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明細書 :音源方向測定方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3069663号 (P3069663)
登録日 平成12年5月26日(2000.5.26)
発行日 平成12年7月24日(2000.7.24)
発明の名称または考案の名称 音源方向測定方法及び装置
国際特許分類 G01S  3/808     
FI G01S 3/808
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願平11-073764 (P1999-073764)
出願日 平成11年3月18日(1999.3.18)
審査請求日 平成11年3月18日(1999.3.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
【識別番号】390011095
【氏名又は名称】ジェイ・アール・シー特機株式会社
発明者または考案者 【氏名】佐藤 隆一
【氏名】鈴木 尚也
【氏名】石前 浩蔵
個別代理人の代理人 【識別番号】100078617、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 修一
審査官 【審査官】松下 公一
参考文献・文献 特開 平5-323013(JP,A)
特開 平2-66481(JP,A)
特開 平1-219684(JP,A)
実公 平3-7822(JP,Y2)
調査した分野 G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 5/30
要約 【課題】 センサ間隔による音源の波長制限のない、また精度、確度の高い音源方向測定方法と装置を実現する。
【解決手段】 2つのセンサで受信した信号をFFT処理し、位相情報を解析して、相関度の高い周波数帯域において、両信号の位相差の周波数に対する変化率から音源方向を算出することとした。
特許請求の範囲 【請求項1】
ある音源から到来する音波を、間隔をおいて設置された複数の音波センサで受信する段階と、
前記複数の音波センサで受信した前記音波の受信信号間の相関度が一定のしきい値以上の周波数帯域について受信信号間の周波数に対する位相差変化率を抽出する位相情報抽出段階と、
この位相差変化率と前記間隔及び音速から、前記間隔の方向と前記音波の到来方向のなす角度を算出する段階とを備えたことを特徴とする音源方向測定方法。

【請求項2】
前記位相情報抽出段階は、
前記受信信号のそれぞれを周波数領域信号に変換するFFT(高速フーリエ変換)処理段階と、
この周波数領域信号間の相関度を算出する段階と、
この周波数領域信号間の位相差を算出する段階と、
この相関度が一定のしきい値以上の周波数帯域の、前記位相差の周波数に対する変化率から前記位相差変化率を抽出する段階とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の音源方向測定方法。

【請求項3】
間隔をおいて設置され、到来音波を時間領域電気信号に変換する2つの音波センサと、
この時間領域電気信号のそれぞれを周波数領域信号に変換する2チャンネルFFT処理部と、
この周波数領域信号の相関度が一定のしきい値以上の周波数帯域の、位相差の周波数に対する変化率と前記間隔及び音速から前記間隔の方向と前記音波の到来方向のなす角度を算出する位相情報解析部とを備えたことを特徴とする音源方向測定装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、音源方向測定方法及び装置に関し、特に周波数帯域の広がりを持つ音波の到来方向を高い信頼度で測定できる音源方向測定方法及び装置に関する。

【0002】

【従来の技術】到来する音波を解析して音源方向を測定する音源方向測定装置は、例えば十分に離れた2点、もしくは3点において到来する水中音の音源方向を測定することにより、3角法を用いて音源の位置を特定するソナー等に広く応用されており、例えば特開平2-66481号公報には移動する音源から到来する水中音のドップラー効果をも併せて解析することにより、音源の位置及び移動方向や速度を検出する目標位置検出装置等も提案されている。

【0003】
図2は、このような従来の音源方向測定装置の基本原理を説明する概念図であリ、間隔Lをおいて設置された2つのセンサ11、12を用いて到来音波を測定する。間隔Lに比べて音源が十分に遠い場合は、到来音波を平面波と見なすことができるので、同位相の音波の受信時間差μを計測することにより音速をcとするとき、次式にしたがって両センサ11、12を結ぶ線分に対する音源方向の角度θを求めることができる。
θ=cos-1(μc/L)・・・(1)
さらに例えば、センサ11に対してセンサ11、12を結ぶ線分と直角方向にセンサ13を設置してセンサ11とセンサ13を結ぶ線分に対する音源方向の角度を求めることによりセンサ平面に対する音源方向を特定することができる。また、十分に離れた2点で、同様にして音源方向を特定することにより、両方向線の交点から音源位置を算出することができる。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の音源方向測定装置には、次のような問題点があった。すなわち、同位相の音波の受信時間差μを計測しているため、音波長をλとする時、到来音波のうちλ/2>L(センサ間隔)の周波数成分しか計測に利用することが出来ない。このため、例えば低周波成分の多い海中雑音を避け、高周波領域で計測するためにはセンサ間隔Lを大きくとることが出来ず、このことにより計測精度が制約されてしまう問題があった。

【0005】
また、上記制約から通常到来音波の基本波を用いて受信時間差を計測しているが、基本波長が2L以下の音源の測定ができず、また基本波長が2L以上であっても、当該周波数領域に環境雑音が多い場合に正しい測定が出来ない等、測定可能音源周波数が制約される問題があった。

【0006】
さらに、音源の周波数が測定可能領域にある場合でも、通常到来音の基本波一波を用いて受信時間差μを測定するため十分な確信度が得られない場合があった。また確信度を上げるために複数の周波数成分を利用しようとすると上記制約を受ける他、複雑な操作を必要とする問題点があった。

【0007】
本発明は、かかる問題点を解消し、センサ間距離により制約されることのない、従って、所望の精度に応じたセンサ間隔を設定することができ、音源、また測定環境に応じて容易に最適の周波数帯域の到来波を選択的に解析して音源方向を計測でき、さらに広帯域の到来波を活用することにより確信度の高い計測結果の得られる音源方向計測方法及び装置を提供することを目的とする。

【0008】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る音源方向測定方法は、ある音源から到来する音波を、間隔をおいて設置された複数の音波センサで受信する段階と、前記複数の音波センサで受信した前記音波の受信信号間の周波数に対する位相差変化率を抽出する位相情報抽出段階と、この位相差変化率と前記間隔及び音速から、前記間隔の方向と前記音波の到来方向のなす角度を算出する段階とを備えたことを特徴とする。

【0009】
また、前記位相情報抽出段階は、前記受信信号のそれぞれを周波数領域信号に変換するFFT(高速フーリエ変換)処理段階と、この周波数領域信号間の相関度を算出する段階と、この周波数領域信号間の位相差を算出する段階と、この相関度が一定のしきい値以上の周波数帯域の、前記位相差の周波数に対する変化率から前記位相差変化率を抽出する段階とを備えたことを特徴とする。

【0010】
またさらに、本発明に係る音源方向測定装置は、間隔をおいて設置され、到来音波を時間領域電気信号に変換する2つの音波センサと、この時間領域電気信号のそれぞれを周波数領域信号に変換する2チャンネルFFT処理部と、この周波数領域信号の相関度が一定のしきい値以上の周波数帯域の、位相差の周波数に対する変化率と前記間隔及び音速から前記間隔の方向と前記音波の到来方向のなす角度を算出する位相情報解析部とを備えたことを特徴とする。

【0011】
従って、本発明の音源方向測定方法及び測定装置によれば、受信波長によってセンサ間隔の制約を受けないため、所望の精度に応じたセンサ間隔を設定することができる。また、相関度を参照することにより、音源、また測定環境に応じて容易に最適の周波数帯域の到来波を選択することができ、広帯域の到来波を活用することにより確信度の高い計測結果を得ることができる。

【0012】

【発明の実施の形態】本発明では、両センサ11、12の受信時間差μによって生ずる到来音波の位相差φの周波数による変化(周波数微分)を抽出することにより、受信時間差μを得て、上記(1)式により音源方向を求める。図2を参照して、同一音源から両センサ11、12に到来する音波のある周波数成分の位相差φは当該周波数をfとするとき下式によって表される。
φ=2πf・μ・・・(2)
従って(1)式より、
φ=2πf・(Lcosθ/c)・・・(3)
が得られる。ここで、センサ間αと音源周波数fの波長λとの比をrとすると、その関係は下記の式で表せる。
λ=c/f c:水中音速(m/s)
r=λ/α
図3はセンサ間隔L(m)、音源周波数fの波長λとの比rを、
r=5.5E-4~3、
音源方向の角度θ=0°~180°(10°ステップ)の範囲で、(3)式に従って位相差φ(度)の変化を表したグラフ図で、図3に見られるように位相差φのグラフの傾き、すなわちその周波数微分φ’=dφ/dfを求めることにより、10°~170°の範囲で十分実用的に音源方向を計測することができる。

【0013】
すなわち、センサ受信信号から位相差の周波数に対する変化率φ’が抽出できれば、次式により音源方向の角度θを算出することができる。
θ=cos-1(cφ’/2πL)・・・(4)
この位相差変化率は、例えば両センサ11、12の受信信号を2チャンネルFFT(高速フーリエ変換)処理し、クロススペクトラムの位相情報を解析することにより、両受信信号間の相関度と共に容易に求めることができる。

【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る音源方向測定装置の一実施形態を説明するブロック図であり、間隔をおいて設置された2つのセンサ11及び12と、この2つのセンサ11及び12の受信信号を周波数領域信号に変換する2チャンネルFFT部13と、この周波数領域信号の、相関度の高い周波数帯域の最尤位相変化率φ’を抽出し、(4)式に従って音源方向の角度θを算出する位相情報解析部14とを備えている。

【0015】
図5及び図6は本実施形態の動作を説明するための実測データ例であり、図4に示す環境で測定を行った。図4を参照して、実測は、間隔L=αmでセンサ11、12を設置した剛体をセンサ間隔α(m)に対して水深約10α(m)、実海面下約6α(m)に吊下し、送波器を音源位置1~7の各点に吊下して、r≒1~3のランダムノイズを送波した。図5及び図6はそれぞれ、音源位置2及び6からの受信信号を2チャンネルFFT部13で周波数領域信号に変換し、位相情報解析部14で解析して得られた位相差及び相関度の例である。

【0016】
例えば、図5の位相差の周波数変化を見ると海面反射の影響によると思われる周期的なばらつきが見られるが、相関度を参照して十分な相関が得られるr≒1~3の帯域の位相変化率から、例えば最小二乗法等により最尤値を推定することにより、十分に確信度の高い位相変化率が得られることが解る。海底反射の影響を受ける図6についても同様のことがいえる。

【0017】
位相情報解析部14では、このようにして、相関度が一定のしきい値以上の周波数帯域を選定し、位相変化率の最尤値φ’を求め、(3)式に従って、音源方向とセンサ間を結ぶ線分のなす角度θを算出、出力する。

【0018】
図4の各音源位置1~7に付した矢印は、このようにして測定された音源方向と、実際の音源方向との差を摸式的に示したものである。音源入射角が鋭角になる音源位置1、2、7では海面、海底の影響や近距離音源からの球面波を平面波で近似していること等により若干の誤差が見られるが、音源位置3~6では十分に正確な音源方向の角度θを得ることが出来た。

【0019】

【発明の効果】以上述べたように本発明に係る音源測定方法及び装置によれば、音源に位相変化率を検出できるだけの帯域幅があれば、センサ間隔Lによる波長の制約を受けることなく音源方向を求めることができる。一般にソナー等の計測対象が純音源に近いことはまれであるので従来の音源測定装置に比べ、応用性の高い音源測定装置を得ることができる。

【0020】
また、機械雑音等のように純音に近いスパイク性の音源についても、その高調波等の複数のスパイクを解析することにより、位相変化率を求めることができるので、やはり応用性の高い音源測定装置を得ることができる。

【0021】
また、(3)式の示すようにセンサ間隔Lを広げることにより、位相差φの解像度を高めることができるので、従来の音源測定装置に比べ精度の高い測定が可能となる。

【0022】
またさらに、相関度を参照することにより、雑音の多い周波数帯を除外して、有意な広帯域での位相差情報から最尤位相変化率を求めることができるので確度の高い測定が可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5