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明細書 :無電解めっき廃液の処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4399529号 (P4399529)
公開番号 特開2005-042183 (P2005-042183A)
登録日 平成21年11月6日(2009.11.6)
発行日 平成22年1月20日(2010.1.20)
公開日 平成17年2月17日(2005.2.17)
発明の名称または考案の名称 無電解めっき廃液の処理方法
国際特許分類 C23C  18/16        (2006.01)
FI C23C 18/16 Z
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2003-279801 (P2003-279801)
出願日 平成15年7月25日(2003.7.25)
審査請求日 平成18年7月10日(2006.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592154798
【氏名又は名称】吉玉精鍍株式会社
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】河野 恵宣
【氏名】塩盛 弘一郎
【氏名】真 隆志
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100086427、【弁理士】、【氏名又は名称】小原 健志
【識別番号】100099988、【弁理士】、【氏名又は名称】斎藤 健治
【識別番号】100105821、【弁理士】、【氏名又は名称】藤井 淳
【識別番号】100099911、【弁理士】、【氏名又は名称】関 仁士
【識別番号】100108084、【弁理士】、【氏名又は名称】中野 睦子
【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100105821、【弁理士】、【氏名又は名称】藤井 淳
審査官 【審査官】市枝 信之
参考文献・文献 特開平09-184026(JP,A)
特開平06-319902(JP,A)
特開2001-192846(JP,A)
特開2001-353403(JP,A)
特開2003-080268(JP,A)
調査した分野 C23C 18/00 ~ 20/08
C25D 13/00 ~ 21/22
C02F 1/20 ~ 1/26
C02F 1/30 ~ 1/38
B01D 11/00 ~ 12/00
特許請求の範囲 【請求項1】
次亜リン酸塩を還元剤とする無電解めっき液の廃液のpHを調整した後、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させ、その後有機相と水相に分離し、再度、無電解めっき液の廃液からなる水相のpH値を調整し、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させる工程を繰り返すことを含み、該長鎖アルキルアミン系抽出剤が一般式
【化1】
JP0004399529B2_000007t.gif
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子又は炭素数1~24のアルキル基である。但し、R1、R2及びR3のうちの少なくとも一個はアルキル基であって、R1、R2及びR3の合計炭素数は18以上である。)
で表される長鎖アルキルアミンであることを特徴とする無電解めっき廃液の処理方法。
【請求項2】
無電解めっき液の廃液のpHを1~3に調整する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法によって無電解めっき液の廃液中の酸成分濃度を低下させた後、該廃液中の金属イオンを除去することを特徴とする無電解めっき廃液の処理方法。
【請求項4】
廃液中の金属イオンを除去する方法が、該廃液をキレート系抽出剤及び酸性抽出剤を含む有機溶媒からなる抽出液と接触させる方法である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項4の方法で金属イオンを抽出した抽出液を溶離液と接触させて、該抽出液中の金属イオンを溶離液中に逆抽出した後、該溶離液を長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させることにより、該溶離液中の硫酸イオンを除去することを含み、該長鎖アルキルアミン系抽出剤が一般式
【化2】
JP0004399529B2_000008t.gif
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子又は炭素数1~24のアルキル基である。但し、R1、R2及びR3のうちの少なくとも一個はアルキル基であって、R1、R2及びR3の合計炭素数は18以上である。)
で表される長鎖アルキルアミンであることを特徴とする金属分の回収方法。
【請求項6】
次亜リン酸塩を還元剤とする無電解めっき液を、亜リン酸が優先的に抽出されるpH値に調整した後、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させ、その後有機相と水相に分離し、再度、無電解めっき液からなる水相のpHを亜リン酸が優先的に抽出されるpH値に調整し、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させる工程を繰り返すことを含み、該長鎖アルキルアミン系抽出剤が一般式
【化3】
JP0004399529B2_000009t.gif
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子又は炭素数1~24のアルキル基である。但し、R1、R2及びR3のうちの少なくとも一個はアルキル基であって、R1、R2及びR3の合計炭素数は18以上である。)
で表される長鎖アルキルアミンであることを特徴とする無電解めっき液の再生方法。
【請求項7】
請求項6の方法で無電解めっき液を処理した後、めっき液の組成を調整することを特徴とする無電解めっき液の再生方法。
【請求項8】
無電解めっき液が、無電解ニッケルめっき液である請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
pH調整槽と、抽出操作のための反応槽と、水相と油相を分離するための油水分離槽を有し、該pH調整槽においてpH調整された無電解めっき液を該反応槽に供給する経路、抽出液を該反応槽に供給する経路、該反応槽中の反応液を該油水分離槽に供給する経路、及び該油水分離槽中で分離された水相を該pH調整槽に供給する経路を備えた抽出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき廃液の処理方法、無電解めっき液の再生処理方法、及びこれらの方法に使用できる抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無電解ニッケルめっき廃液の処理方法としては、以下に示す各種方法が知られているが、それぞれ改善すべき問題点がある。
【0003】
(イ)中和沈殿法:
廃液をアルカリ性にして金属水酸化物を形成させる中和沈殿法では、廃液中に無機系のCOD物質や金属有機錯体が多量に含まれているため、金属水酸化物の生成が妨げられ、凝集沈殿処理が満足すべき程度に行われ難い。また、BODおよびCODの処理も充分には行われない。
【0004】
(ロ)生物学的酸化法:
微生物の存在下に廃液の空気曝気を行う生物学的酸化法(活性汚泥法など)では、有機系物質は処理できるものの、無機系のCOD物質や重金属は殆ど処理できない。
【0005】
(ハ)電気的酸化分解法:
廃液を電気的に酸化分解する方法によれば、重金属の処理は可能であるが、無機系のCOD物質等を充分に処理することができないので、処理液が高いCOD値を示すことになる。
【0006】
その他に、下記特許文献1には、溶媒抽出法を利用した化学めっき廃液の処理方法が開示されている。この方法では、無電解ニッケルめっき廃液中に含まれる有機酸およびリン酸類をイオン交換で処理しているため、抽出剤中の陰イオン(鉱酸イオン)が廃液中に蓄積する。このため、鉱酸イオンを取り除かないと運転操作が困難になり、これを除去するための処理が更に必要になる。しかも、抽出量は抽出剤濃度で大きく左右されるため、特定抽出物の抽出量の制御範囲が狭く、また、特定のリン酸類を分離することは困難である。
【0007】
一方、無電解ニッケルめっき液中に蓄積した副生物などを除去して、無電解ニッケルめっき液を長寿命化する方法としては、次亜リン酸ニッケルを用いた電気透析法が知られている。この方法は、イオン交換膜を介して電気透析を行う方法であり、再生された無電解めっき液の浴組成がほとんど変動しないために、良好なめっき液として再利用が可能である。
【0008】
しかしながら、再生に用いる次亜リン酸ニッケルが高価であり、イオン交換膜の劣化が生じるために、コストが高くイオン交換膜の取り扱いが難しい等の問題点がある。更に、再生されためっき液は安定ではあるが、亜リン酸が再生液中に混在しており、常に、老化状態であるという欠点がある。

【特許文献1】特開2003-80268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、無電解めっき廃液に含まれるリン酸類、有機酸類などを効率良く除去することができ、しかも特定成分を選択的に除去することも可能な新規な無電解めっき液の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、長鎖アルキルアミン系抽出剤は、無電解めっき液中に含まれるリン酸類を未解離の酸の状態で抽出することができ、めっき廃液のpH値を適切な範囲に調整してリン酸類の解離状態を制御することによって、特定の成分を効率良く分離除去できることを見出した。そして、この様な長鎖アルキルアミン系抽出剤の特性を利用することによって、無電解めっき液の廃液処理、再利用などが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の無電解めっき廃液の処理方法、無電解めっき液の再生処理方法、及びこれらの方法に使用できる抽出装置を提供するものである。
1. 次亜リン酸塩を還元剤とする無電解めっき液の廃液のpHを調整した後、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させ、その後有機相と水相に分離し、再度、無電解めっき液の廃液からなる水相のpH値を調整し、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させる工程を繰り返すことを特徴とする無電解めっき廃液の処理方法。
2. 無電解めっき液の廃液のpHを1~3に調整する上記項1に記載の方法。
3. 上記項1又は2の方法によって無電解めっき液の廃液中の酸成分濃度を低下させた後、該廃液中の金属イオンを除去することを特徴とする無電解めっき廃液の処理方法。
4. 廃液中の金属イオンを除去する方法が、該廃液をキレート系抽出剤及び酸性抽出剤を含む有機溶媒からなる抽出液と接触させる方法である上記項3に記載の方法。
5. 上記項4の方法で金属イオンを抽出した抽出液を溶離液と接触させて、該抽出液中の金属イオンを溶離液中に逆抽出した後、該溶離液を長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させることにより、該溶離液中の硫酸イオンを除去することを特徴とする金属分の回収方法。
6. 次亜リン酸塩を還元剤とする無電解めっき液を、亜リン酸が優先的に抽出されるpH値に調整した後、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させ、その後有機相と水相に分離し、再度、無電解めっき液からなる水相のpHを亜リン酸が優先的に抽出されるpH値に調整し、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させる工程を繰り返すことを特徴とする無電解めっき液の再生方法。
7. 上記項6の方法で無電解めっき液を処理した後、めっき液の組成を調整することを特徴とする無電解めっき液の再生方法。
8. 無電解めっき液が、無電解ニッケルめっき液である上記項1~7のいずれかに記載の方法。
9. pH調整槽と、抽出操作のための反応槽と、水相と油相を分離するための油水分離槽を有し、該pH調整槽においてpH調整されためっき液を該反応槽に供給する経路、抽出液を該反応槽に供給する経路、該反応槽中の反応液を該油水分離槽に供給する経路、及び該油水分離槽中で分離された水相を該pH調整槽に供給する経路を備えた抽出装置。
【0012】
本発明では、処理対象となる無電解めっき液は、還元剤として次亜リン酸塩を含有するめっき液である。この様な無電解めっき液としては、無電解ニッケルめっき液、無電解銅めっき液、無電解コバルトめっき液、無電解パラジウムめっき液などを例示できる
この様な無電解めっき液中には、次亜リン酸の他に、これが酸化されて生じた亜リン酸等のリン酸類や、添加剤成分に基づく有機酸等が含まれる。本発明方法によれば、処理液のpHを適正値に制御することによって、無電解めっき液から、リン酸類、有機酸類などの酸成分を効率よく除去して、廃液処理を行うことができる。また、亜リン酸が優先的に抽出されるpH値に調整して抽出処理を行うことにより、亜リン酸を選択的に除去して、無電解めっき液を再生し長寿命化することができる。
【0013】
以下、本発明の処理方法について、具体的に説明する。
【0014】
抽出剤
本発明方法では、抽出剤として、長鎖アルキルアミン系抽出剤を用いる。この様な抽出剤としては、例えば、一般式
【0015】
【化1】
JP0004399529B2_000002t.gif
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子又は炭素数1~24のアルキル基である。但し、R1、R2及びR3のうちの少なくとも一個はアルキル基であって、R1、R2及びR3の合計炭素数は18以上である。)
で表される長鎖アルキルアミンを挙げることができる。
【0016】
上記炭素数1~24のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでも良い。特に、アルキル基の炭素数は、4~12程度が好ましい。
【0017】
長鎖アルキルアミン系抽出剤は、1級、2級及び3級アミンのいずれでも良いが、特に、水に溶解し難い3級アミンが好ましい。この様な抽出剤の内で、特に、トリ-n-オクチルアミンが好ましい。
【0018】
上記した長鎖アルキルアミン系抽出剤は、有機溶媒に溶解して抽出液として用いる。有機溶媒としては、水溶液である無電解めっき液には、ほとんど溶解しないものであればよく、更に、第3相が生じ難いものが好ましい。この様な有機溶媒としては、例えば、ケロシン等の石油系溶媒、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、ドデカノール等の高級アルコール系溶媒等を挙げることができるが、これらの限定されるものではない。また、有機溶媒は、無電解めっき液との分離性を向上させる目的等により、二種以上を適宜混合して用いてもよい。
【0019】
有機溶媒に溶解させる長鎖アルキルアミン系抽出剤の濃度については、抽出する酸濃度を考慮すれば良く、特に限定されるものではないが、通常、0.1モル/l程度以上とすればよい。これを下回る濃度では、無電解めっき廃液中に含まれる酸濃度に対して抽出剤濃度が低すぎるため、酸の抽出量が少なく、抽出処理時間が長くなるので実用的ではない。特に、抽出量、操作性等を考慮すれば、抽出剤濃度は0.5~1モル/l程度とすることが好ましい。
【0020】
無電解めっき液の廃液処理方法
(1)酸成分除去:
無電解めっき液の廃液処理を行う場合には、無電解めっき液のpHを1~3程度の範囲内に調整した後、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む抽出液に該めっき液を接触させればよい。pH調整には、硫酸、塩酸等の鉱酸を用いればよく、硫酸を用いることが好ましい。このpH範囲内であれば、無電解めっき液中に含まれる次亜リン酸、亜リン酸、リン酸などのリン酸類、有機酸類などが長鎖アルキルアミン系抽出剤によって抽出されて、有機相中に移動する。実際の抽出時には、具体的なpH値によって優先的に抽出される成分が異なるが、上記したpH範囲において抽出操作を繰り返すことによって、徐々に他のリン酸類、有機酸類なども除去されるので、必要とされる濃度になるまで抽出操作を繰り返すことにより、リン酸類、有機酸類等の酸成分の濃度を減少させることができる。pH値が上記範囲より低い場合には、硫酸の抽出が優先的に起こり、有機酸の抽出反応に使用される抽出剤の見かけの濃度が減少するため、非効率であると共に処理コストの増加となり、経済的に不利である。抽出効率と経済性などの面から、好ましいpH領域は1~2程度である。
【0021】
pH調整の方法については、特に限定的ではなく、抽出操作中にpHを管理して、上記範内に維持しても良いが、通常、抽出操作は強い撹拌下に行うので、抽出操作中にpHを調整することは実用的ではない。従って、実際の操作方法としては、抽出操作を行う前に無電解めっき液のpH値を上記範囲内に調整し、その後抽出操作を行い、次いで、有機相と水相に分離し、再度、無電解めっき液である水相のpHを上記範囲内に調整して抽出操作を行い、この工程を必要な回数繰り返せばよい。
【0022】
抽出操作の方法については、無電解めっき液と抽出液とを十分に接触させることが可能な方法であればよく、通常、撹拌装置を用いて無電解めっき液と抽出液とを十分に混合すればよい。抽出時の処理温度については特に限定的ではないが、通常、室温で抽出処理を行えばよい。
【0023】
抽出操作を行うことにより、酸成分が除去されて徐々にpH値が上昇し、pHが3を上回る場合があるが、この場合には、酸の抽出量はpHの上昇と共に減少し、最終的にはほとんど抽出されなくなる。
【0024】
従って、実際の操作では、酸成分の除去効率等を考慮して適切な抽出時間を決定し、抽出操作後、水相と油相に分離し、再度上記範囲に水相のpHを調整して、抽出操作を行えば良い。この様な方法で、pH調整と抽出操作を繰り返し行うことにより、リン酸類、有機酸類などを効率良く除去することができる。この操作は、無電解めっき液中に含まれる酸成分の量などに応じて、目的とする酸濃度となるまで繰り返し行えばよい。
【0025】
尚、上記処理に用いた抽出液については、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを含む水溶液からなる溶離液と接触させることによって、抽出液中に含まれるリン酸類、有機酸類などの酸成分が溶離液中に逆抽出されて、抽出液として無電解めっき液の処理に再利用することができる。溶離液としては、操作性の面より、特に、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0026】
溶離液中のアルカリ濃度については、特に限定的ではないが、通常、5~10モル/l程度とすれば良い。処理方法については、抽出液と溶離液とを十分に接触させることが可能な方法であれば良く、通常、撹拌装置を用いて抽出液と溶離液とを充分に混合すればよい。処理温度については、通常、室温で行うことができる。処理時間については、処理対象とする廃液の量、濃度等の処理条件によって異なるので、処理条件に応じて適宜決めればよい。
【0027】
以上の方法によってリン酸類及び有機酸類の含有量を減少させた無電解めっき液は、COD値が大きく低下する。この様なめっき液について、更に、必要に応じて、金属イオンを除去することによって、無電解ニッケルめっき液中の金属量を低減させて、めっき廃液の排出基準を満足することが可能となる。
【0028】
(2)金属イオン抽出除去:
上記した方法で酸成分の除去処理を行った無電解めっき廃液から金属イオンを除去する方法については、特に限定的ではなく常法に従えばよい。尚、上記した方法で酸成分を除去した後、金属イオンを除去することにより、酸成分を除去することなく直接金属イオンを除去する場合と比較して、金属イオンの除去を短時間で行うことが可能となる。
【0029】
以下、無電解ニッケルめっき液に含まれるニッケルイオンの除去方法の一例を具体的に説明する。
【0030】
まず、必要に応じて、酸成分の除去処理を行った無電解ニッケルめっき廃液のpH調整を行う。適当なpH値は、処理対象とするめっき液の組成などによって異なるので、予め予備実験を行って適切なpH値を決定すればよい。通常、ニッケルイオンを抽出する場合には、pH値を6~10程度に調整すればよい。pH調整は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等を用いて行うことができる。
【0031】
次いで、処理対象とする無電解ニッケルめっき液を、キレート系抽出剤と酸性抽出剤を含有する抽出液と接触させて、めっき液中に含まれるニッケルイオンを抽出除去する。
【0032】
抽出液としてはキレート系抽出剤と酸性抽出剤をケロセン、ヘキサン、ベンゼン等の有機溶媒に溶解した溶液を用いることができる。キレート系抽出剤と酸性抽出剤の濃度については、特に限定的ではないが、通常、キレート系抽出剤濃度0.05~2モル/l程度と酸性抽出剤濃度0.025~0.5モル/l程度とすればよい。
【0033】
処理方法については、無電解ニッケルめっき液と抽出液とを十分に接触させることが可能な方法であれば良く、通常、撹拌装置を用いて無電解ニッケルめっき液と抽出液とを充分に混合すればよい。
【0034】
処理温度については、通常、室温で行うことができる。処理時間については、処理対象とする廃液の量、濃度や抽出剤の濃度等の処理条件によって異なるので、処理条件に応じて適宜決めればよい。
【0035】
ニッケルイオン除去処理は、目的とするニッケルイオン濃度になるまで、繰り返し行うことができる。抽出操作を繰り返し行う場合には、各抽出操作の前に、無電解ニッケルめっき廃液のpHを上記した6~10の範囲に調整することが好ましい。
【0036】
この処理を行うことによって、無電解ニッケルめっき液中のニッケルイオン濃度を所定の排出基準まで減少させることができる。
【0037】
尚、ニッケルイオン除去処理に用いた抽出液は、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸を含む水溶液からなる溶離液と接触させることによって、抽出液中に含まれニッケルイオンが、溶離液中に逆抽出されて、無電解ニッケルめっき液の処理に再利用することができる。溶離液中の酸濃度については、特に限定的ではないが、通常、0.5~6モル/l程度とすれば良い。
【0038】
処理方法については、抽出液と溶離液とを十分に接触させることが可能な方法であれば良く、通常、撹拌装置を用いて抽出液と溶離液とを充分に混合すればよい。処理温度については、通常、室温で行うことができる。処理時間については、処理対象とする廃液の量、濃度等の処理条件によって異なるので、処理条件に応じて適宜決めればよい。
【0039】
ニッケルイオンを逆抽出した溶離液は、濃縮されたニッケルイオン含有液であり、分離回収されたニッケルイオンは、濃度が高いために、有価物として回収、再利用できる。
【0040】
得られたニッケルイオン含有液は、通常、硫酸などの鉱酸成分を高濃度に含有するものとなる。この溶液を無電解ニッケルめっき液のニッケル源とし再使用する場合に、そのまま希釈して無電解ニッケルめっき液の成分を添加すると、イオン強度が高くめっき速度が遅くなり、操業するには実際的ではない。この場合には、上記した長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む抽出液を用い、pH調整することなく繰り返し抽出操作を行えばよい。この様な方法によれば、めっき液のpHが徐々に上昇して水相中の硫酸等の鉱酸成分を除去することができる。その結果、硫酸等の鉱酸分の含有量が少ない良好なニッケル含有液として回収でき、無電解ニッケルめっき液のニッケル源などとして有効に利用できる。
【0041】
その他の無電解めっき液についても、同様の方法を適用することによって、金属分の除去及び回収が可能である。無電解ニッケルめっき廃液以外の無電解めっき廃液については、金属イオンの種類、めっき液の組成などによって適切なpH値が異なる場合があるので、予め予備実験を行って抽出操作の際のpH値を決定すればよい。
【0042】
無電解めっき液の再生方法
無電解めっき液では、還元剤として用いる次亜リン酸の酸化生成物である亜リン酸が蓄積すると析出速度、皮膜特性などに悪影響がある。このため亜リン酸が蓄積した無電解めっき液については、通常、一部更新するか、全量更新する等の処置が行われている。
【0043】
本発明によれば、無電解めっき液のpH値を亜リン酸を優先的に抽出するために適した値に調整して、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む抽出液を用いて抽出操作を行うことにより、亜リン酸を優先的に抽出除去できる。この様な方法によれば、無電解めっき液を再生して長寿命化することが可能となる。尚、この再生処理では、液中に含まれる亜リン酸が次亜リン酸の濃度より低いほど効率よく亜リン酸を優先的に抽出分離でき、めっき液中の次亜リン酸や金属分などの有効成分を効率的に再利用できる。このため、再生処理は、亜リン酸濃度が次亜リン酸濃度と同程度となるまでに行うことが好ましい。
【0044】
再生処理は、亜リン酸を優先的に抽出できるpH値に無電解めっき液を調整した後、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させることによって行うことができる。
【0045】
抽出操作を行う際の具体的なpH値については、抽出液中の長鎖アルキルアミン系抽出剤の濃度によって異なるが、長鎖アルキルアミン系抽出剤は未解離の酸を抽出するので、抽出剤とリン酸類との逐次反応を考慮した平衡定数に基づいて、亜リン酸を優先的に抽出するために適したpH値を決めることができる。下記表1に、トリ-n-オクチルアミン(TOA)を抽出剤として用いた場合の室温における次亜リン酸、亜リン酸及びリン酸の平衡定数を示す。
【0046】
【表1】
JP0004399529B2_000003t.gif
この平衡定数に基づいて特定の成分を優先的に抽出するためのpH値を決定する方法について、以下に簡単に説明する。
【0047】
具体例として、亜リン酸の場合を示す。
【0048】
亜リン酸の抽出は逐次反応で起こり、抽出種は未解離の酸である。表1に抽出錯体AB、A2B2およびA3B2を記載しているように、亜リン酸を抽出する場合には、以下の反応が起こる。
A+B ⇔ AB ;K11 (1)
AB+AB ⇔ A2B2 ;K22 (2)
A2B2 + A ( A3B2 ;K32 (3)
ここで、Aは未解離の酸、Bは抽出剤を示す。
それぞれの平衡定数は次式で表される。
K11 =CAB / (CACB) (4)
K22 = CA2B2 / (K112CA2CB2) (5)
K32 = CA3B2 / (K112K22CA3CB2) (6)
ここで、上式のCは濃度を示す。
抽出剤と抽出された次亜リン酸のマスバランスは次式で表される。
CB,0 = CB + K11CACB +2 K112K22CA2CB2 + 2K112K22K32CA3CB2 (7)
CA,org = K11CACB + 2K112K22CA2CB2 + 3K112K22K32CA3CB2 (8)
ここで、下付の0は初期状態、orgは抽出剤中の状態を示し、K11、K22およびK32は表1に示す値である。
【0049】
(7)式をフリーな抽出剤濃度(CB)について解くと、次式が得られる。
【0050】
【数1】
JP0004399529B2_000004t.gif
(9)式中のCB,0は、任意に設定した抽出液中の抽出剤の初期濃度である。(9)式を(8)式に代入すると次式が得られる。
【0051】
【数2】
JP0004399529B2_000005t.gif
(10)式は平衡後の水相の濃度を任意に設定したとき、有機相へ移動する酸の濃度を決定できるものである。そのときのpHは設定した平衡後の水相中の未解離の次亜リン酸濃度に依存し、次式で近似できる。
【0052】
【数3】
JP0004399529B2_000006t.gif
ここで、Ka1は公知の値であり、亜リン酸の場合Ka1の数値は0.03162である。よって(10)および(11)式を用いることで、ある抽出剤濃度の場合において、水相中の未解離の亜リン酸濃度と有機相へ抽出された亜リン酸濃度と水相中のpHが決定されるものである。つまり、ある特定の抽出剤濃度において、未解離の亜リン酸の濃度を変化させる場合に、その変化に対応したpHと抽出される亜リン酸濃度を決定することが出来る。この計算を行うことによって、任意に抽出剤濃度を設定した場合において、適切な廃液中のpHを決定することが出来る。
【0053】
例えば、抽出剤濃度が0.1~1モル/l程度の範囲内にある場合には、亜リン酸を優先的に抽出するためには、無電解ニッケルめっき液、即ち、水相のpHを1.3~2.4程度の範囲内で適切な値に設定すればよい。具体的には、抽出剤濃度が1モル/l程度の場合には、pH1.3~2.4程度の範囲が適当であり、抽出剤濃度が0.1モル/l程度の場合には、pH1.4~1.8程度が適当である。
【0054】
具体的な抽出操作としては、無電解めっき液のpHを調整した後、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む抽出液に該めっき液を接触させればよい。pH調整には、硫酸、塩酸等の鉱酸を用いればよく、特に硫酸を用いることが好ましい。
【0055】
pH調整の方法については、特に限定的ではないが、実際の操作方法としては、上記した廃液処理方法の場合と同様に、無電解めっき液のpH値を調整した後抽出操作を行い、次いで、有機相と水相に分離し、再度、無電解めっき液である水相のpH値を調整した後、抽出操作を行い、この処理工程を必要な回数繰り返せばよい。
【0056】
抽出操作の方法については、無電解めっき液と抽出液とを十分に接触させることが可能な方法であればよく、通常、撹拌装置を用いて無電解めっき液と抽出液とを十分に混合すればよい。液温は、通常、室温でよい。
【0057】
抽出操作の時間については、上記した酸成分の除去の場合と同様に、亜リン酸の除去効率等を考慮して適切な抽出時間を決定すればよく、抽出操作終了後、水相と油相に分離し、再度上記範囲にpHを調整して、抽出操作を繰り返せばよい。この様な方法でpH調整と、抽出操作を繰り返し行うことにより、亜リン酸を効率良く除去することができる。
【0058】
抽出操作により亜リン酸が優先的に抽出されるが、この操作を繰り返すと、亜リン酸と共に次亜リン酸も減少し、最終的には、めっき液中の亜リン酸及び次亜リン酸がほぼ完全に抽出される。従って、めっき液中の亜リン酸濃度が目的とする程度まで低下した段階で抽出操作を終了することにより、金属イオン、次亜リン酸などの有用成分が残存する無電解ニッケルめっき液を得ることができる。
【0059】
処理後のめっき液については、更に必要に応じて、不足する有効成分を添加する等してめっき液の組成を調整することにより、無電解めっき液として再利用することができる。この様な方法により、無電解めっき液を長寿命化することができる。
【0060】
尚、上記処理に用いた抽出液については、上記した廃液処理の場合と同様に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを含む水溶液からなる溶離液と接触させることによって、抽出液中に含まれるリン酸類、有機酸類などの酸成分が、溶離液中に逆抽出されて、無電解めっき液の処理に再利用することができる。
【0061】
抽出装置
本発明の無電解めっき液の廃液処理方法及び再生方法において、抽出操作に用いる抽出装置については特に限定はなく、pH調整槽、抽出操作のための反応槽、及び水相と油相を分離するための油水分離槽を備えたものであればよい。
【0062】
特に、pH調整機構を有するpH調整槽と、抽出操作のための反応槽と、水相と油相を分離するための油水分離槽を有し、該pH調整槽においてpH調整されためっき液を該反応槽に供給する経路、抽出液を該反応槽に供給する経路、該反応槽中の反応液を該油水分離槽に供給する経路、及び該油水分離槽中で分離された水相を該pH調整槽に供給する経路を備えた抽出装置によれば、循環型の連続抽出処理を行うことができ、pH調整槽、反応槽及び分離槽をそれぞれ1個ずつ用いるだけでよく、抽出装置を単純化して低コスト化することができる。また、抽出操作の間、処理対象の無電解めっき液が循環処理されるので、系外に排出されることがない点でも有利である。
【0063】
以下、この様な循環型連続抽出装置の具体的な構成について、その一例の概略図を示す図1に基づいて説明する。
【0064】
図1の装置では、まず、処理対象の無電解めっき液(A)をpH調整槽1に導入し、所定のpH値に調整する。pH値は、無電解めっき液の廃液処理、亜リン酸の除去による再生処理など抽出処理の目的に応じて適当な値に設定すればよい。
【0065】
pH調整槽1には、自動的に所定のpH値に調整できる機構を備えることが好ましい。この様なpH調整機構としては、例えば、攪拌機2及びpH検出器3を設けておき、pH検出器3より得られた信号に基づいて、コントローラー4を介してpH調整用ポンプ5を制御し、自動的に無電解めっき液(A)のpHを調整できる構造などとすればよい。
【0066】
pH調整を終えためっき液(A)は、ライン6及びポンプ7を経て反応器10中に導入される。また抽出液(C)は、タンク11からライン8及びポンプ9を経て、反応器10中に導入される。めっき液(A)及び抽出液(B)を反応器10に導入した後、反応器10において両溶液を混合する。反応器10の構造については、特に限定的ではなく、両液を十分に混合できる構造の撹拌混合装置であればよい。反応器10では、抽出反応を良好に制御するためには、液温を一定温度に保つことが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0067】
所定の時間混合した溶液は反応器10の上部より排出され、セトラー12に送られる。逆ミセル等の油水分離を阻害する生成物がなければ、直ちに油水分離が行われ、連続的に油水分離することが出来る。逆ミセルが形成され油水分離が困難な場合は、例えば、ドデカノール等の高級アルコールを添加すれば、油水分離が容易になる。
【0068】
セトラー12に導入された混合溶液は、無電解めっき液からなる水相と抽出液からなる油相とに分離する。混合溶液をセトラー12に導入する場合には、水相と油相の界面部分、或いは、界面付近の水溶液中に導入することが好ましい。
【0069】
油水分離された水相(無電解めっき液)はセトラー下部からライン13及びポンプ14を経て、pH調整槽1に導かれ、再び所定のpH値に調整される。
【0070】
pH調整された無電解めっき液は、ライン6及びポンプ7を経て反応器10中に導入され、更に、抽出液(C)もライン8及びポンプ9を経て反応器10中に導入されて、再度、抽出操作が行われる。
【0071】
セトラー12で分離された油相中に水溶液が分散している場合には、更に、別のセトラーに導いて油水分離を行っても良い。この際、分離された水溶液については、pH調整槽1に送って、再度pH調整して抽出操作を行えばよい。
【0072】
上記した一連の操作は、無電解めっき液の酸濃度が、目的とする値に低下するまで繰り返し行えばよい。
【0073】
無電解めっき液の廃液処理を行う場合には、上記した方法で酸成分を除去しためっき液を、金属イオンの除去処理を行うための抽出工程に送ればよい。金属イオンの抽出工程では、図1に示す酸成分の抽出装置と同様の構成の装置を用いて循環型の抽出処理を行ってもよく、或いは複数の抽出装置を用いて、連続的に抽出処理を行っても良い。
【0074】
亜リン酸濃度を低下させることによる無電解めっき液の再生を行う場合には、処理されためっき液に、更に、必要な有効成分を添加して濃度調整をすることによって、無電解めっき液として再利用できる。
【0075】
尚、図1に示す装置では、セトラー12上部で分離された抽出液については、ライン15及びポンプ16を経て、抽出液中に含まれるリン酸類、有機酸類などの酸成分を逆抽出するための反応器19に導入される。逆抽出に用いる溶離液(D)は、ライン17及びポンプ18を経て、反応器19中に導入される。両溶液を導入した後、反応器19において両溶液を混合する。撹拌混合された溶液は、反応器19の上部より排出されてセトラー20に送られる。結晶が析出する場合はセトラーに導く前に濾過し、結晶物を別途に回収することが好ましい。このとき用いる濾布は、例えば、孔径が10μm程度であることが好ましい。
【0076】
セトラー20で分離された溶液は、上部が再生された抽出液、下部が酸成分を含む溶離液となる。再生された抽出液は、ライン21及びポンプ22を経て、タンク11へ返送して再利用される。結晶が生じる場合は、例えば、200μm程度の孔径の濾布を通してタンク11に返送すればよい。
【0077】
この様な構成の装置によれば、抽出液は、抽出操作および再生操作を経て閉鎖的に循環することとなる。
【0078】
一方、油水分離した溶離液はライン23及びポンプ24を経て、タンク25へ返送され、閉鎖型の循環を辿ることとなる。
【0079】
抽出液の再生操作は、抽出液中の酸成分濃度が十分に低下するまで、繰り返し行えばよい。溶離液中のアルカリ成分濃度は徐々に低下するので、再使用する場合は再びアルカリ成分を添加することが好ましい。溶離液を排出する場合は、希釈して生物酸化処理することが望ましい。溶離液中の有価物の回収は全操作終了時に行うのが最も良いが、操作途中に回収することも可能である。
【0080】
上記した抽出装置は、本発明の無電解めっき液の廃液処理、再生処理などに適した装置であるが、その他、pHを一定範囲に維持して連続的に抽出を行う場合に、有効に利用することができる。この様な抽出処理としては、上記した無電解めっき液からの酸成分の抽出、無電解めっき液からの金属イオンの抽出等の他に、発酵溶液からの酸抽出、鉱石浸出液からの金属抽出等の一般に原料を製造する場合の精製処理や、無電解めっき液以外の各種廃液からの有用成分の抽出処理などを挙げることができる。
【発明の効果】
【0081】
本発明によれば、以下の様な顕著な効果が奏される。
【0082】
(1)本発明の無電解めっき液の廃液処理方法によれば、めっき廃液中に含まれるリン酸類、有機酸類などの酸成分を効率よく除去することができる。従って、酸成分を除去した後、抽出法などによって金属イオンを除去することにより、無電解めっき液中の金属量、COD値、含リン化合物量などを低減させて、めっき廃液の排出基準を満足することができる。
【0083】
また、抽出された金属イオンを溶離液中に濃縮して再利用することが可能であり、廃液の処理コストを軽減することができる。
【0084】
(2)無電解めっき液中に含まれる亜リン酸を優先的に抽出除去する方法によれば、無電解めっき液から亜リン酸を効率良く除去して、めっき液の再生が可能であり、簡単な方法でめっき液の長寿命化が図れる。
【0085】
(3)本発明の抽出装置は、上記した無電解めっき液の廃液処理、再生処理などに適した装置であり、処理液を循環させて抽出処理を行う構成であるため、処理槽の数が少なく単純な構造であり、低コスト化された装置である。
【0086】
また、該抽出装置では、抽出操作の間、処理対象の無電解めっき液が循環処理されるので、系外に排出されることがない。
【0087】
更に、抽出液を再生して循環再利用可能な構造とすることができ、処理費用を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0089】
トリ-n-オクチルアミンを0.971モル/lの濃度でトルエンに溶解した溶液を抽出液として用い、図1に示す構造の装置により、無電解ニッケルめっき液中の酸成分を連続的に抽出処理した。
【0090】
pH調整槽では、硫酸を添加して無電解ニッケルメッキ液のpHを1に調整し、その後反応器に供給した。反応器には無電解ニッケルめっき液と抽出液を同体積ずつ供給し、反応器中での両液の接触時間は、13秒とした。抽出処理は室温で行った。
【0091】
上記した条件で抽出処理を行った後、セトラーで油水分離し、更に、水相をpH調整槽に送り、再度pHを1に調整して上記した抽出操作を繰り返した。
【0092】
図2は、連続的に抽出処理した場合について、無電解ニッケルめっき廃液中における各種酸の濃度の変化を示すグラフである。図2中の横軸の処理数はpH調整タンク中の仕込みの廃液の体積が全て入れ替わった回数であり、縦軸のCA,aqは廃液中に残存している酸濃度を示す。図2中の0[回]は処理前の廃液中の酸濃度である。
【0093】
いずれの酸についても、水相のpHを1に調整して、正抽出を繰り返すことで処理回数と共に効率よく濃度が低下していることが分かる。処理後の廃液中の濃度は次亜リン酸が0.008モル/l、亜リン酸が0.012モル/l、それ以外の酸は検出限界以下の濃度であった。
【0094】
また、抽出液については、セトラー12で分離した後、反応器19中で水酸化ナトリウム水溶液を用いて再生処理を行い、セトラー20で分離して、抽出液タンク11に送って循環利用した。その結果、抽出処理前の抽出液中のトリ-n-オクチルアミン濃度と、処理後のトリ-n-オクチルアミン濃度がほぼ同一となり、充分に再生されていることが確認できた。
【0095】
比較として、図1に示す構造の装置を用い、pH調整することなく無電解ニッケルめっき液中の酸成分を連続的に抽出処理した。抽出液としてはトリ-n-オクチルアミンを0.7モル/lの濃度でトルエンに溶解した溶液を用いた。無電解めっき液の処理前のpHは2.48であった。その他の条件は上記実施例と同様とした。
【0096】
図3の上図は、連続的に抽出処理した場合について、無電解ニッケルめっき廃液のpH変化を示すグラフであり、図3の下図は、無電解ニッケルめっき廃液中の各種酸の濃度の変化を示すグラフである。これらのグラフから、処理回数が増えると共に廃液中のpHが上昇し、処理回数2回目程度まで廃液中の酸が抽出されているが、その後処理回数を増やしても廃液中の酸はほとんど抽出されなくなっていることが判る。
【0097】
この結果から、廃液中のpHがある程度まで上昇すると、それに対応して酸が抽出されなくなるため、廃液中の酸を効率よく抽出するためには、常にpHを低く維持して抽出しなければならないことが分かる。
【実施例2】
【0098】
図1に示す構造の装置を用い、無電解ニッケルめっき液中の亜リン酸を優先的に抽出処理した。
【0099】
処理対象の無電解ニッケルめっき液は、亜リン酸の蓄積量の比較的少ないめっき液であり、トリ-n-オクチルアミンを約1モル/lの濃度でトルエンに溶解した溶液を抽出液として用い、pH調整槽では硫酸を添加して無電解ニッケルめっき液のpHを1.8に調整し、その後反応器に供給した。その他の処理条件は、実施例1と同様とした。
【0100】
図4は、連続的に抽出処理した場合について、無電解ニッケルめっき液中における亜リン酸と次亜リン酸の濃度変化を示すグラフである。図4中の横軸の処理数はpH調整タンク中の仕込みの液の体積が全て入れ替わった回数であり、縦軸のCA,aqはめっき液中に残存している酸濃度を示す。
【0101】
この結果から、亜リン酸及び次亜リン酸は、処理回数が増えると共にめっき液から抽出され、処理回数4回目では、めっきを阻害する亜リン酸がほぼ抽出され、次亜リン酸がめっき液中に残存している状態であり、処理回数12回程度では、亜リン酸及び次亜リン酸ほぼ完全に抽出されていることがわかる。
【0102】
従って、処理回数4回程度で抽出処理を終了することにより、無電解ニッケルめっき液から亜リン酸を選択的に除去して、めっき液を長寿命化することが可能である。
【実施例3】
【0103】
実施例1の方法で酸成分を除去した後、以下の方法で廃液中のニッケルの抽出処理を行った。
【0104】
抽出装置としては、図1に示す構造の装置を用い、5-ドデシルサリチルアルドオキシムを約0.05モル/l及びビス-2-エチルヘキシルリン酸を約0.025モル/lの濃度でケロシンに溶解した溶液を抽出液として用いた。
【0105】
pH調整槽では、アンモニア水を添加して廃液のpHを9に調整し、その後反応器に供給した。反応器には廃液と抽出液を同体積ずつ供給し、反応器中での両液の接触時間は、12秒とした。抽出処理は室温で行った。
【0106】
上記した条件で抽出処理を行った後、セトラーで油水分離し、更に、水相をpH調整槽に送り、再度pHを9に調整して上記した抽出操作を繰り返した。
【0107】
この抽出操作を17回繰り返すことにより、廃液中のニッケル濃度は1ppm以下となった。
【0108】
その後、溶離液として、硫酸を0.5モル/l含む水溶液を用い、ニッケルの抽出処理に用いた抽出液から、溶離液中にニッケルを逆抽出した。この様にして得られた溶離液は、ニッケルを約9500ppm含み、更に、硫酸を0.5モル/l含む溶液であった。この溶離液について、以下の方法で硫酸を抽出除去した。
【0109】
抽出液としては、トリ-n-オクチルアミンを1モル/lの濃度でトルエンに溶解した溶液を用い、pH調整を行うことなく、その他の処理条件は、実施例1と同様として抽出処理を行った。
【0110】
図5は、連続的に抽出処理した場合について、処理対象の溶離液中のニッケルイオン、硫酸イオン及びプロトンの濃度変化を示すグラフである。この結果から、抽出処理を行うことにより溶離液中のプロトン及び硫酸イオンは徐々に減少し、処理回数が増加するとほとんど抽出が起こらなくなることわかる。この時点のpH値は約4.5であった。
【0111】
処理した溶液の最終的な濃度はニッケルが9100ppm、硫酸が1.1×10-5モル/lであり、硫酸濃度の低い良好なニッケル水溶液として回収することができた。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】循環型連続抽出装置の構成の一例を示す概略図。
【図2】実施例1において連続的に抽出処理した場合について、無電解ニッケルめっき廃液中における各種酸の濃度変化を示すグラフ。
【図3】実施例1においてpHを調整することなく連続的に抽出処理した場合について、無電解ニッケルめっき廃液中の各種酸の濃度変化を示すグラフ。
【図4】実施例2において連続的に抽出処理した場合について、無電解ニッケルめっき液中の亜リン酸と次亜リン酸の濃度変化を示すグラフ。
【図5】実施例3において連続的に抽出処理した場合について、処理対象の溶離液中のニッケルイオン、硫酸イオン及びプロトンの濃度変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0113】
1:pH調整槽、2:攪拌機、3:pH検出器。4:コントローラー、
5:pH調整ポンプ、6:ライン、7:ポンプ、8:ライン、
9:ポンプ、10:反応器、11:タンク、12:セトラー、
13:ライン、14:ポンプ、15:ライン、16:ポンプ、
17:ライン、18:ポンプ、19:反応器、20:セトラー、
21:ライン、22:ポンプ、23:ライン、24:ポンプ、25:タンク
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4