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明細書 :中赤外固体レーザ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3081921号 (P3081921)
登録日 平成12年6月30日(2000.6.30)
発行日 平成12年8月28日(2000.8.28)
発明の名称または考案の名称 中赤外固体レーザ装置
国際特許分類 G02F  1/39      
G02F  1/355     
FI G02F 1/39
G02F 1/355
請求項の数または発明の数 2
全頁数 5
出願番号 特願平11-310359 (P1999-310359)
出願日 平成11年10月29日(1999.10.29)
審査請求日 平成11年10月29日(1999.10.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】加藤 洌
個別代理人の代理人 【識別番号】100079290、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
審査官 【審査官】佐藤 宙子
参考文献・文献 Summaries of Papers Presented at the Conference on Lasers and Electro-Optics.Conference Edition.1998 Technical Digest Series,pp.271-272(1998)P.G.Schunemann et al.
Optics Letters,Vol.20,No.20,pp.2057-2059(1995)G.C.Bhar et al.
Japanese Journal of Applied Physics,Vol.32,Supplement 32-3,pp.120-122(1993)G.C.Bhar et al.
Applied Physics Letters,Vol.63,No.10,pp.1316-1318(1993)G.C.Bhar et al.
調査した分野 G02F 1/35 - 1/39
要約 【課題】 小型軽量で高変換効率、かつ高出力で、波長3~5μm帯の中赤外線レーザ光を安定に出力せしめる中赤外固体レーザ装置を提供することにある。
【解決手段】 この中赤外固体レーザ装置は、非線形光学結晶としてAgGa1-xInSe(x=0.25~0.35)結晶を用いることにより、変換効率、出力特性のいずれも向上することを見いだしたものである。AgGa1-xInSe結晶は、位相整合許容角が△θext・L1/2=8.2deg・cm1/2と大きく、しかも位相整合条件がθ=90°となるため、ウォーク・オフ角(励起光と出力光のずれ)が0となり、励起光に対する出力特性が極めて優れている。したがって、これを非線形光学結晶として用いれば、結晶の角度調整が不必要となり、高い変換効率で安定した出力の3~5μm帯中赤外コヒーレント光が得られる。
特許請求の範囲 【請求項1】
励起光源の励起光で光パラメトリック発振用の非線形光学素子を励起し、パラメトリック発振により3~5μm帯の波長でコヒーレント光を出力する中赤外固体レーザ装置であって、前記励起光源として2.05~2.1μmの波長でレーザ発振する固体レーザを用い、前記光パラメトリック発振用の非線形光学素子として、AgGa1-xInSe(x=0.25~0.35)結晶を用いたことを特徴とする中赤外固体レーザ装置。

【請求項2】
励起光源の励起光で光パラメトリック発振用の非線形光学素子を励起し、パラメトリック発振により3~5μm帯の波長でコヒーレント光を出力する中赤外固体レーザ装置であって、前記励起光源として、CsTiOAsO結晶を1.047~1.0796μmの波長のレーザ光で励起して1.9~2.3μmのコヒーレント光を出力するCTA光パラメトリック発振器を用い、前記光パラメトリック発振用の非線形光学素子として、AgGa1-xInSe(x=0.25~0.35)結晶を用いたことを特徴とする中赤外固体レーザ装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、光パラメトリック発振によりコヒーレント光を励起する中赤外固体レーザ装置に係り、特に3~5μmの波長でコヒーレント光を励起する中赤外固体レーザ装置に関するものである。

【0002】

【従来の技術】従来、非線形光学論系に基づいて、非線形光学素子(結晶)にコヒーレントな励起光(基本光)を入力することにより、異なる波長のコヒーレント光を出力せしめるレーザ発振器(光パラメトリック発振器)が知られている。この発振器は、一般に励起光源と、非線形光学素子と、その両側に配置された一対の反射鏡とから概略構成されており、上記励起光と出力光であるシグナル及びアイドラー光との間には次式(1)及び(2)に示す関係が成り立っている。

【0003】

1/λs+1/λi=1/λp …(1)
/λ+n/λ=n/λ …(2)
但し、λは励起光の波長、λはシグナル光の波長、λはアイドラー光の波長、nは励起光の屈折率、nはシグナル光の屈折率、nはアイドラー光の屈折率である。

【0004】
かかる構成のレーザ発振器の1例として、1.9~2.3μmの波長領域でコヒーレント光を出力する赤外光パラメトリック発振器が本発明者等によって「CTA光パラメトリック発振器」(特許第2695376号)として提案されている。これは励起光源として1.047~1.0796μmの波長のレーザ光を発振する各種固体レーザを用い、非線形光学素子としてCsTiOAsO結晶を用いたものである。

【0005】
また、波長3~5μmのパラメトリック発振を行うレーザ発振器としては、励起光源にHo:YLF、Ho:YAG等の各種固体レーザを用い、非線形光学素子としてAgGaSeやZnGeP結晶を用いたものが知られている。

【0006】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の波長3~5μmのパラメトリック発振を発振せしめる従来のレーザ発振器には以下に述べる問題があった。

【0007】
即ち、非線形光学素子としてAgGaSe結晶を用いたものは位相整合角θがタイプ1(第1種の整合)のパラメトリック発振として50°と小さいため、有効非線形光学定数defftype-1(AgGaSe)も30pm/Vと小さく、位相整合許容角Δθ(FWHM:半値幅)も△θext・L=0.9deg<HAN>・</HAN>cmと極めて小さい。ここで、△θextは結晶の外部角、Lは結晶の長さである。さらに、AgGaSeは2μmに5%/cmという大きな吸収があり、熱吸収率がη=0.011(w/cm・K)と低く、励起光のレンズ作用により結晶が破壊されたり、変換効率が著しく低下するという欠点があった。

【0008】
また、ZnGePを非線形光学素子として用いた場合には、屈折率のばらつきにより変化し、位相整合角θは、53~54°となり、有効非線形光学定数がdefftype-1=66pm/V、熱伝導率がη=0.36(w/cm・K)と大きい割には、位相整合許容角が△θext・L=1deg<HAN>・</HAN>cmと小さく、高品質で2.1μmで透過率の高い結晶が得られにくいという欠点があった。

【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高変換効率、かつ高出力で、波長3~5μmの中赤外線を安定に出力せしめる中赤外固体レーザ装置を提供することにある。

【0010】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。

【0011】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく本発明者は種々の検討を試みた結果、非線形光学素子としてAgGa1-xInSe(x=0.25~0.35)結晶を用いることにより、変換効率、出力特性のいずれも向上することを見いだしたものである。即ち、本発明の中赤外固体レーザ装置は、励起光源として2.05~2.1μmの波長のレーザ光を発振するHo:YLF、Ho:YAG等の固体レーザ、あるいはCsTiOAsO結晶を1.047~1.0796μmの波長のレーザ光で励起して1.9~2.3μmのコヒーレント光を出力するCTA光パラメトリック発振器を用い、非線形光学素子としてAgGa1-xInSe結晶を用いて成るものである。AgGa1-xInSe結晶は、位相整合許容角が△θext・L1/2=8.2deg<HAN>・</HAN>cm1/2と大きく、しかも位相整合条件がθ=90°となるため、ウォーク・オフ角(励起光と出力光のずれ)が0となり、励起光に対する出力特性が極めて優れている。したがって、これを非線形光学素子として用いれば、結晶の角度調整が不必要となり、高い変換効率で安定した出力の3~5μm中赤外コヒーレント光が得られる。

【0012】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る中赤外固体レーザ装置の実施の形態を図面に従って説明する。

【0013】
図1は、本発明の中赤外固体レーザ装置の実施の形態を示す構成図、図2は光パラメトリック発振用の非線形光学素子を縦方向よりみた場合と横方向よりみた場合の説明図である。

【0014】
図中、1は励起光源、2は非線形光学素子、3は完全反射鏡(励起光及びアイドラー光で透過率T≧90%、シグナル光で反射率R=90%~100%)、4は部分反射鏡(励起光及びアイドラー光で透過率T≧90%、シグナル光で反射率R=60~80%)で、λは励起光の波長、λはシグナル光の波長、λはアイドラー光の波長(但し、λ>λ)を示す。

【0015】
本発明の実施の形態に係る中赤外固体レーザ装置は、図1に示すように励起光を出射する励起光源1と、励起光源から出射される励起光の光軸上に配置されたパラメトリック発振用の非線形光学素子2と、同じく励起光の光軸上で励起光源1と非線形光学素子2の出射側にそれぞれ配置された完全反射鏡3と部分反射鏡4とから構成されている。

【0016】
励起光源1には、波長2.05~2.1μmのレーザ光を出力する各種固体レーザを用いるが、各種固体レーザとしてはHo:YLF、Ho:YAG等が用いられる。あるいは、励起光源1として、[従来の技術]で述べた特許第2695376号にあるCTA光パラメトリック発振器が用いられる。この特許第2695376号のCTA光パラメトリック発振器は、CsTiOAsO結晶を1.047~1.0796μmの波長のレーザ光(例えばNd:YLF、Nd:YAG、Nd:GSGG、Nd:YAPの各種固体レーザを励起光源として用いる)で励起して波長1.9~2.3μmのコヒーレント光を出力するCTA光パラメトリック発振器である。

【0017】
このような励起光源1から出射された励起光λは、完全反射鏡3を介して非線形光学素子2に入射するようになっている。

【0018】
光パラメトリック発振用の非線形光学素子2は、タイプ1(第1種の整合、θ=85~90°、φ=45°、但し、φはx軸からy軸方向へ測定した極座標の角度、θは角度φで引かれたxy面内の線分へのz軸からの極座標の角度である。)で切り出したAgGa1-xInSe(x=0.25~0.35)結晶(以下「AGISE結晶」という。)が用いられている。

【0019】
このAGISE結晶は、抵抗加熱炉を用いた水平勾配冷却製法を用いて形成したが、非線形光学定数d36=41pm/Vと大きく、しかも位相整合角がθ=90°となるため、位相整合許容角△θが△θext・L1/2=8.2deg<HAN>・</HAN>cm/2と大きく、前記AgGaSe及びZnGeP結晶の8倍の大きさとなるものである。また、AgGaSeと異なり、2.05~2.1μmの吸収がα=2%/cmと小さいため、励起光における破壊しきい値が100μs、10kHzのパルスで約200MW/cmと高く、位相整合条件が湿度に対してΔT・L=(105±5)℃・cmと非常に大きく、反射防止膜のコートも簡単にできるという特性を有している。

【0020】
励起光源1及び非線形光学素子2の出射側に配置された完全反射鏡3及び部分反射鏡4は、励起光源により出射されるレーザ光の波長及びアイドラー光の波長で高い透過率を有している。

【0021】
完全反射鏡3は、シグナル光の波長で90%以上の反射率Rを有し、部分反射鏡4はシグナル光の波長で60~80%の反射率R及び励起光とアイドラー光の波長で高い透過率Tを有するダイクロイック反射鏡から成っている。

【0022】
かかる構成において、励起光源1から図で右方に出射された波長λの励起光は、図2に示すように非線形光学素子2でシグナル光λ及びアイドラー光λに変換され、シグナル光は完全反射鏡3と部分反射鏡4で共振して増幅され、部分反射鏡4により発振器の外に出射される。また、共振しないアイドラー光はシグナル光と同時に部分反射鏡4により損失なく発振器外に出射されている。

【0023】
したがって、例えば励起光源1として波長2.12μmのCTA光パラメトリック発振器とAgGa0.7In0.3Se(x=0.3)結晶を用いると非線形光学素子の角度を調整することなく、コヒーレントな3.9及び4.6μmの中赤外線を安定して得ることができる。

【0024】
この実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。

【0025】
(1) 励起光源として2.05~2.1μmの波長でレーザ発振する固体レーザ(Ho:YLF、Ho:YAG等)あるいは本発明者等による特許第2695376号のCTA光パラメトリック発振器[CsTiOAsO結晶を1.047~1.0796μmの波長のレーザ光(例えばNd:YLF、Nd:YAG、Nd:GSGG、Nd:YAPの各種固体レーザを励起光源として用いる)で励起して波長1.9~2.3μmのコヒーレント光を出力する]を用い、光パラメトリック発振用の非線形光学素子として、AgGa1-xInSe(x=0.25~0.35)結晶を用いて中赤外固体レーザ装置を構成したので、波長3~5μmの中赤外コヒーレント光を安定した出力で効率よく得ることができる。

【0026】
(2) 例えば、図2に示すように中赤外固体レーザ装置において、励起光源としてNd:YAGレーザで励起した波長2.12μmのCTA光パラメトリック発振器を用い、θ=90°、φ=45°に切り出した長さ2cmのAgGa1-xInSe結晶(x=0.3)を用いて位相整合角θ=90°に固定したままで、発振しきい値の約3倍の入力で、平均出力2Wの3.9及び4.6μm中赤外線が3kHzで得られた。

【0027】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。

【0028】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、励起光源として2.05~2.1μmの波長でレーザ発振する固体レーザ(Ho:YLF、Ho:YAG等の各種固体レーザ)又は特許第2695376号で提案したNd:YAGレーザ等で励起のCTA光パラメトリック発振器)を用い、光パラメトリック発振用の非線形光学素子として、AgGa1-xInSe(x=0.25~0.35)結晶を用いたことで、光パラメトリック発振により3~5μm帯の波長で高出力のコヒーレント光を高効率で安定に励起可能な中赤外固体レーザ装置を実現できる。
図面
【図1】
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【図2】
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