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明細書 :路面平坦性測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4220929号 (P4220929)
公開番号 特開2005-315675 (P2005-315675A)
登録日 平成20年11月21日(2008.11.21)
発行日 平成21年2月4日(2009.2.4)
公開日 平成17年11月10日(2005.11.10)
発明の名称または考案の名称 路面平坦性測定装置
国際特許分類 G01B  21/00        (2006.01)
G01C   7/04        (2006.01)
E01C  23/01        (2006.01)
FI G01B 21/00 T
G01C 7/04
E01C 23/01
請求項の数または発明の数 12
全頁数 21
出願番号 特願2004-132554 (P2004-132554)
出願日 平成16年4月28日(2004.4.28)
審査請求日 平成18年5月23日(2006.5.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】川村 彰
個別代理人の代理人 【識別番号】100107010、【弁理士】、【氏名又は名称】橋爪 健
審査官 【審査官】櫻井 仁
参考文献・文献 特開平10-168810(JP,A)
特開平06-158611(JP,A)
特開2004-108988(JP,A)
特開昭61-083907(JP,A)
調査した分野 G01B 21/00~21/32
E01C 23/01
G01C 7/04
特許請求の範囲 【請求項1】
車両の車軸側又はサスペンション下側に取り付けられ、路面の凹凸により生ずる車体を支えるバネ下又はサスペンション下における、サスペンションの軸方向に対して上下方向の第1の加速度又は速度を検出するための第1の検出器と、
サスペンションが支持する車体側又はサスペンション上側に取り付けられ、路面の凹凸により生ずる車体を支えるバネ上又はサスペンション上における、サスペンションの軸方向に対して上下方向の第2の加速度又は速度を検出するための第2の検出器と、
車両のピッチ角を検出するピッチ角検出器と、
車両の走行速度を検出する走行速度検出器と、
前記第1及び第2の検出器により検出された第1及び第2の加速度又は速度と、前記ピッチ角検出器により検出されたピッチ角を入力し、第1及び第2の加速度又は速度を補正し、補正された第1及び第2の加速度又は速度に基づき国際ラフネス指数を求めるための処理部と、
前記処理部により読み込まれ及び書き込まれる記憶部と
を備え、
前記記憶部は、
国際ラフネス指数の算出に用いられるクォーターカー・パラメータの諸元を有するクォーターカー・モデルを基準車と呼ぶ時、基準車の振動系に与えられる路面変位入力に基づく空間周波数又は時間周波数と、車両の走行速度で走行する場合に路面変位入力によって生じる系の第1及び第2の加速度若しくは速度又はこれら加速度若しくは速度に対応する変位に関しての振動応答との関係を示す走行速度毎の第1の周波数応答関数と、
基準車の振動系に与えられる路面変位入力に基づく空間周波数又は時間周波数と、国際ラフネス指数算定の基準速度で走行する場合に路面変位入力によって生じる系の第1及び第2の加速度若しくは速度又はこれら加速度若しくは速度に対応する変位に関しての振動応答との関係を示す第2の周波数応答関数と、
前記車両をクォーターカー・モデルで表現したものを測定車と呼ぶ時、測定車の振動系に与えられる路面変位入力に基づく空間周波数又は時間周波数と、路面変位入力によって生じる系の第1及び第2の加速度若しくは速度又はこれら加速度若しくは速度に対応する変位に関しての振動応答との関係を示す第3の周波数応答関数と、
基準車の振動系に与えられる路面変位入力に基づく空間周波数又は時間周波数と、路面変位入力によって生じる系の第1及び第2の加速度若しくは速度又はこれら加速度若しくは速度に対応する変位に関しての振動応答との関係を示す第4の周波数応答関数と
が記憶され、
前記処理部は、
第1及び第2の加速度又は速度を、検出されたピッチ角に基づき、鉛直方向の加速度又は速度に補正するための姿勢角補正手段と、
第1及び第2の加速度又は速度を、前記記憶部に記憶された第1の周波数応答関数と、前記走行速度検出器により検出された走行速度に対応する第2の周波数応答関数との比に基づき、基準速度と走行速度の相違を補正して速度補正された第1及び第2の加速度又は速度を求めるための速度補正手段と、
第1及び第2の加速度又は速度を、前記記憶部に記憶された第3の周波数応答関数と、第4の周波数応答関数との比に基づき、基準車と前記車両との相違を補正して車両補正された第1及び第2の加速度又は速度を求めるための車両補正手段と
を有し、
前記処理部は、前記姿勢角補正手段、前記速度補正手段及び前記車両補正手段により補正された第1及び第2の加速度又は速度に基づく相対変位と、予め定められた測定道路区間長との比に基づいて、国際ラフネス指数を求める平坦性測定装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記姿勢角補正手段、前記速度補正手段、前記車両補正手段により補正された第1の加速度又は速度に基づく第1の変位と、補正された第2の加速度又は速度に基づく第2の変位との差をとることで相対変位を求め、
車両の走行距離が予め設定された測定道路区間長に達するまで、所定時間又は所定距離毎に相対変位を求めることを繰り返し、
走行距離が予め設定された測定道路区間長に達した場合に、次式に従い国際ラフネス指数IRIを算出する請求項1に記載の平坦性測定装置。
【数1】
JP0004220929B2_000009t.gif
ここで、z’:所定時間毎の相対変位、L:測定道路区間長、n:求められた相対変位の数
【請求項3】
前記処理部は、次式に従い国際ラフネス指数IRIを算出する請求項1に記載の平坦性測定装置。
【数2】
JP0004220929B2_000010t.gif
ここで、L:測定道路区間長、v:検出された走行速度、z:第2の加速度に対応する変位、z:第1の加速度に対応する変位
【請求項4】
前記姿勢角補正手段は、
前記速度検出器により検出された走行速度の時間変化に基づき走行方向の加速度Axを求め、
検出された第1及び第2の加速度、速度補正された第1及び第2の加速度、車両補正された第1及び第2の加速度のいずれかについて、次式に従い鉛直方向の姿勢角補正された第1及び第2の加速度Az1及びAz2を求めることを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の平坦性測定装置。
【数3】
JP0004220929B2_000011t.gif
ここで、A、A:検出された第1及び第2の加速度、速度補正された第1及び第2の加速度、車両補正された第1及び第2の加速度のいずれか、g:重力加速度、θ:検出された傾斜角(ピッチ角)、A:走行方向の加速度
【請求項5】
前記記憶部は、
第1の加速度の第1の周波数応答関数と、第1の加速度の第2の周波数応答関数との周波数成分ごとの比をとることにより予め求められた第1の加速度に対する第1の速度補正重み関数|V(n)|(nは周波数)と、
第2の加速度の第1の周波数応答関数と、第2の加速度の第2の周波数応答関数との周波数成分ごとの比をとることにより予め求められた第2の加速度に対する第2の速度補正重み関数|V(n)|と
が車両の走行速度毎に記憶され、
前記速度補正手段は、
前記記憶部を参照して、前記速度検出器により検出された走行速度に対応する第1及び第2の速度補正重み関数|V(n)|及び|V(n)|をそれぞれ読み出し、姿勢角補正された第1及び第2の加速度、車両補正された第1及び第2の加速度、検出された第1及び第2の加速度のいずれかと、読み出された第1及び第2の速度補正重み関数とに基づき、次式に従い速度補正された第1及び第2の加速度B’及びB’を求めることを含む請求項1乃至4のいずれかに記載の平坦性測定装置。
B’=B/|V(n)|
B’=B/|V(n)|
ここで、B、B:姿勢角補正された第1及び第2の加速度、車両補正された第1及び第2の加速度、検出された第1及び第2の加速度のいずれか、|V(n)|、|V(n)|:第1及び第2の速度補正重み関数
【請求項6】
前記記憶部は、
第1の加速度の第3の周波数応答関数を、第1の加速度の第4の周波数応答関数で除すことにより予め求められた第1の加速度に対する第1の車両補正重み関数|W(n)|(nは周波数)と、
第2の加速度の第3の周波数応答関数を、第2の加速度の第4の周波数応答関数で除すことにより予め求められた第2の加速度に対する第2の車両補正重み関数|W(n)|と
が記憶され、
前記車両補正手段は、
前記記憶部を参照して、第1及び第2の車両補正重み関数|W(n)|及び|W(n)|をそれぞれ読み出し、速度補正された第1及び第2の加速度、姿勢角補正された第1及び第2の加速度、検出された第1及び第2の加速度のいずれかと、読み出された第1及び第2の車両補正重み関数とに基づき、次式に従い車両補正された第1及び第2の加速度C’及びC’を求めることを含む請求項1乃至5のいずれかに記載の平坦性測定装置。
C’=C/|W(n)|
C’=C/|W(n)|
ここで、C、C:速度補正された第1及び第2の加速度、姿勢角補正された第1及び第2の加速度、検出された第1及び第2の加速度のいずれか|W(n)|、|W(n)|:第1及び第2の車両補正重み関数
【請求項7】
前記処理部は、前記姿勢角補正手段による姿勢角補正、前記速度補正手段による速度補正、前記車両補正手段による車両補正を所定の順序で行い、補正された第1及び第2の加速度が次の補正の計算に用いられる請求項1乃至6のいずれかに記載の平坦性測定装置。
【請求項8】
車両の走行位置の位置情報を求めるためのGPS
をさらに備え、
前記処理部は、前記GPSにより求められる測定道路区間内の所定位置の位置情報に対応して、求められた国際ラフネス指数を記憶する、及び/又は、該位置情報に対応して求められた国際ラフネス指数を表示する請求項1乃至7のいずれかに記載の平坦性測定装置。
【請求項9】
前記処理部は、予め設定された測定道路区間長毎に国際ラフネス指数を求めることを繰り返す請求項1乃至8のいずれかに記載の平坦性測定装置。
【請求項10】
前記処理部は、検出された走行速度が予め定められた速度以下でないこと、及び、定速走行であること、及び、走行距離が停止状態から予め定められた距離以上であることのいずれか又は複数が満たされた場合に、国際ラフネス指数の算出を開始する請求項1乃至9のいずれかに記載の平坦性測定装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記第1及び第2の検出器からの第1及び第2の加速度をローパスフィルタ処理し、
前記姿勢角補正手段、速度補正手段及び/又は車両補正手段は、ローパスフィルタ処理後の第1及び第2の加速度に対して、姿勢角補正、速度補正及び/又は車両補正を行う請求項1乃至10のいずれかに記載の平坦性測定装置。
【請求項12】
前記処理部は、前記車両が路面を走行中にリアルタイムに国際ラフネス指数を算出する請求項1乃至11のいずれかに記載の平坦性測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、路面平坦性測定装置に係り、特に、簡易な構成で国際ラフネス指数を算出する路面平坦性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路における維持管理は、平坦性、わだち掘れ、ひびわれの主として3項目により行われているが、道路利用者の快適性(例えば、乗り心地)、走行費用(例えば、燃費、車両の耐久性等)及び沿道住民の環境(例えば、振動、騒音等によるもの)に最も影響を与えるのは平坦性であり、平坦性指標により評価がなされている。
【0003】
従来、わが国における路面の平坦性(σ)指標としては、3mプロフィロメータによるσ(標準偏差:mm)や8mプロフィロメータによるPrI(Profile Index:cm/km)があるが、工事の出来形管理のために作成された指標であり、乗り心地との相関が見られないことや海外との比較が困難であるなどの課題がある。
【0004】
現在、国際的には世界銀行で提案された国際ラフネス指数(IRI:International Roughness Index:m/km)が用いられるようになっており、乗り心地との相関も良いとされている。例えば、路面の縦断プロファイルと乗り心地の関係に注目し、IRIの高速道路路面での適用性について、乗り心地評価試験などを実施して、IRIの乗り心地の関連性が示された文献が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。また、道路を管理する事業者では、IRIによる高速道路の管理を検討する所もあり、IRIを容易に求める測定装置が望まれている。さらに、コンクリート舗装の示方書では、乗り心地評価指標としてIRIが導入されている。
【0005】
IRIは、路面の平坦性を表す指標である。これまで、路面平坦性の測定方法は、世界各国で様々な装置が使用されていたが、各測定装置相互の関連性や物理的意味が不明確なものが多かった。そこで、世界銀行が中心となって路面平坦性の測定評価方法についての研究により、1986年に得られた指標がIRIである。クォーターカーシミュレーションに対し、適宜の方法で測定された路面の縦断プロファイル(縦断形状)を与えることにより、誰が計算しても同一の値が得られるという優れた点を持っている。また、IRIは、数値が大きい程平坦性が悪いことを表す。
【0006】
従来、IRIを算出するには、路面性状測定車などで測定された縦断プロファイルデータをもとに、乗用車の一輪を取り出したクォーターカー・モデルと呼ばれる仮想車両が、80km/hで走行する際の上下方向変位をシミュレーションにより求め、求められた変位に基づいてIRIが算出さている。
【0007】
縦断プロファイルは、例えば、レーザ変位計と加速度計によるシステムにより測定できることが開示されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。図6は、縦断プロファイル測定の概略図である。縦断プロファイルの測定原理は、レーザ変位計で路面高を測定し、加速度計で測定した上下方向の振動加速度を積分して得られる変位量に基づいて車両自体の上下動を相殺して、路面の縦断プロファイル(高さ)を求めている。また、速度検出器の出力に基づき走行距離を算出し、所定間隔(例えば、10cm)で測定する。

【特許文献1】特開昭61-83907号公報
【非特許文献1】大野滋也、佐藤正和、鈴木一隆、「乗り心地に着目した路面管理指標に関する研究、IRI(国際ラフネス指数)の適用性」、EXTEC No.61、2002年6月発行、p.37—40
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のIRIの算出に用いられる縦断プロファイルは、低速プロフィロメータと高速プロファイラにより測定されるが、高速走行での連続測定が可能となる高速プロファイラは、主としてレーザ変位計による測定である。レーザ変位計による高速プロファイラは、他の路面性状も同時測定するために一般に大型車ならびに高価な測定装置が必要とされていた。また、冬期路面の平坦性の測定は、レーザの特性により測定が困難であった。IRIの算出にあたっては、上述のような測定装置及び平坦性測定車による縦断プロファイル測定結果をコンピュータプログラムに入力し求めているのが実状であり、高価な装置になる原因ともなっている。
【0009】
ここで、「プロファイル」とは、道路上のある仮想線に沿って路面をスライスしてできる2次元の表面形状である。別の表現では表面の凹凸であり、プロファイルデータとは、一定距離間隔毎の路面高さデータである。図7に、プロファイルの説明図を示す。道路の縦断方向に沿ってスライスしたものを「縦断プロファイル」と呼び、縦断勾配、ラフネス、テクスチャ(キメとも呼ぶ)が得られる。プロファイルが、種々の振幅と周波数を持った波の集合体と考えた場合、ラフネスは、およそ50cmから50mの波長成分に相当し、車の乗り心地、燃費、耐久性などと関係がある。また、テクスチャは50cm以下の波長成分となり、タイヤ路面間のすべり抵抗に関係するので、安全性やロードノイズ(騒音)に影響があるといえる。本測定装置は、ラフネス部分の測定に用いることができる。
【0010】
プロファイルは形状のため、平坦(凹凸)の程度を示す指標に置き換えることにより、定量的評価が可能になる。既存の平坦性指標には、呼称が「平坦性」という路面プロファイルデータから求めるものがあるが、IRIは、車のサスペンションの変化量により、平坦性を評価するというものであり、必ずしもプロファイル測定は必要ない。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑み、国際ラフネス指数(IRI)を簡易な構成で測定可能な平坦性測定装置を提供することを目的とする。また、本発明は、IRI算定の基準速度以外の速度においても、IRIを測定可能とすることを目的とする。本発明は、加減速による速度変化に関わらずIRIを測定可能とすることを目的とする。さらに、本発明は、IRI算定に基準車以外の車種によってもIRIを測定可能とすることを目的とする。また、本発明は、車体の姿勢によらず測定可能とすることを目的とする。
【0012】
本発明の他の目的は、安価でコンパクト(軽量)な測定装置とすることである。また、本発明は、高速測定可能な、及び/又は、乗り心地評価が同時に可能な測定装置を提供することも目的のひとつである。さらに、本発明は、測定箇所(位置)が正確に特定可能とすることを目的とする。また、本発明は、冬期路面の平坦性測定可能とすることも目的をとする。
【0013】
また、本発明は、測定結果を基に、路面の維持管理を行うことが可能な測定装置を提供することを目的とする。例えば、維持補修の可否判断に利用可能とする。本発明は、測定結果を道路のデータバンクに記録し、舗装の維持管理システム構築に活用可能することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の解決手段によると、
車両の車軸側又はサスペンション下側に取り付けられ、路面の凹凸により生ずる車体を支えるバネ下又はサスペンション下における、サスペンションの軸方向に対して上下方向の第1の加速度又は速度を検出するための第1の検出器と、
サスペンションが支持する車体側又はサスペンション上側に取り付けられ、路面の凹凸により生ずる車体を支えるバネ上又はサスペンション上における、サスペンションの軸方向に対して上下方向の第2の加速度又は速度を検出するための第2の検出器と、
車両のピッチ角を検出するピッチ角検出器と、
車両の走行速度を検出する走行速度検出器と、
前記第1及び第2の検出器により検出された第1及び第2の加速度又は速度と、前記ピッチ角検出器により検出されたピッチ角を入力し、第1及び第2の加速度又は速度を補正し、補正された第1及び第2の加速度又は速度に基づき国際ラフネス指数を求めるための処理部と、
前記処理部により読み込まれ及び書き込まれる記憶部と
を備え、
前記記憶部は、
国際ラフネス指数の算出に用いられるクォーターカー・パラメータの諸元を有するクォーターカー・モデルを基準車と呼ぶ時、基準車の振動系に与えられる路面変位入力に基づく空間周波数又は時間周波数と、車両の走行速度で走行する場合に路面変位入力によって生じる系の第1及び第2の加速度若しくは速度又はこれら加速度若しくは速度に対応する変位に関しての振動応答との関係を示す走行速度毎の第1の周波数応答関数と、
基準車の振動系に与えられる路面変位入力に基づく空間周波数又は時間周波数と、国際ラフネス指数算定の基準速度で走行する場合に路面変位入力によって生じる系の第1及び第2の加速度若しくは速度又はこれら加速度若しくは速度に対応する変位に関しての振動応答との関係を示す第2の周波数応答関数と、
前記車両をクォーターカー・モデルで表現したものを測定車と呼ぶ時、測定車の振動系に与えられる路面変位入力に基づく空間周波数又は時間周波数と、路面変位入力によって生じる系の第1及び第2の加速度若しくは速度又はこれら加速度若しくは速度に対応する変位に関しての振動応答との関係を示す第3の周波数応答関数と、
基準車の振動系に与えられる路面変位入力に基づく空間周波数又は時間周波数と、路面変位入力によって生じる系の第1及び第2の加速度若しくは速度又はこれら加速度若しくは速度に対応する変位に関しての振動応答との関係を示す第4の周波数応答関数と
が記憶され、
前記処理部は、
第1及び第2の加速度又は速度を、検出されたピッチ角に基づき、鉛直方向の加速度又は速度に補正するための姿勢角補正手段と、
第1及び第2の加速度又は速度を、前記記憶部に記憶された第1の周波数応答関数と、前記走行速度検出器により検出された走行速度に対応する第2の周波数応答関数との比に基づき、基準速度と走行速度の相違を補正して速度補正された第1及び第2の加速度又は速度を求めるための速度補正手段と、
第1及び第2の加速度又は速度を、前記記憶部に記憶された第3の周波数応答関数と、第4の周波数応答関数との比に基づき、基準車と前記車両との相違を補正して車両補正された第1及び第2の加速度又は速度を求めるための車両補正手段と
を有し、
前記処理部は、前記姿勢角補正手段、前記速度補正手段及び前記車両補正手段により補正された第1及び第2の加速度又は速度に基づく相対変位と、予め定められた測定道路区間長との比に基づいて、国際ラフネス指数を求める平坦性測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、国際ラフネス指数(IRI)を容易に測定可能な平坦性測定装置を提供することができる。また、本発明によると、IRI算定の基準速度以外の速度においても、IRIを測定可能とすることができる。本発明によると、加減速による速度変化に関わらずIRIを測定可能とすることができる。さらに、本発明によると、IRI算定に基準車以外の車種によってもIRIを測定可能とすることができる。また、本発明によると、車体の姿勢によらず測定可能とすることができる。
【0016】
さらに、本発明によると、安価でコンパクト(軽量)な測定装置とすることである。また、本発明によると、高速測定可能な、及び/又は、乗り心地評価が同時に可能な測定装置を提供することができる。さらに、本発明によると、測定箇所(位置)が正確に特定可能とすることができる。また、本発明によると、冬期路面の平坦性測定可能とすることができる。
【0017】
また、本発明によると、測定結果を基に、路面の維持管理を行うことが可能な測定装置を提供することができる。例えば、維持補修の可否判断に利用可能となる。本発明によると、測定結果を道路のデータバンクに記録し、舗装の維持管理システム構築に活用可能することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
1.平坦性測定装置の概略
例えば、測定車(パトロールカーでもよい)に装置を取り付け、対象道路区間(冬期路面も含む)走行時にIRIを算出し、路面の平坦性評価を行う。
【0019】
(IRIの直接測定法)
IRIの算定式は単純であり、クォーターカー・モデルにおける次式で示されることから、2対の加速度計(速度計もしくは変位計)を主体とした計測装置で算出できる。
【0020】
【数1】
JP0004220929B2_000002t.gif
ここで、z:車体(ばね上質量)の上下変位、z:タイヤ(ばね下質量)の上下変位、L:走行距離、v:走行速度である。
【0021】
そのため、測定車両の1輪のばね下とばね上位置に加速度計を設置し、評価対象道路区間を走行した記録結果を上式に代入することによりIRIを求めることが可能であり、路面プロファイルの測定は不要である。
【0022】
(装置の構成)
測定装置は、例えば、加速度計2個、ピッチ角度計、速度計1個及びデータ記録装置そ備え、測定箇所の特定のためにGPSを含めることもできる。装備に際しては普通乗用車でも可能であり、コンパクトで安価な測定システム構成となる。加速度計は、基本的に左側前輪側のばね上及びばね下位置に取り付けることができる。ピッチ角度計は、加速度計の上下方向軸の傾斜角を測定できる位置に取り付けることができる。
【0023】
(補正計算)
IRIは、クォーターカー・モデルとよばれる仮想車両が、80km/hで定速走行した際の車両の上下変位を基に計算することから、一般道路を通常走行する際の速度変動に対しては補正計算が必要となる。
【0024】
これを解決する手段として、傾斜角(ピッチ角)補正を行う。また、例えば周波数応答関数を比較して、測定車の周波数特性の走行速度による補正を行う(速度補正)。さらに、周波数応答関数比較して、IRI算定の基準クォーターカー・モデルと測定車から誘導されたクォーターカー・モデルのシステムパラメータの相違を補正する(車両補正)。
【0025】
また、上記の結果は、路面の維持管理に利用できる。例えば、維持補修の可否判断に利用可能である。また、上記の結果を道路のデータバンクに記録し、舗装の維持管理システム構築に活用できる。
【0026】
2.装置構成
図1は、平坦性測定装置の装置構成ブロック図である。
平坦性測定装置は、第1の加速度検出器11と、第2の加速度検出器12と、ピッチ角(姿勢角)検出器20と、走行速度検出器30と、処理部40と、データ記録装置(記憶部)50と、GPS(Global Positioning System)60とを備える。なお、これら装置が取り付けられる車両は、例えば普通乗用車など、適宜の車を用いることができる。
【0027】
第1の加速度検出器(第1の検出器)11は、例えば、独立懸架サスペンションを有する車両(以下、測定車両と呼ぶこともある)の前車軸(バネ下)に取り付けられる加速度計である。なお、図1は、前車軸の左側に第1の加速度検出器11が取り付けられた例である。第1の加速度検出器11は、路面の凹凸等により生ずるバネ下のサスペンション軸方向に対して上下加速度(第1の加速度)を検出する。
【0028】
第2の加速度検出器12(第2の検出器)は、第1の加速度検出器11が取り付けられた側(例えば、前前車軸の左側)のサスペンションが支持する車体(バネ上)に取り付けられた加速度計である。第2の加速度検出器12は、路面の凹凸等により生ずるバネ上のサスペンション軸方向に対して上下加速度(第2の加速度)を検出する。なお、第1の加速度検出器11及び第2の加速度検出器12は、例えば、左側前輪側のばね上及びばね下位置に取り付けることができるが、これ以外にも後輪側(後車軸)に取り付ける等、適宜の車輪の該当する位置に取り付けてもよい。
【0029】
ピッチ角(姿勢角)検出器20は、車両のピッチ角を検出する。例えば、測定中の速度変化や過大な路面凹凸等により生ずる車両のピッチ角が検出される。ピッチ角検出器20としては、例えば、角度センサや、角速度センサを用いることができる。検出されたピッチ角は、第1の加速度検出器11及び第2の加速度検出器12の鉛直軸(又は加速度検出方向)と、真の鉛直軸とのずれを補正するために用いられる。ピッチ角検出器20は、第1の加速度検出器11及び第2の加速度検出器12の上下方向軸の傾斜角を測定できる位置に取り付けることができる。
【0030】
走行速度検出器30は、車両の走行速度を検出する。検出された速度は、例えば、速度が80km/hと異なる場合のIRI算出の補正計算をするために用いられる。また、検出された走行速度に基づいて走行方向の加速度が求められ、第1の加速度検出器11及び第2の加速度検出器12の鉛直軸と真の鉛直軸とのずれを補正するために用いられる。
【0031】
処理部40は、検出された第1及び第2の加速度に基づきIRIを求める。また、姿勢角補正手段、車両補正手段、速度補正手段を有する。処理部40の具体的処理については後述する。GPS60は、測定車両の車両走行位置を得るための装置である。また、GPS60からの位置情報に基づいて走行距離を求めることもできる。
【0032】
図2は、記憶部50に記憶されるデータのデータフォーマット例である。記憶部50は、例えば、求められたIRIと位置情報が対応して記憶される(図2(a))。また、走行速度に対応して、速度補正のための第1の加速度に対する速度補正重み関数|V(n)|(nは周波数)と、第2の加速度に対する速度補正重み関数|V(n)|とが予め記憶される(図2(b))。また、車両補正のための車両補正重み関数が予め記憶される。なお、速度補正重み関数、車両補正重み関数については、後に詳しく述べる。また、記憶部50には、速度補正重み関数、車両補正重み関数を求めるための適宜の周波数応答(例えば、後述する第1~第4の周波数応答)が記憶されても良い。
【0033】
3.フローチャート
図3は、IRI算出のフローチャートである。
まず、処理部40は、計算条件を設定する(S101)。例えば、処理部40は、測定道路区間長L、サンプリング時間間隔を設定する。測定道路区間長Lは、IRIを算出する間隔を示し、例えば、100mや200mとすることができる。サンプリング時間間隔は、処理部40がデータを入力してIRIを算出する処理時間の間隔を示し、処理部40は、設定されたサンプリング時間間隔ごとの時刻(サンプル時刻)に以下の処理を実行する。なお、処理部40は、サンプリング時間関数毎に処理を実行する以外にも、所定の距離毎に処理を実行するようにしてもよい。
【0034】
処理部40は、データを入力する(S103)。例えば、処理部40は、第1の加速度検出器11で検出された第1の加速度と、第2の加速度検出器12で検出された第2の加速度と、ピッチ角検出器で検出された車両のピッチ角と、走行速度検出器30で検出された車両の走行速度とを入力する。ここで、処理部40は、入力された第1及び第2の加速度をローパスフィルタ処理することができる。
【0035】
次に、処理部40は、測定可能条件が満足されているか判断する(S105)。ここで、測定可能条件とは、例えば、走行速度が25km/h以下でないこと、定速走行であること、走行距離が停止状態から11m以上走行していること等のいずれか又は複数とすることができる。なお、走行距離は、走行速度検出器30から入力された走行速度に基づいて求めることができ、又は、GPS60からの位置座標に基づいて求めることもできる。
【0036】
処理部40は、測定可能条件が満足されていないと判断した場合(S105)、ステップS103に戻り、次のサンプル時刻にS103以降の処理を実行する。一方、処理部40は、測定可能条件が満足されていると判断した場合(S105)、ステップS107の処理に移る。
【0037】
ステップS107では、処理部40(姿勢角補正手段)は、姿勢角補正計算をする(S107)。例えば、処理部40は、検出されたピッチ角に基づき、第1及び第2の加速度検出器11及び12の加速度検出方向に対する軸と鉛直軸とのずれによる、検出された加速度及び鉛直方向の加速度の相違を補正することにより、鉛直方向の加速度Az1及びAz2を求める。
【0038】
次に、処理部40(速度補正手段)は、速度補正計算をする(S109)。例えば、処理部40は、IRI算定の基準速度における予め求められた第2の周波数応答関数と、走行速度検出器30により検出された走行速度における予め求められた第1の周波数応答関数との比に基づき、基準速度と走行速度の相違を補正することにより、補正された加速度A’z1及びA’z2を求める。
【0039】
また、処理部40(車両補正手段)は、車両補正計算をする(S111)。例えば、処理部40は、予め求められたIRI算定の基準車の路面入力に対する上下方向加速度の第4の周波数応答関数と、予め求められた測定車両の路面入力に対する上下方向加速度の第3の周波数応答関数との比に基づき、基準車と測定車両のシステムパラメータの相違を補正することにより、補正された加速度A’’z1及びA’’z2を求める。
【0040】
なお、姿勢角補正計算、速度補正計算、車両補正計算の詳細、及び、第1~第4の周波数応答関数については後述する。また、ステップS107、S109、S111の各補正手段による各処理は、適宜の順序で行っても良い。
【0041】
処理部40は、相対変位z’を計算する(S113)。例えば、処理部40は、補正計算して求められた加速度A’’z1及びA’’z2を二重積分して、バネ下の変位(第1の変位)z及びバネ上の変位(第2の変位)zを求め、求められたzとzに基づき、次式により相対変位z’を計算する。
’=z-z
ここで、パラメータiは、1~nの整数(n:サンプルデータ数)であり、例えば、サンプル時刻に対応する。また、処理部40は、求められた相対変位z’をパラメータiに対応して適宜記憶部50に記憶する。なお、処理部40は、サンプル時間ごとのΔz=|z’-z’i+1|、(又は、Δzi-1=|zi-1’-z’|)をさらに求めて、パラメータiに対応して記憶してもよい。
【0042】
処理部40は、走行距離が、設定された測定道路区間長Lに達したか判断する(S115)。ここで、走行距離は、走行速度検出器30により検出された走行速度を積分して求めてもよいし、GPS60の位置座標に基づき求めてもよい。処理部40は、走行距離が、測定道路区間長Lに達していない場合(S115)、ステップS203の処理に戻り、次のサンプル時刻にステップS203以降の処理を実行する。
【0043】
一方、処理部40は、走行距離が測定道路区間長Lに達した場合(S115)、ステップS113で記憶されたz’(i=1~n)を読み出し、次の計算式によりIRIを算出する(S117)。
【0044】
【数2】
JP0004220929B2_000003t.gif
なお、記憶部50にΔzが記憶されている場合には、処理部40は、記憶されたΔz=|z’-z’i+1|を読み出してIRIを計算するようにしてもよい。
【0045】
なお、上述の数式2以外にも、以下のIRIの算定式に応じた適宜の式によりIRIを求めても良い。
【数3】
JP0004220929B2_000004t.gif

【0046】
また、処理部40は、GPS60により求められる測定道路区間内の所定位置の位置情報とに対応して、求められたIRIを記憶部50に記憶することもできる。ここで、位置情報は、走行距離がLに達した時の位置情報、測定を開始した時の位置情報、それらの中間点の位置情報などを用いることができ、処理部40は適宜のタイミングでGPS60から位置情報を入力して保持しておくことができる。
【0047】
処理部40は、測定を終了するか判断する(S119)。処理部40は、測定を終了しない場合(S119)、ステップS103の処理へ戻り、次のサンプル時刻にステップS103以降の処理を実行する。このとき処理部40は、パラメータi、走行距離等のデータをリセットする。一方、処理部40は、測定を終了すると判断した場合(S119)、処理を終了する。なお、処理部40は、測定を終了すると判断した場合(S119)、記憶部50に記憶された位置情報に対応するIRIを読み出して、位置情報に対応してIRIを適宜の表示部に表示し、処理を終了するようにしてもよい。例えば、横軸を位置情報(又は距離)、縦軸をIRIとしたグラフとして表示してもよい。
【0048】
(周波数応答関数について)
まず、速度補正における周波数応答関数について説明する。速度補正では、走行速度の違いが出力(振動応答)に与える影響を補正する。IRIは、クォーターカー・モデルの振動特性から以下のような、路面入力に対する周波数応答特性を持っている。
【0049】
図8に、クォーターカー・モデルの空間座標における周波数応答特性を示す。図8に示す例は、路面入力zによって生じる第1の加速度に関しての周波数応答の例である。また、図9に、クォーターカー・モデルの時間座標における周波数応答特性を示す。図8では、横軸が空間周波数(波数)のため、走行速度v=80km/hで走行するとして、空間周波数を時間周波数に変換すると図9のようになる(第2の周波数応答関数)。このとき、空間周波数(波数)γ[cycle/m]と時間周波数f[Hz:cycle/s]とに次式の関係が成立する。
【0050】
【数4】
JP0004220929B2_000005t.gif

【0051】
したがって、任意の走行速度に関してIRIクォーターカー・フィルタの時間周波数応答(第1の周波数応答関数)を求め、図9のIRIクォーターカー・フィルタとの周波数成分ごとの比により得られる関数を重み関数として、測定データを補正することにより、速度補正が可能になる。なお、第2の加速度に関する周波数応答関数についても同様である。
【0052】
ここで、第1、第2の周波数応答関数は、以下のように定義される。
第2の周波数応答関数は、IRIの算出に用いられるクォーターカー・パラメータの諸元を有するクォーターカー・モデルをクォーターカー・モデル(基準車)と呼ぶ時、クォーターカー・モデル(基準車)の振動系に与えられる路面変位入力(後述する数式6でいうz)に基づく空間周波数又は時間周波数と、IRI算定の基準速度で走行する場合に路面変位入力によって生じる系の第1及び第2の加速度若しくは速度又はこれら加速度若しくは速度に対応する変位に関しての振動応答との関係を振動数の関数として表現したものである。
【0053】
第1の周波数応答関数は、走行速度毎に、IRIの算出に用いられるクォーターカー・パラメータの諸元を有するクォーターカー・モデルをクォーターカー・モデル(基準車)と呼ぶ時、クォーターカー・モデル(基準車)の振動系に与えられる路面変位入力(後述する数式6でいうz)に基づく空間周波数又は時間周波数と、測定車の走行速度で走行する場合に、路面変位入力によって生じる系の第1及び第2の加速度若しくは速度又はこれら加速度若しくは速度に対応する変位に関しての振動応答との関係を振動数の関数として表現したものである。
【0054】
次に、車両補正における周波数応答関数について説明する。車両補正は、測定車両の周波数特性が、IRIの計算条件として考えているクォーターカー・モデルと異なる場合にそれを補正するものである。本実施の形態において異なる場合として想定しているのは、例えば、1)測定車両をクォーターカー・モデルに置き換えた時の周波数特性の違いと、2)走行速度が80km/hと異なる場合の2点である。
【0055】
ここで、第4の周波数応答関数を定義すると、IRIの算出に用いられるクォーターカー・パラメータの諸元を有するクォーターカー・モデルをクォーターカー・モデル(基準車)と呼ぶ時、クォーターカー・モデル(基準車)の振動系に与えられる路面変位入力(後述する数式6でいうz)に基づく空間周波数又は時間周波数と、それによって生じる系の振動応答(後述する数式6でいうz及びzに関して)との関係を振動数の関数として表現したものである。
【0056】
また、第3の周波数応答関数は、測定車をクォーターカー・モデルで表現したものをクォーターカーモデル(測定車)と呼ぶ時、クォーターカー・モデル(測定車)の振動系に与えられる路面変位入力(後述する数式6でいうz)に基づく空間周波数又は時間周波数とそれによって生じる系の振動応答(後述する数式6でいうz及びzに関して)との関係を振動数の関数として表現したものである。なお、振動応答は、z及びzに関する変位以外にも、速度、加速度など適宜のものを用いてもよい。
【0057】
なお、クォーターカー・モデル(測定車)のパラメータが周波数応答関数に及ぼす影響について、例えば、自動車技術ハンドブック<第1分冊>基礎・理論編、1990年12月1日発行、p.265を参照することができる。
【0058】
(傾斜角補正)
図4は、傾斜角(ピッチ角)補正の説明図である。例えば、大きな加減速運動や路面凹凸により車両が傾くと加速度計の軸も傾き、検出される加速度は、鉛直軸方向の加速度とずれが生じる。そこで、ピッチ角検出器により検出される車両のピッチ角変位θを用いて、大きな加減速運動や路面凹凸により生じた加速度計の軸の変化を補正する。
【0059】
例えば、処理部40は、次式の関係を用いて、鉛直方向の加速度Az1及びAz2を求める。
【数5】
JP0004220929B2_000006t.gif

【0060】
また、g:重力加速度、θ:検出された傾斜角(ピッチ角)、A:ブレーキングによる走行方向の加速度である。なお、処理部40は、走行方向の加速度Aを走行速度検出器30より得られた速度の時間変化に基づき求めることができる。
【0061】
(速度補正)
IRIの算定条件は、クォーターカーが80km/hで定速走行した際の路面入力となっている。実路走行する際には、基本的には実勢速度での定速走行となるが、一般道では80km/hと異なるため、路面入力の補正を行う。一般乗用車を用いる場合、実用的には、25km/h~100km/hの速度範囲を対象とすることができる。この範囲では、路面の平坦性が過度に低下していない限り、路面入力に対する車両の振動応答は線形性が確保される。
【0062】
そこで、走行速度ごとに、車両の路面入力に対する第1の加速度の第1の周波数応答関数|J(n)|を予め作成しておき、既存のクォーターカー・モデルの基準速度における第1の加速度の第2の周波数応答関数|Hs(n)|との周波数成分ごとの比により得られる第1の加速度に対する速度補正重み関数|V(n)|(第1の速度補正重み関数)を、走行速度に対応して記憶部50に記憶しておく。
|V(n)|=|J(n)|/|Hs(n)|
【0063】
また、第2の加速度についても同様に第2の速度補正重み関数|V(n)|を求め、走行速度に対応して記憶部50に記憶しておく。
|V(n)|=|J(n)|/|Hs(n)|
ここで、|J(n)|は、車両の路面入力に対する第2の加速度の第1の周波数応答関数、|Hs(n)|は、既存のクォーターカー・モデルの基準速度における第2の加速度の第2の周波数応答関数である。なお、車両の路面入力に対する第1の加速度及び第2の加速度の周波数応答関数|J(n)|、|J(n)|は、クォーターカー・モデルの周波数応答関数の周波数軸をシフトして作成されることができる。
【0064】
例えば、処理部40は、記憶部50を参照して、走行速度検出器30により検出された走行速度に対応する速度補正重み関数|V(n)|、|V(n)|を読み出し、姿勢角補正された鉛直方向の加速度Az1及びAz2と、読み出された速度補正重み関数に基づき、次式に従い加速度A’z1及びA’z2を求める。
A’z1=Az1/|V(n)|
A’z2=Az2/|V(n)|
【0065】
なお、速度補正重み関数を読み出す代わりに、処理部40は、第1の周波数応答、第2の周波数応答を記憶部50から読み出し、これらに基づいて速度補正重み関数を求めるようにしてもよい。
【0066】
(車両補正)
図5は、クォーターカー・モデルの説明図である。
IRIは、図5(a)に示すように、2軸4輪の乗用車の1輪を取り出して、「質量-ばね-ダッシュポット」で構成される2自由度の力学モデルで抽象化された仮想車両モデルにより算定される。この仮想車両モデルはクォーターカー・モデル(基準車)と呼ばれる。本実施の形態における平坦性測定装置は、例えば乗用車等に備えられることもでき、この場合、クォーターカー・モデル(基準車)と、測定車両とのシステムパラメータが異なるため、それによる周波数特性の相違を補正する。
【0067】
図5(b)は、クォーターカー・モデルの各要素を模式的に示したものである。IRI算出に用いられるクォーターカー・モデルの諸元は規定されているため周波数応答特性が計算できる。クォーターカー・モデルの各要素は、以下のパラメータで決まる。すなわち、図5において、c:車体懸架装置の減衰率、c:タイヤの減衰率、k:車体懸架装置の弾性率、k:タイヤの弾性率、m:バネ上質量(車輪一個によって支持された車体の重量)、m:バネ下質量(車輪・タイヤの各重量と車体懸架装置・車軸の各1/2重量)である。また、図5において、zはバネ上質量の変位、zはバネ下質量の変位、zは路面高さを示す。
【0068】
具体的数値は、各パラメータをバネ上質量mで除し基準化することにより、以下のように示されている。
/m=6.0(s-1
/m=0.0
/m=653(s-2
/m=63.3(s-2
/m=0.15
【0069】
また、クォーターカー・モデルの運動方程式は、次式で表すことができる。
【数6】
JP0004220929B2_000007t.gif

【0070】
上式をラプラス変換して整理することにより、路面入力に対する車体(バネ上)の第2の加速度及びタイヤ(バネ下)の第1の加速度の周波数応答関数を求めることができる。
【0071】
システムパラメータの相違を補正するとは、測定車両が基準車のパラメータと異なる諸元である場合、それによる周波数特性の相違を補正するものである。なお、測定車が規定の基準車で表現できる場合は補正を省略することができる。
【0072】
例えば、実車での振動測定などの適宜の方法で、路面入力に対するバネ下の第1の加速度の第3の周波数応答関数|G(n)|(nは周波数)を予め求めておき、基準車における同じ個所の第4の周波数応答関数|Hc(n)|で除すことにより、第1の加速度の車両補正重み関数|W(n)|(第1の車両補正重み関数)を予め求めて、記憶部50に記憶しておく。
|W(n)|=|G(n)|/|Hc(n)|
【0073】
また、バネ上の第2の加速度についても同様に、第2の車両補正重み関数|W(n)|を予め求めて、記憶部50に記憶しておく。
|W(n)|=|G(n)|/|Hc(n)|
ここで、|G(n)|は、路面入力に対するバネ下の第2の加速度の第3の周波数応答関数、|Hc(n)|は、基準車における同じ個所の第4の周波数応答関数である。
【0074】
測定の際には、測定加速度値に対して、車両補正重み関数による演算処理を行い、基準車で得られたものに変換することにより車両の相違補正を行う。
例えば、処理部40は、記憶部50を参照して、車両補正重み関数|W(n)|、|W(n)|を読み出し、速度補正された加速度A’z1及びA’z2と、読み出された車両補正重み関数に基づき、次式に従い加速度A’’z1及びA’’z2を求める。
A’’z1=A’z1/|W(n)|
A’’z2=A’z2/|W(n)|
【0075】
なお、車両補正重み関数を読み出す代わりに、処理部40は、第3の周波数応答関数、第4の周波数応答関数を記憶部50から読み出し、これらに基づいて車両補正重み関数を求めるようにしてもよい。
【0076】
なお、上述の説明では、路面入力に対する第1及び第2の加速度の周波数応答関数を用いているが、加速度以外のもの例えば路面入力に対する第1及び第2の変位の周波数応答関数を用いて補正重み関数を求め、第1及び第2の変位に対して速度補正計算、車両補正計算をするようにしても良い。
また、本実施の形態では、測定車両が路面を走行中にリアルタイムにIRIを求めることができる。
【0077】
4.変形例
また、姿勢角補正、速度補正、車両補正の各補正計算は、予め定められた適宜の順序で行うこともできる。この場合、補正された第1及び第2の加速度が次の補正の計算に順次用いられる。例えば、上述の第1の加速度についての補正計算の式を、一般的に表すと、以下のようになる。
【0078】
(姿勢角補正)
【数7】
JP0004220929B2_000008t.gif
ここで、A:検出された又は補正された第1の加速度、g:重力加速度、θ:検出された傾斜角(ピッチ角)、A:走行方向の加速度
【0079】
(速度補正)
B’=B/|V(n)| (2)
ここで、B:検出された又は補正された第1の加速度、|V(n)|:第1の加速度に対する速度補正重み関数
(車両補正)
C’=C/|W(n)| (3)
ここで、C:検出された又は補正された第1の加速度、|W(n)|:第1の加速度に対する車両補正重み関数
【0080】
上述のフローチャートの例は、姿勢角補正、速度補正、車両補正の順序で計算する例であり、検出された第1の加速度をAとして、式(1)に従い姿勢角補正された第1の加速度Az1を求め(姿勢角補正)、次に、求められたAz1をBとして、式(2)に従い速度補正された第1の加速度B’を求め(速度補正)、さらに、求められたB’をCとして、式(3)に従い車両補正された第1の加速度C’を求め(車両補正)、求められた第1の加速度C’に基づきIRIを求める例である。
【0081】
また、例えば、車両補正、速度補正、姿勢角補正の順序で計算する場合には、検出された第1の加速度をCとして式(3)に従い車両補正された第1の加速度C’を求め(車両補正)、求められた第1の加速度C’をBとして、式(2)に従い速度補正された第1の加速度B’を求め(速度補正)、さらに、求められたB’をAとして、式(1)に従い姿勢角補正された第1の加速度Az1を求め(姿勢角補正)、求められた第1の加速度Az1に基づきIRIを求めることができる。
【0082】
なお、第2の加速度についても同様である。また、他の順序で計算する場合も同様に、補正された加速度を用いて順次、補正計算を実行することができる。
【0083】
5.速度計による変形例
(装置構成)
図1に示す平坦性測定装置において、第1の検出器11及び第2の検出器12は、加速度計以外にも速度計であっても良い。速度計を用いる場合、一度の積分により変位を求めることができるので累積誤差を小さくできる。処理部40は、第1の検出器11及び第2の検出器で検出された第1の速度及び第2の速度に対して、姿勢角補正、車両補正、速度補正を適宜行い、補正された第1及び第2の速度に基づく相対変位Z’と測定道路区間長Lとに基づきIRIを求めることができる。
【0084】
(フローチャート)
この場合、図3に示すフローチャートにおいて、処理部40は、以下の処理を実行する。
まず、処理部40は、上述のステップS101と同様の処理を実行する。また、処理部40は、ステップS103で、加速度の代わりに速度を第1及び第2の検出器から入力する。処理部40は、ステップS105と同様の処理を実行する。ステップS107~S111は、一例として、処理部40は入力された速度を微分して加速度を求め、求められた加速度について上述と同様に姿勢角補正、速度補正、車両補正を行うことができる。また、処理部40は、上述のステップS115~S119の処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、例えば、道路管理に関する産業に利用可能である。また、本発明は、例えば、路線・車線等のサービスレベルの評価、乗り心地改良箇所の抽出と判定、工事の仕上がり確認と改良の効果検証に関する産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】平坦性測定装置の装置構成ブロック図。
【図2】記憶部に記憶されるデータのデータフォーマット例。
【図3】IRI算出のフローチャート。
【図4】傾斜角(ピッチ角)補正の説明図。
【図5】クォーターカー・モデルの説明図。
【図6】縦断プロファイル測定の概略図。
【図7】プロファイルの説明図。
【図8】クォーターカー・モデルの周波数応答特性(空間座標)を示す図。
【図9】クォーターカー・モデルの周波数応答特性(時間座標)を示す図
【符号の説明】
【0087】
11 第1の加速度検出器(第1の検出器)
12 第2の加速度検出器(第2の検出器)
20 ピッチ角(姿勢角)検出器
30 走行速度検出器
40 処理部
50 データ記録装置(記憶部)
60 GPS
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8