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明細書 :センサレス磁気浮上装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3563705号 (P3563705)
公開番号 特開2002-031134 (P2002-031134A)
登録日 平成16年6月11日(2004.6.11)
発行日 平成16年9月8日(2004.9.8)
公開日 平成14年1月31日(2002.1.31)
発明の名称または考案の名称 センサレス磁気浮上装置
国際特許分類 F16C 32/04      
G05D  3/12      
H02N 15/00      
FI F16C 32/04 A
G05D 3/12 E
H02N 15/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 14
出願番号 特願2001-046697 (P2001-046697)
出願日 平成13年2月22日(2001.2.22)
優先権出願番号 2000174451
優先日 平成12年5月8日(2000.5.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成13年5月25日(2001.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390033950
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
【識別番号】000140111
【氏名又は名称】株式会社荏原電産
発明者または考案者 【氏名】吉田 俊哉
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100068342、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 保男
【識別番号】100100712、【弁理士】、【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
【識別番号】100087365、【弁理士】、【氏名又は名称】栗原 彰
【識別番号】100100929、【弁理士】、【氏名又は名称】川又 澄雄
【識別番号】100095500、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 正和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100098327、【弁理士】、【氏名又は名称】高松 俊雄
【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
審査官 【審査官】礒部 賢
参考文献・文献 特開2000-060169(JP,A)
特開平08-145056(JP,A)
特開平09-126236(JP,A)
特開昭61-248916(JP,A)
特開昭61-153014(JP,A)
特開平03-154108(JP,A)
特開平05-087140(JP,A)
調査した分野 F16C 32/04
G05D 3/00 - 3/20
H02N 15/00
特許請求の範囲 【請求項1】
一対の電磁石の吸引力または反発力を利用して、磁性体をこの一対の電磁石の間に非接触で保持する装置において、前記一対の電磁石のそれぞれの巻線を直列に接続した直列回路と2端子回路網を直列に接続した直列回路とを並列に接続したブリッジ回路と、このブリッジ回路に給電するインバータ回路と、前記2つの直列回路の接続点間に接続された電流または電圧を検出する検出器と、この検出器からの検出出力に基づいて前記磁性体の位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段による検出結果からインバータ回路を制御して前記磁性体を所要の位置に制御する制御手段とを有することを特徴とするセンサレス磁気浮上装置。
【請求項2】
一対の電磁石の間に磁性体を配し、電磁石の巻線の電流またはその巻線に加える電圧を制御することで、上記磁性体を上記一対の電磁石に触れさせることなく配することができる装置において、この一対の電磁石のそれぞれの巻線を直列接続した直列回路と2つの2端子回路網を直列接続した直列回路とを並列接続することでブリッジ回路を構成し、この並列回路の両端にこのブリッジ回路の電源としてのインバータ回路の出力端子を接続し、上記の2つの直列回路の中点間に電流または電圧を検出する検出器の入力を接続し、この検出器の出力を上記インバータ回路のスイッチング動作に同期して同期整流を行う同期整流器の入力に接続し、この同期整流器の出力を入力とする制御器の出力を上記インバータ回路の電圧または電流制御入力端子に入力することを特徴とするセンサレス磁気浮上装置。
【請求項3】
請求項2記載のセンサレス磁気浮上装置において、同期整流器の出力と、インバータ回路の電圧または電流制御入力端子を、低域通過フィルタを介して接続したことを特徴とするセンサレス磁気浮上装置。
【請求項4】
請求項2記載のセンサレス磁気浮上装置において、同期整流器に替えて、インバータ回路のスイッチング動作に同期してサンプリングを行うサンプルホールド回路を用い、このサンプルホールド回路の入力を検出器の出力とし、このサンプルホールド回路の出力を制御器の入力としたことを特徴とするセンサレス磁気浮上装置。
【請求項5】
請求項1乃至4記載のいずれかのセンサレス磁気浮上装置において、一対の電磁石のそれぞれの巻線に電流源回路を並列接続したことを特徴とするセンサレス磁気浮上装置。
【請求項6】
請求項1乃至4記載のいずれかのセンサレス磁気浮上装置において、一対の電磁石にそれぞれ第2の巻線を施し、この第2の巻線に、個別にまたは共通に電源回路を接続したことを特徴とするセンサレス磁気浮上装置。
【請求項7】
電磁石の鉄心として永久磁石を用いるか、または磁路の一部を永久磁石としたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のセンサレス磁気浮上装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のセンサレス磁気浮上装置において、前記検出器は、2つの直列回路の接続点間に接続された1次側巻線と検出器の出力となるこの1次側巻線に対する2次側巻線とを具備する変圧器であることを特徴とするセンサレス磁気浮上装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のセンサレス磁気浮上装置において、前記2端子回路網の一方または両方は、インピーダンスが可変であることを特徴とするセンサレス磁気浮上装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、センサレス磁気浮上装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高速回転する回転機などにおいては、軸受けの摩擦を避けるため、磁気軸受け装置(磁気浮上装置)が用いられることがある。ここでいう磁気浮上装置とは、磁性体である浮上対象物を、電磁石の吸引力または反発力を利用して、他の物体に接触しないようにして保持するものであり、通常、電磁石の電流または電圧を制御してこれを実現する。この際、電磁石と浮上対象物の距離の情報の取得が必要となる。しかしながら、この情報を取得するためのセンサ装置を用いると、装置が大形化し、コストが増大する。このため、このセンサを用いない、いわゆるセンサレス磁気浮上方式がいくつか提案され、装置の簡単化が図られている。
【0003】
例えば公開特許公報「特開平6-229419」にあるように、電流ヒステリシス制御PWM(Pulsewidth Modulation)インバータ回路の負荷のインダクタンスが変化すると、そのスイッチング周波数が変化することを利用した制御が提案されている。このインバータ回路2台を一対の電磁石それぞれの電源として用いると、一対の電磁石の間に置かれた浮上対象物の位置により両電磁石の巻線のインダクタンス値が変化するため、両インバータ回路のスイッチング周波数が変化する。この両インバータ回路のスイッチング周波数を一致またはある比率となるようにPLL(Phase-Locked Loop)制御でインバータ回路の出力電流または電圧を制御すれば、一対の電磁石間に浮上対象物を保持することができる。
【0004】
また、日本機械学会論文集(C編)63巻609号(1997-5)掲載の論文「差動トランス方式セルフセンシング磁気軸受の研究」のように差動トランス方式を用いたセンサレス磁気浮上も提案されている。この方式も上述した一対の電磁石巻線のインダクタンス値の変化を利用した方式である。すなわち、両電磁石の巻線に、浮上対象物を浮上させるために必要な電流の他に、交流電流(または交流電圧)を重畳させ、その交流電流(または交流電圧)に対する2つの巻線の逆起電力の差(または電流の差)を検出することで、浮上対象物の位置を検出しようとするものである。本方式では、重畳させた交流電流(または交流電圧)と同じ周波数成分の信号のみを通過させる帯域通過フィルタを用い、電磁石の巻線両端の逆起電力(または巻線に流れる電流)から、重畳した交流電流(または交流電圧)に対する逆起電力(または巻線に流れる電流)の信号を抽出している。このとき、電磁石の電源としてPWMインバータ回路を使用した場合、インバータ回路が発生する高調波電流(または高調波電圧)の周波数が一定であれば、この電流(または電圧)を上述の交流電流(または交流電圧)として置き換えることができる。例えば特許出願公開公報「特開2000-060169」では、巻線の交流電圧に応じて変動する電流成分を帯域通過フィルタで抽出している。こうして得られた2つの巻線の逆起電力信号(または電流信号)の差を求め、乗算器を用いて重畳した交流電流(または電圧)の信号と掛け合わせることで、浮上対象物の位置情報を得る。これに応じて電磁石巻線の電流なり電圧なりを制御すれば、一対の電磁石間に浮上対象物を保持できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したPLL制御による方式では、電力制御を行うインバータ回路を複数台必要とすることから、依然、十分な装置の簡単化、低価格化がなされたとは言い難い。さらに、電流ヒステリシス制御PWMインバータ回路の特性、特にスイッチング周波数は、負荷のインダクタンス値や抵抗値等の変化によっても大きく変わるため、インバータ回路の特性は、電磁石の電気的特性や、浮上対象物の材質、形状等にも影響を受ける。したがって、装置を設計する際には、制御回路、電磁石、浮上対象物の全てを考慮して設計しなければならず、他の磁気浮上装置の制御回路や電磁石の流用、浮上対象物の交換等は難しい場合が多い。
【0006】
一方、上述の差動トランス方式では、位置情報となる逆起電力の検出に帯域通過フィルタを用いているため、中心周波数を正確に調整する必要があり、また、温度変化等で中心周波数が変化してしまう場合には大きな問題となる。また、重畳させる交流電流の周波数が変動する場合や、スイッチング周波数が一定でないPWMインバータ回路を使用した場合には、本方式の適用が困難となる。さらに、乗算器を用いるため、制御回路の低価格化が難しいという欠点を持っている。本方式は基本的に、差動トランスが平衡状態になるように制御するため、電磁石間における浮上対象物の安定点を任意に変更するためには、他の機構を付加する必要がある。安定点の変更は、例えば磁気軸受を使用する回転機構において、軸受取り付けの工作精度の悪さを補正するために有用である。しかし、制御回路に機構を付加して安定点を変更できるようにしたとしても、その安定点が差動トランスの平衡点となっているわけではないので、浮上位置が電圧・電流検出器の感度等の影響を受けやすくなる欠点がある。
【0007】
よって、本発明の目的は、上述の欠点を伴わない新規のセンサレス磁気浮上装置を提案するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の課題解決の手段は、一対の電磁石の吸引力または反発力を利用して、磁性体をこの一対の電磁石の間に非接触で保持する装置において、前記一対の電磁石のそれぞれの巻線を直列に接続した直列回路と2端子回路網を直列に接続した直列回路とを並列に接続したブリッジ回路と、このブリッジ回路に給電するインバータ回路と、前記2つの直列回路の接続点間に接続された電流または電圧を検出する検出器と、この検出器からの検出出力に基づいて前記磁性体の位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段による検出結果からインバータ回路を制御して前記磁性体を所要の位置に制御する制御手段とを有することで構成される。
【0009】
第2の課題解決の手段としては、一対の電磁石の間に磁性体を配し、電磁石の巻線の電流またはその巻線に加える電圧を制御することで、上記磁性体を上記一対の電磁石に触れさせることなく配することができる装置において、この一対の電磁石のそれぞれの巻線を直列接続した直列回路と2つの2端子回路網を直列接続した直列回路とを並列接続することでブリッジ回路を構成し、この並列回路の両端にこのブリッジ回路の電源としてのインバータ回路の出力端子を接続し、上記の2つの直列回路の中点間に電流または電圧を検出する検出器の入力を接続し、この検出器の出力を上記インバータ回路のスイッチング動作に同期して同期整流を行う同期整流器の入力に接続し、この同期整流器の出力を入力とする制御器の出力を上記インバータ回路の電圧または電流制御入力端子に入力することで構成される。
【0010】
第3の課題解決手段としては、上記の構成において、同期整流器の出力と、インバータ回路の電圧または電流制御入力端子を、低域通過フィルタを介して接続するように変更した構成とする。
【0011】
第4の課題解決手段としては、同期整流器に替えて、インバータ回路のスイッチング動作に同期してサンプリングを行うサンプルホールド回路を用い、このサンプルホールド回路の入力を検出器の出力とし、このサンプルホールド回路の出力を制御器の入力とした構成とする。
【0012】
第5の課題解決手段としては、上記の第1から4の課題解決手段において、一対の電磁石のそれぞれの巻線に電流源回路を並列接続した構成である。
【0013】
第6の課題解決手段としては、上記の第1から4の課題解決手段において、一対の電磁石にそれぞれ第2の巻線を施し、この第2の巻線に、個別にまたは共通に電源回路を接続した構成である。
【0014】
第7の課題解決手段としては、上記の第1から6の課題解決手段において、電磁石の鉄心として永久磁石を用いるか、または磁路の一部を永久磁石とした構成である。
【0015】
第8の課題解決手段としては、上記の課題解決手段において、前記検出器は、2つの直列回路の接続点間に接続された1次側巻線と検出器の出力となるこの1次側巻線に対する2次側巻線とを具備する変圧器である構成とする。
【0016】
第9の課題解決手段としては、上記の課題解決手段において、前記2端子回路網の一方または両方は、インピーダンスが可変である構成とする。
【0017】
【発明の実施の形態1】
本発明の第1の実施例について図1,2,3,4,5,6を使って説明する。
【0018】
図1において、一対の電磁石の巻線9,10と2つの二端子回路11,12でブリッジ回路を構成し、インバータ回路Xをそのブリッジ回路の電源としている。2つの二端子回路11,12の一例として、ここでは互いに等しい抵抗とするが、抵抗、インダクタンス、コンデンサ等の組み合わせから成る回路網も利用できる。インバータ回路Xは、例えば逆導通ダイオードを備えたバイポーラトランジスタ、MOS-FET,IGBT等のスイッチング素子4a,4bと直流電源5a,5b(共に同電圧)で構成されている。スイッチング素子への導通または非導通の指令信号は、否定回路7により4aと4bで互いに逆の関係を持ち、インバータ回路制御入力端子2の信号と三角波発振器8の出力とを入力とするコンパレータ6より与えられている。ブリッジ回路内には、bd間の電位差もしくはbdを流れる電流を検出する検出器13が配されており、この出力は、検出される電圧または電流に応じた信号、例えばそれらに比例した電圧が得られるものである。これには、絶縁増幅器や差動増幅器等が利用できる。この出力は、インバータ回路Xのスイッチングに同期して増幅度の符号が切り替わる同期整流器16に導かれる。同期整流器としては、例えば図2のように、演算増幅器B1、アナログスイッチB2、抵抗Ra,Rb,Rc(抵抗値は同値)で構成できることが知られている。この場合、入力はB3、同期入力はB4、出力はB5となる。同期整流器の同期には、インバータ回路出力端子1a,1bの端子間電圧を参照しても良いが、本実施例では、コンパレータ6の出力を参照している。同期整流器16の出力B5は制御器15に導かれ、その出力が上述のインバータ回路制御入力端子2へ帰還される。制御器15は、比例、比例積分、比例微分、比例積分微分等の良く知られているものとする。電磁石と浮上対象物の関係は図3のようになっている。すなわち、巻線9,10を含む電磁石Ma,Mbの間に、その間隔よりも小さい着磁された浮上対象物14が配されており、両電磁石の磁極と浮上対象物の磁極が対面するように置かれている。なお、浮上対象物の動きについては、図中の矢印方向のみに自由度があるものとする。
【0019】
以下に、上記第1の実施例の動作を簡単に説明する。なお、ここでは図3において、巻線9,10をそれぞれ含む一対の電磁石Ma,Mbが同一であるとする。電磁石Maと浮上対象物14との空隙と、電磁石Mbと浮上対象物14との空隙が等しくなるように浮上対象物14が置かれた場合、巻線9,10の端子間のインダクタンス値は同値となる。この浮上対象物14の位置を中心点とする。通常、空隙の透磁率よりも、電磁石の鉄心や浮上対象物の透磁率は数百倍から数千倍あるので、浮上対象物14が電磁石Ma側に近づくと、巻線9両端のインダクタンスが巻線10両端のそれよりも大きくなり、逆に電磁石Mb側に近づくと、巻線10両端のインダクタンスの方が大きくなる。したがって、浮上対象物14が中心点にある時には、この巻線9,10を含む図1のブリッジ回路は平衡状態となり、v2=0またはi2=0となる。なお、ここでいうv2およびi2は、それぞれbd間開放電圧およびbd間短絡電流を意味するものとする。また、浮上対象物14がこの位置よりも電磁石Ma側に近づいた場合、ブリッジ入力の電圧v1がv1>0の時はv2<0かつi2<0、v1<0の時はv2>0かつi2>0となる。逆に電磁石Mb側に近づいた場合、v1>0の時はv2>0かつi2>0、v1<0の時はv2<0かつi2<0となる。図1のコンパレータ6の二値出力は、インバータ回路Xの出力電圧の極性、すなわちv1の符号を表しているので、v2またはi2に比例する信号を検出する検出器13の出力を、この二値出力に同期して同期整流をする同期整流器16に入力すると、その出力信号fは、
浮上対象物が電磁石Ma側に偏った場合 f>0
浮上対象物が電磁石Mb側に偏った場合 f<0
浮上対象物が中心点にある場合 f=0
とすることができる。また、fの絶対値は、中心点からずれるほど大きくなる。したがって、この信号から浮上対象物の位置を知り得ることは明らかである。また、この検出信号fは、原理的に、インバータ回路のスイッチングの影響を受けないので、スイッチング周波数が変化する場合においても、浮上対象物の位置の情報を与える。一方、図3の巻線に対しaからcに向かって電流を流すと、浮上対象物は電磁石Maに吸引され、かつ電磁石Mbに反発され、電磁石Maの方向に力を受ける。逆にcからaに向かって電流を流すと、浮上対象物は電磁石Mbの方向に力を受ける。これより、上記信号fを、制御器15を介してインバータ回路の出力電圧を制御するインバータ回路制御入力端子2に帰還すれば、巻線9,10の電流が操作され、浮上対象物を中心点に保持するように制御が可能なことは明らかである。
【0020】
また、図4のように、電流検出器C1、誤差増幅器C2、比例積分微分制御器等の制御器C3を用いた電流制御系を持つインバータ回路を図1のインバータ回路Xと置き換えて使用した場合、二端子回路網11,12のインピーダンスを巻線9,10のインピーダンスに比べて十分大きく(例えばスイッチング周波数での巻線のリアクタンスの10倍以上)設定しておけば、二端子回路網の電流は無視でき、制御器15からの指令により直接的に巻線の電流が制御でき、上述の場合と同様、浮上対象物を中心点に保持するように制御が可能なことは明らかである。さらに、図5のようにスイッチング素子4c,4dの導通、非導通をそれぞれ4a,4bと逆の関係とし、4a,4bの中点および4c,4dの中点を出力とするインバータ回路を図1のXと置き換えた場合でも同様の効果が期待できる。加えて図6のように、図4同様、電流検出器C1、誤差増幅器C2、比例積分微分制御器等の制御器C3を用いた電流制御系を持つインバータ回路としても同様な効果が期待できることは明らかである。
【0021】
【発明の実施の形態2】
次に本発明の第2の実施例について、図1を使って説明する。本実施例の制御回路は、図1の同期整流器の出力端子B5と制御器15の入力との間を低域通過フィルタL1を介して接続したものであり、他の構成は第1の実施例と同じである。
【0022】
通常、インバータ回路等に用いる半導体スイッチング素子の導通、非導通の切替えには、若干の時間を要することが知られている。この時間遅れにより、第1の実施例に示した図1の同期整流器16の出力は、浮上対象物の位置情報を与えるものの、4a,4bの導通、非導通の切替え時に符号が変化してしまう。この時間遅れが顕著なスイッチング素子を使用した場合、この符号変化がノイズとなって制御器15に入力される可能性があり、場合によっては制御性悪化や制御不能となる。この符号変化は、インバータ回路Xのスイッチング素子の状態が変化するたびに発生することから、上記低域通過フィルタの通過域をインバータ回路Xのスイッチング周波数(すなわち三角波発生回路8の発振周波数)以下としておけば、このノイズの除去が期待でき、このようなスイッチング素子を使っても、浮上対象物を中心点に保持するように制御が可能となる。
【0023】
また、図面には示さないが、スイッチングの同期信号出力端子3と同期整流器の同期信号入力端子B4との間に遅延回路を挿入すると、同期整流器16とスイッチング素子4a,4bのスイッチングは、同期はしているものの時間的なずれが生ずる。このため、同期整流の出力信号は、スイッチング素子の動作に時間遅れがないとしても、スイッチング素子4a,4bの導通、非導通の切り替わりの際に、符号の変化が起こる。この信号を低域通過フィルタに通すと、従来から知られている同期整流器による時間微分が行われたことになり、浮上対象物の位置の時間微分の要素が含まれた信号が得られる。この構成では、制御器15に微分器を用いなくても、微分制御を施した効果が期待できる。
【0024】
【発明の実施の形態3】
次に本発明の第3の実施例について図7を使って説明する。
【0025】
第1の実施例では同期整流器を用い、その出力信号により、浮上対象物の中心点からの片寄りを検出し、浮上対象物の制御に用いていたが、本実施例では、図7のように、インバータ回路Xのスイッチング動作に同期してサンプリングを行うサンプルホールド回路16aを用い、この入力を検出器13からの検出信号とし、出力を制御器15の入力とする。この変更点以外は、第1の実施例の構成と同じである。なお、サンプリングのタイミングは、インバータ回路のスイッチングの同期信号出力端子3から得ており、例えばその二値出力が「1」と「0」であるとすれば、「1」のときサンプリングして、「0」のときサンプリングしたデータを保持するといった動作をするものとする。
【0026】
第1の実施例で、述べたように、図3の浮上対象物14が中心点にある時には、巻線9,10を含む図7のブリッジ回路は平衡状態となり、v2=0またはi2=0となる。(v2およびi2は、それぞれbd間開放電圧およびbd間短絡電流)また、浮上対象物14がこの位置よりも電磁石Ma側に近づいた場合、ブリッジ入力の電圧v1がv1>0の時はv2<0かつi2<0、v1<0の時はv2>0かつi2>0となる。逆に電磁石Mb側に近づいた場合、v1>0の時はv2>0かつi2>0、v1<0の時はv2<0かつi2<0となる。すなわち、v1>0もしくはv1<0のどちらかの時のみ、検出器13からの出力をサンプリングすれば、浮上対象物の中心点からの方向も含めた偏差情報を得ることができる。よって、詳細な説明は割愛するが、この構成により、浮上対象物を中心点に保持するように制御が可能なことは明らかである。なお、ディジタル制御器を用いて本制御回路を構築した場合、ディジタル制御器が備えているサンプルホールド回路をこのサンプルホールド回路16aとして見立て、そのサンプリングを、インバータ回路のスイッチングに同期させ、v1>0もしくはv1<0のどちらか一方の時に行えばよい。
【0027】
【発明の実施の形態4】
次に本発明の第4の実施例について図1、図3、図8を使って説明する。
【0028】
第4の実施例においては、図1の巻線9および10として、図8の回路を用いたものとなる。すなわち、第1の実施例では、図3の電磁石および浮上対象物を用いたが、本実施例では図8とした以外は何ら変わらない。A1,A2は電流源回路であり、共に直流電流Icを供給している。また、浮上対象物14aは着磁されていない磁性体とし、その機械的な自由度は矢印方向のみとする。ここで、二端子回路網のインピーダンスが巻線9,10のインピーダンスよりも十分大きい(例えばインバータ回路のスイッチング周波数での巻線のリアクタンスの10倍以上)として二端子回路網の電流を無視できると考える。図1のインバータ回路Xが、ブリッジ回路に電流Iを供給していたとすると、巻線9,10の電流Im1,Im2はそれぞれ、
Im1=Ic+I
Im2=Ic-I
となる。さらに、Iの絶対値がIc以下の範囲では、Im1,Im2は非負で、両電流はIの変化に対し差動的となる。したがって、電流Iを操作すれば、電磁石Ma,Mbの吸引力の差を調節できるので、浮上対象物に加わる力を双方向で制御できることになる。この制御性は、第1の実施例で説明した図3と同等となる。ゆえに、詳細な説明は割愛するが、浮上対象物が着磁されていない磁性体を電磁石間の中心点に保持するように制御できることが明らかである。
【0029】
【発明の実施の形態5】
次に本発明の第5の実施例について図1、図3、図9を使って説明する。
【0030】
第5の実施例においては、図1の巻線9および10として、図9の回路を用いたものとなる。すなわち、第1の実施例では、図3の電磁石および浮上対象物を用いたが、本実施例では図9とした以外は何ら変わらない。A3,A4は、巻線9,10とそれぞれ磁路を共有し、それぞれ和動的および差動的となるように巻かれた互いに同じ巻数のバイアス磁束用巻線であり、A5はその電源回路である。浮上対象物14aは着磁されていない磁性体とし、その機械的な自由度は矢印方向のみとする。電源A5より一定電流を供給すれば、巻線9および巻線A3で発生する起磁力は鉄心で加算され、巻線10および巻線A4で発生する起磁力は減算されるので、Iの変化に対しそれぞれの鉄心に加わる起磁力は差動的に変化する。よって、巻線A4が発生する起磁力の大きさが、巻線10のそれよりも常に大きくなるように、巻線A4の電流を設定しておけば、それぞれの電磁石の吸引力の変化は、第4の実施例の場合と同様となり、やはり、電流Iを操作すれば、電磁石Ma,Mbの吸引力の差を調節できるので、浮上対象物に加わる力を双方向で制御できることになる。ゆえに、詳細な説明は割愛するが、浮上対象物が着磁されていない磁性体を、第4の実施例と同様、電磁石間の中心点に保持するように制御できることが明らかである。なお、本実施例では、2つのバイアス磁束用巻線を直列接続して共通の電源より電流を供給したが、並列として共通の電源から電流を供給した場合や、個別の電源を使用した場合についても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0031】
【発明の実施の形態6】
次に本発明の第6の実施例について図1、図3、図10を使って説明する。第6の実施例においては、図1の巻線9および10として、図10の回路を挿入したものとなる。すなわち、第1の実施例では、図3の電磁石および浮上対象物を用いたが、本実施例では図10とした以外は何ら変わらない。それぞれの電磁石に永久磁石A6およびA7が取り付けられており、永久磁石の磁力と一対の電磁石が発生する磁力がそれぞれ加算、減算されるようになっている。浮上対象物14aは着磁されていない磁性体とし、その機械的な自由度は矢印方向のみとする。このようにすると、この永久磁石は、上記の第5の実施例のバイアス磁束用巻線と同じ働きをする。ここで、電磁石が発生する磁力よりも永久磁石の磁力の方が常に大きくなるように永久磁石を選ぶか、あるいは電磁石の電流の動作範囲を制限すれば、詳細な説明は割愛するが、動作上は第5の実施例と等価となり、浮上対象物が着磁されていない磁性体を電磁石間の中心点に保持するように制御できることが明らかである。また、電磁石の磁路自体を永久磁石としても同様な結果が得られることは言うまでもない。
【0032】
【発明の実施の形態7】
次に本発明の第7の実施例について図1、図11を使って説明する。
【0033】
図11は、本発明の第7の実施例を示したものであり、図1における検出器13として絶縁変圧器13aを用いたものである。ブリッジ回路のbd間に絶縁変 圧器13aの一次側巻線が接続され、二次側巻線の一端を基準として、他端を検出信号出力端子としている。検出器13は、ブリッジ回路が平衡状態であるか否かを計測することを目的としているが、その情報を得るには、ブリッジ回路のbd間の電圧または電流の交流成分のみが検出されればよい。したがって、検出器として絶縁変圧器を用いることは可能である。また、本実施例の回路では、装置が動作中である間、インバータ回路は常にスイッチング動作をしているため、ブリッジ回路には常に交流電圧成分が入力されていることになる。よって、ブリッジ回路の状態は常に絶縁変圧器13aを介して知ることができる。したがって、詳細な説明は割愛するが、他の実施例と同様、本実施例の構成によっても浮上対象物の位置制御が可能であることは明らかである。
【0034】
【発明の実施の形態8】
次に本発明の第8の実施例について図1、図3、図12を使って説明する。
【0035】
図12は、本発明の第8の実施例を示したものであり、図1における二端子回路網11,12を可変抵抗R1,R2としたものである。第1の実施例では、2つの二端子回路網を同一抵抗値の抵抗としたが、本実施例では、これらの抵抗値を変化させることで、ブリッジ回路の平衡点を変更し、浮上対象物の浮上位置を変更できるようにした構成を示している。図3において、浮上対象物14を電磁石Maに接触させた時の巻線9および10の両端間のインダクタンスをそれぞれLa1,Lb1とし、浮上対象物14を電磁石Mbに接触させた時の巻線9および10の両端間のインダクタンスをそれぞれLa2,Lb2とした時、
La1÷Lb1>R1÷R2>La2÷Lb2
の範囲で抵抗値を選べば、一対の電磁石間で任意の位置に浮上対象物を配置させることができる。なお、本実施例では、二端子回路網11,12を可変抵抗としたが、可変インダクタンスや可変キャパシタンスも使用できることは言うまでもない。また、これらの素子にトランジスタ等の外部信号によりインピーダンスが操作できる素子を用いても同様な効果が得られる。
【0036】
【発明の効果】
本発明による磁気浮上装置では、従来の技術として例に挙げたPLL制御によるセンサレス磁気浮上装置が持つ問題、すなわちインバータ回路を複数台使用しているため、十分な簡単化ができていないという問題点や、電流ヒステリシス制御PWMインバータ回路を使用することの欠点でもある、制御回路、電磁石、浮上対象物の全てを考慮しての設計が必要という問題点を解決している。これにより、低価格化はもちろんのこと、制御回路に汎用性を持たせることができるので、制御回路と磁気回路を別個に設計し、別個に提供することができるようになった。また、浮上対象物の位置検出に帯域通過フィルタを用いていないので、差動トランス方式を用いたセンサレス磁気浮上が持っている、帯域通過フィルタの中心周波数設定の難しさや、中心周波数の変動に関する問題は解消される。本発明の実施においては、同期整流器を用いるかサンプルホールド回路を用いるかの選択ができるが、前者を選択した場合、差動トランス方式で用いられていた乗算器を用いることなく安価に制御回路を構成できる。また、同期整流器の出力に低域通過フィルタを用いることで、スイッチング素子の時間遅れに起因する、同期整流器出力におけるノイズの除去や、遅延回路との併用で浮上対象物の位置の時間微分演算も可能となり、微分器を用いなくとも微分制御を含めることが可能となる。ディジタル制御器を用いて本制御回路を構築した場合、ディジタル制御器が備えているサンプルホールド回路をそのまま利用できる後者の方式が有用となる。
【0037】
さらに、電磁石の巻線に電流源回路を付け加えることで、着磁されていない磁性体の制御も可能となる。同じ効果が、電磁石に第2の巻線を施し、この2つの巻線に、個別にまたは共通に電源回路を接続することでも可能となる。また、電磁石の鉄心として永久磁石を用いるか、または磁路の一部を永久磁石とすることでも同様の結果が得られる。この場合は電源の追加が不要という利点もある。
【0038】
一方、1次側巻線を入力、2次側巻線を出力とした変圧器を本装置内部のブリッジ回路の状態を検出する検出器として使用した場合、絶縁増幅器や差動増幅器等の回路を用いた場合に比べ、制御回路を安価に構築できるメリットをもたらす。また、ブリッジ回路内の二端子回路網の一方もしくは両方を可変インピーダンスとすることで、浮上対象物の位置をも制御することができる。このことは、浮上対象物を駆動する一種のアクチュエータとしても利用できることを意味する。また、電磁石の設置に際し、その設置の機械的精度が悪い場合には、浮上位置を変更することで設置の精度を補正することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるセンサレス磁気浮上装置の第1から第8までの実施の形態における基本となる制御回路の回路図を示したものである。
【図2】同期整流器の回路例を示した回路図である。
【図3】本発明によるセンサレス磁気浮上装置の第1の実施形態に用いる電磁石部分と浮上対象物を示した接続図である。
【図4】図1において使用しているインバータ回路Xに替えて使用されうる電流制御系を持つインバータ回路の回路図を示したものである。
【図5】図1において使用しているインバータ回路Xに替えて使用されうるインバータ回路の回路図である。
【図6】図1において使用しているインバータ回路Xに替えて使用されうる電流制御系を持つインバータ回路の回路図を示したものである。
【図7】本発明によるセンサレス磁気浮上装置の第3の実施形態の制御回路部分の回路図である。
【図8】本発明によるセンサレス磁気浮上装置の第4の実施形態に用いる電磁石部分と浮上対象物を示した接続図である。
【図9】本発明によるセンサレス磁気浮上装置の第5の実施形態に用いる電磁石部分と浮上対象物を示した接続図である。
【図10】本発明によるセンサレス磁気浮上装置の第6の実施形態に用いる電磁石部分と浮上対象物を示した接続図である。
【図11】本発明によるセンサレス磁気浮上装置の第7の実施形態の制御回路部分であり、ブリッジ回路の状態検出に絶縁変圧器を用いた場合の回路図である。
【図12】本発明によるセンサレス磁気浮上装置の第8の実施形態の制御回路部分であり、ブリッジ回路の二端子回路網として可変抵抗を適用した場合の回路図である。
【符号の説明】
1a,1b インバータ回路出力端子
2 インバータ回路制御入力端子
3 スイッチングの同期信号出力端子
4a,4b,4c,4d スイッチング素子
5,5a,5b 直流電源
6 コンパレータ
7 否定回路
8 三角波発生回路
9,10 電磁石の巻線
11,12 二端子回路網
13 電圧(電流)の検出器
13a 絶縁変圧器
14 着磁されている浮上対象物
14a 着磁されていない浮上対象物
15 制御器
16 同期整流器
16a サンプルホールド回路
B1 演算増幅器
B2 アナログスイッチ
B3 同期整流器の信号入力端子
B4 同期整流器の同期信号入力端子
B5 整流信号出力端子
Ra,Rb,Rc 抵抗(抵抗値は全て同値)
Ma,Mb 電磁石
C1 電流検出器
C2 誤差増幅器
C3 電流制御用の制御器
L1 低域通過フィルタ
A1,A2 電流源回路
A3,A4 バイアス磁束用巻線
A5 バイアス磁束用巻線の電源回路
A6,A7 永久磁石
R1,R2 二端子回路網としての抵抗およびその抵抗値
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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