TOP > 国内特許検索 > 閉じたき裂の定量評価法、及び閉じたき裂の定量評価装置 > 明細書

明細書 :閉じたき裂の定量評価法、及び閉じたき裂の定量評価装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4538629号 (P4538629)
公開番号 特開2005-315636 (P2005-315636A)
登録日 平成22年7月2日(2010.7.2)
発行日 平成22年9月8日(2010.9.8)
公開日 平成17年11月10日(2005.11.10)
発明の名称または考案の名称 閉じたき裂の定量評価法、及び閉じたき裂の定量評価装置
国際特許分類 G01N  29/04        (2006.01)
G01B  17/00        (2006.01)
G01N  29/44        (2006.01)
FI G01N 29/04 502
G01B 17/00 A
G01N 29/22 504
請求項の数または発明の数 18
全頁数 11
出願番号 特願2004-131540 (P2004-131540)
出願日 平成16年4月27日(2004.4.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年11月12日 超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム論文委員会発行の「超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム論文集 第24巻」に発表
特許法第30条第1項適用 平成15年10月29日 社団法人日本材料学会発行の「第47回 日本学術会議材料研究連合講演会論文集」に発表
審査請求日 平成19年4月16日(2007.4.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】山中 一司
【氏名】三原 毅
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】鹿戸 俊介
参考文献・文献 特開2001-021542(JP,A)
特開昭58-131560(JP,A)
特開昭61-184454(JP,A)
特開2002-301072(JP,A)
特開平09-257773(JP,A)
特開平11-137547(JP,A)
特開2004-057653(JP,A)
特開昭59-171540(JP,A)
三原毅 他2名,非線形超音波を用いた疲労き裂開閉口挙動の解析,第11回機械材料・材料加工技術講演会講演論文集,日本,社団法人 日本機械学会,2003年10月17日,263-264
調査した分野 G01N 29/04
G01B 17/00
G01N 29/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
開いたき裂及び閉じたき裂を連続して含むき裂に対して、所定の送信器より第1の超音波を照射し、前記開いたき裂の先端において線形散乱波を生成させるとともに、所定の受信器において受信する工程と、
前記き裂に対して、前記送信器より、前記第1の超音波よりも振幅が大きく、前記第1の超音波と同じ周波数を有する第2の超音波を照射し、前記閉じたき裂の先端において分調波を生成させるとともに、前記受信器において受信する工程と、
前記線形散乱波と前記分調波との伝搬時間差を計測する工程と、
前記伝搬時間差に基づいて、前記閉じたき裂の深さを導出する工程と、
を具えることを特徴とする、閉じたき裂の定量評価法。
【請求項2】
前記導出において、前記伝搬時間差は、前記第1の超音波及び前記線形散乱波の経路と前記第2の超音波及び前記分調波の経路との差分を前記第1の超音波及び前記第2の超音波の速度で除して得た値と等しいとすることを特徴とする、請求項1に記載の閉じたき裂の定量評価法。
【請求項3】
先に計測した前記第1の超音波及び前記線形散乱波と前記第2の超音波及び前記分調波との伝搬時間差と、閉じたき裂の深さとの相対関係を示すデータと、新たに計測した前記伝搬時間差のデータとを比較することによって、前記閉じたき裂の前記深さを推定するようにしたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の閉じたき裂の定量評価法。
【請求項4】
前記送信器、前記受信器及び前記き裂間の相対的位置関係と、前記伝搬時間差とから前記閉じたき裂の前記深さを導出するようにしたことを特徴とする、請求項2に記載の閉じたき裂の定量評価法。
【請求項5】
前記送信器の、前記き裂から水平方向における距離をLとし、前記受信器の、前記き裂からの水平方向における距離をLとし、前記第1の超音波及び前記線形散乱波と前記第2の超音波及び前記分調波との前記伝搬時間差をΔtとし、前記線形散乱波の前記受信器に対する到達時間をtとし、前記第1の超音波及び前記第2の超音波の速度をVとした場合において、前記閉じたき裂の前記深さDは、
D=[(Vt/2)-L1/2-[(V(t-Δt)/2)-L1/2
なる関係式で表されることを特徴とする、請求項4に記載の閉じたき裂の定量評価法。
【請求項6】
前記送信器及び前記受信器は前記き裂に対して同じ側に設け、前記第1の超音波及び前記第2の超音波の前記照射と、前記線形散乱波及び前記分調波の受信とを前記き裂に対して同じ側で実施することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載の閉じたき裂の定量評価法。
【請求項7】
前記送信器及び前記受信器は前記き裂を挟むようにして相対向させて設け、前記第1の超音波及び前記第2の超音波の前記照射と、前記線形散乱波及び前記分調波の受信とを前記き裂を挟むようにして相対向させて実施することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載の閉じたき裂の定量評価法。
【請求項8】
前記第1の超音波及び前記第2の超音波は、その波形がガウス関数と正弦波との積で表される波形を呈することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一に記載の閉じたき裂の定量評価法。
【請求項9】
開いたき裂及び閉じたき裂を連続して含むき裂に対して、所定の送信器より第1の超音波を照射し、前記開いたき裂の先端において線形散乱波を生成させるとともに、所定の受信器において受信し、前記開いたき裂の映像を得る工程と、
前記き裂に対して、前記送信器より、前記第1の超音波よりも振幅が大きく、前記第1の超音波と同じ周波数を有する第2の超音波を照射し、前記閉じたき裂の先端において分調波を生成させるとともに、前記受信器において受信し、前記開いたき裂及び前記閉じたき裂を含む前記き裂の映像を得る工程と、
前記開いたき裂の前記映像及び前記き裂の前記映像から、前記閉じたき裂の深さを計測する工程と、
を具えることを特徴とする、閉じたき裂の定量評価法。
【請求項10】
第1の超音波、及びこの第1の超音波よりも振幅が大きく、前記第1の超音波と同じ周波数を有する第2の超音波を生成するための波形生成装置と、
前記第1の超音波及び前記第2の超音波を開いたき裂及び閉じたき裂を連続して含むき裂に対して照射するための送信器と、
前記第1の超音波の照射により、前記開いたき裂の先端部で生成した線形散乱波、及び前記第2の超音波の照射により、前記閉じたき裂の先端部で生成した分調波を受信するための受信器と、
前記線形散乱波と前記分調波との伝搬時間差を計測するための波形解析装置とを具え、
前記伝搬時間差に基づいて、前記閉じたき裂の深さを導出するようにしたことを特徴とする、閉じたき裂の定量評価装置。
【請求項11】
前記導出において、前記伝搬時間差は、前記第1の超音波及び前記線形散乱波の経路と前記第2の超音波及び前記分調波の経路との差分を前記第1の超音波及び前記第2の超音波の速度で除して得た値と等しいとすることを特徴とする、請求項10に記載の閉じたき裂の定量評価装置。
【請求項12】
先に計測した前記第1の超音波及び前記線形散乱波と前記第2の超音波及び前記分調波との伝搬時間差と、閉じたき裂の深さとの相対関係を示すデータと、新たに計測した前記伝搬時間差のデータとを比較することによって、前記閉じたき裂の前記深さを推定するようにしたことを特徴とする、請求項10又は11に記載の閉じたき裂の定量評価装置。
【請求項13】
前記送信器、前記受信器及び前記き裂間の相対的位置関係と、前記伝搬時間差とから前記閉じたき裂の前記深さを導出するようにしたことを特徴とする、請求項11に記載の閉じたき裂の定量評価装置。
【請求項14】
前記送信器の、前記き裂から水平方向における距離をLとし、前記受信器の、前記き裂からの水平方向における距離をLとし、前記第1の超音波及び前記線形散乱波と前記第2の超音波及び前記分調波との前記伝搬時間差をΔtとし、前記線形散乱波の前記受信器に対する到達時間をtとし、前記第1の超音波及び前記第2の超音波の速度をVとした場合において、前記閉じたき裂の前記深さDを、
D=[(Vt/2)-L1/2-[(V(t-Δt)/2)-L1/2
なる関係式から導出するようにしたことを特徴とする、請求項13に記載の閉じたき裂の定量評価装置。
【請求項15】
前記送信器及び前記受信器は前記き裂に対して同じ側に設け、前記第1の超音波及び前記第2の超音波の前記照射と、前記線形散乱波及び前記分調波の受信とを前記き裂に対して同じ側で実施するようにしたことを特徴とする、請求項10~14のいずれか一に記載のき裂の定量評価装置。
【請求項16】
前記送信器及び前記受信器は前記き裂を挟むようにして相対向させて設け、前記第1の超音波及び前記第2の超音波の前記照射と、前記線形散乱波及び前記分調波の受信とを前記き裂を挟むようにして相対向させて実施するようにしたことを特徴とする、請求項10~15のいずれか一に記載の閉じたき裂の定量評価装置。
【請求項17】
前記波形生成装置は、波形がガウス関数と正弦波との積で表される波形を呈するようにして、前記第1の超音波及び前記第2の超音波を生成するようにしたことを特徴とする、請求項10~16のいずれか一に記載の閉じたき裂の定量評価装置。
【請求項18】
第1の超音波、及びこの第1の超音波よりも振幅が大きく、前記第1の超音波と同じ周波数を有する第2の超音波を生成するための波形生成装置と、
前記第1の超音波及び前記第2の超音波を開いたき裂及び閉じたき裂を連続して含むき裂に対して照射するための送信器と、
前記第1の超音波の照射により、前記開いたき裂の先端部で生成した線形散乱波、及び前記第2の超音波の照射により、前記閉じたき裂の先端部で生成した分調波を受信するための受信器と、
前記線形散乱波に基づいて前記開いたき裂の画像を得るとともに、前記分調波に基づいて前記閉じたき裂の画像を得るための画像処理装置と、
を具えることを特徴とする、閉じたき裂の定量評価装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、閉じたき裂の定量評価法、及び閉じたき裂の定量評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉、航空機、タービンなど重要機器の安全性確保には、破壊の原因となるき裂や不完全な接合面を超音波の反射や散乱波によって検出し、その大きさを正確に評価しつつ危険性があれば交換する安全管理が行われている。しかし、様々な原因でき裂面を閉じさせるき裂閉口応力(J.H.Kim and S.B. Lee, Int. J. fatigue 23 (2001) S247等)が大きい疲労き裂や、応力腐食割れに起因したき裂面に酸化膜が形成された閉じたき裂などにおいては、超音波の反射・散乱が小さく、き裂長さや深さの計測誤差が大きいことが問題となっている。
【0003】
このような背景のもとで、1978年、Buckらは金属円筒を接触させた界面を透過した超音波の波形がひずみ、周波数が入射超音波の整数倍になる高調波を観測した(O. Buck, W.L. Morris and J.M. Richardson, Appl. Phys. Lett. 33 (1978) 271)。ついでSolodovらは高調波発生の原因を、接触における応力ひずみ関係の非対称性によるContract acoustic nonlinearity (CAN; 接触音響非線形性)とし、き裂や不完全接合面の非破壊評価へ適用した(I.Yu. Solodov, N. Krohn and G. Busse, Ultrasonics 40 (2002) 621-625.)。しかしながら、前記高調波は、き裂や不完全接合部のみでなく、通常の圧電素子や接触媒体でも発生するため、き裂や不完全接合部で発生した高調波と誤認しやすいという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、閉じたき裂の深さ(長さ)を高精度かつ簡易に定量し、評価することができる新規な方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく、本発明は、
開いたき裂及び閉じたき裂を連続して含むき裂に対して、所定の送信器より第1の超音波を照射し、前記開いたき裂の先端において線形散乱波を生成させるとともに、所定の受信器において受信する工程と、
前記き裂に対して、前記送信器より、前記第1の超音波よりも振幅が大きく、前記第1の超音波と同じ周波数を有する第2の超音波を照射し、前記閉じたき裂の先端において分調波を生成させるとともに、前記受信器において受信する工程と、
前記線形散乱波と前記分調波との伝搬時間差を計測する工程と、
前記伝搬時間差に基づいて、前記閉じたき裂の深さを導出する工程と、
を具えることを特徴とする、閉じたき裂の定量評価法に関する。
【0006】
また、本発明は、
第1の超音波、及びこの第1の超音波よりも振幅が大きく、前記第1の超音波と同じ周波数を有する第2の超音波を生成するための波形生成装置と、
前記第1の超音波及び前記第2の超音波を開いたき裂及び閉じたき裂が連続して存在するき裂に対して照射するための送信器と、
前記第1の超音波の照射により、前記開いたき裂の先端部で生成した線形散乱波、及び前記第2の超音波の照射により、前記閉じたき裂の先端部で生成した分調波を受信するための受信器と、
前記線形散乱波と前記分調波との伝搬時間差を計測するための波形解析装置とを具え、
前記線形散乱波と前記分調波との伝搬時間差を計測するための波形解析装置とを具え、
前記伝搬時間差に基づいて、前記閉じたき裂の深さを導出するようにしたことを特徴とする、閉じたき裂の定量評価装置に関する。
【0007】
本発明においては、周波数が同一で、振幅が異なる2種類の超音波を用い、振幅の小さい一方の超音波(第1の超音波)を開いたき裂及び閉じたき裂を連続して含むき裂に照射するとともに、振幅の大きい他方の超音波(第2の超音波)を同じく前記き裂に照射するようにしている。この場合、前記開いたき裂の先端部においては、前記第1の超音波に起因した線形散乱波が生成され、前記閉じたき裂の先端部においては、前記第2の超音波に起因した分調波が生成されるようになる。
【0008】
したがって、前記第1の超音波及び前記線形散乱波による経路と、前記第2の超音波及び前記分調波による経路とは、前記閉じたき裂の深さ(長さ)に応じて異なるようになり、これらの経路差を前記第1の超音波及び前記第2の超音波の速度で除することによって得た伝搬時間差も前記閉じたき裂の深さ(長さ)に応じて異なるようになる。すなわち、前記伝搬時間差は、前記閉じたき裂の深さ(長さ)情報を含むので、前記伝搬時間差に対して所定の解析処理を施すことにより、前記伝搬時間差に基づいて前記閉じたき裂の深さ(長さ)を導出できるようになる。
【0009】
換言すれば、前記伝搬時間差を計測することにより、この伝搬時間差は上述した経路差に起因した前記閉じたき裂の深さ(長さ)情報を含むので、前記伝搬時間差に基づいて前記閉じたき裂の深さ(長さ)を定量評価できるようになる。
【0010】
例えば、所定の材料において、開いたき裂及び閉じたき裂が連続して存在し、前記閉じたき裂の深さ(長さ)が異なる複数のき裂を形成しておき、各き裂に対して前記第1の超音波及び前記第2の超音波を照射し、前記閉じたき裂の深さ(長さ)に応じて得られた複数の伝搬時間差を予めデータとして保存しておけば、上述したような工程において、前記材料における任意のき裂に対して前記第1の超音波及び前記第2の超音波を照射して得た伝搬時間差を、前記保存したデータと比較することによって、前記き裂中の閉じたき裂の深さ(長さ)を定量することができる。
【0011】
また、以下に詳述するように、前記送信器、前記受信器及び前記き裂間の相対的位置関係を予め特定しておけば、前記相対的位置関係と前記伝搬時間差とから前記閉じたき裂の前記深さを導出することもできる。
【0012】
前記線形散乱波及び前記分調波は識別が容易であるとともに、高い時間分解能を有するので、上述した本発明の方法及び装置によって、閉じたき裂の深さ(長さ)を高精度かつ簡易に定量し、評価できるようになる。
【0013】
なお、前記「分調波」とは、入射した超音波の正の整数分の1の周波数を有する波を言い、特に、医療分野において、血液中に造影剤を入れて肝臓ガンや心筋梗塞組織などの画像を得るために用いられている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、閉じたき裂の長さ(深さ)を高精度かつ簡易に定量し、評価できる新規な方法及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について、最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の閉じたき裂の定量評価装置の一例を示す構成図である。図1に示すように、閉じたき裂の定量評価装置10は、波形生成装置11と、増幅器12と、送信器13と、受信器14と、波形解析装置15とを具えている。波形生成装置11からは任意の波形を有する信号が生成され、この信号は増幅器12で増幅された後、送信器13において超音波に変換され、試料S中のき裂Cに照射されるように構成されている。受信器14では、き裂Cで生成した波を受信し、電気信号に変換するように構成されている。前記電気信号は、波形解析装置15に送られ、前記電気信号に起因した前記波の解析が行われる。
【0017】
図1に示す装置10においては、送信器13及び受信器14をき裂Cに対して同じ側に設けているので、以下に詳述する閉じたき裂の定量評価法においては、いわゆる入射超音波に対する後方散乱を用いて行うことになる。
【0018】
図1に示す装置10を用いた、閉じたき裂の深さ(長さ)の定量評価は以下のようにして行う。なお、図2は、以下に示す定量評価法で得た分調波及び高調波の波形の一例を示すグラフである。
【0019】
最初に、波形生成装置11から所定の波形を有する信号を増幅器12で増幅した後、送信器13に送信し、第1の超音波W1を生成する。次いで、第1の超音波W1をき裂Cに向けて照射する。このとき、き裂Cにおける開いたき裂C1の先端部Aでは第1の超音波W1に起因した線形散乱波Z1が生成される。一方、増幅器12における増幅度を変化させることによって、送信器13において、第1の超音波W1よりも振幅が大きく、第1の超音波W1と同じ周波数の第2の超音波W2を生成する。次いで、第2の超音波W2を同じくき裂Cに向けて照射する。このとき、き裂Cにおける閉じたき裂C2の先端部Bでは第2の超音波W2に起因した分調波Z2が生成される。
【0020】
なお、増幅器12における第2の超音波W2の増幅度が小さいと、線形散乱波Z1と識別できるに足る分調波Z2を得ることができないので、増幅器12における第2の超音波W2の増幅度は、分調波Z2が生成するような程度に設定する。
【0021】
線形散乱波Z1及び分調波Z2は受信器14で受信された後、電気信号に変換され、波形解析装置15に送られる。波形解析装置15では、線形散乱波Z1は、図2(a)に示すような例えば周波数fの波形信号となり、分調波Z2は、図2(b)に示すように例えば周波数f/2の波形信号となる。
【0022】
しかしながら、線形散乱波Z1は、第1の超音波W1とともに経路TARを形成して受信器14に到達するものであり、分調波Z2は、第2の超音波W2とともに経路TBRを形成して受信器14に到達するものである。したがって、波形解析装置15における線形散乱波Z1の前記波形信号と、分調波Z2の前記波形信号とは、経路TARと経路TBRとに基づく経路差に起因した伝搬時間差Δtだけシフトするようになる。
【0023】
経路TARは閉じたき裂C2の深さ(長さ)に応じて変化するので、前記経路差も閉じたき裂C2の深さ(長さ)に応じて変化するようになる。したがって、伝搬時間差Δtも閉じたき裂C2の深さ(長さ)に応じて変化するようになる。結果として、伝搬時間差Δtを計測すれば、伝搬時間差Δtは閉じたき裂C2に情報を含むので、伝搬時間差Δtに基づいて閉じたき裂C2の情報を得ることができる。
【0024】
具体的には、送信器13、受信器14及びき裂C間の相対的位置関係と、伝搬時間差Δtとから閉じたき裂C2の深さを以下のようにして導出することができる。
【0025】
試料Sの、き裂C直上の位置をHとし、送信器13が位置Hから水平方向に距離Lだけ離隔し、受信器14が位置Hから送信器13と反対側の水平方向に同じく距離Lだけ離隔しており、第1の超音波W1及び第2の超音波W2の速度がVであり、線形散乱波Z1の受信器14に対する到達時間をtとすると、HB=(TB-L1/2=[(Vt/2)-L1/2であり、HA=(TA-L1/2=[(V(t-Δt)/2)-L1/2であって、閉じたき裂C2の深さD=HA-HBで表すことができることから、
D=[(Vt/2)-L1/2-[(V(t-Δt)/2)-L1/2
なる関係式で表すことができる。
【0026】
なお、前記き裂C直上の位置Hを、送信器と受信器の中心に一致させるためには、送信器と受信器の距離を2Lに固定しつつ、線形散乱波の前記到達時間tが最短になるように、送信器と受信器を動かせば良い。
【0027】
なお、閉じたき裂C2の深さDに応じて得られた複数の伝搬時間差を予めデータとして保存しておけば、上述したような工程において、同じ試料Sにおける任意のき裂に対して、上述したように第1の超音波W1及び第2の超音波W2を照射して得た伝搬時間差Δtを、前記保存したデータと比較することによって、任意の閉じたき裂の深さDを定量することができる。
【0028】
図3は、図1に示す閉じたき裂の定量評価装置の変形例を示す構成図である。なお、図1に示す装置と同様の構成要素に対しては、同じ参照数字を用いている。
【0029】
図3に示す閉じたき裂の定量評価装置20においては、送信器13と受信器14とを試料S、すなわちき裂Cを挟むようにして相対向して配置している以外は、図1に示す装置10と同様の構成を呈している。この場合、送信器13及び受信器14をき裂Cを挟むようにして相対向させて配置しているので、図3に示す装置20を用いた閉じたき裂の定量評価法においては、いわゆる入射超音波に対する前方散乱によって生成した線形散乱波Z1及び分調波Z2を用いて行うことになる。
【0030】
しかしながら、閉じたき裂C2を定量評価するに際しては、前方散乱によって生じた線形散乱波及び分調波を用いるが、後方散乱によって生じた線形散乱波及び分調波を用いるかの相異のみで、閉じたき裂C2の深さを定量評価するに際しては、上記同様の幾何学的な方法やストックデータを用いる方法によって実施する。
【0031】
なお、図1~3に関する上記いずれの態様においても、第1の超音波W1及び第2の超音波W2は、その波形がガウス関数と正弦波との積で表されることが好ましい。この場合、分調波Z2において、図4に示すようなテール効果の発生を抑制し、分調波Z2の撹乱を防止することができる。ただしここで、ガウス関数は唯一の選択ではなく、緩やかに立ち上がり、中央部は平坦で、緩やかに立ち下がる関数であれば、ガウス関数の替わりに用いてもよい。
【0032】
図5は、本発明の閉じたき裂の定量評価装置の他の一例を示す構成図である。図5に示すように、閉じたき裂の定量評価装置30は、デジタルフェーズドアレイシステム31と、増幅器32と、高耐圧圧電素子アレイ33及び34と、高速エコー画像並列処理装置35とを具えている。デジタルフェーズドアレイシステム31は図1及び図3に示す波形生成装置11及び波形解析装置15と同様の機能を果たし、高耐圧圧電素子アレイ33及び34は、それぞれ図1及び図3に示す送信器13及び受信器14と同様の機能を果たす。
【0033】
デジタルフェーズドアレイシステム31から発生したn個のバースト信号を、増幅器12で増幅した後、高耐圧圧電素子アレイ33から第1の超音波を可変焦点集束ビームFとして試料Sのき裂Cに対して照射する。このとき、開いたき裂C1の先端部Aからは線形散乱波が生じるので、この線形散乱波を高耐圧圧電素子アレイ34で受信するとともに、デジタルフェーズドアレイシステム31を介して高速エコー画像並列処理装置35に導入する。すると、装置35では図6(a)に示すように、開いたき裂C1に関する映像が得られる。
【0034】
一方、前記バースト信号の、増幅器12での増幅度を増大させ、前記第1の超音波よりも大きな振幅の第2の超音波を得、この第2の超音波を高耐圧圧電素子アレイ33から可変焦点集束ビームFとして試料Sのき裂Cに対して照射する。このとき、閉じたき裂C2の先端部Bからは分調波が生じるので、この分調波を高耐圧圧電素子アレイ34で受信するとともに、デジタルフェーズドアレイシステム31を介して高速エコー画像並列処理装置35に導入する。すると、装置35では図6(b)に示すように、開いたき裂C2に関する映像が得られる。なお、この場合、閉じたき裂Cが分調波の発生点を複数もっていても、各々の発生点を映像化することができる。
【0035】
したがって、図6に示す映像を参酌することによって、閉じたき裂C2の深さのみならず、開いたき裂C1の深さをも定量評価することができる。
【0036】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0037】
例えば、上記具体例においては、伝搬時間差Δtを用い、送信器及び受信器とき裂との相対的な位置関係から幾何学的に閉じたき裂C2の深さを定量評価する、あるいは伝搬時間差Δt及び閉じたき裂C2との相対関係を示す予め保存されたデータを基に、閉じたき裂C2の深さを定量評価するようにしているが、伝搬時間差Δtに基づき、これら以外の方法で閉じたき裂C2の深さを定量評価するようにすることもできる。
【0038】
さらには、上述した閉じたき裂C2の深さを定量評価するための幾何学的な手法も、上記具体例と異なる方法を用いることができる。
【0039】
なお、閉じたき裂は、本発明で規定するように開いたき裂先端と連続して存在するだけでなく、物体のコーナー部、溶接・接合界面、空孔や介在物などの欠陥のような、超音波の別種の線形散乱源と連続した状態で存在する場合もある。このような場合には、前記別種の線形散乱源から生成する線形散乱波を、本発明における開いたき裂先端で生成する線形散乱波と同一に扱えば、本発明と同一の手法で閉じたき裂の定量評価が行える。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、原子炉、航空機、鉄道などの非破壊評価の現場において、閉じたき裂の深さを簡易かつ高精度に定量評価する方法及び装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の閉じたき裂の定量評価装置の一例を示す構成図である。
【図2】図1に示す装置を用いた定量評価法によって得た分調波及び高調波の波形の一例を示すグラフである。
【図3】図1に示す閉じたき裂の定量評価装置の変形例を示す構成図である。
【図4】分調波におけるテール効果を示す図である。
【図5】本発明の閉じたき裂の定量評価装置の他の一例を示す構成図である。
【図6】図5に示す装置を用いた定量評価法によって得た画像の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
10、20、30 閉じたき裂の定量分析装置
11 波形生成装置
12、32 増幅器
13 送信器
14 受信器
15 波形解析装置
31 デジタルフェーズドアレイシステム
33、34 高耐圧圧電素子アレイ
35 高速エコー画像並列処理装置35
C き裂
C1 開いたき裂
C2 閉じたき裂
S 試料
W1 第1の超音波
W2 第2の超音波
Z1 線形散乱波
Z2 分調波



図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5