TOP > 国内特許検索 > リニア振動アクチュエータ > 明細書

明細書 :リニア振動アクチュエータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3863429号 (P3863429)
公開番号 特開2003-199311 (P2003-199311A)
登録日 平成18年10月6日(2006.10.6)
発行日 平成18年12月27日(2006.12.27)
公開日 平成15年7月11日(2003.7.11)
発明の名称または考案の名称 リニア振動アクチュエータ
国際特許分類 H02K  33/06        (2006.01)
H02K  33/16        (2006.01)
FI H02K 33/06
H02K 33/16 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2002-000045 (P2002-000045)
出願日 平成14年1月4日(2002.1.4)
審査請求日 平成16年12月17日(2004.12.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390033950
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
発明者または考案者 【氏名】福長 一義
【氏名】福井 康裕
個別代理人の代理人 【識別番号】100101269、【弁理士】、【氏名又は名称】飯塚 道夫
審査官 【審査官】櫻田 正紀
参考文献・文献 特開平06-038486(JP,A)
特開2001-230115(JP,A)
特開平01-219400(JP,A)
国際公開第00/062406(WO,A1)
特開平07-170708(JP,A)
特開平11-178305(JP,A)
実公昭55-033823(JP,Y1)
調査した分野 H02K 33/06
H02K 33/16
特許請求の範囲 【請求項1】
磁性体により断面略コ字形状に形成されたヨークと、
ヨークに巻き付けられた励磁コイルと、
それぞれリング形状とされ且つ、その軸方向に沿って同一極同士を相互に対向させた状態で前記ヨークの外周側に一体的に配置された2つの永久磁石と、
を有するリニア振動アクチュエータであって、
断面略コ字形状のヨークにおける外周部の一方の側から外周部の他方の側に延びるように、磁力補強部が2つの永久磁石に対向してヨークに形成されて、これら2つの永久磁石の軸方向に沿ってヨークが非対称形状とされることを特徴とするリニア振動アクチュエータ。
【請求項2】
ヨークと励磁コイルとにより固定子が構成され、
2つの永久磁石がインダクタにより保持されて、一体的に移動子とされることを特徴とする請求項1記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記移動子の外周側に、この移動子を案内する支持材が配置されたことを特徴とする請求項2記載のリニア振動アクチュエータ。
【請求項4】
磁性体により断面略コ字形状とされ且つリング状に形成されたヨークと、
ヨークに巻き付けられた励磁コイルと、
その軸方向に沿って同一極同士を相互に対向させた状態で前記ヨークの内周側に一体的に配置された2つの永久磁石と、
を有するリニア振動アクチュエータであって、
断面略コ字形状のヨークにおける内周部の一方の側から内周部の他方の側に延びるように、磁力補強部が2つの永久磁石に対向してヨークに形成されて、これら2つの永久磁石の軸方向に沿ってヨークが非対称形状とされることを特徴とするリニア振動アクチュエータ。
【請求項5】
ヨークと励磁コイルとにより固定子が構成され、
2つの永久磁石がインダクタにより保持されて、一体的に移動子とされることを特徴とする請求項4記載のリニア振動アクチュエータ。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリニア振動アクチュエータに関し、特に、直線往復運動の一方向について他方向よりも大きな力での移動を実現する単巻型リニア振動アクチュエータに好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、直線往復運動を行う必要がある機器において磁力を利用した駆動部としてリニア振動アクチュエータが使用されている。そして、従来のリニア振動アクチュエータとしては、例えば、コイル可動形、鉄心可動形及び磁石可動形等が知られている。
【0003】
一方、リニア振動アクチュエータの内の単巻型リニア振動アクチュエータとしては、鉄心可動形であって、機械的に作動させる為のバネを組み合わせた構造(以下、第1の構造例と称する)が代表的である。
具体的には、断面略コ字形状の固定子コアに単巻の励磁コイルが取り付けられ、この固定子コアの内周側に位置する磁性体により形成される可動子に所定方向に付勢するバネが設けられた構造となっている。
【0004】
つまり、この第1の構造例によれば、励磁コイルに電流を供給することで、発生する磁束によって可動子を吸引し、また、励磁コイルへの電流供給を停止することで、バネの復元力によって可動子が元の位置に戻るため、往復運動を実現することができる。
【0005】
さらに、単巻型リニア振動アクチュエータの他の構造例(以下、第2の構造例と称する)として、論文「単巻線形リニア振動アクチュエータの開発と高出力設計(平成5年 電気学会論文誌D、113巻1号、120頁~125頁)」に発表されたものが知られている。
この単巻型リニア振動アクチュエータは磁石可動形に分類されるものであり、断面略コ字形状の固定子コアに単巻の励磁コイルが取り付けられ、また、軸方向に着磁された永久磁石を突極ではさみこむ構造に移動子がなっている。
【0006】
そして、この第2の構造例において、励磁コイルに電流を流すと、固定子コアに磁極が生じるのに伴って移動子の磁極との間に吸引力と反発力が発生し、移動子は所定方向に移動する。さらに、励磁コイルに流す電流の向きを逆転させることにより、固定子コアに生じる磁極の向きが変わって移動子の移動方向が反転する為、移動子を往復運動させることができる。
【0007】
単巻型リニア振動アクチュエータのさらなる構造例(以下、第3の構造例と称する)として、特開平06-113522 号公報に記載された「リニア振動アクチュエータ」が知られている。
このリニア振動アクチュエータは、直線上での可動子コイルの往復運動において一方向にのみ強い力で移動し、逆方向には弱い力で戻るようにすることを目的としたものである。
【0008】
つまり、このリニア振動アクチュエータは、コイル可動形に分類されるアクチュエータ本体部分と、可動子コイルを励磁する際に一方向に移動するときのみ大電流を流すような制御回路とを、有している。
この為、このリニア振動アクチュエータによれば、可動子コイルを直線上の一方向に移動させる際には大電流として大きな推力で移動させ、逆方向に移動させる際には小電流として小さい推力で移動させることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した第1の構造例では、励磁コイルに供給する電流の大きさとバネの復元力とのバランスを偏らせることによって、一方向には大きい力で移動すると共に他方向には小さい力で移動する単巻型リニア振動アクチュエータを実現可能となるが、バネの機械的特性によって一定周波数の往復運動に限定されてしまうという問題がある。また、バネを設置する必要がある為、装置の構成が大掛かりとなり、小型化が困難となる。
【0010】
一方、上述した第2の構造例及び第3の構造例では、励磁コイルに流す電流の向きを反転させることによって、バネを用いることなく往復運動を実現することができる。
しかし、往復運動の内の一方向を大きい力で移動させると共に、他方向を小さい力で移動させる場合、励磁コイルに通電する際において、大きい推力で移動するときに、大きな電流が流れるように電流を制御し、また逆に小さい推力で移動するときに、小さな電流が流れるように電流を制御する必要がある。その為、駆動回路が複雑となってしまい、製造コストの増大が避けられなかった。
【0011】
さらに、特に第2の構造例のリニア振動アクチュエータは、往復運動の両方向において等しい推力で移動することが想定されている為、一方向にのみ強い力で移動させようとすると、このリニア振動アクチュエータの信頼性等の特性悪化を招いてしまう。
本発明は上記事実を考慮し、低コストで製造可能とされると共に高い信頼性を有しつつ小型化可能とされるリニア振動アクチュエータを提供することが第1の目的であり、また、移動子が往復運動する際に、周波数に限定されずに一方向にのみ大きな力で移動し得るリニア振動アクチュエータを提供することが第2の目的である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のリニア振動アクチュエータは、磁性体により断面略コ字形状に形成されたヨークと、
ヨークに巻き付けられた励磁コイルと、
それぞれリング形状とされ且つ、その軸方向に沿って同一極同士を相互に対向させた状態で前記ヨークの外周側に一体的に配置された2つの永久磁石と、
を有するリニア振動アクチュエータであって、
断面略コ字形状のヨークにおける外周部の一方の側から外周部の他方の側に延びるように、磁力補強部が2つの永久磁石に対向してヨークに形成されて、これら2つの永久磁石の軸方向に沿ってヨークが非対称形状とされることを特徴とする。
【0013】
請求項1に係るリニア振動アクチュエータの作用を以下に説明する。
磁性体により断面略コ字形状に形成されたヨークに励磁コイルが巻き付けられ、このヨークの外周側にそれぞれリング形状とされた2つの永久磁石が一体的に配置されている。さらに、これら2つの永久磁石が、その軸方向に沿って同一極同士を相互に対向させた状態とされている。そして、断面略コ字形状のヨークにおける外周部の一方の側から外周部の他方の側に延びるように、磁力補強部が2つの永久磁石に対向してヨークに形成されるのに伴い、これら2つの永久磁石の軸方向に沿ってヨークが非対称形状とされる。
【0014】
つまり、本請求項によれば、ヨークにおける外周部の一方の側から外周部の他方の側に延びる磁力補強部が、2つの永久磁石に対向するだけの簡易で製造容易な構成を有している。この為、2つの永久磁石により構成される移動子が往復運動する際に、矩形波や正弦波などの単純な入力信号によっても、一方向にのみ大きな力で移動できるようになる。
この結果として、一方向にのみ大きな力で、2つの永久磁石からなる移動子が移動しつつ、往復運動するリニア振動アクチュエータを実現できるだけでなく、この際、構造が単純で構成要素が非常に少ない為、信頼性を向上しつつ小型化が図れると共に、低コストで製造可能となった。
【0015】
請求項2に係るリニア振動アクチュエータの作用を以下に説明する。
本請求項に係るリニア振動アクチュエータは請求項1と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、ヨークと励磁コイルとにより固定子が構成され、2つの永久磁石がインダクタにより保持されて、一体的に移動子とされるという構成を有している。
つまり、固定子及び移動子が上記のような単純且つ簡易に構成されて製造容易になっているので、請求項1の作用効果がより確実に達成される。
【0016】
請求項3に係るリニア振動アクチュエータの作用を以下に説明する。
本請求項に係るリニア振動アクチュエータは請求項2と同一の作用を奏する。但し、本請求項では、前記移動子の外周側に、この移動子を案内する支持材が配置されるという構成を有している。
【0017】
つまり、ヨークの外周側にリング形状とされた2つの永久磁石を含む移動子が、この移動子の外周側に配置される支持材により案内されるので、移動子の内周側で案内する場合と比較して、案内する面積が広くなると共に、固定子と移動子との間の距離を自由に設定可能となるだけでなく、磁気的作用を支持材が邪魔することがなくなる。この為、より信頼性が高くなり、結果として請求項1及び請求項2の作用効果がより確実に達成される。
【0018】
具体的には、移動子の内周側で支持する場合、支持材の存在によって固定子と移動子との間の距離が狭められず、漏れ磁束が増えると共に、効率が悪化する。そして、固定子と移動子との間に支持材が存在する為に、支持材により磁束が妨げられる恐れがある。
【0019】
一方、固定子、移動子及び支持材の材質は、一般的に異なるので、これに伴ってこれらの熱膨張率が異なり、温度が上昇した際にも移動子の内周側で適切に支持できるように設計及び生産する必要が生じる結果として、設計及び生産が困難となる。
さらに、移動子の内周側で支持する場合には、支持材の円周長が小さく、単位体積当たりに支持材で受ける荷重が大きくなり、支持材の耐久性が低下する欠点があるが、上記の移動子の外周側で支持した場合には、このような欠点がない。
【0020】
請求項4に記載のリニア振動アクチュエータは、磁性体により断面略コ字形状とされ且つリング状に形成されたヨークと、
ヨークに巻き付けられた励磁コイルと、
その軸方向に沿って同一極同士を相互に対向させた状態で前記ヨークの内周側に一体的に配置された2つの永久磁石と、
を有するリニア振動アクチュエータであって、
断面略コ字形状のヨークにおける内周部の一方の側から内周部の他方の側に延びるように、磁力補強部が2つの永久磁石に対向してヨークに形成されて、これら2つの永久磁石の軸方向に沿ってヨークが非対称形状とされることを特徴とする。
【0021】
請求項4に係るリニア振動アクチュエータの作用を以下に説明する。
磁性体により断面略コ字形状とされ且つリング状に形成されたヨークに励磁コイルが巻き付けられ、このヨークの内周側に2つの永久磁石が一体的に配置されている。さらに、これら2つの永久磁石が、その軸方向に沿って同一極同士を相互に対向させた状態とされている。そして、断面略コ字形状のヨークにおける内周部の一方の側から内周部の他方の側に延びるように、磁力補強部が2つの永久磁石に対向してヨークに形成されるのに伴い、これら2つの永久磁石の軸方向に沿ってヨークが非対称形状とされる。
【0022】
つまり、本請求項によれば、ヨークがリング形状とされて2つの永久磁石がこのヨークの内周側に一体的に配置されるという相違を有するものの、請求項1とほぼ同様に、ヨークにおける内周部の一方の側から内周部の他方の側に延びる磁力補強部が、2つの永久磁石に対向するだけの簡易で製造容易な構成を有している。この為、2つの永久磁石により構成される移動子が往復運動する際に、矩形波や正弦波などの単純な入力信号によっても、一方向にのみ大きな力で移動できるようになる。
【0023】
この結果として、請求項1と同様に一方向にのみ大きな力で、2つの永久磁石からなる移動子が移動しつつ、往復運動するリニア振動アクチュエータを実現できるだけでなく、この際、構造が単純で構成要素が非常に少ない為、信頼性を向上しつつ小型化が図れると共に、低コストで製造可能となった。
尚、請求項5に係るリニア振動アクチュエータは、請求項2と同様に作用するので、詳細な記載を省略する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るリニア振動アクチュエータの第1の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2は、本実施の形態におけるリニア振動アクチュエータ(以下、単にアクチュエータと称する)10を示す断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態に係るアクチュエータ10の中心部は、磁性体で筒形状に形成された磁性体ヨーク1により構成されていて、この磁性体ヨーク1に励磁コイル2が巻かれて配置されている。そして、これら磁性体ヨーク1及び励磁コイル2により、固定子8が構成されている。
但し、この磁性体ヨーク1の主要部分は断面略コ字形状となっているものの、磁性体ヨーク1の一端側である外周部の一方の側である上端側から他方の側である下側に延びるように磁力補強部1Aが形成されているので、この磁力補強部1Aの先端部分である下端部分と磁性体ヨーク1の他端側の部分との間のギャップGが、他の部分より狭くなっている。つまり、本実施の形態では、磁性体ヨーク1の形状が、後述する移動子9の振動方向(図1及び図2において上下方向)に沿って、非対称となっている。
【0029】
さらに、この固定子8の外周側の位置には、リング状に形成された移動子9が、該固定子8に対向して配置されている。
この移動子9は、それぞれリング状に形成された2つの永久磁石4,6と、これら永久磁石4,6が接着剤等で連結されてこれらを保持する金属製のインダクタ3,5,7とから構成されている。つまり、永久磁石4の上部にインダクタ3が配置され、永久磁石6の下部にインダクタ7が配置され、永久磁石4と永久磁石6との間にインダクタ5が配置されている。
【0030】
また、その軸方向に沿って並んで配置されるこれら永久磁石4及び永久磁石6は、相互に同一形状とされているだけでなく、インダクタ5を挟んでS極が相互に対向するように、それぞれ着磁されている。但し、永久磁石4及び永久磁石6を相互に同一形状とせずに、その軸方向に沿って相互に異なる長さとしても良い。
従って、移動子9全体としては、振動方向に沿ってN-S-Nの磁極を有する。なお、永久磁石4のN極と永久磁石6のN極とを対向させることによって、移動子9全体の磁極がS-N-Sとなるように構成することも可能である。
【0031】
以上より、本実施の形態のアクチュエータ10は、その上下方向に延びる中心軸CLを中心とした線対称の構造を呈していて、リング形状を呈する移動子9が、図1及び図2において上下方向への往復運動可能になっている。そして、固定子8の外周面には、移動子9の2つの永久磁石4,6の内周面に対向する形で、磁性体ヨーク1の磁力補強部1Aが配置されることになる。
【0032】
以上の結果から、図1に示すアクチュエータ10の励磁コイル2に電流を流すと、固定子8の磁性体ヨーク1に磁極が生じる。このとき、磁性体ヨーク1に生じた磁極と、移動子9側の永久磁石4,6の磁極との間に、吸引力や反発力が生じることによって、移動子9が移動する。但しこの際、磁性体ヨーク1が磁力補強部1Aを有することで、移動子9に対向している磁性体ヨーク1の外周部両端側形状が、移動子9の振動方向に沿って非対称となることから、以下のように作用する。
【0033】
次に、本実施の形態に係るアクチュエータ10の作用を詳細に説明する。
図1に示す状態で、励磁コイル2に電流A1を通電すると、固定子8の磁性体ヨーク1に磁力M1が発生し、磁性体ヨーク1の外周部上端側から延びる磁力補強部1AにN極の磁極が生じると共に、磁性体ヨーク1の外周部下端側にS極の磁極が生じる。また同時に、移動子9を構成する永久磁石4により、インダクタ3から磁性体ヨーク1を通過してインダクタ5へと向かう磁力M2が存在している。
【0034】
つまり、これら磁力M1及び磁力M2は相互に同方向に向いている為、磁力は加算され、磁性体ヨーク1の上端側には強力なN極が生じる。
尚、この磁力の加算は、磁性体ヨーク1の上端側と下端側との大きさが相互に異なり、磁性体ヨーク1の外周部上端側から延びる磁力補強部1Aに発生した磁力M1が、移動子9の永久磁石4より存在している磁力M2に影響を及ぼすために、生じたものである。
【0035】
この際、磁性体ヨーク1の外周部上端側から下側に延びる磁力補強部1Aに発生した強力なN極は、インダクタ5側寄りのS極を強く吸引し、同時にインダクタ3側寄りのN極と強く反発する。この一方、磁性体ヨーク1の下端側に発生したS極は、インダクタ7側寄りのN極を吸引し、同時にインダクタ5側寄りのS極と反発する。このようにして発生する吸引・反発力によって、移動子9は図1の上方向へ強い力である力F1で移動し、アクチュエータ10における固定子8と移動子9との位置関係は、図2に示すようになる。
【0036】
次に、図2に示す状態で、励磁コイル2に図1に示した電流A1と逆方向の電流A2を通電すると、固定子8の磁性体ヨーク1に磁力M3が発生し、磁性体ヨーク1の外周部上端側から延びる磁力補強部1AにS極の磁極が生じると共に、磁性体ヨーク1の外周部下端側にN極の磁極が生じる。また同時に、移動子9を構成する永久磁石4により、インダクタ3から磁性体ヨーク1を通過してインダクタ5へと向かう磁力M2と同様の磁力M4が存在している。
【0037】
つまり、これら磁力M3及び磁力M4は互いに逆方向に向いている為、磁力は減算され、磁性体ヨーク1の上端側には弱いS極が生じる。
尚、この磁力の減算も、磁性体ヨーク1の上端側と下端側との大きさが相互に異なり、磁性体ヨーク1の外周部上端側から延びる磁力補強部1Aに発生した磁力M3が、移動子9の永久磁石4により存在している磁力M4に影響を及ぼすために、生じたものである。
【0038】
この際、磁性体ヨーク1の外周部上端側から下側に延びる磁力補強部1Aに発生した弱いS極は、インダクタ5側寄りのS極を弱く反発し、同時にインダクタ3側寄りのN極を弱く吸引する。この一方、磁性体ヨーク1の下端側に発生したN極はインダクタ7側寄りのN極を反発し、同時にインダクタ5側寄りのS極を吸引する。このようにして発生する吸引・反発力によって、移動子9は図2の下方向へ弱い力である力F2で移動し、アクチュエータ10における固定子8と移動子9との位置関係は、図1に示すようになる。
つまり、移動子9が元の位置に戻って、再度上記の動作が繰り返されることになる。
【0039】
以上、図1及び図2を参照して説明したように、本実施の形態のアクチュエータ10においては、励磁コイル2に通電された電流の向きに応じて磁性体ヨーク1に発生する磁力の向きが切り替わり、移動子9に発生している磁力と影響し合うことによって、固定子8と移動子9の間において発生する吸引・反発力の内の一方は増幅され、他方は減縮される。
従って、移動子9は、振動の一方向(図1において上方向)について、他方向(図2において下方向)よりも大きい力で、移動することができる。
【0040】
次に、上記構成からなる本実施の形態のアクチュエータ10による移動子9の位置と発生する推力の関係を、図3にそれぞれ示すコンピュータによる3次元動磁場解析(ELF/MAGIC )の結果及び、試作品を実際に計測した結果に基づき、説明する。
ここで、アクチュエータ10の磁性体ヨーク1及びインダクタ3,5,7を構成する材料として電磁軟鉄のSS400 を使用し、移動子9を構成する永久磁石4,6には希土類・鉄・ホウ素系永久磁石(例えばNEOMAX)を使用し、励磁コイル2には0.5mmの銅線を585ターン巻いた。また、移動子9の外径寸法は、例えば60mm程度とされている。
【0041】
図1において電流を流さなくても移動子9が静止して安定する最も下の位置を図3における始点(0mm)とし、図1に示すように励磁コイル2に2アンペアの電流A1を流すことによって、そこから移動子9を上方向に8mmの位置まで移動させる。
さらに、向きを逆転させた2アンペアの電流A2を励磁コイル2に流すことによって、移動子9を8mm位置から0mmまで下方向に移動させる。そして、このときの1mm間隔での各位置における推力を図3に示す。
尚、図3において、横軸は位置をmm単位で表し、縦軸は推力をニュートン単位で表す。また、各位置において移動子9に発生する推力の解析結果(理論値)を特性曲線Aで示し、実際の測定結果(実験値)を特性曲線Bで示している。
【0042】
この図3によれば、理論値及び実験値ともに、移動子9が上方向に移動する場合である0~8mmの位置においては、大きな推力が発生しており、その逆方向すなわち移動子9が下方向に移動する場合である8~0mmの位置においては、上方向の場合の半分程度の推力しか発生していないことが分かる。
【0043】
尚、本実施の形態において図1に示す電流A1と図2に示す電流A2は互いの方向が異なっていれば良く、その大きさについては同じで良い。従って、単純な矩形波や正弦波等の入力信号による電流制御が可能となる。
【0044】
以上説明したように本実施の形態に係るアクチュエータ10は、励磁コイル2を1つ備えると共に、磁性体ヨーク1の一端側である外周部上端側から下側に延びる磁力補強部1Aを、2つの永久磁石4,6に対向させるだけの簡易で製造容易な構造となっている。
この為、この磁力補強部1Aの存在により、固定子8側の磁性体ヨーク1の形状が振動方向に沿って非対称となることから、2つの永久磁石4,6を含む移動子9が往復運動する際に、矩形波や正弦波などの単純な入力信号によっても、一方向にのみ大きな推力で移動できるようになる。
【0045】
この結果として、一方向にのみ大きな推力で移動子9が移動しつつ、往復運動するアクチュエータ10を実現できるだけでなく、この際、アクチュエータ10の構造が単純で構成要素が非常に少ない為、信頼性を向上しつつ小型化が図れると共に、低コストで製造可能となった。
【0046】
次に、本発明に係るリニア振動アクチュエータの第2の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、第1の実施の形態と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
図4は、本実施の形態におけるリニア振動アクチュエータ(以下、単にアクチュエータと称する)20を示す断面図である。
この図4に示すように、本実施の形態に係るアクチュエータ20は、第1の実施の形態とほぼ同一であるが、リング形状を呈する移動子9の外周側に、同じくリング状に形成された支持材11が配置され、この支持材11によって、摺動可能に嵌合されることで移動子9が案内されて、図4において上下方向への往復運動可能になっている。
【0047】
従って、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同一の作用効果を奏するだけでなく、磁性体ヨーク1の外周側にリング形状とされた2つの永久磁石4,6を含む移動子9が、この移動子9の外周側に配置される支持材11により案内されているので、移動子9の内周側で案内する場合と比較して、案内する面積が広くなると共に、固定子8と移動子9との間の磁気的作用を支持材11が邪魔する虞がなく、より信頼性が高くなる。
尚、ここで用いられる支持材11の材質としては、テフロン材、アルミニウム、黄銅及びリニアベアリング等が考えられるが、他の材質を採用しても良い。
【0048】
次に、本発明に係るリニア振動アクチュエータの第3の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、第1の実施の形態と同一の部材には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
図5は、本実施の形態におけるリニア振動アクチュエータ(以下、単にアクチュエータと称する)30を示す断面図である。
【0049】
この図5に示すように、本実施の形態に係るアクチュエータ30は、第1の実施の形態とほぼ同一であるが、移動子29を3つのリング状で薄い永久磁石21,23,25及びこれらの間を繋ぐ2つのインダクタ22,24で構成している。そして、これら3つの永久磁石21,23,25は、振動方向である上下方向に対して直交する方向に沿って、図5に示すように着磁されている。
【0050】
従って、本実施の形態によれば、リング形状とされた3つの永久磁石21,23,25を含む移動子29が、磁性体ヨーク1の外周側に存在し、この移動子29全体としては、振動方向に沿ってN-S-Nの磁極を有しているので、第1の実施の形態と同一の作用効果を奏することになる。
【0051】
次に、本発明に係るリニア振動アクチュエータの第4の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図6及び図7は、本実施の形態におけるリニア振動アクチュエータ(以下、単にアクチュエータと称する)40を示す断面図である。
【0052】
図6に示すように、本実施の形態に係るアクチュエータ40の外周部は、磁性体でリング状に形成された磁性体ヨーク31により構成されていて、この磁性体ヨーク31に励磁コイル32が巻かれて配置されている。そして、これら磁性体ヨーク31及び励磁コイル32により、固定子38が構成されている。
【0053】
但し、この磁性体ヨーク31の主要部分は断面略コ字形状となっているものの、磁性体ヨーク31の一端側である内周部の一方の側である上端側から他方の側である下側に延びるように磁力補強部31Aが形成されているので、この磁力補強部31Aの先端部分である下端部分と磁性体ヨーク31の他端側の部分との間のギャップGが、他の部分より狭くなっている。つまり、本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、磁性体ヨーク31の形状が、後述する移動子39の振動方向(図6及び図7において上下方向)に沿って、非対称となっている。
【0054】
さらに、この固定子38の内周側の位置には、円筒状に形成された移動子39が、該固定子38に対向して配置されている。
この移動子39は、それぞれ円筒状に形成された2つの永久磁石34,36と、これら永久磁石34,36が接着剤等で連結されてこれらを保持する金属製のインダクタ33,35,37とから構成されている。つまり、永久磁石34の上部にインダクタ33が配置され、永久磁石36の下部にインダクタ37が配置され、永久磁石34と永久磁石36との間にインダクタ35が配置されている。
【0055】
また、その軸方向に沿って並んで配置されるこれら永久磁石34及び永久磁石36は、インダクタ35を挟んでS極が相互に対向するように、それぞれ着磁されている。
従って、移動子39全体としては、移動方向にN-S-Nの磁極を有する。なお、第1の実施の形態と同様に、移動子39全体の磁極がS-N-Sとなるように構成することも可能である。
【0056】
以上より、本実施の形態のアクチュエータ40は、その上下方向に延びる中心軸CLを中心とした線対称の構造を呈していて、円筒形状を呈する移動子39が、図6及び図7において上下方向への往復運動可能になっている。そして、固定子38の内周面には、移動子39の2つの永久磁石34,36の外周面に対向する形で、磁力補強部31Aが配置されることになる。
【0057】
以上の結果から、図6に示すアクチュエータ40の励磁コイル32に電流を流すと、固定子38の磁性体ヨーク31に磁極が生じる。このとき、磁性体ヨーク31に生じた磁極と、移動子39側の永久磁石34,36の磁極との間に、吸引力や反発力が生じることによって、移動子39が移動する。但しこの際、磁性体ヨーク31が磁力補強部31Aを有することで、移動子39に対向している磁性体ヨーク31の内周部両端側形状が、移動子39の振動方向に沿って非対称となることから、以下のように作用する。
【0058】
次に、本実施の形態に係るアクチュエータ40の作用を詳細に説明する。
図6に示す状態で、励磁コイル32に電流A1を通電すると、固定子38の磁性体ヨーク31に磁力M1が発生し、磁性体ヨーク31の内周部上端側から延びる磁力補強部31AにN極の磁極が生じると共に、磁性体ヨーク31の内周部下端側にS極の磁極が生じる。また同時に、移動子39を構成する永久磁石34により、インダクタ33から磁性体ヨーク31を通過してインダクタ35へと向かう磁力M2が存在している。
つまり、第1の実施の形態と同様に、これら磁力M1及び磁力M2は相互に同方向に向いている為、磁力は加算され、磁性体ヨーク31の上端側には強力なN極が生じる。
【0059】
そして、磁性体ヨーク31の内周部上端側から下側に延びる磁力補強部31Aに発生した強力なN極は、インダクタ35側寄りのS極を強く吸引し、同時にインダクタ33側寄りのN極と強く反発する。この一方、磁性体ヨーク31の下端側に発生したS極は、インダクタ37側寄りのN極を吸引し、同時にインダクタ35側寄りのS極と反発する。このようにして発生する吸引・反発力によって、移動子39は図6の上方向へ強い力である力F1で移動し、アクチュエータ40における固定子38と移動子39との位置関係は、図7に示すようになる。
【0060】
次に、図7に示す状態で、励磁コイル32に図6に示した電流A1と逆方向の電流A2を通電すると、固定子38の磁性体ヨーク31に磁力M3が発生し、磁性体ヨーク31の内周部上端側から延びる磁力補強部31AにS極の磁極が生じると共に、磁性体ヨーク31の内周部下端側にN極の磁極が生じる。また同時に、移動子39を構成する永久磁石34により、インダクタ33から磁性体ヨーク31を通過してインダクタ35へと向かう磁力M2と同様の磁力M4が存在している。
つまり、第1の実施の形態と同様に、これら磁力M3及び磁力M4は互いに逆方向に向いている為、磁力は減算され、磁性体ヨーク31の上端側には弱いS極が生じる。
【0061】
そして、磁性体ヨーク31の内周部上端側から下側に延びる磁力補強部31Aに発生した弱いS極は、インダクタ35側寄りのS極を弱く反発し、同時にインダクタ33側寄りのN極を弱く吸引する。この一方、磁性体ヨーク31の下端側に発生したN極はインダクタ37側寄りのN極を反発し、同時にインダクタ35側寄りのS極を吸引する。このようにして発生する吸引・反発力によって、移動子39は図7の下方向へ弱い力である力F2で移動し、アクチュエータ40における固定子38と移動子39との位置関係は、図6に示すようになる。
つまり、移動子39が元の位置に戻って、再度上記の動作が繰り返されることになる。
【0062】
以上、図6及び図7を参照して説明したように、本実施の形態のアクチュエータ40においても、励磁コイル32に通電された電流の向きに応じて磁性体ヨーク31に発生する磁力の向きが切り替わり、移動子39に発生している磁力と影響し合うことによって、固定子38と移動子39の間において発生する吸引・反発力の内の一方は増幅され、他方は減縮される。
従って、移動子39は、振動の一方向(図6において上方向)について、他方向(図7において下方向)よりも大きい力で移動することができる。
【0063】
以上説明したように本実施の形態に係るアクチュエータ40は、励磁コイル32を1つ備えると共に、磁性体ヨーク31の一端側である外周部上端側から下側に延びる磁力補強部31Aを、2つの永久磁石34,36に対向させるだけの簡易で製造容易な構造となっている。
この為、第1の実施の形態と同様に、磁力補強部31Aの存在により、固定子38側の磁性体ヨーク31の形状が振動方向において非対称となることから、2つの永久磁石34,36を含む移動子39が往復運動する際に、矩形波や正弦波などの単純な入力信号によっても、一方向にのみ大きな推力で移動できるようになる。
この結果として、本実施の形態は、第1の実施の形態と同様な作用効果を奏することになる。
【0064】
以上より、上記実施の形態に係る各アクチュエータは、特に直線往復運動の一方向について他方向よりも大きい力を必要とするような機器(エアコンプレッサ、往復動ポンプ、人工呼吸器及び人工心臓用血液ポンプ等)において、有効に使用され得ることになる。
尚、上記実施の形態に係る各アクチュエータは、磁力補強部1A,31Aの長さや体積を変化させたり、ギャップGの大きさを変化させたりすることにより、種々特性を調整することが可能である。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のリニア振動アクチュエータは、低コストで製造可能とされると共に高い信頼性を有しつつ小型化可能とされるという優れた効果を有するだけでなく、移動子が往復運動する際に、周波数に限定されずに一方向にのみ大きな力で移動するという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るリニア振動アクチュエータを示す断面図であって、移動子に上方向の力が加わった状態を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るリニア振動アクチュエータを示す断面図であって、移動子に下方向の力が加わった状態を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るリニア振動アクチュエータの推力の理論値及び実験値を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るリニア振動アクチュエータを示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るリニア振動アクチュエータを示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るリニア振動アクチュエータを示す断面図であって、移動子に上方向の力が加わった状態を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係るリニア振動アクチュエータを示す断面図であって、移動子に下方向の力が加わった状態を示す図である。
【符号の説明】
10,20,30,40 アクチュエータ
1,31 磁性体ヨーク
1A,31A 磁力補強部
2,32 励磁コイル
3,5,7,22,24,33,35,37 インダクタ
4,6,21,23,25,34,36 永久磁石
8,38 固定子
9,29,39 移動子
A1,A2 電流
M1,M2,M3,M4 磁力
F1,F2 力
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6