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明細書 :担持体、物質検出用器具とその製造方法、及び検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4066187号 (P4066187)
公開番号 特開2005-292051 (P2005-292051A)
登録日 平成20年1月18日(2008.1.18)
発行日 平成20年3月26日(2008.3.26)
公開日 平成17年10月20日(2005.10.20)
発明の名称または考案の名称 担持体、物質検出用器具とその製造方法、及び検出方法
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
G01N  33/566       (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
FI G01N 33/53 M
C12M 1/00 A
G01N 21/64 F
G01N 33/566
G01N 37/00 102
請求項の数または発明の数 5
全頁数 17
出願番号 特願2004-110331 (P2004-110331)
出願日 平成16年4月2日(2004.4.2)
審査請求日 平成17年6月8日(2005.6.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】清水 信義
【氏名】浅川 修一
【氏名】村山 裕治
個別代理人の代理人 【識別番号】110000176、【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
審査官 【審査官】白形 由美子
参考文献・文献 特表2003-507705(JP,A)
国際公開第01/098781(WO,A1)
特開昭60-047960(JP,A)
特開2002-286643(JP,A)
特開平01-162151(JP,A)
特表2002-521064(JP,A)
特開2003-322649(JP,A)
特開平07-035751(JP,A)
特開平11-099000(JP,A)
特開2003-130874(JP,A)
特開平01-248060(JP,A)
特開2003-028867(JP,A)
特開平03-020668(JP,A)
特開2000-171391(JP,A)
調査した分野 G01N 33/48-33/98
G01N 37/00
特許請求の範囲 【請求項1】
照射光を担持体に照射して、前記担持体に物質が担持されている場合に放射される放射光を検出する、担持体に担持された物質を検出する検出方法において、
前記担持体が人工材料からなり、
前記担持体を透明化する処理を行うことを特徴とする検出方法。
【請求項2】
前記担持体が、ニトロセルロース、ナイロン、PVDF、またはそれらの混合物からなるメンブレンであることを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
組織標本封入剤を用いることによって、前記担持体を透明化する処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項4】
インクで染色された担持体に担持された物質を検出する検出方法であって、
前記担持体を透明化する処理を行うステップと、
前記担持体に照射光を照射するステップと、
前記物質が存在する場合に放射される放射光を検出するステップと、
を含み、
前記インクが、前記照射光の波長の光を吸収する特性を有するインクであることを特徴とする検出方法。
【請求項5】
前記インクが黒色インクであることを特徴とする請求項4に記載の検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、インクで染色された担持体、その担持体を有する物質検出用器具とその製造方法、及びその担持体に担持された物質を検出する検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
担持体上にDNAやRNA、タンパク質をアレイ状に固定したデバイスとして、マクロアレイやマイクロアレイが知られている。これらのアレイは、生物学、医学の分野において研究や診断に用いられている。
【0003】
アレイの表面にはDNAやRNA、タンパク質などが固定される。固定法としては、従来、サザンブロッティング法、ノーザンブロッティング法、ウエスタンブロッティング法で用いられてきた方法や、基板上で直接DNA合成を行うDNAチップ法や、cDNAクローンやPCR法で増幅されたDNA、合成されたDNA等をスポッターと呼ばれる装置を用いて基板に整列固定するDNAマイクロアレイ法等がある。また、タンパク質はDNAマイクロアレイ法と同様にスポッターを用いて基板上へ固定できる。
【0004】
一般に、これらのアレイ上のプローブに結合するターゲット分子を検出するために、RI(ラジオアイソトープ)や蛍光色素でラベルしたターゲット分子が用いられる。また、RIと同様の検出感度をもちながら危険性のきわめて低いRLSアッセイシステム(Qiagen社)も開発されている。この手法は、フルオレセインやビオチンなどでラベルしたターゲットDNAと、そのターゲットDNAを認識する抗フルオレセイン抗体や抗ビオチン抗体を結合させた光散乱パーティクル(RLS particle、商標)を用い、白色光を照射して光散乱パーティクルから得られる散乱光を検出する。
【0005】
マクロアレイとマイクロアレイは、担持体の大きさや担持させた物質の密度、全体の大きさが異なる。マクロアレイにはニトロセルロースやナイロン、PVDFなどのメンブレンや、プラスチックなどが用いられ、マイクロアレイにはガラス、シリコンなどの基板が用いられる。Fast(登録商標;Schleicher & Schuell社)-slideのようにニトロセルロースでコーティングしたスライドガラスなども用いられているが、マイクロアレイで使用するときに用いる蛍光の検出系では、バックグランドが高い理由からほとんど使用されていない。しかし、メンブレンでコーティングされた表面に担持された物質は、その量や固定力が基板のものと比べて格段に向上している。
【0006】
このようなDNAマイクロアレイに対する担持体としてポリオレフィンが用いられ、バックグラウンドを下げるために黒色または透明にすることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。

【特許文献1】特開2003-28867明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、DNAやタンパク質の担持体としてポリオレフィンを用い、その担持体を黒色または透明にすることは、通常、市販の担持体を用いる実験者にとっては容易ではない。すなわち、これまでに、実験者側で、担持体の種類に関わらず簡便にバックグラウンドノイズを下げる方法はなかった。
【0008】
そこで、本発明は、簡便にバックグラウンドノイズを減少させることのできる、インクで染色された担持体、及びその担持体を有する物質検出用器具とその製造方法、並びに、簡便にバックグラウンドノイズを減少させることのできる、担持体に担持された検出対象物質の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の担持体は、検出対象の物質を担持させるための担持体であって、インクで染色されていることを特徴とする。ここで、インクとは有色の液体をいい、主に筆記用や印刷用に用いられるが、本来の用途が筆記用や印刷用でなくても構わない。上記担持体は、材質としてニトロセルロースを含んでいることが好ましいが、他の材質でも構わない。
【0010】
また、前記担持体に担持されている前記物質を検出するために、照射光を前記担持体に照射して、前記物質が担持されている場合に放射される放射光を検出してもよい。前記放射光が、蛍光または共鳴散乱光であってもよい。
【0011】
また、上記担持体は、黒色インクまたは前記照射光の波長の光を吸収する特性を有するインクで染色されていてもよい。
【0012】
また、上記担持体は、検出対象となる物質を担持していてもよい。
【0013】
また、前記全ての検出対象となる物質は、DNAであってもよい。
【0014】
さらに、本発明の物質検出用器具は、検出対象の物質を担持させるための担持体を有する物質検出用器具であって、前記担持体がインクで染色されていることを特徴とする。前記担持体が材質としてニトロセルロースを含んでもよい。
【0015】
また、前記物質検出用器具において、前記担持体に担持された前記物質を検出するために、照射光を前記担持体に照射して、前記物質が担持されている場合に放射される放射光を検出してもよい。前記放射光が、蛍光または共鳴散乱光であってもよい。
【0016】
また、前記物質検出用器具において、前記インクが黒色インクまたは前記照射光の波長の光を吸収する特性を有するインクであってもよい。
【0017】
また、前記物質が、DNAであってもよい。
【0018】
さらに、本発明の検出方法は、担持体に担持された物質を検出する検出方法であって、前記担持体に照射光を照射するステップと、前記物質が存在する場合に放射される放射光を検出するステップと、を含み、前記担持体がインクで染色されていることを特徴とする。前記担持体が材質としてニトロセルロースを含んでもよい。また、前記放射光が、蛍光または共鳴散乱光であってもよい。また、前記担持体が、黒色インクまたは前記照射光の波長の光を吸収する特性を有するインクで染色されていてもよい。また、前記物質が、DNAであってもよい。なお、この検出方法が、前記担持体の屈折率を変化させる処理を行うステップをさらに含んでもよい。
【0019】
さらに、本発明の物質検出用器具の製造方法は、検出対象の物質を担持させるための担持体を有する物質検出用器具の製造方法であって、前記担持体をインクで染色するステップを含むことを特徴とする。また、前記担持体が材質としてニトロセルロースを含んでもよい。また、前記担持体を黒色インクで染色するステップを含んでもよい。あるいは、前記担持体が担持した前記物質を検出するために、照射光を前記担持体に照射し、前記担持体に前記物質が担持されている場合に放射される放射光を検出するのに用いられる担持体を有する物質検出用器具の製造方法であって、前記担持体を、前記照射光の波長の光を吸収する特性を有するインクで染色するステップを含んでもよい。
【0020】
さらに、本発明の検出方法は、照射光を担持体に照射して、前記担持体に物質が担持されている場合に放射される放射光を検出する、担持体に担持された物質を検出する検出方法において、前記担持体が人工材料であって、前記担持体の屈折率を変化させる処理を行うことを特徴とする。
【0021】
この検出方法において、前記担持体が、ニトロセルロース、ナイロン、PVDF、またはそれらの混合物からなるメンブレンであることを特徴としてもよい。また、前記担持体を透明化することによって、前記担持体の屈折率を変化させてもよい。この場合、前記担持体の屈折率を変化させることにより、照射光の角度を変えてもよく、放射光の角度を変えてもよい。なお、組織標本封入剤を用いることによって、前記担持体の屈折率を変化させてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡便にバックグラウンドノイズを減少させることのできる、インクで染色された担持体、及びその担持体を有する物質検出用器具とその製造方法、並びに、簡便にバックグラウンドノイズを減少させることのできる、担持体に担持された検出対象物質の検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の物質検出用器具が有する担持体に担持された物質を検出する検出方法は、担持体に照射光を照射し、その物質が存在する場合に放射される放射光を検出する工程を含む。以下、担持体及び物質検出用器具の作製方法及び検出対象となる物質の検出方法を、実施例と共に詳細に記述する。
【0024】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0025】
==担持体及び物質検出用器具の作製方法==
検出対象となる物質は、例えば、in vitro合成したオリゴヌクレオチド、cDNA、BACなどのDNA、単離したmRNAやin vitro合成したRNAなどのRNA、in vitro合成したペプチドや、組織抽出液に含まれるタンパク質、抗体などのタンパク質などが好ましいが、その物質が担持体に担持されて、且つ、上記検出方法により検出できるものであれば、これらに限定されない。なお、この物質を含む検体の形態は、DNA溶液など液体状でもよく、組織切片など固体状でもよい。また、アガロースをはじめとする寒天やポリアクリルアミドをはじめとするポリマーなどの有機物や、シリコンや金属などの無機物など、コロイド状、ゲル状、半固体状、などであってもよい。
【0026】
物質検出用器具の有する担持体は、上記のような検出対象の物質を担持することができ、その物質を上記検出方法で検出でき、且つインクで染色できるものであれば、特に限定されない。検出対象の物質を担持する担持体の材質はニトロセルロースであることが好ましいが、ナイロンやプラスチックなどでもよく、特に限定されない。担持体の形態はメンブレンであってもよく、スライドガラスや基板にコーティングされたものであってもよいが、これらに限定されない。例えば、代表的なメンブレンとしては、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、ウエスタンブロッティング、など、従来のブロッティングや、マクロアレイなどに用いられるニトロセルロースメンブレンやナイロンメンブレンなどがあるが、これらに限定されない。スライドガラスや基板にコーティングされた担持体としては、Fast(登録商標;Schleicher & Schuell社)-slideにコーティングされたニトロセルロースのような例がある。
【0027】
これらの担持体を用いる際、バックグラウンドノイズを減少させるため、インクで染色する。インクは、黒色インクであることが好ましいが、物質を検出するために照射する照射光の波長の光を吸収する特質を持つ色のインクであれば構わない。これにより、担持体によって反射された照射光が、放射光とともに検出されることにより、担持体によるバックグラウンドノイズを生じるのを防止することができる。このインクの本来の用途は、筆記用・印刷用に限定されないが、ボールペンインクであることが好ましい。担持体をインクで染色するためには、例えば、担持体をインク中に所定時間浸せばよく、その後、染色した担持体を水で洗浄することにより、担持体の染色濃度を調節できる。このように染色にインクを用いることにより、物質を検出する実験者側で担持体を染色することができるようになるため、本発明の担持体の作製が容易になる。
【0028】
この担持体に、検出対象の物質を担持させる具体的な方法は、例えば、DNAを担持体の上で合成しても、合成したDNAを担持体に載せてもよいが、それらDNAを、架橋剤などを用いて担持体表面と共有結合させたり、担持体を真空オーブンで焼いたりすることにより、固定してもよい。メンブレンの場合、アルカリ溶液で架橋したり、真空オーブンで焼いたりすることもできる。また、タンパク質の場合、末端にシステインを付加した後、チオールカップリング法により担持体表面に固定してもよいが、ブロットするだけで固定される場合もある。その他、担持方法や固定方法はこれらに限らず、検出対象の物質に対し適切なものが選ばれる。
【0029】
これらの担持体を備えた物質検出用器具は、例えば、ゼラチンやシリカでコーティングしたスライドガラス、Fast-slideのようなニトロセルロースでコーティングしたスライドガラスなど、担持体でコーティングされたスライドガラスや、ニトロセルロースメンブレンを貼り付けた基板などがあるが、本発明の物質検出用器具は、これらに限定されない。
【0030】
以上の事柄から、検出対象の物質を担持させた物質検出用器具の具体的な形態の例としては、組織切片を貼り付けたスライドガラス、核酸やタンパク質をブロットしたニトロセルロースメンブレン、多種類のオリゴヌクレオチドやBACをもつDNAアレイ、他種類の抗体が固定されたタンパク質用マイクロアレイ、など様々な形態が考えられるが、本発明の物質検出用器具は特にこれらに限定されるものではない。
【0031】
==検出対象となる物質の検出方法==
本発明の物質検出用器具の有する担持体に担持された物質を検出する具体的な方法は、検出対象の物質に対し適切なものが選ばれる。典型的には、蛍光などの標識でラベルした検出手段を投与して検出対象の物質に結合させ、担持体に照射光を照射し、放射される放射光を検出する。
【0032】
検出手段としては、例えば、検出対象が一本鎖DNAやRNA等の核酸である場合、相補鎖の配列を持つDNAやRNAなどを用いることができ、検出対象がタンパク質である場合は、そのタンパク質に特異的に結合する抗体など、あるいは検出対象が抗体の場合、その抗体が認識するタンパク質などを用いることができる。実際には、これらのDNA、RNA、タンパク質などの検出対象とは結合しない物質が検出手段に混入していてもよく、例えば組織からの抽出物や粗精製核酸などを検出手段として用いてもよい。このように、実験目的を考慮し、検出対象の物質により、適切な検出手段を選択する。
【0033】
検出手段を直接ラベルするための1次標識には、例えば、蛍光標識、ビオチン標識、その他のタグを用いることができる。蛍光標識でラベルした場合、担持体に、励起光を照射し、放射光を検出することにより、検出対象の物質に結合した検出手段を検出する。また、いずれの場合も、2次標識として蛍光や光散乱パーティクルでラベルした1次標識特異的抗体を用いて、1次標識を検出することにより、間接的に検出対象の物質に結合した検出手段を検出してもよい。2次標識が光散乱パーティクルの場合、担持体に白色光を照射し、共鳴散乱光を検出することにより、検出対象の物質を検出する。その他、ABC法など、免疫化学的手法を用いて、シグナルを増幅することもできる。
【0034】
以上のような検出方法によって放射された放射光は、蛍光の場合、DNAマイクロアレイスキャナーなどの蛍光検出装置、共鳴散乱光の場合、HiLightアレイ検出システム(Qiagen社)によって検出、解析できる。
【0035】
==担持体の屈折率の調節==
生物の組織を顕微鏡で観察する際、組織は半透明なので内部の観察が出来ない。そこでキシレンなどを組織中の水分と置換して透明化し、さらに組織標本封入剤で置換して透明度を維持する。
【0036】
一方、照射光を担持体に照射して、担持体に物質が担持されている場合に放射される放射光を検出する、担持体に担持された物質を検出する検出方法においても、照射光の反射がバックグラウンドノイズとして検出されることがある。その際、担持体の屈折率を変化させる処理を行うことによって、バックグラウンドノイズの発生を抑えることができる。
【0037】
ここで使用する担持体は人工材料であればよく、例えばメンブレン、基板、プラスチック、アクリルアミドゲルなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、担持体の屈折率を変化させるためには、担持体を透明にすればよいが、必ずしも透明にする必要はない。担持体の屈折率を変化させる方法は、キシレンや組織標本封入剤を用いて透明にする事が出来るが、その薬剤は、担持体を透明化でき、なおかつその状態を維持できるならばこれらに限定されず、また複数の試薬を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
以下の実施例では、組織標本封入剤を用いて担持体を透明にした。ここでは、組織標本封入剤としてビオライト(製造元:株式会社 高研 販売元:応研商事株式 会社、商標)を用いた。なお、組織標本封入剤は、担持体の固定や色素の褪色を防ぐ効果もある。
【0039】
QIAGEN社のRLSアッセイシステムをメンブレンに用いると、照射光の反射が強くてバックグランドに影響し、検出不可能になってしまう。封入剤を用いてメンブレンを透明にし、そのことによってバックグランドノイズを減少させることができる。
【実施例】
【0040】
本実施例では、DNAマイクロアレイの解析をする際に、簡便にバックグラウンドノイズを減少させる方法について詳細に述べる。
【0041】
==染色FAST-slideの作製==
FAST-slideを三菱鉛筆社製PIN101インクに迅速に浸し、約5分間静置した。FAST-slideを取りだし、迅速に水中に入れ、流水で約5分間洗浄した。洗浄したFAST-slideを、プレート用遠心機で、5分間、2000rpmで遠心し、水分を除去・乾燥した後、デシケータで乾燥し、そのまま保存した。対照には、染色していないFAST-slideを用いた。
【0042】
==DNAマイクロアレイの作製==
4μlの1μg/μlBAC DNAを0.5ml微小遠心チューブに入れ、バスタブ式超音波洗浄機で約1時間超音波をかけることにより切断した。1μlの5x変性用バッファーを加え、ピペットマンで約20回ピペッティングして、DNAを変性させた。DNAマイクロアレイ作製装置(Genetix社製QArray)を用いて、BAC DNAをFAST-slideにスポッティングした(湿度60%)。このFAST-slideを、真空オーブンを用いて、真空中80℃30分間加熱した後、中和バッファーに約100回出し入れすることにより洗浄、さらに流水で洗浄した。プレート用遠心機で、5分間、2000rpmで遠心し、水分を除去・乾燥した後、デシケータで乾燥し、そのまま保存した。
【0043】
==プレ・ハイブリダイゼーション==
FAST-slide kitに添付されている1xMicroHybridization Prehyb/Wash Buffer600μlに、10μg/μlのサケ精子1本鎖DNA10μl加え、DNAマイクロアレイに滴下し、同kitに添付されているHybridization Chamberを用いて、37℃1時間撹拌震とうした。
【0044】
==CGHハイブリダイゼーション~蛍光イメージング及びその解析==
Cy3またはCy5でラベルしたヒトゲノムDNA1μgとCot-1 DNA30μlを混合し、エタノール沈殿し、FAST-slideに添付されているHybridization Buffer600μlに懸濁し、100℃5分処理後、37℃120分インキュベートした。
【0045】
このハイブリダイゼーション溶液を、DNAマイクロアレイ上のプレ・ハイブリダイゼーション溶液と交換し、Hybridization Chamberを用いて、37℃12時間以上インキュベートした。
【0046】
ハイブリダイゼーションを終えたDNAマイクロアレイを、1xMicroHybridization Prehyb/Wash Bufferを用いて、42℃で20分、3回洗浄後、1xSSCを用いて、室温で5分、1回洗浄した。プレート用遠心機で、5分間、2000rpmで遠心し、水分を除去・乾燥した後、60℃のインキュベータで、5分間、再度乾燥した。この後、後述の方法に従って、ビオライトを用いて、FAST-slideを透明化した。
【0047】
DNAマイクロアレイスキャナー(Packerd社製ScanArray5000)を用いて、上記DNAマイクロアレイをスキャンした(Focus: 約-1986、Laser Power: 100%、PMT: 約50%)。
【0048】
図1及び図2は、無加工のFAST-slideを用いた結果で、検出対象として、それぞれCy3及びCy5でラベルしたヒトゲノムDNAを用いた。図5は、各DNAサンプルに関して、Cy3のシグナル強度をx軸に、Cy5のシグナル強度をy軸にプロットしたドット・プロット解析の結果である。図7に、図5の解析可能領域(ドットの値がバックグランドノイズの値よりも大きい領域)の拡大図を示す。
【0049】
また、図3及び図4は、黒色インクで染色したFAST-slideを用いた結果で、検出対象として、図1及び図2同様、それぞれCy3及びCy5でラベルしたヒトゲノムDNAを用いた。図6に、染色したFAST-slideを用いた時のドット・プロット解析の結果を示す。図8に、図6の解析可能領域の拡大図を示す。
【0050】
Cy3を用いた実験に関しては図1と図3を比較し、Cy5を用いた実験に関しては図2と図4を比較すると、どちらの場合においても、一見して、染色したFAST-slideを用いた時のほうがSN比の上昇が見られ、多くのシグナルが検出できることがわかる。実際に測定したシグナル強度でSN比を比較すると、解析可能領域におけるシグナルの弱い部分で、Cy3を用いたときは平均1.94倍、Cy5を用いた時は平均1.23倍に増加した。同様に、解析可能領域におけるシグナルの強い部分で、Cy3を用いたときは平均2.00倍、Cy5を用いた時は平均5.27倍にSN比が増加した。
【0051】
また、図7と図8を比較すると、染色したFAST-slideを用いることにより、微量なシグナルも検出できるようになり、解析可能なサンプル数は、242クローンから582クローンに増加した。
【0052】
==RLSアッセイシステムを用いたCGHハイブリダイゼーション~解析==
ビオチンまたはフルオレセインでラベルしたヒトゲノムDNA1μgとCot-1 DNA30μlを混合し、エタノール沈殿し、FAST-slideに添付されているHybridization Buffer600μlに懸濁し、100℃5分処理後、37℃120分インキュベートした。
【0053】
このハイブリダイゼーション溶液をDNAマイクロアレイ上のプレ・ハイブリダイゼーション溶液と交換し、Hybridization Chamberを用いて、37℃12時間以上インキュベートした。
【0054】
ハイブリダイゼーションを終えたDNAマイクロアレイを、1xMicroHybridization Prehyb/Wash Bufferを用いて、42℃で20分、3回洗浄後、1xSSCを用いて、室温で5分、1回洗浄した。プレート用遠心機で、5分間、2000rpmで遠心し、水分を除去・乾燥した後、60℃のインキュベータで、5分間、再度乾燥した。
【0055】
以下、QIAGEN社製RLS法を用い、QIAGEN社提供のプロトコールに従って光散乱パーティクルでFAST-slideをラベルした後、後述の方法に従ってビオライトを用いてFAST-slideを透明化し、専用スキャナーでシグナルを検出した。図9にその結果を示す。
【0056】
==担持体の透明化==
まず、ラベルしたDNAマイクロアレイを乾燥し、DNAマイクロアレイ上にビオライトを300μl載せた。ビオライトが乾燥する前に、気泡が入らないようにビオライトをカバーガラスで伸ばし、そのままカバーガラスでカバーした。室温で約30分ほどビオライトが乾燥するのを待ち、スライドガラスからはみ出たビオライトを削り取り、検出用スキャナーでシグナルを検出した。
【0057】
図10に、CGHハイブリダイゼーションを行った後、RLSアッセイシステムを用いてラベルしたFAST-slideに対して、透明化する前に得られたシグナル(図10右)と透明化した後に得られたシグナル(図10左)の比較を示す。透明化する前は、バックグラウンドノイズが約24000であったのに対し、透明化した後は、バックグラウンドノイズが約15000にまで低下していた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を用いた一実施例において、無加工のFAST-slideを用い、ハイブリダイゼーションにCy3でラベルしたヒトゲノムDNAを用いた時に得られたシグナルを示す図である。
【図2】本発明を用いた一実施例において、無加工のFAST-slideを用い、ハイブリダイゼーションにCy5でラベルしたヒトゲノムDNAを用いた時に得られたシグナルを示す図である。
【図3】本発明を用いた一実施例において、染色したFAST-slideを用い、ハイブリダイゼーションにCy3でラベルしたヒトゲノムDNAを用いた時に得られたシグナルを示す図である。
【図4】本発明を用いた一実施例において、染色したFAST-slideを用い、ハイブリダイゼーションにCy5でラベルしたヒトゲノムDNAを用いた時に得られたシグナルを示す図である。
【図5】図1と図2において得られたシグナルを、ドット・プロット解析した結果を示す。
【図6】図3と図4において得られたシグナルを、ドット・プロット解析した結果を示す。
【図7】図5の解析可能領域の拡大図を示す。
【図8】図6の解析可能領域の拡大図を示す。
【図9】本発明を用いた一実施例において、染色したFAST-slideをもちい、ハイブリダイゼーションにビオチンでラベルしたヒトゲノムDNAを用いて、抗ビオチン抗体-金粒子複合体を反応させて得られたシグナルを示す図である。
【図10】本発明を用いた一実施例において、染色したFAST-slideをもちい、ハイブリダイゼーションにビオチンでラベルしたヒトゲノムDNAを用いて、抗ビオチン抗体-金粒子複合体を反応させた後、ビオライトを用いて透明化する前(左図)と透明化した後(右図)に得られたシグナルを比較した図である。
図面
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図10】
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