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明細書 :電磁誘導加熱装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4155884号 (P4155884)
公開番号 特開2004-228068 (P2004-228068A)
登録日 平成20年7月18日(2008.7.18)
発行日 平成20年9月24日(2008.9.24)
公開日 平成16年8月12日(2004.8.12)
発明の名称または考案の名称 電磁誘導加熱装置
国際特許分類 H05B   6/40        (2006.01)
H05B   6/36        (2006.01)
FI H05B 6/40
H05B 6/36 D
請求項の数または発明の数 3
全頁数 17
出願番号 特願2003-202467 (P2003-202467)
出願日 平成15年7月28日(2003.7.28)
優先権出願番号 2002342115
優先日 平成14年11月26日(2002.11.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成17年9月8日(2005.9.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390033950
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
【識別番号】502427389
【氏名又は名称】長谷川 直
【識別番号】390009793
【氏名又は名称】鈴木 邦彦
発明者または考案者 【氏名】富田 英雄
【氏名】小畑 修二
【氏名】長谷川 直
【氏名】鈴木 邦彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100080001、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 大和
【識別番号】100093023、【弁理士】、【氏名又は名称】小塚 善高
審査官 【審査官】中村 大輔
参考文献・文献 特開2001-032016(JP,A)
実開平06-039953(JP,U)
実開昭55-065799(JP,U)
特開昭64-084589(JP,A)
特開昭62-206785(JP,A)
特開2000-015319(JP,A)
特開2000-058248(JP,A)
特開平06-104074(JP,A)
特開平08-014762(JP,A)
特公昭45-022277(JP,B1)
実開昭56-114400(JP,U)
調査した分野 H05B 6/40
H05B 6/36
特許請求の範囲 【請求項1】
長方形の導電性発熱部材に交番磁力線を通過させることにより渦電流を発生させ、そのジュール熱で前記導電性発熱部材を誘導加熱する電磁誘導加熱装置であって、
交流電流を供給する交流電流供給部と、
前記導電性発熱部材の被加熱表面に対向する対向部を備え高透磁率のフェライトからなる断面長方形の直交磁心と、
前記直交磁心の前記対向部の反対側に配置されるとともに前記直交磁心とによりT字形状をなして前記交番磁力線を収束する磁力線収束磁心と、
前記直交磁心の外周に巻き付けられて前記交流電流供給部から前記交流電流が供給される加熱コイルとを有し、
前記加熱コイルにより前記直交鉄心に発生した前記交番磁力線によって、前記直交磁心の前記対向部から前記導電性発熱部材を通過して前記加熱コイルの外側を介して前記磁力線収束磁心に至る磁路を形成し、
前記導電性発熱部材を均一加熱することを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の電磁誘導加熱装置において、前記直交磁心の前記対向部に傾斜面により形成される尖端部を設け、前記交番磁力線を前記尖端部から前記被加熱表面に集中して放出することを特徴とする電磁誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の電磁誘導加熱装置において、前記直交磁心の周囲の前記交番磁力線を捕捉して前記磁力線収束磁心と前記導電性発熱部材との間に前記交番磁力線を案内する磁力線捕捉部材を前記磁力線収束磁心に設けることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性発熱部材に対して誘導加熱を行う電磁誘導加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属などの導電性物体を加熱する有効な方法の一つとして電磁誘導作用を利用した誘導加熱がある。これは交番する磁界中に導電性発熱部材が存在する場合、電磁誘導作用によって物体内に起電力が生じ、それにより物体内に誘導電流が流れてI2Rのジュール熱を発生することを利用し導電性発熱部材を所定の温度にまで加熱するものである。
【0003】
従来より、被加熱表面が平面となっている導電性発熱部材に対して誘導加熱を行う構成としては、同一平面上で渦巻き状に形成されたコイルを被加熱表面に対し平行かつ近接に配置させ、30kHz程度の高周波電流を供給することによりその被加熱表面に交番する磁力線を通過させて誘導加熱するものがある(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
また他の構成として、磁性体材料で細長い円柱形状に形成した磁心の外周にコイルを巻き付けたものがあり、この一方の端部を被加熱表面に対向させてほぼ直交するよう配置し、その対向側の端部から被加熱表面へほぼ直交する方向に交番磁力線を通過させて誘導加熱するようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8-73818号公報
【特許文献2】
特開平8-143825号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなコイルを平面渦巻き状に形成したものと円柱形状の磁心にコイルを巻き付けたもののどちらの構成も、磁力線を通過させる領域は円形に限られるものとなっていた。
【0007】
磁力線の通過領域が被加熱表面の形状と一致しない場合には、磁力線の通過が不十分で渦電流が少なく十分に誘導加熱されない箇所が存在するか、または被加熱表面の縁部などに渦電流が集中して過剰に加熱させてしまい、その結果、被加熱表面全体での加熱状態が不均一となって目的の加熱形状が損なわれる問題がある。
【0008】
本発明の目的は、被加熱表面の形状に合わせて渦電流の発生領域を適切に設定し、被加熱表面を目的の形状に加熱できる電磁誘導加熱装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の電磁誘導加熱装置は、長方形の導電性発熱部材に交番磁力線を通過させることにより渦電流を発生させ、そのジュール熱で前記導電性発熱部材を誘導加熱する電磁誘導加熱装置であって、交流電流を供給する交流電流供給部と、前記導電性発熱部材の被加熱表面に対向する対向部を備え高透磁率のフェライトからなる断面長方形の直交磁心と、前記直交磁心の前記対向部の反対側に配置されるとともに前記直交磁心とによりT字形状をなして前記交番磁力線を収束する磁力線収束磁心と、前記直交磁心の外周に巻き付けられて前記交流電流供給部から前記交流電流が供給される加熱コイルとを有し、前記加熱コイルにより前記直交鉄心に発生した前記交番磁力線によって、前記直交磁心の前記対向部から前記導電性発熱部材を通過して前記加熱コイルの外側を介して前記磁力線収束磁心に至る磁路を形成し、前記導電性発熱部材を均一加熱することを特徴とする。
【0010】
本発明の電磁誘導加熱装置は、前記直交磁心の前記対向部に傾斜面により形成される尖端部を設け、前記交番磁力線を前記尖端部から前記被加熱表面に集中して放出することを特徴とする。
【0011】
本発明の電磁誘導加熱装置は、前記直交磁心の周囲の前記交番磁力線を捕捉して前記磁力線収束磁心と前記導電性発熱部材との間に前記交番磁力線を案内する磁力線捕捉部材を前記磁力線収束磁心に設けることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、磁力線収束磁心が磁力線を収束することでその通過経路を被加熱表面の形状に対応した経路に整形できるため、渦電流の経路も形状に対応させて加熱の均一化を図ることができる。
【0016】
本発明にあっては、直交磁心の対向部に傾斜面により形成される尖端部が設けられているので、磁力線が中央の尖端部から集中して放出されるようになり、磁力線を集中的に被加熱表面へ通過させることが可能となる。
【0017】
本発明にあっては、直交磁心の周囲の前記交番磁力線を捕捉して前記磁力線収束磁心と前記導電性発熱部材との間に前記交番磁力線を案内する磁力線捕捉部材を前記磁力線収束磁心に設けたので、磁力線が外部へ漏出するのをより効果的に抑制することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態である電磁誘導加熱装置が備える電磁ヘッド部とそれにより誘導加熱されている状態の導電性発熱部材の斜視図であり、図2は電磁誘導加熱装置の電気回路を示すブロック図であり、図3はその導電性発熱部材に流れる渦電流の経路を図1における矢視Xから見た図である。本実施の形態の電磁誘導加熱装置は、図1に示すように誘導加熱を行うための交番磁力線Mを発生する電磁ヘッド部1を有しており、この電磁ヘッド部1は直交磁心であるコア2とその外周に巻き付けられる加熱コイル3を有している。
【0020】
コア2は、強磁性材料であるフェライト、鉄、化合物などの高透磁率を持った材質とし、被加熱体である導電性発熱部材4の被加熱表面4aに対して対向させる対向部5と、その反対側の反対部6を備えた直方体の形状に形成されている。図示してはいないが、通常この電磁ヘッド部1は、樹脂等のような非導電体かつ非磁性体の材質で形成したケース内に収容されて用いられることになる。
【0021】
電磁誘導加熱装置7は、図2に示すように、電磁ヘッド部1および操作スイッチ8を備えるヘッド収容部9と、電源ユニット10および高周波発生器11および加熱時間設定器12を備える本体部13(交流電流供給部)とを有しており、ヘッド収容部9と本体部13とは給電線14を介して接続されている。
【0022】
操作スイッチ8は電磁ヘッド部1と同じケースに設けられてヘッド収容部9を構成しており、操作者が作動開始の操作を入力できるようになっている。電源ユニット10はACコード15を介して外部の交流電源16に接続されており、供給された交流電力を直流電力に整流して以下の他の回路に供給するようになっている。高周波発生器11は給電線14を介して加熱コイル3に接続されており、たとえば20~30kHz程度の高周波の交流電流を発生して加熱コイル3に供給するようになっている。加熱時間設定器12は1回の加熱操作に要する加熱コイル3への通電時間を設定するものであり、給電線14を介して操作スイッチ8から通電操作の信号を受けてから設定された通電時間だけ高周波発生器11に制御信号を出力するようになっている。高周波発生器11はこの制御信号を受けている間、すなわち設定された通電時間だけ加熱コイル3に交流電流を供給する。加熱時間設定器12は通電時間の設定を任意に調整できるようになっている。
【0023】
以上の構成の電磁誘導加熱装置7の操作について説明する。操作者はヘッド収容部9を移動させて図1に示すようにコア2を被加熱表面4aに向けて直交させつつ近接するよう配置し、この状態で操作スイッチ8をオン操作することにより導電性発熱部材4に対する誘導加熱を開始することになる。加熱時間設定器12に設定された通電時間だけ加熱コイル3に交流電流が供給され、その間に図示するようにコア2を中心とした加熱コイル3の周囲に交番する磁力線Mが発生する。
【0024】
コア2は磁力線Mの空間分布を制御する磁路、すなわち内部に磁力線Mを収束して通過させる磁束路として機能し、コア2の対向部5の対向面から被加熱表面4aに対して磁力線Mを直交して通過させるようになっている。したがって対向部5の対向面の断面形状を変えることで磁力線通過領域Amを任意に設定することができる。
【0025】
図3に示すように、磁力線通過領域Amに交番磁力線Mが通過することで、磁力線通過領域Amを含むその周囲には電磁誘導効果により渦電流Iが生じることになる。この渦電流Iが流れることでジュール熱が発生し、それにより導電性発熱部材4に対する誘導加熱が行われることになる。
【0026】
図17は、比較例として、コアを備えずに平面渦巻き状に形成された加熱コイル103のみで構成する電磁ヘッド部101と、それに平行に配置されて誘導加熱されている状態の導電性発熱部材4の斜視図であり、図18はその導電性発熱部材4に流れる渦電流Iの経路を示した図である。図17において導電性発熱部材4の被加熱表面4aは、長辺が加熱コイル103の直径よりも十分に長く、短辺が加熱コイル103の直径より少しだけ長い長方形に形成されている。
【0027】
この構成の場合、加熱コイル103は十分な本数の磁力線Mを得るために何周にも廻して巻く必要があり、そのため加熱コイル103が被加熱表面4aに対して磁力線Mを通過させる領域Amは、図示するように広い面積を要するほぼ円形の形状とならざるを得ない。しかし実際の被加熱表面4aは円形以外の多角形状である場合が多く、つまり被加熱表面4aの形状と磁力線通過領域Amの形状とが大きく相違してしまう場合が多い。
【0028】
図18に示すように磁力線通過領域Amが被加熱表面4aの形状と一致しない場合には、渦電流Iが局所的に流れずに十分に誘導加熱されない箇所4bが存在したり、また磁力線通過領域Amに近接している縁部4cなどには渦電流Iが集中して過剰に加熱させてしまい、その結果加熱状態が不均一となって大きく温度ムラができてしまう問題がある。また特に図17に示すようなコアを備えずに平面渦巻き状に形成された加熱コイル103のみで構成する電磁ヘッド部101の場合には、平面渦巻き状の中心位置において誘導電流の発生が少なく、そのため図18に示すように平面渦巻きコイルによる加熱は中心に穴のあいた円環形状となって加熱状態不均一となってしまう。
【0029】
これに対して図1に示す本実施の形態の電磁ヘッド部1の場合は、コア2の対向部5の断面形状が被加熱表面4aの形状に適合していることから、図3に示すように被加熱表面4aの形状全体に偏りの小さい渦電流Iを流すことができる。
【0030】
(実施の形態2)
図4は本発明の第2の実施の形態である電磁誘導加熱装置の電磁ヘッド部とそれにより誘導加熱されている状態の導電性発熱部材の斜視図であり、図5は本実施の形態の電磁ヘッド部21により導電性発熱部材4に流れる渦電流Iのある瞬間における経路を示した図である。本実施の形態の電磁誘導加熱装置において、図4に示すように電磁ヘッド部21は相互に並列に配置された3本の直交心部(直交磁心)22a~22cで構成するコア22と、それらの外周に巻き付けられた加熱コイル23とを有している。
【0031】
各直交心部22a~22cは、被加熱表面4aに対して対向させる対向部25と、その反対側の反対部26を備えた直方体の形状に形成されたものであり、3本が被加熱表面4aの形状に適合して配置されている。また各直交心部22a~22cに対応する磁力線通過領域Amと被加熱表面4aの各縁部との間の間隔については、図示するように均等な間隔とする以外にも、縁部における渦電流Iの集中を避けるために少し大きめの間隔を設ける配置としてもよい。このようにして各直交心部22a~22cは、被加熱表面4aの形状に合わせて適合して配置された状態となっている。なお、図中に示す各直交心部22a~22cは直方体形状となっているが、その他にも円柱形状や、他の多角形の角柱形状としてもよい。
【0032】
加熱コイル23は図中両端の直交心部22a,22cに対して同じ左廻り方向に、中央の直交心部22bには逆の右回り方向に、それぞれ同じ回数だけ巻き付けられている。これらの直交心部22a~22cと加熱コイル23は、図示しないケース内に収容されることで、お互いの配置関係が維持されるようになっている。
【0033】
上記の構成によれば、被加熱表面4aの形状に合わせて各直交心部22a~22cを適合して配置していることにより、被加熱表面4aの形状全体に偏りを少なく渦電流Iを流すことができるといった上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。さらに本実施の形態においては、隣り合う直交心部どうしで逆方向に磁力線Mを通過させていることにより、以下に説明するように被加熱表面4a上の加熱領域に対して効果的な誘導加熱を行うことができる。
【0034】
比較例として図1に示す上記第1の実施の形態のように、被加熱表面4aの形状が長方形のように長い形状であってコア2の対向部5もまたそれと相似する長い形状である場合には、長手方向の渦電流が均一化され温度ムラが少なくなる。
【0035】
図5、図6はコアの磁極の組み合わせで加熱形状を変化させる方法を示す。本実施の形態の電磁ヘッド部21によれば、図4に示すように中央の直交心部22bに常に他の両端2つの直交心部22a,22cと逆の方向に磁力線Mが通過するため、3本の直交心部22a~22cと導電性発熱部材4とがほぼループ形状の磁路を2つ並列に形成することになり、外部への磁力線Mの漏出を抑制する効果が向上するようになる。そのため磁力線Mが広い範囲へ拡散するのを抑えて被加熱表面4aに対し磁力線Mを集中通過させて加熱効率を向上できるとともに、図中の上方側すなわち操作者側へ向かう磁力線Mの漏出を抑制できるようになっている。
【0036】
なお各直交心部22a~22cにおける加熱コイル23の巻き付け方向については、図4に示すように隣り合う直交心部どうしで逆方向廻りに巻き付ける構成に限定されるものではなく、たとえば全ての直交心部22a~22cで同じ方向廻りに巻き付ける構成としてもよい。この場合には、図6に示すように、各直交心部22a~22cに対応する磁力線通過領域Amどうしの間の領域では、それぞれの渦電流Iが逆向きに重合して打ち消し合うことになり、その代わりに全ての磁力線通過領域Am全体を囲む外周にほとんどの渦電流Iが流れるようになる。
【0037】
図19に示す円柱形状の直交磁心(コア112)に加熱コイル113を巻き付けた構成の場合、磁力線Mが導電性発熱部材4を貫通して周囲の広い範囲へ拡散することになるため、後述するような磁力線収束磁心として設ける平行磁心は拡散した磁力線Mを回収する構成は特に有効となる。
【0038】
なお、図7に示すように並列に配置した各直交心部22a~22cの反対部26に、直交連結して被加熱表面4aに対しては平行な配置となる平行心部(平行磁心)27を一体に設けてコア28全体をE字形状に形成してもよく、隣り合う直交心部どうしで逆方向廻りに加熱コイル23を巻き付けた場合には各磁路が完全なループ形状となるためより高い磁力線漏出抑制効果が得られる。このようなE字形状のコア28を用いた場合で、図7に示すように被加熱表面4aに対する平行方向の外側の直交心部すなわち両端位置の直交心部22a,22cよりも、内側の直交心部すなわち中央位置の直交心部22bの方に加熱コイル23をより多く巻き付けることにより、並置する2つのループ形状の磁路にそれぞれ通過させる磁力線Mの本数のバランスを取ることができ、より高い磁力線漏出抑制効果を得ることができるようになる。また図示しないが、中央位置の直交心部22bにのみ加熱コイル23を巻き付けるようにした場合には1つの加熱コイル23に対してその周囲に2つのループ形状の磁路を設ける配置となるため、さらに高い磁力線漏出抑制効果が得られるようになる。
【0039】
また以上の構成において、直交心部を4つ以上直列に配置し、全体的にE字形状を複数連設したコアの構成としてもよく、その場合でも各直交心部に対して上記のような加熱コイルの巻き数のバリエーションが適用できる。
【0040】
逆に直交心部を設置する本数は2本としてもよく、さらに図8に示すように並列に配置させた2本の直交心部22a,22bの反対部26に直交して連結する平行心部(平行磁心)27を一体に設けてコア29全体をU字形状に形成してもよい。その場合でも2本の直交心部22a,22bに互いに逆廻り方向に加熱コイル23を巻き付けることにより、直交心部22a,22bと導電性発熱部材4とで1つのループ形状の磁路を形成させることができる。
【0041】
次に第2の実施の形態の第1変形例であり、被加熱表面4aの形状が正方形である場合の変形例について説明する。この場合の1例としては、図9に示すように2行2列で4本の直交心部32a~32dを配置させ、またそれらの反対部36に共通の平行平板部(平行磁心)37を設けてコア32を構成してもよい。このように直交心部32a~32dを被加熱表面4aに対する平行方向の任意の配置で設けることにより、被加熱表面4a上の加熱領域の形状を任意に設定することが可能である。また係わる磁気ヘッドは、個々のコア(磁心)の磁極を組み換えて全体の加熱加工の形状を自在に変更することが可能である。
【0042】
図10は上記のコア32のうち隣り合う直交心部どうしで逆方向廻りに加熱コイルを巻き付けた場合の正方形の被加熱表面4aに流れる渦電流Iのある瞬間における経路を示した図である。図10に示すように、各磁力線通過領域Amどうしの間には前述と同様に渦電流Iが重合した大電流ILによる高加熱部が発生することになり、これらが均等な配置となっているため被加熱表面4a全体の均一加熱を図ることができる。また正方形の被加熱表面4aに対し、3行3列や4行4列などの配置としてより多くの直交心部を配置することでさらに均一かつ高い効率で加熱することも可能である。また隣り合う2つの直交心部と被加熱表面4aと平行平板部37とでループ形状の磁路を形成し、磁力線漏出抑制効果を得ることもできる。
【0043】
図11は上記のコア32の全ての直交心部32a~32dで同じ方向廻りに加熱コイルを巻き付けた場合の渦電流Iのある瞬間における経路を示した図である。図11に示すように、各磁力線通過領域Amどうしの間の領域ではそれぞれの渦電流Iが逆向きに重合して打ち消し合うことになり、その結果全ての磁力線通過領域Am全体を囲む外周にほとんどの渦電流Iが流れるようになる。導電性発熱部材4の縁部分を加熱させるのに適している。
【0044】
また第2の実施の形態の第2変形例であり、被加熱表面4aの形状が四角形などの多角形である場合に特に好適な変形例について説明する。図17に示す比較例のように四角形の被加熱表面4aに対して平面渦巻き状に形成された加熱コイル103のみにより誘導加熱される場合には、図18に示すように四角形の四隅の角部分4bが十分に誘導加熱されずに加熱状態の不均一による温度ムラが生じてしまう。また特にコアを有しない場合に磁力線通過領域Amの中心に生じる加熱不足もまた温度ムラの要因となっている。
【0045】
これに対して図12に示す本変形例のコア38では、平面渦巻き状の加熱コイル103の中心位置と四角形被加熱表面4aの各角部分位置にそれぞれ円柱形状の直交心部38a,38bを配置し、さらに中心位置の直交心部38aの反対部から他の直交心部38bの反対部へそれぞれ掛け渡すように4つの円柱形状の平行心部38cを配置した構成となっている。
【0046】
これによれば、平面渦巻き状の加熱コイル103からその中心位置をも含めた円形の領域Amで磁力線Mが被加熱表面4aを通過し、そののちに各角部分位置に向かって分散してそれぞれの直交心部38bに収束し、各平行心部38cを介して中心位置の直交心部38aに収束する。そのため各角部分位置の領域Am2を含む周囲にも磁力線Mの通過により渦電流Iが流れて誘導加熱されることになり、その結果、四角形被加熱表面4aの全体における温度ムラが緩和されることになる。さらに各角部分の直交心部38bと中心位置の直交心部38aとの間にはそれぞれループ形状となる磁路が形成されるため、高い磁力線漏出抑制効果も得ることができる。
【0047】
なお、図示しないが、被加熱表面4aの形状が四角形以外の多角形形状であっても各角部分位置にそれぞれ直交心部38bを配置して中心位置の直交心部38aとの間に平行心部38cを掛け渡すよう配置することで図12に示す変形例と同様の効果を得ることができる
【0048】
(実施の形態3)
図13(A)は本発明の第3の実施の形態である電磁誘導加熱装置の電磁ヘッド部とそれにより誘導加熱されている状態の導電性発熱部材の斜視図、図13(B)は第3の実施の形態の変形例である電磁誘導加熱装置の電磁ヘッド部とそれにより誘導加熱されている状態の導電性発熱部材の斜視図である。本実施の形態およびその変形例の電磁誘導加熱装置において、図13(A)、図13(B)に示すように電磁ヘッド部41,51はT字形状に形成されたコア42,52と、それに巻き付けられた加熱コイル43,53とを有している。
【0049】
コア42,52は、被加熱表面4aに対して直交する配置の直交磁心である直交平板部44,54と、この直交平板部44,54の反対部46,56に直交して被加熱表面4aに対して平行となる配置の磁力線収束磁心である平行平板部47,57(平行磁心)とを一体に備えてT字形状となっている。被加熱表面4aは長方形の形状となっており、平行平板部47,57は被加熱表面4aの形状にほぼ相似する長方形の平板形状に形成されている。直交平板部44,54の対向部45,55はその両側に傾斜面48,58を有して尖った楔形状に形成されている。
【0050】
図13(A)に示す直交平板部44は被加熱表面4aに直交する方向に長く形成されており、加熱コイル43はこの対向部45の傾斜面48も含めた直交平板部44の外周に長手方向にずらして巻き付けられている。図13(B)に示す直交平板部54は被加熱表面4aに直交する方向に短く形成されており、加熱コイル53はこの対向部55の傾斜面58の外周で同じ長手方向位置に重なるよう平面渦巻き状に巻き付けられている。
図示してはいないが、通常この電磁ヘッド部41,51は、非磁性体の材質で形成したケース内に収容されて用いられることになる。
【0051】
上記構成によれば、平行平板部47,57が磁力線Mを捕捉することによりその通過経路を整形することができるため、被加熱表面4aの形状に対応する適切な経路で磁力線Mを通過させて被加熱表面4aに対する加熱の均一化を図ることができる。また図13(A)に示す電磁ヘッド部41によれば、非加熱表面4aに対して細長形状の領域で加熱することができ、図13(B)に示す電磁ヘッド部51によれば、長形大面積の領域で加熱することができる。
【0052】
また、本実施の形態の電磁ヘッド部41,51は、T字形状のコア42,52の図中下方側の対向部45,55がその両側に傾斜面48,58を有して尖った楔形状となっていることにより、以下に説明するように被加熱表面4aに通過させる磁力線Mの密度を集中させることができる。
【0053】
図14(A)は、比較例として対向部5が被加熱表面4aに対して平行な平端面の形状に形成されている場合で、加熱操作の定常状態時にそこから放出される磁力線Mの様子を示している。平端面の中央箇所において渦電流発生のメカニズムにより、被加熱表面4a上の対応する範囲Yではほとんど誘導加熱が行われずに加熱状態が不均一となって大きく温度ムラができてしまう。
【0054】
これに対して図14(B)に示すように対向部45が両側に傾斜面48を有して尖った楔形状に形成されている場合には、磁力線Mは中央の尖端部から集中して放出されるようになるため、中央の非加熱範囲Yをなくすことができるとともに、両側方向に拡散していた分の磁力線Mも合わせて集中的に被加熱表面4aへ通過させることが可能となる。したがって導電性発熱部材4に対する誘導加熱をより効果的に行うことができる。
【0055】
またこの対向部45の傾斜面48は側面側の2方向だけでなく、図15に示すようにその外周全体に渡って形成されてもよく、それによりたとえば対向部45を全体的に角錐形状(または円錐形状)に形成することもできる。この場合磁力線Mが尖端点の1点に向かって集中するように放出されるため、最も局所的かつ効率的に誘導加熱を行うことができるようになる。
【0056】
また以上の平行平板部47,57を設ける構成では、平行平板部47,57に対して直交平板部44,54が一体となって形成されているものに限られず、部材間で磁力線Mが通過可能であればそれぞれ別体で形成したものを組み合わせてT字形状とする構成としてもよい。
【0057】
さらに、コア42と同じ強磁性材料(フェライトなど)で構成され、図16中に示すようにT字形状のコア42の周囲に配置される大きさや角度の調整できるフレーム組立体49をヘッド収容部に組み込んでもよい。これにより、フレーム組立体49も磁路を形成する磁力線捕捉部材として機能し、コア42の周囲の磁力線Mを捕捉してその通過経路を整形し、また磁力線Mが外部へ漏出するのをより効果的に抑制することができる。磁力線捕捉部材は強磁性材料を材質としていれば図16に示すような形状のフレーム組立体49に限られるものではなく、たとえばネット状の形態とするなど多様な構成が考えられる。
【0058】
なお、コア42,52の平行平板部47,57および磁力線捕捉部材の形状と被加熱表面4aの形状の間の相似関係については、縦方向と横方向の縮尺の差や、小さい切り欠き形状や突出形状といった局所的違いについては多少の許容を持たせることはもちろん可能である。
【0059】
本発明は種々の誘導加熱に応用される。たとえば利用方法の1つとして、特開平8-73818号公報などに記載されているオールオーバー工法の改良磁気ヘッドとして用いることができる。導電性発熱部材としての金属薄板の両面に熱可塑性接着剤又は熱硬化性接着剤を塗布し、2つの非導電性の板材の間に挟み込ませた状態で一方の板材の反対面から本発明の加熱装置により金属薄板を誘導加熱することで2つの板材を相互に接着させるといった接着剤の溶融装置としての利用方法が考えられる。さらに、この接着剤の溶融装置によれば、部材相互の接着箇所を再度加熱して、固化した接着剤を再び溶融させ、2つの部材を相互に分離することもできる。接着剤が炭化するまで加熱し続けた場合には、接着剤を部材から容易に除去することができるので、分離した部材を再利用することができる。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、磁心の対向部の断面形状が被加熱表面の形状と適合することにより、渦電流の経路を被加熱表面の形状とほぼ相似させることができ、熱伝導との融合効果により誘導加熱の均一化を図ることができる。
【0061】
本発明によれば、被加熱表面の形状に合わせて渦電流の発生領域を適切に設定できる。特に被加熱表面の形状に合わせて複数の直交磁心を配置することにより、被加熱表面全体に偏りなく渦電流を流して被加熱表面全体の均一加熱を図ることができる。さらに異なる直交磁心どうしで逆方向に磁力線を発生させることにより、渦電流が重合した大電流加熱部を発生させて加熱形状を変形させることができる。またループ形状の磁路を形成して高い磁力線漏出抑制効果も得られる。
【0062】
本発明によれば、磁力線収束磁心が磁力線を収束することによりその通過経路を被加熱表面の形状に対応した適切な経路に整形できるため、渦電流の経路も偏りをなくして加熱の均一化を図ることができる。また磁力線が広い範囲へ拡散するのを抑えて加熱効率を向上できるとともに、操作者側へ向かう漏出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態による電磁誘導加熱装置が備える電磁ヘッド部とそれにより誘導加熱されている状態の導電性発熱部材の斜視図である。
【図2】電磁誘導加熱装置の電気回路を示すブロック図である。
【図3】導電性発熱部材に流れる渦電流の経路を図1における矢視Xから見た図である。
【図4】第2の実施の形態である電磁誘導加熱装置の電磁ヘッド部とそれにより誘導加熱されている状態の導電性発熱部材の斜視図である。
【図5】図4に示す電磁ヘッド部により導電性発熱部材に流れる渦電流のある瞬間における経路を示した図である。
【図6】図4に示すコアのうち全ての直交心部で同じ方向廻りに加熱コイルを巻き付けた場合の導電性発熱部材に流れる渦電流のある瞬間における経路を示した図である。
【図7】E字形状に形成されたコアにおいて、両端位置の直交心部よりも中央位置の直交心部の方に加熱コイルをより多く巻き付けた場合の変形例の斜視図である。
【図8】U字形状に形成されたコアおよび加熱コイルを備えた電磁ヘッド部の変形例の斜視図である。
【図9】直交心部を2行2列で4本配置させ、それらの反対部に共通の平行平板部を設ける構成のコアの斜視図である。
【図10】図9に示すコアのうち隣り合う直交心部どうしで逆方向廻りに加熱コイルを巻き付けた場合の導電性発熱部材に流れる渦電流のある瞬間における経路を示した図である。
【図11】図9に示すコアのうち全ての直交心部で同じ方向廻りに加熱コイルを巻き付けた場合の導電性発熱部材に流れる渦電流のある瞬間における経路を示した図である。
【図12】平面渦巻き状の加熱コイルの中心位置と四角形被加熱表面の各角部分位置に直交心部を配置し、さらに4つの平行心部を連結した構成のコアの斜視図である。
【図13】(A)は第3の実施の形態である電磁誘導加熱装置の電磁ヘッド部とそれにより誘導加熱されている状態の導電性発熱部材の斜視図、(B)は第3の実施の形態の変形例である電磁誘導加熱装置の電磁ヘッド部とそれにより誘導加熱されている状態の導電性発熱部材の斜視図である。
【図14】(A)は、被加熱表面に対して平行な平端面の形状に形成されている対向部から磁力線が定常状態で放出されている様子を示す断面図であり、(B)は尖った楔形状に形成されている対向部から磁力線が放出されている様子を示す断面図である。
【図15】角錐形状に形成された対向部のみを示した斜視図である。
【図16】T字形状コアの周囲に配置されるフレーム組立体を示す斜視図である。
【図17】平面渦巻き状に形成された加熱コイルのみで構成する電磁ヘッド部と、それにより誘導加熱されている状態の導電性発熱部材の斜視図である。
【図18】図17に示す電磁ヘッド部により導電性発熱部材に流れる渦電流の経路を示した図である。
【図19】円柱形状の磁心に加熱コイルを巻き付けた電磁ヘッド部と、それにより誘導加熱されている状態の導電性発熱部材の斜視図である。
【符号の説明】
1 第1実施形態の電磁ヘッド部
2 コア(直交磁心)
3 加熱コイル
4 導電性発熱部材
4a 被加熱表面
4b 不足加熱の箇所
4c 過熱する縁部
5 対向部
6 反対部
7 電磁誘導加熱装置
8 操作スイッチ
9 ヘッド収容部
10 電源ユニット
11 高周波発生器
12 加熱時間設定器
13 本体部(交流電流供給部)
14 給電リッツ線
15 ACコード
16 交流電源
21 第2実施形態の電磁ヘッド部
22 コア
22a~22c 直交心部(直交磁心)
23 加熱コイル
25 対向部
26 反対部
27 平行心部(平行磁心)
28 E字形状コア(直交磁心、平行磁心)
29 U字形状コア(直交磁心、平行磁心)
32 第2実施形態の第1変形例のコア
32a~32d 直交心部(直交磁心)
35 対向部
36 反対部
37 平行平板部(平行磁心)
38 第2実施形態の第2変形例のコア
38a 中心位置直交心部(直交磁心)
38b 角部分位置直交心部(直交磁心)
38c 平行心部(平行磁心)
39 第2実施形態の第3変形例のコア
39a 平行平板部(平行磁心)
39b 取り付けねじ孔
39c 取り付けねじ
39d 着脱型直交心部(直交磁心)
41,51 第3実施形態の電磁ヘッド部
42,52 T字形状コア
43,53 加熱コイル
44,54 直交平板部(直交磁心)
45,55 対向部
46,56 反対部
47,57 平行平板部(磁力線収束磁心、平行磁心)
48,58 傾斜面
49 フレーム組立体(磁力線捕捉部材)
103 平面渦巻き状加熱コイル
M 交番磁力線
Am、Am2 磁力線通過領域
Y 磁力線の無通過範囲
I 渦電流
L 重合大電流
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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