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明細書 :プロペラ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3151484号 (P3151484)
公開番号 特開2000-079897 (P2000-079897A)
登録日 平成13年1月26日(2001.1.26)
発行日 平成13年4月3日(2001.4.3)
公開日 平成12年3月21日(2000.3.21)
発明の名称または考案の名称 プロペラ
国際特許分類 B63H  1/26      
B63H  1/18      
FI B63H 1/26 A
B63H 1/18
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願平10-265758 (P1998-265758)
出願日 平成10年9月4日(1998.9.4)
審査請求日 平成10年9月4日(1998.9.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】佐藤 隆一
【氏名】佐々木 紀幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100079360、【弁理士】、【氏名又は名称】池澤 寛
審査官 【審査官】山内 康明
参考文献・文献 特公 昭61-14996(JP,B2)
特公 平2-32193(JP,B2)
調査した分野 B63H 1/18
B63H 1/26
特許請求の範囲 【請求項1】
回転軸と、
この回転軸の中心からの半径R、およびこの回転軸を中心とした回転方向の断面における最大厚さTを有するプロペラ本体をこの回転軸のまわりに複数本備えたプロペラであって、
前記プロペラ本体について、
前記回転軸の中心から0.7R~0.9Rの間隔範囲にある第1の領域において、前記回転軸を中心とした回転方向の断面における前記プロペラ本体の前縁部の半径をrとしたときに、
0.01≦r/T≦0.02
とし、
前記回転軸の中心から所定の間隔範囲にある第2の領域において、前記回転軸を中心とした回転方向の断面における前記プロペラ本体の後縁部の厚さをtとしたときに、
0.05≦t/T≦0.10
としたことを特徴とするプロペラ。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明はプロペラにかかるもので、とくに回転によるキャビテーションの発生に起因する船体の振動や騒音を低減可能なプロペラに関するものである。

【0002】

【従来の技術】図7は、従来からの船体1の側面図、図8は、同、船体1の進行方向後ろ側から見た説明図で、船体1の振動や騒音は、とくにプロペラ2によって起こされるが、これらを低減させるためには、プロペラ2の回転数の低減を図ること、およびプロペラ2と船体1との間のクリアランス、すなわち船体進行方向におけるクリアランスおよびプロペラ2の回転面内におけるプロペラ直上部船体1Aとの間のクリアランスの増加を図ること、などが有効である。なおプロペラ2は、その回転軸3(ボス)、および回転軸3に固定した複数本のプロペラ本体4を有する。しかしながら、プロペラ2の回転数を低減させると、その回転軸3の中心からの最適なプロペラ2の直径が大きくなり、船体1との間のクリアランスが減少し、水圧その他の変動を受けやすくなってしまうという問題がある。

【0003】
図9は、馬力係数Bpおよび直径係数δにより整理された最適設計チャート図(Bp-δチャート図)であって、このチャート図から、キャビテーションが発生しないプロペラ2の最適な直径Dを求めることができる。プロペラ2の一回転で前進するらせん距離をH、回転軸3の中心からのプロペラ2の直径をD、プロペラ2の回転数をN、伝達馬力をP、プロペラ2の前進速度をVとし、直径係数δ=N・D/V、ピッチ比をH/D、馬力係数Bp=N・P0.5/V2.5、プロペラ効率をηとすると、図示のように、プロペラ効率ηおよび直径係数δが一定の条件において、プロペラ本体4の前進面4FCにキャビテーションが発生する範囲Iおよび後進面4BKにキャビテーションが発生する範囲IIは、最適値範囲IIIのグラフ下部および上部にそれぞれ位置する。なお図7に示すように、プロペラ本体4の前進面4FCとは、船体1の進行方向後ろ側の面であり、後進面4BKとは、船体1の進行方向前側の面である。

【0004】
しかしながら、プロペラ2を設計するにあたって、船体1のエンジンの馬力(上記伝達馬力Pに相当)あるいは船速(上記前進速度Vに相当)は初期条件として与えられるもので、これらの初期条件の制約の上で、さらに直径係数δおよびプロペラ効率ηを考慮して、プロペラ2の回転数Nや直径Dを選択してゆくが、その選択によりこの最適値範囲IIIを逸脱すると、プロペラ2のプロペラ効率ηやキャビテーション性能ないし振動特性あるいは騒音特性が悪化するという問題がある。

【0005】
たとえば図9中、点Q1は、最適値範囲III内における、より高回転のプロペラであり、点Q2は、最適値範囲III内における、より低回転かつ大直径のプロペラで、点Q3は、後進面4BKにキャビテーションが発生する範囲IIにおける、より低回転であって点Q1と同直径のプロペラをそれぞれ示す。既述のように、キャビテーションを抑制するために、プロペラ2の直径Dを維持したままで低回転化すると、プロペラ2の特性としてはグラフ中の点Q2から点Q3となって、高ピッチの(すなわち、プロペラ2の一回転で前進するらせん距離が大きな)プロペラ2にせざるを得なくなり、この場合プロペラ2に衝突する流体に対するプロペラ本体4の迎え角が過大となり、プロペラ効率ηの低下、かつキャビテーションが発生してしまうという問題がある。

【0006】
図10は、回転軸3を中心とした回転方向の断面におけるプロペラ本体4の断面長さに対する後進面4BKの圧力係数Cpの関係を示すグラフであり、上述のように迎え角が大きくなると、圧力係数Cpが過大となる部分が後進面4BKに発生し、圧力係数Cpがキャビテーション指数σをこえたプロペラ本体4の部分、たとえばその前縁部4Aのとくに後進面4BK側において、キャビテーションが発生し、振動および騒音の問題を生ずることになる。すなわち、プロペラ2としてのピッチが大きくなると迎え角が大きくなり、直径Dが同じであっても、キャビテーションが発生しやすくなってしまうという問題がある。

【0007】

【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、回転にともなって発生するキャビテーションを抑制し、船体の振動および騒音を低減することができるプロペラを提供することを課題とする。

【0008】
また本発明は、低回転としても、プロペラ本体の直径を大きくする必要がないプロペラを提供することを課題とする。

【0009】
また本発明は、キャビテーションを抑制するように低回転化してもプロペラ効率を低下させることがないプロペラを提供することを課題とする。

【0010】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、プロペラ本体の翼型を工夫すること、プロペラの直径を従来と同等に維持したまま低回転化すること、具体的には、プロペラ本体の所定領域(第1の領域)においてその前縁部の半径を従来より小さくすること、および他の所定領域(第2の領域)においてプロペラ本体の後縁部の厚さを従来より厚くすること(あるいは後縁部を短く切除すること)、さらには最適設計チャート図(Bp-δチャート図)において最適値範囲をグラフの上方に移行することに着目したもので、回転軸と、この回転軸の中心からの半径R、およびこの回転軸を中心とした回転方向の断面における最大厚さTを有するプロペラ本体をこの回転軸のまわりに複数本備えたプロペラであって、上記プロペラ本体について、上記回転軸の中心から0.7R~0.9Rの間隔範囲にある第1の領域において、上記回転軸を中心とした回転方向の断面における上記プロペラ本体の前縁部の半径をrとしたときに、0.01≦r/T≦0.02とし、上記回転軸の中心から所定の間隔範囲(全範囲あるいは少なくとも一部の範囲)にある第2の領域において、上記回転軸を中心とした回転方向の断面における上記プロペラ本体の後縁部の厚さをtとしたときに、0.05≦t/T≦0.10としたことを特徴とするプロペラである。なお、上記第2の領域としては、上記回転軸の中心から所定の間隔範囲であればよく、たとえば、上記回転軸の周面から0.5Rの間隔範囲にある領域、あるいは上記回転軸の中心から0.7R~0.9Rの間隔範囲にある領域などその他の少なくとも一部の範囲にある領域はもちろん、プロペラ本体の全範囲にわたる領域であってもよい。

【0011】
当該プロペラの一回転で前進するらせん距離をH、上記回転軸の中心からの当該プロペラの直径をD、プロペラ回転数をN、伝達馬力をP、プロペラ前進速度をVとし、直径係数δ=N・D/V、ピッチ比をH/D、馬力係数Bp=N・P0.5/V2.5としたときに、この馬力係数Bpに対する上記ピッチ比H/Dの関係を示すグラフにおいて、当該プロペラの直径Dを適正に設定する範囲を、上記プロペラ回転数Nを一定としても上記直径係数δが小さくなる範囲に移行させることができる。

【0012】
本発明によるプロペラは、船体に取り付ける場合はもちろん、スクリュー式によるすべての推進装置に適用可能であり、ポンプなどのインペラーなどにも応用可能である。

【0013】
本発明によるプロペラにおいては、プロペラ本体の所定領域(第1の領域、すなわち回転軸の中心から0.7R~0.9Rの間隔範囲)において、プロペラ本体の前縁部の半径rについて最大厚さTに対し、0.01≦r/T≦0.02として半径rを従来より小さくするとともに、他の少なくとも一部の範囲あるいは全範囲にある所定領域(第2の領域、たとえば回転軸の周面から0.5Rの間隔範囲)において、プロペラ本体の後縁部の厚さtについて最大厚さTに対し、0.05≦t/T≦0.10として厚さtを従来より厚くすること(あるいは後縁部を短く切除すること)としたので、プロペラ本体の翼型のキャンバー(翼型中心線の反り)を、従来の図10とは異なり、図6(あるいは図2、図3)のように変更して流れに対する有効迎え角を減少させるとともに、迎え角減少による揚力の減少分を、キャンバーの変更による揚力の増加により、補うようにしたので、直径を従来と同等に維持したままで、所定の効率を確保可能で、キャビテーション性能の悪化を抑制することができる。したがって、直径が小さく、効率が高く、変動水圧が小さいとともに、キャビテーションを有効に抑制して、船体の振動および騒音を小さくし、コストの削減が可能なプロペラとすることができる。

【0014】

【発明の実施の形態】つぎに本発明の実施の形態によるプロペラ10を図1ないし図6にもとづき説明する。ただし、図7ないし図10と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。図1は、プロペラ10のプロペラ本体11の回転軸3(ボス)軸方向からみた正面図、図2は、同、回転軸3を中心とした回転方向の断面におけるプロペラ本体11の第1の領域11Aにおける断面図、図3は、同、プロペラ本体11の第2の領域11Cにおける断面図である。プロペラ本体11の半径をR、最大厚さをTとすると、プロペラ本体11において、第1の領域11Aは0.7R~0.9Rの間隔範囲にあって、第1の領域11Aにおけるプロペラ本体11の前縁部11Bの半径をr(図2)としたときに、
0.01≦r/T≦0.02
としてある。さらにプロペラ本体11において、第2の領域11Cは回転軸3(ボス)の周面から0.5Rの間隔範囲にあって、第2の領域11Cにおけるプロペラ本体11の後縁部11Dの厚さをt(図3)としたときに、
0.05≦t/T≦0.10
としてある。

【0015】
こうした構成のプロペラ10において、図2および図3に示すように、プロペラ本体11のキャンバーラインを第1の領域11Aおよび第2の領域11Cにおいて、従来のプロペラ本体4とは異なるようにしたので、キャビテーションを抑制するためにこれを低回転化しても、その直径Dを大きくする必要がないようにすることができる。すなわち、図4は、プロペラ本体11の翼数に対する(Bp)1/2、直径係数δ(従来)および直径係数δ(本発明)を示すグラフであって、すべての翼数において直径係数δを従来に比較して小さく維持していることがわかる。

【0016】
図5は、図9と同様の、ただし、本発明によるプロペラ11に関する馬力係数(Bp)および直径係数δにより整理された最適設計チャート図(Bp-δチャート図)で、プロペラ効率ηおよび直径係数δが一定の条件において、プロペラ本体11の前進面11FCにキャビテーションが発生する範囲I、および後進面11BKにキャビテーションが発生する範囲IIに対して最適値範囲IIIが、図9の従来の場合に比較して、上方に移行しており、低回転化しても直径を大きくすることなく所定のプロペラ効率ηを維持し、かつキャビテーションを発生せずして、振動および騒音も抑制することができる。たとえば図5中、点Q1は、最適値範囲III内における、より高回転のプロペラであり、点Q2は、最適値範囲III内における、より低回転かつ大直径のプロペラであり、点Q3は、キャビテーションが発生しない最適値範囲IIIにおける、より低回転であって点Q1と同直径のプロペラをそれぞれ示す。

【0017】
図6は、図10と同様の、回転軸3を中心とした回転方向の断面におけるプロペラ本体11の断面長さに対する圧力係数Cpの関係を示すグラフであって、圧力係数Cpはプロペラ本体11の長さ全体にわたってキャビテーション指数σをこえることがなく、キャビテーションが発生しないことがわかる。

【0018】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、プロペラ本体の翼型について、r/Tの値を従来より小さくして0.01≦r/T≦0.02とし、t/Tの値を従来より大きくしておよび0.05≦t/T≦0.10となるようにしたので、低回転化することによりキャビテーションの発生を抑制しても、その直径を大きくすることなく、効率の良好なプロペラとすることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図7】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9