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明細書 :微粒子集積体の製造方法及び微粒子細線アレイ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4679832号 (P4679832)
公開番号 特開2005-296747 (P2005-296747A)
登録日 平成23年2月10日(2011.2.10)
発行日 平成23年5月11日(2011.5.11)
公開日 平成17年10月27日(2005.10.27)
発明の名称または考案の名称 微粒子集積体の製造方法及び微粒子細線アレイ
国際特許分類 B01J  19/00        (2006.01)
G02B   1/02        (2006.01)
FI B01J 19/00 K
G02B 1/02
請求項の数または発明の数 2
全頁数 12
出願番号 特願2004-114228 (P2004-114228)
出願日 平成16年4月8日(2004.4.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 Chemistry Letters Vol.32 NO.11(平成15年11月5日)The Chemical Society of Japan発行第1016-1017ページに発表
審査請求日 平成19年3月23日(2007.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】増田 佳丈
【氏名】河本 邦仁
個別代理人の代理人 【識別番号】100097733、【弁理士】、【氏名又は名称】北川 治
審査官 【審査官】神田 和輝
参考文献・文献 特開平07-116502(JP,A)
特開2003-002687(JP,A)
特開2003-095793(JP,A)
特開2003-181275(JP,A)
特開2003-290648(JP,A)
調査した分野 B01J 19/00-19/32
B01J 13/00
B81B 1/00-7/04
B81C 1/00-3/00
B82B 1/00-3/00
G02B 1/02
特許請求の範囲 【請求項1】
一定の粒径の微粒子が分散されたコロイド液に対して、その液面に交差するように微粒子集積体の基板を縦向きに浸漬し、コロイド液の溶媒を蒸発させてコロイド液の液面近傍の微粒子を順次基板の表面に供給し、溶媒の蒸発によるコロイド液の液面低下速度を一定の程度以上に設定することにより、又は、コロイド液の液面に対する基板の位置を間欠的に所要の速度で上方へ相対的に変位させることにより、多数の前記液面に平行な細線状に微粒子が単層又は2層以上で規則的に集積・配列した微粒子層を基板上に自己組織的に形成させることを特徴とする微粒子集積体の製造方法。
【請求項2】
前記多数の細線状の微粒子層の幅と、それらの微粒子層の間隔とを、基板の前記相対的変位の制御によって規則的に調整することを特徴とする請求項1に記載の微粒子集積体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子集積体の製造方法及び微粒子細線アレイに関する。更に詳しくは、本発明は、いわゆるフォトニック結晶や光学素子等として利用できる微粒子集積体の簡易かつ低コストな製造方法、とりわけ微粒子集積体の新規な形態としての微粒子細線アレイの製造方法と、微粒子細線アレイとに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、材料を微粒子化することにより発現する新たな特性の研究が盛んになり、更に、そのような微粒子を規則的に多数配列して得られる微粒子集積体の性能を利用する研究も行われている。
【0003】
一方、周期的に多数配置した多重量子井戸において電子エネルギーの新たなバンド構造が生じるさまを、自然結晶の周期ポテンシャルが自然のバンド構造を生むのに因んで「人工結晶」と呼んでおり、例えば上記した微粒子集積体のように、特定の材料からなる微粒子を規則的に多数配列させることにより光の屈折率を周期的に変調した構造は「フォトニック結晶」と呼ばれている。フォトニック結晶は、レーザーや光の振動モードを人工的に制御すること等を目的とする光学素子への応用が考えられている。
【0004】
微粒子集積体やその製造方法に関する従来技術としては、例えば、一定の基板上にプローブ等を用いて微粒子を1個ずつ並べる手法、半導体加工技術等の応用により基板に微細・精密な加工を加えて結果的に微粒子集積体を構成する手法等があるが、これらの手法は特殊な装置を必要とし、莫大な時間及びコストを要すると言う問題がある。
【0005】
最近、微粒子のコロイド状懸濁液を利用して基板上に自己組織的に微粒子集積体を形成しようとする試みが、例えば下記の特許文献1や特許文献2に見られるように、幾つか提案されている。
【0006】

【特許文献1】特許第02905712号公報 この特許文献1には、直径が0.1~10μmの微粒子の懸濁液を調製し、これに基板を浸漬した後に引き上げることにより、基板上に微粒子の単層膜を移流集積させ、もってミクロンオーダーの微粒子の最密充填六方格子単層微粒子膜を形成する技術が開示されている。
【0007】

【特許文献2】特開平15-201194号公報 この特許文献2には、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン等の微粒子を懸濁させたコロイド溶液を調製し、このコロイド溶液中に縦方向に配向させた2枚の支持板により構成されるギャップモジュールを浸漬し、毛管現象によりギャップモジュールのギャップにコロイド溶液を浸入させつつギャップモジュールを次第に引き上げることにより、このギャップの内部に人工結晶体(微粒子集積体)を形成させる技術が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2に記載された従来技術は、簡易・低コストな微粒子集積体の製造方法ではあるものの、いずれの場合にも、製造される微粒子集積体は非常にプリミティブな構成のものであり、今後における微粒子集積体の多様な用途展開に十分に対応できない、と言う不満がある。
【0009】
即ち、特許文献1に係る微粒子集積体の構成は、微粒子が一様な単層膜状に集積したものであるに過ぎない。特許文献2に係る微粒子集積体の構成は、ギャップモジュールのギャップ幅に対応した一定の厚さの一様なプレート状に微粒子が集積したものであるに過ぎない。
【0010】
そこで本発明は、今後における微粒子集積体の多様な用途展開に対応すべく、特徴ある新規な構成の微粒子集積体を提供し、かつ、これらの微粒子集積体を簡易かつ低コストに製造できる微粒子集積体の製造方法を提供することを、解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、一定の粒径の微粒子が分散されたコロイド液に対して、その液面に交差するように微粒子集積体の基板を縦向きに浸漬し、コロイド液の溶媒を蒸発させてコロイド液の液面近傍の微粒子を順次基板の表面に供給することにより、微粒子が単層又は2層以上で規則的に集積・配列した微粒子層を基板上に自己組織的に形成させる、微粒子集積体の製造方法である。
【0012】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、以下のいずれか1以上の手段により、前記第1発明に係るコロイド液中の微粒子を良好な分散状態に維持する、微粒子集積体の製造方法である。
(1)pHの調整
(2)界面活性剤の使用
(3)微粒子表面の修飾
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る基板上に微粒子層を形成させるに当たり、溶媒の蒸発によるコロイド液の液面低下速度を一定の程度以上に設定することにより、又は、コロイド液の液面に対する基板の位置を間欠的に所要の速度で上方へ相対的に変位させることにより、前記微粒子層を多数の平行な細線状に形成させる微粒子集積体の製造方法である。
【0013】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第3発明に係る多数の細線状の微粒子層の幅と、それらの微粒子層の間隔とを、基板の前記相対的変位の制御によって規則的に調整する、微粒子集積体の製造方法である。
【0014】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、微粒子が単層又は多層で規則的に集積・配列した細線状の微粒子層が、基板上に平行に多数形成されている、粒子細線アレイである。
【0015】
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第5発明に係る多数の細線状の微粒子層が、それぞれ同一幅で、かつ同一間隔で形成されている、粒子細線アレイである。
【0016】
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、前記第5発明又は第6発明に係る細線状の微粒子層の幅が70μm以下であり、それらの微粒子層の間隔が250μm以下である、粒子細線アレイである。
【0017】
(第8発明の構成)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、前記第5発明~第7発明のいずれかに係る微粒子が、100nm~10μmの範囲内で同一の粒径を有するBaTiO、TiO又はSiOの微粒子である、粒子細線アレイである。
【発明の効果】
【0018】
(第1発明の効果)
第1発明に係る微粒子集積体の製造方法によれば、前記のコロイド液と基板とを準備し、コロイド液に対して基板を縦向きに浸漬しコロイド液の溶媒を蒸発させると言う極めて簡単な操作だけで、コロイド液の液面近傍の微粒子が順次基板の表面に供給(移流集積)され、多数の微粒子が面心立方構造(六方最密充填構造)に集積・配列した微粒子層が自己組織的に形成される。従って、このような微粒子集積体を簡易に、かつ低コストに製造することができる。
【0019】
又、コロイド液における微粒子の分散密度を調整することにより、微粒子層の厚さを調整できる。即ち、六方最密充填された単層の厚さの微粒子層を持つ微粒子集積体や、このような微粒子層が複数層に集積された厚さの微粒子集積体を製造することができる。
【0020】
(第2発明の効果)
微粒子集積体の製造方法において、コロイド液中の微粒子を良好な分散状態に維持することは、第1発明のような一般的な微粒子集積体を製造する際にも、第3発明のような粒子細線アレイを製造する際にも、微粒子の沈降防止のために、あるいはノイズ粒子(規則的に集積・配列していない微粒子)を少なくするために、重要である。
【0021】
従って、もともとコロイド液中の微粒子の良分散を期待し難い場合、例えば、コロイド液の媒体と微粒子との比重差が大きく微粒子が沈降又は浮遊し易い場合や、微粒子のゼータ電位の絶対値が小さく、凝集し易い場合等には、第2発明の(1)~(3)のいずれか1以上の手段により、コロイド液中の微粒子を良好な分散状態に維持することが好ましい。
【0022】
(第3発明の効果)
第3発明によれば、溶媒の蒸発によるコロイド液の液面低下速度を一定の程度以上に設定することにより、又は、コロイド液の液面に対する基板の相対位置を間欠的に所要の速度で上方へ変位させると言う簡易な操作により、微粒子が規則的に集積・配列した微粒子層を多数の平行な細線状に形成させることができる。即ち、「粒子細線アレイ」と呼ぶべき微粒子集積体を製造することができる。このような粒子細線アレイの製造方法は、本願発明者の発表によるものを除き、未だ報告されていない。
【0023】
なお、溶媒の蒸発によるコロイド液の液面低下速度を一定の程度以上に設定した場合に粒子細線アレイが形成される理由については、次のように考えられる。即ち、コロイド液の溶媒蒸発に伴う液面低下と微粒子層の形成過程が同時進行するに当たり、液面低下速度が大きいと、基板に対する微粒子の十分量の供給を維持し続けることが難しく、微粒子層が一定の幅まで形成された時点で微粒子層と液面との分離(液切れ)が定期的に起こり、その結果として微粒子層が平行な細線状に形成されるのである。
【0024】
(第4発明の効果)
前記の第3発明において、多数の細線状の微粒子層の幅と、それらの微粒子層の間隔とは、基板の前記相対的変位の制御によって規則的に調整することができる。そしてコロイド液の液面に対する基板の相対的変位は、コロイド液の液面に対して基板を引き上げることにより、及び/又は、基板に対してコロイド液の液面を下げる(例えば、コロイド液の容器を下方へ変位させる)ことにより、行うことができる。
【0025】
(第5発明の効果)
第5発明に記載したような粒子細線アレイは、本願発明者の発表によるものを除き、未だ報告されていない。
【0026】
このような粒子細線アレイが提供されることにより、可視光領域、紫外光領域、マイクロ波領域を対象としたフォトニック結晶としての用途が期待される。ガスセンサーとしての使用も期待される。従来は多結晶セラミックスにより作製されていた電子材料や構造材料を、粒径の均一化、粒界の制御、空隙・密度・周期性制御により高効率化する等の用途も期待される。更に、微粒子集積体においては用途開発の研究が盛んに行われており、フォトニックペーパー等の新規デバイスコンセプトが次々に考案されているため、新規の応用例が一層拡がるものと予想される。
【0027】
(第6発明の効果)
粒子細線アレイとしては、第6発明のように、多数の細線状の微粒子層が、それぞれ同一幅(幅A)を持ち、かつ同一間隔(間隔B)で形成されていることが、フォトニック結晶等への応用において、高い周期性を有すると言う理由から、特に好ましい。幅Aと間隔Bとが同一であることは特段に要求されないが、これらの幅Aと間隔Bとをそれぞれ任意に設計できる点は、粒子細線アレイの応用の幅を広げる上で有利である。
【0028】
(第7発明の効果)
又、粒子細線アレイにおける細線状の微粒子層の幅と、それらの相互間隔とは、それぞれ任意に設計することができるが、例えば第7発明のように、70μm以下の幅の細線状の微粒子層が250μm以下の間隔を以て多数並列しているものが、特に好ましい。なぜなら、フォトニック結晶は可視光波長程度の周期性構造体であるし、デバイスの小型化のためには微細な構造体の作製が必要だからである。
【0029】
(第8発明の効果)
微粒子層を構成する多数の微粒子の粒径は限定されないが、製造プロセス上は、100nm~10μmの範囲内で同一の粒径であることが、特に好ましい。微粒子の粒径が余りに大きいものは、製造プロセスにおいてコロイド溶液中で沈降又は浮遊し易く、微粒子の粒径が余りに小さいものは、ファンデルワールス力が優勢になって凝集し易い。
【0030】
一方、微粒子の構成材料は限定されないが、空気との屈折率の差が大きいと言う理由から、BaTiO、TiO又はSiOの微粒子であることが特に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本願の第1発明~第8発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。以下において、単に「本発明」と言う時は、本願の各発明を一括して指している。
【0032】
〔微粒子集積体の製造方法〕
本発明に係る微粒子集積体の製造方法は、微粒子集積体の基板と、一定の粒径の微粒子が分散されたコロイド液とを用い、このコロイド液に含まれる多数の微粒子を基板上に自己組織的に集積・配列させることによって行われる。
【0033】
より具体的には、前記コロイド液に対して前記基板を縦向きに(即ち、コロイド液の液面に対して交差するように)浸漬し、加熱等の手段によってコロイド液の溶媒を蒸発させることにより、コロイド液の液面近傍の微粒子を順次基板の表面に供給して(移流集積させて)、集積・配列させる。この際、多数の微粒子は面心立方構造(六方最密充填構造)を以て自己組織的に集積・配列され、基板上に単層又は複数層の厚さの微粒子層を形成して、微粒子集積体を構成する。
【0034】
このようにして製造された微粒子集積体は、フォトニック結晶や光学素子等として利用することができ、例えば、レーザーや光の振動モードを人工的に制御する光学素子への応用、光導波路への応用等が可能である。
【0035】
〔微粒子〕
微粒子集積体を構成するために用いる微粒子の種類、粒径等については限定されないが、同一の粒径の(あるいは、粒径分布の極めて狭い)微粒子群を用いることが望ましい。その粒径は任意に選択することができるが、前記の理由から、製造プロセス上は100nm~10μmの範囲内、とりわけ100nm~1μmの範囲内の一定の粒径が好ましい。
【0036】
微粒子の形状は限定されず、好ましくは球形であるが、立方体、正8面体等の形状のものも利用できる。微粒子の材質としては、無機質又は有機質(例えばプラスチックス)の各種の材料からなる微粒子を使用できるが、前記した理由から、BaTiO、TiO又はSiOの微粒子が特に好ましい。
【0037】
微粒子は、コロイド液中における良好な分散を確保するために、その表面に、例えばチオール系有機分子やシラン系カップリング剤等の適宜な修飾を行うことができる。
【0038】
〔微粒子が分散されたコロイド液〕
微粒子が分散されたコロイド液の溶媒(分散媒)は、水、エタノール等の有機溶媒、又はこれらの混合液等から任意に選択することができる。溶媒の選択に当たり、加熱等による蒸発又は揮発の速度を考慮することができる。溶媒の蒸発又は揮発の速度は、微粒子集積体の製造効率等に影響する。
【0039】
コロイド液における微粒子の良好な分散状態の維持は、ノイズ粒子の少ない微粒子集積体の製造にとって重要なポイントであり、その確保のために、上記した微粒子表面の修飾の他、コロイド液に界面活性剤を含有させたり、コロイド液のpHを調整する(具体的には、pHを等電点から離れた値にする)等の対策を取ることができる。
【0040】
コロイド液中における微粒子の分散密度は、微粒子集積体における微粒子層の厚さ(単層/2層以上)を規定する要因であり、目的に応じて微粒子の分散密度を設定することができる。。
【0041】
〔基板〕
基板の形状、サイズ、材質、表面性状等は限定されない。基板の形状に関しては、任意の平面形状を持つ平坦な板状体が一般的であるが、球面等の湾曲した表面を持つ形状であっても、使用することができる。基板の材質に関しては、例えば各種のセラミックス、プラスチックス、金属等の基板を使用できるが、微粒子集積体の用途を考慮した場合、シリコン基板が代表的に例示される。
【0042】
基板の表面性状は親水性であっても良いが、ノイズ粒子のより少ない微粒子集積体の製造上、疎水性である方が好ましい。そのために親水性基板の表面を疎水性処理することもできる。表面疎水性処理としては、基板表面に疎水性分子膜を形成させる等の周知又は公知の各種の手段を採用することができる。
【0043】
〔粒子細線アレイとその製造方法〕
本発明に係る粒子細線アレイにおいては、微粒子が単層又は多層で規則的に集積・配列した細線状の微粒子層が、基板上に平行に多数形成されている。これら多数の細線状の微粒子層の幅や相互間隔は、機能上の要求からは、それぞれ同一幅(幅A)で、かつ同一間隔(間隔B)で形成されていることが好ましい。幅Aや間隔Bは任意に設定できるが、例えばそれぞれ、幅Aを10~70μm程度とし、間隔Bを50~250μm程度とすることができる。
【0044】
このような粒子細線アレイは、上記の微粒子集積体の製造方法において、基板上に微粒子層を形成させるに当たり、コロイド液の液面に対する基板の位置を間欠的に所要の速度で上方へ相対的に変位させることにより製造できる。
【0045】
又、溶媒の蒸発によるコロイド液の液面低下速度を一定の程度以上に設定することによっても製造できる。この場合、「一定の程度以上の液面低下速度」は、コロイド液中の微粒子の密度や微粒子の粒径等に応じて変化するため、一律に規定することは難しいが、例えば8時間当たり2cm以上(好ましくは、3cm以上)とすることができる。なお、液面低下速度が余りに大きい(例えば、1時間当たり1cm以上)と、そもそも基板上に微粒子が集積しない。
【0046】
コロイド液の液面に対する基板の相対位置の上方への間欠的な変位は、コロイド液の液面に対して基板を引き上げることにより、及び/又は、コロイド液の容器を下方へ変位させることにより、行うことができる。この間欠的な相対的変位を、比較的大きな速度(例えば、1時間当たり1cm以上)で行うと、その変位分の幅については基板上に微粒子が集積せず、上記の間隔Bが構成される。又、この相対的変位を休止期間は基板上に微粒子が集積し、その休止期間中の溶媒の蒸発量(コロイド溶液の液面の低下幅)が上記の幅Aを決定する。
【0047】
なお、この休止期間中も、ある程度以下の速度(基板上に微粒子が集積し得る緩徐な速度)で、コロイド液の液面に対する基板の相対位置の上方への変位を行わせても良い。この場合、この緩徐な変位も上記の幅Aを決定する因子となり、更には細線状の微粒子層の厚さ(単層/2層以上)を規定する要因ともなる。
【実施例】
【0048】
以下の実施例1~実施例3を行った。実施例1及び実施例2は本願第2発明の実施例であり、実施例3は本願第1発明の実施例である。但し、本願発明の技術的範囲がこれらの実施例により限定されないことは、もちろんである。
【0049】
(実施例1)
1vol.%のオクタデシルトリクロロシランを含む無水トルエンに、窒素雰囲気下でシリコンプレートを5分間浸漬して表面を疎水化し、微粒子集積体用の基板を得た(以下、これを単に「基板」と言う)。この基板のエタノールに対する接触角は10~20°であり、水に対する接触角は96°であった。
【0050】
直径1000nmの球形SiO微粒子15mgをエタノール80ml中に分散させたコロイド液を容器に収容し、このエタノール中に上記の基板を縦向きに浸漬した。そして容器底部からの加熱によりエタノールを70°Cに加温した。なお、この際に、冷却管によりエタノール液の一部を冷却して対流を増進させても良い。
【0051】
こうして、エタノールの底部と表層部との温度差によりエタノールが攪拌され、それによってSiO微粒子も移動するようにした。
【0052】
加温に基づくエタノールの蒸発につれて、その表層部が基板の表面側へ移動し、かつ、エタノールの蒸発に基づく液面低下(およそ1cm/8時間の速度)につれて、SiO微粒子が図1の(a)~(c)に示すように基板上に集積し、自己組織的に配列した。
【0053】
次に、上記したエタノールの蒸発に基づく液面と基板との相対変位速度よりも有意に速い一定の速度(およそ1cm/1時間の速度)で基板を引き上げると、図1の(d)~(e)に示すように、その間は微粒子の新たな集積・配列は起こらなかった。そのため、結果的に細線状の微粒子層が形成された。
【0054】
次に基板の引き上げを停止したところ、既に形成された細線状の微粒子層とは一定の間隔を以て平行に、次の微粒子層の形成が始まった。以上のサイクルの繰り返しにより、図1の(f)に示すような粒子細線アレイが形成された。
【0055】
図2~図5には、微粒子が複数層の厚さで規則的に集積・配列した微粒子層を持つ粒子細線アレイの形成例を、走査型電子顕微鏡像で示す。同一の粒子細線アレイについて、図2から図5へ順次拡大倍率を上げたものであり、図5には個々の微粒子が複数層で規則的に集積・配列している様子が明瞭に認められる。
【0056】
図6には、微粒子が単層の厚さで規則的に集積・配列(六方最密充填構造)した微粒子層の形成例を、走査型電子顕微鏡像で示す。又、図7には、微粒子が単層の厚さで規則的に集積・配列した微粒子層であって、矢印で示す2ケ所に配列欠陥を持つ例を、走査型電子顕微鏡像で示す。この配列欠陥は、微粒子層における第1列目の粒子配列が形成される際に粒子の再配列(移動)が不十分であったことが原因で形成されたものである。
【0057】
更に、図8の(a)~(c)には、微粒子が単層の厚さで規則的に集積・配列した微粒子層が形成されて行く過程を経時的に撮像した走査型電子顕微鏡写真を示す。又、図9には基板上に形成された粒子細線アレイ全体の写真を示す。
【0058】
(実施例2)
上記の実施例1に比較して、エタノールの蒸発に基づく液面低下の速度を、およそ3cm/8時間とし、それ以外の点は実施例1と全く同様にして、実施例2を行った。
【0059】
この実施例2においては、実施例1で前記した基板の上方への引き上げによる相対変位操作を行わなくても、エタノールの蒸発に基づくコロイド液の液面の低下のみにより、前記図1における(d)~(e)のプロセスが自律的に起こり、粒子細線アレイが形成された。その理由は、前記「第3発明の効果」の欄で説明した通りのものであると考えられる。
【0060】
(実施例3)
上記の実施例1に比較して、前記した基板の上方への引き上げによる相対変位操作を行わず、エタノールの蒸発に基づくコロイド液の液面の緩徐な低下(およそ1cm/8時間の速度)のみを起こさせ、それ以外の点は実施例1と全く同様にして実施例3を行った。
【0061】
この実施例においては、基板上に微粒子層が一様に形成され、粒子細線アレイとはならなかった。その理由は、コロイド液中のSiO微粒子の分散密度の関係で、微粒子層の形成に伴う実施例2のような微粒子層とコロイド液の液面との分離(液切れ)が起こらないためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明により、フォトニック結晶や光学素子等として利用できる微粒子集積体の新規で簡易な製造方法が提供される。更に、微粒子集積体の新たなカテゴリーである粒子細線アレイと、その簡易な製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例における粒子細線アレイの製造過程を簡略化して説明する図である。

【0064】
【図2】粒子細線アレイの形成例を示す走査型電子顕微鏡像である。

【0065】
【図3】粒子細線アレイの形成例を示す走査型電子顕微鏡像である。

【0066】
【図4】粒子細線アレイの形成例を示す走査型電子顕微鏡像である。

【0067】
【図5】粒子細線アレイの形成例を示す走査型電子顕微鏡像である。

【0068】
【図6】単層の微粒子層の形成例を示す走査型電子顕微鏡像である。

【0069】
【図7】配列欠陥を持つ微粒子層の形成例を示す走査型電子顕微鏡像である。

【0070】
【図8】単層の微粒子層の形成過程を経時的に示す走査型電子顕微鏡像である。

【0071】
【図9】基板上に形成された粒子細線アレイの撮像写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8