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明細書 :移乗支援機構、この移乗支援機構を備えた担架及びベッド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4415149号 (P4415149)
公開番号 特開2005-304735 (P2005-304735A)
登録日 平成21年12月4日(2009.12.4)
発行日 平成22年2月17日(2010.2.17)
公開日 平成17年11月4日(2005.11.4)
発明の名称または考案の名称 移乗支援機構、この移乗支援機構を備えた担架及びベッド
国際特許分類 A61G   1/00        (2006.01)
A61G   5/00        (2006.01)
A61G   7/05        (2006.01)
FI A61G 1/00 509
A61G 5/00 509
A61G 7/04
請求項の数または発明の数 7
全頁数 22
出願番号 特願2004-124733 (P2004-124733)
出願日 平成16年4月20日(2004.4.20)
審査請求日 平成18年12月20日(2006.12.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】山本 透
【氏名】黒住 亮太
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
【識別番号】100113701、【弁理士】、【氏名又は名称】木島 隆一
【識別番号】100116241、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 一郎
【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
審査官 【審査官】山口 賢一
参考文献・文献 特公昭49-012999(JP,B1)
特表2006-507027(JP,A)
特開昭63-117755(JP,A)
特開平08-224278(JP,A)
特公平03-008772(JP,B2)
実開昭61-171922(JP,U)
調査した分野 A61G 1/00
A61G 5/00
A61G 7/05
特許請求の範囲 【請求項1】
被介護者をその上に載せて移動させる移乗機構であって、
1つの板状の本体と、
上記本体を囲み、被介護者を上記移乗機構に移乗する際における上記移乗機構の移動方向と平行な方向に、上記本体の被介護者を載せる面に対して相対移動可能な複数の第1のベルト部と、
上記本体の被介護者を載せる面の裏面に、上記移動方向と平行な方向に、上記裏面に対して相対移動可能な複数の第2のベルト部とを備え、
上記第1及び第2のベルト部は、上記移動方向と略直交する方向に、交互に配設されており、
且つ上記被介護者を移動させる際に当該被介護者が上記第1のベルト上に載るように、上記第2のベルト部と被介護者との間に上記本体が位置し、
上記第2のベルト部は、上記裏面に対して相対移動することにより、上記移乗機構を移動させることを特徴とする移乗支援機構。
【請求項2】
の長手方向が、上記複数の第1及び第2のベルト部が配設されている方向と略一致するように設けられている、上記第1のベルト及び/又は第2のベルト部を駆動する駆動軸を備え、
当該駆動軸が、第1のベルト部の被介護者を載せる面、及び第2のベルト部の内側面と接していることを特徴とする請求項に記載の移乗支援機構。
【請求項3】
上記駆動軸が、その長手方向に上記本体に対して相対移動可能であり、上記第1のベルト部と同数の自由回転部と、上記第2のベルト部と同数の一体回転部とを備えており、
上記一体回転部と上記駆動軸とが一体となって回転し、
上記自由回転部の長手方向の長さは、上記駆動軸の回動方向と略直交方向の第1のベルト部の幅以上であり、上記一体回転部の長手方向の長さが、回動方向と略直交方向の第2のベルト部の幅以下であることを特徴とする請求項に記載の移乗支援機構。
【請求項4】
上記移乗支援機構の長手方向に平行な側面の一方の略中央に第1のヒンジ部を備えており、
上記移乗支援機構の長手方向略中央のヒンジ部以外の部分が離接可能であることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の移乗支援機構。
【請求項5】
上記移乗支援機構の長手方向の略中央を屈曲可能とする第2のヒンジ部を備えていること特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の移乗支援機構。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の移乗支援機構を備えていることを特徴とする担架。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の移乗支援機構を備えていることを特徴とする移乗支援機構搭載ベッド。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドから車椅子などへの被介護者の移乗における負担を軽減する、移乗支援機構、この移乗支援機構を備えた担架及びベッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢社会に突入した現在、加齢及びその他の要因により障害を持ち、介護者の支援を受けて生活をする必要のある人々の比率は確実に増加しているという現状がある。同時に一般家庭においては介護者の高齢化も進み、高齢者が高齢者を介護する、老老介護も現実のものとなってきている。また施設等でも、被介護者の増加により、介護者一人あたりの負担が増加している。
【0003】
一方で、福祉介護における考え方が社会に浸透する動きが進む中で、福祉による生活の質の向上が求められている。また経済的には、介護保険の導入により、介護サービスの選択の自由度が向上する一方、介護サービスが一部個人の負担を要する形になっている。他方で、情報技術(IT)等の技術の発展は目覚ましいものがあり、福祉機器においてもその技術が導入され、より高性能な機器が研究開発されている。
【0004】
このような社会的な動きを背景として、介護の現場において、介助作業の中でも特にベッドから車椅子等への移乗を行うことが、介護者にとって肉体的な負担を強いられる作業として問題となっている。一般家庭ではもちろんのこと、施設において若く体力のある介護者でも、移乗介助によって腰を痛め、健康上の問題を抱える場合が多く、負担の軽減が求められている。高齢社会に突入した現在、さらに高齢者の比率が高まり、老老介護などが現実化する中、介護の現場において、移乗における介護者の負担を軽減することの重要性がますます大きくなるものと考えられる。
【0005】
現状における従来のベッドから車椅子への移乗支援方法を分類すると、まず移乗の形態としては、主に、下記(1)~(4)の方法が挙げられる。
(1)ベッド又は車椅子から立ち上がって移乗する立位移乗。
(2)座ったままで移乗する座位移乗。
(3)介護リフト等を用いる持ち上げ移乗。
(4)水平にリクライニングする車椅子とベッドとの高さを調整し、被介護者が寝た状態の被介護者を持ち上げてずらしたり転がしたりする移乗。
【0006】
上記(1)の立位移乗及び(2)の座位移乗(例えば、特許文献1参照)は、被介護者がつかまって体を支える補助具や、スライディングボードなどの機器を用い、高さ調節機構を備えたベッド、アームレストやレッグサポートが邪魔にならないように着脱機構を備えている車椅子を使用することにより行うものであり、被介護者がある程度自立的に動作可能であることが前提となっている。
【0007】
一方、自立的な動作が困難な被介護者の移乗は、リフト等を用いる上記(3)の持ち上げ移乗(例えば、特許文献2、3参照)又は(4)の車椅子とベッドとの高さ調整による移乗、により行われているのが現状である。

【特許文献1】日本公開特許公報 特開2003-79678(公開日:2003年3月18日)
【特許文献2】日本特許公報 特公平3-8772(公告日:1991年2月6日)
【特許文献3】日本公開特許公報 特開平8-224278(公開日:1996年9月3日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記(1)及び(2)の移乗は、なによりも被介護者がある程度自立的に動作可能であることが求められ、自立的な動作が困難な被介護者には用いることができないという問題点がある。
【0009】
また、上記(3)の移乗に用いられる、特許文献2に記載の天井吊り下げ式の介護装置、及び特許文献3に記載のハンガーによって人体を吊り上げて移動させるリフト装置は、いずれも、吊り上げ機構として大掛かりな設備が必要であるという問題点がある。さらに、(3)の形態の移乗では、被介護者に、吊り上げられることに対する心理的な抵抗感が少なからず存在するという問題点もある。
【0010】
また、上記(4)の形態の移乗では、車椅子とベッドとの高さを調整することにより、両者に段差がある場合に比べて、介護者の負担を抑えることが可能である。しかしながら、移乗自体は被介護者を持ち上げてずらす、転がすなどの方法をとる必要があり、依然として被介護者及び介護者双方の負担が大きく、この形態の移譲によりスムーズな移乗介助を行えるとは言い難いといった問題点がある。
【0011】
また、研究開発レベルでは、ロボットアームの使用、介護者が筋力を補強するスーツを装着して被介護者を抱え、持ち上げ移乗を行う機器等も開発されているが、安価でコンパクトな機構は実現できておらず、現実的ではない。このように、研究レベルにおいても、実用的な移乗介助を実現する機器は提案されていない。
【0012】
以上のように、現在用いられている移乗方法及び装置には、介護者及び被介護者の双方に対し動作可能な条件と負担とを少なからず強いる、または大掛かりで高価な設備を要する、といった問題点がある。このように、現状では移乗の方法及び装置として、スムーズで円滑な移乗介助を実現できる、心理的な抵抗の少ないコンパクトな移乗支援機構は存在しない。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、自立的な動作が困難な被介護者であっても、スムーズで円滑な移乗介助を実現可能であり、心理的な抵抗の少ないコンパクトな移乗支援機構、及び移乗支援機構を搭載したベッドを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者らは、自立的な動作が困難な被介護者であっても、当該被介護者の体の下に潜り込ませることが可能でありスムーズな移乗を実現できる移乗支援機構を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明に係る移乗支援機構は、被介護者をその上に載せて移動させる移乗機構であって、板状の本体の被介護者を載せる面に、当該面に対してその表面が変位可能な第1の変位部を備えていることを特徴としている。
【0016】
上記の構成により、被介護者の下に本発明の移乗支援機構を差し込む際に、被介護者に接触する第1の変位部を移動させることにより、移乗支援機構の表面と被介護者との間の摩擦を軽減することができる。これにより、自立的な動作が困難な被介護者であっても、板状の本体の上に載せる作業の負担が軽くなるから、介護者及び被介護者に対する、移乗の際の負担を軽減することができる。しかも、本発明に係る移乗支援機構は、従来の介護リフト等を用いる移乗装置などに比べて、簡単かつコンパクトな構成によって実現することができる。なお、本発明における第1の変位部とは、本体に対する相対的な位置をする変化可能なものをいう。
【0017】
本発明の移乗支援機構は、上記本体の上記第1の変位部とは反対側の面に、当該面に対してその表面が変位可能な第2の変位部を備えていることが好ましい。
【0018】
上記の構成により、移乗支援機構と被介護者との間の摩擦に加え、移乗支援機構と介護者の下のベッドや車椅子のシートとの摩擦を、第2の変位部の移動によって吸収することができる。これにより、移乗の際の介護者及び被介護者の負担をより軽減することができる。
【0019】
本発明の移乗支援機構は、上記第1の変位部及び/又は第2の変位部を駆動する駆動手段をさらに備えていることが好ましい。
【0020】
上記の構成より、本発明の移乗支援機構を被介護者の下に差し込む際や、被介護者の下から引き抜く際に、駆動手段により1の変位部及び/又は第2の変位部を駆動することにより、移乗支援機構を所望の方向に移動させることができる。これにより、移乗の際の介護者及び被介護者の負担をさらに軽減することが可能となる。
【0021】
本発明の移乗支援機構は、上記第1及び第2の変位部が何れも、回動可能方向が略一致している第1及び第2のベルト部であって、上記回動可能方向と略直交する方向に、複数の第1及び第2のベルト部が交互に配設されており、且つ上記被介護者を移動させる際に当該被介護者が本体上に載るように、上記第2のベルト部との被介護者との間に上記本体が位置する構成としてもよい。
【0022】
上記のように、変位部としてベルト部を用いることにより、移乗支援機構の表面の移動距離を大きくすることができる。例えば、第1及び第2のベルト部として無端ベルトを用いることにより、移動距離を制限のないものとすることが可能となる。また、第1及び第2のベルト部の回動可能方向を一致させることにより、移乗支援機構の本体の両面の摩擦抵抗を、効率よく解消することができる。あるいは、駆動手段を有する場合には、移乗支援機構を差し入れたり引き抜いたりする際の作業を、さらにスムーズにすることができる。
【0023】
また、複数の第1のベルト部及び第2のベルト部を交互に配設することにより、これらを重ねて設けた場合に比べて、移乗支援機構をコンパクトに構成することができる。上記第2のベルト部との被介護者との間に上記本体が位置しているから、第2のベルト部を第1のベルト部と反対方向に移動(回転)させる場合においても、第2のベルト部によって被介護者に不要な力が加わることを防止することができる。
【0024】
本発明の移乗支援機構は、上記駆動手段が、その長手方向が、上記複数の第1及び第2のベルト部が配設されている方向と略一致するように設けられている、上記第1のベルト及び/又は第2のベルト部を駆動する駆動軸であり、当該駆動軸が、第1のベルト部の被介護者を載せる面、及び第2のベルト部の内側面と接している構成としてもよい。
【0025】
上記のように、駆動軸が第1及び第2のベルト部と接しているから、駆動軸の回転により、上記第1のベルト部と第2のベルト部とを連動させることができる。また、駆動軸が第1のベルト部の被介護者を載せる面、及び第2のベルト部の内側面と接しているから、第1のベルト部と第2のベルト部との回転方向を反対方向にすることができる。これにより、特に、移乗支援機構を被介護者の下に差し入れる作業をスムーズにすることが可能となる。
【0026】
本発明の移乗支援機構は、上記駆動軸が、その長手方向に上記本体に対して相対移動可能であり、上記第1のベルト部と同数の自由回転部と、上記第2のベルト部と同数の一体回転部とを備えており、上記自由回転部の長手方向の長さは、上記駆動軸の回動方向と略直交方向の第1のベルト部の幅以上であり、上記一体回転部の長手方向の長さが、回動方向と略直交方向の第2のベルト部の幅以下である構成としても良い。
【0027】
上記の構成により、駆動軸を長手方向に上記本体に対して相対移動させることにより、一体回転部を第1及び第2のベルト部に接触させて両方を駆動することができる。また、上記自由回転部の長手方向の長さが第1のベルト部の幅以上であるから、第1のベルト部が自由回転部のみと接触するように駆動軸を位置させることができる。これにより、一体回転部を第2のベルト部のみに接触させて第2のベルト部のみを駆動することが可能となる。したがって、移乗支援機構を被介護者の下に、差し入れたり引き抜いたりする際には、第1及び第2のベルト部を駆動し、被介護者を移動させる際には第2のベルト部のみを駆動することを、簡単な機構により実現することができる。
【0028】
本発明の移乗支援機構は、上記第1の変位部を駆動する駆動手段が、空気圧によりその形状が制御される指状アクチュエータであってもよい。指状アクチュエータは、空気圧によりその形状が制御されるものであるから、被介護者の下に移乗支援機構を差し入れる作業における、被介護者への負担をさらに軽減することができる。また、指状アクチュエータによれば、被介護者へ加わる力を非常に精緻に制御することが可能となるから、移乗支援機構の差し入れ作業を、介護者による補助なく実現することができる。
【0029】
本発明の移乗支援機構は、上記移乗支援機構の長手方向に平行な側面の一方の略中央に第1のヒンジ部を備えており、上記移乗支援機構の長手方向略中央のヒンジ部以外の部分が離接可能であるものであってもよい。
【0030】
ヒンジ部で移乗支援機構を折り曲げて、長手方向に平行な側面を対向させた状態とすることにより、第1の変位部を備えた面の形状を変化させることができる。これにより、被介護者を移動させる方向に応じた形状として、移乗支援機構の取り扱い性を向上することができる。
【0031】
上記移乗支援機構は、上記移乗支援機構の長手方向の略中央を屈曲可能とする第2のヒンジ部を備えているものであってもよい。これにより、例えば、被介護者をベッドから移乗する先の車椅子がリクライニング機構を備えていない場合に、第2のヒンジ部を屈曲させて、当該車椅子の形状と移乗支援機構の形状とを一致させることができ、このような場合の移乗作業に好適に用いることができる。
【0032】
本発明の担架は、上記説明した本発明の移乗支援機構を備えていることを特徴としている。このため、本発明の移乗支援機構と同様に、被介護者を担架の上に載せる作業における、被介護者及び作業者(介護者)の負担を軽減することができる。
【0033】
本発明の移乗支援機構搭載ベッドは、上記説明した本発明の移乗支援機構を備えていることを特徴としている。このため、本発明の移乗支援機構に関して説明したとおり、移乗の際の被介護者及び介護者の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る移乗支援機構は、以上のように、本体の被介護者を載せる面に、当該面上で移動可能な第1の変位部を備えているので、被介護者の心理的な抵抗が少く且つスムーズに移乗することが可能である。これにより、移乗における被介護者及び介護者の負担を軽減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
介護の現場において、介助作業の中でも特にベッドから車椅子等への移乗を行うことが、介護者にとって肉体的な負担を強いられる作業として問題となっている。最近では、ベッドでの寝たきりの高齢者の生活は、身体機能の低下や褥瘡等の原因となるとされ、車椅子での生活が奨励される傾向にある。しかし、長時間車椅子に座ったままでの生活でも、褥瘡が発生する。褥瘡防止のためには、1時間おきに車椅子からベッドに戻るか、15分おきに臀部を座面から上げるようにすることが望ましい。
【0036】
褥瘡を防ぎ健康と生活の質の向上を実現するには、被介護者の意思に応じてより自由にベッドから車椅子等への移乗を行うことが必要である。しかし、特に全身の筋力が低下し、自力での移動が困難な被介護者を移乗するための介助するのは、介護者にとって非常な負担となる。このため、移乗介助の負担によって、多くの介護者が、腰を痛めるなどの健康上の問題を抱えているのが現状である。とりわけ、若く体力のある介護者でも腰を痛めるような重労働を、老老介護などで高齢者が介助するのは更に困難であり、移乗をあきらめて寝たきりの生活を余儀なくされるような事態も想定されるという問題がある。本発明は、上述したような問題を解決することを目的としてなされたものである。
【0037】
参考形態1〕
(移乗支援機構)
本発明の一参考形態について、図1(a)~(c)ないし図4(a)~(e)に基づいて説明すると以下の通りである。図1(a)~(c)は本参考形態の移乗支援板(移乗支援機構)10の概略を示す図である。図1(a)は、本参考形態の移乗支援板(移乗支援装置)10を備えたベッド20の概略を示しており、図1(b)は、図1(a)の移乗支援板10の拡大図である。
【0038】
図1(b)に示すように、移乗支援板10は、被介護者と車椅子との間に差し入れる際に、被介護者に接触する側の面を、本体13に対して平行移動可能とするベルト部(11と、車輪部(第1の変位部)12とを板状の本体13に備えており、本体13はアーム部21を介してベッド20に接続されている。
【0039】
図1(b)に示すように、本参考形態の移乗支援板10は、本体13の被介護者側の表面は、本体13に対して相対移動可能なベルト部11により覆われている。図1(c)は、図1(b)の移乗支援板10を、同図中の矢印A1方向から見た端面図である。1図(c)に示すように、移乗支援板10は、本体13の表面が本体13に対して相対移動可能なベルト部11により覆われているから、同図において矢印で示した方向にその表面が面全体として移動(回動)することができる。
【0040】
被介護者を移乗する際における移乗支援板10の移動方向に対して平行な方向に、当該ベルト部11が平行移動することができる。したがって、本参考形態の移乗支援板10を用いて、被介護者を移乗する際に、被介護者の下に移乗支援板10を差し込む作業及び抜き取る作業が容易となる(このことについては後に説明する)。
【0041】
移乗支援板10は、本体13のベッド20と接する側の面に車輪部12を備えている。これにより、移乗支援板10が、ベッド20上または後述する車椅子上を移動する際の移乗支援板10との摩擦を低減し、その移動を容易にすることができる。なお、本体13は、必ずしもその表面の全域がベルト部11により覆われていることは必要でないから、このようなベルト部11より覆われていない領域に車輪部12を設けることができる。
【0042】
(移乗支援機構搭載ベッド)
図2(a)・(b)は、本実施の一参考形態である移乗機構搭載ベッド25の概略構成を示す斜視図である。図2(a)は、移乗機構搭載ベッド25の斜視図であり、同図に示すとおり、移乗機構搭載ベッド25は、その表面に回動するベルト部11を取り付けた板状の移乗支援板10をアーム部21によりベッド20に搭載した構成である。
【0043】
図2(b)は、図2(a)の移乗機構搭載ベッド25の概略を示す、同図の矢印A2の方向から見た正面図である。同図に示すように移乗支援板10は、アーム部21により、同図中の中抜き矢印で示した方向に水平移動することができる。また、アーム部21と移乗支援板10との接合部は回動可能になっており、同図中に両側矢印で示した方向に回動させることにより、破線で示すとおり、ベッド20の横に収納することが可能である。
【0044】
なお、アーム部21は、移乗支援板10を、ベッド20上の被介護者が横たわる面と平行な方向に水平移動可能に保持する機構であり、公知の手段を用いることができる。また、移乗支援板10は、ギア機構を介してあるいは直接人の力で移動させても、電動モータ等の駆動力を用いて移動させてもよい。駆動力を用いる場合には、アーム部21の屈伸により移乗支援板10を駆動しても、車輪部12の回転駆動力により移乗支援板10を駆動してもよい。
【0045】
(車椅子)
続いて、本発明の移乗支援機構及び移乗支援機構搭載ベッドと共に、特に好適に使用されるリクライニング機構を備えたリクライニング車椅子30について、図3を参照して説明する。図3に示すように、リクライニング車椅子30のシート33の座面は、リクライニング可能な背もたれ部31と足上げ部32とを備えている。そして、図中に破線で示すように、リクライニング機能によりシート33を水平にすることができる。また、リクライニング車椅子30は、シート33の高さを調整する高さ調整機構(図示せず)をも備えている。このようなリクライニング車椅子30を用いることにより、移乗機構搭載ベッド25(図2参照)のベッド20の水平面の高さと、リクライニング機能により水平にしたシート33の高さを合わせることができる。
【0046】
参考形態の移乗支援板10(図1参照)によれは、このようなリクライニング車椅子30とベッド20との間での被介護者40の移乗において、移乗される被介護者40及び介護者の、双方の労力を大いに軽減することができる。リクライニング車椅子30の肘掛部34は、移乗の際の障害にならないように取り外し可能な構成となっている。
【0047】
(移乗支援機構による被介護者の移乗)
上記した移乗支援板10を備えた移乗機構搭載ベッド25及びリクライニング車椅子30により移乗支援システムを構成することができる。
【0048】
図4(a)~(e)は、上記移乗支援システムによる、被介護者40の移乗の手順を示す概略図である。なお、図4(a)~(e)では、便宜のためベッド20のアーム部21(図1参照)を省略している。
【0049】
図4(a)に示すように、リクライニング車椅子30をベッド20に横付けし、収納していた移乗支援板10をベッド20上に展開する。続いて、図4(b)に示すように、リクライニング車椅子30のシート33を水平に倒した状態で、シートの高さをベッド20の高さとを略一致させる。そして、移乗支援板10を図4(b)に示す中抜き矢印の方向に移動させることにより、移乗支援板10を被介護者40の下に差し入れることができる。
【0050】
図4(c)~(e)は、被介護者40の背中とリクライニング車椅子30のシート33との間に、移乗支援板10を差し入れる場合を説明する、被介護者40の足側から見た正面図である。図4(c)に示すように、同図に中抜き矢印で示した方向に移乗支援板10を移動させることにより、移乗支援板10を被介護者40の背中に差し入れる。ここで、移乗支援板10の被介護者40側表面が、回動可能なベルト部11により構成されているから、移乗支援板10を上記背中とシート33との間に差し入れる際に、ベルト部11の表面が移乗支援板10の移動方向と反対方向に平行移動する。このようにベルト部11が平行移動することにより、上記背中と移乗支援板10との間の摩擦力による抵抗を大幅に軽減することができる。
【0051】
すなわち、移乗支援板10を平行移動させることにより、移乗支援板10のベルト部11が被介護者40の背中と接した後、移乗支援板10が被介護者40の背中への差込が完了するまでの間、移乗支援板10のベルト部11は、図4(c)に線で示した片側矢印の方向に移動する。このように、ベルト部11によって、移乗支援板10を被介護者40の背中に差し込む際の摩擦抵抗を軽減できるから、被介護者40及び介護者の負担を軽減することが可能となる。
【0052】
ここでは、移乗支援板10のベルト部11を回転させる場合について示したが、移乗支援板10の被介護者40側面が移乗支援板10と同方向に移動するものであれば、上記説明したとおり、被介護者40の背中への差込における被介護者40及び介護者の負担を軽減することができる。また、移乗支援板10は、ベルト部11を駆動させる駆動手段(図示せず)を備えていることが好ましい。当該駆動手段によってベルト部11を図4(c)の、矢印の方向に駆動すれば、移乗の際の介護者及び被介護者40の負担をさらに軽減することができる。
【0053】
また、移乗支援板10が上記駆動手段を備える場合、駆動手段によるベルト部11の駆動速度は、移乗支援板10の移動速度と略同一とすることが好ましい。このように、ベルト部11の駆動速度を移乗支援板10の移動速度と合わせることにより、移乗支援板10が移動した分だけ、ベルト部11も移動することがなるから、さらにスムーズに移乗支援板10を被介護者40の背中とシート33との間に差し込むことができる。
【0054】
ベルト部11の駆動速度と移乗支援板10の移動速度と略同一とする構成は、特に限定されるものではないが、例えば、ベルト部11の駆動と車輪部12の駆動とを連動させる構成や、車輪部12の回転をセンサーなどで検知し、当該検知結果に基づいてベルト部11の駆動速度を制御する構成などが挙げられる。
【0055】
上記のように、被介護者40を移乗支援板10の上に載せた後、移乗支援板10をその上に移乗する被介護者40を乗せたまま状態で、図4(d)に示すように、移乗支援板10をリクライニング車椅子30からベッド20上へと移動させる。この移動の際に移乗支援板10のベルト部11が回転すると、被介護者40が移乗支援板10上からずれてしまう可能性があるから、ベルト部11が回転しないようにする必要がある。このため、ベルト部11が自由回転可能なものである場合には、当該自由回転を停止するストッパーを備えることが好ましい。これにより、ベルト部11が回転することを防止できる。あるいは、ベルト部11を電気モータなどにより回転駆動する場合には、移乗支援板10を上記のようにして被介護者40の背中側に差し込んで、移乗支援板10上に被介護者40を搭載した後には、ベルト部11の回転駆動を停止することとする。
【0056】
被介護者40を搭載した状態の移乗支援板10を、図4(d)に示す中抜き矢印の方向に移動させることにより、被介護者40をリクライニング車椅子30からベッド20に移動することができる。そして、図4(e)に示すように、移乗支援板10を同図に中抜き矢印で示す方向に移動させて、同図に示すように、被介護者40を移乗支援板10からベッド20上へ降ろす。例えば、移乗支援板10のベルト部11を自由回転可能な構成とした場合、ベルト部11の自由回転を停止するストッパーを外してベルト部11を自由回転可能とする。これにより、移乗支援板10を被介護者40の背中とベッド20との間から引き抜く際の、上記背中と移乗支援板10との摩擦力による抵抗をベルト部11の回転運動により低減することができるから、移乗支援板10の引き抜きにおける、被介護者40及び介護者双方の負担を軽減すること可能となる。
【0057】
また、上記移乗支援板10が、ベルト部11を駆動する駆動手段を備える場合には、ベルト部11の駆動方向を、図4(c)を参照して説明した方向と同じ方向に駆動することにより、引き抜きにおける被介護者40および介護者の負担をさらに軽減することができる。なお、移乗支援板10が上記駆動手段を備える構成の場合、上記説明した差し込みと同様に、駆動手段によるベルト部11の駆動速度を、移乗支援板10の移動速度と略同一とすることが好ましい。このように、ベルト部11の駆動速度を移乗支援板10の移動速度と合わせることにより、移乗支援板10が移動した分だけ、ベルト部11も移動することになるから、さらにスムーズに移乗支援板10を被介護者40の背中とベッド20との間から、移乗支援板10を引き抜くことができる。
【0058】
〔実施の形態
本発明の実施形態について、図5(a)~(d)ないし図7(a)~(d)に基づいて説明すると以下の通りである。なお、上述した参考形態において説明した部材と同じ機能の部材には同一の番号を付して説明を省略する。
【0059】
図5(a)は、本実施の形態の移乗支援板(移乗支援機構)50を備えた、移乗機構搭載ベッド55の概略を示す斜視図である。同図に示すように、移乗機構搭載ベッド55は、アーム部21を介して移乗支援板50がベッド20に設けられた構成である。移乗機構搭載ベッド55は、移乗機構搭載ベッド25と同様、移乗支援板50をベッド20の横に収納することができる(図2(b)参照)。
【0060】
図5(b)は、図5(a)に示す移乗支援板50の概略構成を示す斜視図である。同図に示すように、本実施の形態の移乗支援板50は、板状の本体53に、第1のベルト部51と第2のベルト部52とが交互に設けられており、これらを同時に又は一方を選択して駆動可能な駆動軸(駆動手段)54を備えている点において、参考形態1の移乗支援板10とは異なっている。第1のベルト部(第1の変位部)51及び第2のベルト部(第2の変位部)52は、第1のベルト部51が本体53の上面すなわち被介護者40を搭載する面に、第2のベルト部52が本体53の下面すなわち被介護者40(図4(a)~(d)参照)を移乗する際にベッド20側となる面に、それぞれ位置するように交互に配置されている。
【0061】
図5(b)のB1-B1’矢視断面図及びB2-B2’矢視断面図を、この順に図5(c)及び図5(d)に示す。これらの図に示すように、駆動軸54は、第1のベルト部51の外側面、及び第2のベルト部52の内側面において接している。これにより、駆動軸54を回転駆動することにより、その駆動力を第1のベルト部51及び第2のベルト部52の両方に伝達するから、これらを相互に関連させて駆動することができる。
【0062】
例えば、駆動軸54を時計回りに回転させることにより、第1のベルト部51を反時計回りに、第2のベルト部52を時計回りに回転させることができる(回転方向を、図5(c)及び図5(d)に矢印を用いて示している。)このように、移乗支援板50では、駆動軸54の回転により、第1のベルト部51と第2のベルト部52とを反対方向に、同じ速さで回転させることができる。これにより、移乗支援板50を、被介護者40と車椅子30のシート33との間にスムーズに差し入れることが可能となり(図4(c)参照)、スムーズに移乗支援板50の上に、被介護者40の体を載せることが可能になる。この結果、被介護者40及び介護者への負担を軽減することができる。
【0063】
図6(a)は、移乗支援板50を構成する第1のベルト部51と、第2のベルト部52と、本体53との位置関係を説明するための斜視図である。同図に示すように、第1のベルト部51と第2のベルト部52とは、本体53の反対側の面に設けられており、後述するとおり、被介護者40を移乗する際には、第1のベルト部51が被介護者40に接し、第2のベルト部52がリクライニング車椅子30又はベッド20に接する。また、駆動軸54は、その長手方向に移動させて、本体53との相対的な位置を変化可能となっている。このため、後述するように、第1のベルト部51と第2のベルト部52の両方駆動、何れか一方の駆動を、駆動軸54の位置により選択することが可能である。
【0064】
図6(b)は、駆動軸54の構造を説明する斜視図である。同図に示すように駆動軸54は、駆動軸54と一体に回転する一体回転部54Aと、駆動軸54が回転する場合に当該回転の影響を受けずに自由回転可能なフリー回転部(自由回転部)54Bとが交互に設けられている構成である。本実施の形態の移乗支援板50では、一体回転部54A・フリー回転部54Bの個数と、第2のベルト部52・第1のベルト部51の個数とが、この順で等しく、また、一体回転部54A・フリー回転部54Bそれぞれの長手方向の幅と、及び第2のベルト部52・第1のベルト部51のベルト回転方向と直交する方向の幅とが、この順で略同じ大きさである。
【0065】
このため、駆動軸54の本体53に対する位置を変化させることにより、第1のベルト部51及び第2のベルト部52を選択的に駆動することが可能である。すなわち、第1のベルト部51及び第2のベルト部52の両方を駆動する場合には、図7(a)に示すように、両方のベルト部に一体回転部54Aが接する位置に駆動軸54を配置すればよい。
【0066】
一方、図7(b)に示すように、駆動軸54の位置を変化させて、第2のベルト部52のみに一体回転部54Aを接触させることにより、駆動軸54の回転による駆動力を第2のベルト部52のみに伝達して選択的に駆動することができる。なお、一体回転部54Aを第1のベルト部51のみに接触させることにより、第1のベルト部51のみを駆動することも可能である。
【0067】
本実施の形態においては、移乗支援板50を構成する上記4つの要素の幅を略同一しているが、これに限られるものではない。例えば、フリー回転部54Bの幅を一体回転部54Aの幅以上、すなわち第1のベルト部51及び第2のベルト部52の幅以上とすることにより、第1のベルト部51及び第2のベルト部52のうち一方のみに、一体回転部54Aを接触させることができる。
【0068】
上記説明したとおり、駆動軸54により、第1のベルト部51及び第2のベルト部52を駆動することとすれば、移乗支援板50を簡単な構成によりコンパクトに実現することができ、また、両ベルト部の移乗支援板10の表面における移動速度を同一にすることができる。なお、第1のベルト部51と第2のベルト部52とは、別々の駆動手段により駆動する構成としてもよい。
【0069】
続いて、移乗支援板50による被介護者40の移乗方法を、図8(a)~(b)を用いて説明する。図8(a)においては、移乗支援板50を同図に、中抜き片側矢印で示す方向に移動して被介護者40とリクライニング車椅子30のシート33との間に差し込む場合における、移乗支援板50表面の第1のベルト部51及び第2のベルト部52の駆動方向を矢印で示している。同図に示すように、第1のベルト部51と第2のベルト部52とが反対方向に回転してており、移乗支援板50の表面は何れも移乗支援板50の移動方向とは逆向きに移動している。また、第1のベルト部51及び第2のベルト部52は何れも駆動軸54の回転により直接駆動されているから、表面の移動の速さが等しくなり、移乗支援板50は被介護者40とリクライニング車椅子30との間にスムーズに侵入することができる。この場合には、図7(a)に示すように、第1のベルト部51及び第2のベルト部52の両方に駆動軸54の駆動力が伝達されるようにする。
【0070】
一方、図8(b)は、移乗支援板50上に被介護者40を搭載した後に、リクライニング車椅子30からベッド20へ被介護者40を移乗する場合を示している。同図に示すように、移乗支援板50を被介護者40の下に差し込む際とは、反対方向に駆動軸54を回転させてより第1のベルト部52を回転駆動することにより、移乗支援板50をリクライニング車椅子30からベッド20へと移動させて、被介護者40を移動させる。この移動においては、第1のベルト部51を回転駆動する必要がないため、図7(b)に示すように、駆動軸54の回転による駆動力が第2のベルト部52にのみ伝達されるようにする。
【0071】
なお、被介護者40をベッド20上の所望の位置に移動させた後には、駆動軸54の位置を移動させて、再び一体回転部54Aが第1のベルト部51及び第2のベルト部52の両方に接する位置(図7(a)参照)にする。そして、移乗支援板50を被介護者40の下に差し込む際と同じ方向に駆動軸54を回転させることにより、移乗支援板50を被介護者40の下からスムーズに引き出すことが可能である。
【0072】
〔実施の形態
本発明の他の実施形態について、図9(a)~(d)に基づいて説明すると以下の通りである。なお、上述した実施の形態において説明した部材と同じ機能の部材には同一の番号を付して説明を省略する。
【0073】
本実施の形態の移乗支援板60は、上記説明した移乗支援板50を移乗機構搭載ベッド55から独立させて、単独で移乗用具として使用するものである。すなわち、介護の現場などで用いることを想定して、図9(a)~(b)に示すように、移乗支援板60のみを独立させ、より簡便な移乗用具として使用する。
【0074】
図9(a)は、移乗支援板60の概略構成を示している。同図に示すように、移乗支援板60は、移乗支援板50と同様、第1のベルト部51と第2のベルト部52とが交互に設けられた構成である。移乗支援板60の長手方向の両端には、それぞれ取手部65が設けられている。また、移乗支援板60は、その長手方向に平行な両側面のうちの一方にヒンジ部(第1のヒンジ部)66を備えており、ヒンジ部66以外の移乗支援板60の略中央の部分が分離可能な構成となっている。図9(a)に示すように、移乗支援板60は、ヒンジ部66を中心にして、移乗支援板60の面方向に回転するようにして、その略中央から分離し、ヒンジ部66を備える側の側面が対向するように折り曲げ可能な構成となっている。
【0075】
第1のベルト部51及び第2のベルト部52は、手動又はバッテリー駆動により回転駆動することができる。また、図示しないが、移乗支援板50と同様に、その内部に駆動軸54を設ける構成とすれば、第1のベルト部51と第2のベルト部52とを関連させて回転すること、あるいは選択的に一方のみを回転させることができる。なお、駆動軸54は、手動、電動のいずれにより駆動する構成としてもよい。
【0076】
図9(b)は、図9(a)に示した移乗支援板60を用いて、介護者70がベッド20上の被介護者40を、左右に(ベッドの短手方向)に移動させる構成を示している。この手順については、移乗支援板60がベッド20から独立していること以外は、前記した実施の形態において説明した手順と同様であるので説明を省略する。
【0077】
図9(c)は、ヒンジ部66から折り曲げた状態の移乗支援板60の概略を示す正面図である。同図に示すように、移乗支援板60は折り曲げられた状態において、移乗支援板60のヒンジ部66を備える側の側面が、第1のベルト部51同士、第2のベルト部52同士あるいは取手部65同士が対向するように構成されている。
【0078】
図9(d)は、折り曲げられた状態の支援板60を用いて被介護者の移動を説明する正面図である。同図に示すように、
(1)移乗支援板60を被介護者40の足元から、第1のベルト部51及び第2のベルト部52を回転させながら、腰から背中の部分まで差し入れる。
(2)この状態で、介護者70は被介護者40の頭を支えながら、第1のベルト部51の回転を停止させて、第2のベルト部52のみを回転させることにより、被介護者40のベッド20上での上下方向の移動を行うことができる。
【0079】
このように、移乗支援板60を用いることによって、介護者70は被介護者40の頭を支えるといった軽い負担のみで、被介護者40をベッド20の上下方向(ベッドの長手方向)に移動させることができる。
【0080】
〔実施の形態
本発明の他の実施形態について、図10及び図11に基づいて説明すると以下の通りである。なお、上述した実施の形態において説明した部材と同じ機能の部材には同一の番号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施の形態の移乗支援板80は、移乗支援板60と同様、単独で移乗用具として使用するものであるが、その中央部のヒンジ部(第2のヒンジ部)86から移乗支援板80が折れ曲がり、移乗支援板80の被介護者40と接触する面あるいは、その反対の面同士が接触するように折り畳み可能な点で相違している。これにより、移乗支援板80を非常にコンパクトに折り畳むことができるから、リクライニング車椅子30による移動中には、リクライニング車椅子30の収納部35に移乗支援板80を収納することができる。したがって、水平リクライニング及び座面高さの調整が可能なリクライニング車椅子30と移乗支援板80とを組み合わせて使用することにより、ベッド20が高さ調節機能のないものであっても、被介護者40の移乗における負担を軽減することができる。このため、移乗支援板80のような折り畳み可能なものは、病院などにおける利用に特に適している。
【0082】
図11は、リクライニング機構のない一般的な車椅子36と、背上げ機能および高さ調整機能のついたベッドとの間の被介護者40の移乗を、移乗支援板80を用いて実施する場合を説明する斜視図である。同図に示すように、移乗支援板80のヒンジ部86をフレキシブルに曲がる構造とすることにより、上記のような移乗において、被介護者40及び介護者70の負担を軽減することができる。なお、フレキシブルに曲がるヒンジ部86としては、特に限定されるものではなく公知の構成を採用すればよい。
【0083】
上記のような中央部でフレキシブルに曲がる構造の移乗支援板80を用いることにより、以下のようにして介護者70は被介護者40をベッド20から車椅子36に移乗することができる。
(1)ベッド20を水平にして、移乗支援板80を被介護者40の下に滑り込ませる。
(2)ベッド20の高さと車椅子36の座面の高さとを合わせ、ベッド20の背上げ機能により被介護者40の上半身を起こす。
(3)介護者70は、移乗支援板80の上部の取手部65を持って、被介護者40の上半身を支えながら移乗支援板80を横方向(車椅子36の方向)にスライドさせる。
以上のようにすれば、被介護者40に負担をかけることなく、介護者70は被介護者40をベッド20から車椅子36に移乗させることができる。
【0084】
〔実施の形態
本発明の他の実施形態について、図12(a)~(b)及び図13(a)~(d)に基づいて説明すると以下の通りである。なお、上述した実施の形態において説明した部材と同じ機能の部材には同一の番号を付して説明を省略する。
【0085】
図12(a)は、本発明の移乗支援機構を組み込んだ、救急用担架90の概略構成を説明する斜視図である。同図に示すように、救急用担架90は、第1のベルト部51および第2のベルト部52を備えており、被介護者40を載せる面とは反対側に、車輪98を備えた脚部99を有している。また、救急用担架90の第1のベルト部51及び第2のベルト部52の構成は、移乗支援板50と共通であるが、担架として用いるため、第1のベルト部51及び第2のベルト部52のうち、救急用担架90の長手方向と平行な両側部97が、被介護者40を載せる面に対して立ち上がる構成となっている。また、取手部65も同様に、被介護者40を載せる面に対して立ち上がる構成となっている。救急用担架90の脚部99を伸ばし、両側部97を立ち上げた状態を図12(b)に示す。
【0086】
前記各実施の形態において説明した移乗支援板を救急用担架90に組み込むことにより、地面に倒れた人を持ち上げる際の介護者、被介護者の負担を軽減することが可能となる。以下、救急用担架90により被介護者40を持ち上げる方法について説明する。
【0087】
図13(a)~(d)は、被介護者40の下に救急用担架90を滑り込ませた後、持ち上げる方法を説明する図である。図13(a)に示すように、倒れている被介護者40の横に救急用担架90をおき、第1のベルト部51及び第2のベルト部52を回転させながら、被介護者40の下に救急用担架90を滑り込ませる。なお、上記滑り込ませる際の、第1のベルト部51及び第2のベルト部52の回転方向、回転駆動方法などは、上記移乗支援板50あるいは移乗支援板60と同様である。
【0088】
続いて、図13(b)に示すように、救急用担架90の両側部97を立ち上げて被介護者40の体が救急用担架90から落ちないようにした状態で、救急用担架90の脚部99を伸ばし被介護者40を持ち上げる。このようにして、図13(d)に示すように、被介護者40を救急用担架90によって移送することが可能となる。
【0089】
以上のように、救急用担架90は、本発明の移乗支援機構を備えているから、被介護者40を救急用担架90に載せる際に、被介護者40及び作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0090】
参考形態
本発明の他の参考形態について、図14~図17に基づいて説明すると以下の通りである。なお、上述した実施の形態において説明した部材と同じ機能の部材には同一の番号を付して説明を省略する。
【0091】
参考形態の移乗支援板(移乗支援機構)100は、被介護者40と接する面に、アクチュエータとしてベルト(ベルト部11、第1のベルト部51)ではなく、空気圧により伸縮する指状アクチュエータ101を備えている点において、前記参考形態1および実施の形態の移乗支援板10・50とは、異なっている。前記した参考形態1では、ベルト部11、第1のベルト部51を本体13表面に対して移動可能にすること、あるいは当該ベルト部を電動モータ等によって駆動することにより、被介護者40を移乗支援板10・50に搭載する際の被介護者40及び介護者70の負担軽減を実現していた。
【0092】
これに対し、本参考形態の移乗支援板100は、介護者70による補助が全くない場合であっても、指状アクチュエータ101によって被介護者40に負担をかけることなく移乗することを実現するものである。
【0093】
被介護者40を移乗支援板100に搭載する場合の指状アクチュエータ101の具体的な動きを、図15(a)~(d)に示す。図15(a)中に矢印を用いて示す方向に移乗支援板100を動かして、指状アクチュエータ101が被介護者40の身体の一部に接した後、当該指状アクチュエータ101を図15(b)の矢印で示す方向に動かす。これにより、被介護者40を同図中に、中抜き矢印で示した方向に移動させることができる。
【0094】
続いて、図15(c)・(d)に示すように、図15(a)・(b)において被介護者40を移動する役割を果たした指状アクチュエータ101とは別の指状アクチュエータ101を用いて被介護者40を移動させることができる。
【0095】
続いて、図16に基づいて、指状アクチュエータ101内部の構成を説明する。同図に示すように、本参考形態の移乗支援板100が備えている指状アクチュエータ101の内部には、4つのバルーン状空気圧アクチュエータ101Aと、仕切り板101Bと、バルーン状空気圧アクチュエータ101Cとが備えられている。バルーン状空気圧アクチュエータ101Aは、移乗支援板100本体側に4つ並ぶように設けられており、バルーン状空気圧アクチュエータ101Aの移乗支援板100本体とは反対側には、仕切り板101Bを介して、バルーン状空気圧アクチュエータ101Cが設けられている。
【0096】
上記のような構成にすることにより、4つの空気圧アクチュエータ101Aの空気圧を変化させることにより、指状アクチュエータ101の向き及び伸縮を制御することができる。またバルーン状空気圧アクチュエータ101Cの空気圧を変化させることにより、指状アクチュエータ101の伸縮を制御することができる。よって、指状アクチュエータ101の動きにより、介護者70の手を借りることなく、被介護者40を移乗支援板100に載せること、あるいは被介護者40の下に移乗支援板100を差し込むことができる。また、指状アクチュエータ101は空気圧により、その動きを制御するものであるから、ベルト部の回転運動によるものに比べて、さらに被介護者40に対する負担を軽減することができる。
【0097】
図17に、移乗支援板100を用いた、リクライニング車椅子30からベッド20に被介護者40を移乗する際の状態を説明する斜視図を示す。同図に示すように、移乗支援板100によれば、指状アクチュエータ101の制御により、介護者70の補助がない場合にも、被介護者40の移乗が可能となる。
【0098】
以上のように、本発明の移乗支援機構の表面に実装するアクチュエータの機構として、ベルト状のもの及び複数の小さな突起状のアクチュエータを用いることによって、移乗支援機構への被介護者の体の乗せ降ろしの際の、被介護者及び介護者の負担を軽減することができる。また、移乗支援機構の横方向の移動速度と、アクチュエータの動きとを同期させることにより、被介護者に抵抗感を与えず、移乗支援機構の上への乗せ降ろしを、更にスムーズにすることが可能となる。
【0099】
また、スムーズな被介護者の移乗のためには、アクチュエータの機構のみならず、その制御手法が重要である。特に、人の体は不定形であり、また麻痺や緊張など障害の特性など個人によって状態が異なるから、高い信頼性とスムーズな移乗を実現するには、適応学習制御を用いることが有効である。ここで、適応学習制御とは、使用状態に応じてアクチュエータに加える力や速度などの制御量を調整し、様々な使用条件において学習を行い、予め動作の設定を行う必要なく、機器を使用する中で適切な動作を獲得していくといったことを、マイクロコンピュータに実装した制御アルゴリズムによって実現するものである。
【0100】
適応学習制御アルゴリズムの実装によって、単一の機構を用いて個々の様々な状態に適切に対応することができる福祉機器が実現できる。これにより、機器の量産によるコストの低減と、適応学習による多様な個々への対応が両立できると考える。
【0101】
なお、現在使用されている福祉機器の多くは金属及びプラスチック製のものであるが、福祉機器は家庭内で用いられることが多く、心理的な親和感や家具との調和を考慮すると、福祉機器の構成素材としては金属やプラスチックよりもむしろ木材が優れていると考えられる。このため、本発明の移乗私見機構及び移乗支援機構搭載ベッドの材料としては、可能な部分については木材を用いることが好ましい。
【0102】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態および参考形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の移乗支援機構によれば、被介護者及び介護者への負担を欠けることなく、例えばベッドから車椅子へ移乗することが可能であり、特に、自立的に動作できない被介護者の移乗に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の一参考形態である移乗支援機構の概略を示しており、(a)は本発明の移乗支援機構がベッドに備えられた状態を示す斜視図、(b)は本発明の移乗支援機構を示す斜視図、(c)は(b)の移乗支援機構を図中のA1方向から見た端面図である。
【図2】本発明の一参考形態である移乗支援機構搭載ベッドの概略を示しており、(a)は斜視図、(b)は(a)を図中のA2方向から見た概略を示す正面図である。
【図3】リクライニング機構を備えたリクライニング車椅子の概略を示す側面図である。
【図4】移乗機構搭載ベッド及びリクライニング車椅子よりなる移乗支援システムによる、被介護者の移乗の手順を示す概略図であり、(a)、(b)は、被介護者を移乗支援板に搭載するまでを説明する斜視図を示し、(c)~(e)は、被介護者を移乗支援板に搭載した後、ベッドに移乗するまでを説明する、被介護者の足側からみた正面図である。
【図5】(a)は、本実施の形態の移乗支援板を備えた移乗機構搭載ベッドの概略を示す斜視図であり、(b)本実施の形態の移乗支援板の概略を示す斜視図であり、(c)は(b)のB1-B1’矢視断面図であり、(e)は(b)のB2-B2’矢視断面図である。
【図6】移乗支援板の駆動軸の構造を説明するための図であり、(a)は移乗支援板50を構成する第1のベルト部と、第2のベルト部と、本体との位置関係を説明するための斜視図であり、(b)は駆動軸の斜視図である。
【図7】第1及び第2のベルト部の両方を駆動する場合の駆動軸と第1及び第2のベルト部との位置関係を示す正面図であり、(a)は第1及び第2のベルト部の両方を駆動する場合、(b)は第2のベルト部のみを駆動する場合を示している。
【図8】(a)は移乗支援板を移動させる場合における、移乗支援板表面の第1のベルト部及び第2のベルト部の駆動方向を説明する正面図であり、(a)は移乗支援板を被介護者とリクライニング車椅子のシートとの間に差し込む場合、(b)は移乗支援板上に被介護者を搭載した後にリクライニング車椅子からベッドへの移乗を示している。
【図9】(a)は移乗支援板の概略構成を示す正面図であり、(b)は(a)の移乗支援板を用いた被介護者の移動を説明する正面図である。(c)はヒンジ部から折り曲げた状態の移乗支援板の概略を示す正面図であり、(d)は(c)の移乗支援板を用いた被介護者の移動を説明する正面図である。
【図10】本発明の他の実施形態である移乗支援板の構成及びその使用方法を説明する概略図である。
【図11】本発明の他の実施形態である移乗支援板の構成及びその使用方法を説明する概略図である。
【図12】(a)は、本発明の移乗支援機構を組み込んだ救急用担架の概略構成を説明する斜視図であり、(b)は救急用担架の脚部を伸ばし、両側部を立ち上げた状態の斜視図である。
【図13】(a)~(d)は、図13(a)の救急用担架を被介護者の下滑り込ませた後、持ち上げる方法を説明する図である。
【図14】本発明の他の一参考形態である指状アクチュエータを備えた移乗支援板の斜視図である。
【図15】(a)~(d)は、図15の移乗支援板に被介護者を載せる際の指状アクチュエータの動きを説明する図である。
【図16】図14の移乗支援板の指状アクチュエータにおける内部構造を説明する図である。
【図17】図14の移乗支援板による被介護者の移乗を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0105】
10、50、60、80、100 移乗支援板(移乗支援機構)
11 ベルト部(第1の変位部、第1のベルト部)
12 車輪部(第2の変位部)
13、53 本体
25、55 移乗機構搭載ベッド
51 第1のベルト部51(第1の変位部)
52 第2のベルト部52(第2の変位部)
54 駆動軸(駆動手段)
54A 一体回転部
54B フリー回転部(自由回転部)
66 ヒンジ部(第1のヒンジ部)
86 ヒンジ部(第2のヒンジ部)
90 救急用担架(担架)
101 指状アクチュエータ(第1の変位部)
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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