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明細書 :回転子位置検出装置、および回転子位置検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4406687号 (P4406687)
公開番号 特開2005-143271 (P2005-143271A)
登録日 平成21年11月20日(2009.11.20)
発行日 平成22年2月3日(2010.2.3)
公開日 平成17年6月2日(2005.6.2)
発明の名称または考案の名称 回転子位置検出装置、および回転子位置検出方法
国際特許分類 H02P   6/18        (2006.01)
FI H02P 6/02 371S
請求項の数または発明の数 6
全頁数 36
出願番号 特願2003-380130 (P2003-380130)
出願日 平成15年11月10日(2003.11.10)
審査請求日 平成18年10月31日(2006.10.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390033950
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
発明者または考案者 【氏名】西方 正司
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100100712、【弁理士】、【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
【識別番号】100100929、【弁理士】、【氏名又は名称】川又 澄雄
【識別番号】100095500、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 正和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100098327、【弁理士】、【氏名又は名称】高松 俊雄
審査官 【審査官】天坂 康種
参考文献・文献 特開2001-275387(JP,A)
特開平11-341868(JP,A)
特開2001-327185(JP,A)
特開平09-294391(JP,A)
特開2005-65361(JP,A)
西方正司他,永久磁石同期電動機の高効率駆動とセンサレス駆動に関する研究,東京電機大学博士・修士課程学位論文予稿集,日本,東京電機大学,2003年 2月15日,49ページ-52ページ
調査した分野 H02P6/00-6/24
特許請求の範囲 【請求項1】
直流電源とインバータ回路によって駆動される永久磁石同期電動機の回転子の初期位置を検出する回転子位置検出装置であって、
直流電圧を印加して1相を励磁した場合に、他の2相にそれぞれ発生する誘導起電力の絶対値の大小関係に対応した前記回転子の初期位置が記録された第1の誘導起電力データと、
直流電圧を印加して1相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値と、直流電圧を印加して当該1相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に当該他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値との大小関係に対応した回転子の初期位置が記録された第2の誘導起電力データとを記憶する記憶手段と、
直流電圧を印加して1相を励磁した場合に他の2相に発生する誘導起電力の絶対値をそれぞれ取得し、両絶対値の大きさを比較する誘導起電力比較手段と、
直流電圧を印加して1相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値と、直流電圧を印加して当該1相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に当該他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値とを取得し、両絶対値の大きさを比較する正負ピーク値比較手段と、
前記誘導起電力比較手段からの比較結果と前記第1の誘導起電力データとに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得し、その取得結果、前記正負ピーク値比較手段からの比較結果、および前記第2の誘導起電力データに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得する初期位置検出手段と、
を備えることを特徴とする回転子位置検出装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、直流電圧を印加して2相を正方向および負方向に励磁した場合に、非励磁相にそれぞれ発生する誘導起電力のピーク値の絶対値の大小関係に対応した前記回転子の初期位置が記録された第3の誘導起電力データを記憶し、
前記正負ピーク値比較手段は、直流電圧を印加して2相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に非励磁相に発生する誘導起電力と、当該2相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に非励磁相に発生する誘導起電力とを取得し、両誘導起電力のピーク値の絶対値を比較し、
前記初期位置検出手段は、前記誘導起電力比較手段からの比較結果と前記第1の誘導起電力データとに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を検出し、その検出結果、前記正負ピーク値比較手段からの比較結果、および前記第3の誘導起電力データに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子位置検出装置。
【請求項3】
前記誘導起電力比較手段は、1相を励磁して非励磁相に発生する誘導起電力をそれぞれ取得して両誘導起電力の絶対値を比較した後、他の2相のうち少なくとも1相を励磁して非励磁相に発生する誘導起電力をそれぞれ取得して両誘導起電力の絶対値を比較することを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の回転子位置検出装置。
【請求項4】
直流電源とインバータ回路によって駆動される永久磁石同期電動機の回転子の初期位置を検出する回転子位置検出方法であって、
直流電圧を印加して1相を励磁した場合に他の2相に発生する誘導起電力をそれぞれ取得し、両誘導起電力の絶対値を比較する誘導起電力比較工程と、
直流電圧を印加して1相を励磁した場合に他の2相にそれぞれ発生する誘導起電力の絶対値の大小関係と前記回転子の初期位置との対応関係と、前記誘導起電力比較工程での比較結果とに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得する第1の初期位置検出工程と、
直流電圧を印加して1相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に他の1相に発生する誘導起電力と、直流電圧を印加して当該1相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に当該他の1相に発生する誘導起電力とを取得し、両誘導起電力のピーク値の絶対値を比較する正負ピーク値比較工程と、
直流電圧を印加して1相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値と、直流電圧を印加して当該1相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に当該他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値との大小関係と回転子の初期位置との対応関係と、前記第1の初期位置検出工程での取得結果、および前記正負ピーク値比較工程での比較結果とに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得する第2の初期位置検出工程と、
を有することを特徴とする回転子位置検出方法。
【請求項5】
前記正負ピーク値比較工程では、直流電圧を印加して2相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に非励磁相に発生する誘導起電力と、当該2相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に非励磁相に発生する誘導起電力とを取得し、両誘導起電力のピーク値の絶対値を比較し、
直流電圧を印加して2相を正方向および負方向に励磁した場合に、当該非励磁相にそれぞれ発生する誘導起電力のピーク値の絶対値の大小関係と前記回転子の初期位置との対応関係と、前記第1の初期位置検出工程での取得結果、および前記正負ピーク値比較工程での比較結果とに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得する第3の初期位置検出工程を有することを特徴とする請求項4に記載の回転子位置検出方法。
【請求項6】
前記誘導起電力比較工程では、1相を励磁して非励磁相に発生する誘導起電力をそれぞれ取得して両誘導起電力の絶対値を比較した後、他の2相のうち少なくとも1相を励磁して非励磁相に発生する誘導起電力をそれぞれ取得して両誘導起電力の絶対値を比較することを特徴とする請求項4乃至請求項5に記載の回転子位置検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石同期電動機の回転子の初期位置を求める回転子位置検出装置、および回転子位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石同期電動機(以降、PMSMと称す:Permanent Magnet Synchronous Motor)は保守性に優れ、また、高効率であることから産業界で広く利用されている。
【0003】
PMSMを駆動する場合、回転子の絶対位置を得て、正確な電流制御を行う必要があり、回転子の絶対位置を得るためには、エンコーダやレゾルバなどの回転子位置検出器を用いることが一般的である。また、近年、製造コストや回転子位置検出器の構成の複雑さ等、さまざまな問題があることから、回転子位置検出器を用いずに回転子の位置を求める方法が提案されている。
【0004】
ところで、直流電源を用いてPMSMを駆動する場合、3相のうち1相、または2相を選択して正方向や負方向に励磁すると、非励磁相に誘導起電力が発生するが、この発生する誘導起電力の大きさにはある特徴があり、また、回転子の位置は、この発生する誘導起電力の大きさに密接な関係があることが実験によって確認されている。従って、1相または2相を励磁した際に発生する誘導起電力の大きさを比較することによって回転子の位置をある幅をもって特定することが可能である。

【特許文献1】特開平9-191698号公報
【特許文献2】特開平9-331695号公報
【特許文献3】特開2000-69789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直流電源を用いて1相または2相を励磁した際に発生する誘導起電力の大小関係を基に、永久磁石同期電動機の回転子の初期位置を求める回転子位置検出装置、および回転子位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、直流電源とインバータ回路によって駆動される永久磁石同期電動機の回転子の初期位置を検出する回転子位置検出装置であって、直流電圧を印加して1相を励磁した場合に、他の2相にそれぞれ発生する誘導起電力の絶対値の大小関係に対応した前記回転子の初期位置が記録された第1の誘導起電力データと、直流電圧を印加して1相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値と、直流電圧を印加して当該1相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に当該他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値との大小関係に対応した回転子の初期位置が記録された第2の誘導起電力データとを記憶する記憶手段と、直流電圧を印加して1相を励磁した場合に他の2相に発生する誘導起電力の絶対値をそれぞれ取得し、両絶対値の大きさを比較する誘導起電力比較手段と、直流電圧を印加して1相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値と、直流電圧を印加して当該1相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に当該他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値とを取得し、両絶対値の大きさを比較する正負ピーク値比較手段と、前記誘導起電力比較手段からの比較結果と前記第1の誘導起電力データとに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得し、その取得結果、前記正負ピーク値比較手段からの比較結果、および前記第2の誘導起電力データに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得する初期位置検出手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転子位置検出装置であって、前記記憶手段は、直流電圧を印加して2相を正方向および負方向に励磁した場合に、非励磁相にそれぞれ発生する誘導起電力のピーク値の絶対値の大小関係に対応した前記回転子の初期位置が記録された第3の誘導起電力データを記憶し、前記正負ピーク値比較手段は、直流電圧を印加して2相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に非励磁相に発生する誘導起電力と、当該2相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に非励磁相に発生する誘導起電力とを取得し、両誘導起電力のピーク値の絶対値を比較し、前記初期位置検出手段は、前記誘導起電力比較手段からの比較結果と前記第1の誘導起電力データとに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を検出し、その検出結果、前記正負ピーク値比較手段からの比較結果、および前記第3の誘導起電力データに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1乃至請求項2に記載の回転子位置検出装置であって、前記誘導起電力比較手段は、1相を励磁して非励磁相に発生する誘導起電力をそれぞれ取得して両誘導起電力の絶対値を比較した後、他の2相のうち少なくとも1相を励磁して非励磁相に発生する誘導起電力をそれぞれ取得して両誘導起電力の絶対値を比較することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、直流電源とインバータ回路によって駆動される永久磁石同期電動機の回転子の初期位置を検出する回転子位置検出方法であって、直流電圧を印加して1相を励磁した場合に他の2相に発生する誘導起電力をそれぞれ取得し、両誘導起電力の絶対値を比較する誘導起電力比較工程と、直流電圧を印加して1相を励磁した場合に他の2相にそれぞれ発生する誘導起電力の絶対値の大小関係と前記回転子の初期位置との対応関係と、前記誘導起電力比較工程での比較結果とに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得する第1の初期位置検出工程と、直流電圧を印加して1相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に他の1相に発生する誘導起電力と、直流電圧を印加して当該1相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に当該他の1相に発生する誘導起電力とを取得し、両誘導起電力のピーク値の絶対値を比較する正負ピーク値比較工程と、直流電圧を印加して1相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値と、直流電圧を印加して当該1相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に当該他の1相に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値との大小関係と回転子の初期位置との対応関係と、前記第1の初期位置検出工程での取得結果、および前記正負ピーク値比較工程での比較結果とに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得する第2の初期位置検出工程とを有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の回転子位置検出方法であって、前記正負ピーク値比較工程では、直流電圧を印加して2相を正方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に非励磁相に発生する誘導起電力と、当該2相を負方向に励磁して励磁相に流れる電流を遮断した場合に非励磁相に発生する誘導起電力とを取得し、両誘導起電力のピーク値の絶対値を比較し、直流電圧を印加して2相を正方向および負方向に励磁した場合に、当該非励磁相にそれぞれ発生する誘導起電力のピーク値の絶対値の大小関係と前記回転子の初期位置との対応関係と、前記第1の初期位置検出工程での取得結果、および前記正負ピーク値比較工程での比較結果とに基づいて、前記回転子の初期位置の存在範囲を取得する第3の初期位置検出工程を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、請求項4乃至請求項5に記載の回転子位置検出方法であって、前記誘導起電力比較工程では、1相を励磁して非励磁相に発生する誘導起電力をそれぞれ取得して両誘導起電力の絶対値を比較した後、他の2相のうち少なくとも1相を励磁して非励磁相に発生する誘導起電力をそれぞれ取得して両誘導起電力の絶対値を比較することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転子位置検出器を用いずに、1相または2相を励磁した際に発生する誘導起電力の大小関係に基づいて回転子の初期位置を求めるので、装置の構成や処理は簡素になり、かつ非常に短持間で回転子の初期位置を得ることができる。また、回転子位置検出器を用いずに駆動する際に発生していたモータの逆回転を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を、図1~図21を用いて説明する。
【0014】
図1に、回転子位置検出装置1の機能構成と、検査対象となる三相永久磁石同期電動機(以降、三相PMSM9と称す)を駆動する駆動回路の構成を示す。回転子位置検出装置1は、図1に示すように、初期位置検出部2、誘導起電力比較部3、正負ピーク値比較部4、および信号選択部5を備え、図示しない記憶装置に誘導起電力データ6a,6b,6cを記憶する。また、検査対象となる三相PMSM9を駆動する駆動回路は、直流電源Vd、平滑用コンデンサ、およびモータ駆動用インバータ8とから構成されるが、本実施形態においては、さらに回転子の初期位置(回転角度)を検出する際に電流制御を行う切替スイッチ7を備える。
【0015】
初期位置検出部2は、切替スイッチ7のON/OFFを制御する機能、モータ駆動用インバータ8を構成するスイッチング素子のON/OFFを制御する機能、正負ピーク値比較部4を構成する各スイッチのON/OFFを制御する機能、信号選択部5を構成する各スイッチのON/OFFを制御する機能を有し、誘導起電力比較部3の比較結果による信号と正負ピーク値比較部4の比較結果による信号と、誘導起電力データ6a,6b,6cとに基づいて回転子の初期位置を取得し、出力する機能を有する。
【0016】
また、誘導起電力比較部3は、図2に示すように、ローパスフィルター11a,11b(以降、LPFと略す:Low Pass Filter)、反転増幅器12a,12b、およびコンパレータ13とから構成され、1相を励磁した際に発生する誘導起電力の大きさを比較し、比較結果に応じてHighまたはLowの信号を出力する機能を有する。
【0017】
具体的には、次のように信号処理が行われる。まず、信号選択部5によって選択されたU相、V相、W相のいずれか2相の誘導起電力(電圧)がそれぞれinput_1とinput_2とに入力され、LPF11a,11bは、それぞれの入力信号の電磁波ノイズを除去する。この時の遮断周波数は、例えば4kHzである。なお、電磁波ノイズの影響を無視してよい環境であれば、LPF11a,11bは省略しても良い。
【0018】
LPF11a,11bによって電磁波ノイズを除去された後、反転増幅器12a,12bは電圧を増幅し、コンパレータ13は、一方の電圧を基準電圧として増幅された電圧の大きさを比較し、比較結果に応じてHighまたはLowの信号を出力する。なお、本実施形態においては、反転増幅器12b(input_2)の電圧を基準電圧とする。
【0019】
また、正負ピーク値比較部4は、図3に示すように、LPF21、スイッチ22a,22b、ピークホールド回路25a,25b、およびコンパレータ26とから構成され、1相を励磁した際の磁極の極性判定、または2相を励磁した際の磁極の極性判定を行い、判定結果に応じてHighまたはLowの信号を出力する機能を有する。このスイッチ22a,22bは一般的なスイッチング素子でかまわない。
【0020】
具体的には、次のように信号処理が行われる。まず、信号選択部5によって選択されたU相、V相、W相のいずれか1相の誘導起電力(電圧)がinput_3に入力され、LPF21は、入力信号の電磁波ノイズを除去する。この時の遮断周波数は、例えば4kHzである。なお、電磁波ノイズの影響を無視してよい環境であれば、LPF21は省略しても良い。
【0021】
また、スイッチ22aとスイッチ22bは、それぞれ初期位置検出部2によってON/OFFが制御され、極性判定の際に、負方向に励磁された場合はスイッチ22aがON、スイッチ22bがOFFになり、正方向に励磁された場合はスイッチ22aがOFF、スイッチ22bがONになる。
【0022】
負方向に励磁された場合は、反転増幅器23が入力された電圧を反転増幅し、正方向に励磁された場合は、非反転増幅器24が入力された電圧を増幅し、ピークホールド回路25a,25bが、それぞれの場合における電圧のピーク値を保持する。コンパレータ26は、一方の電圧のピーク値を基準電圧として増幅された電圧の大きさを比較し、比較結果に応じてHighまたはLowの信号を出力する。なお、本実施形態においては、ピークホールド回路25bが保持するピーク値を基準電圧とする。
【0023】
また、信号選択部5は、図4に示すように、スイッチ31a~31gの7つのスイッチから構成され、U相、V相、W相から入力される電圧を選択して誘導起電力比較部3と正負ピーク値比較部4へ供給する機能を有する。
【0024】
具体的には、スイッチ31a~31gは、それぞれ初期位置検出部2によってON/OFFが制御され、1相励磁でU相が励磁された場合は、スイッチ31eとスイッチ31gがONになり、V相が励磁された場合は、スイッチ31dとスイッチ31gがONになり、W相が励磁された場合は、スイッチ31dとスイッチ31fがONになる。
【0025】
また、2相を励磁した際の磁極の極性判定で非励磁相がU相の場合は、スイッチ31aがONになり、非励磁相がV相の場合は、スイッチ31bがONになり、非励磁相がW相の場合は、スイッチ31cがONになる。
【0026】
また、1相を励磁した際の磁極の極性判定で励磁相がU相の場合は、スイッチ31bまたはスイッチ31cのいずれか一方がONになり、励磁相がV相の場合は、スイッチ31aまたはスイッチ31cのいずれか一方がONになり、励磁相がW相の場合は、スイッチ31aまたはスイッチ31bのいずれか一方がONになる。
【0027】
また、誘導起電力データ6a,6b,6cは、1相および2相を励磁した際にU相、V相、およびW相のそれぞれに発生する誘導起電力の大小関係と回転子の初期位置θ(回転角度)、および誘導起電力比較部3または正負ピーク値比較部4の出力信号(HighまたはLow)との対応関係を記録したデータである(詳細については後述)。
【0028】
また、切替スイッチ7は、ダイオードD7およびD8がそれぞれ並列接続されたスイッチHPとスイッチHNとから構成される。これらスイッチHPおよびスイッチHNは、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子であり、初期位置検出部2からの信号はゲートに印加される。また、三相PMSM9の中性点(N点)はスイッチHP(ソース)とスイッチHN(ドレイン)との間に接続される。なお、この切替スイッチ7は、回転子の初期位置検出の際だけに用いられ、三相PMSM9を駆動する際には用いられない。
【0029】
また、モータ駆動用インバータ8は、図5に示すように、ダイオードD1~D6がそれぞれ並列接続されたスイッチUP、VP、WP、UN、VN、WNから構成され、三相PMSM9が接続される。これらスイッチUP、VP、WP、UN、VN、WNは、例えば、MOSFET等のスイッチング素子であり、初期位置検出部2からの信号はゲートに印加され、ON/OFFが制御される。
【0030】
図6に、三相PMSM9の一例を示す。図6に示す三相PMSM9はアウタロータ型のモータであり、U相巻線の巻線軸を基準軸とし、永久磁石のN極の中心を通る軸が一致する時を回転角度0°とし、時計方向にθ°とする。また、インナーロータ型のモータでも同様である。
【0031】
なお、1相励磁時のU相の誘導起電力をeU[V]、V相の誘導起電力をeV[V]、W相の誘導起電力をeW[V]とし、また、U相に流れる電流をiU[A]、V相に流れる電流をiV[A]、W相に流れる電流をiW[A]とする。また、磁極の極性判定の際に、正方向に励磁した場合の誘導起電力のピーク値をEmP[V]、負方向に励磁した場合の誘導起電力のピーク値をEmN [V]、切替スイッチ7から三相PMSM9のN点へ流れる中性点電流をiN [A]とする。
【0032】
なお、以下に示す初期位置を特定する処理が行われる際には、初期位置検出部2、誘導起電力比較部3、正負ピーク値比較部4、および信号選択部5では、上記の信号処理が行われることとする。
【0033】
≪1相励磁≫
次に、1相を励磁して回転子の初期位置を特定する処理について、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
1相を励磁した際に、他の2相(非励磁相)に発生する誘導起電力の大きさは、回転子の初期位置に応じて異なる。例えば、回転子の初期位置θの角度が15°であった場合にU相を励磁すると、励磁直後に、非励磁相であるV相とW相に誘導起電力eVおよび誘導起電力eWが発生する。
【0035】
図8に示すように、U相を励磁した直後に発生する誘導起電力eVと誘導起電力eWとの絶対値には差があり、回転子の初期位置θに応じて大小関係が異なることが実験によって確認されており、この回転角度と誘導起電力の大小関係を記録したものが誘導起電力データ6aである。
【0036】
この誘導起電力データ6aは、図9に示すように、U相,V相,W相がそれぞれ励磁された際に発生する誘導起電力の絶対値の大小関係と、誘導起電力の絶対値の大小関係に応じて誘導起電力比較部3が出力する信号(HighまたはLow)と、回転子の回転角度の対応関係が記録されたデータテーブルであり、図9の誘導起電力データ6aでは、30°間隔で誘導起電力の絶対値の大小関係と出力信号の対応が示されている。
【0037】
例えば、U相を励磁した際に発生する誘導起電力eVと誘導起電力eWとの絶対値の大小関係が、|eW|>|eV|であれば、誘導起電力比較部3が出力する信号はLowとなるので、回転子の初期位置θは90°~180°、または270°~360°のいずれかの範囲にあることになる。
【0038】
まず、初期位置検出部2は、スイッチHNをONする制御信号を出力し、続いてスイッチUPをONする制御信号を出力し、U相を励磁する(ステップS01)。また、初期位置検出部2は、同時に信号選択部5のスイッチ31eとスイッチ31gをONする制御信号を出力する。
【0039】
スイッチUPのみがONされるとU相のみが励磁され、U相電流iUが流れ、非励磁相であるV相とW相に誘導起電力eVおよび誘導起電力eWが発生する。また、信号選択部5のスイッチ31eとスイッチ31gがONになることによって、V相の誘導起電力eVとW相の誘導起電力eWが誘導起電力比較部3へ入力される。なお、U相を励磁するのは単なる一例であって、他の1相、V相またはW相を励磁しても良い。
【0040】
初期位置検出部2が各制御信号を出力すると、誘導起電力比較部3に信号選択部5を介して誘導起電力eVおよび誘導起電力eWが入力され、誘導起電力比較部3は、誘導起電力eVおよび誘導起電力eWのピーク値を比較し(ステップS02)、比較結果に応じてHighまたはLowの信号を出力する。
【0041】
初期位置検出部2は、誘導起電力比較部3からHighまたはLowの信号が供給されると、誘導起電力データ6aを参照して、絶対値の大小関係に応じた回転子の初期位置θの存在範囲を取得する(ステップS03)。
【0042】
例えば、誘導起電力比較部3から供給される信号がHighであれば、誘導起電力eVと誘導起電力eWとの絶対値の大小関係が|eV|>|eW|であることを示し、三相PMSM9の回転子の初期位置θは、0°~90°、または180°~270°の範囲内にあることになる。
【0043】
なお、U相の励磁を終了するためにスイッチUPをOFFにするが、U相に流れていた電流を還流させるためにスイッチHNは所定の時間長だけONのままにしておき、所定の時間経過後OFFにする。また、信号選択部5のスイッチ31は全てOFFにする。
【0044】
次に、初期位置検出部2は、スイッチHNをONする制御信号を出力し、続いてスイッチVPをONする制御信号を出力し、V相(他の1相)を励磁する(ステップS04)。また、初期位置検出部2は、信号選択部5のスイッチ31dとスイッチ31gをONする制御信号を出力する。スイッチVPのみがONされるとV相のみが励磁され、V相電流iVが流れ、非励磁相であるU相とW相に誘導起電力eUおよび誘導起電力eWが発生する。
【0045】
初期位置検出部2が各制御信号を出力すると、誘導起電力比較部3に信号選択部5を介して誘導起電力eUおよび誘導起電力eWが入力され、誘導起電力比較部3は、誘導起電力eUおよび誘導起電力eWを比較し(ステップS05)、比較結果に応じてHighまたはLowの信号を出力する。
【0046】
初期位置検出部2は、誘導起電力比較部3からHighまたはLowの信号が供給されると、誘導起電力データ6aを参照して、絶対値の大小関係に応じた回転子の初期位置θの存在範囲を取得する(ステップS06)。
【0047】
例えば、誘導起電力比較部3から供給される信号がLowであり、誘導起電力eUと誘導起電力eWとの絶対値の大小関係が、|eW|>|eU|であれば、三相PMSM9の回転子の初期位置θは、120°~210°、または300°~30°の範囲内にあることになるが、ステップS03で、回転子の初期位置θは、0°~90°、または180°~270°の範囲内にあることになっているので、回転子の初期位置θは、両範囲が一致する0°~30°、または180°~210°の範囲内にあることになる。
【0048】
なお、V相の励磁を終了するためにスイッチVPをOFFにするが、V相に流れていた電流を還流させるためにスイッチHNは所定の時間長だけONのままにしておき、所定の時間経過後OFFにする。また、信号選択部5のスイッチ31は全てOFFにする。
【0049】
次に、初期位置検出部2は、スイッチHNをONする制御信号を出力し、続いてスイッチWPをONする制御信号を出力し、W相(残りの1相)を励磁する(ステップS07)。また、初期位置検出部2は、信号選択部5のスイッチ31dとスイッチ31fをONする制御信号を出力する。スイッチWPのみがONされるとW相のみが励磁され、W相電流iWが流れ、非励磁相であるU相とV相に誘導起電力eUおよび誘導起電力eVが発生する。
【0050】
初期位置検出部2が各制御信号を出力すると、誘導起電力比較部3に信号選択部5を介して誘導起電力eUおよび誘導起電力eVが入力され、誘導起電力比較部3は、誘導起電力eUおよび誘導起電力eVを比較し(ステップS08)、比較結果に応じてHighまたはLowの信号を出力する。
【0051】
初期位置検出部2は、誘導起電力比較部3からHighまたはLowの信号が供給されると、誘導起電力データ6を参照して、絶対値の大小関係に応じた回転子の初期位置θの存在範囲を取得する(ステップS09)。
【0052】
なお、W相の励磁を終了するためにスイッチWPをOFFにするが、W相に流れていた電流を還流させるためにスイッチHNは所定の時間長だけONのままにしておき、所定の時間経過後OFFにする。また、信号選択部5のスイッチ31は全てOFFにする。
【0053】
また、ステップS06までで得られた回転子の初期位置θが0°~30°あるいは180°~210°にあった場合、ステップS07~S09の処理は省略可能である。
【0054】
ステップS01~ステップS09までの処理で、三相PMSM9の回転子の初期位置θは0°~30°、または180°~210°の範囲内にあることが分かるが、これは0°~30°の範囲内に永久磁石のN極があるのかS極があるのか、この時点では不明であることを示している。従って、N極またはS極のどちらがあるのか極性を判別しなければならない。
【0055】
1相を励磁した際に非励磁相に発生する誘導起電力の大きさは、回転子の初期位置θに応じて異なる。例えば、回転子の初期位置θの角度が15°であった場合、V相を正方向に励磁して、V相電流iVを遮断すると、図10に示すように、遮断直後、V相電流iVが減少しつつU相に誘導起電力EmP(0.390[V])が発生する。また、V相を負方向に励磁して、V相電流iVを遮断すると、図11に示すように、遮断直後、V相電流iVが減少しつつU相に誘導起電力EmN(-0.396[V])が発生する。
【0056】
図10と図11に示すように、誘導起電力EmPと誘導起電力EmNとのピーク値の絶対値は、0.006[V]の差があり、回転子の初期位置θ(回転角度)に応じて異なることが実験によって確認されており、この回転角度と誘導起電力の大小関係を記録したものが誘導起電力データ6bである。
【0057】
この誘導起電力データ6bは、図12に示すように、1相が正方向および負方向に励磁された際に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値の大小関係と、誘導起電力のピーク値の絶対値の大小関係に応じて正負ピーク値比較部4が出力する信号(HighまたはLow)と、回転子の回転角度の対応関係が記録されたデータテーブルであり、図12の誘導起電力データ6bでは、30°間隔で誘導起電力のピーク値の絶対値の大小関係と出力信号の対応が示されている。
【0058】
例えば、V相を正方向と負方向に励磁した際に発生する誘導起電力EmPと誘導起電力EmNとのピーク値の絶対値の大小関係が、|EmN|>|EmP|であれば、正負ピーク値比較部4が出力する信号はHighとなるので、回転子の初期位置θは330°~30°または210°~270°の範囲にあることを示している。
【0059】
また、図12中に示す誘導起電力データ6bを基に、ステップS01~ステップS09までの処理で得られた回転子の初期位置θの範囲から、励磁する1相が決定される。例えば、範囲が0°~30°、180°~210°であれば、V相またはW相を励磁することが示されている。
【0060】
初期位置検出部2は、ステップS01~ステップS09までの処理で得られた回転子の初期位置の範囲が0°~30°、180°~210°であったので、スイッチHNをONする制御信号を出力し、続いてスイッチVPをONする制御信号を出力し、V相を正方向に励磁する。また、初期位置検出部2は、信号選択部5のスイッチ31aと正負ピーク値比較部4のスイッチ22bをONする制御信号を出力する。
【0061】
スイッチVPのみがONされるとV相が正方向に励磁され、V相に流れる電流iVが一定になった後、初期位置検出部2は、スイッチVPをOFFする制御信号を出力する(ステップS10)。すると、非励磁相であるU相に誘導起電力EmPが発生する。なお、V相を励磁するのは単なる一例であって、W相を励磁しても良い。
【0062】
初期位置検出部2が各制御信号を出力すると、正負ピーク値比較部4に信号選択部5を介して誘導起電力EmPが入力され、正負ピーク値比較部4のピークホールド回路25bは、誘導起電力EmPのピーク値を保持する。
【0063】
初期位置検出部2は、スイッチHPをONする制御信号を出力し、続いてスイッチVNをONする制御信号を出力し、V相を負方向に励磁する。また、初期位置検出部2は、信号選択部5のスイッチ31aと正負ピーク値比較部4のスイッチ22aをONする制御信号を出力する(ステップS11)。
【0064】
スイッチVNのみがONされるとV相が負方向に励磁され、V相に流れる電流iVが一定になった後、初期位置検出部2は、スイッチVNをOFFする制御信号を出力する。すると、非励磁相であるU相に誘導起電力EmNが発生する。
【0065】
初期位置検出部2が各制御信号を出力すると、正負ピーク値比較部4に信号選択部5を介して誘導起電力EmNが入力され、正負ピーク値比較部4のピークホールド回路25aは、誘導起電力EmNのピーク値を保持する。
【0066】
正負ピーク値比較部4のコンパレータ26は、誘導起電力EmPのピーク値と誘導起電力EmNのピーク値の両ピーク値を比較し(ステップS12)、比較結果に応じてHighまたはLowの信号を出力する。
【0067】
初期位置検出部2は、正負ピーク値比較部4からHighまたはLowの信号が供給されると、誘導起電力データ6bを参照して、ピーク値の絶対値の大小関係に応じた回転子の初期位置θの存在範囲を取得し(ステップS13)、三相PMSM9の回転子の初期位置θとして出力する。
【0068】
例えば、正負ピーク値比較部4から供給される信号がHighであれば、誘導起電力EmPと誘導起電力EmNとのピーク値の絶対値の大小関係が|EmN|>|EmP|であることを示し、回転子の初期位置θは、ステップS01~ステップS09までの処理結果と合わせて三相PMSM9の回転子の初期位置θは0°~30°の範囲内にあることになる。
【0069】
なお、図10および図11では、V相電流iVが飽和した後に遮断しているが、V相電流iVが飽和する前に遮断しても、同様に誘導起電力EmPと誘導起電力EmNとのピーク値の絶対値には差が生じることが実験によって確認されている。その飽和前に遮断した際のV相電流iVとU相誘導起電力の波形図を図13および図14に示す。
【0070】
例えば、回転子の初期位置θの角度が15°であった場合、V相を正方向に励磁して、飽和する前にV相電流iVを遮断すると、図13に示すように、遮断直後、V相電流iVが減少しつつU相に誘導起電力EmP(0.712[V])が発生する。また、V相を負方向に励磁して、飽和する前にV相電流iVを遮断すると、図14に示すように、遮断直後、V相電流iVが減少しつつU相に誘導起電力EmN(-0.790[V])が発生する。なお、励磁時間は正方向、負方向とも同一である。
【0071】
このように、誘導起電力EmPと誘導起電力EmNとのピーク値の絶対値は、0.078[V]の差があることが確認されており、飽和前に遮断して発生した両誘導起電力のピーク値の絶対
値の差を用いても良い。
【0072】
≪2相励磁≫
次に、2相を励磁して極性を判別し、回転子の初期位置を特定する処理について、図15に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、ステップS21~ステップS29までの処理は、1相励磁の際のステップS01~ステップS09までの処理と同じなので、詳細な説明を省略する。
【0073】
2相を励磁した際に非励磁相に発生する誘導起電力の大きさは、回転子の初期位置(回転角度)に応じて異なる。例えば、回転子の初期位置θの角度が15°であった場合、V相とW相を所定の時間長だけ正方向に励磁した後、中性点電流iNを遮断すると、図16に示すように、遮断直後、中性点電流iNが減少しつつU相に誘導起電力EmP(1.35[V])が発生する。また、V相とW相を所定の時間長だけ負方向に励磁して、中性点電流iNが飽和する前に遮断すると、図17に示すように、遮断直後、中性点電流iNが減少しつつU相に誘導起電力EmN(-1.45[V])が発生する。
【0074】
図16と図17に示すように、誘導起電力EmPと誘導起電力EmNとのピーク値の絶対値は、0.1[V]の差があり、回転子の初期位置(回転角度)に応じて異なることが実験によって確認されており、この回転角度と誘導起電力の大小関係を記録したものが誘導起電力データ6cである。
【0075】
この誘導起電力データ6cは、図18に示すように、2相が正方向および負方向に励磁された際に発生する誘導起電力のピーク値の絶対値の大小関係と、誘導起電力のピーク値の絶対値の大小関係に応じて正負ピーク値比較部4が出力する信号(HighまたはLow)と、回転子の回転角度の対応関係が記録されたデータテーブルであり、図18の誘導起電力データ6cでは、30°間隔で誘導起電力のピーク値の絶対値の大小関係と出力信号の対応が示されている。
【0076】
例えば、V相とW相を正方向と負方向に励磁した際に発生するU相の誘導起電力EmPと誘導起電力EmNとのピーク値の絶対値の大小関係が、|EmN|>|EmP|であれば、正負ピーク値比較部4が出力する信号はHighとなるので、回転子の初期位置θは330°~30°の範囲にあることを示している。
【0077】
また、図18中に示す誘導起電力データ6cを基に、ステップS21~ステップS29までの処理で得られた回転子の初期位置θの範囲から、励磁する2相が決定される。例えば、範囲が0°~30°、180°~210°であれば、V相とW相を励磁することが示されている。
【0078】
初期位置検出部2は、ステップS21~ステップS29までの処理で得られた回転子の初期位置θが0°~30°、180°~210°であったので、スイッチHNをONする制御信号を出力し、続いてスイッチVPとスイッチWPをONする制御信号を出力し、V相とW相を正方向に励磁する。また、初期位置検出部2は、信号選択部5のスイッチ31aと正負ピーク値比較部4のスイッチ22bをONする制御信号を出力する。
【0079】
スイッチVPとスイッチWPがONされるとV相とW相が正方向に励磁され、その後、初期位置検出部2は、スイッチVPとスイッチWPをOFFする制御信号を出力する(ステップS30)。すると、非励磁相であるU相に誘導起電力EmPが発生する。
【0080】
初期位置検出部2が各制御信号を出力すると、正負ピーク値比較部4に信号選択部5を介して誘導起電力EmPが入力され、正負ピーク値比較部4のピークホールド回路25bは、誘導起電力EmPのピーク値を保持する。
【0081】
初期位置検出部2は、スイッチHPをONする制御信号を出力し、続いてスイッチVNとスイッチWNをONする制御信号を出力し、V相とW相を負方向に励磁する。また、初期位置検出部2は、信号選択部5のスイッチ31aと正負ピーク値比較部4のスイッチ22aをONする制御信号を出力する。
【0082】
スイッチVNとスイッチWNがONされるとV相とW相が負方向に励磁され、その後、初期位置検出部2は、スイッチVNとスイッチWNをOFFする制御信号を出力する(ステップS31)。すると、非励磁相であるU相に誘導起電力EmNが発生する。
【0083】
初期位置検出部2が各制御信号を出力すると、正負ピーク値比較部4に信号選択部5を介して誘導起電力EmNが入力され、正負ピーク値比較部4のピークホールド回路25aは、誘導起電力EmNのピーク値を保持する。
【0084】
正負ピーク値比較部4のコンパレータ26は、誘導起電力EmPのピーク値と誘導起電力EmNのピーク値の両ピーク値を比較し(ステップS32)、比較結果に応じてHighまたはLowの信号を出力する。
【0085】
初期位置検出部2は、正負ピーク値比較部4からHighまたはLowの信号が供給されると、誘導起電力データ6cを参照して、ピーク値の絶対値の大小関係に応じた回転子の初期位置θの存在範囲を取得し(ステップS33)、三相PMSM9の回転子の初期位置θとして出力する。
【0086】
例えば、正負ピーク値比較部4から供給される信号がHighであれば、誘導起電力EmPと誘導起電力EmNとのピーク値の絶対値の大小関係が|EmN|>|EmP|であることを示し、回転子の初期位置は、ステップS21~ステップS29までの処理結果と合わせて三相PMSM9の回転子の初期位置θは0°~30°の範囲内にあることになる。
【0087】
なお、図16および図17では、中性点電流iNが飽和する前に遮断しているが、中性点電流iNが飽和した後に遮断しても、同様に誘導起電力EmPと誘導起電力EmNとのピーク値の絶対値には差が生じることが実験によって確認されている。
【0088】
例えば、回転子の初期位置θの角度が15°であった場合、V相とW相を正方向に励磁して、中性点電流iNが飽和した後に遮断すると、図19に示すように、遮断直後、中性点電流iNが減少しつつU相に誘導起電力EmP(1.57[V])が発生する。また、V相とW相を負方向に励磁して、中性点電流iNが飽和した後に遮断すると、図20に示すように、遮断直後、中性点電流iNが減少しつつU相に誘導起電力EmN(-1.72[V])が発生する。
【0089】
このように、誘導起電力EmPと誘導起電力EmNとのピーク値の絶対値は、0.15[V]の差があることが確認されており、飽和後に遮断して発生した両誘導起電力のピーク値の絶対値の差を用いても良い。
【0090】
図21に、本発明を実施して回転子の初期位置θを求め、三相PMSM9を始動させた時の各相の電圧波形と回転速度の変化を示す。なお、図21に示す波形は、1相励磁を各相にそれぞれ行い、続いて2相励磁を行って極性判別を行った場合のものである。この波形図からは、回転子の初期位置θを求めるのに要した時間が約0.1秒と非常に短いこと、また、回転速度の変化から逆回転せずに始動していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】回転子位置検出装置の機能構成と検査対象となる三相PMSMを駆動する駆動回路の構成を示す図である。
【図2】誘導起電力比較部の機能構成を示す図である。
【図3】正負ピーク値比較部の機能構成を示す図である。
【図4】信号選択部の構成を示す図である。
【図5】三相PMSMを駆動する駆動回路を示す図である。
【図6】三相PMSMの一例を示す図である。
【図7】1相励磁時における回転子の初期位置を特定する処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】1相励磁時の誘導起電力と電流の波形図である。
【図9】回転子の回転角度と誘導起電力の大小関係を示す図(誘導起電力データ6a)である。
【図10】1相(V相)正方向励磁時の誘導起電力と電流の波形図(飽和後に遮断)である。
【図11】1相(V相)負方向励磁時の誘導起電力と電流の波形図(飽和後に遮断)である。
【図12】1相励磁時における回転子の回転角度と誘導起電力の大小関係を示す図(誘導起電力データ6b)である。
【図13】1相(V相)正方向励磁時の誘導起電力と電流の波形図(飽和前に遮断)である。
【図14】1相(V相)負方向励磁時の誘導起電力と電流の波形図(飽和前に遮断)である。
【図15】2相励磁時における回転子の初期位置を特定する処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】2相(V,W相)正方向励磁時の誘導起電力と電流の波形図(飽和前に遮断)である。
【図17】2相(V,W相)負方向励磁時の誘導起電力と電流の波形図(飽和前に遮断)である。
【図18】2相励磁時における回転子の回転角度と誘導起電力の大小関係を示す図(誘導起電力データ6c)である。
【図19】2相(V,W相)正方向励磁時の誘導起電力と電流の波形図(飽和後に遮断)である。
【図20】2相(V,W相)負方向励磁時の誘導起電力と電流の波形図(飽和後に遮断)である。
【図21】三相PMSMを始動させた時の各相の電圧波形と回転速度の変化を示す波形図である。
【符号の説明】
【0092】
1 回転子位置検出装置
2 初期位置検出部
3 誘導起電力比較部
4 正負ピーク値比較部
5 信号選択部
6a、b、c 誘導起電力データ
7 切替スイッチ
8 モータ駆動用インバータ
9 三相永久磁石同期電動機(三相PMSM)
11a、b ローパスフィルター(LPF)
12a、b 反転増幅器
13 コンパレータ
21 ローパスフィルター(LPF)
22a、b スイッチ
23 反転増幅器
24 非反転増幅器
25a、b ピークホールド回路
26 コンパレータ
31a、b、c、d、e、f、g スイッチ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20