TOP > 国内特許検索 > ミキサ回路 > 明細書

明細書 :ミキサ回路

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3108762号 (P3108762)
公開番号 特開平11-068467 (P1999-068467A)
登録日 平成12年9月14日(2000.9.14)
発行日 平成12年11月13日(2000.11.13)
公開日 平成11年3月9日(1999.3.9)
発明の名称または考案の名称 ミキサ回路
国際特許分類 H03D  7/00      
G01S  7/285     
H03D  7/02      
FI H03D 7/00 D
G01S 7/285
H03D 7/02
請求項の数または発明の数 1
全頁数 5
出願番号 特願平09-241979 (P1997-241979)
出願日 平成9年8月23日(1997.8.23)
審査請求日 平成9年8月26日(1997.8.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】佐藤 祐司
【氏名】岡田 昌彦
【氏名】黒柳 次郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100079290、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
審査官 【審査官】吉岡 浩
参考文献・文献 特開 昭61-13806(JP,A)
調査した分野 H03D 7/02
H03D 7/14
特許請求の範囲 【請求項1】
送信波をレベル差のある2つの送信波信号として分岐して出力するとともに、受信波をレベル差のある2つの受信波信号として分岐して出力する結合手段と、
前記結合手段から出力される、レベルの大きい方の送信波信号とレベルの小さい方の受信波信号とのビート信号を出力する第1のミキサ用ダイオードと、
前記結合手段から出力される、レベルの小さい方の送信波信号とレベルの大きい方の受信波信号とのビート信号を出力する第2のミキサ用ダイオードと、
前記第2のミキサ用ダイオードの方が前記第1のミキサ用ダイオードよりもビート信号の検波感度が高くなるように調整する感度調整手段とを具備することを特徴とするミキサ回路。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、電波の放射により目標物を検知して所定の指示を行うレーダ等の装置において、送信波と該目標物からの反射波である受信波とのビート信号を検出するためのミキサ回路に関する。

【0002】

【従来の技術】電波式目標検知装置に用いられるレーダにおいては、一般に送信波と目標物から反射された受信波とのビート信号が検出され、該ビート信号に基づいて該電波式目標検知装置と目標物との相対的な位置関係が求められる。

【0003】
図5に、かかるレーダにおける電波の送受信部及びミキサ回路(ビート信号検波回路)の従来構成を示す。

【0004】
図5において、発振器1は送信波としての高周波信号を生成し、これをカップラ(方向性結合器)2へ供給する。カップラ2は、前記高周波信号をサーキュレータ3へ供給するとともに、その一部を所定量減衰させて結合手段としてのハイブリッドリング5へ供給する。これは、後述する目標物体からの反射波は信号レベルが相当減衰されるので、送信波の信号レベルをこれに合わせるためである。

【0005】
サーキュレータ3は、カップラ2から供給される高周波信号を送信波信号としてアンテナ4へ導くとともに、該アンテナ4で受信された反射波信号を受信し、受信波信号としてハイブリッドリング5へ供給する。このサーキュレータ3を用いることにより、1つのアンテナ4を送受共用にすることができる。アンテナ4は、目標物体に対して電波を放射するとともに、該目標物体からの反射波を受信する。

【0006】
ハイブリッドリング5は、内部経路を介し、カップラ2から供給された送信波信号を混合手段としてのミキサ用ダイオード6及び7の双方に供給する。ここで、前記内部経路の特性により、ダイオード6へはダイオード7よりもレベルの大きい送信波信号が供給される。また、同時に内部経路を介して、サーキュレータ3から供給された受信波信号をダイオード6及び7の双方に供給する。ここでも前記内部経路の特性により、送信波信号の場合とは逆に、ダイオード7へはダイオード6よりもレベルの大きい受信波信号が供給される。

【0007】
ダイオード6,7は、その「電圧-電流特性」における順方向の非線形領域の特性により、供給される送信波信号及び受信波信号の差の周波数を有するビート信号をそれぞれ出力する。ダイオード6,7としては、高周波に対しても所期の特性が維持されるショットキー型ダイオードが使用される。そして、両ダイオードから出力されるビート信号は、最終的に1つのビート信号として出力端子8から出力される。

【0008】

【発明が解決しようとする課題】ところで、混合手段としてのミキサ用ダイオード6,7を高感度に動作させるためには、その「電圧-電流特性」においてできるだけ小さな電圧、電流のところで特性曲線が曲がっているものが良い。このため、両ダイオードに対しては、図5に示すようにバイアス電流を流さないか、あるいは電源を付加し、少量の順方向バイアス電流が両ダイオードに同量流れるようにしていた。

【0009】
しかし、このようにダイオードの検波感度を高く設定すると、レベルの大きな送信波信号が供給されるダイオード6においては、発振器1の振幅変動等が同時に検波され、出力されるビート信号の雑音成分が増加するという問題があった。

【0010】
そこで、両ダイオードにより大きなバイアス電圧を印加してダイオードの検波感度を低めると、今度は、レベルの大きな受信波信号が供給されるダイオード7においても検波感度が低下するので、出力されるビート信号の信号レベルが低下するという問題が生じた。すなわち、ビート信号のS/N比は満足のいく値とは言えず、レーダの性能、ひいては電波式目標検知装置の性能をより向上させることが困難になっていた。

【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、送信波信号と受信波信号とのビート信号のS/N比を改善させる電波式目標検知装置等のミキサ回路を提供することを目的としている。

【0012】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。

【0013】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のミキサ回路は、送信波をレベル差のある2つの送信波信号として分岐して出力するとともに、受信波をレベル差のある2つの受信波信号として分岐して出力する結合手段と、前記結合手段から出力される、レベルの大きい方の送信波信号とレベルの小さい方の受信波信号とのビート信号を出力する第1のミキサ用ダイオードと、前記結合手段から出力される、レベルの小さい方の送信波信号とレベルの大きい方の受信波信号とのビート信号を出力する第2のミキサ用ダイオードと、前記第2のミキサ用ダイオードの方が前記第1のミキサ用ダイオードよりもビート信号の検波感度が高くなるように調整する感度調整手段とを具備している。

【0014】
上記構成によれば、結合手段により、送信波及び受信波のそれぞれが、レベル差のある2つの信号として分岐して出力される。そして、第1のミキサ用ダイオードにおいて、その非直線特性により、レベルの大きい方の送信波信号とレベルの小さい方の受信波信号とのビート信号が出力される。また、第2のミキサ用ダイオードからは、同様の特性により、レベルの小さい方の送信波信号とレベルの大きい方の受信波信号とのビート信号が出力される。

【0015】
ここで、感度調整手段により、第2のミキサ用ダイオードの方が第1のミキサ用ダイオードよりもビート信号の検波感度が高くなるように調整されているので、受信波信号の検波感度を維持しつつ、送信波信号に含まれる発振器等に起因する雑音を低下させ、両者を合わせたビート信号のS/N比が改善される。

【0016】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係るミキサ回路の実施の形態を図面に従って説明する。

【0017】
図1は、本発明の一実施の形態における電波式目標検知装置のミキサ回路の構成を示す回路図である。同図において、図5と共通する各部には同一の符号を付し、その説明を省略する。

【0018】
図1において、第1のミキサ用ダイオード6に順方向バイアスを印加するため、抵抗11を介して負電源12が接続されている。同様に、第2のミキサ用ダイオード7に順方向バイアスを印加するため、抵抗13を介して正電源14が接続されている。これらの抵抗11,13、電源12,14は感度調整手段を構成している。

【0019】
次に、16,17は、入力信号の直流成分を除去し、出力端子8から交流のビート信号のみが出力されるようにするためのカップリングコンデンサである。

【0020】
なお、図1の回路は基板上に実装されるものであり、同図において符号を付さない要素は、実装上の配線パターンにより生じたインダクタンス又はキャパシタンス成分に対応するものである。

【0021】
次に、出力端子8に得られるビート信号のS/N比を最大にするように負電源12,正電源14の各出力電圧、及び抵抗11,13の各抵抗値を設定するため、本願発明者が行った実験について以下に説明する。

【0022】
<実験用回路>図2に、実験用回路の構成を示す。同図において、図1と共通する各部には同一の符号を付し、主な説明を省略する。

【0023】
図2において、ミキサ用ダイオード6,7としては型名「MA40416」のショットキーダイオードを使用し、抵抗11,13は、ともに抵抗値が1.6kΩのものを使用した。次に、12’は出力電圧が「0~-16V」までのいずれかに設定可能な可変型負電源、14’は出力電圧が「0~16V」までのいずれかに設定可能な可変型正電源である。

【0024】
次に、コンデンサ16,17としては、容量がともに3.3μFの電解コンデンサ(極性は図に示す通り)を使用した。

【0025】
そして、アンプ28、電解コンデンサ29を介して出力端子8’を設け、該出力端子8’から出力信号(ビート信号)を得るようにした。

【0026】
<実験方法>
第1の実験
負電源12’及び正電源14’の各出力電圧を、絶対値を同じにしつつ「0~16」Vまで1Vずつ変化させ、各場合において出力端子8’に得られるビート信号の信号レベル及びノイズレベルを測定し、そのS/N比を算出した。

【0027】
第2の実験
次に、正電源14’の出力電圧を「0,1,2,4,6,……,14,16(V)」のように、0Vから2Vまでは1Vずつ、それ以降は2Vずつ増加させ、各レベルにおいて負電源12’の出力電圧を「0,-1,-2,-4,-6,……,-14,-16(V)」のように同様に絶対値を増加させて、その各場合において出力端子8’に得られるビート信号のS/N比を同様に算出した。

【0028】
<実験結果>図3は、上記の実験の結果であり、ここでは、負電源12’及び正電源14’の出力電圧がともに0V(バイアス電圧:±0V)の場合、すなわち「バイアスをかけない」場合と、高いS/N比が得られた3つの場合の各結果の数値を具体的に示す。

【0029】
また、図4は、上記の実験の結果であり、ここでは、高いS/N比が得られた5つの場合の各結果の数値を具体的に示す。

【0030】
これらの結果より、負電源12’及び正電源14’の出力電圧の絶対値が同一の場合、すなわち、ダイオード6,7に同一のバイアス電圧が印加される場合は、ビート信号のS/N比が最大で34.2dB(バイアス電圧が±6Vの時)であるが、両電源の各出力電圧のバランスを変えた場合には、S/N比が最大で36.2dB(バイアス電圧が「+0V,-4V」の時)であった。

【0031】
上述した実験結果から、レベルの大きな送信波が入力される第1のミキサ用ダイオード6に印加するバイアス電圧を高めに設定して該ダイオードの検波感度をやや低くし、一方レベルの大きな受信波が入力される第2のミキサ用ダイオード7に印加するバイアス電圧を低め(又は「0」)に設定して該ダイオードの検波感度を高くすることにより、各バイアス電圧のバランスを同一に設定した場合に比べてS/N比が2dB程度改善されることがわかった。

【0032】
図1の検波回路については、上記実験の結果及び実装の便宜を鑑みて、負電源12及び正電源14の出力電圧、抵抗11及び13の各抵抗値を適当な値に設定し、第1のミキサ用ダイオード6に第2のミキサ用ダイオード7よりも大きなバイアス電圧が印加されるようにする。ここでは、上記実験の結果を反映させて、ダイオード6にのみバイアス電圧が印加されるようにした。

【0033】
次に、本実施の形態の動作を図1を参照して説明する。

【0034】
発振器1により生成された高周波信号は、カップラ2を介してサーキュレータ3に供給されるとともに、所定量減衰されて結合手段としてのハイブリッドリング5に供給される。

【0035】
サーキュレータ3は、上記供給された高周波信号を送信波信号としてアンテナ4へ導き、アンテナ4から電波が放射される。そして、この電波が目標物体により反射された反射波がアンテナ4により受信され、サーキュレータ3を介して受信信号として結合手段としてのハイブリッドリング5に供給される。

【0036】
ハイブリッドリング5は、カップラ2から供給された送信波信号を、その内部経路を通じて第1及び第2のミキサ用ダイオード6、7に供給する。ここで、上述した内部経路の特性により、第1のミキサ用ダイオード6へ供給される送信波信号のレベルは第2のミキサ用ダイオード7へ供給される送信波信号のレベルよりも大きくなっている。

【0037】
同様に、サーキュレータ3から供給された受信波信号についても、ハイブリッドリング5によりダイオード6及び7の双方に供給される。ここでもその内部経路の特性により、第2のミキサ用ダイオード7へ供給される受信波信号のレベルは第1のミキサ用ダイオード6へ供給される受信波信号のレベルよりも大きくなっている。

【0038】
ダイオード6に供給されるレベルの大きな送信波信号には、発振器1に起因する雑音成分が無視できないレベルで重複されている可能性が高いが、ダイオード6には負電源12から順方向のバイアス電流が供給され、その検波感度は低められるので、該雑音成分はほとんど検出されない。

【0039】
一方、バイアス電流の流れないダイオード7においては、レベルの大きい受信波信号とレベルの小さい送信波信号とのビート信号が感度良く検出される。

【0040】
また、バイアス印加により負電源12から出力端子8に向かう直流成分についてはカップリングコンデンサ16により遮断されるので、出力端子8には交流のビート信号のみが得られる。

【0041】
すなわち、このミキサ回路によれば、ダイオード7に大きく入力される受信波信号の検波感度を維持しつつ、ダイオード6に大きく入力される送信波信号に含まれる発振器等に起因する雑音を低下させ、出力端子8に得られるビート信号のS/N比を改善することができる。

【0042】
これにより、本発明によるミキサ回路を用いた目標検知装置においては、
目標物からの反射波が微弱な場合にも目標物の検知が可能となり、
より広範囲に存在する目標物の検知が可能になる
等、その性能の向上が期待できる。

【0043】
なお、図1の回路においてはダイオード7にはバイアス電圧を印加しないように設定したが、使用するダイオードや回路の特性を鑑みて、両ダイオードにバイアス電圧を印加しつつそのレベルを変えることにより両ダイオードの感度を異ならせるようにしても良い。

【0044】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。

【0045】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るミキサ回路によれば、感度調整手段により、大きな受信波信号(及び小さな送信波信号)が供給される第2のミキサ用ダイオードの方が、大きな送信波信号(及び小さな受信波信号)が供給される第1のミキサ用ダイオードよりもビート信号の検波感度が高くなるように調整されるので、送信波信号と受信波信号とのビート信号のS/N比を改善することができる。
図面
【図3】
0
【図1】
1
【図2】
2
【図4】
3
【図5】
4