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明細書 :機械的性質と塑性加工性に優れたNi基金属ガラス合金

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4086195号 (P4086195)
公開番号 特開2005-298858 (P2005-298858A)
登録日 平成20年2月29日(2008.2.29)
発行日 平成20年5月14日(2008.5.14)
公開日 平成17年10月27日(2005.10.27)
発明の名称または考案の名称 機械的性質と塑性加工性に優れたNi基金属ガラス合金
国際特許分類 C22C  45/04        (2006.01)
C22C  19/03        (2006.01)
FI C22C 45/04 Z
C22C 19/03 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2004-113630 (P2004-113630)
出願日 平成16年4月7日(2004.4.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年11月 The Japan Institute of Metals発行の「Materials Transactions,Vol.44,No.11」に発表
審査請求日 平成16年4月8日(2004.4.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】井上 明久
【氏名】張 偉
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】蛭田 敦
参考文献・文献 特開昭62-033735(JP,A)
特開平03-072055(JP,A)
特開2001-234306(JP,A)
調査した分野 C22C 45/04
C22C 19/00 ~ 19/05
特許請求の範囲 【請求項1】
金型鋳造法により作製された合金であって、
式 : Ni100-a-b-cTaTi(Zr,Hf)[式中、a,b,cは原子%で

5原子%≦a≦35原子%、
5原子%≦b<35原子%、かつ
15原子%≦a+b<40原子%、
0原子%<c≦20原子%であり、かつ
30原子%≦a+b+c≦55原子%、
を満足する。]で示される組成を有し、
△Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表
わされる過冷却液体領域△Txが40K以上、Tg/Tl(ただし、Tlは、合金の液相線温度を
示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が0.56以上であり、非晶質相を体積百分
率で80%以上含む、圧縮強度が2800MPa以上の高強度と塑性加工性を有することを
特徴とするNi基金属ガラス合金。
【請求項2】
金型鋳造法により作製された合金であって、
式 :Ni100-a-b-dTaTiNb[式中、a,b,は原子%で、
5原子%≦a≦35原子%、
5原子%≦b<35原子%、かつ
15原子%≦a+b<40原子%、
0原子%<d<35原子%であり、かつ
30原子%≦a+b+d≦55原子%、
を満足する。]で示される組成を有し、
△Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表
わされる過冷却液体領域△Txが40K以上、Tg/Tl(ただし、Tlは、合金の液相線温度を
示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が0.56以上であり、非晶質相を体積百分
率で80%以上含む、圧縮強度が2800MPa以上の高強度と塑性加工性を有することを
特徴とするNi基金属ガラス合金。
【請求項3】
金型鋳造法により作製された合金であって、
式 :Ni100-a-b-c-TaTi (Zr,Hf)Nb[式中、a, b,
c, dは原子%で、
5原子%≦a≦35原子%、
5原子%≦b<35原子%、かつ
15原子%≦a+b<40原子%、
0原子%<c≦20原子%、
0原子%≦d<35原子%であり、か
30原子%≦a+b +c+≦ 55原子%、
を満足する。]で示される組成を有し、
△Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表
わされる過冷却液体領域△Txが40K以上、Tg/Tl(ただし、Tlは、合金の液相線温度を
示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が0.56以上であり、非晶質相を体積百分
率で80%以上含む、圧縮強度が2800MPa以上の高強度と塑性加工性を有することを
特徴とするNi基金属ガラス合金。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、大きな非晶質形成能を有し、機械的性質と塑性加工性に優れたNi基金属ガラ
ス合金に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融状態の合金を急冷することにより、薄帯状、フィラメント状、粉粒体状など、種々の
形状を有する非晶質(アモルファス)合金が得られることがよく知られている。非晶質合
金薄帯は、大きな急冷速度の得られる単ロール法、双ロール法、回転液中紡糸法、アトマ
イズ法などの種々の方法で作製できるので、これまでにもFe系、Ti系、Co系、Zr
系、Cu系、Pd系又はNi系について多くの非晶質合金が得られており、優れた機械的
性質、高い耐腐食性等の非晶質合金特有の性質が明らかにされた。
【0003】
例えば、Ni基非晶質合金では、Ni-Pd-Si-B-Al合金(特許文献1)、Ni-P-B
合金( 特許文献2)、RNi系高硬度合金(Rは、Ta、Nb、又はWの1種
以上、Tは、Ti又はZrの1種以上、rは、35~65原子%、sは、25~65原子
%、tは、15原子%以下、r、s、tの合計は100)(特許文献3)、Ta-Ni,T
a-(Ti,Nb,W)-Ni系高耐食性合金(特許文献4)などが知られている。
【0004】
しかし、これらのNi基非晶質合金は液体急冷法により薄帯状、粉末状、細線状などのも
のしか得られていない。そして、高い熱的安定性を示しておらず、最終製品形状へ加工す
ることも困難なことから、工業的に見て、その用途がかなり限定されていた。
【0005】
アモルファス合金をバルク状で作るという夢を実現したのが「金属ガラス」である。すな
わち、ガラス形成能が非常に高い合金が1980年代にPd-Si-Cu合金で見出だされ
た。さらに、1990年になってから、実用的な合金組成でガラス形成能が非常に高い合
金が見出された。一般に、「アモルファス合金」では加熱によりガラス転移点に到達する
前に結晶化が進行してしまい、ガラス転移は実験的には観察できない。これに対して、「
金属ガラス」は加熱によって明瞭なガラス転移が観察され、結晶化温度までの過冷却液体
領域の温度範囲が数十Kにも達する。
【0006】
この物性を備えることにより初めて、冷却速度の遅い銅金型に鋳込む方法によってバルク
状のアモルファス合金を作ることができるようになった。このようなアモルファス合金が
、特に、「金属ガラス」と呼ばれているのは、金属でありながら、酸化物ガラスのように
安定な非晶質で、高温で容易に塑性変形(粘性流動)できるためである。
【0007】
「金属ガラス」は、非晶質形成能が高い、すなわち、ガラス相からなる、より寸法の大き
な、いわゆるバルクの金属鋳造体を銅金型鋳造等により溶湯から過冷却液体状態において
冷却凝固して製造できる特性を有するものであり、また、過冷却液体状態に加熱すると合
金の粘性が低下するために閉塞鍛造などの方法により任意形状に塑性加工できる特性を有
するものであり、これらの特性を有しない、従来のアモルファス合金薄帯やファイバーな
どの「アモルファス合金」とは本質的に異なる材料であり、各種工業製品の材料としての
有用性は非常に大きい。
【0008】
本発明者らは、先に、非晶質形成能、加工性、機械的強度に優れたNi-P-M(Mは、T
i,Zr,Hf,Nb,又はTaの1種以上)系Ni基金属ガラス合金を開発した(特許文献
5)。また、2003年に高いガラス安定性及び非晶質形成能に優れたNi-Nb-Sn基
金属ガラス合金が開発された(非特許文献1)が、このNi基金属ガラス合金は非常に脆
くて、優れた機械的性質と高いガラス安定性を備えていると言えない。
【0009】

【特許文献1】特開平6-25807号公報
【特許文献2】特開平9-143642号公報
【特許文献3】特公昭60-28899号公報
【特許文献4】特公平6-15706号公報
【特許文献5】特開2000-87197号公報
【非特許文献1】APPL. PHYS. LETT. 82 (7): 1030-1032,FEB. 17(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明と関連するNi基非晶質合金では、主に磁気的性質及び耐食性に着目した研究が行
われてきた。これらのNi—非金属(Si,B,P,C)系非晶質合金は、主に上述の単
ロール液体急冷法により作製された薄帯状試料で研究がなされた。しかしながら、実用的
な使用に適する大形状Ni基非晶質合金、言い換えれば非晶質形成能に優れたNi基金属
ガラス合金に関して研究開発はあまり進んでいない。前述したNi基金属ガラス合金は高
い熱的安定性、大きなガラス形成能、優れた塑性加工性、優れた機械的性質を兼ね備えて
いなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者らは、上述の課題を解決するために、大きな非晶質形成能を有し、優れ
た塑性加工性、機械的性質を兼ね備えたNi基金属ガラス合金を提供することを目的とし
て、最適組成について研究した結果、Ni基からなる特定組成の合金を溶融し、液体状態
から急冷凝固させることによって、40K以上の過冷却液体領域△Txを示す上述の性能を
具備したNi基金属ガラス合金が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の組成式で示されるNi基金属ガラス合金である。
(1)金型鋳造法により作製された合金であって、
式 : Ni100-a-b-cTaTi(Zr,Hf)[式中、a,b,cは原子%で

5原子%≦a≦35原子%、
5原子%≦b<35原子%、かつ
15原子%≦a+b<40原子%、
0原子%<c≦20原子%であり、かつ
30原子%≦a+b+c≦55原子%、
を満足する。]で示される組成を有し、
△Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表
わされる過冷却液体領域△Txが40K以上、Tg/Tl(ただし、Tlは、合金の液相線温度を
示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が0.56以上であり、非晶質相を体積百分
率で80%以上含む、圧縮強度が2800MPa以上の高強度と塑性加工性を有することを
特徴とするNi基金属ガラス合金。
【0013】
(2)金型鋳造法により作製された合金であって、
式 :Ni100-a-b-dTaTiNb[式中、a,b,dは原子%で、
5原子%≦a≦35原子%、
5原子%≦b<35原子%、かつ
15原子%≦a+b<40原子%、
0原子%<d<35原子%であり、かつ
30原子%≦a+b+d≦55原子%、
を満足する。]で示される組成を有し、
△Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表
わされる過冷却液体領域△Txが40K以上、Tg/Tl(ただし、Tlは、合金の液相線温度を
示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が0.56以上であり、非晶質相を体積百分
率で80%以上含む、圧縮強度が2800MPa以上の高強度と塑性加工性を有することを
特徴とするNi基金属ガラス合金。
【0014】
(3)金型鋳造法により作製された合金であって、
式 :Ni100-a-b-c-dTaTi (Zr,Hf)Nb[式中、a, b,
c, dは原子%で、
5原子%≦a≦35原子%、
5原子%≦b<35原子%、かつ
15原子%≦a+b<40原子%、
0原子%<c≦20原子%、
0原子%≦d<35原子%であり、かつ
30原子%≦a+b +c+d≦ 55原子%、
を満足する。]で示される組成を有し、
△Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表
わされる過冷却液体領域△Txが40K以上、Tg/Tl(ただし、Tlは、合金の液相線温度を
示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が0.56以上であり、非晶質相を体積百分
率で80%以上含む、圧縮強度が2800MPa以上の高強度と塑性加工性を有することを
特徴とするNi基金属ガラス合金。
【0015】
本発明のNi基金属ガラス合金は、 △Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tg
はガラス遷移温度を示す。)の式で表わされる過冷却液体領域△Txが40K以上である。
また、Tg/Tl(ただし、Tlは、合金の液相線温度を示す。)の式で表わされる換算ガラ
ス化温度が0.56以上である。本発明のNi基金属ガラス合金は、 金型鋳造法により直
径又は厚さ0.5mm以上で、非晶質相の体積比率80%以上の棒材又は板材が得られる。
本発明のNi基金属ガラス合金は、圧縮強度2800MPa以上、硬度Hvが750以上であ
り、機械的性質に優れている。
【0016】
なお、本明細書中の「過冷却液体領域」とは、毎分40Kの加熱速度で示差走査熱量分析
を行うことにより得られるガラス遷移温度Tgと結晶化開始温度Txの温度間隔で定義される
ものである。「過冷却液体領域」は結晶化に対する抵抗力、すなわち非晶質の安定性及び
加工性を示す数値である。本合金は40K以上の過冷却液体領域△Txを有する。また、本
明細書中の「換算ガラス化温度」とは、ガラス遷移温度(Tg)と毎分5Kの加熱速度で示
差熱量分析(DTA)を行うことにより得られる合金液相線温度(Tl)の比で定義されるも
のである。「換算ガラス化温度」は非晶質形成能力を示す数値である。
【0017】
本発明で規定する合金の組成範囲において、0.2mm以上の断面積の線状金属ガラス合
金塊又は0.1mm以上の厚さの板状金属ガラス合金が容易に得られる。金属元素より構成
される合金は非晶質化することにより一般にその機械的性質が向上するが、本発明のNi
基金属ガラス合金において、塊状試料で、2800MPaを超える圧縮強度を持つものが容
易に得られ、塑性伸びを示した。本発明のNi基ガラス合金から、製造される塊状試料は
具体的には、断面積が0.2mm以上、圧縮強度が2800MPa以上である。なお、リボン
試料の引張強度は圧縮強度と同程度である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のNi基合金組成は、40K以上の過冷却液体領域を示すことから大きな非晶質形
成能を有し、金型鋳造法により厚さ1mm以上の板状材料又は直径1mm以上の棒状材料を容
易に作製することができる。また、高強度、高硬度を有する。これらのことから、本発明
は、優れた塑性加工性、優れた機械的性質及び耐食性を兼備した実用上有用なNi基金属
ガラス合金を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を説明する。本発明のNi基ガラス合金において、Ta、Ti
は、本発明の合金の基幹となる元素群であり、特に非晶質を形成する基本となる元素であ
る。Taは、5原子%以上35原子%以下で、好ましくは5原子%以上30原子%以下、
さらに好ましくは5原子%以上25原子%以下である。Tiは、5原子%以上35原子%
以下で、好ましくは5原子%以上30原子%以下、さらに好ましくは5原子%以上20原
子%以下である。これらの元素は合計で15原子%以上40原子%未満、好ましくは20
原子%以上35原子%以下とする。上記の組成範囲を外れると非晶質形成能が低下する。
【0020】
また、Zr、Hf元素は、Ta、Tiとの合計で30原子%以上55原子%以下、より好
ましくは35原子%以上55原子%以下の範囲でNi-Ta-Ti系合金の非晶質形成能を
高める効果を有する。Zr、Hf元素量は、合計で20原子%以下で、好ましくは2.5
原子%以上15原子%以下である。
【0021】
Nbは、Ta、Ti元素との合計で30原子%以上55原子%以下、より好ましくは35
原子%以上55原子%以下の範囲でNi- Ta-Ti系合金の非晶質形成能を高める効果
を有する。Nbは、35原子%以下で、好ましくは5原子%以上30原子%以下である。
【0022】
Niは20原子%まではFe、Co、Cu、Mnよりなる群から選択される1種又は2種
以上の元素によって置換することにより、合金液相線温度(Tl)が下がり、非晶質形成能
は増大するが、20原子%を超えると過冷却液体領域△Txが小さくなり非晶質形成能が低
下する。
【0023】
少量のGe、Sn、Si、Be、B、Al、Ag、Pd、Pt、Au又は希土類元素より
なる群から選択される1種又は2種以上の元素の添加は過冷却液体領域△Txは増大するが
、5原子%を超えると非晶質形成能が劣化するため、添加する場合は5原子%以下とする
。これらの元素は、Ta、Ti、Zr、Hf、Nb元素との合計で30原子%以上55原
子%以下、より好ましくは35原子%以上55原子%以下の範囲とする。少量のCr、V
、Mo、Wの添加は強度の向上に有効であるが、非晶質形成能が劣化するため、添加する
場合は5原子%以下とする。
【0024】
本発明のNi基金属ガラス合金は大きな非晶質形成能を有するため、溶融金属を金型に充
填鋳造することにより任意の形状の金属ガラス合金製品を得ることができる。例えば、代
表的な金型鋳造法においては、合金を石英管中でアルゴン雰囲気中において溶融した後、
溶融金属を0.5~1.5kg・f/cmの噴出圧で銅製の金型内に充填凝固させることにより
金属ガラス合金塊を得ることができる。更に、ダイカストキャスティング法及びスクイズ
キャスティング法などの製造方法を適用することもできる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例について説明する。表1に示す合金組成からなる材料(実施例1~
11)について、アーク溶解法により原料合金を溶製した。これらの合金を石英管中でア
ルゴン雰囲気中に1600~1800Kの温度で再溶融した後、溶融金属を0.2~0.5k
g・f/cmの噴出圧で回転速度が40m/sの銅製のロールの表面に噴射する(単ロール液体
急冷法)ことによって幅約1mmで厚さ約20μmの薄帯試料を作製した。また、銅金型
鋳造法によって直径1mm、長さ約40mmの棒状試料を作製した。
【0026】
実施例1~11、比較例1、3、5は直径1mmの棒状試料であり、比較例2、4、6は薄
帯試料である。そして、薄帯試料のガラス遷移温度(Tg)、結晶化開始温度(Tx)を示差走査
熱量計(DSC)より測定した。これらの値より過冷却液体領域(Tx-Tg)を算出した。液相線
温度(Tl)の測定は、示査熱分析(DTA)により測定した。これらの値より換算ガラス化
温度(Tg/Tl)を算出した。
【0027】
また、金型鋳造法により作製した直径1mmの棒状試料の非晶質化の確認はX線回折法によ
り行った。また、試料中に含まれる非晶質相の体積比率(V-amo.)は、DSCを用
いて結晶化の際の発熱量を完全非晶質化した厚さ約20μmの薄帯との比較により評価し
た。これらの評価結果を表1に示す。さらに、圧縮試験片を作製し、インストロン型試験
機を用いて圧縮試験を行い圧縮強度(σf)を評価した。また、ビッカース硬さHv(荷重、
時間はそれぞれ25グラム、15秒である)を測定した。評価結果を表1に示す。
【表1】
JP0004086195B2_000002t.gif

【0028】
表1より明らかなように、実施例1~11の金属ガラス合金は、40 K以上の過冷却液体
領域と0.56以上の換算ガラス化温度を示すとともに、直径1mmの金属ガラス合金棒が
容易に得られた。図1、図2には、それぞれ実施例1(Ni60Ta20Ti10Zr
)の金属ガラス合金のDSC曲線及びX-線回折図形を示す。実施例1~11の合金は非
晶質相を体積百分率で80%以上含むが、比較例4の合金は、Co量が20原子%を超え
、大きなガラス形成能を持っておらず、直径1mmの棒状金属ガラス合金が得られなかった
。比較例5、6の合金は、本発明の合金組成の基本元素の一つであるTiを含有しておら
ず、直径1mmの棒状金属ガラス合金が得られなかった。
【0029】
また、表1より明らかなように、実施例1~11の金属ガラス合金は、2800MPa以上
の圧縮破断強度及び750Hv以上のビッカース硬度を示す。これに対して、比較例1の合
金は、Taを含有しておらず、強度が2800MPa未満になる。比較例2の合金は、Ta
、Tiを含有しておらず非晶質形成能を有しない。比較例3の合金は、非常に脆く、塑性
加工性が悪い。図3には、実施例1(Ni60Ta20Ti15Zr)の合金の圧縮試
験の応力-歪み曲線を示す。図3に示されるように、本発明の合金は塑性伸びを示し、優
れた塑性加工性を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のNi基金属ガラス合金は、強度と耐磨耗性が要求される小型精密機器部品及び耐
食性が要求される配管、燃料電池用メタルセパレータなどに適する特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の金属ガラス合金材のDSC曲線図である。
【図2】実施例1の金属ガラス合金材のX-線回折図形である。
【図3】実施例1の金属ガラス合金材の圧縮試験による応力-歪み曲線図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2