TOP > 国内特許検索 > 飛行システムおよび航空機用擬似視界形成装置 > 明細書

明細書 :飛行システムおよび航空機用擬似視界形成装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3052286号 (P3052286)
公開番号 特開平11-072350 (P1999-072350A)
登録日 平成12年4月7日(2000.4.7)
発行日 平成12年6月12日(2000.6.12)
公開日 平成11年3月16日(1999.3.16)
発明の名称または考案の名称 飛行システムおよび航空機用擬似視界形成装置
国際特許分類 G01C 21/20      
B64D 45/00      
G01C 23/00      
FI G01C 21/20
B64D 45/00
G01C 23/00
請求項の数または発明の数 12
全頁数 16
出願番号 特願平09-232688 (P1997-232688)
出願日 平成9年8月28日(1997.8.28)
審査請求日 平成9年8月28日(1997.8.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】丹羽 良之
【氏名】板東 舜一
【氏名】矢部 龍太郎
【氏名】西村 宏貴
【氏名】寺島 樹雄
【氏名】佐古 澄男
個別代理人の代理人 【識別番号】100075557、【弁理士】、【氏名又は名称】西教 圭一郎
審査官 【審査官】仲村 靖
参考文献・文献 特開 平2-145914(JP,A)
特開 平2-6998(JP,A)
調査した分野 G01C 21/20
B64D 45/00
G01C 23/00
特許請求の範囲 【請求項1】
航空機を操縦するパイロットが着座する座席の機軸前方および左右両側方に、現実の視界を見ることができる窓が形成され、
表示手段が設けられ、
この表示手段は、パイロットの目の前方で窓を介する現実の視界を透過して見ることができ、擬似視界を表示し、さらに、
広域地形の緯度、経度および高度を地図上の各位置に有する広域地形情報である3次元デジタル地図をストアする第1メモリと、
広域地形情報よりも狭い局地地形の緯度、経度および高度を地図上の各位置に有する局地地形情報をストアする第2メモリと、
障害物の緯度、経度および高度を有する障害物情報をストアする第3メモリと、
航空機の緯度、経度および高度を検出する第1検出手段と、
パイロット現在位置およびパイロットの顔の正面の姿勢を検出する第2検出手段と、
第1~第3メモリならびに第1および第2検出手段との各出力に応答し、表示手段を透過してパイロットが見る現実の視界の地形と障害物とに、擬似視界の地形と障害物とが重なって表示されるように、第1~第3メモリの前記情報を読出して緯度、経度および高度の基準を一致させて演算し、前記擬似視界を表示手段によって表示させる処理手段とを含むことを特徴とする飛行システム。

【請求項2】
レーザレーダと、
ミリ波レーダと、
レーザレーダの出力が与えられ、局地地形情報を作成して第2メモリにストアする局地地形情報演算手段と、
レーザレーダとミリ波レーダとの出力が与えられ、障害物情報を作成して第3メモリにストアする障害物情報演算手段とを含むことを特徴とする請求項1記載の飛行システム。

【請求項3】
レーザレーダは、
局地地形情報を得るために、レーザビームを大略下方に向けて走査し、
障害物情報を得るために、レーザビームを、大略前方かつ水平に向けて走査し、
ミリ波レーダは、障害物情報を得るために、電磁波ビームを、大略前方かつ水平に向けて走査することを特徴とする請求項2記載の飛行システム。

【請求項4】
レーザレーダと、
レーザレーダの出力が与えられ、局地地形情報を作成して第2メモリにストアする局地地形情報演算手段と、
レーザレーダの出力が与えられ、障害物情報を作成して第3メモリにストアする障害物情報演算手段とを含むことを特徴とする請求項1記載の飛行システム。

【請求項5】
レーザレーダは、
局地地形情報を得るために、レーザビームを大略下方に向けて走査し、
障害物情報を得るために、レーザビームを、大略前方かつ水平に向けて走査することを特徴とする請求項4記載の飛行システム。

【請求項6】
局地地形情報演算手段によって作成された局地地形情報と、第1メモリにストアされている広域地形情報とが、同一位置に関して、異なっているかどうかを判別する手段と、
判別手段の出力に応答し、異なっていることが判別されたときにのみ、局地地形情報を第2メモリに更新してストアすることを特徴とする請求項2~5のうちの1つに記載の飛行システム。

【請求項7】
第2メモリへの局地地形情報および第3メモリへの障害物情報のストアを、手動入力操作によって指示するストア入力指示手段を含み、
このストア入力指示手段によって入力指示されたときに第2および第3メモリへのストアが行われることを特徴とする請求項2~6のうちの1つに記載の飛行システム。

【請求項8】
表示手段は、擬似視界の表示の濃度を変化可能であることを特徴とする請求項1~7のうちの1つに記載の飛行システム。

【請求項9】
障害物情報を手動入力操作によって第3メモリにストアする手段をさらに含むことを特徴とする請求項1~8のうちの1つに記載の飛行システム。

【請求項10】
飛行物体の緯度、経度および高度を表わす無線信号を受信する受信手段をさらに含み、
前記処理手段は、受信手段の出力に応答し、実際の視界の飛行物体に、擬似視界の飛行物体を表わすキャラクタが重なって表示されるように、受信手段の出力を演算して表示手段によって表示させることを特徴とする請求項1~9のうちの1つに記載の飛行システム。

【請求項11】
航空機は、回転翼航空機であることを特徴とする請求項1~10のうちの1つに記載の飛行システム。

【請求項12】
広域地形の緯度、経度および高度を地図上の各位置に有する広域地形情報である3次元デジタル地図をストアする第1メモリと、
広域地形情報よりも狭い局地地形の緯度、経度および高度を地図上の各位置に有する局地地形情報をストアする第2メモリと、
障害物の緯度、経度および高度を有する障害物情報をストアする第3メモリと、
現実の視界を透過して見ることができ、擬似視界を表示する表示手段と、
観察者の現在位置および観察者の顔の正面の方向とを検出する検出手段と、
第1~第3メモリならびに第1および第2検出手段との各出力に応答し、表示手段を透過して観察者が見る現実の視界の地形と障害物とに、擬似視界の地形と障害物とが重なって表示されるように、第1~第3メモリの前記情報を読出して緯度、経度および高度の基準を一致させて演算し、前記擬似視界を表示手段によって表示させる処理手段とを含むことを特徴とする航空機用擬似視界形成装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、回転翼航空機・および小型固定翼機の運航を容易なものにするために、パイロットに人工的に創成された擬似視界を提供するシステムに関する。

【0002】

【従来の技術】ヘリコプタのごとき回転翼航空機は、現在世界各地において海、山岳地における人命救助、救急患者の輸送、山小屋への物資輸送等に広く用いられている。

【0003】
この回転翼航空機は離発着に場所を必要としない、空中において停止状態に保持ができる等の利点があり、原理的にはいつでもどこへでも飛んでゆける理想の輸送機関である。しかしながら、霧や小雨のようなわずかな悪天候下においてさえも運行中止になるなど、大型固定翼航空機に比べて非常に低い信頼性しかないという問題があり、定期的な人員および物資輸送事業はほとんど失敗に終わっている。また企業の社用機としての実験的運航事例もあるが、悪天候時の無理な運航により不幸な事故が多発し、最近ではほとんど人員輸送には使用されないようになっている。また、少し雨が降ると飛行できなくなる。

【0004】
このような回転翼航空機の信頼性が低い理由として、次の1)~5)などを挙げることができる。

【0005】
1)図11に示すように、計器飛行方式(以下、IFRと略称する)が利用できないことがある。IFRは視界なしでも飛行することができるように、レーダ等の電波誘導システムが慣性航法システムを利用し、航空管制官の指示によって飛行するものである。その管制方針は、一定の独占的な空間を各機に割当てることにより空中衝突を防止することにある。各機は、この割当てられた空間の中を飛行することが義務づけられているので、飛行経路1を適宜変更することはできない。さらに自動着陸装置も発達し、よほどひどい悪天候でなければ離発着できるので、これを装備した大型機による定期航空便では98%以上というような高い定時発航率を達成するまでになっている。これは、主として大型の固定翼機の運行支援を目的としたものであり、一定の飛行のルートに設置された電波標識上空を経由して飛行することが義務づけられている。

【0006】
ところが、この図11の方式は、回転翼航空機のように自由に飛行し、各地に非常に多数設置された電波標識のないヘリポートを利用するような場合、および災害時および有事の臨時ヘリポート等では、まったく利用できないものである。この事情は小型固定翼機にも当てはまる。

【0007】
2)さらにIFRのレーダ電波は、レーダを装備している大空港付近以外では利用できないだけでなく、低空を飛行することが多い回転翼航空機の場合には空港の近くであっても山の影になるので受信できないこともある。したがってIFRをあきらめ、有視界飛行方式(略称VFR)によって飛行せざるをえない。

【0008】
3)VFRの場合には天候状態、とりわけ視界について厳しい条件がつけられおり、霧や雨、それに夜間の飛行は困難であり、定時発航率も60%台と低く、ヘリコプタが一般に広く用いられない主たる理由になっている。このことは、定期運航だけでなく、先に述べた人命救助や、災害支援等においても共通する大きな問題である。

【0009】
4)上記のIFRとVFRの区分は明快であるが、現実の天候は時間・地域・高度等により変化するものであるので、たとえばVFRで飛行許可されても、途中で天候が悪化して計器飛行条件に近くなることも多い。この場合、飛行高度を変更したり、航路を変更することで何とか目的地に到達しようとして、かなり無理をすることがある。

【0010】
図12に示すように、上空は雲2または霧に覆われていても地上付近は視程があることが多く、悪天候のときには雲の下に出ようとして低空ぎりぎりの飛行経路3を飛行することが多い。このとき一瞬、局地的な濃霧に巻込まれたり、雲の中に突入すると、いわゆる空間識失調(バーディゴ)と呼ばれる状態に陥り、パイロットは飛行航路を外れ、地面や山に衝突する事故の原因になる。もし、飛行高度を上げて雲中も飛行することができれば、地上との衝突の危険性はなくなるが、有視界飛行方式では不可能である。

【0011】
このような運航条件に関する事情は、常に晴れ渡っている高高度を飛行し、他の航空機以外には障害物のない大型固定翼機には当てはまらないものである。

【0012】
5)また最近、人工衛星による測地システム(略称GPS、GlobalPositioning System)を利用したIFRも研究されている。これは、回転翼航空機が互いにGPSによる位置情報を交換することにより空中衝突を防止し、より自由度の高い航空管制方式を提供するものである。この方式は、予め設定した飛行計画に拘束されること、および悪天候時の地上の障害物との衝突防止には役立たないことなどの問題点があり、飛行安全上の問題を完全に解決できるものではない。したがって回転翼航空機の信頼性向上には限定的な効果しか得られない。

【0013】
これらの課題を解決するに当たっては、まず、シミュレーション技術の利用が考えられる。現在、航空機開発やパイロット訓練等に使用されているシミュレーション技術は、いわゆるバーチャルリアリティ技術としてアミューズメント関係にも広く応用されつつある。それは3次元のデジタル化された地図、すなわち仮想空間を作成し、これをヘルメットに搭載した表示装置やドーム状のスクリーン上に投影した映像として、パイロットに与えるものである。

【0014】
このような先行技術は、以下に述べるように、忠実性に欠け、刻々変化する現実の状況を記述できない、という問題点1)~4)がある。

【0015】
1)人工的に画像を入力することが必要であるが、実際の地上の状況を一部始終入力することは、その手間が膨大であり不可能である。

【0016】
2)安全確認のため、実際の地形と照合して画像の点検を行う必要があるが、これもまた膨大な手間がかかる。

【0017】
3)映像を単純化すると、遠近感がないとか速度感がないとかの問題があり、地面に近づいてもわからないという重大な欠点がある。

【0018】
4)国土地理院の発行しているデジタルマップは、3次元地図情報であり利用価値は高いが、そのデジタルマップも含め、上記全ての人工地図に共通する課題は、リアリティが不足しており、また記入されていない新たに出現した障害物に対しては全く無力であるということである。

【0019】
次に、ミリ波レーダによる映像をパイロットに与える方式も考えられる。これはミリ波レーダのビームを非常に細く絞り、テレビジョンの画面を作るのと同様に前後左右に走査して映像を作り、これをパイロットに表示するものである。ミリ波は、雨天でも比較的遠距離まで到達するので、悪天候時の画像表示装置として適している。

【0020】
そして、上記の人工映像方式とは異なり、実際の地形を電波の目で見ながら飛ぶので、リアルタイム性があるという利点があるが、ミリ波だけでパイロットが満足できるようなリアリティのある画像を作成することはできない、という次の問題点1)~3)がある。

【0021】
1)ミリ波レーダのアンテナは、比較的大きく重量があるので、高周波で左右上下に振って走査することはできない。その周波数はせいぜい10Hz程度であるので、テレビジョン画像のように刻々変化する映像を得ることは原理的に不可能である(テレビジョンでは15000Hz)。1画面の走査線の本数をテレビジョンの1/10の50本程度としても、その更新レートは数秒であり、静止画像を数秒ごとに差し替えているような感じがあるので、ヘリコプタのパイロットの視野画像としては不適切である。

【0022】
また、ミリ波は光波に比べて波長がかなり長いので、たとえ充分な時間をかけて走査してもその映像は非常にぼんやりとしたものになり、擬似視界というにはあまりにも不充分なものである。

【0023】
2)コンピュータで画像を作成するための時間が長いので、常に時間的に遅れた映像となり、地上近くになると障害物を回避することが困難になる。

【0024】
3)レーダの走査角度範囲を狭くすると、画像は比較的シャープになるが、パイロットにとって視界が狭いのでは、安全に操縦して飛行することは、困難である。

【0025】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、悪天候によって視界が失われた場合でも、人工的に創成した現実の風景にきわめて近いリアリティがあり、常に最新の情報を入力してリアルタイム性を有する擬似視界をパイロットなどに与える擬似視界形成装置を提供することであり、これによって、悪天候下でも有視界飛行方式で運航可能な航空機を実現することを可能にする飛行システムおよび航空機用擬似視界形成装置を提供することである。

【0026】

【課題を解決するための手段】本発明は、航空機を操縦するパイロットが着座する座席の機軸前方および左右両側方に、現実の視界を見ることができる窓が形成され、表示手段が設けられ、この表示手段は、パイロットの目の前方で窓を介する現実の視界を透過して見ることができ、擬似視界を表示し、さらに、広域地形の緯度、経度および高度を地図上の各位置に有する広域地形情報である3次元デジタル地図をストアする第1メモリと、広域地形情報よりも狭い局地地形の緯度、経度および高度を地図上の各位置に有する局地地形情報をストアする第2メモリと、障害物の緯度、経度および高度を有する障害物情報をストアする第3メモリと、航空機の緯度、経度および高度を検出する第1検出手段と、パイロット現在位置およびパイロットの顔の正面の姿勢を検出する第2検出手段と、第1~第3メモリならびに第1および第2検出手段との各出力に応答し、表示手段を透過してパイロットが見る現実の視界の地形と障害物とに、擬似視界の地形と障害物とが重なって表示されるように、第1~第3メモリの前記情報を読出して緯度、経度および高度の基準を一致させて演算し、前記擬似視界を表示手段によって表示させる処理手段とを含むことを特徴とする飛行システムである。

【0027】
本発明に従えば、第1メモリに広域地形情報である3次元デジタル地図をストアしておき、第2メモリに局地地形情報をストアしておき、第3メモリに障害物情報をストアしておき、第1および第2検出手段によって航空機およびパイロットの顔の正面に関する情報を検出し、処理手段によって擬似視界を表示手段によって表示し、したがって現実の視界の地形と障害物とに、表示手段によって形成される擬似視界の地形と障害物とが重なって表示される。そのためたとえば悪天候時に現実の視界を観察することができなくても、パイロットなどの観察者は、通常の有視界飛行を行っているような感覚で飛行することができる。

【0028】
また本発明は、レーザレーダと、ミリ波レーダと、レーザレーダの出力が与えられ、局地地形情報を作成して第2メモリにストアする局地地形情報演算手段と、レーザレーダとミリ波レーダとの出力が与えられ、障害物情報を作成して第3メモリにストアする障害物情報演算手段とを含むことを特徴とする。

【0029】
本発明に従えば、レーザレーダのレーザビームを、小形のミラーを用いて高速度で広範囲を走査することができ、また晴天時にはたとえば約10km以上の先までレーザビームを到達させることができるので、局地地形情報を確実に得ることができる。

【0030】
ミリ波レーダは、悪天候時においても、たとえば数100m程度のビームの到達距離をもっており、障害物の発見が可能であり、さらにたとえば高圧線およびリフト・ケーブルなどをレーザレーダを用いて高い解像度で検出することができる。

【0031】
また本発明は、レーザレーダは、局地地形情報を得るために、レーザビームを大略下方に向けて走査し、障害物情報を得るために、レーザビームを、大略前方かつ水平に向けて走査し、ミリ波レーダは、障害物情報を得るために、電磁波ビームを、大略前方かつ水平に向けて走査することを特徴とする。

【0032】
また本発明は、レーザレーダと、レーザレーダの出力が与えられ、局地地形情報を作成して第2メモリにストアする局地地形情報演算手段と、レーザレーダの出力が与えられ、障害物情報を作成して第3メモリにストアする障害物情報演算手段とを含むことを特徴とする。

【0033】
また本発明は、レーザレーダは、局地地形情報を得るために、レーザビームを大略下方に向けて走査し、障害物情報を得るために、レーザビームを、大略前方かつ水平に向けて走査することを特徴とする。

【0034】
本発明に従えば、局地地形情報を得るためには、レーザレーダのレーザビームをヘリコプタなどの回転翼航空機およびその他の航空機で、ほぼ下方に向けて走査する。また障害物情報を得るには、そのレーザビームおよびさらに用いることがあるミリ波レーダの電磁波ビームを、機軸のほぼ前方かつほぼ水平に向けて走査する。これによって悪天候時の有視界飛行時において障害物の確認が、擬似視界で確認することが可能になる。

【0035】
レーザレーダは赤外線を使用するので、走査周波数を高くすることができ、シャープな鋭い、すなわち明瞭な画像を得ることができるが、悪天候時には届く距離が短い。ミリ波レーダは波長が長いので、走査用のアンテナ等が大型になり、走査周波数を高くすることができず、画像もシャープなものは期待できないが、悪天候時でも数百mの到達距離があり、レーザレーダに比し遠距離の障害物を探知することができる。レーザレーダとミリ波レーダとの両者には、このような特性の違いがあり、前方障害物の探知に関しては両者とも備えれば、最もよい条件で探知を行うことができる。したがってレーザレーダによって明瞭な画像を得るとともに、ミリ波レーダによって遠距離の障害物をも探知することができる。

【0036】
レーザレーダのみであってもその特性に応じた飛行条件を選択すれば、障害物探知の機能を充分発揮することができる。つまり、基本的にはレーザレーダがあれば、障害物探知の機能として問題なく、ミリ波レーダをさらに備えることにより、より機能が向上する。

【0037】
また本発明は、局地地形情報演算手段によって作成された局地地形情報と、第1メモリにストアされている広域地形情報とが、同一位置に関して、異なっているかどうかを判別する手段と、判別手段の出力に応答し、異なっていることが判別されたときにのみ、局地地形情報を第2メモリに更新してストアすることを特徴とする。

【0038】
本発明に従えば、判別手段によって局地地形情報と広域地形情報とが異なっていることが判別されたときにのみ、局地地形情報演算手段によって得られた局地地形情報を第2メモリに更新してストアするようにし、一致していれば局地地形情報演算手段からの局地地形情報を第2メモリにストアせず、すなわち更新せず、これによって第2メモリにストアされている局地地形情報を、表示手段に常に表示し、その第2メモリにストアしている期間中、表示手段に局地地形情報が表示されないという事態が生じることが防がれる。

【0039】
また本発明は、第2メモリへの局地地形情報および第3メモリへの障害物情報のストアを、手動入力操作によって指示するストア入力指示手段を含み、このストア入力指示手段によって入力指示されたときに第2および第3メモリへのストアが行われることを特徴とする。

【0040】
本発明に従えば、パイロットがストア入力指示手段を手動入力操作して、局地地形情報および障害物情報のいずれか少なくとも1つを入力操作することができる。これによって飛行の安全性を確保することがさらに一層確実である。

【0041】
また本発明は、表示手段は、擬似視界の表示の濃度を変化可能であることを特徴とする。

【0042】
本発明に従えば、擬似視界は、たとえば液晶表示装置によって実現され、その表示の濃度または階調を変化可能とし、これによって現実の視界に重ねられた擬似視界を、パイロットの視界における局地地形および障害物などに対応して、識別することが容易である。

【0043】
また本発明は、障害物情報を手動入力操作によって第3メモリにストアする手段をさらに含むことを特徴とする。

【0044】
本発明に従えば、障害物情報だけを、手動入力操作によって第3メモリにストアし、飛行の安全性をさらに一層、確保することができる。

【0045】
また本発明は、飛行物体の緯度、経度および高度を表わす無線信号を受信する受信手段をさらに含み、前記処理手段は、受信手段の出力に応答し、実際の視界の飛行物体に、擬似視界の飛行物体を表わすキャラクタが重なって表示されるように、受信手段の出力を演算して表示手段によって表示させることを特徴とする。

【0046】
本発明に従えば、他の航空機などである飛行物体が表示手段によって擬似視界上に表示されるので、衝突の危険を回避するようにパイロットが航空機を運転することが確実になる。この飛行物体は、キャラクタ、たとえば文字、図形、記号などで表示される。

【0047】
また本発明は、航空機は、回転翼航空機であることを特徴とする。

【0048】
本発明に従えば、航空機は、回転翼航空機であって、たとえばヘリコプタであってもよく、さらにジャイロプレン、ジャイロダイン、さらに飛行機とヘリコプタとを組合わせた転換型航空機などであってもよい。

【0049】
また本発明は、広域地形の緯度、経度および高度を地図上の各位置に有する広域地形情報である3次元デジタル地図をストアする第1メモリと、広域地形情報よりも狭い局地地形の緯度、経度および高度を地図上の各位置に有する局地地形情報をストアする第2メモリと、障害物の緯度、経度および高度を有する障害物情報をストアする第3メモリと、現実の視界を透過して見ることができ、擬似視界を表示する表示手段と、観察者の現在位置および観察者の顔の正面の方向とを検出する検出手段と、第1~第3メモリならびに第1および第2検出手段との各出力に応答し、表示手段を透過して観察者が見る現実の視界の地形と障害物とに、擬似視界の地形と障害物とが重なって表示されるように、第1~第3メモリの前記情報を読出して緯度、経度および高度の基準を一致させて演算し、前記擬似視界を表示手段によって表示させる処理手段とを含むことを特徴とする航空機用擬似視界形成装置である。

【0050】
本発明に従えば、擬似視界を、現実の視界に重ねて表示手段によって表示し、したがってパイロットおよびその他の観察者が、視界の確認を行うことができ、特に悪天候であって現実の視界が悪いときにおいても、安全に飛行することができるようになる。

【0051】
本発明は、低空飛行する機会のある小型固定翼機にも、勿論適用はできるが、その本意とするところは、特に、常に有視界飛行方式で飛行しなければならない回転翼航空機などの運航安全性を飛躍的に高め、その信頼性・経済性・有用性を画期的に改善しようとするものである。

【0052】


【0053】


【0054】


【0055】
表示手段は、後述の実施の形態のようにパイロットの頭部または顔に、ヘルメットなどによって装着されるようにしてもよく、または眼鏡に類似した構成で、テンプルによってパイロットの顔に装着するように構成されてもよく、このような構成によれば、表示手段を小形化することができる。本発明の実施の他の形態では、窓のガラスなどの透光性板の機内側の表面に、液晶表示パネルなどによって実現される表示手段を貼着などして航空機の機体に固定し、このような比較的大形の表示手段によって擬似視界を現実の視界に重ねて表示するようにしてもよい。

【0056】

【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態の全体の構成を簡略化して示すブロック図である。航空機、特にヘリコプタなどの回転翼航空機において、操縦を行うパイロット11の顔面12には、頭部にかぶせられるヘルメットに取付けられた表示手段13が設けられて本発明による擬似視界を表示し、このパイロット11はまた、表示手段13を透過して現実の視界を見ることができる。表示手段は、たとえば透過形液晶表示パネルによって実現される。

【0057】
図1に示される本システムのハードウエア・ブロック・ダイアグラムにおいて、まずセンサとしては、自機位置を数cmの精度で割り出すことのできるDGPSやRTK等を使用した高精度位置検出装置41がある。さらにジャイロスコープ等による機体姿勢および方位のセンサ42と、地形情報を取得するためのレーザレーダ38およびミリ波レーダ39を装備する。

【0058】
処理装置43は、自機位置および姿勢の検出装置44、データベースメモリ45を含む。本件装置は、表示手段13を備える。後述の図4のカメラ30,31、レーザレーダ38およびミリ波レーダ39などの地形情報センサから得られた地形・障害物情報は、後述の図3のメモリM1~M3を含むデータベースメモリ45に記憶される。このとき運用モードによってデータの記憶方法、処理方法が変化する。

【0059】
前記自機位置と姿勢からデータを取出し、表示手段13によりHMD(HelmetMount Display)上にバーチャル映像を作り出し、パイロットに擬似視界を提供する。このときヘルメット27が向いている方向および位置を検知するセンサ58も必要である。またデータの一部はHUD(Head Up Display)表示手段46に投影されることもある。

【0060】
図2は、擬似視界の表示方法を説明する図である。ここでは、表示手段13であるHMDを使用する状態について記述している。航空機においてパイロット11が座席14に着座してその機体15に形成されたガラスなどの透光性板で覆われた窓16から、パイロット11は、外部の現実の視界を見ることができるとともに、表示手段13によって擬似視界17を、現実の視界に重ねて見ることができる。窓16は、機軸18前方および左右両側方にわたって形成される。障害物は、擬似視界17において前方の表示領域19において表示される。

【0061】
また飛行中の他の航空機などの飛行物体20が、たとえばXなどのキャラクタで擬似視界17上に表示される。他機の位置や姿が容易に確認できる。このためには他機は図2の飛行物体20のようにキャラクタでシンボル化され、明瞭に視認できるようにされる。GPSにより得られた他機の位置を入力し、擬似視界に重ねて表示する。すなわちGPSを使用して各機は自機位置を互いに連絡しあい、他機位置を擬似視界上にシンボル表示することで空中衝突の危険を回避できる。

【0062】
他の航空機には、その自機位置を、GPSによって検出して送信手段によって送信する。この送信された他機位置は、本件航空機の飛行システムにおいて図1の受信手段50によって受信される。この受信手段50によって受信される無線信号は、前記他機の位置である緯度、経度および高度を表す。この他機の情報は、前述のように飛行物体20で表示されるように、データベースメモリ45のメモリM1,M2またはM3にストアされる。したがって実際の視界の他機に、擬似視界の飛行物体20が重なって表示手段13によって表示される。

【0063】
広域地形情報は、パイロット11の左右180度に広がるように表示し、バランスが容易にとれるようにする。視野の両端の部分はそれほど詳細である必要はないが、地平線のようなバランスに関する情報が非常に重要であり、これらを表示する。上記広域地形情報は、パイロットに左右方向約180度近くの高視野角の擬似視界として表示する。したがって視野角が広い。人間は視野の上下左右の端を見ることでバランス感覚を得ている。機体15の操縦には、特にバランスが重要である。したがって広い視野が必要である。

【0064】
表示領域19では、正面付近はできるだけ詳しく表示する。表示される局地地形情報、とりわけ障害物情報は、正面だけでよい。

【0065】
悪天候時にも視界は完全に閉ざされていることは少なく、概ね100m以内と、一部は遠くまで見通すことができる。したがって重畳して見ることで、本システムの画像の詳しさも極端に精密なものを要求しなくてもよくなる。これは本システムを実現するにあたって、コストを下げ、画像の追従速度を向上させるのに非常に重要である。

【0066】
図3は、表示手段13に擬似視界を表示するための構成を簡略化して示すブロック図である。第1メモリM1には広域地形情報である3次元デジタル地図がストアされ、第2メモリM2は局地地形情報がストアされ、第3メモリM3には障害物情報がストアされる。第1メモリM1は、広域地形のデジタルマップであり、地形の3次元空間における直交座標系xyzにおける3次元空間の座標(x,y,z)をストアする。緯度、経度および高度は、x軸、y軸およびz軸にそれぞれ対応している。したがってメモリM1のストア内容は、1個のデータ空間である。同様にしてメモリM2には、局地地形の緯度、経度および高度がデジタルマップとしてストアされる。さらにメモリM3には、障害物の緯度、経度および高度がデジタルマップとしてストアされる。

【0067】
表示手段13によって表示される合成された3次元マップは基本的に、緯度、経度および高度の3軸情報を各ポイント毎に持ったものであり、これら3種類の広域地形情報、局地地形情報および障害物情報が3次元マップとしての必要なデータを持っている。したがって各メモリM1,M2,M3からの各情報は、演算回路22,23,24において演算され、また、拡大および縮小され、さらに遠方を小さく表示することができるようにするなどの変形を行い、その後、合成回路21で合成して一画面のための画像データを作成する。演算回路22~24では、メモリM1,M2,M3からの各情報の重ね合わせの処理において、緯度、経度および高度の3軸の基準を一致させ、これによって一画面として容易に重畳表示させることができ、地形あるいは建物などの大きさは、同じ尺度で表示されることになる。演算回路22,23,24は、制御回路25によってその動作が制御される。制御回路25には、検出手段26からの出力が与えられる。

【0068】
擬似視界と現実の視界とを重ね合わせるために、(a)DGPSまたはRTKによって得たデータから求めた航空機の自機位置の緯度および経度のデータ、(b)機体15に設けられたジャイロスコープおよび各種のセンサの出力信号を演算して得られる航空機の機体15のピッチ、ロール、ヨー、高度、およびそれらの各値の時間変化率、それらの値の加速度などを含む各データ、および(c)表示手段13が装着されているヘルメット27に設けられたセンサ58によって検出されるパイロット11の頭部または顔12の現在位置およびその顔12の正面の姿勢すなわち正面の向いている方向を検出するセンサのデータに応答する。上述のデータ(a)~(c)によって、制御回路25では、パイロット11がどの位置からどの方向を見ているかを演算して求めることができる。これによって前述の3種類の3次元マップを、その位置およびその方向から見た地形として擬似視界で表示手段13によって表示する。これによって擬似視界と実際の視界とを、精度よく、重ね合わせることができる。

【0069】
図4を参照して、広域地形情報を作成する手法を説明する。まず人工衛星28,29に搭載された高分解能カメラ30,31により、軌道32から一辺が数10km(たとえば20~30km、または40~50km)の広さの地域34を写真撮影する。次に異なる軌道33から同一地域34を撮影する。これら2枚の写真を合成すれば高度差を判別することができる。カメラ30,31と地域34の一点とを含む一仮想平面内で、カメラ30,31および前記一点を結ぶ仮想三角形において、カメラ30,31間を結ぶ底辺の距離と、その両底角とによって、前記一点の3次元位置を検出することができる。これをデジタル化して図5(1)の3次元マップ(すなわち地図)を作成する。

【0070】
さらにこれに図5(2)航空写真を貼付けてカラー化するなどリアルな図5(3)の広域地形情報を作成する。この方式は先に述べた国土地理院のデジタルマップと異なり、写真を基にしているので、現実の地形を忠実に描写できているという利点がある。この広域地形情報は、パイロットに擬似画像として見せたときには水平線付近の遠景や山地、湖、道路、河川等を表示するのに適している。

【0071】
図6は局地地形情報の作成のための処理装置43および制御回路25の動作を説明するためのフローチャートであり、図7はその局地地形情報の作成方法を説明するための簡略化した図である。ここでは上記広域地形情報に描かれていない詳細な地形、および新たに建設された高層ビルなどの情報を得る方法について説明する。図6のステップs1では、ヘリコプタ機体15に備えられたレーザレーダ38の細いレーザビームを前後左右に走査し、反射波を処理して詳細な地形情報を得る。この実施の形態では、リアルな画像を描くためには非常に多くのデータを取込むことが必要になるので、リアルタイムでディスプレイ上に地形を表示することは、困難である。

【0072】
そこで本発明の実施の形態では、図6のステップs1では、図7のように晴天飛行時にレーザレーダ38のビームを下方に向けて予め走査し、多くのデータを繰返し、繰返し、取込み、メモリM2に記憶することにより、デジタル地図を作成しておく。そして、飛行中にはバーチャルリアリティの技術を用いて、このデジタル地図から画像を読取り、擬似視界を作成する。こうして2段階の手順を踏むのである。上記局地地形情報は、同一地域を予め飛行して収集した地形情報を何度も重ねあわせることにより、精度を高められたすなわち最新の3次元地図である。

【0073】
データ取込みに際しては、1機のヘリコプタだけでなく、多数の機体から得られたデータを、地上でコンピュータにダウンロードし、その中で蓄積し合成することにより、データを詳細にして、その精度を高めることができる。また、その機体が飛行したことのない地域の地形情報も記憶できる。

【0074】
さらに、データを常に最新のものにステップs6で更新するのは、ステップs2で得られたレーザレーダ38による情報を、ステップs3で既に得られている情報と比較して照合し、その結果、不一致であればステップs4に移り、データ化されていない地上の情報、たとえばごく最近建築された高層ビルや橋梁等の人工障害物に絞ってステップs4で詳細に走査することにより、ステップs5のデータを効率的に更新することができる。こうして常に最新の状態に更新された画像をステップs6で得ることができる。上記のような精密な地図を作成することが容易ではないので、一度作成されれば最低2~3年は更新されることはないと考えられる。そのため、地図作成後、新たに建設された中高層建築物や橋梁等について常に追加・更新して、最新の状態に修正しておく必要がある。

【0075】
このような地形情報の重ね合わせは、精密位置測定システムがあって初めてできることである。民生用GPSでは100m程度の位置誤差があるので、このような重ね合わせは不可能であるが、数cm程度の誤差しかないDGPS(Differential GPS)またはRTK(Real Time Kinematics)により可能である。

【0076】
ミリ波レーダ39でも本作業は可能であるが、アンテナが大きいので、高速で走査することが困難である。

【0077】
レーザレーダ38では小さなミラーを振動させることによりレーザビームを非常な高速度で走査できるので、容易に広範囲を走査することができる。さらに、通常雨や霧の中ではレーザビームは100m程度しか届かないが、晴天時には10km以上先まで到達するので、このようなデータ取得が可能である。したがって時間遅れのない画像を得ることができる。地上付近では風景が早く流れ去る。また、急激な操縦を行えば視界は大きく、急速に変化する。この動きに追従できなければ安全性が低下するとともに、船酔いの原因にもなる。レーザレーダ38を用いることによって、これらの問題を解決することができる。

【0078】
人工衛星から撮影された広域地形情報では、一軒一軒の家およびビルは書込めない。ここに記述した局地地形情報により、必要な地域の詳細な地形が得られるので、パイロットは遠近感・高度感・速度感等を得ることができ、非常にリアリティのある感覚を得ることができる。これは低空を飛行することが多い回転翼航空機等には非常に重要である。上記局地地形情報を作成する場合には、レーザレーダ38のレーザビームを図7のように大略下方に向けて探査する。

【0079】
現実の風景に極めて近いリアリティのある画像であり、長時間見続けても疲労せず、遠近感も、速度感もあり、個人の家や大きな木等も判別できるような良質の画像を得ることも可能である。

【0080】
図8は、障害物情報の作成方法を示す図である。悪天候時には、どうしても地上を確認しながら飛行しようとするので、地上付近の低高度を飛行することが多い。このとき高圧電線36、高層ビル37、クレーン等の障害物が非常に危険であり、従来では、多くの事故が発生している。

【0081】
また山岳地では木材やみかん等の輸送のため、リフトを使用する。このリフト・ケーブルもまたヘリコプタにとっては非常に危険な障害物である。これらの障害物は、非常に短期間に設置されるので、局地地形情報には、記載されない可能性が高い。

【0082】
このため本発明では、レーザレーダ38とミリ波レーダ39との各ビームを図8のように水平方向・前方に向け、障害物を探査しつつ飛行する。上記障害物情報を収集するにあたっては、レーザレーダ38のレーザビームを大略前方・水平方向に向け、機体15の予想される進行方向前方正面およびその近傍について探査する。

【0083】
レーザレーダ38は、赤外線を使用するので、明瞭な画像を得ることができるが、悪天候時には届く距離が短い。これに対してミリ波レーダ39は波長が長いので、レーザレーダ38によって得られる画像よりも画像が明瞭ではないけれども、悪天候時でも、遠距離の障害物を探知することができる。したがってレーザレーダ38とミリ波レーダ39とによって、明瞭な画像を得るとともに、遠距離の障害物をも探知することができる。なお、ミリ波レーダ39を用いることなく、レーザレーダ38のみを用いても、障害物探知の機能を充分発揮することができる。

【0084】
レーザレーダ38を用いて、上述のように機体15の予想される進行方向前方正面およびその近傍について探査し、この場合にも、充分な映像を創成するほどのデータを取込むことは不可能である。したがって少なくとも前途に障害物があるかないかを判定することだけに絞り、何があるかはわからないまま、航空機はとりあえず緊急回避する。メモリM2,M3に記憶されている情報には記入されていない、新たに飛行直前になって設置されたような一時的大型障害物、たとえば大型クレーン、索道等も発見して衝突を回避できる。ただし、この場合には障害物がどのようなものであるかその姿を正確に確認できなくとも、とりあえずそれら障害物を回避できるような適切な表示が得られる。

【0085】
ミリ波レーダ39は、悪天候時には数100m程度の到達距離をもっているが、分解能が良くないので、高層ビル37およびクレーン等の発見に使用する。レーザレーダ38は、悪天候時には100m程度の到達距離にすぎないが、細い電線等36などが判別できる。

【0086】
このような障害物を発見し、緊急操作してもぎりぎりで回避することになるが、上記レーザレーダ38およびミリ波レーダ39の走査範囲は非常に狭いので、障害物に接近すると走査範囲外となり、レーザレーダ38およびミリ波レーダ39の出力だけを用いるときには、パイロットは非常に心細い思いで障害物を飛び越さなければならない。

【0087】
本発明では、このような状況を改善するために、障害物の情報をメモリM1,M2,M3のデジタル地図上に一時的に記憶する。これにより、パイロットは障害物を飛び越すまで擬似視界上で常に障害物を確認できる。すなわち上記障害物情報は、一時的に機上のコンピュータに記憶することにより、レーザレーダ38およびミリ波レーダ39の検知範囲外になっても、視覚情報としてその最大視野角範囲において表示続けることができる。

【0088】
上記のようにして創成された擬似画像と、実視界が重畳して見える。これはまず第1に、擬似視界システムが正しく機能しているかどうかを確認するためである。犯罪捜査における指紋照合のように、画像の一部であっても充分判別は可能である。第2に、さらに、局地地形情報では表示できないきわめて詳細な地形情報は、実物を見ることができる場合は、それを見られるように構成することでその欠落を補うことができる。

【0089】
したがって、晴天時には本システムは必要がないが、悪天候時にも実視界が見えているうちは擬似視界と重畳して見えるように調整できることが必要である。よほどの濃霧でない限り、100m程度の視界は得られることが多く、本システムのように実視界と重畳することは、必要である。

【0090】
図9は、運用モードを説明する図である。運用モードa1は、悪天候飛行モードa2と、データベース更新飛行モードa3とからなる。基本的に、好天時には、障害物に衝突する可能性のある超低空を飛行しない限り、本擬似視界システムは必要としない。それゆえ、好天時には地形情報を収集し、データベースメモリ45上に記憶蓄積する。悪天候時には、地形情報を使用して擬似視界を創成し、安全に飛行する。

【0091】
上記レーザレーダ38を運用するにあたって、データベース更新飛行モードa3と悪天候飛行モードa2との2種類のモードを有し、前者のモードa3において上記局地地形情報を作成し、後者のモードa2において障害物情報を作成して、メモリM2,M3にそれぞれストアする。

【0092】
図10は、ソフトウエア・フローチャートを説明する図である。悪天候モードでは傘マークで示すフローに従い、ステップb3~b6で、センサであるレーザレーダ38およびミリ波レーダ39のビームを飛行方向に向けて障害物情報を取得し、メモリM2の地形情報と合成した上で表示手段13によりHMDに表示する。ステップb3では、レーザレーダ38およびミリ波レーダ39のビームを飛行方向に向けて、すなわちほぼ前方でかつほぼ水平に向けて、ビームを走査し、障害物情報を取得して、局地情報を得る。ステップb4では、広域地形情報と、ステップb4で得た局地情報とを合成する。ステップb5では、表示手段13によって障害物をキャラクタでシンボル化して表示し、また文字を用いて補助的に情報を表示するための信号を作成する。こうしてステップb6では、表示手段13で表示する。

【0093】
データベース更新飛行モードは晴れマークで示すフローに従い、ステップb7~b12で、図7のようにセンサを大略下方に向けて地形データを取得し、メモリM2の局地地形情報と照合して不一致であればさらに地形の詳細探査を行い、パイロットが確認した上で地形情報(すなわちデータベースメモリ45)を更新する。ステップb7では、レーザレーダ38およびミリ波レーダ39の広域走査によって障害物データを取得する。ステップb8では、データベースメモリ45におけるメモリM1~M3の地図情報と照合し、ステップb9において両者のデータが不一致であれば、次のステップb10でその不一致部分における障害物の探査をする。ステップb11において、パイロット11が、その不一致の障害物データをメモリM3にストアすることを、入力手段によって指示すると、その障害物データはステップb12においてデータベースメモリ45のメモリM3にストアされて更新される。

【0094】
局地地形情報を、レーザレーダ38により作成するにあたって、広域地形情報との差異を調査し、もし差があればその部分について集中的に探査しメモリM2に記憶する一方、同一地形情報はメモリM2に記憶しない。このことによって、局地地形情報の作成時間を短縮するとともに、地形情報の更新を効果的に行う。

【0095】
これらモードの切替えは、パイロットが手動入力指示をするスイッチ47(図1参照)の操作を手動で行うのが好ましい。なぜなら、たとえ好天時であっても超低空を飛行する場合には悪天候モードにして、障害物を回避できるようにした方がよいと考えるからである。

【0096】
局地地形情報および障害物情報を更新する際、全て自動的に行われるのでなくて、メモリM2,M3への最終的な記憶の書換えはパイロットの判断によりなされる。

【0097】
外部視界と擬似視界とは、パイロットの好みの割合で重畳して見えるようにされており、両者が重なっていることを確認することで、本システムの作動状態がモニタできる。擬似視界と実視界の重畳の比率または程度についてパイロットが自由に調整できる。表示手段13は、前述のようにたとえば液晶表示パネルによって実現され、その濃度または階調は、たとえば可変抵抗器などの入力手段51によって調整することができる。こうして上述のように、擬似視界と現実の視界との重畳の比率または程度を調整することができる。

【0098】
また、パイロット11は、常に不時着地点を探しながら飛行している。そこで本発明では、擬似視界上に予め不時着地点が書込まれている。したがって安心である。悪天候時は特に必要性が高い。不時着地点が確認できる。ヘリコプタのエンジンは単発か、または双発であり、エンジンが停止した場合にはオートローテーションで安全に着陸できるように常に準備しておかなくてはならない。そのためパイロットは常に不時着地点を確認しながら飛行している。擬似視界の中に不時着可能地点が容易に確認できるように強調されていれば、非常に安心して飛行できる。このことは悪天候時のようにパイロットのワークロードの高いときには必要である。上記各種地形情報によって作成された地図上に不時着地点や高圧電線等の固定的障害物情報をストア入力指示手段49を用いて手動にて記入することができる。

【0099】
ここではHMDを例として説明したが、大型のHUDを3方向に装備するようなこともでき、その構成も本発明に含まれる。

【0100】

【発明の効果】請求項1の本発明によれば、鮮明な3次元映像による擬似視界と現実の視界を重畳させてパイロットに示すことができるので、悪天候においても通常の有視界飛行を行っているような感覚で飛行することができ、むやみに地上付近に降下して位置を確認しなくてもよいので、地上の障害物と衝突する可能性がなく安全である。視野が広く、バランスを取ることが容易である。さらに、有視界飛行条件で飛行できるので、特定の飛行領域に限定されることなく自由に飛行できる。擬似視界が現実の視界と重畳して見えるので、本システムが正常に作動してることが確認できる。したがって、通常の航空機に搭載されている航法計器のように3重のシステムにしなくてもよく、安価で軽量である。

【0101】
請求項2~5の本発明によれば、晴天時には、レーザレーダにより、常に最新の地形情報を書込み、地図を更新しているので安心して飛行できる。悪天候時には、レーザレーダおよびさらに用いることがあるミリ波レーダにより、障害物を発見し衝突を避けることができる。

【0102】
請求項6の本発明によれば、局地地形情報を第2メモリにできるだけ短時間に更新してストアすることができ、したがって表示手段に局地地形情報をほとんど常時、表示することができる。

【0103】
請求項7の本発明によれば、ストア入力指示手段によって、たとえば不時着地点が明示されるようにすることができるので、エンジン停止したような緊急時においても、あわてることなく対処できる。

【0104】
請求項8の本発明によれば、擬似視界の表示の濃度を変化して、パイロットに見やすい擬似視界を形成することができ、安全な飛行を行うことが確実になる。

【0105】
請求項9の本発明によれば、障害物情報として、たとえば前述のように不時着地点、あるいはまたリフト・ケーブルなどを手動入力操作によって第3メモリにストアしておくことができるので、飛行の安全性がさらに一層、確保される。

【0106】
請求項10記載の本発明によれば、他機の位置が擬似視界の中に明瞭に表示されるため、空中衝突を避けることができる。

【0107】
以上の事柄は、全て現在回転翼航空機が有している運航上の問題点を解決するものであるので、本発明のシステムが実現されれば、回転翼航空機の有用性は画期的に向上し、社会に貢献すること極めて大なるものがある。また本発明は、地方のローカル飛行場を使用する小型固定翼航空機にも有用である。さらに本発明は、高い信頼性を有し、安価であり、軽量であることなどの優れた効果を有する。

【0108】
請求項11の本発明によれば、回転翼航空機、特にヘリコプタにおいて本発明は有利に実施される。

【0109】
請求項12の本発明によれば、前述と同様に、悪天候においても通常の有視界飛行を行っているような感覚で安全に飛行することができる。また本発明は、パイロットだけでなく、その他の観察者が、航空機から現実の視界を見るときにおいても、関連して実施することができる。

【0110】

図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図1】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図10】
11