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明細書 :ドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3199240号 (P3199240)
公開番号 特開2000-266833 (P2000-266833A)
登録日 平成13年6月15日(2001.6.15)
発行日 平成13年8月13日(2001.8.13)
公開日 平成12年9月29日(2000.9.29)
発明の名称または考案の名称 ドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置及び方法
国際特許分類 G01S  3/808     
G01S  7/526     
FI G01S 3/808
G01S 7/52
請求項の数または発明の数 6
全頁数 16
出願番号 特願平11-069924 (P1999-069924)
出願日 平成11年3月16日(1999.3.16)
審査請求日 平成11年3月16日(1999.3.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】倉野 重光
【氏名】中野 武吉
【氏名】高橋 秀幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守 (外1名)
審査官 【審査官】宮川 哲伸
参考文献・文献 特開 平9-145820(JP,A)
特開 平10-2949(JP,A)
特開 平3-242577(JP,A)
特開 平9-43332(JP,A)
特開 平5-87903(JP,A)
特公 平7-107549(JP,B2)
特許2845850(JP,B2)
調査した分野 G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 5/30
G01S 7/52 - 7/64
G01S 15/00 - 15/96
特許請求の範囲 【請求項1】
航走体の放射雑音を2つ以上の受波器で受信し、受信された受波信号間の相互相関をとることにより、音響の方位を求める測位装置において、航走体の放射雑音を検出する受波器A(5),受波器B(6)と、入力された波形信号を一定レベルまで振幅増幅する受信回路(7,8)と、アナログ波形信号をデジタル波形信号に変換するA/D変換器(9,10)と、該デジタル波形信号をFFT処理し時間-周波数信号に変換するFFT処理器(11,12)と、FFT処理された時間-周波数信号を記憶する記憶装置(13,14)と、航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域を検出する検出器(15)と、航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域でバンドパスフィルター処理をするバンドパスフィルター処理器(16,17)と、ドップラー周波数による航走体速度検出器(18)と、前記バンドパスフィルター処理された波形信号についてドップラー現象による時間伸縮率を求めて、ドップラー補正を行うドップラー補正演算器(19)と、ドップラー補正された受波信号について相互相関処理を行いその最大値から航走雑音の受波器A(5)と受波器B(6)への到達時間差を検出する相互相関演算器(20)と、相互相関演算の結果から目標航走体の方位と位置を算出し表示する表示器(21)を具備し、音源が高速で航走した場合に、2つ以上の受波器で受信した受波信号間に生じるドップラー効果の影響を補正し、各受波信号間の相互相関の最大値の算出を可能にして、航走体放射雑音の各受波器までの到達時間差を検出し、音源の位置を特定することを特徴とするドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置。

【請求項2】
請求項1記載のドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置において、前記航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域を検出する検出器(15)は、
(a)第1の受波器による受波信号に基づいて、前記記憶装置(13,14)からFFT処理された時間-周波数受波信号を読み込んで、サンプリング時間N秒毎のローファーグラムを作成する手段と、
(b)前記ローファーグラムにおいて周波数0~FHz間のスペクトルラインにおけるパワー値極大値列を抽出する手段と、
(c)前記(a)及び(b)手段の処理を前記ローファーグラムにおいて周波数0~FHzの範囲にある航走雑音のパワー値の極大値列群の全部について実施する手段とを備え、
(d)第2の受波器による受波信号に基づいて、上記(a)、(b)及び(c)手段による処理を行い、前記第1の受波器受波信号に基づいて検出された航走雑音周波数帯域の上限値と下限値が、前記第2の受波器受波信号に基づいて検出された航走雑音周波数帯域の上限値と下限値とに一致した場合に、航走体振動特性に起因する航走雑音の周波数帯域と判定する手段とを具備することを特徴とするドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置。

【請求項3】
請求項1記載のドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置において、ドップラー周波数による航走体速度検出器(18)以外の他の手段によって、目標航走体速度が検出される場合には、ドップラー周波数による航走体速度検出器(18)に代えて、前記他の手段による目標航走体速度の値をドップラー補正演算器(19)に入力することによって、各受波信号間の相互相関の最大値の算出を可能にして、航走体放射雑音の各受波器までの到達時間差を検出し、音源の位置を特定することを特徴とするドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置。

【請求項4】
請求項1記載のドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置を水平方向に多数設置し、それぞれの装置が求めた音源の方位からその交点を求め、音源位置を特定することを特徴とするドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置。

【請求項5】
請求項1記載のドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置を垂直方向に多数設置し、それぞれの装置が求めた音源の方位からその交点を求め、音源位置を特定することを特徴とするドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置。

【請求項6】
航走体の放射雑音を2つ以上の受波器で受信し、受信された受波信号間の相互相関をとることにより、音響の方位を求める測位方法において、第1の受波器による受波信号から音源の航走速度が求まることを基にして、航走体が発生する航走雑音を複数の受波器で受信して、音源が高速で航走した場合に、2つ以上の受波器で受信した受波信号間に生じるドップラー効果の影響を補正し、各受波信号間の相互相関の最大値の算出を可能にして、航走体放射雑音の各受波器までの到達時間差を検出し、音源の位置を特定するドップラー補正を行う航走雑音用音響測位方法であって、
(a)第1の受波器による受波信号に基づいて、記憶装置からFFT処理された時間-周波数受波信号を読み込んで、サンプリング時間N秒毎のローファーグラムを作成し、
(b)該ローファーグラムにおいて周波数0~FHz間のスペクトルラインにおけるパワー値極大値列を抽出し、
(c)前記(a)及び(b)の処理を前記ローファーグラムにおいて周波数0~FHzの範囲にある航走雑音のパワー値の極大値列群の全部について実施し、
(d)前記(a)、(b)及び(c)の処理を第2の受波器受波信号に基づいて行い、そこで検出された航走雑音周波数帯域の上限値と下限値が第1の受波器による受波信号の周波数帯域の上限値と下限値とに一致した場合に、航走体振動特性に起因する航走雑音の周波数帯域とすることを特徴とするドップラー補正を行う航走雑音用音響測位方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、航走体の放射雑音を用いて、航走体の位置を測定する音響測位装置及び方法に関するものである。

【0002】

【従来の技術】従来の音響測位装置は、文献1:「海洋音響(基礎と応用)」 海洋音響学会P.209~213と、文献2:特許公報 特許番号第2723866号「発明の名称:信号検出装置」に開示されているものがあり、原理は文献1で示されたSBL測位方式又はSSBL方式と同様である。文献1で開示された装置のブロック図は、図2に示すものであり、原理等を説明するために、図3、図4及び図5を示す。

【0003】
図2において、1は水中、2は水面、3は海底、4は航走体、5は受波器A、6は受波器B、7,8は受信回路、9,10はA/D変換器、20は相互相関演算部、21は表示器である。

【0004】
以下、各構成機器の作動状況を説明する。

【0005】
水中1及び水面2を航走体4が航走している場合、航走体4からは航走雑音が発生しており、受波器A5及び受波器B6で受信された信号は受信回路7及び8で一定レベルまで振幅増幅された後、A/D変換器9及び10に入力される。ここでアナログ信号はデジタル信号に変換され、相互相関演算部20に入力される。相互相関演算部20ではA/D変換器9と10から送られてきたデジタル信号である受波信号Aと受波信号Bについて、図3に原理を示すように相互相関処理により雑音の到達時間差を求める。さらに、図4と図5に示す受波信号Aと、受波信号Bの到達時間差から音源の方位及び位置を測位し、その結果を表示器21に表示する。

【0006】
文献2は、文献1で開示された原理におけるピンガー音の代わりに航走体の放射雑音を含む広帯域雑音を用いるもので、異なる二箇所に配置された受波器で受信した該広帯域雑音に生じる音源の移動に伴うドップラー効果の影響を補正する信号検出装置に関するものである。すなわち、二箇所で受信した信号の一方の入力信号を予め定めた複数の比率でそれぞれ時間圧縮または時間延伸する複数のドップラー補正部と、該複数のドップラー補正部の出力と他方の信号の相互相関をそれぞれ求める複数の相互相関部と、各相互相関部の出力から最大値を選択する最大選択部を有している。図3を用いて、文献2で開示された従来の発明を数式で説明する。

【0007】
異なる二箇所に配置された受波器による受信波形は次式で表示される。s(t)を時刻tでの受波器A5の受波信号から雑音とドップラー効果を除去した振幅とすると、受波器A5及び受波器B6の受信波形x1 (t)とx2 (t)はドップラー効果を包含して次式で表示される。

【0008】

【数1】
JP0003199240B2_000002t.gif【0009】
【数2】
JP0003199240B2_000003t.gif【0010】D(t):時刻tでの受波器AとBとの航走雑音到達時間差
1 (t):時刻tに受波器A5が受信するガウス性白色雑音
2 (t):時刻tに受波器B6が受信するガウス性白色雑音
1 (t)とn2 (t)は無相関とする。

【0011】
ここで、文献2で開示された発明は、受波器A5及び受波器B6の受信波形の周波数を一致させるため一方の波形のドップラー周波数を補正する方法として、時間軸伸縮係数を用いた。

【0012】

【数3】
JP0003199240B2_000004t.gif【0013】
【数4】
JP0003199240B2_000005t.gif【0014】β1 (t):時刻tでの受波器A5と音源での音波の時間軸伸縮係数
β2 (t):時刻tでの受波器B6と音源での音波の時間軸伸縮係数
上記式(3)と式(4)において予め定めた複数の比率でそれぞれ時間圧縮又は時間延伸する複数のドップラー補正装置により受波器A5及び受波器B6の受信波形間の最大相関値を検出している。すなわち、補正後の受信波形をx1 ′(t)とすると、

【0015】

【数5】
JP0003199240B2_000006t.gif【0016】β(t):時刻tでの受波器A5と音源での音波の時間軸伸縮係数
よって、x2 (t)とx1 ′(t)の相互相関関数Ri(τ)は、次式で表示される。

【0017】

【数6】
JP0003199240B2_000007t.gif【0018】T:受信波形計測時間
積分時間Tが十分大きい場合、上記式(6)のRi(τ)は雑音n1 (βt)及びn2 (βt)に相関がないため、ββ1 ≒β2 かつτ=D(t)において相関の最大値

【0019】

【数7】
JP0003199240B2_000008t.gif【0020】を検出できるものとしている。

【0021】

【発明が解決しようとする課題】しかし、文献2で開示された発明の問題点は、水中1または水面2を航走する航走体4からの航走音と受波器A5又は受波器B6で受信される受信波形間で生じるドップラー周波数は、文献2で開示された発明が対象とする広帯域雑音では非常に範囲が広く、複数のドップラー補正部を用いても、正確な補正はできない。なぜなら、文献3:Jack R Williams:「A Nomogram for VELOCITY AND RANGE DETERMINATION FROM ACOUSTIC DOPPLER」,INTERSTATEELECTRONICS CORPORATION November 1970からドップラー周波数と音源速度の関係は、次式で表示されている。

【0022】

【数8】
JP0003199240B2_000009t.gif【0023】ここで、
D :ドップラー周波数
0 :音源周波数
P :水中音波伝搬速度
W :受波器A5を中心とする円の半径方向水速度
H :受波器A5を中心とする円の半径方向受波器速度
t :音源航走体速度
上記式(8)より、ドップラー周波数fD は音源周波数f0 と音源航走体速度Vt 等によって異なることが分かる。文献2の発明は、音源周波数f0 として広帯域周波数を用いることを原理としている。したがって、予め定められた複数の時間伸縮比を持った複数のドップラー補正部に受信波形を入力することによって、有限個である複数のドップラー周波数成分を除去して相互相関を算出し、その最大値を検出するものである。したがって、文献2において開示された発明では、用いる広帯域周波数音源に生ずる無数のドップラー周波数fD を有限個のドップラー補正部で補正することになり、相互相関部に入力されたドップラー補正された受信波形の相互相関の最大値検出には大きな誤差を持つか又は検出不可能になるという問題がある。

【0024】
本発明は、水上又は水中を航走する航走体の水中雑音の中の、船体やプロペラ等航走体の形状と材質によって定まる振動特性に起因する放射雑音が、航走体の航走速度が増減した場合、雑音源音圧が増減しても、周波数スペクトルにおける周波数帯域が変化しないことの既知事実と本発明での検証事実を利用するものであり、該航走体の振動特性に起因する放射雑音を航走体の水中放射雑音から検出する方法を新たに発明したものである。

【0025】
そして、本発明は、これらの事実に着目し、さらに文献3において開示された内容により受波器Aによる受波信号から音源の航走速度が求まることを基にして、航走体が発生する航走雑音を複数の受波器で受信して、航走体の位置を検出するドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置及び方法を提供することを目的としている。

【0026】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、〔1〕航走体の放射雑音を2つ以上の受波器で受信し、受信された受波信号間の相互相関をとることにより、音響の方位を求める測位装置において、航走体の放射雑音を検出する受波器A(5),受波器B(6)と、入力された波形信号を一定レベルまで振幅増幅する受信回路(7,8)と、アナログ波形信号をデジタル波形信号に変換するA/D変換器(9,10)と、このデジタル波形信号をFFT処理し時間-周波数信号に変換するFFT処理器(11,12)と、FFT処理された時間-周波数信号を記憶する記憶装置(13,14)と、航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域を検出する検出器(15)と、航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域でバンドパスフィルター処理をするバンドパスフィルター処理器(16,17)と、ドップラー周波数による航走体速度検出器(18)と、前記バンドパスフィルター処理された波形信号についてドップラー現象による時間伸縮率を求めて、ドップラー補正を行うドップラー補正演算器(19)と、ドップラー補正された受波信号について相互相関処理を行いその最大値から航走雑音の受波器A(5)と受波器B(6)への到達時間差を検出する相互相関演算器(20)と、相互相関演算の結果から目標航走体の方位と位置を算出し表示する表示器(21)を具備し、音源が高速で航走した場合に、2つ以上の受波器で受信した受波信号間に生じるドップラー効果の影響を補正し、各受波信号間の相互相関の最大値の算出を可能にして、航走体放射雑音の各受波器までの到達時間差を検出し、音源の位置を特定するようにしたものである。

【0027】
〔2〕特に、上記〔1〕記載のドップラー補正を行う航走雑音用音響測位装置において、前記航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域を検出する検出器(15)は、(a)第1の受波器による受波信号に基づいて、前記記憶装置(13,14)からFFT処理された時間-周波数受波信号を読み込んで、サンプリング時間N秒毎のローファーグラムを作成する手段と、(b)前記ローファーグラムにおいて周波数0~FHz間のスペクトルラインにおけるパワー値極大値列を抽出する手段と、(c)前記(a)及び(b)手段の処理を前記ローファーグラムにおいて周波数0~FHzの範囲にある航走雑音のパワー値の極大値列群の全部について実施する手段とを備え、(d)第2の受波器による受波信号に基づいて、上記(a)、(b)及び(c)手段による処理を行い、前記第1の受波器受波信号に基づいて検出された航走雑音周波数帯域の上限値と下限値が、前記第2の受波器受波信号に基づいて検出された航走雑音周波数帯域の上限値と下限値とに一致した場合に、航走体振動特性に起因する航走雑音の周波数帯域と判定する手段とを具備するようにしたものである。

【0028】
また、本発明のドップラー補正を行う航走雑音用音響測位方法においては、
〔6〕航走体の放射雑音を2つ以上の受波器で受信し、受信された受波信号間の相互相関をとることにより、音響の方位を求める測位方法において、第1の受波器による受波信号から音源の航走速度が求まることを基にして、航走体が発生する航走雑音を複数の受波器で受信して、音源が高速で航走した場合に、2つ以上の受波器で受信した受波信号間に生じるドップラー効果の影響を補正し、各受波信号間の相互相関の最大値の算出を可能にして、航走体放射雑音の各受波器までの到達時間差を検出し、音源の位置を特定するドップラー補正を行う航走雑音用音響測位方法であって、

【0029】
(a)第1の受波器による受波信号に基づいて、記憶装置からFFT処理された時間-周波数受波信号を読み込んで、サンプリング時間N秒毎のローファーグラムを作成し、(b)そのローファーグラムにおいて周波数0~FHz間のスペクトルラインにおけるパワー値極大値列を抽出し、(c)前記(a)及び(b)の処理を前記ローファーグラムにおいて周波数0~FHzの範囲にある航走雑音のパワー値の極大値列群の全部について実施し、(d)前記(a)、(b)及び(c)の処理を第2の受波器受波信号に基づいて行い、そこで検出された航走雑音周波数帯域の上限値と下限値が第1の受波器による受波信号の周波数帯域の上限値と下限値とに一致した場合に、航走体振動特性に起因する航走雑音の周波数帯域とするようにしたものである。

【0030】
以下、より詳細に説明すると、音源航走体の速度は、船体やプロペラ等航走体の形状と材質によって定まる振動特性に起因する各種雑音の周波数帯域の内、上記した本発明での検証事実と従来の技術による既知事実から、FHz以下の低周波数帯域の雑音を音源周波数として、ドップラー現象を考えると、以下に説明する原理から求められる。

【0031】
文献3に開示された技術により、受波器A5又は受波器B6で受信された音波において、次式(9)が成り立つ。

【0032】

【数9】
JP0003199240B2_000010t.gif【0033】ここで、
D =ドップラー周波数
2 =上限ドップラー周波数
1 =下限ドップラー周波数
また、上記式(9)は、受波器を中心とする円の半径方向水速度VW と受波器を中心とする円の半径方向音源航走体速度VH とは、共に受波器が静止しているものとして、VW =VH =0とすると、上記式(9)は、

【0034】

【数10】
JP0003199240B2_000011t.gif【0035】ここで、一般にVp ≫Vt であるから、

【0036】

【数11】
JP0003199240B2_000012t.gif【0037】式(10)と式(11)から、

【0038】

【数12】
JP0003199240B2_000013t.gif【0039】が導かれ、ここで、(f2 -f1 )≪f0 であり、水中音波伝搬速度VP =1500m/sを式(10)に代入すると、

【0040】

【数13】
JP0003199240B2_000014t.gif【0041】また、式(8)から、

【0042】

【数14】
JP0003199240B2_000015t.gif【0043】ここで、
r :受波器を中心とする円の半径方向の音源航走体速度
式(14)から

【0044】

【数15】
JP0003199240B2_000016t.gif【0045】この上記式(15)によってドップラー周波数と音源周波数が分かれば航走体速度が検出できる。

【0046】
受波器A5及びB6からの音源航走体の方位測定については次の原理による。

【0047】
受波器A5で受信した受信波形をx1 (t)、受波器B6で受信した受信波形をx2 (t)とする。s(t)を時刻tでの受波器A5の受信波形から雑音とドップラー効果を除去した振幅とすると、受波器A5及び受波器B6での受信波形x1 (t)とx2 (t)は、ドップラー効果を包含して次式で表示される。

【0048】

【数16】
JP0003199240B2_000017t.gif【0049】
【数17】
JP0003199240B2_000018t.gif【0050】ここで、
β1 (t):時刻tでの受波器A5と目標の受信波形時間軸伸縮係数
β2 (t):時刻tでの受波器B6と目標の受信波形時間軸伸縮係数
D(t) :時刻tでの受波器A5とB6の受信波形到達時間差
1 (t):時刻tに受波器A5が受信するガウス性白色雑音
2 (t):時刻tに受波器B6が受信するガウス性白色雑音
1 (t)とn2 (t)は無相関とする。

【0051】
ここで、受波器A5と受波器B6の受信波形の周波数を一致させるため受波器B6のドップラー周波数を補正する。

【0052】
補正後の信号波形をx2 ′(t)とすると

【0053】

【数18】
JP0003199240B2_000019t.gif【0054】ただし、β=β1 /β2
よって、x1 (t)とx2 ′(t)の相互相関関数R(τ)は、次式で表される。

【0055】

【数19】
JP0003199240B2_000020t.gif【0056】ここで、α(t)は、時刻tでの信号減衰係数である。

【0057】
上記式(19)の第2項はn1 (t)とn2 (t)が無相関であるから0である。

【0058】
第1項は、τ=-β1 Dにおいて

【0059】

【数20】
JP0003199240B2_000021t.gif【0060】よって、RS において相互相関は最大となる。

【0061】
上記式(20)から分かるように、受信波形x2 (t)の時間軸をβ倍伸縮させてドップラー補正することにより、τ=-β1 Dで相関が最大となる。しかし、相関が最大となるβ(β1 /β2 )が得られても、β1 とβ2 の値は得られず、最大値の位置は、β1 倍ずれた誤差が残る。以上のことを正弦波で説明する。

【0062】
図3において、航走体の速度をVr とし受波器Aへの速度成分をV1 、受波器Bへの速度成分をV2 、目標航走体の放射雑音の周波数をf0 とすると、受波器Aで受信される周波数fA 、受波器Bで受信される周波数fB はそれぞれ次式で表示される。

【0063】

【数21】
JP0003199240B2_000022t.gif【0064】
【数22】
JP0003199240B2_000023t.gif【0065】ただし、β1 =1-V1 /VP β2 =1-V2 /VP
よって、入力となる受信波形は、

【0066】

【数23】
JP0003199240B2_000024t.gif【0067】
【数24】
JP0003199240B2_000025t.gif【0068】と置いたものとなる。さらに、受波器Bの受信波形をドップラー補正により受波器Aの受信波形に一致させると図3のx2 ′(t)となる。

【0069】
よって、図3におけるドップラー補正後の二つの受信波形x1 (t)とx2 ′(t)は、次式で表示される。

【0070】

【数25】
JP0003199240B2_000026t.gif【0071】
【数26】
JP0003199240B2_000027t.gif【0072】よって、x1 (t)とx2 ′(t)の相互相関関数R(τ)は、

【0073】

【数27】
JP0003199240B2_000028t.gif【0074】以上のドップラー補正により二つの音響波形x1 (t)とx2 ′(t)の相互相関の最大値を上記式(27)によって検出すれば目標航走体放射雑音の二つの受波器A及び受波器Bまでの到達時間差τ0 の検出が可能となる。

【0075】
すなわち、上記式(21)と上記式(22)による値は、図1の相互相関演算器20に入力され処理される。相互相関演算器20では、図3に示すように相互相関を演算し雑音到来方向を求め表示器21に表示する。

【0076】
図4は、到来方向を求める原理を示したものである。受波器Aと受波器Bの信号は同一の音源から発生した雑音であり、航走体4からは十分に遠いとすると受波器A及び受波器Bに入力する信号は平行な波と見なせる。ここで、受波器Aと受波器Bとに同一な波が受信される時刻が分かるとその到達時間差から、該到達時間差に相当する距離rが求められる。受波器Aと受波器Bの間隔をdとすると

【0077】

【数28】
JP0003199240B2_000029t.gif【0078】が成り立つので、この上記式(28)から音波の到来方向を求めることが出来る。

【0079】
以上は、受波器が2個の場合について説明したが、図5に示すように複数の受波器を水中に設置して、受波器Aと受波器Bによって方位角θ1 を得、受波器Cと受波器Dによりθ2 を得る。これよりそれぞれの受波器の位置から方位角θ1,θ2 で直線を描き、交点をP0 とすることによって目標航走体の位置を特定できる。

【0080】
以上説明した原理は、予め定められた周波数を用いるピンガー方式やトランスポンダ方式による測位装置についても実現可能である。

【0081】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。

【0082】
図1は本発明に係る航走雑音のドップラー補正を行い目標航走体の位置を測位する装置の一実施例の構成を示している。

【0083】
この図において、1は水中、2は水面、3は海底、4は航走体、5は受波器A、6は受波器B、7と8は受信回路、9と10はA/D変換器、11と12はFFT処理器、13と14は記憶装置、15は航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域検出器、16と17はバンドパスフィルター処理器、18はドップラー周波数による航走体速度検出器、19はドップラー補正演算器、20は相互相関演算器、21は表示器である。

【0084】
受波器A5及び受波器B6は水面または水中を航走する航走体の航走音を検出するものであり、例えばハイドロホン等である。

【0085】
受信回路7と8は受波器A5と、受波器B6から入力された波形信号を一定レベルまで増幅した後、A/D変換器9と10に信号を出力する。

【0086】
A/D変換器9と10は、受信回路7と8から転送されたアナログ波形信号をデジタル波形信号に変換し、該デジタル波形信号をFFT処理器11と12に転送する。

【0087】
図6は受波器A、受波器B、受波器Cが検出する航走雑音受波信号の一例を示す図であり、図6(a)は受波器Aによる航走雑音受波信号、図6(b)は受波器Bによる航走雑音受波信号、図6(c)は受波器Cによる航走雑音受波信号をそれぞれ示している。なお、縦軸に振幅、横軸に計測時間を表している。

【0088】
FFT処理器11と12は、デジタル波形信号をN秒毎にFFT処理し、時間-周波数信号に変換して記憶装置13と14に転送する。

【0089】
図7は受波器A、受波器B、受波器Cが検出する航走雑音の周波数スペクトルの一例を示す図であり、図7(a)は受波器Aによる航走雑音周波数スペクトル、図7(b)は受波器Bによる航走雑音周波数スペクトル、図7(c)は受波器Cによる航走雑音周波数スペクトルをそれぞれ示しており、図中のΣは航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域の一例である。ここで、縦軸はパワー値、横軸は周波数である。

【0090】
航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域検出器15は、記憶装置13と14から時間-周波数信号に変換された波形信号を個々に検出器内に取り込んで、受波器A5の受信波形x1 (t)と受波器B6の受信波形x2 (t)のそれぞれについてサンプリング時間N秒毎のローファーグラムを作成する。該ローファーグラムにおける一つのスペクトルラインの縦軸の値はパワー値、横軸は周波数である。すなわち、図7に示した周波数スペクトルを一つのスペクトルラインとしてN秒毎にT/Nライン並べたものが該ローファーグラムである。ここで該ローファーグラムを基に航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域を検出する。

【0091】
該航走雑音周波数帯域の検出方法を以下に説明する。

【0092】
航走体振動特性に起因する航走雑音は、既知事実と本発明での検証事実から、次の特徴を示す。
(1)航走速度が変化しても雑音の周波数帯域は変化しない。
(2)エンジン、発電機等船体に固定された振動源からの振動が船体を伝搬して水中に放射される場合、水中放射雑音は、航走体の振動特性に同期した固有周波数帯域を持つ。
(3)低周波数FHz以下の航走雑音は、パワー値が大きな連続波であり、遠方まで伝搬する。

【0093】
よって、以上の特徴を持つドップラー現象を生じている航走雑音の検出を次の手順で行う。

【0094】
記憶装置からFFT処理された時間-周波数受波信号を読み込んで、サンプリング時間N秒毎のローファーグラムを作成する。

【0095】
該ローファーグラムにおいて周波数0~FHz間のスペクトルラインにおけるパワー値極大値列を抽出する。抽出条件は次の通りである。

【0096】
i.周波数0~FHzの範囲で(c-1)番目、c番目、(c+1)番目のいずれかのスペクトルラインに極大値がなくてはならない。すなわち、航走雑音内で、上記(1),(2),(3)の特徴を満たし、かつドップラー現象が生じている周波数の存否を見ている。

【0097】
ii.隣り合うスペクトルラインでの極大周波数の差が、航走体の移動によって隣のスペクトルラインで生じる周波数のずれを表す増分上限値σf(ここでは、例えばdfを周波数分解能としたとき、df<σf<3df)を超えてはならない。すなわち、(1),(2),(3)の特徴を満たし、かつドップラー現象を引き起こしている当該周波数のものに属しているかどうかを見ている。

【0098】
iii. ii の増分上限値σfを超えた場合は、データ欠損として次のスペクトルラインに移る。

【0099】
iv.周波数のずれを表す増分上限値σfを超えた周波数範囲において、条件i,iiを満たす次のスペクトルラインの極大値列を検出する。

【0100】
上記,の処理を該ローファーグラムにおいて周波数0~FHzの範囲にある航走雑音のパワー値の極大値列群の全部について実施する。

【0101】
以上の,,の処理手順を受波器Bによる受波信号x2 (t)にも同様に行い、そこで検出された航走雑音周波数帯域の上限値と下限値が受波器Aによる受波信号x1 (t)の周波数帯域の上限値と下限値とに一致した場合に、航走体振動特性に起因する航走雑音の周波数帯域とする。

【0102】
図8は航走雑音受波信号についてのサンプリング時間N秒毎ローファーグラムの一例を示す図であり、縦軸に周波数、横軸に計測時間を示している。

【0103】
図8中に航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域検出器15によるN秒毎の周波数スペクトルライン上のパワー値が極大値列を成す航走雑音の時間-周波数信号と航走体振動特性に起因する航走雑音周波数範囲の上限値と下限値の検出例を示す。

【0104】
該航走雑音周波数帯域検出器15は、検出した航走雑音周波数帯域の上限値と下限値の値をバンドパスフィルター処理器に入力するとともに、N秒毎の周波数スペクトルライン上のパワー値が極大値列を成す時間-周波数波形信号をドップラー周波数による航走体速度検出器18に転送する。

【0105】
バンドパスフィルター処理器16と17は航走雑音周波数帯域検出器15から入力された周波数帯域の上限値と下限値の範囲で、記憶装置13と14に記憶された波形信号についてバンドパスフィルター処理を行いドップラー補正演算器19に転送する。

【0106】
図9に航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域の上限値と下限値の範囲でバンドパスフィルター処理を実施した受波器A、受波器Bおよび受波器Cによる信号波形の一例を示す。

【0107】
ドップラー周波数による航走体速度検出器18は、航走雑音周波数帯域検出器15から転送されたN秒毎周波数スペクトルライン上のパワー値が該ローファーグラムにおいて極大値列を成す時間-周波数波形信号から上記式(15)及び文献4:特願平10-190212号で本願発明者によって提案された技術によりドップラー周波数を求め航走体速度を検出する。そして検出した航走体速度の値をドップラー補正演算器19に入力する。

【0108】
図10はドップラー周波数による航走体速度検出器18による上限ドップラー周波数f2 と下限ドップラー周波数f1 の検出結果の一例を示す図であり、縦軸に周波数、横軸に時間を示している。

【0109】
ドップラー補正演算器19はバンドパスフィルター処理器16と17から入力された波形信号について、上記式(27)からドップラー現象による受信波形の時間伸縮率を求めて、ドップラー補正を行う。なお、β1 については、ドップラー周波数による航走体速度検出器18から入力された航走体速度Vr を上記式(21)及び上記式(22)に代入してドップラー補正を行う。なお、本発明は、予め目標航走体の速度が他の計測手段によって検出される場合にはドップラー周波数による航走体速度検出器18によることなく、他の計測手段によって検出された目標航走体速度をドップラー補正演算器19に入力することによっても実施可能である。

【0110】
相互相関演算器20ではドップラー補正演算器19において、検出された受信波形x1 (t)とx2 ′(t)について上記式(27)より相互相関関数の最大値を算出し、その時の到達時間差を求める。

【0111】
図11に相互相関演算器20により受波器A、受波器B、受波器Cにより受信された波形信号について各受波器間の到達時間差を求めた結果を示す。

【0112】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。

【0113】

【発明の効果】以上説明した如く、本発明によれば、航走体の放射雑音を2つ以上の受波器で受信し、該受波信号間の相互相関をとることにより、音源の方位を求める測位装置において、音源の航走によるドップラー効果が受波器の波形信号に与える影響により生じる相互相関の誤差を、航走体振動特性に起因する航走雑音周波数帯域検出器と、ドップラー周波数による航走体速度検出器及びドップラー補正器により補正し、容易に相互相関による航走体放射雑音の各受波器までの到達時間差を検出することが出来るので、目標航走体の位置を特定することが出来る。
図面
【図2】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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