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明細書 :分子線エピタキシャル成長装置およびそれを用いたシリコン基板上へのIII族窒化物単結晶膜の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4590225号 (P4590225)
公開番号 特開2005-307332 (P2005-307332A)
登録日 平成22年9月17日(2010.9.17)
発行日 平成22年12月1日(2010.12.1)
公開日 平成17年11月4日(2005.11.4)
発明の名称または考案の名称 分子線エピタキシャル成長装置およびそれを用いたシリコン基板上へのIII族窒化物単結晶膜の製造方法
国際特許分類 C23C  14/48        (2006.01)
C30B  23/08        (2006.01)
C30B  29/38        (2006.01)
H01L  21/205       (2006.01)
FI C23C 14/48 D
C30B 23/08 M
C30B 29/38 D
H01L 21/205
請求項の数または発明の数 5
全頁数 17
出願番号 特願2004-224039 (P2004-224039)
出願日 平成16年7月30日(2004.7.30)
優先権出願番号 2004092228
優先日 平成16年3月26日(2004.3.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年6月7日(2007.6.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】大鉢 忠
【氏名】和田 元
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
審査官 【審査官】亀代 陽子
参考文献・文献 特開平07-291790(JP,A)
特開平07-014765(JP,A)
特開平11-274079(JP,A)
調査した分野 C30B 1/00-35/00
C23C 14/00-14/58
H01L 21/205

特許請求の範囲 【請求項1】
高真空状態に設定される成長室と、前記成長室に配置された基板固定部材と、放電室内に供給する中性気体をRF(高周波)放電により解離して前記成長室内に解離粒子流束を前記基板固定部材に固定された基板に向けて射出可能とした励起原子セルと、前記基板に向けて原子線を照射する少なくとも1以上の溶融セルとを具備する分子線エピタキシャル成長装置において、
前記励起原子セルの放電室内に印加される高周波電磁界に加えて磁束密度を可変とするECR(電子サイクロトロン共鳴)用静磁界を印加するように構成した磁界付与手段と、前記励起原子セルの放電室の出口に取り付け可能とするとともに所定のアスペクト比を有する複数のオリフィスを形成した仕切り板とを備え、前記ECR用静磁界の磁束密度を調整するとともに前記仕切り板のオリフィスの設定数およびオリフィスのアスペクト比を調整することにより前記成長室内に射出される前記中性気体の励起原子および基底原子流量を調整可能に構成したことを特徴とする分子線エピタキシャル成長装置。
【請求項2】
更に、励起原子セルの放電室の出口周辺部に、該出口から放出される荷電粒子流束に交差する電界を発生する荷電粒子抑制用電界発生手段を設け、該荷電粒子抑制用電界発生手段により発生された電界により前記励起原子セルの放電室から成長室内に配置された基板に向けて射出される荷電粒子流を抑制するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の分子線エピタキシャル成長装置。
【請求項3】
更に、高真空状態の成長室内に反応ガスを放出する少なくとも1つの反応ガスセルを備え、前記反応ガスセルのノズル先端部に形成した単一のオリフィスの周縁部を包囲するとともに前記成長室内に延びる反応ガスガイド筒部を設け、前記反応ガスセルの内部から前記オリフィスを介して前記成長室内に放出される反応ガスジェットを、前記反応ガスガイド筒部を介して前記成長室内の基板固定部材に固定された基板面に照射するように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分子線エピタキシャル成長装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載の分子線エピタキシャル成長装置を用いて、該分子線エピタキシャル成長装置の成長室内に設けた基板固定部材にシリコン基板を固定し、該シリコン基板を加熱するとともに該シリコン基板表面に反応ガスセルから炭素Cを含む反応ガスを照射することによりSiC単結晶ヘテロエピタキシャルバッファ層を形成する工程と、次いで、励起原子セルの放電室に供給される窒素ガスN2を高周波磁界により解離して該励起原子セルから前記SiC単結晶ヘテロエピタキシャルバッファ層に、励起窒素原子N*および基底窒素原子N流束を照射するとともに溶融セルからIII族原子流束を照射することにより、該単結晶SiCヘテロエピタキシャルバッファ層上にIII族窒化物単結晶層を形成する工程を含むことを特徴とするシリコン基板上へのIII族窒化物単結晶膜の製造方法。
【請求項5】
更に、励起原子セルの放電室から放出される励起窒素原子N*および基底窒素原子Nを含む解離粒子流量を検出する検出電極を、前記励起原子セルから基板固定部材に固定されたシリコン基板に向けて照射される解離粒子流束を阻害しない位置に配置し、前記検出電極による解離粒子流量検出値に基づきIII族窒化物単結晶層の成長速度を制御することを特徴とする請求項4に記載のシリコン基板上へのIII族窒化物単結晶膜の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分子線エピタキシャル成長装置およびそれを用いたシリコン基板上へのIII窒化物単結晶膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜形成においては基板の結晶構造とその上に成長する結晶構造が一致していることが必要であり、理想は同一単結晶上に成長させるホモエピタキシャル成長である。化合物の多くはそのホモエピタキシャル成長用基板結晶が得られず、異種単結晶上へ成長させるヘテロエピタキシャル成長によって得られるようになっている。現在窒化ガリウム、砒化ガリウムなどの化合物半導体は、サファイヤや炭化珪素などの高価な基板上に作製されている。しかし、これらは大面積化が困難で、工業的生産観点からも安価で大面積化が可能な基板が望まれている。
【0003】
そこで、本発明の発明者は、分子線エピタキシャル成長装置(以下、「MBE装置」とも記す)を用い、まず、シリコン基板上にアセチレン等の炭素原子を含む気体を照射して立方晶炭化珪素層を形成させた後、立方晶炭化珪素層上に分子線セルから供給されるガリウムとともに励起させた原子状窒素流束を照射して窒化ガリウムの単結晶薄膜を形成する方法を既に提案している(たとえば、非特許文献1参照)。
【0004】
前記方法、高価な炭化珪素などの基板を用いず、まず、MBE装置の超高真空の成長室内に、安価でダイヤモンド型立方晶構造の単一半導体として安定であると同時に大面積の良質の単結晶基板が利用できるシリコン基板をセットし、このシリコン基板上に炭化珪素単結晶(立方晶または六方晶)膜から成る、いわゆる、III族窒化物単結晶に対するヘテロバッファ層を形成た後、該へテロバッファ層上に窒化ガリウムの単結晶薄膜を形成して、安価に窒化ガリウム等のIII窒化物単結晶膜を得ようとするものである
【0005】
また、上記のようなMBE装置を用いた方法によれば、現在、一般に使用されている有機金属気相化学反応堆積法(MOCVD)窒化ガリウムの製造方法(たとえば、特許文献1参照)に比べ、原材料の消費が100分の1と、材料コストの面でもメリットがある。
しかし、MBE装置において、立方晶単結晶薄膜の成長速度を速めるには、炭素源であるアセチレンガスの供給量、あるいは、窒素源である励起窒素の供給量を増やす必要があるが、アセチレンガスの供給量や励起窒素原子の供給量を増やすと、成長室内を高真空に保てなくなり、アセチレン等の反応ガスが成長室の内壁やシュラウドに付着する。そして、液体窒素で冷却されたシュラウドに吸着した反応ガスが、そこから再蒸発をするため、反応後に真空度が回復せず、継続して行うべき窒化ガリウム薄膜低温バッファ層作製を行うことに支障が生じる。
【0006】
また、上記のようなMBE装置を用いた方法によれば、窒素源としてガスを利用することから、従来の固体原料のみを利用するMBE装置と比べ、排気系の排気量を大きくする必要があり、イオンポンプに変わり分子ターボポンプを利用する必要がある。
しかし、MBE装置において、III族グループ窒化物単結晶薄膜の成長速度を速めるには、窒素源である励起窒素の供給量を増やす必要があるが、励起窒素原子の供給量を増やすと、成長室内を高真空に保てなくなり、高品質の結晶を得ることが難しくなる。
したがって、従来のMBE装置では、大きな基板に高速に結晶薄膜を形成しようとすると、アセチレンガスの供給量や励起窒素原子の供給量に見合う容量の大きい真空ポンプが必要となり、装置が大型化するため、装置コストおよびエネルギーコストの点で問題がある。
【0007】

【非特許文献1】International School on Crystal Growth ,Characterization and Applications 9-13 December 2003 La Pedrera Uruguay Abstract集 P.42-47
【特許文献1】特開平5-206520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、装置の小型化が図れるとともに、基板上に効率よく、安価にかつ精度よく、III族窒化物単結晶膜をエピタキシャル成長させることができる分子線エピタキシャル成長装置およびそのような分子線エピタキシャル成長装置を用いたシリコン基板上への窒化ガリウム等のIII窒化物単結晶の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の分子線エピタキシャル成長装置は、高真空状態に設定される成長室と、前記成長室に配置された基板固定部材と、放電室内に供給する中性気体をRF(高周波)放電により解離して前記成長室内に解離粒子流束を前記基板固定部材に固定された基板に向けて射出可能とした励起原子セルと、前記基板に向けて原子線を照射する少なくとも1以上の溶融セルとを具備する分子線エピタキシャル成長装置において、
前記励起原子セルの放電室内に印加される高周波磁界に加えて磁束密度を可変とするECR(電子サイクロトロン共鳴)用静磁界を印加するように構成した磁界付与手段と、前記励起原子セルの放電室の出口に取り付け可能とするとともに所定のアスペクト比を有する複数のオリフィスを形成した仕切り板とを備え、前記ECR用静磁界の磁束密度を調整するとともに前記仕切り板のオリフィスの設定数およびオリフィスのアスペクト比を調整することにより前記成長室内に射出される前記中性気体の励起原子および基底原子流量を調整可能に構成したことを特徴としている。
【0011】
さらにまた、本発明の分子線エピタキシャル成長装置は、励起原子セルの放電室の出口周辺部に、該出口から放出される荷電粒子流束に交差する電界を発生する荷電粒子抑制用電界発生手段を設け、該荷電粒子抑制用電界発生手段により発生された電界により前記励起原子セルの放電室から成長室内に配置された基板に向けて射出される荷電粒子を抑制するようにしたことを特徴としている。
【0014】
本発明において、磁界付与手段としては、コイル、電磁石および永久磁石等が挙げられるが、電流をコントロールすることにより磁束密度を容易にコントロールできることからコイルおよび電磁石が用いられる。磁界をかける方向は、特に限定されないが、少なくとも、放電室から放出される励起粒子流束と交差するようにされる
【0015】
前記磁界付与手段により発生される磁界の磁束密度は、高周波放電の放電周波数、励起される原子の種類等に応じて調整され、特に限定されないが、たとえば、放電周波数が13.56MHzで窒素ガスの放電プラズマの電子温度によるが、数十ミリテスラ(mT)以下、たとえば、0.5ミリテスラ程度のサイクロトロン共鳴を生起する大きさとすることが好ましい。
【0016】
放電室の出口部に取付けられる仕切り板に形成されるオリフィスの径と、オリフィスの数は、成長させる薄膜の種類によって経験的に求められて適宜決定される。これらのオリフィスの穴径と穴長さとは、穴長さ/穴径(アスペクト比)が大きい程、放電室で形成されたラジカル原子の指向性が向上する。効率のよい原子生成条件において、窒素原子の平均自由行程は、数ミリメートル(mm)程度と考えられることから、穴の長さ(仕切り板の厚さ)は、数ミリメートル(mm)以下とするのが好ましい。また、小さな穴径は、オリフィスの内壁と原子との衝突が生じ易くなることから、内壁との衝突によって励起原子が非励起状態となるのを抑制するため、アスペクト比を2~10程度とすることが好ましい。
【0017】
荷電粒子抑制(または除去)用電界発生手段としては、プラスの電界またはマイナスの電界を形成し、前記放電室の出口からの荷電粒子の飛び出しを防止することができれば特に限定されないが、たとえば、ステンレス鋼等の金属製筒状体を荷電粒子の放電室出口からの飛び出し方向とその中心軸が平行となるように配置し、この金属製筒状体にプラスまたはマイナスの電荷を印加する方法が挙げられる。
筒状体の形状は、特に限定されないが、円筒が好ましい。
【0018】
本発明の装置は更に、高真空状態の成長室内に反応ガスを放出する少なくとも1つの反応ガスセルを備え、前記反応ガスセルのノズル先端部に形成されるオリフィスの周縁部を包囲するとともに前記成長室内に延びる反応ガスガイド筒部を設け、上記反応ガスセルの内部から前記オリフィスを介して前記成長室内に放出される反応ガスジェットを、前記反応ガスガイド筒部を介して前記成長室内の基板固定部材に固定された基板面に照射するように構成したことを特徴としている。
【0019】
前記反応ガスセルのノズル先端部に形成される単一のオリフィス、成長される薄膜の種類によって経験的に求められて適宜決定される。この単一のオリフィスの穴径と穴長さは、穴長さ/穴径(アスペクト比)が大きい程反応ガスの基板への指向性が向上する。反応ガスの平均自由行程は、数ミリメートル(mm)程度と考えられるので、穴の長さは数ミリメートル(mm)程度以下が好ましい。また、前記反応ガスジェットの形成には、オリフィスの穴径を小さくすることが必要となり、アスペクト比は2~10程度とすることが好ましい。
また、ガイド筒部の長さは、長い程、発散が防止でき指向性が向上する。ガイド筒部長は、その半径との兼ね合いにより、反応ガス放射分布を決定づけるが、あまり長いと反応ガスジェットの特性が失われるため、アスペクト比は5~20程度、ガイド筒部の内径は照射試料基板の外径の1/100~1/10程度でよい。
【0020】
本発明のシリコン基板上へのIII窒化物単結晶膜の製造方法、前記分子線エピタキシャル成長装置であって、さらに、少なくとも1以上の前記反応ガスセルを備えた分子線エピタキシャル成長装置を用い
前記分子線エピタキシャル成長装置の成長室内に設けた基板固定部材にシリコン基板を固定し、該シリコン基板を加熱するとともに該シリコン基板表面に反応ガスセルから炭素を含む反応ガスを照射することによりSiC単結晶ヘテロエピタキシャルバッファ層を形成する工程と、次いで、
励起原子セルの放電室に供給される窒素ガスN2を高周波磁界により解離して該励起原子セルから前記SiC単結晶ヘテロエピタキシャルバッファ層に、励起窒素原子N*および基底窒素原子N流束を照射するとともに溶融セルからIII族原子流束を照射することにより、該SiCヘテロエピタキシャルバッファ層上にIII窒化物単結晶層を形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0021】
前記III族窒化物単結晶膜の製造方法、昇温中のシリコン基板表面が炭素原子を含む反応ガス雰囲気に曝されるようになっているが、そのタイミングは、特に限定されないが、比較的低温たとえば300℃程度まで昇温された時点で開始すればよい。また、化珪素単結晶層形成工程において形成された炭化珪素単結晶膜内をシリコン原子が拡散する時間を考慮して、反応ガスを断続的に照射することが高品質の炭化珪素単結晶膜を作製するのに有効である。
なお、炭素原子を含む反応ガスとしては、特に限定されないが、たとえば、アセチレンガスが挙げられる。
【0024】
さらにまた、本発明のIII族窒化物単結晶膜の製造方法は、励起原子セルの放電室から放出される励起窒素原子N*および基底窒素原子Nを含む解離荷電粒子流束(流束)の流量を検出する検出電極を、上記励起原子セルから基板固定部材に固定されたシリコン基板に向けて照射される解離粒子流束を阻害しない位置に設け、前記検出電極による解離粒子流量検出値に基づきIII族窒化物単結晶層の形成工程を制御することを特徴としている。
【0027】
本発明において、III族原子とは、特に限定されないが、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)が挙げられ、本発明の製造方法で得られる立方晶単結晶薄膜は、これらIII族原子の混晶となっていても構わない。
【発明の効果】
【0028】
本発明の装置においては、磁界付与手段により励起原子セルの放電室内の高周波磁界に加えて印加されるECR用静磁界により、放電室内で高周波放電により解離された反応ガス、たとえば、窒素ガスの解離によるプラズマ中の電子がサイクロイド曲線運動を行い、放電室内の窒素分子の解離が促進され、これにより生起した励起原子が放電室の出口から成長室内に配置された基板に向かって集中して供給されるようになる。したがって、放電室に供給される窒素ガス濃度を低減することができ、大きな真空ポンプを用いなくても成長室内を高真空に保つことができる。すなわち、装置の小型化とともに省エネルギー化、省資源化が図れる。また、磁界付与手段が磁束密度を変化させることが可能となっているので、磁束密度を変化させながら、放電スペクトルを調べれば、最適な磁束密度がわかる。そして、求めた最適な磁束密度の磁界を放電室にかけることによって、より効率のよい分子線エピタキシャル成長を行わせることができる。
【0029】
また、励起原子セルの放電室出口に取付けられる仕切り板に所定のアスペクト比を有する複数のオリフィスが設けられ、これらのオリフィスによって励起原子の放射拡散範囲を制御できることから、発生ラジカルを有効に利用できることができる。すなわち、放電室内で発生した励起原子が、基板に向かって発散することなく有効に供給される。したがって、さらに効率よく分子線エピタキシャル成長を行わせることができる。
【0030】
更にまた、前記励起原子セルの放電室の原子線出口前方にプラス電荷の通過を阻止する電界またはマイナス電荷の通過を阻止する電界を形成し、前記原子線出口から基板方向への荷電粒子の飛び出しを防止する荷電粒子抑制用電界発生手段を備えているので、荷電粒子抑制用電界発生手段によってプラス電荷の移動を阻止する電界を原子線出口に発生させることにより、放電室内で発生した荷電粒子である反応ガスのプラスイオンの原子線出口からの飛び出しを阻止し、マイナス電荷の移動を阻止する電界を原子線出口に発生させれば、放電室内で発生したマイナス荷電粒子である電子原子線出口からの飛び出しを阻止することができる。すなわち、結晶成長を阻害する荷電粒子、特に、プラスイオン粒子が基板表面を衝撃するのを防止することができる。
【0033】
なお、本発明の装置は、ガス供給ノズルの先端部に所定の穴径のオリフィスを設け、該ガス供給ノズル内の気圧と成長室内の高真空圧との気圧差に応じてガス供給ノズルに供給される反応ガスを反応ガスジェットとして噴射し、このオリフィスより成長室内の基板に向けて出し、オリフィスを介して噴射される反応ガスジェットの発散を防止するガイド筒部設けるようにしたので、基板により近づけて反応ガスジェット噴出口を配することが可能となり、成長室内の真空度を低下させることなく、効率よく基板表面に反応ガスを供給できる。したがって、余分な反応ガス量が少なくなり、大きな真空ポンプを用いなくても系内を高真空に保つことができる。すなわち、装置の小型化と共に省エネルギー化、省資源化が図れる。
【0034】
また、本発明のシリコン基板上へのIII族窒化物単結晶層の製造方法は、前記反応ガスセルにより炭素原子を含む反応ガスをシリコン基板へ指向性よく供給でき、必要最小限の炭素原子を含む反応ガスによってシリコン基板表面に炭化珪素単結晶層を効率よく形成できる。
【0035】
また、本発明の製造方法では、前記励起原子セルにより前記シリコン基板に形成された炭化珪素単結晶層表面に励起窒素原子を指向性よく供給できるとともに、該励起原子セルの出口部に設けた所定のアスペクト比を有する複数のオリフィスによって必要最小限の励起窒素原子流束をもって前記炭化珪素単結晶層上に良質の窒化ガリウム等のIII窒化物単結晶膜を効率よく形成できる。
さらにまた、前記励起原子セルから基板固定部材に固定されたシリコン基板に向けて照射される解離粒子流を阻害しない位置に解離粒子流量を検出する検出電極を設け、励起窒素原子量をモニタリングしながら単結晶薄膜を成長させるので、より良質なIII窒化物単結晶を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照して詳しく説明する。
図1~図3は、本発明にかかる分子線エピタキシャル成長装置の第1の実施の形態をあらわしている。
【0039】
図1中、1aは分子線エピタキシャル成長装置(以下、「MBE装置」と記す)、2は成長室、3aはAl用分子線セル(クヌーセンセル、K-セルといわれる場合もある)、3bはGa用分子線セル、3cはIn用分子線セル、3dはシリコン用分子線セル、4aは高周波放電励起原子セル、5は反応ガスを成長室2に導入する反応ガス導入セル、6はシリコン基板、7は基板支持部、71は加熱ヒータ、8はマニピュレータ、9はQ-mass質量分析器、10は分子ターボポンプ、11はゲートバルブ、12は試料準備室、13はビューポート、14は液体窒素シュラウドクライオポンプ、15はRHEED(高速反射電子回折)電子銃、16はRHEEDスクリーン、17はフラックスモニタ用イオンゲージであって、高周波放電励起原子セル4aおよび反応ガス導入セル5以外は、従来のMBE装置と同様のものになっている。
【0040】
アルミニウム用分子線セル3a、ガリウム用分子線セル3b、インジウム用分子線セル3c,および、シリコン用分子線セル3dは、それぞれPBN(窒化硼素)製のルツボ31と、ヒータ32と、シャッター33をそれぞれ備えていて、従来のものと同様の構造をしている。
【0041】
高周波放電励起原子セル4aは、図1および図2に示すように、放電室41と、水冷RF(高周波)コイル42と、放電室41の出口部に取り付けられた仕切り板に設けられた多数のオリフィス43と、放電室41および水冷RFコイル42を囲繞している外筒44と、外筒44の周りに巻回された磁界付与手段として作用する磁界付与コイル45と、ガス供給管46と、ビューポート47と、シャッター48を備えている。
【0042】
磁界付与コイル45aは、図示していないが、外部に設けられたコントローラによって、その供給電力を変化させることによって、放電室41の出口部分の磁束密度が自由に変えられるようになっている。
ガス供給管46に窒素源となる液体窒素ボンベ(図示せず)接続されている。
【0043】
反応ガスル5は、図1および図3に示すように、内部にガス供給ノズル51を有し、ガス供給ノズル51の先端に単一のオリフィス52が設けられ、このオリフィス52から基板6方向に向かってガイド筒部53が延いるとともに、ガイド筒部53の前方にシャッター54が設けられている。このガイド筒部53の底部にオリフィス52を設けて形成されたアタッチメント50は、ジョイント56を介して既存のガス供給ノズル51に装着可能とされる
【0044】
また、ガス供給ノズル51は、その基端部に設けられたニードルバルブ55を介して反応ガスとしてのアセチレンのボンベ(図示せず)に接続されている。ガス供給ノズル51およびガイド筒部53は、特に限定されないが、1/4インチ程度のステンレス管が用いられる。
【0045】
このMBE装置1aは、以上のようになっており、たとえば、III族グループ窒化物である窒化ガリウムの立方晶単結晶薄膜を以下のようにして製造することができる。
【0046】
すなわち、まず、シリコン基板をHF(フッ化水素):H2O=5%:95%(容量)混合比のエッチャントによって化学エッチング、すなわち、清浄した後、基板支持部7に直ちにセットして、成長室2内を10-8パスカル以下の超高真空状態にする。つぎに加熱ヒータ71によってシリコン基板6を加熱しながら反応ガス導入セル5のガス供給ノズル51からアセチレンガスをシリコン基板6表面に向けて供給し、シリコン基板6の表面をアセチレンガスに曝して表面のシリコンを炭化してシリコン基板6表面に厚み5nm程度の立方晶炭化珪素SiCバッファ層を形成する。なお、このとき、アセチレンガスは、ガス供給ノズル51の先端に形成されたオリフィス52を介して該ガス供給ノズル51内部と成長室2内部間の気圧差に応じて該オリフィス52から噴射され、すなわち、反応ガス(アセチレンガス)ジェットが形成される。このアセチレンガスジェットはガイド筒部53により案内されてシリコン基板6に向けて射出される。オリフィス52から噴射されるアセチレンガスジェットは、該オリフィス52より成長室2内に配置されるシリコン基板6に向けて延びるガイド筒部53によって発散が抑えられて指向性よくシリコン基板6表面に供給される。なお、シャッター54の開閉によって供給量をコントロールすることもできる。
【0047】
上述したようにして、シリコン基板6上に炭化珪素単結晶層を形成したのち、反応ガスセル5からアセチレンガスの供給を停止し、基板500℃程度に加熱するとともに、成長室2を超高真空状態保った状態励起窒素原子セル4aから窒素励起原子を供給するとともに、ガリウム用分子線セル(溶融セル)3bのルツボ31をヒータ32によって加熱してルツボ31内の金属ガリウムを蒸発させ、シャッター33をコントロールして炭化珪素立方晶層表面にガリウム原子を供給し、膜厚2nm~20nm程度の窒化ガリウム低温バッファ層を形成する
【0048】
さらに、高周波放電励起原子セル4a放電室41内に供給された窒素ガスに高周波コイル42によって高周波電磁界を印加し、これにより該窒素ガスを解離するとともに磁界付与コイル45aに電流を流して直流磁界を放電室41の出口部の外周部にかけることにより該放電室41内の高周波放電プラズマに電子サイクロトロン共鳴(ECR)を起こさせて励起窒素原子を発生させ励起窒素原子を含む窒素ガスの解離粒子流束を仕切り板に設けた多数のオリフィス43を通して励起窒素原子をシリコン基板6に供給し、これと同時またはある間隔を置いてGa用分子線セル3bからシリコン基板6にガリウム原子を供給し、立方晶炭化珪素SiCからなるヘテロ低温バッファ層表面上に立方晶窒化ガリウムGa薄膜を形成するようになっている。なお、シリコン基板6上の低温バッファ層が六方晶炭化珪素SiCとされる場合には、その後のエピタキシャル成長の際の窒素原子とガリウム原子の流量比を調整することにより六方晶窒化ガリウムGaN膜を成長させることも可能である。
【0049】
図4は、本発明にかかるMBE装置の第2の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、このMBE装置1bは、高周波放電励起原子セル4bが、以下のようになっている以外は、上記MBE装置1aと同様になっている。
【0050】
起原子セル4bの開口部の外側に、磁界付与手段を構成する2つのコイル45b、45bが該励起原子セル4bの放電室41を両側から挟むように配置され、矢印で示すように放電室41の長手と直交する磁界が形成されること以外、上記高周波放電励起原子セル4aと同様になっている。
【0051】
図5は、本発明にかかるMBE装置の第3の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、このMBE装置1cは、高周波放電励起原子セル4cが、以下のようになっている以外は、上記MBE装置1aと同様になっている。
【0052】
高周波放電励起原子セル4cは、磁界付与手段を構成する電磁石45c2つの磁極45d、45d放電室41を両側から挟むように設けられていること以外は、上記高周波放電励起原子セル4aと同様の構成とされる
【0053】
なお、励起原子セル4cは電磁石45cに代えて、図6に示すように、永久磁石を用いた磁界付与手段45eを用いることもできる。すなわち、この磁界付与手段45eは、磁性体板45fと磁性体板45fとの間隔を可変とするように永久磁石45gが配置され、該永久磁石45gの位置を変えることによって磁束密度が調整可能とされ、両磁性体板45fの先端部が放電室41の壁面に隣接して配置される。
【0054】
図7~図9は、本発明にかかるMBE装置の第4の実施の形態をあらわしている。
図7に示すように、このMBE装置1dは、荷電粒子除去用電界発生手段100と、励起原子検出電極200とを備える以外は、上記MBE装置1aと同様になっている。
【0055】
すなわち、荷電粒子除去用電界発生手段100は、図7~図9に示すように、電界発生電極110と、給電装置120とを備えている。
【0056】
電界発生電極110は、ステンレス鋼によって直径25mm、軸方向長さ15mmの円筒形状に形成され、該電界発生電極110の内部に、放電室41の原子線出口部を隣接させて固定されている。
給電装置120は、直流電源121と、電界発生電極110への給電線122と、切り替えスイッチ123とを備え、切り替えスイッチ123切り替えることによって、電界発生電極110の筒内にプラス電荷のイオン粒子を阻止する電界あるいはマイナス電荷の電子阻止する電界形成される。
【0057】
励起原子検出電極200は、図7および図9に示すように、直径0.5mm程度のタンタル線をコイル状にすることによって形成されるとともに、基板近傍の基板に向かう励起原子を阻害しない位置に設けられていて、検出回路210が接続されている。
検出回路210は、直流電源211と、励起原子検出電極200への給電線212と、切り替えスイッチ213と、電流計214とを備え、切り替えスイッチ213を切り替えることによって励起原子検出電極200をアースに対してプラスあるいはマイナスの電位を与えることができるようになっている。
【0058】
このMBE装置1dは、以上のようになっており、たとえば、基板III族化物である窒化ガリウム単結晶膜を製造する際、荷電粒子抑制用電界発生手段100の電界発生電極110に250V~1000V程度のプラス電圧を印加し、励起原子セルの出口前方にプラスの電界を形成するとともに、検出電極200をマイナスのバイアス電圧を印加し、励起窒素原子*が検出電極200に衝突した、検出回路210に流れる電流電流計214によってモニタリングしながら窒化ガリウム単結晶を形成するようになっている以外は、上記MBE装置1aを用いた製造方法と同様になっている。
【0059】
前記製造方法によれば、電界発生電極110によって励起原子セルの放電室41の原子線出口前方にプラス電荷の流動を抑制する電界が形成されているので、III族窒化物単結晶膜である窒化ガリウム単結晶(立方晶)膜の成長に悪影響を与える放電室41内で発生した窒素プラスイオン+が、プラス電荷の流動を抑制する電界による反発力によって原子線出口から成長室2内への飛び出しが阻止される。したがって、専ら窒化ガリウムの立方晶単結晶薄膜の成長に有効な中性の励起窒素原子(N*および基底原子Nが基板表面に供給され、良質な窒化ガリウムの単結晶(立方晶)膜を安定して得ることができる。
しかも、検出回路200の電流計214の電流値をモニタリングしながら窒化ガリウムの単結晶(立方晶)薄膜を成長させることができるので、電流計214でモニタリングした予め求めてある検量線等と照合させながら、励起原子セルへの窒素の供給量をコントロールして単結晶膜の膜厚を自由に制御できる。
【0060】
また、MBE装置1dは、励起原子検出電極200の極性を切り替えることができるので、励起原子検出電極200プラスのバイアス電圧を印加しておけば、原子線出口から成長室2内に飛び出る電子流量を測定することができる。さらに、励起原子検出電極200をマイナスのバイアス電圧を印加した状態すれば、励起原子検出電極200によってN+イオンの量を検出することができる。
【0061】
図10は、本発明にかかるMBE装置の第5の実施の形態をあらわしている。
図10に示すように、このMBE装置1eは、上記MBE装置1aのように磁界付与コイル45を設ける代わりに、高周波放電励起原子セル4aの高周波コイル42への高周波回路400にフィルター510を備えた直流回路500を並列に接続し、RFコイルに交流電流と直流電流とを同時に流すことによって高周波を発生させると同時に磁界を発生させるようにした以外は、上記MBE装置1aと同様になっている。なお、図10中、420は、マッチングボックスである。
【0062】
このMBE装置1eは、磁界付与コイル45等の磁界付与手段を別途設けることなく、高周波回路400にフィルター510を備えた直流回路500を並列に接続するだけの簡単な構成で、高周波コイル42を用いて高周波を発生させると同時に磁界を発生させることができ、低コスト化できるとともに、高周波放電励起原子セル4aも小型化できる。
【0063】
前記実施の形態に限らない。たとえば、ルツボはPBNに代えてアルミナ使用することもできる。また、前記実施の形態では、起原子セル励起窒素源として用いられたが、励起酸素源としても使用できる。すなわち、超高真空中での活性酸素原子と、基板との反応を利用する程に利用することができ、酸素化合物作製程にも応用可能である。
【0064】
上記の実施の形態では、荷電粒子除去用電界発生手段が円筒状をしていたが、角筒状をしていても構わない。また、電界がうまく形成されれば、柱状のものが間欠的に同一円周状に並ぶように設けたものや金網状のもので形成するようにしても構わない。さらに円筒の開口部を金網で覆うようにしても構わない。
また、本発明の荷電粒子除去用電界発生手段および励起原子検出電極は、磁界発生手段が設けられていない従来のMBE装置に採用しても、同様の効果を得ることができる。
【実施例1】
【0065】
(実施例1)
本実施例において、図1に示すようなMBE装置が使用された。このMBE装置には、従来のGaAs用MBE装置( V.G. Semicon社製80H)のKセルポートに、励起窒素源として高周波放電励起原子セル(アリオス社製IRFS-501RF;13.56MHz)装着されこの励起原子セルの放電室の原子線出口に、厚み(オリフィス長さ)2mm、オリフィス径(直径)0.5mm、オリフィス数185を形成したPBN製仕切り板が装着されるとともに、図5に示すような電磁石45c装着されている。さらに、図3に示すように、ガス供給ノズルの先端に、一端に内径1/4インチ、長さ20cmのガイド筒部をえ、他端に穴径1mm、穴長さ0.5mmの単一のオリフィスを形成したアタッチメントを備えた反応ガスセルが装着されている。
【0066】
そして、まず、シリコン(001),(111)基板をHF(フッ化水素):HO=5%:95%(Vol.)混合比のエッチャントによる化学エッチングの後、上記MBE装置へ速やかに導入した。その後、成長室内を10-8パスカル以下の超高真空にして、基板温度が昇温途中の300℃になった時点でアセチレン(99.95%)ガスをガス供給ノズルから分子線状にして基板表面に供給しながら、基板温度を900℃まで昇温した。このときの成長室内の真空度は、5.0~10.0×10-6パスカル以下であった。この結果、シリコン基板表面は炭化されて、立方晶炭化珪素のRHEED像が確認できた。そして、低温バッファ層を5~10nm成長させたのち、ガリウム用分子線セルからガリウム原子を過剰に成長室内に供給するとともに、高周波放電励起原子セルへの窒素ガスの流量を0.3、0.4、0.7、0.85sccmと変化させるとともに、それぞれの流量で、電磁石によって放電室にかける磁界の磁束密度を変化させ、747nmでのN原子スペクトル強度を測定し、その結果を図11に示した。なお、スペクトル強度の測定は、実際強度が大きすぎる場合は、光路に減衰フィルターを介在させた状態で行った。
【0067】
(実施例2)
放電室の出口のオリフィスを、厚み0.5mm,穴径2mm、穴数1穴とするとともに、光路に異なる減衰フィルターを介在させた以外は、実施例1と同様の測定を行い、その結果を図12に示した。
【0068】
(実施例3)
放電室の原子線出口に厚み(穴長さ)2mm、穴径(直径)0.2mm、穴数185穴のオリフィスをセットするとともに、光路に異なる減衰フィルターを介在させた以外は、実施例1と同様の測定を行い、その結果を図13に示した。
【0069】
図11~図13から、放電室に外部から磁界をかけるようにすれば、同じ流量でもスペクトル強度が大きくなり、効率よく基板表面に励起N原子を供給できることがわかる。すなわち、実施例1のオリフィスでは、図11に示すように、流量0.3sccmで磁束密度1.0とした場合、磁界をかけない流量0.7sccmの場合よりスペクトル強度が大きい。
【0070】
また、図11~図13から、励起原子セルの出口部に設けるオリフィスの形状によって、該励起原子セルの効率が変化することがよくわかる。
すなわち、最適なオリフィスの形状(穴数、穴長さ、穴径)および磁界付与手段により発生される磁束密度を予め設定しておけば、最少の流量で、超高真空を保ったまま効率よくIII窒化物単結晶を製造できることがよくわかる。
【0071】
(実施例4)
アセチレンガスとともに、シリコン用分子線セルからシリコン原子を基板表面に照射した以外は、実施例1と同様にして立方晶炭化珪素層をシリコン基板表面に形成し、得られた立方晶炭化珪素層表面を原子間力走査顕微鏡(「AFM」とも記す)によって観察した結果、シリコン原子を照射しない場合に観測されるピットが1ミクロン平方メートルあたり1~8個存在していた物が消失し、表面荒さを示すラフネスは照射することにより0.29nmに減少していた。したがって、立方晶炭化珪素層を形成する場合、炭素を含む反応ガスとともにシリコン原子を同時にシリコン基板表面に照射すれば、続くIII族グループ窒化物単結晶薄膜成長により有効であることがわかった。
【0072】
(実施例5)
実施例1と同様のMBE装置と試料準備条件を用い、立方晶炭化珪素層形成工程を経て得られた立方晶炭化珪素層の表面に立方晶炭化珪素層形成工程に引き続いて低温バッファ層を基板温度500℃で成長させたのち、基板を800℃、ガリウム用分子線セル温度を965℃、窒素流量0.5sccmで、3時間かけて窒化ガリウム膜を成長させた。
【0073】
そして、得られた窒化ガリウム膜の16Kで測定したPL(フォトルミネッセンス)測定結果を図14に示した。
図14に示すように、実施例5の条件では、立方晶窒化ガリウムと六方晶窒化ガリウムのバンド端付近の発光が観測され、その他に2.8eV付近の発光も観測された。この2.8eV付近の発光は、欠陥が形成する深い準位を介した発光と思われる。
【0074】
(実施例6)
窒化ガリウム膜の成長工程において、同時にシリコン用分子線セルからセル温度1300℃でシリコン原子を供給した以外は、上記実施例4と同様にして窒化ガリウム薄膜をシリコン基板上に形成し、得られた窒化ガリウム膜の16Kで測定したPL(フォトルミネッセンス)測定結果を図15に示した。
【0075】
図15に示すように、実施例6の条件では、2.8eV付近での発光は見られず、立方晶窒化ガリウムのバンド付近の発光が主に見られた。
上記実施例4および実施例5の結果からガリウムと同時にシリコンを照射することによってより立方晶窒化ガリウム単結晶薄膜の結晶性が向上することがわかる。
【0076】
なお、実施例5、6の結晶膜をXRD(X線回折)測定したところ、実施例6のように、ガリウムと同時にシリコンを照射した場合、実施例5に比べ、半値幅が減少し、その強度が増加していた。この結果からも、ガリウムと同時にシリコンを照射することによってより立方晶窒化ガリウム単結晶薄膜の結晶性が向上することがわかる。
【0077】
(実施例7)
実施例1のMBE装置の高周波放電励起原子セルに図7に示すMBE装置1dのように荷電粒子除去用電界発生手段100および励起原子検出電極200を取り付けるとともに、励起原子検出電極200に-100Vをかけ、高周波放電励起原子セルを用いて窒素ガス流量0.5sccm、RF入力電力500Wの窒素活性条件で窒素を励起させて成長室内に噴射し、荷電粒子除去用電界発生手段の電界発生電極にかける印加電圧を-1000V~1000Vまで変化させ、印加電圧と励起原子検出電極200によって測定される電流値(窒素イオンの荷電粒子密度)の変化を調べ、その結果を図16に示した。
【0078】
図16に示す実験結果から、電界発生電極にかける印加電圧がプラス側になるにつれて、電流値が減少し、電界発生電極110にかける印加電圧が250Vよりプラス側では、略平衡状態になることがわかる。すなわち、電界発生電極110に250V以上のプラスのバイアス電圧を印加すれば、該プラス電荷の流動を阻止する電界によって励起原子セルの出口からの窒素プラスイオンの飛び出しが完全に阻止されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明にかかる分子線エピタキシャル成長装置の第1の実施の形態を模式的にあらわす断面図である。
【図2】図1の分子エピタキシャル成長装置の高周波放電励起原子セル部分の斜視図である。
【図3】図1の分子エピタキシャル成長装置のガス供給ノズル部分の要部断面図である。
【図4】本発明にかかる分子線エピタキシャル成長装置の第2の実施の形態の高周波放電励起原子セル部分をあらわす斜視図である。
【図5】本発明にかかる分子線エピタキシャル成長装置の第3の実施の形態の高周波放電励起原子セル部分をあらわす斜視図である。
【図6】本発明にかかる分子線エピタキシャル成長装置の高周波放電励起原子セルに用いる磁界付与手段の他の例をあらわす斜視図である。
【図7】本発明にかかる分子線エピタキシャル成長装置の第4の実施の形態を模式的にあらわす断面図である。
【図8】図7の分子線エピタキシャル成長装置の電界発生電極の取り付け状態を説明する斜視図である。
【図9】図7の分子線エピタキシャル成長装置の荷電粒子除去用電界発生手段および励起原子検出電極の電気回路を説明する説明図である。
【図10】本発明にかかる分子線エピタキシャル成長装置の第5の実施の形態の高周波コイルの電気回路を説明する説明図である。
【図11】実施例1で求めた各ガス流量での磁束密度とスペクトル強度の関係をあらわすグラフである。
【図12】実施例2で求めた各ガス流量での磁束密度とスペクトル強度の関係をあらわすグラフである。
【図13】実施例3で求めた各ガス流量での磁束密度とスペクトル強度の関係をあらわすグラフである。
【図14】実施例4で得た窒化ガリウム結晶膜のPL測定結果をあらわすグラフである。
【図15】実施例5で得た窒化ガリウム結晶膜のPL測定結果をあらわすグラフである。
【図16】実施例7で得た図7に示すMBE装置を用いた場合における荷電粒子除去用電界発生手段の電界発生電極にかける印加電圧を-1000V~1000Vまで変化させ、印加電圧と励起原子検出電極によって測定される電流値の変化を調べた結果をあらわすグラフである。
【符号の説明】
【0080】
1a,1b,1c,1d,1e 分子線エピタキシャル成長装置(MBE装置)
2 成長室
3a Al用分子線セル
3b Ga用分子線セル
3c In用分子線セル
3d シリコン用分子線セル
4a,4b,4c 高周波放電励起原子セル
41 放電室
43 オリフィス
45a 磁界付与コイル(磁界付与手段)
45b コイル(磁界付与手段)
45c 電磁石(磁界付与手段)
45e 磁界付与手段
5 反応ガス導入セル
51 ガス供給ノズル
52 オリフィス
53 ガイド筒部
6 基板
100 荷電粒子除去用電界発生手段
200 励起原子検出電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15