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明細書 :航走体船種識別装置及びその方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3159306号 (P3159306)
公開番号 特開2000-180258 (P2000-180258A)
登録日 平成13年2月16日(2001.2.16)
発行日 平成13年4月23日(2001.4.23)
公開日 平成12年6月30日(2000.6.30)
発明の名称または考案の名称 航走体船種識別装置及びその方法
国際特許分類 G01H 17/00      
G06F 15/18      
FI G01H 17/00 A
G06F 15/18
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願平10-358745 (P1998-358745)
出願日 平成10年12月17日(1998.12.17)
審査請求日 平成11年2月2日(1999.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
発明者または考案者 【氏名】倉野 重光
【氏名】野本 好之
【氏名】吉見 邦彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100081640、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 靖男
審査官 【審査官】菊井 広行
参考文献・文献 特開 平8-152472(JP,A)
特開 平8-254995(JP,A)
特開 平8-43188(JP,A)
調査した分野 G01H 17/00
G06F 15/18 560
特許請求の範囲 【請求項1】
形状と材質によって定まるプロペラの振動特性に起因する雑音を含む航走体自体が独自に発生させる船体音響信号を受信し、その音響信号から航走体の船種を識別する航走体船種識別装置において、
船体音響信号を受信する音響信号受波器と、
音響信号受波器が受信した音響信号を周波数分析するFFT処理手段と、
FFT処理手段で処理された周波数分析データを格納するメモリと、
メモリから予め定められた所定周波数帯域の周波数分析データを読み出し、各周波数に対するパワーを計算するパワースペクトラム計算手段と、
当該所定周波数帯域のパワースペクトラムの全エネルギーを求める全エネルギー演算手段と当該所定周波数帯域をN分割した所定周波数幅毎のパワースペクトラムのエネルギーを求める所定周波数幅エネルギー演算手段とを備え、当該所定周波数帯域のパワースペクトラムの全エネルギーと当該所定周波数帯域をN分割した所定周波数幅毎のパワースペクトラムのエネルギーとから、所定周波数幅毎のエネルギー百分率値を求め、当該エネルギー百分率値に基づいた符号列を生成する符号化手段と、
符号化手段によって生成された符号列の符号化パターンを入力データとして、ニューラルネットワーク演算処理を行い航走体の船種を出力するニューラルネットワーク処理手段とを備え、音響信号受波器が受信した航走体自体が独自に発生させる音響信号から航走体の船種を自動識別するようにしたことを特徴とする航走体船種識別装置。

【請求項2】
上記符号化手段は、エネルギー百分率値を予め定められた有効桁の数値にし、この有効桁の数値の符号列を生成するようにしたことを特徴とする請求項1記載の航走体船種識別装置。

【請求項3】
上記符号化手段は、エネルギー百分率値を予め定められたしきい値と比較する比較部を備え、上記エネルギー百分率値を2値化し符号列を生成するようにしたことを特徴とする請求項1記載の航走体船種識別装置。

【請求項4】
形状と材質によって定まるプロペラの振動特性に起因する雑音を含む航走体自体が独自に発生させる船体音響信号を受信し、その音響信号から航走体の船種を識別する航走体船種識別方法において、
受信された航走体の船体音響信号を基に、FFT処理手段で周波数分析を行い、
FFT処理手段で処理された周波数の内の予め定められた所定周波数帯域の各周波数に対するパワーを計算し、
当該所定周波数帯域をN個の所定周波数幅に分割し、所定周波数幅のパワースペクトラムのエネルギーを求めると共に、当該所定周波数帯域のパワースペクトラムの全エネルギーを求め、
当該所定周波数帯域のパワースペクトラムの全エネルギーに対する当該所定周波数幅のパワースペクトラムのエネルギーの割合を示すエネルギー百分率値を当該所定周波数幅毎に求め、当該エネルギー百分率値に基づいた符号列を生成し、
生成された符号列の符号化パターンを入力データとしてニューラルネットワーク処理手段で航走体の船種を識別するニューラルネットワーク演算処理を行い、
音響信号受波器が受信した航走体自体が独自に発生させる音響信号から航走体の船種を自動識別するようにしたことを特徴とする航走体船種識別方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、航走体が発生させた水中(海中を含む)を伝わる船体音響信号からその航走体特有の雑音信号についての特徴を内包する符号化信号の符号列に変換し、この符号列の符号化信号を誤差逆伝播学習による多層構造のニューラルネットワークの入力データとしてニューラルネットワーク演算処理をすることにより、航走体の船種を自動識別するようにした航走体船種識別装置及びその方法に関するものである。

【0002】

【従来の技術】水上或いは水中を航行する船体の雑音源は、機械雑音、プロペラ雑音そして流体力学的雑音からなっている。例えば図12は船体が発生させる船体音響信号の一例の周波数-パワースペクトラム解析図を示しており、○印のイはプロペラに起因するプロペラ雑音のもの、○印のロはエンジンに起因する機械雑音のもの、○印のハは冷凍機やクーラに起因する機械雑音のものである。

【0003】
また船体に装着されるプロペラ、すなわちスクリューの型は、その船種によって定まっており、そのスクリューの形状も約20種類である。

【0004】
従来の航走体が発生させる船体音響信号を受信し、その音響信号から航走体の船種を識別する手法は、航走体の放射雑音、すなわち流体力学的雑音を除いた機械雑音、プロペラ雑音を基にした航走体の放射雑音をFFT(高速フーリエ変換)処理し、ローファーグラムを作成することにより、長期間特別の訓練を受けた経験豊富な人間がその音紋を見て航走体の船種を識別していた。

【0005】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のような長期間特別の訓練を受けた人間が識別しても、その時の体調や環境によって、或いはローファーグラムの波形によって、船種の識別に誤りを生じることがある。

【0006】
また水中に設置された装置に対し、その接近してくる航走体の船種を自動識別し、予め定められた船種に対してだけ当該装置から信号を出力したいことが望まれる場合が存在する。

【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものである。そして出願人は、航走体の放射雑音が機械雑音やプロペラ雑音で構成され、エンジン、減速機、発電機、各種のポンプ等の回転ムラが原因となって発生する機械雑音は、船の速度が変化すると音圧や周波数が変わることや、プロペラ雑音はキャビテーションによるものとプロペラの振動特性によるものとがあり、キャビテーション雑音は連続周波数成分スペクトラムとなり、航走深度が浅く、速度が増すほど音圧レベルが大きくなるのに対し、プロペラの形状と材質によって定まる振動特性に起因する雑音は、特定周波数成分スペクトラムを持ち、プロペラの回転数が増減しても、周波数分布は変化しないことなどの既知事項に加え、その周波数スペクトラム分布が船種によりほぼ一定していること、そして航走速度の増減による雑音源の変化は、雑音源音圧の増減として現れ、周波数スペクトラム分布における幾つかの極大値のパワースペクトラムの増減を生じること、しかしながら周波数スペクトラム分布における、各種雑音の周波数帯域は変化しないことを実験によって確認した。

【0008】
本発明は、これらの事実に着目し、誤差逆伝播学習による多層構造ニューラルネットワーク演算処理で航走体の船種を識別するに当たって、船体音響信号からその船種に特有の雑音信号についての特徴を内包する符号化信号の符号列を生成し、そしてこの符号列の符号化信号を入力データとしてニューラルネットワーク演算を行い、航走体の船種を自動識別するようにした航走体船種識別装置及びその方法を提供することを目的としている。

【0009】

【課題を解決するための手段】上記の目的を解決するために、本発明の航走体船種識別装置は形状と材質によって定まるプロペラの振動特性に起因する雑音を含む航走体自体が独自に発生させる船体音響信号を受信し、その音響信号から航走体の船種を識別する航走体船種識別装置において、船体音響信号を受信する音響信号受波器と、音響信号受波器が受信した音響信号を周波数分析するFFT処理手段と、FFT処理手段で処理された周波数分析データを格納するメモリと、メモリから予め定められた所定周波数帯域の周波数分析データを読み出し、各周波数に対するパワーを計算するパワースペクトラム計算手段と、当該所定周波数帯域のパワースペクトラムの全エネルギーを求める全エネルギー演算手段と当該所定周波数帯域をN分割した所定周波数幅毎のパワースペクトラムのエネルギーを求める所定周波数幅エネルギー演算手段とを備え、当該所定周波数帯域のパワースペクトラムの全エネルギーと当該所定周波数帯域をN分割した所定周波数幅毎のパワースペクトラムのエネルギーとから、所定周波数幅毎のエネルギー百分率値を求め、当該エネルギー百分率値に基づいた符号列を生成する符号化手段と、符号化手段によって生成された符号列の符号化パターンを入力データとして、ニューラルネットワーク演算処理を行い航走体の船種を出力するニューラルネットワーク処理手段とを備え、音響信号受波器が受信した航走体自体が独自に発生させる音響信号から航走体の船種を自動識別するようにしたことを特徴としている。

【0010】
上記符号化手段は、エネルギー百分率値を予め定められた有効桁の数値にし、この有効桁の数値の符号列を生成する場合や、上記符号化手段にエネルギー百分率値を予め定められたしき値と比較する比較部を備え、上記エネルギー百分率値を2値化し符号列を生成する場合が含まれる。

【0011】
そして本発明の航走体船種識別方法は形状と材質によって定まるプロペラの振動特性に起因する雑音を含む航走体自体が独自に発生させる船体音響信号を受信し、その音響信号から航走体の船種を識別する航走体船種識別方法において、受信された航走体の船体音響信号を基に、FFT処理手段で周波数分析を行い、FFT処理手段で処理された周波数の内の予め定められた所定周波数帯域の各周波数に対するパワーを計算し、当該所定周波数帯域をN個の所定周波数幅に分割し、所定周波数幅のパワースペクトラムのエネルギーを求めると共に、当該所定周波数帯域のパワースペクトラムの全エネルギーを求め、当該所定周波数帯域のパワースペクトラムの全エネルギーに対する当該所定周波数幅のパワースペクトラムのエネルギーの割合を示すエネルギー百分率値を当該所定周波数幅毎に求め、当該エネルギー百分率値に基づいた符号列を生成し、生成された符号列の符号化パターンを入力データとしてニューラルネットワーク処理手段で航走体の船種を識別するニューラルネットワーク演算処理を行い、音響信号受波器が受信した航走体自体が独自に発生させる音響信号から航走体の船種を自動識別するようにしたことを特徴としている。

【0012】
受信された航走体の船体音響信号を基に、予め定められた所定周波数帯域で、当該航走体特有の放射雑音についての特徴を内包する符号化信号の符号列が生成される。この符号列の符号化信号を入力データとして、予め学習されているニューラルネットワーク処理手段を用いニューラルネットワーク演算を行うことにより、上記の特有の放射雑音に基づいた航走体の船種が自動識別される。

【0013】

【発明の実施の形態】図1は本発明に係る航走体船種識別装置の一実施例構成を示している。

【0014】
同図において、水面上又は水面下を航走する航走体の船体音響信号が、例えばハイドロフォン等の音響信号受波器1で受信される。音響信号受波器1で受信された音響信号はA/D変換器でディジタル化されたうえで、FFT処理手段2に入力され周波数分析される。このFFT処理手段2はディジタルで処理される従来の公知のものが用いられており、その結果の周波数分析データがメモリ3に格納される。ここではFFT処理手段2がディジタルのもので説明したが、音響信号受波器1で受信された音響信号をアナログのFFT処理手段2で処理し、ディジタル化して当該メモリ3に格納するようになっていてもよい。

【0015】
パワースペクトラム計算手段4は、メモリ3から予め定められた所定周波数帯域の周波数分析データを、低い周波数側から高い周波数の順に読み出し、各周波数f(i)に対するパワースペクトラムP(i)を計算する。

【0016】
符号化手段5は、所定周波数幅エネルギー演算部7、メモリ8、積算部9、割算部10を備え、メモリ3から読み出されパワースペクトラム計算手段4で計算された上記所定周波数帯域のパワースペクトラムについて、当該所定周波数帯域をN分割した所定周波数幅毎のパワースペクトラムのエネルギーと当該所定周波数帯域のパワースペクトラムの全エネルギーとから、当該所定周波数幅毎にその割合を表すエネルギー百分率値(以下「符号化信号百分率値」という)を求め、当該符号化信号百分率値に基づいた符号列を生成する。

【0017】
すなわち、所定周波数幅エネルギー演算部7は、パワースペクトラム計算手段4から入力されるパワースペクトラムP(i)を基に、N分割された所定周波数幅W毎のパワースペクトラムのエネルギーΣP(Ci)を求める。

【0018】
つまり、所定周波数幅エネルギー演算部7は、パワースペクトラム計算手段4が順に出力する最も低い周波数のパワースペクトラムから上記所定周波数幅Wの周波数のパワースペクトラムまでのエネルギーΣP(C1)を演算によって求める。

【0019】
この所定周波数幅WのエネルギーΣP(C1)は、メモリ8に格納されると共に積算部9に入力される。積算部では入力してくる当該所定周波数幅WのエネルギーΣP(Ci)を積算するが、この場合最初であるので、0にこの所定周波数幅WのエネルギーΣP(C1)が積算され、積算部はΣP(C1)を積算する。

【0020】
この繰り返しが、上記の予め定められた所定周波数帯域について実行され、最後の所定周波数幅WのエネルギーΣP(CN)が所定周波数幅エネルギー演算部7によって求められ、メモリ8に格納されると共に積算部9で積算されたとき、メモリ8には所定周波数幅エネルギー演算部7で求められたN個の所定周波数幅WのエネルギーΣP(Ci)が所定の順にそれぞれ格納されており、また積算部9には上記所定周波数帯域についての全エネルギーΣPが求められている。

【0021】
割算部10は、積算部9の上記全エネルギーΣPのデータと、例えば低い周波数側から順にメモリ8から読み出される上記予め定められた所定周波数幅WのエネルギーΣP(Ci)のデータとから、所定周波数幅毎の符号化信号百分率(エネルギー比)値ΣP(Ci)/ΣPを求める演算を行う。このとき符号化信号百分率値を求めるに当たって、当該割算部10は予め定められた有効桁の数値を出力するようになっている。例えば上記有効桁が1のとき、符号化信号百分率値が、例えば0.00から0.01%未満までは「0」、0.01%から0.02%未満までは「1」、0.02%から0.03%未満までは「2」、……、0.09%から0.10%未満までは「9」の如く出力する。このようにして符号化信号百分率値に基づいた符号列が生成される。

【0022】
すなわち割算部15は、積算部9からの上記全エネルギーΣPのデータとメモリ8からの周波数の最も低い所定周波数幅Wの上記エネルギーΣP(C1)のデータとを読み出し、符号化信号百分率値を求め、上記説明の有効桁の数値を出力する。この有効桁の数値は、後に説明する誤差逆伝播学習法によって学習されたニューラルネットワーク処理手段6の♯1入力端子に入力データとして入力される。

【0023】
同様にして、割算部10は次に低い予め定められた所定周波数幅WのエネルギーΣP(C2)のデータをメモリ8から読み出し、その符号化信号百分率値を求め、上記説明の有効桁の数値を出力する。この有効桁の数値は、ニューラルネットワーク処理手段6の♯2入力端子に入力データとして入力される。

【0024】
符号化手段5は、以下同様にして残りのN-2回、上記所定周波数帯域にわたって繰り返すことにより、符号化信号百分率値に基づいた符号列を生成することができる。この有効桁数が1桁の符号化信号百分率値の符号列の一例が図3(I)に示されている(図3(II)の所定周波数幅-符号化信号百分率図には1対1で必ずしも対応していない)。

【0025】
そして符号化手段5によって生成された符号列の有効桁数の符号化信号百分率値が、ニューラルネットワーク演算処理を行い航走体の船種を識別するニューラルネットワーク処理手段6の♯1ないし♯N入力端子にそれぞれ入力データとして入力される。

【0026】
ニューラルネットワーク処理手段6は、従来からの公知のものが用いられ、上記符号化手段5から入力される符号列の符号化信号百分率値の数に対応した数の♯1ないし♯N入力端子を備え、予め学習させておいた誤差逆伝播学習による多層構造のニューラルネットワークを有している。そして上記符号化手段5から入力される符号化信号百分率値の有効桁の数値の入力データを基にニューラルネットワーク演算を行い、船種指定の識別信号を出力するようになっている。

【0027】
図2は本発明に用いられるニューラルネットワーク処理手段の一実施例構成を示している。

【0028】
同図において、ニューラルネットワーク処理手段6は、♯1ないし♯NのN個の入力端子を備えた入力ユニット21、船種1ないし船種7を出力する7個の出力ユニット22及び隠れユニットである16個の中間ユニット23の3層構造のニューラルネットワークで構成されている。ただし入力ユニット21から出力ユニット22へリンクのみであり、逆リンクは存在しない。各リンクの重みは、予め学習をさせ決定しておかれる。その学習のさせ方は従来の手法で行われるので、その説明は省略する。

【0029】
このように構成されている本発明の航走体船種識別装置及びその方法におけるニューラルネット入力データの符号化と当該入力データを入力とする船種識別のの具体例を次に説明する。

【0030】
図4は船種識別の一実施例説明図を示している。

【0031】
同図において、その(I)は音響信号受波器1で検出される航走体の船体音響信号である。この船体音響信号の或る時点T1での音響信号に対しFFT処理手段2でFFT処理がなされ、その周波数分析データから所定周波数帯域F0 HzないしF1 (F1 >F0 )Hzの同図(II)で示されたパワースペクトラムが得られる。

【0032】
このパワースペクトラムに対し、所定周波数帯域F0 HzないしF1 HzをN分割(Nカラム)した所定周波数幅W=(F1 -F0 )/N Hz幅毎に、上記説明の符号化信号百分率値ΣP(Ci)/ΣPが求められ、同図(III)図示のような個の符号化信号百分率値ΣP(Ci)/ΣPの有効桁の数値の符号列(一部分表示)が生成される。

【0033】
この符号列のN個の有効桁の数値が、図2に示されたニューラルネットワーク処理手段6の対応した♯1ないし♯N入力ユニット21に入力データとして入力される。予め学習させておいた誤差逆伝播学習による3層構造のニューラルネットワークでそのニューラルネットワーク演算が行われることにより、船種指定の識別信号を表す「1」をニューラルネットワーク処理手段6は出力する。すなわち出力ユニット22から(IV)図示の如きパターンが出力される。これにより音響信号受波器1で検出された航走体の船体音響信号から船種1が識別され、「A船」と判定される。

【0034】
図5,図6は船種を異にする船種識別の他の実施例説明図を示しており、図4と同様の説明図である。

【0035】
図5,図6において、その(I)は音響信号受波器1で検出される航走体の船体音響信号、同図(II)はその或る時点の周波数パワースペクトラム、同図(III)は符号化手段5で生成されニューラルネットワーク処理手段6に入力される符号化信号百分率値の有効桁の数値の符号列、同図(IV)はニューラルネットワーク処理手段6の出力パターンをそれぞれ示しており、図5では船種2をニューラルネットワーク処理手段6は識別し、「B船」と判定する。図6では船種7をニューラルネットワーク処理手段6は識別し、「G船」と判定する。当該船種2,船種7の識別の手順は図4の場合と同様であるので、その説明は省略する。

【0036】
図7は符号化手段の他の実施例構成を示している。

【0037】
同図において、図1に示された符号化手段5と同じものは同じ符号が付されており、図7の符号化手段5は割算部10とニューラルネットワーク処理手段6との間に比較部11が設けられている点に特徴を有している。

【0038】
すなわち比較部11には、予め定められたしきい値が入力されており、当該比較部11でこのしきい値と割算部10から入力されてくる上記所定周波数幅毎の符号化信号百分率値ΣP(Ci)/ΣPとが比較される。こきときの符号化信号百分率値ΣP(Ci)/ΣPは、図1の割算部10の出力とは異なり、符号化信号百分率値そのものの割算値である。

【0039】
当該比較部11は、上記所定周波数幅毎の上記符号化信号百分率値ΣP(Ci)/ΣPとしきい値とを比較する。この符号化信号百分率値ΣP(Ci)/ΣPが予め定められたしきい値より大きいとき、例えば「1」、この符号化信号百分率値ΣP(Ci)/ΣPが予め定められたしきい値より小さいとき、「0」の如く符号化する。つまり上記所定周波数幅毎の符号化信号百分率値ΣP(Ci)/ΣPがその大きさに応じて2値化信号に変換される。この2値化信号は、上記説明の誤差逆伝播学習法によって学習されたニューラルネットワーク処理手段6の♯i入力ユニット21に入力データとして入力される。

【0040】
割算部10以降の動作を簡単に説明すると、割算部10は、積算部9からの上記全エネルギーΣPのデータとメモリ8からの周波数の最も低い所定周波数幅Wの上記エネルギーΣP(C1)のデータとを読み出し、符号化信号百分率値ΣP(C1)/ΣPを求め、当該符号化信号百分率値ΣP(C1)/ΣPを比較部11に送出する。比較部11は、上記しきい値と当該符号化信号百分率値ΣP(C1)/ΣPとを比較し、この符号化信号百分率値ΣP(C1)/ΣPの大小に応じて「1」又は「0」の2値化信号に変換する。この2値化信号はニューラルネットワーク処理手段6の♯1入力ユニット21に入力データとして入力される。

【0041】
同様にして、割算部10は次に低い予め定められた所定周波数幅WのエネルギーΣP(C2)のデータをメモリ8から読み出し、その符号化信号百分率値ΣP(C2)/ΣPを求め、比較部11はこの符号化信号百分率値ΣP(C2)/ΣPと上記しきい値と比較し、2値化信号に変換する。この2値化信号はニューラルネットワーク処理手段6の♯2ユニット21に入力データとして入力される。

【0042】
符号化手段5は、以下同様の処理を繰り返すことにより、上記所定周波数帯域についての符号化信号百分率値に基づいた2値化符号列を生成することができる。符号化手段5によって生成された符号列の2値化信号が、ニューラルネットワーク演算処理を行い航走体の船種を識別するニューラルネットワーク処理手段6の♯1ないし♯N入力ユニット21にそれぞれ入力データとして入力される。この2値化符号列の一例が図8(I)に示されている(図8(II)の所定周波数幅-符号化信号百分率図には必ずしも1対1で対応していない)。

【0043】
このときニューラルネットワーク処理手段6も、従来からの公知のものが用いられ、上記符号化手段5から入力される符号列の2値化信号数に対応した数の♯1ないし♯N入力端子、すなわち♯1ないし♯N入力ユニット21を備え、予め学習させておいた誤差逆伝播学習による多層構造のニューラルネットワークを有している。そして上記符号化手段5から入力される2値化信号パターンの入力データを基にニューラルネットワーク演算を行い、船種指定の識別信号を出力するようになっている。

【0044】
図9は図7の符号化手段を用いた船種識別の一実施例説明図を示している。

【0045】
同図において、その(I)は音響信号受波器1で検出される航走体の船体音響信号である。この船体音響信号の或る時点T1での音響信号に対しFFT処理手段2でFFT処理がなされ、その周波数分析データから所定周波数帯域F0 HzないしF1 Hzの同図(II)で示されたパワースペクトラムが得られる。

【0046】
このパワースペクトラムに対し、所定周波数帯域F0 HzないしF1 HzをN分割(Nカラム)した所定周波数幅W=(F1 -F0 )/N Hz幅毎に、上記説明の符号化信号百分率値ΣP(Ci)/ΣPが求められ、同図(III)図示のようなN個の符号化信号百分率値ΣP(Ci)/ΣPの2値化信号の符号列(一部分表示)が生成される。

【0047】
この符号列のN個の2値化信号が、図2に示されたニューラルネットワーク処理手段6の対応した♯1ないし♯N入力ユニット21に入力データとして入力される。予め学習させておいた誤差逆伝播学習による3層構造のニューラルネットワークでそのニューラルネットワーク演算が行われることにより、船種指定の識別信号を表す「1」をニューラルネットワーク処理手段6は出力する。すなわち出力ユニット22から(IV)図示の如きパターンが出力される。これにより音響信号受波器1で検出された航走体の船体音響信号から船種1が識別され、「A船」と判定される。

【0048】
図10,図11は船種を異にする船種識別の他の実施例説明図を示しており、図9と同様の説明図である。

【0049】
図10,図11において、その(I)は音響信号受波器1で検出される航走体の船体音響信号、同図(II)はその或る時点の周波数パワースペクトラム、同図(III)は符号化手段5で生成されニューラルネットワーク処理手段6に入力される符号化信号百分率値の2値化符号列、同図(IV)はニューラルネットワーク処理手段6の出力パターンをそれぞれ示しており、図10では船種2をニューラルネットワーク処理手段6は識別し、「B船」と判定する。図11では船種7をニューラルネットワーク処理手段6は識別し、「G船」と判定する。当該船種2,船種7の識別の手順は図9の場合と同様であるので、その説明は省略する。

【0050】
なお上記説明では船種1ないし船種7をすべて特定するようにして説明したが、例えばその内の船種7を「該当船種なし」のように、ニューラルネットワーク処理手段6を予め学習させておくことによって、船種識別の対象航走体と対象外航走体との識別もでき、識別率を向上させることができる。この処理はニューラルネットワーク処理手段6の学習のさせ方如何による。

【0051】
またこれらの一連の船種識別の処理は、当該船種識別処理に要する時間S毎に繰り返される。そして時間S毎に識別され出力される船種を基に、例えば所定時間内で最も多くの回数出力さた船種を選んだり、或いは出力された船種が所定以上の確率のものを選んだり、予め定められた回数連続して同じ船種を識別したときその船種を選ぶ等の識別向上処理手段を設けることにより、船種識別の識別率を向上させることができる。

【0052】
このように人間に代わり、音響信号受波器1が受信した音響信号から航走体の船種を自動識別できるので、本発明に係る航走体船種識別装置又はその方法を備えた装置を予め水中に設置しておけば、当該装置に対し、その接近してくる航走体の船種を自動識別し、予め定められた対象船種に限り当該装置から信号を出力させることができる。また更に当該装置に接近してくる航走体の正横を検出する装置を設けておけば、対象船種の航走体が装置の正横を通過する時点に信号を発生させることもできる。

【0053】
また、図1に示された符号化手段5の各構成は同図に図示の構成に限られるものではなく、一実施例を示しているものであり、この構成の符号化手段5と同等の機能を果たす構成のものであれば、どのような処理の仕方や回路構成であってもよいことは言うまでもない。そして符号化手段5の符号化も、実験によって好成績を得たものを例示したものであり、上記説明のものに限られるものではなく、適宜の符号変換のものを採用することができる。

【0054】
本発明は船種を自動識別できるので、港湾において、定期旅客船などが定時運行をしているかどうかの監視をもすることができ、天候が悪いときには目視によるとき以上にその監視の効果を発揮する。

【0055】

【発明の効果】以上説明した如く、本発明によれば、受信された航走体の船体音響信号を基に、当該航走体特有の放射雑音についての特徴を内包する符号列を生成し、この符号列の各信号を入力データにして、予め学習されているニューラルネットワーク処理手段を用いニューラルネットワーク演算処理を行うようにしたので、航走体の船種が自動識別される。

【0056】
航走体船種の識別に当たって、請求項2の符号化信号百分率値を予め定められた有効桁の数値にし、この有効桁の数値の符号列を生成するようにした符号化手段の場合は、同一船種で更に詳細なものまで識別できるのに対し、請求項3の符号化信号百分率値を予め定められたしきい値と比較する比較部を備え、上記符号化信号百分率値を2値化し符号列を生成するようにした符号化手段の場合は、大まかな船種を識別できる利点を有している。

【0057】
また所定時間S毎に繰り返され、その識別され出力される船種の識別個数を基にした識別向上処理手段を設けることにより、船種識別の識別率を向上させることができる。

【0058】
そして音響信号受波器が受信した音響信号から航走体の船種を自動識別できるので、本発明に係る航走体船種識別装置又はその方法を備えた装置を予め水中に設置しておけば、当該装置に対し、その接近してくる航走体の船種を自動識別し、予め定められた対象船種の航走体に限り当該装置から信号を出力させることができ得る。
図面
【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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