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明細書 :フッ化アルコール溶液

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4803334号 (P4803334)
公開番号 特開2002-332480 (P2002-332480A)
登録日 平成23年8月19日(2011.8.19)
発行日 平成23年10月26日(2011.10.26)
公開日 平成14年11月22日(2002.11.22)
発明の名称または考案の名称 フッ化アルコール溶液
国際特許分類 C09K   9/02        (2006.01)
C08F 220/28        (2006.01)
C08F 220/34        (2006.01)
C08F 220/38        (2006.01)
FI C09K 9/02 B
C08F 220/28
C08F 220/34
C08F 220/38
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2001-139051 (P2001-139051)
出願日 平成13年5月9日(2001.5.9)
審査請求日 平成20年5月9日(2008.5.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 隆之
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100100712、【弁理士】、【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
【識別番号】100100929、【弁理士】、【氏名又は名称】川又 澄雄
【識別番号】100095500、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 正和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100098327、【弁理士】、【氏名又は名称】高松 俊雄
審査官 【審査官】水島 英一郎
参考文献・文献 特開昭63-199279(JP,A)
特開平02-014284(JP,A)
特開平07-159923(JP,A)
特開平07-159922(JP,A)
特開平02-152981(JP,A)
特開平02-131486(JP,A)
特開昭50-028824(JP,A)
特開平07-062021(JP,A)
調査した分野 C09K 9/02
C08F 220/28
C08F 220/34
C08F 220/38
G03C 1/685
G03C 1/73
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
フォトクロミック化合物を溶解してなるフッ化アルコール溶液であって、前記フォトクロミック化合物は下式(1)に示す(a)および(b)を必須セグメントとする共重合体であることを特徴とするフッ化アルコール溶液
【化1】
JP0004803334B2_000004t.gif
(ただし、式(1)中、R、R、RおよびRは独立にHまたはCHであり、Rはアルキル基またはアミド基であり、Rはフッ化アルキル基であり、Xは一個の水素原子を結合した炭素原子、または窒素原子であり、Yは酸素原子または硫黄原子である。)
【請求項2】
前記共重合体が、1´,3´,3´-トリメチル-6-(メタクリロイルオキシ)スピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2´-インドール)と、3-ペルフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートとの共重合体である請求項1記載のフッ化アルコール溶液
【請求項3】
前記フッ化アルコールが1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-オールである請求項1または2記載のフッ化アルコール溶液
【請求項4】
前記共重合体中のスピロピランセグメントの含有率が70mol%~90mol%である請求項3記載のフッ化アルコール溶液
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、フォトクロミック化合物に係り、詳しくは、光照射によって色と共に粘性抵抗を可逆的に制御できるフォトクロミック化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
電圧の印加や電場の向きを変えることにより、可逆的な弾性率や溶液粘性の変動を示す各種化合物が提案されており、使用環境における振動を吸収するダンパー、動力伝達装置、圧力変換装置等、種々の用途に利用されている。
一方、上記した電圧の印加等の装置や操作を必要とせずに化合物が可逆的な二つの異性体の形態をとり得る現象として、化合物への光の照射により可逆的に該化合物が変色するフォトクロミズムが挙げられる。フォトクロミズムを示す化合物(以下、フォトクロミック化合物という。)には、例えば、スピロピランやスピロオキサジン分子のメロシアニン構造を利用した化合物が挙げられる。そして、スピロピランやスピロオキサジン分子によれば、色と共に粘度も光照射で変化することが報告されている(M.Irie,A.Menju,K.Hayashi,Macromolecules,1981,12,1176およびA.Menju,K.Hayashi,M.Irie,Macromolecules,1981,14,755参照)。
これらフォトクロミック化合物の光応答性の可逆的制御には紫外光を照射する必要があるため、紫外光によるフォトクロミック化合物の劣化が副生する。また、紫外光照射装置により設備が大型であることや、照射コストが高い問題があった。
そこで、紫外光を用いずにメロシアニン構造を安定化させる手法として、金属イオンとの錯形成が頻繁に用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
金属イオンとの錯形成は、スピロピランやスピロオキサジンを溶媒に溶解させ、スピロピランやスピロオキサジンの分子のメロシアニン構造を、溶媒中の銅、鉛等の金属イオンとの錯形成によって安定化させるものである。しかしながら、これら金属は製品廃棄後の処理が煩雑であり、産業廃棄物の減量や有害金属の流出防止等、環境安全性の点で問題があった。
したがって、本発明の目的は、変色と共に粘度も可逆的に光応答性制御でき、制御に紫外光照射を必要とせず、またメロシアニン構造を安定化させるための金属イオンを含まないフォトクロミック化合物を提供することにある。
【0004】
本発明者は、スピロピランセグメントまたはスピロオキサジンセグメントとフッ化アルコールセグメントとを有する共重合体であって、可視光照射に応答して、共重合体中のメロシアニン構造体とフッ化アルコールセグメントとの分子内水素結合の生起を可逆的に制御でき、さらにこの光応答性の共重合体を溶解したフッ化アルコール溶液の粘性抵抗もこの溶液に照射する光の波長(可視光と紫外光)および強度によって可逆的に調整できる共重合体を合成し、さらに諸条件を確立して上記課題を解決した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、下式(1)に示す(a)および(b)を必須セグメントとする共重合体がフッ化アルコールに溶解してなることを特徴とするフォトクロミック化合物を要旨とする。
【化2】
JP0004803334B2_000002t.gifただし、式(1)中、R、R、RおよびRは独立にHまたはCHであり、Rはアルキル基またはアミド基であり、Rはフッ化アルキル基であり、Xは炭素原子、窒素原子または硫黄原子であり、Yは酸素原子または硫黄原子である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のフォトクロミック化合物は、上記式(1)で示される、(a)のセグメントすなわちスピロピランセグメントまたはスピロオキサジンセグメントと、(b)のセグメントすなわちフッ化アルコールセグメントとを、必須とする共重合体を溶質とし、フッ化アルコールを溶媒として溶解した溶液である。
式(1)中、R、R、RおよびRは独立にHまたはCHであり、重合体は、RおよびRがHであればアクリレート共重合体、CHであればメタクリレート重合体である。
【0007】
はアルキル基またはアミド基である。Rは、具体的にはメチル基、エチル基、ドデシル基等が例示される。
は、アルキル基の少なくとも1つの水素原子が弗素で置換されているフッ化アルキル基である。Rは、例えば-(CF)CHCHのように、フッ化アルコールセグメントの水酸基に近い位置の水素がフッ化されているのが好ましく、ペルフルオロアルキル基であればさらに好ましい。Rは、具体的にはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロドデシル基等が例示される。
Xは炭素原子、窒素原子または硫黄原子であり、Yは酸素原子または硫黄原子である。
(a)セグメントと(b)セグメントとの重合は、ブロック状の重合であっても、交互の重合であっても良く、特に限定されない。
以下、Xが炭素原子でYが酸素原子の場合、すなわち共重合体がメロシアニン構造のために(a)セグメントとしてスピロピランセグメントを有する場合について説明する。
【0008】
上記共重合体におけるスピロピランセグメントは、電気的に中性なスピロピラン構造体と、分子内に双性イオンを有するメロシアニン構造体とに、光照射によって可逆的に異性化する光応答性を有する。
【0009】
前記共重合体中のスピロピランセグメントが、メロシアニン構造体をとると、メロシアニン構造体とフッ化アルコールセグメントとに、分子内水素結合が生起する。分子内水素結合はメロシアニン構造体がスピロピラン構造体に戻ると解消する。分子内水素結合により、フォトクロミック化合物の変色及びフォトクロミック化合物を含む溶液の粘性抵抗変化を生じる。
【0010】
図1に、本発明の実施態様の一例である、スピロピランとフッ化アルコールとのメタクリレート共重合体のフッ化アルコール溶液(実線)と、このスピロピラン単量体のフッ化アルコール溶液(破線)との、暗所下の高粘性時における紫外可視吸収スペクトルを示す。なお、図1ではスピロピランのメタクリレート(以下、SPMAという。)として1´,3´,3´-トリメチル-6-(メタクリロイルオキシ)スピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2´-インドール)を使用し、フッ化アルコールのメタクリレート(以下、FHMAという。)として3-ペルフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートを使用し、溶液中の溶媒であるフッ化アルコールには、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-オール(以下、HFPという。)を使用した。
【0011】
上記共重合体のHFP溶液は、暗所下では共重合体中のスピロピランセグメントが異性化してメロシアニン構造をとるため着色する。ただし、スピロピラン単量体のHFP溶液と比べると若干色合いが異なる橙色である。
すなわち、図1に示すように、共重合体の吸収スペクトルには、重合前のスピロピラン単量体にはない、可視領域における長波長側の吸収帯が現れる。
このとき、次の式(2)に示すように、共重合体内で開環したメロシアニン構造体の酸素イオンと、同一分子内のフッ化アルコールセグメントの水酸基の水素との間に分子内水素結合が生起している。なお、式(2)中、nはセグメントのモル比を示し、0<n<1である。
【化3】
JP0004803334B2_000003t.gif【0012】
上記暗所下にあった共重合体溶液に、外部から可視光(>420nm)を照射する。すると、メロシアニン構造体が閉環してスピロピラン構造体に異性化するため、前記の可視領域の吸収帯は消失し、共重合体溶液は無色透明となる。そして、これまで同一分子内で水素結合していた共重合体内のフッ化アルコールセグメントは、他の分子中のフッ化アルコールセグメントと水素結合するようになり、架橋構造が形成されて共重合体自体はゲル化する。ゲル化した共重合体は溶媒のフッ化アルコール中で浮遊するため、溶液全体の粘性は低下する。
【0013】
可視光の照射を停止し、共重合体溶液を暗所中に置くと、再度、共重合体中のスピロピランセグメントはメロシアニン構造となり、同一分子内のフッ化アルコールセグメントと水素結合するため、架橋構造のフッ化アルコールセグメント同士の水素結合が切断される。
このとき、共重合体溶液は再度橙色に着色し、また、ゲル化した共重合体は再度溶媒中に溶解して溶液全体の粘度は上昇する。
【0014】
上記で、可視光を照射せずに暗所中に置く際に、紫外光の照射で代用しても良く、ここで、次に可視光を照射する際は同時に紫外光照射を停止する。
【0015】
上記した共重合体溶液の光応答性は、光の照射時間と同様に光の照射強度にも対応する。例えば暗所下にあった橙色の共重合体溶液に可視光を照射する場合、可視光の照射強度や照射時間により、溶液の無色透明化および粘性低下の進行を制御することができる。
【0016】
図2は、図1で用いたと同じ溶液を可視光照射後に暗所で放置した際の、550nmの吸光度で表した着色と動粘度との経時変化を示すグラフである。共重合体中のスピロピランセグメントのスピロピラン構造体からメロシアニン構造への経時変化と、動粘度の経時変化とが一致していることから、スピロピランセグメントの構造異性化を誘起する可視光照射の有無によって共重合体溶液の粘性を制御できるのがわかる。
【0017】
共重合体のフッ化アルコール溶液は、溶質の共重合体濃度が高いほど、粘性抵抗に大きな変化が得られるため好ましい。ただし、共重合体中のスピロピランセグメントの含有率が少なすぎると、共重合体のフッ化アルコール溶媒への溶解性が暗所下においてさえも減少する。スピロピランセグメントの含有率は、例えば前記の式(2)の場合では共重合体中のスピロピランセグメント/(スピロピランセグメント+フッ化アルコールセグメント)のモル比の値nにあたる。共重合体中のスピロピランセグメントの含有率は、フッ化アルコール溶媒への共重合体の溶解性、要求される特性等に合わせて適宜選択される。例えば、上記実施態様で例示したHFP溶液の場合は、上記共重合体をHFPに高濃度で溶解させるためには、共重合体中のスピロピランセグメントの含有率は、共重合体中の70mol%以上であるのが好ましい。
【0018】
一方、フッ化アルコールセグメントからの分子内水素結合供与のためには、ある程度の量のフッ化アルコールセグメントが必要であるため、共重合体のスピロピランセグメントの含有率は90mol%以下であるのが好ましい。
【0019】
溶媒のフッ化アルコールは、溶質である共重合体の溶解性が高いもの、水素結合供与性が高いもの、光に対する応答速度の速いもの等が好ましい。具体的にはHFPの他、例えば2,2,2-トリフルオロエタノールや、2-フルオロエタノール等が挙げられる。このうち、共重合体の溶解性が高く粘性変化の幅が広い点でHFPが好ましく、また、光に対する応答速度が速い点では2,2,2-トリフルオロエタノールが好ましい。
【0020】
以上、SPMAとして1´,3´,3´-トリメチル-6-(メタクリロイルオキシ)スピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2´-インドール)、FHMAとして3-ペルフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートを使用した場合について説明したが、式(1)における他のスピロピラン、他のフッ化アルコールやアクリレートを使用したフォトクロミック化合物についても同様な光応答性を有する。さらに、スピロピランは式(1)における(a)セグメントのXが炭素原子、Yが酸素原子の場合であるが、他のX、Yの組み合わせの場合も同様である。
さらに、共重合体中には、式(1)の(a)および(b)のセグメント以外に、必要に応じて、他のセグメントを含んでも良い。これには、例えばエチレン性不飽和基を有する化合物を使用できる。
【0021】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、本実施例により本発明を限定するものではない。
(実施例1)
スピロピランメタクリレート(SPMA)の合成:▲1▼ 1´,3´,3´-トリメチル-6-ヒドロキシスピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2´-インドール) 4.72g(0.0161mol)(ACROS ORGANICS社製、純度99%、FW 293.37、品番42192-0050)をトルエン(関東化学社製、特級、純度99.5%、沸点110.625℃) 28ミリリットルに溶解させた。
▲2▼ メタクリル酸クロライド(ACROS ORGANICS社製、760mmHgの沸点95~96℃) 1.84g(0.0176mol)を、トルエン(同上) 14ミリリットルに溶解させた。
▲3▼ 別に、トリエチルアミン(以下、TEAという。)(和光純薬社製、純度99%、品番202-02646) 1.79g(0.0114mol)を用意した。また、アンモニア(関東化学社製、純度28.0~30.0%、品番01266-00) 400ミリリットルの純水 100ミリリットル溶液を1単位として、5単位用意した。
▲4▼ 二口なすフラスコ内に上記▲1▼で得たスピロピランのトルエン溶液と、上記▲3▼のTEAとを投入し、二口なすフラスコの一つの口には球入冷却器、もう一方の口には円筒型分液ロートを装着した。二口なすフラスコを60℃に保温しながら円筒型分液ロートで上記▲2▼のメタクリル酸クロライドのトルエン溶液を少しずつ滴下した後、24時間反応させた。なお、この反応で発生した塩酸は、TEAで中和された。24時間後に、反応溶液から未反応のメタクリル酸クロライドとTEAを取り除くために、反応溶液をトルエン100ミリリットルで希釈し、次いで分液ロート内に移して上記▲3▼のアンモニア水溶液を1単位加えた。分液ロートを振り混ぜ、静置して下層のアンモニア水溶液を取り出し、残りの▲3▼のアンモニア水溶液の1単位を加え、同様にして分液を計5回繰り返した。
▲5▼ アンモニア水溶液の代わりに純水を100ミリリットル加え、同様にしてpHが7になるまで計5回分液を繰り返した。
▲6▼ 分液ロート上層の液を、エバポレータによってトルエンを蒸発させ、次いで減圧乾燥させた。これによって得られた褐色固体をジクロロメタンに溶かしてカラムクロマトグラフィにかけ、不純物を分離した。カラムはシリカゲル(関東化学社製、品番:9385-4M、Rf:0.86)展開溶媒はジクロロメタンを使用した。
▲7▼ カラムから排出した液を、エバポレータでジクロロメタンを蒸発させ、次いで減圧乾燥させてスピロピランメタクリレート(SPMA)単量体である、1´,3´,3´-トリメチル-6-(メタクリロイルオキシ)スピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2´-インドール)を1.11g(収率23.5%)得た。
【0022】
共重合体の合成:上記で得たSPMA単量体の1´,3´,3´-トリメチル-6-(メタクリロイルオキシ)スピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2´-インドール) (分子量361.44)を500mg(1.38mmol)用意した。また、フッ化アルコールのメタクリレート(FHMA)として3-ペルフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(分子量562.22)をSPMAと等モル比の780mg(1.39mmol)用意した。
他に、DMSO 8ミリリットル、重合開始剤AIBN 7.6mg(SPMAとFHMAの合計モル数の1/60)、重合禁止剤ハイドロキノン(東京化成工業社製、99.0%、品番H0186) 15mg、純水を用意した。
【0023】
まず、SPMAとFHMAを、各々DMSOの4ミリリットルずつに溶かして得た2種の溶液を、一つの口には球入冷却器、もう一方の口にはゴム栓付きパスツールピペットを装着した二口なす形フラスコに入れて混合した。
前記フラスコ内に乾燥窒素をパスツールピペットから20分間フローさせて装置内から湿気および空気を除去した。
オイルバスでフラスコの温度を60℃に上げ、重合開始剤を加えて2時間反応させた後、重合禁止剤を加えて反応を止めた。
【0024】
フラスコ内の反応生成物を、大量の純水中に少しずつ滴下して沈殿精製した。
この沈殿を、ろ紙で濾別した後、さらに減圧乾燥して1´,3´,3´-トリメチル-6-(メタクリロイルオキシ)スピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2´-インドール)と3-ペルフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートとの共重合体(P(SPMA-FHMA)) 890mg(収率69.5%)を得た。この共重合体中の各セグメントのモル比を、1H-NMR測定による各部位の積分比から算出したところ、SPMA:FHMAは71:29であり、すなわちスピロピランセグメント含有率は71mol%であった。
【0025】
上記で得たP(SPMA-FHMA) 33mgを、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-オール(HFP) 10ミリリットルを溶媒として溶解して8.0mM濃度のHFP溶液を調製した。このHFP溶液の粘度および紫外可視吸収スペクトルを、暗室、室温の条件で、以下のように測定した。
【0026】
(粘度測定)
前記で調製した橙色のP(SPMA-FHMA)のHFP溶液を暗所下で24時間放置して平衡状態とした。次いで、キセノンランプから紫外光をフィルターを介して除いた可視光を約10分間照射した後、照射を終了した。このとき溶液は、十分に色が薄く、無色透明に近くなっていた。
照射終了直後の溶液をウベローデ粘度計(SIBATA社製。使用粘度範囲 1~5cSt)を用いて粘度測定し、さらに10分おきに照射終了から合計60分間、粘度の経時変化を測定した。
【0027】
(スペクトル測定)
上記で調製した共重合体P(SPMA-FHMA)のHFP溶液を暗所下で24時間放置して平衡状態とした後、紫外可視吸収スペクトルを測定した。比較のために、SPMA単量体である、1´,3´,3´-トリメチル-6-(メタクリロイルオキシ)スピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2´-インドール)の8.0mM濃度HFP溶液の紫外可視吸収スペクトルも同様に測定した。図1に、共重合体溶液の吸収スペクトルを実線で、単量体溶液の吸収スペクトルを破線で示す。
【0028】
別に、上記で粘度を測定した後のHFP溶液を1mm光路長の石英セルに入れ、溶液が無色透明に近くなるまで、キセノンランプから紫外光をフィルターを介して除いた可視光を約1分間照射した。照射を終了し直ちに紫外可視吸収スペクトルの経時測定を1分おきに合計60分間おこなった。図2に、紫外可視吸収スペクトルのうち波長550nmにおける吸光度(右軸)の経時変化を破線で、上記で測定した粘度(左軸)の経時変化を実線で示す。
【0029】
【発明の効果】
本発明のフォトクロミック化合物によれば、可視光照射で無色化および粘性減少し、可視光照射停止で発色および粘性増加し、紫外光照射を要さずに幅広い変色および粘性変化を可逆的に光応答性制御できる。また、メロシアニン構造の安定化のために頻繁に用いられる手法である金属イオンの混合を行わないため、使用後の廃棄が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフォトクロミック化合物の一例である、スピロピランとフッ化アルコールとのメタクリレート共重合体(P(SPMA-FHMA))のフッ化アルコール溶液(実線)と、そのスピロピラン単量体であるSPMAのフッ化アルコール溶液(破線)との、暗所下の高粘性時における紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】図1の共重合体のフッ化アルコール溶液を可視光照射後に暗所下に静置した経時変化を示すグラフであって、実線は動粘度(左軸)を、破線は550nmにおける吸光度で示した着色(右軸)を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1