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明細書 :精油抽出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3842794号 (P3842794)
公開番号 特開2005-298580 (P2005-298580A)
登録日 平成18年8月18日(2006.8.18)
発行日 平成18年11月8日(2006.11.8)
公開日 平成17年10月27日(2005.10.27)
発明の名称または考案の名称 精油抽出方法
国際特許分類 C11B   9/02        (2006.01)
A23L   1/222       (2006.01)
C11B   9/00        (2006.01)
FI C11B 9/02
A23L 1/222
C11B 9/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2004-113587 (P2004-113587)
出願日 平成16年4月7日(2004.4.7)
審査請求日 平成16年4月7日(2004.4.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】沢村 正義
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】渡辺 陽子
参考文献・文献 特開平08-073886(JP,A)
特開2004-018737(JP,A)
特開昭58-185695(JP,A)
特開平08-168355(JP,A)
特開平02-060997(JP,A)
特開2001-329290(JP,A)
調査した分野 C11B
C11C
A23L1
特許請求の範囲 【請求項1】
果実の搾汁後の残滓にヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液による酸処理を施して、常圧または減圧の水蒸気蒸留で残滓から精油を抽出することを特徴とする精油抽出方法。
【請求項2】
果実の搾汁後の残滓に超音波を印加しつつ、常圧または減圧の水蒸気蒸留で残滓から精油を抽出することを特徴とする精油抽出方法。
【請求項3】
果実の搾汁後の残滓にヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液による酸処理を施して、超音波を印加しつつ常圧または減圧の水蒸気蒸留で残滓から精油を抽出することを特徴とする精油抽出方法。
【請求項4】
果実は、柑橘系果実である請求項1から3のいずれか記載の精油抽出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、精油抽出方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、精油抽出の前処理における反応条件の設定を簡単にでき、残滓から高収率で精油を抽出でき、また搾汁後の残滓果皮を効率よく堆肥化することのできる、新しい精油抽出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に柑橘系の果実は、爽やかで、強い香りを有している。その中でも特に、柚子は世界的にもきわめてユニークで強烈な香りを有する柑橘系の果実である。このため、柚子の果皮精油は、生果においてはもとより、食品、香粧品、香水用の香料等として広く利用されている。最近は、アロマセラピーの面からも関心が寄せられている。また、その他の果実、特に柑橘系の果実の精油も、柚子の例と同様に広く利用されている。
【0003】
これら柑橘系をはじめとする果実の果汁や精油は、各種の搾汁装置等を利用することで得ることができる。しかしながら、果実を搾汁した後に残存する果皮(外果皮、内果皮)や種子等の残滓には、精油が多く残存している。そこで、従来より、たとえば、酵素製剤を用いることで酵素処理を行なうことで、残滓から精油を抽出する方法(特許文献1)が提案されている。この抽出方法は、果皮等の残滓に残存する精油は、果皮(たとえば、内果皮のアルベド)等に含まれるペクチン類に包まれているため、ペクチンを分解消化するために酵素処理を行い、有害な有機溶媒を使用することもなく精油の抽出を行っている。これによって、残滓の精油の含有率が減少するため、柚子等の多くの柑橘系果実由来の精油が有する抗菌作用による堆肥化のための微生物活性の阻害を抑えることができ、残滓を効率よく堆肥化することができるとしている。

【特許文献1】特開2004-18737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1記載の抽出方法では、これら酵素の活性を十分に発揮させるために至適な反応条件を検討して設定する必要がある。また、未だに抽出される精油の収集量は少ないという問題があった。
【0005】
このため、上記のとおり果皮等の残滓に精油が残存していることから、多くの精油が有する抗菌作用により、堆肥化するための微生物活性が低下し、発酵(堆肥化)が行われにくいという問題点が依然としてあった。
【0006】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、従来技術の問題点を解決し、精油抽出の前処理における反応条件の設定が簡単にでき、残滓から高収率で精油を抽出でき、また搾汁後の残滓果皮を効率よく堆肥化をすることのできる、新しい精油抽出方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この出願の発明は、前記の課題を解決するものとして、第1には、果実の搾汁後の残滓にヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液による酸処理を施して、常圧または減圧の水蒸気蒸留で残滓から精油を抽出することを特徴とする精油抽出方法を提供する。
【0008】
第2には、果実の搾汁後の残滓に超音波を印加しつつ、常圧または減圧の水蒸気蒸留で残滓から精油を抽出することを特徴とする精油抽出方法を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、第3には、果実の搾汁後の残滓にヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液による酸処理を施して、超音波を印加しつつ常圧または減圧の水蒸気蒸留を行うことで残滓から精油を抽出することを特徴とする精油抽出方法を提供する。
【0010】
そして、第4には、果実は柑橘系果実である精油抽出方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
この出願の発明の精油抽出方法によって、精油抽出の前処理における反応条件の設定を簡単にでき、残滓から高収率で精油を抽出でき、また搾汁後の残滓果皮を効率よく堆肥化することができる。
【0012】
また、果実を柑橘系果実とすることで、柑橘系の爽やかで強い香りを有する精油を効率よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
【0014】
図1は、果実の搾汁工程を概略的に例示した概略図である。また、図2は、前処理として、酸処理を行なうことで精油を抽出する抽出工程を例示した模式図である。
【0015】
柑橘系の果実をはじめとする多くの果実の搾汁工程は、図1に例示したように、搾汁装置を用いて搾汁し、果汁および精油を採取している。
【0016】
この出願の発明の精油抽出方法は、この図1に例示したとおり、搾汁工程の際に発生する果皮や種子を含む残滓から、効率よく精油、さらにはフローラルウォーターを抽出することのできる精油抽出方法である。具体的には、果実の搾汁後に発生する果皮や種子等の残滓を精油の抽出原料とし、この残滓に酸による酸処理を前処理として施している。このとき、従来より行われている粉砕処理(ホモジネート)も施すことで、さらに効率よく精油を抽出することができるため好ましい。このような前処理を果皮や種子等の残滓に施すことで、図2に例示したように、果皮(たとえば、外果皮(フラベド)や内果皮のアルベド)(1)等に含まれるペクチン(2)やヘミセルロース(3)類の分子会合を破壊するとともに、このペクチン(2)やヘミセルロース(3)類の分子間に包まれた精油(4)を速やかに分離させることができる。そして、精油抽出の本工程として、定法にしたがい公知の常圧または減圧水蒸気蒸留法で、上記のとおりの前処理を施した残滓から精油(4)を効率よく抽出することができる。このとき、得られるのは精油だけでなく、スキンローションや入浴、食品等に利用することのできるフローラルウォーター(芳香蒸留水)も得ることができる。なお、酸処理に用いた酸水溶液は、ほとんど抽出されることはない。
【0017】
このような特徴を有する、この出願の発明の精油抽出方法によって、精油抽出の前処理における反応条件の設定を簡単にでき、残滓から高収率で精油を抽出でき、また搾汁後の残滓果皮を効率よく堆肥化することをも実現できる。
【0018】
図3は、前処理として、粉砕処理または酵素処理、もしくは酸処理を行ない、超音波を印加しつつ水蒸気蒸留を行うことで精油を抽出する抽出工程を例示した模式図および超音波処理を施した残滓の状態を例示した模式図である。
【0019】
この図3の例は、図2の例と基本的には同じだが、超音波処理を行う点で異なっている。具体的に説明すると、この図3に例示したように、この出願の発明は、果実の搾汁後の残滓に、粉砕処理(ホモジネート)、または、1種もしくは複数種の酵素製剤を用いた酵素処理を前処理として施した後、超音波を印加しつつ公知の常圧または減圧水蒸気蒸留を行うことで、従来の精油抽出方法と比べ、果皮(1)等の残滓から精油(4)を効率よく抽出することができる。
【0020】
さらに、図3の例は、精油抽出の前処理として酸処理を施した後に、さらに超音波を印加しつつ水蒸気蒸留を行なう精油抽出工程も例示している。なお、この酸処理とともに従来の粉砕処理も施すことで、さらに効率よく精油抽出を行うことができる。具体的には、この図3に例示したように、酸処理を行い、また好ましくは粉砕処理も行うことで、ペクチン(2)やヘミセルロース(3)類を分解して精油(4)を速やかに分離させることができる。そして、超音波処理を行いつつ、定法にしたがって、公知の常圧または減圧水蒸気蒸留を行うことで従来の精油抽出方法よりも、さらに効率よく、搾汁後の果皮や種子等の残滓から精油、フローラルウォーターを抽出することができる。このように、超音波を印加しつつ、常圧または減圧水蒸気蒸留を行うことは、超音波によってペクチン(2)やヘミセルロース(3)類の分子が展開し、より多くの精油が分離される。なお、このとき、図2の例と同様に酸処理で用いた酸水溶液が抽出されることはほとんどない。
【0021】
この出願の発明の精油抽出方法に用いられる酸は、ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)であり、この酸(もしくは酸水溶液)は、精油を抽出する際に利用する常圧または減圧水蒸気蒸留の過程で除去される。

【0022】
以上のように、この出願の発明の精油抽出方法は、残滓から効率よく、高収率で精油を得ることができるため、残滓に残存する精油の量は減少することとなり、微生物活性を利用した残滓の堆肥化において、精油が有する抗菌作用による微生物活性への影響を減らして、堆肥化を促進されることができる。
【0023】
なお、酵素は、ペクチンやヘミセルロース類を効果的に分解消化することのできるものであれば、特に限定されない。たとえば、ペクチナーゼ3S、ペクチナーゼHL、マセロチーム等を使用することができる。
【0024】
この出願の発明の精油抽出方法が、対象とする果実は、その種類や由来は特に限定されるものではないが、爽やかで強い香り等を有している柑橘系果実であることが好ましい。柑橘系果実としては、たとえば、柚子をはじめ、蜜柑、伊予柑、金柑、橙、すだち、ゆこう、たんかん、ぽんかん、でこぽん、文旦、八朔、檸檬、グレープフルーツ、オレンジ、ネーブル、カボス等、種々の柑橘系果実を対象にすることができる。
【0025】
水蒸気蒸留法を行う前には、一般的に残滓を粉砕(ホモジネート)するが、多くの柑橘系果実は、その果皮(外果皮や内果皮等)にペクチンやセミロース等の不溶性成分を他の果実よりも多量に含んでいる。そのため、柑橘系果実を粉砕(ホモジネート)すると、きわめて粘凋性が高くなり、精油はペクチン分子等の高分子化合物に包含されることになり、収率が低下する。このような精油抽出において困難な特徴を有する柑橘系果実でも、この出願の発明の精油抽出方法によって、簡単で、しかも高収率で精油を抽出することができる。
【0026】
以下に実施例を説明し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0027】
実施例1:前処理として酸を利用した精油抽出(酸処理)
精油抽出の対象果実として、柑橘系果実である柚子を使用した。この柚子を搾汁した後に残存する果皮や種子等の残滓を精油抽出の試料(原料)とした。
【0028】
この残滓に、精油抽出の前処理として酸処理を行った。酸としては、5%(w/w)ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP、塩酸でpH 2.0に調整)溶液を使用した。具体的には、残滓(柚子果皮残滓)50gと5%SHMPを加えて粉砕(ホモジネート)して、37℃、1時間インキュベーションして前処理とした。そして、精油抽出の本工程として、常圧水蒸気蒸留法を行って精油を抽出し、これを精油含量測定試料とした。この測定結果は、表1に示した。なお、酸処理の反応条件は、実施例1に示した条件に制限されるものではなく、温度や時間等は厳密な規定はない。たとえば、反応温度は室温でもよく、また反応時間についても特に規定されない。
比較例1:前処理を行わない精油抽出(無処理)
酸処理(SHMP)を行わず、また酵素処理も行なわない無処理、つまり粉砕処理(ホモジネート)のみの場合の精油抽出をコントロールとし、精油含量測定試料とした。測定結果は、表1に示した。なお、精油抽出の本工程は、実施例1と同様に常圧水蒸気蒸留法で行った。
比較例2:前処理として酵素を利用した精油抽出(酵素処理)
残滓の酵素処理には、ペクチナーゼ3S(E-1)(ヤクルト薬品工業株式会社)、ペクチナーゼHL(E-2)(ヤクルト薬品工業株式会社)およびマセロチームA(E-3)(ヤクルト薬品工業株式会社)の3種類の酵素製剤を使用した。
【0029】
まず、残滓(柚子搾汁)50gと水200gで粉砕(ホモジネート)した。これにE-1またはE-2を0.1%加え、pH 3.5-4.0に調整した。E-3の場合は、0.5%加えてpH 5.0に調整した。そして、それぞれの酵素を加えた残滓を、37℃、1時間インキュベーションして精油含量測定試料とした。測定結果は、表1に示した。なお、精油抽出の本工程は、実施例1と同様に常圧水蒸気蒸留法で行った。
【0030】
【表1】
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表1に示したとおり、酸処理(SHMP処理)を行った場合の精油の収率は、0.76%であり、前処理が、酵素処理の場合および粉砕処理のみ(無処理)の場合のいずれの精油収率よりも高収率であった。特に、粉砕処理(無処理)の場合の精油抽出による0.30%と比べ、約2.5倍もの収率を向上することができた。また、酵素処理で最も収率が高かったペクチナーゼHLでは、0.70%の収率であったが、酸処理による収率はこれを上回る収率を可能とすることが確認できた。
【0031】
この結果から、前処理が粉砕処理のみの場合よりも高収率で、また、酵素処理のように温度やpHの調整、反応時間等の反応条件(たとえば、多くの酵素反応の至適条件は、温度37℃、反応時間1時間以上である)を厳密に規定する必要もなく、精油を取得できることが確認できた。
実施例2:超音波処理と減圧水蒸気蒸留による精油抽出(超音波蒸留)
(1)精油抽出
実施例2における精油抽出の本工程は、定法にしたがって減圧水蒸気蒸留法で行った。残滓(柚子果皮)250gと水750gを粉砕処理(ホモジネート)し、2L容の丸底フラスコに入れ、42℃で超音波を印加しつつ減圧蒸留(20-30 mmHg)した。超音波発生装置は、超音波洗浄機(UT-205HS;シャープ株式会社)を用いて、発振周波数35 kHzで行った。蒸留液は、-40℃で捕集した。蒸留液を分液ロートに移し、塩化ナトリウム50 gを加えてよく振盪し、低温室で一晩放置した後、上層の精油を取り秤量した。結果は、表2に示した。
(2)精油分析
精油含量測定装置は、日本薬局方一般分析法における公定分析用の精油定量装置(柴田科学株式会社)を使用した。試料は、果汁の場合は250g、残滓の場合は残滓50gと水200gの混合試料をそれぞれ粉砕(ホモジネート)とした。次に、1L容の丸底フラスコに沸騰石を入れ、電気マッフルを用いて(40 Vに調整)2.5時間、加熱沸騰させた。そして、ビューレットに流出した精油を分離し秤量した。
【0032】
分析装置として、ガスクロマトグラフ(GC-14A;株式会社島津製作所)およびガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS QP-5000;株式会社島津製作所)を使用した。分析カラムは、いずれも石英溶融キャピラリーカラムDB-WaxおよびDB-1(60 m x 0.22 mm、0.2 μm膜厚;J & A Scientific社)を使用した。カラム温度は、70℃(2 min、一定)~(2℃昇温)~230℃(20 min)とし、カラムスプリット比は、1:50とした。精油の同定は、Kovats Indexおよび質量スペクトルで行った。この結果を表3に示した。
比較例3:減圧水蒸気蒸留のみによる精油抽出(通常蒸留)
(1)精油抽出
精油抽出の工程は、超音波処理は行なわずに減圧水蒸気蒸留法のみで行った。減圧水蒸気蒸留法は、実施例2(1)と同様に定法にしたがって行い、その結果を表2に示した。
(2)精油分析
精油分析については、実施例2(2)と同様の方法で行った。その結果を表3にて示し、実施例2の結果と比較した。
【0033】
【表2】
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表2に示したとおり、搾汁後の残滓(果皮残滓)において、実施例2の超音波処理を伴う減圧水蒸気蒸留(超音波蒸留)では、超音波をかけることにより、精油の収率は0.26%であった。一方、比較例3における通常の減圧水蒸気蒸留(通常蒸留)では、精油収率は、0.18%であった。このことから、超音波蒸留の収率は、通常蒸留よりも約1.4倍もの精油収率が増加したことが確認できた。
【0034】
また、蒸留液として回収される水は、スキンローションや入浴、食品等に活用できるフローラルウォーターとして利用することができる。柚子の場合、ほのかな柚子香が漂う蒸留液、すなわちフローラルウォーターを採取できる。
【0035】
【表3】
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この表3では、実施例2の超音波の減圧水蒸気蒸留(超音波蒸留)と比較例3の通常の減圧水蒸気蒸留(通常蒸留)とによって得られた、精油のGC-MSによる定量・定性分析結果を比較して示した。いずれの蒸留液も透明で柚子香のする精油が得られた。成分組成を比較すると両者の特徴を確認することができた。
【0036】
超音波蒸留では、linalool、terpinen-4-ol、α-terpineol等のアルコール類の割合が高かった。一方、通常蒸留では、α-pinene、β-pinene、sabinene、myrcene、α-phellandrene、α-terpinene、β-phellandrene、p-cymene等のモノテルペン炭化水素の割合が超音波蒸留に比べて高かった。このことは、親水性の高いアルコール類等の含酸素化合物を含む液体に超音波を負荷することにより、水溶液から分子の脱離が促進され気化しやすい状態が作られたためと考えられる。したがって、減圧水蒸気蒸留に超音波を負荷させることにより、精油収率を向上させることができ、得られる精油は炭化水素類の比較的少なく、含酸素化合物の多い、香り豊かな(フローラルな)精油を得ることができた。
実施例3:酸処理および超音波処理による精油抽出(酸処理+超音波処理)
柚子の残滓(果皮残滓)を試料として用いて、精油の抽出を酸処理および超音波処理を利用して行なった。酸処理は、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液で果皮残滓を実施例1と同様に処理した。その後、実施例2(1)と同様に超音波をかけながら減圧水蒸気蒸留(超音波蒸留)をすることによって精油を抽出して得た。
【0037】
結果は表4に示したとおり、精油収率は0.27%であった。このことから、酸処理と超音波蒸留を併用することにより、実施例2の超音波蒸留単独よりも収率向上することが確認できた。
比較例4:酵素処理および超音波処理による精油抽出(酵素処理+超音波処理)
実施例3の比較実験として、柚子の残滓(果皮残滓)から、精油の抽出を酵素処理および超音波処理を利用して行なった。
【0038】
比較例2の結果の表1において、前処理として酵素処理で用いた酵素製剤は、ペクチナーゼHLが精油抽出の前処理にもっとも効率がよかった。そこで、比較例2と同様に、このペクチナーゼHLを酵素処理に使用して、残滓(果皮残滓)の前処理を行った。その後に、実施例2(1)と同様に超音波をかけながら減圧水蒸気蒸留を行った。
【0039】
結果は表4に示したとおりであった。この比較例4での精油収率は0.18%であり、酵素処理のみの場合と比べると、その効果に差異は見られなかった。
【0040】
【表4】
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このように、表4に示した実験例3および比較例4の結果から、減圧水蒸気蒸留においては、超音波を伴う蒸留法がきわめて効率がよいこと、そして試料の前処理としてヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液処理が有効であること、その一方で、酵素処理は精油の収率の効率を上げる要因とはならなかったと考慮することができ、この出願の発明の有効性を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】果実の搾汁工程を概略的に例示した概略図である。
【図2】前処理として、酸処理を行なうことで精油を抽出する抽出工程を例示した模式図である。
【図3】前処理として、粉砕処理または酵素処理、もしくは酸処理を行ない、超音波を印加しつつ水蒸気蒸留を行うことで精油を抽出する抽出工程を例示した模式図および超音波処理を施している残滓の状態を例示した模式図である。
【符号の説明】
【0042】
1 果皮
2 ペクチン
3 ヘミセルロース
4 精油
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2