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明細書 :装軌車両の荷重制御装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3142056号 (P3142056)
公開番号 特開平11-240470 (P1999-240470A)
登録日 平成12年12月22日(2000.12.22)
発行日 平成13年3月7日(2001.3.7)
公開日 平成11年9月7日(1999.9.7)
発明の名称または考案の名称 装軌車両の荷重制御装置
国際特許分類 B62D 55/116     
B60G 17/015     
FI B62D 55/116
B60G 17/015
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願平10-042034 (P1998-042034)
出願日 平成10年2月24日(1998.2.24)
審査請求日 平成11年6月14日(1999.6.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】井上 幸夫
【氏名】森 智章
【氏名】岡澤 武彦
【氏名】小野塚 三千雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100069246、【弁理士】、【氏名又は名称】石川 新
審査官 【審査官】山内 康明
参考文献・文献 特開 平9-123954(JP,A)
特開 平8-2453(JP,A)
特開 平9-202272(JP,A)
調査した分野 B62D 55/116
特許請求の範囲 【請求項1】
独立して車体を懸架する複数個の転輪に加わる荷重を油圧により調整する油圧シリンダと、同油圧シリンダへの作動油の油量及び油圧を制御するサーボ弁とを備えた装軌車両において、車両に掛かる前後方向及び左右方向の加速度を検出する加速度検出手段と、上記油圧シリンダの油圧を検出する圧力検出手段と、上記加速度検出手段からの加速度検出値により算出した慣性力と車両重心から各転輪中心までの距離とにより各転輪の支持脚に掛かる荷重を算出して油圧に換算し、この算出油圧と上記圧力検出手段からの油圧の検出値とを突き合わせて、上記慣性力に基づく算出油圧を打ち消すように上記サーボ弁に制御信号を出力する補正制御装置とを備えたことを特徴とする装軌車両の荷重制御装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は油圧式アクティブ懸架装置を備えた装軌車両における荷重制御装置に関する。

【0002】

【発明が解決しようとする課題】図5~図6には油圧式アクティブ懸架装置を備えた装軌車両の概要が示され、図5はその側面図、図6は図5のA矢視図である。図5~図6において、1は車体、3は履帯、4は履帯3の張りを調整するための誘導輪、5はエンジン(図示省略)からの駆動力を履帯3に伝達する起動輪である。6~11は車両の重心を支える転輪で左第1転輪6、左第2転輪7、左第3転輪8──の順に並び、上記起動輪5寄りの転輪が左第6転輪11となっている。

【0003】
上記装軌車両において、アクティブ懸架装置は不整地走行時の車体の動揺の低減を目的とした制御方式となっており、転輪6~11を支える各脚の荷重を一定とするように油圧制御動作を行うことによって、車両のバネ上の動揺を抑制している。しかしながら、かかるアクティブ懸架装置を備えた車両においては、車両の発進,停止,旋回走行時には車体1の慣性力により転輪6~11を支える各脚部に対する荷重が増減するので、上記脚部に設けられた懸架バネが縮み車体1の姿勢が変化してしまう。さらに、上記従来のアクティブ懸架装置を備えた装軌車両は、各脚の荷重が一定になるように制御するため、パッシブ懸架車両よりも大きな車体1の姿勢変化が発生する。等の問題点を抱えている。

【0004】
本発明の目的は、車両の発進、停止、あるいは走行時における、慣性力による車体姿勢の変化が抑制された装軌車両の荷重制御装置を提供することにある。

【0005】

【課題を解決するための手段】本発明は上記のような問題点を解決するもので、その要旨とする手段は、独立して車体を懸架する複数個の転輪に加わる荷重を油圧により調整する油圧シリンダと、同油圧シリンダへの作動油の油量及び油圧を制御するサーボ弁とを備えた装軌車両において、車両に掛かる前後方向及び左右方向の加速度を検出する加速度検出手段と、上記油圧シリンダの油圧を検出する圧力検出手段と、上記加速度検出手段からの加速度検出値により算出した慣性力と車両重心から各転輪中心までの距離とにより各転輪の支持脚に掛かる荷重を算出して油圧に換算し、この算出油圧と上記圧力検出手段からの油圧の検出値とを突き合わせて、上記慣性力に基づく算出油圧を打ち消すように上記サーボ弁に制御信号を出力する補正制御装置とを備えたことを特徴とする装軌車両の荷重制御装置にある。

【0006】
上記手段によれば、加速度検出器にて各転輪の支持脚部に作用する加速度を検出して補正制御装置に入力し、同制御装置においてこの検出値と各支持脚に加わる質量とにより、各転輪毎の慣性力を算出し、さらに車体重心から各転輪中心までの距離と上記慣性力とを使用したモーメント計算により各転輪の支持部に加わる荷重及びこれの油圧換算値を算出し、検出油圧と突き合わせて、上記慣性力による算出油圧を打ち消すような油圧制御信号をサーボ弁に出力する。

【0007】
これにより各転輪の油圧シリンダには、上記慣性力による油圧変化を打ち消すような油圧が作用することとなり、従って、各転輪の支持部において、慣性力による車体姿勢変化量が低減される。

【0008】

【発明の実施の形態】以下図1~図4及び図5~図6を参照して本発明の実施形態につき詳細に説明する。図5~図6は本発明が適用されるアクティブ懸架装置を備えた装軌車両(以下アクティブ懸架車両という)の概略構造図であり、図5~図6において、1は車体、3は履帯、4は履帯3の張りを調整するための誘導輪、5はエンジン(図示省略)からの駆動力を履帯3に伝達する起動輪である。6~11は車両の重心を支える転輪で左第1転輪6、左第2転輪7、左第3転輪8──の順に並び、上記起動輪5寄りの転輪が左第6転輪11となっている。

【0009】
図1は本発明の実施形態に係るアクティブ懸架車両の荷重制御装置のブロック図、図2は上記荷重制御装置における慣性力補正制御装置のブロック図、図3~図4は上記慣性力補正制御装置の演算要領説明図である。

【0010】
図1において、12は油圧シリンダで車両の各転輪6~11を支持する脚部に連結されている。13は上記油圧シリンダ12を動作させるためのサーボ弁である。上記油圧シリンダ12及びサーボ弁13は車両の転輪6~11の全てに取り付けられている。14は上記サーボ弁13に油圧を供給する油圧ポンプ、15は油タンクである。16は制御演算を行う制御演算装置であり、その内部に不整地走行時における車体1の動揺を低減するためのアクティブ懸架制御装置17、及び車両の発進,停止,旋回走行時等の慣性力の補正計算を実施するための慣性力補正制御装置18及び、上記両装置17,18の出力を加算する加算器31を有する。19はジャイロ箱、即ち車体角速度検定器で、車体1のロール角速度及びピッチ角速度を検出するものである。20は車体1の前後、左右方向の加速度を検出する加速度検出器、21は転輪6~11と車体1との相対位置を検出する位置検出器、22aは上記油圧シリンダ内の油圧検出用の圧力検出ピックアップ、22は同ピックアップ22aに接続される圧力検出器である。

【0011】
図2に示される上記慣性力補正制御装置18のブロック図において、23はCPU(演算器)、24はRAM(書き込み、呼び出しメモリ)、25は入力信号部、26はROM(呼び出し専用メモリ)、27は駆動出力部である。

【0012】
上記入力信号部25は、上記加速度検出器20からの車両1の前後、左右方向の加速度検出信号及び圧力検出器22からの油圧シリンダ12の油圧検出信号を入力して、上記CPU23に送出するものである。上記CPU23は、これらの入力信号を用いて車両の慣性力補正計算を行うものである。上記駆動出力部27は、上記CPU23からの指令信号により転輪6~11部に取付けられている上記サーボ弁13を制御するための油圧制御信号を出力するものである。

【0013】
次に上記慣性力補正制御装置18の動作(演算、制御等)につき、図3~図4を参照して説明する。図3は、図5に示す車両の側面図における機械的な車体中心軸に沿って車体1を左右に分割した場合の車両片側バネ上質量と車両の前後方向加速度とより車両の発進,停止時に生ずる慣性力の補正制御演算方法についての説明図である。図3において車両片側質量を、車両の前後方向重心2の位置よりも、即ち車体1の前後方向の重心2を通る車体中心軸50前側WF と、後側WR とに分ける。ここで、この実施形態では上記前側バネ上質量部を転輪3脚、後側バネ上質量部も転輪3脚の同一脚数で支持している場合について説明する。この場合は第1,6転輪6,11と、第2,5転輪7,10と、第3,4転輪8,9との3つの対を考える。ここで以下の計算に使用する符号の意味は次の通りとする。

【0014】
F :重心前側質量
R :重心後側質量
m1~m6:車両片側第1~6転輪にかかる質量
α :前後方向加速度
h :重心高さ
F1~F6:前後方向慣性力により車両片側第1~6転輪に加わる力
L1~L6:重心/第1~6転輪間距離
16:第1・6転輪間距離
25:第2・5転輪間距離
34:第3・4転輪間距離
A :油圧シリンダの断面積
先ず、第1,6転輪6,11の対については、重心2まわりのモーメントM16は次式で表せる。

【0015】

【数1】
JP0003142056B2_000002t.gif【0016】ここで、転輪の脚に加わる力の大きさF1,F6は式1より、

【0017】

【数2】
JP0003142056B2_000003t.gif【0018】
【数3】
JP0003142056B2_000004t.gif【0019】上式において、W16=(m1+m6)とする。同様に、第2,5転輪7,10の対、第3,4転輪8,9の対の重心2まわりのモーメントM25、M34と上記力:Fの大きさとの関係については、次のように表わせる。

【0020】

【数4】
JP0003142056B2_000005t.gif【0021】
【数5】
JP0003142056B2_000006t.gif【0022】
【数6】
JP0003142056B2_000007t.gif【0023】
【数7】
JP0003142056B2_000008t.gif【0024】
【数8】
JP0003142056B2_000009t.gif【0025】
【数9】
JP0003142056B2_000010t.gif【0026】数式4~9にて、W25=(m2+m5)、W34=(m3+m4)とする。よって各転輪の脚部で慣性力を補正するために必要となる力は上記のF1~F6となる。これを油圧で制御するため圧力P1~P6に変換すると、この圧力P1~P6は次に示す数式10~数式15により算出できる。但し、上記P1~P3とP4~P6の極性は逆になる。また、分割した車両の反対側のバネ上質量についても上記同様な計算を行う。

【0027】

【数10】
JP0003142056B2_000011t.gif【0028】
【数11】
JP0003142056B2_000012t.gif【0029】
【数12】
JP0003142056B2_000013t.gif【0030】
【数13】
JP0003142056B2_000014t.gif【0031】
【数14】
JP0003142056B2_000015t.gif【0032】
【数15】
JP0003142056B2_000016t.gif【0033】一方、図3に示す車両片側質量WF あるいはWR を車両1の前後方向重心位置2の前側と後側とに分けた時、支持する転輪の数が前後で異なった場合については、次による。例えば、車両の前側(F)が4脚、後側(R)が2脚の場合は、第1/第2転輪6,7と第5転輪10の対と第3/第4転輪8,9と第6転輪11との対とし、次いで、第1転輪部の質量と第5転輪部の半分の質量のモーメント及び、第2転輪部の質量と第5転輪部の半分の質量とのモーメントを用いて補正制御演算を行う。

【0034】
第3/第4転輪と第6転輪の対についても同様に計算する。このように、車体1の重心2の前後質量を支える転輪の数が異なっていても荷重の支持分担率を振り分けることにより慣性力補正制御を実施することができる。また、車両片側転輪数が6脚でない場合も荷重の支持分担率を振り分けることにより上記と同様に演算を行なう。

【0035】
図4は、車両の左右1脚分(例えば、左第1転輪と右第1転輪)を対として抜き出したバネ上質量と、車両左右方向加速度とより、旋回時に生ずる慣性力の補正制御演算方法の説明図である。

【0036】
ここで以下の計算に使用する符号の意味は次の通りとする。
ml,mr:左右転輪1脚にかかる質量
W :左右転輪1脚対にかかる質量(ml+mr)
β :左右方向加速度
h :重心高さ
Fl,Fr:左右方向慣性力により左右転輪1脚に加わる力
Ll,Lr:重心から左右転輪までの距離
L :左右側転輪間距離(Ll+Lr)
A :油圧シリンダの断面積
左右1脚対の質量を車両左右方向重心位置の左右に分けて、上記のようにml、mrとする。図4において、重心まわりのモーメントMは次式で表せる。

【0037】

【数16】
JP0003142056B2_000017t.gif【0038】ここで、脚に加わる力の大きさFl,Frは数式16より次のようになる。

【0039】

【数17】
JP0003142056B2_000018t.gif【0040】
【数18】
JP0003142056B2_000019t.gif【0041】よって、各転輪の脚部で慣性力を補正するために必要となる力は上記Fl、Frとなる。この力を油圧で制御するため、圧力に変換すると数式19~20のPl、Prとして算出できる。ここで、上記数式19及び20におけるPlとPrの極性は逆になる。他の左右転輪対についても上記と同様な計算を行う。

【0042】

【数19】
JP0003142056B2_000020t.gif【0043】
【数20】
JP0003142056B2_000021t.gif【0044】制御演算装置16においては、以上に述べた、慣性力による荷重の補正量の計算を上記慣性力補正制御装置18にて行ない、その出力値つまり、上記数式10~15に示される前後方向に関する補正油圧P1~P6、並びに数式19~20に示される。左右方向に関する補正油圧Pl、Prと、アクティブ懸架制御装置17からの出力値とを加算器31にて加算する。

【0045】
そして、上記制御演算装置16においては、上記慣性力による補正油圧を打ち消す油圧、つまり上記補正油圧と逆方向で大きさが同一の油圧制御信号を各転輪のサーボ弁13に出力する。これにより、各転輪の慣性力による車体姿勢変化量が低減される。

【0046】

【発明の効果】本発明は以上のように構成されており、本発明によれば、補正制御装置により車両の慣性力により各転輪に加わる荷重及びこれの油圧換算値を算出し、この慣性力による油圧を打ち消すような油圧制御信号をサーボ弁に出力するので、各転輪の油圧シリンダには、上記慣性力による油圧変化を打ち消すような油圧が作用することとなり、従って、各転輪の支持部において、慣性力による車体姿勢変化量が低減され、発停時、急発進時等の過渡期においても、車体の動揺が少ない装軌式車両を得ることができる。なお、本発明は、雪上車等及び船舶の動揺低減装置の荷重制御に適用可能である。
図面
【図1】
0
【図6】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5