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明細書 : 新規微生物と微生物によるヒ素類の除去方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4088690号 ( P4088690)
公開番号 特開2005-261234 ( P2005-261234A)
登録日 平成20年3月7日(2008.3.7)
発行日 平成20年5月21日(2008.5.21)
公開日 平成17年9月29日(2005.9.29)
発明の名称または考案の名称 新規微生物と微生物によるヒ素類の除去方法
国際特許分類 C12N   1/20        (2006.01)
C02F   3/34        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/04        (2006.01)
C12R   1/11        (2006.01)
FI C12N 1/20 ZNAA
C12N 1/20 D
C02F 3/34 Z
C12N 15/00 A
C12Q 1/04
C12N 1/20 ZNAA
C12R 1:11
請求項の数または発明の数 7
微生物の受託番号 FERM P-19682
全頁数 13
出願番号 特願2004-075390 ( P2004-075390)
出願日 平成16年3月16日(2004.3.16)
審査請求日 平成16年3月17日(2004.3.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】林 幸男
【氏名】宮武 宗利
【氏名】田辺 公子
個別代理人の代理人 【識別番号】240000039、【弁護士】、【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
審査官 【審査官】長井 啓子
参考文献・文献 Journal of Analytical Atomic Spectrometry, 2000,Vol. 15, No, 11,pp. 1493-1497
Proceedings of the 13th Symposium on Geo-Environments and Geo-techniques, 2003, pp. 233-236
調査した分野 C12N 1/00-1/38
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
PubMed
JMEDPlus(JDream2)
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒ素吸着能を有することを特徴とする新菌株バシルス・メガテリウムUM-123。
【請求項2】
請求項1の新菌株バシルス・メガテリウムUM-123を用いて、ヒ素類含有水溶液を処理することを特徴とする微生物によるヒ素類の除去方法。
【請求項3】
ヒ素類が3価のヒ素類であることを特徴とする請求項2記載の微生物によるヒ素類の除去方法。
【請求項4】
水溶液のpHが2~11であることを特徴とする請求項2記載の微生物処理によるヒ素類の除去方法。
【請求項5】
水溶液のpHが2~8であることを特徴とする請求項2記載の微生物処理によるヒ素類の除去方法。
【請求項6】
水溶液のpHが6~8であることを特徴とする請求項2記載の微生物処理によるヒ素類の除去方法。
【請求項7】
処理温度が30~50℃であることを特徴とする請求項2記載の微生物によるヒ素類の除去方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規微生物及び微生物によるヒ素類の除去方法、特にヒ素類含有水溶液を微生物処理してヒ素類を除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃液中のヒ素類の除去には、例えば鉄(3)を塗布したアルギニンゲル(非特許文献1)や鉄粒子(非特許文献2)で吸着する方法、活性化された赤泥(非特許文献3)やフライアッシュ(非特許文献4)に吸着させる方法、化学的沈殿方法(非特許文献5)、モリブデン含浸キトサンビーズによる吸着(非特許文献6)、炭素ベース吸着剤による方法(非特許文献7)などが一般的に知られている。さらに生物的な吸着方法として、化学的に修飾されたバイオマス菌を用いて除去する方法も、実験室的にではあるが知られている(特許文献8)。尚、鉄(3)及びFe(3)は、3価の鉄(Fe)を示し、As(3)は、3価のヒ素(As)を示し、As(5)及びArsenic(5)は、5価のヒ素(As)を示す。

【非特許文献1】Min JH et al:Arsenate sorption by Fe(3)-doped alginate gels.Water Res 32 [1544] 52 (1998)
【非特許文献2】Matis KA et al:Sorption of As(5) by goethite particles and study of their flocculation.Water Air Soil Pollut 111 [297] 316(1999)
【非特許文献3】Bildik M. et al:Arsenic removal from aqueous solutions by adsorption on red mud.Waste Manage 22 [357] 63 (2002)
【非特許文献4】Diamantopoulos E et al:As(5) removal from aqueous solution by fly ash.Water Res 27(12) [1773] 7 (1993)
【非特許文献5】Harper TR et al:Removale of Arsenic from wastewaters using chemical precipitation methods. Water Environ Res 64 [200] 3 (1992)
【非特許文献6】Dambies l et al:Arsenic(5) sorption on molybdate-impregnated chitosan beads.Colloids Surf A 170 [19] 31 (2000)
【非特許文献7】Pattanayak J et al:A parametric evaluation of the removal of As(5) and As(3) by carbon-based adsorbents.Carbon 38 [589] 96 (2000)
【非特許文献8】Maria X et al:Removal of As(5) from wastewaters by chemically modified fungal biomass.Water Res 37 [4544] 52 (2003)
【0003】
一方、生物的吸着による重金属の除去に関しては、固定化M.rouxiiバイオマスによる生物吸着カラムでの除去(非特許文献9)や、アスペルギルス・ニガーを用いた方法(非特許文献10)等が知られている。

【非特許文献9】Yan G et al.Heavy metal removal in a biosorption column by immobilized M. rouxii biomass. Bioresource Technology 78 [243] 249 (2001)
【非特許文献10】Kapoor A et al.Removal of heavy metals using the fungus Aspergillus niger.Bioresource Technology 70 [95] 104 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重金属の生物吸着は、非特許文献9及び10を待つまでもなく広く知られているが、ヒ素類含有廃水からのヒ素類の除去に微生物を用いた例はほとんどない。マリア等の非特許文献8は数少ない例のひとつである。しかしながら、マリア等のヒ素類の吸着方法で実際に使用している菌は、ペニシリウム・クリソゲナムバイオマスである。また除去するヒ素類は、As(5)である。しかも、この菌バイオマス自体ではAs(5)の回収率は低く、菌バイオマスを通常の界面活性剤及び陽イオン電解液で前処理し、化学的に修飾したものでないと、所期の目的を達成しない。前処理は比較的簡単とされているが、工業的な実施に際してはコスト的にも大きな障害となる。これまでのところ、ヒ素類の除去に微生物を用いた例、特にAs(3)の微生物吸着による除去技術は知られていない。
【0005】
本発明は、前記のごとき課題を解決するヒ素類吸着能を有する新規微生物を提供することを目的としている。
【0006】
また本発明は、培養で大量に増やすことのでき、生分解性の微生物を用い、ヒ素またはヒ素化合物含有水溶液からヒ素類を回収する操作が簡単なヒ素類の除去方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決した本発明の第1の発明である新規微生物は、土壌から単離されたヒ素吸着能を有する新菌株バシルス・メガテリウムUM-123(Bacillus megaterium UM-123、2004年2月12日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託、寄託番号[FERM P-19682])を特徴としている。
【0008】
本発明の第2の発明である微生物によるヒ素類の除去方法は、新菌株バシルス・メガテリウムUM-123を用いて、ヒ素類含有水溶液を処理することを特徴としている。
【0009】
第2の本発明は、特にAs(3)のヒ素類の除去において効果的である。この場合、被処理水溶液のpHは2~11、望ましくは2~8、さらに望ましくは6~8の範囲が除去率の観点から好適である。また処理温度は、約30~50℃の範囲が除去率の観点から望ましい。
【0013】
以下、本発明でヒ素類とは、三価または五価のヒ素、As(3)As(5)またはそれらを含むヒ素化合物をいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の産業上の効果及び利点がある。
【0015】
(1)本発明の第1及び第2の発明によれば、バシルス属に属する新規菌株バシルス・メガテリウムUM-123を用いることにより、これまで前例のないAs(3)をマイルドな条件下で、ヒ素類含有水溶液からヒ素類を約85%の高い回収率でもって除去できる。
【0016】
(2)本発明の第3の発明によれば、微生物の中でもバシルス属及びエセリシア属に属する細菌、アスペルギルス属に属する糸状菌、サッカロマイセス属に属する酵母の使用により、ヒ素類含有水溶液からヒ素類を除去できる。
【0017】
前記各本発明では、生分解性あるいは自己消化性の微生物によりヒ素類を吸着することにより、化学的吸着等にくらべると、ヒ素除去後の廃棄物の環境負荷が少ない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の第1の発明である新規菌株バシルス・メガテリウムUM-123は、土壌を滅菌水に懸濁後、その上清を例えばヒ素含有寒天平板培地に塗布して培養し、菌株を単離することにより得ることができる。培養に使用する培地に特に制限はないが、ヒ素含有培地の使用は、ヒ素類に耐性のある菌の選択を考慮したためである。
【0019】
得られた新規菌株バシルス・メガテリウムUM-123の菌学的性質及び同種公知菌との相違は、後述の実施例1及び実施例1に基づく表1に示すとおりである。
【0020】
【表1】
JP0004088690B2_000002t.gif

【0021】
本発明の第2、第3の発明で吸着除去可能なヒ素類としては、ヒ素の単体、三価As(3)及び五価As(5)並びにそれらのヒ素化合物など特に制限はない。しかし、新菌株バシルス・メガテリウムUM-123を用いる第2の発明では、図1から明らかなように、三価のヒ素化合物、三酸化二ヒ素(As)の除去率は、五価のヒ素化合物、ヒ酸二ナトリウム七水和物(NaHAsO・7HO)のそれに比べていちじるしく高い。したがって、第2の発明は、As(3)において特に有効である。
【0022】
本発明の第3の発明において使用する細菌としては、バシルス属及びエセリシア属に属するヒ素類吸着能を有するバシルス・メガテリウム及びバシルス・サブティリスをあげることができる。特に、後述する新規菌株バシルス・メガテリウムUM-123の使用は、高いAs(3)の除去率を示す。またエセリシア属に属するヒ素類吸着能を有するエセリシア・コリも有用である。糸状菌としてはアスペルギルス・ニガー、酵母としてはサッカロマイセス・セレヴィシエを挙げることができる。バシルス・サブティリス(IFO03335)とエセリシア・コリ(IFO3301)、アスペルギルス・ニガー(IFO4414)、サッカロマイセス・セレヴィシエ(IFO2044)は、いずれも(財)発酵研究所から購入可能な公知菌である。
【0023】
本発明に用いる微生物類の培養には、例えば培地には、肉エキス、ペプトン、塩化ナトリウム、燐酸-水素カリウム等を用い、pH7程度に調整する。オートクレーブで滅菌した培地に菌を接種し、30℃で24時間、110ストローク/分で振盪培養する。培養後、培養液から遠心分離機により菌体を分離し、生理食塩水により洗浄後、凍結乾燥して菌体を得る。
【0024】
本発明のヒ素類の除去は、一般的に被処理水溶液のpH調整、温度、圧力、菌体類添加量、混合撹拌時間等に依存する。
【0025】
pHは使用する菌体の種により異なるので特定できないが、本発明の第2の発明では、図1が示すように、As(3)の除去率の観点から、pH2~11、好ましくは8以下、さらに好ましくは6~8の中性近傍が好適である。温度は、図2に示すように、30~50℃、特に30~45℃の範囲はが好適である。
【0026】
菌体類の添加量は、ヒ素類の濃度、菌体の種類により異なるが、例えばヒ素類濃度が1mg/Lであれば、菌体量は0.2~2.0w/v程度でよい。
【0027】
撹拌時間は、2時間程度で十分である。2時間以上長時間に亘っても、除去率に大きな変化はない。処理後は、遠心分離機等により菌体と上清を分けて菌体を除けば、ヒ素を除去した清浄な水が得られる。
【実施例1】
【0028】
(本発明の第1の発明による新菌株の取得と同定)
[新菌株の取得]
宮崎県内の畑の土壌を滅菌水に懸濁後、その上清を平板培地に塗布し30℃で培養した。平板培地には、商品名「Nutrient Agar」(日水製薬株式会社製)に三酸化二ヒ素[As:As(3)]を1mg/Lになるように加えたものを用いた。主な成分は、肉エキス0.5%、ペプトン1.0%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%で、pHは7である。平板培地上のコロニーを分画操作より単一にした。得られた菌株を培地に接種した。培地には、商品名「Nutrient Broth」(日水製薬株式会社製)に三酸化二ヒ素[As:As(3)]を1mg/Lになるように加えたものを用いた。主な成分は、肉エキス0.5%、ペプトン1.5%、塩化ナトリウム0.5%、燐酸-水素カリウム0.5%で、pHは7である。接種後、30℃で24時間、110ストローク/分の振盪培養を行った。次いで、遠心分離機により、培養液から菌体を分離し、その上清のヒ素濃度を測定した。ヒ素濃度の測定は、宮崎大学フロンティア科学実験総合センター実験支援部門機器分析分野木花分室のヒ素形態別分析システム(ヒ素形態別前処理装置-原子吸光分光光度計)によった。培養上清のヒ素濃度の低下が著しかったものを新規菌株とした。
【0029】
[新菌株の同定1:微生物第1段階試験]
新菌株UM-123(登録番号SIID2588)につき、(株)エヌシーアイエムビー・ジャパンで、形態学的・生理生化学的試験の結果からSIID2588と類似の性状を示す分類群を推定するため、下記の試験を実施した。
【0030】
光学顕微鏡U-LH1000(オリンパス、日本)による細胞形態、グラム染色性、胞子の有無、鞭毛による運動性の有無の観察を行った。Nutrient Agar(Oxoid,イングランド、英国)平板培地上でのコロニー形態を観察した。カタラーゼ反応、オキシダーゼ反応、ブドウ糖からの酸/ガス産生、ブドウ糖の酸化/醗酵(O/F)について試験した。結果を表1に示す。
【0031】
表1から明らかなように、SIID2588は、グラム染色陽性、桿菌、芽胞形成、好気条件下での生育性、カタラーゼ反応要請などの性状を示し、BARROW, G.I. et al:Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Medical Bacteria. 3rd. Ed. 1993, Cambridge University Press、及びSNEATH, P. H. A. et al:Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology. 2 1984, Williams and Wilkins, Baltimoreを参考にして、バシルス属に属する菌株と推定した。
[新菌株の同定2:16S rDNA-500塩基配列解析]
【0032】
次に、登録番号SIID2588につき、(株)エヌシーアイエムビー・ジャパンで、16S rDNA(16S rRNA遺伝子)の部分塩基配列500bpを用いて検体の帰属分類群を推定するため、塩基配列解析を行った。
【0033】
SIID2588をNutrient Agar(Oxoid, England, UK)に植菌し、30℃で2日間培養した。その後、この菌体をDNA抽出の供試菌体とした。
【0034】
ゲノムDNAの抽出には、PrepMan Method(Applied Biosystems, CA, USA)を使用した。抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCRにより16S Ribosomal RNA遺伝子(16S rDNA)のうち5′末端側約500bpの領域を増幅した。その後、増幅された塩基配列をシーケンシングし、検体の16S rDNA部分塩基配列を得た。PCR産物の精製、サイクルシーケンスには、MicroSeq500 16S rDNA Bacterial Sequencing Kit(Applied Biosystems, CA, USA)を使用した。サーマルサイクラーには、GeenAmp PCR System9600(Applied Biosystems, CA, USA)、DNAシーケンサーには、ABIPRISM 3100DNA Sequencer(Applied Biosystems, CA, USA)を使用した。なお、ゲノムDNA抽出からサイクルシークエンスまえの基本操作は、Applied Biosystems社のプロトコール(P/N4308132 Rev.Aに従った。
【0035】
解析では、得られた16S rDNAの塩基配列を用いて相同性検索を行い、相同率の上位10株を決定した。さらに検索された上位10株と検体の16S rDNAを用いて近隣結合法(SAITOU, N. et al: The neighbor-joining method:anew method for reconstructing phylogenetic trees.Molecular Biology and Evolution 4 406-425 (1987))により分子系統樹を作製、検体の近縁種及び帰属分類群の検討を行った。相同性検索及び系統樹の作製には、MicroSeq Microbial Identification System Software V.1.4.1を、相同性検索を行う際のデータベースとしてMicroSeq Bacterial 500 Library v.0023(Applied Biosystems, CA, USA)を使用した。また、MicroSeq Bacterial 500 Libraryに対する相同性検索において、相同率100%で一致する菌株が検索されなかった場合は、BLASTには、ALTDCHUL, S. F. et al:Gapped BLAST:a new generation of protein database search programs.Nucleic Acids Res. 25 3389-3402 (1997)及びSKERMAN V. B. D. et al:Approved lists of Bacterial Names. INt. J. Syst. Bacteriol., 30 225-420 (1980)を用いて、DNA塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)に対して相同性検索を行った。
【0036】
Microseqによる検体[UM-123](SIID2588)株の16S rDNA塩基配列解析結果は、次の配列表のフリーテキストに示す。
【0037】
(配列表のフリーテキスト)
JP0004088690B2_000003t.gif
【0038】
本検体と近縁とされる菌株とその相違性
Library:500 0023 0.9 1286/1286
BLAST:536SIID2588
0.37% 536 Bacillus megaterium
3.54% 536 Bacillus flexus
10.26%536 Bacillus cohnii
10.75%530 Bacillus psychrosaccharolyticus
11.57%536 Bacillus horikoshii
12.03%532 Bacillus circulans
12.15%535 Bacillus azotoformans
12.17%534 Bacillus fastidiosus
12.73%534 Bacillus marinus
12.87%537 Bacillus cereus
【0039】
本検体と近縁上位株との相違点



SIID2588 Y
Bacillus megaterium T
【0040】
本検体と近縁株との近隣結合法による系統樹は、図3に示す。
【0041】
BLAST Result DNA塩基配列データベースに対して行った相同性検索の結果:検索された上位20エントリーの内エントリー上位5位塩基配列とSIID2588塩基配列とのアイデンティティの比較を表2に示す。
【0042】
【表2】
JP0004088690B2_000004t.gif

【0043】
さらにSIID2588 rDNAとエントリー最上位のDNAとの塩基配列の配列比較を実施した。結果は図4に示す。
【0044】
これらの結果、MicroSEqを用いた解析では、SIID2588の16S rDNA部分塩基配列は、相同率99.63%でBaccillus megaterium(STACKEBRANDT, E. et al:Report of the ad hoc committee for the re-evaluation of the species definition in bacteriology.Int. J. Syst. Evol. Microbiol., [52] 1043-1047 (2002))の16S rDNAに対し高い相同率を示し、2株の16S rDNA間の相違点はIUBコード(Y=CまたはT)で1塩基のみであった。分子系統樹上でもSIID2588の16S rDNAは、Bacillus megateriumの16S rDNAと同じ場所に位置した。BLASTを用いたGenBank/DDBJ/EMBLに対する相同性検索の結果、SIID2588の16S rDNAは、相同率99.4%でBacillus megaterium QMB1551株の16S rDNAに対し最も高い相同性を示した。上記の結果から、SIIDD2588は、Bacillus megateriumに帰属する新規な菌株と推定、Bacillus megaterium UM-123と命名した。
【実施例2】
【0045】
(第2の発明によるヒ素類の除去)
土壌から得られたバシルス・メガテリウムUM-123を培地に接種した。培地には、商品名「Nutrient Broth」(日水製薬株式会社製)を用いた。主な成分は、肉エキス0.5%、ペプトン1.5%、塩化ナトリウム0.5%、燐酸-水素カリウム0.5%で、pHは7である。接種後、30℃で24時間、110ストローク/分の振盪培養を行った。次いで、遠心分離機により、培養液から菌体を分離し、生理食塩水で洗浄後、凍結乾燥して菌体を得た。
【0046】
pHを下記のごとく調整した緩衝液(Mcllvaine, Carmody)に、三酸化二ヒ素[As:As(3)]とヒ酸二ナトリウム七水和物[NaHAsO・7HO:As(5)]を1mg/Lになるように加えた。このヒ素水溶液に下記の量の菌体、バシルス・メガテリウムUM-123を添加し、下記の時間撹拌した後静置し、各上清を採取した。
pH調整;pH2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12
(菌体添加量2.0w/v、撹拌時間2時間)
菌体添加量;0.2、0.5、1.0、1.5、2.0%(w/v)
(pH7、撹拌時間4時間)
撹拌時間;2、4、6時間
(pH7、菌体添加量2.0%(w/v))
【0047】
各上清のヒ素濃度を測定した。ただし、各試験にあってはヒ素初濃度;As(3)1mg/Lとした。pH依存性試験にあっては菌体添加量;2.0%(w/v)、撹拌時間;2時間、菌体添加量依存性試験にあってはpH;7、撹拌時間;4時間、撹拌時間依存性試験にあってはpH;7、菌体添加量;2.0%(w/v)とした。ヒ素濃度の測定は、宮崎大学フロンティア科学実験総合センター実験支援部門機器分析分野木花分室のヒ素形態別分析システム(ヒ素形態別前処理装置-原子吸光分光光度計)によった。pH依存性の結果を表3及び図1に、菌体添加量依存性の結果を表4に、撹拌時間依存性を表5に示す。
【0048】
【表3】
JP0004088690B2_000005t.gif

【0049】
【表4】
JP0004088690B2_000006t.gif

【0050】
【表5】
JP0004088690B2_000007t.gif

【0051】
表3及び図1から明らかなように、pH依存性については、As(3)はpH7付近で84.5%の高い除去率を示したが、As(5)ではpH依存性がなく5%以下の除去率しか示さなかった。このことから、バシルス・メガテリウムUM-123による微生物処理では、これまでに例のないAs(3)に関して、pH8以下、望ましくはpH6~8の範囲で、きわめて高い選択的吸着が起こることが判明した。
【0052】
表4から明らかなように、菌体添加量が多いほど除去率が高いことが判明した。また表5から明らかなように、撹拌時間は、2時間以上であれば変化が認められない。
【実施例3】
【0053】
(第3の発明によるヒ素類の除去)
pH7調整した緩衝液(McIlvaine, Carmody)に、三酸化二ヒ素[As:As(3)]を1mg/Lになるように加えた。このヒ素水溶液に下記の菌体を2.0%(v/w)添加し、4時間撹拌した後静置し、各上清を採取した。
・バシルス・メガテリウムUM-123(Bacillus megaterium UM-123)
・バシルス・サブティリス(Bacillus subtilis)
・エセリシア・コリ(Escherichia coli)
・アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)
・サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)
【0054】
各検体の上清につき、実施例1と同じ方法でAs(3)の除去率をみた。結果を表6に示す。
【0055】
【表6】
JP0004088690B2_000008t.gif

【0056】
表6から明らかなように、バシルス属及びエセリシア属のヒ素吸着可能菌の使用により、As(3)を50%以上の有効率で除去し得ることが分かった。また除去率はそれほど高くはないが、糸状菌及び酵母でもヒ素類の除去が可能なことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のヒ素類吸着能を有する新規菌株バシルス・メガテリウムUM-123とそれを用いたヒ素類除去方法、またはバシルス属に属するヒ素類吸着能を有する細菌、エセリシア属に属するヒ素類吸着能を有する細菌を用いたヒ素類の除去方法は、いずれも土壌のヒ素汚染による地下水からのヒ素類の除去に有効に利用できる。さらに、アスペルギルス属に属する糸状菌、サッカロマイセス属に属する酵母も、同様にヒ素類の除去に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第2発明におけるヒ素除去方法でのpH依存性を示すグラフである。
【図2】本発明の第2発明におけるヒ素除去方法での温度依存性を示すグラフである。
【図3】本発明の第1発明における新菌株同定での本検体と近縁株との近隣結合法による系統樹図である。
【図4】本発明の第1発明における新菌株同定でのSIID2588 rDNAとエントリー最上位のDNAとの塩基配列の配列比較図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3