な目標信号が得られる効果がある。

【0045】


【0046】
また更に、入力信号の電力スペクトルからクラッタ対雑音比を算出するC/N比算出手段と、このC/N比でフィルタ処理の実行の有無を切り換えるスイッチを付加したので、影響の少ないクラッタの除去による目標信号の減衰を防ぐ効果がある。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図8】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図9】
7
【図7】
8