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明細書 :信号到来方向推定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4869558号 (P4869558)
公開番号 特開2005-156521 (P2005-156521A)
登録日 平成23年11月25日(2011.11.25)
発行日 平成24年2月8日(2012.2.8)
公開日 平成17年6月16日(2005.6.16)
発明の名称または考案の名称 信号到来方向推定方法
国際特許分類 G01S   3/32        (2006.01)
G01S   3/04        (2006.01)
FI G01S 3/32
G01S 3/04 C
請求項の数または発明の数 2
全頁数 13
出願番号 特願2004-059814 (P2004-059814)
出願日 平成16年3月3日(2004.3.3)
優先権出願番号 2003372028
優先日 平成15年10月31日(2003.10.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年2月6日(2007.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 克征
【氏名】小林 岳彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100101269、【弁理士】、【氏名又は名称】飯塚 道夫
審査官 【審査官】中村 説志
参考文献・文献 特開平03-078676(JP,A)
特開2001-051037(JP,A)
特表2003-523676(JP,A)
特開2000-349548(JP,A)
特開昭64-088269(JP,A)
特開昭58-119238(JP,A)
特開平10-253730(JP,A)
調査した分野 G01S 3/00- 3/74
G01S 7/00- 7/42
G01S13/00-13/95
H01Q 3/00- 5/02
H01Q13/00-13/28
H01Q21/00-25/04
特許請求の範囲 【請求項1】
信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有する2基の開口面アンテナを相互に隣接して配置し、これら2基の開口面アンテナを、信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有するハイブリッド回路の入力側にそれぞれ接続し、
2基の開口面アンテナをそれぞれリッジドウェーブガイドホーンアンテナとした信号到来方向推定装置を用いた信号到来方向推定方法であって、
2基の開口面アンテナの最大放射方向を含む平面に垂直で、かつ該2基の開口面アンテナの電気中心の二等分点を通る直線を回転軸として360度回転させ、この2基の開口面アンテナから一対のアンテナ出力信号がハイブリッド回路に入力され、
次に、このハイブリッド回路が一対のアンテナ出力信号の和信号及び差信号を出力するのに伴い、信号の周波数帯域幅を複数の帯域に分割し、
分割された各帯域において、2基の開口面アンテナの回転方向に沿った各角度毎に差信号を和信号で除してΔ/Σの絶対値を得ると共に、このΔ/Σの絶対値を基にして、この回転方向に沿ったΔ/Σパターンをそれぞれ作成し、
各帯域におけるΔ/Σパターンが形成する曲線の落ち込みが一致する角度を信号の真の到来方向と推定することを特徴とする信号到来方向推定方法
【請求項2】
信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有する2基の開口面アンテナを相互に隣接して配置し、これら2基の開口面アンテナを、信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有するハイブリッド回路の入力側にそれぞれ接続し、
2基の開口面アンテナをそれぞれリッジドウェーブガイドホーンアンテナとした信号到来方向推定装置を用いた信号到来方向推定方法であって、
2基の開口面アンテナの最大放射方向を含む平面に垂直で、かつ該2基の開口面アンテナの電気中心の二等分点を通る直線を回転軸として360度回転させ、この2基の開口面アンテナから一対のアンテナ出力信号がハイブリッド回路に入力され、
次に、このハイブリッド回路が一対のアンテナ出力信号の和信号及び差信号を出力するのに伴い、分割数を逐次増やしていく形で、各回毎において信号の周波数帯域幅を複数の帯域にそれぞれ分割し、
分割された各帯域において、2基の開口面アンテナの回転方向に沿った各角度毎に差信号を和信号で除してΔ/Σの絶対値を得ると共に、このΔ/Σの絶対値を基にして、この回転方向に沿ったΔ/Σパターンをそれぞれ作成し、これを各回毎に繰り返し、
各帯域におけるΔ/Σパターンが形成する曲線の落ち込む角度が一致したときに、分割を終了し、
各帯域におけるΔ/Σパターンが形成する曲線の落ち込みが一致する角度を信号の真の到来方向と推定することを特徴とする信号到来方向推定方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑な信号処理を必要とせずに広帯域信号の到来方向を高分解能かつ直接的
に推定する信号到来方向推定方法に関し、特に比帯域幅(帯域幅/中心周波数)が0.2以上或いは帯域幅が500MHz以上の超広帯域(ウルトラワイドバンド)信号の到来方向の推定に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
モノパルス方式は原理的には、一つのビーム位置で一つのパルス(モノパルス)を処理することにより測角情報が得られる。従って、前者の方式に比べて時間的な変動を受けないため、高い測角精度を得ることができる。モノパルス方式には、振幅を検出する方式と位相を検出する方式があり、それぞれ、振幅比較モノパルス、位相比較モノパルスと呼ばれている。
【0003】
振幅比較モノパルスは、一部が重なりあった2個のアンテナビームを一組として用い、角度誤差(アンテナ正面方向からのずれ)を検出する。方位、高低の両方について角度誤差を検出するときは、4個のアンテナビームを必要とする。
【0004】
和信号(Σ)と差信号(Δ)によって角度誤差が検出できる。角度誤差電圧εは差信号(Δ)を和信号(Σ)で正規化して、すなわち、ε=Δ/Σの形で演算される。角度誤差電圧は、おおむねS字の形状となり、アンテナの正面方向からのずれが検出できる。なお、差信号(Δ)のみで測角しようとする場合、その信号強度は目標の大きさや距離によって変化するため正しい測角ができない。これを排除するため、差信号(Δ)と同様の変化を受ける和信号(Σ)で除す、すなわち正規化するという方法がとられる。
【0005】
空間における信号到来方向推定の分解能は受信アンテナの指向性に依存するので、高分解能を得ることは、一般的に困難である。但し、狭帯域信号に対する信号到来方向推定方法としては、アレイアンテナを受信アンテナとして利用し、MUSIC(Multiple signal classification)アルゴリズムやESPRIT(Estimation of signal parameters via rotational invariance techniques) アルゴリズムと同程度の高分解能を示すSAGE(Space alternating generalized expectation maximization) アルゴリズムなどの角度分解能が高いアルゴリズムを採用したものがすでに開発されている。さらに、現在はSAGEアルゴリズムを採用した超広帯域(ウルトラワイドバンド)信号の到来方向推定法の検討もされている。
【0006】
ここでMUSICアルゴリズムは、アレイアンテナの受信信号から得られる相関行列Rの固有値展開に基づいて、雑音成分に対応した固有値に対応する固有ベクトルと、信号の到来方向に対応する方向ベクトルとが、直交する性質を利用した方向推定アルゴリズムである。
【0007】
ESPRITアルゴリズムは、同じアレイアンテナ(サブアレイ)を二つ用い、この二つのアレイアンテナに到来する信号の位相差から到来方向推定を行うアルゴリズムであるが、パラメータの最尤推定がインコヒーレント波を前提としているため、空間平均法などの前処理が必要であり、データ構造に制約がある。
【0008】
SAGEアルゴリズムは、データモデルの観点においてESPRITのような厳しい条件を必要とせず、また座標系の設定により平面波だけでなく球面波の評価が出来る最尤推定に基づいた方向推定アルゴリズムである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これに伴い、アレイアンテナを用いると共にこれらのアルゴリズムを採用したものを、超広帯域信号の信号の到来方向を推定する信号到来方向推定方法に応用することが考えられるが、この場合には、信号の処理過程が複雑になって、膨大な計算量が必要となるだけでなく、信号処理過程における誤った解であるスプリアスが生じ易くなるというような欠点を有していた。
【0010】
本発明は上記事実を考慮し、上記のアルゴリズムのように複雑な信号処理を必要とせず、狭帯域レーダ技術で用いられているモノパルスパターン技術を超広帯域信号へ拡張することで、超広帯域信号の到来方向を直接的に高分解能で推定する信号到来方向推定方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る信号到来方向推定方法は、信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有する2基の開口面アンテナを相互に隣接して配置し、これら2基の開口面アンテナを、信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有するハイブリッド回路の入力側にそれぞれ接続し、
2基の開口面アンテナをそれぞれリッジドウェーブガイドホーンアンテナとした信号到来方向推定装置を用いた信号到来方向推定方法であって、
2基の開口面アンテナの最大放射方向を含む平面に垂直で、かつ該2基の開口面アンテナの電気中心の二等分点を通る直線を回転軸として360度回転させ、この2基の開口面アンテナから一対のアンテナ出力信号がハイブリッド回路に入力され、
次に、このハイブリッド回路が一対のアンテナ出力信号の和信号及び差信号を出力するのに伴い、信号の周波数帯域幅を複数の帯域に分割し、
分割された各帯域において、2基の開口面アンテナの回転方向に沿った各角度毎に差信号を和信号で除してΔ/Σの絶対値を得ると共に、このΔ/Σの絶対値を基にして、この回転方向に沿ったΔ/Σパターンをそれぞれ作成し、
各帯域におけるΔ/Σパターンが形成する曲線の落ち込みが一致する角度を信号の真の到来方向と推定することを特徴とする。
【0012】
請求項1に係る信号到来方向推定方法の作用を以下に説明する。
本請求項に係る信号到来方向推定方法に用いられる信号到来方向推定装置は、超広帯域信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有する2基の開口面アンテナと、超広帯域信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有するハイブリッド回路とを用いたモノパルスアンテナである。さらに、これら2基の開口面アンテナを相互に隣接して配置すると共に、ハイブリッド回路の入力側にこれら2基の開口面アンテナをそれぞれ接続する構造とするだけでなく、2基の開口面アンテナをそれぞれリッジドウェーブガイドホーンアンテナとした。
また、これら2基の開口面アンテナの最大放射方向を含む平面に垂直で、かつ該2基の開口面アンテナの電気中心の二等分点を通る直線を回転軸として回転させるようにする。
【0013】
そして、2基の開口面アンテナからハイブリッド回路に一対のアンテナ出力信号が入力
され、このハイブリッド回路でアンテナ出力信号を線形的な合成により変換して和信号で
あるΣ信号と差信号であるΔ信号とを得て、出力することができる。これに伴い、2基の開口面アンテナの回転方向に沿った各角度毎に、差信号を和信号で除してΔ/Σの絶対値を得るようにする。
【0014】
つまり、本請求項は、2基の開口面アンテナで受信された同位相信号をハイブリッド回路によって線形的に合成してΣ信号とΔ信号に変換し、これによって得られる2基の開口面アンテナの放射パターンであるΣパターン及びΔパターンからなるモノパルスパターンを利用するものであり、このΔパターンをΣパターンで除して正規化したときの値が極小値となる方向とされる、Σパターンの極大値とΔパターンの極小値とが一致する方向を到来方向と推定するようにした。
【0015】
以上より、モノパルスパターン技術を利用した点で本請求項の信号到来方向推定方法は、従来の狭帯域信号に対するものと同じであるが、本請求項ではこれを超広帯域信号へ拡張したものである。
【0018】
但し、本請求項は、信号の周波数帯域幅を複数の帯域に分割し、分割された各帯域において、2基の開口面アンテナの回転方向に沿った各角度毎に差信号を和信号で除してΔ/Σの絶対値を得ると共に、このΔ/Σの絶対値を基にして、この回転方向に沿ったΔ/Σパターンをそれぞれ作成し、各帯域におけるΔ/Σパターンが形成する曲線の落ち込みが一致する角度を信号の真の到来方向と推定したという構成を有する。
【0019】
つまり、本請求項に係る信号到来方向推定方法によれば、信号の周波数帯域幅を分割し、分割された各帯域におけるΔ/Σパターンが形成する曲線の落ち込みが一致する方向があれば、その方向が信号の真の到来方向と推定できるので、直接波のほかに反射波が生じた場合でも、スプリアス(間違った解)を解消して、信号の到来方向を確実に推定可能となる。
【0020】
請求項に係る信号到来方向推定方法は、信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有する2基の開口面アンテナを相互に隣接して配置し、これら2基の開口面アンテナを、信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有するハイブリッド回路の入力側にそれぞれ接続し、
2基の開口面アンテナをそれぞれリッジドウェーブガイドホーンアンテナとした信号到来方向推定装置を用いた信号到来方向推定方法であって、
2基の開口面アンテナの最大放射方向を含む平面に垂直で、かつ該2基の開口面アンテナの電気中心の二等分点を通る直線を回転軸として360度回転させ、この2基の開口面アンテナから一対のアンテナ出力信号がハイブリッド回路に入力され、
次に、このハイブリッド回路が一対のアンテナ出力信号の和信号及び差信号を出力するのに伴い、分割数を逐次増やしていく形で、各回毎において信号の周波数帯域幅を複数の帯域にそれぞれ分割し、
分割された各帯域において、2基の開口面アンテナの回転方向に沿った各角度毎に差信号を和信号で除してΔ/Σの絶対値を得ると共に、このΔ/Σの絶対値を基にして、この回転方向に沿ったΔ/Σパターンをそれぞれ作成し、これを各回毎に繰り返し、
各帯域におけるΔ/Σパターンが形成する曲線の落ち込む角度が一致したときに、分割を終了し、
各帯域におけるΔ/Σパターンが形成する曲線の落ち込みが一致する角度を信号の真の到来方向と推定することを特徴とする。
【0021】
つまり、本請求項に係る信号到来方向推定方法は請求項1とほぼ同一の構成有するが、分割数を逐次増やしていく形で、各回毎において信号の周波数帯域幅を複数の帯域にそれぞれ分割する等の点で相違する。
但し、本請求項に係る信号到来方向推定方法によっても、請求項と同様に、スプリアス(間違った解)を解消して、信号の到来方向を確実に推定可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明の上記構成によれば、複雑なアルゴリズムによる信号処理を
必要とせずに、2基の開口面アンテナとハイブリッド回路を組み合わせた簡単なシステム
で、超広帯域信号の到来方向の推定が可能な信号到来方向推定方法を提供でき、特に2基の開口面アンテナの最大放射方向を含む平面に垂直で、かつ該2基の開口面アンテナの電気中心の二等分点を通る直線を回転軸として360度回転させることにより、超広帯域信号の到来方向を簡易に推定できるという優れた効果を有する。

【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る信号到来方向推定装置及び信号到来方向推定方法の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る信号到来方向推定装置10を示すブロック図であり、この図1に示すように、超広帯域信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有する2基の開口面アンテナ12、14が、中心軸CL廻りに回転されるように、配置されている。
【0024】
尚、これら2基の開口面アンテナ12、14は、信号の周波数帯域幅内における電圧定在波比が1.5以下のリッジドウェーブガイドホーンアンテナとそれぞれされている。また、中心軸CLは、これら2基の開口面アンテナ12、14の最大放射方向Zを含む平面に垂直に伸び且つ、これら2基の開口面アンテナ12、14の電気中心E1、E2を二等分する点を通る直線とされる。
【0025】
また、これら2基の開口面アンテナ12、14は、超広帯域信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有する180°ハイブリッド回路である広帯域ハイブリッド回路16の入力側にそれぞれ接続されており、これら2基の開口面アンテナ12、14から各々出力されるアンテナ出力信号22、24の図2に示す開口面アンテナ12の放射パターンW1及び開口面アンテナ14の放射パターンW2をこの広帯域ハイブリッド回路16が線形的に合成するようになっている。
【0026】
つまり、アンテナ出力信号22、24を線形的に合成した結果として、この広帯域ハイブリッド回路16は、2基の開口面アンテナ12、14のアンテナ出力信号22、24を相互に加え合わせた和信号となるΣ信号26と、2基の開口面アンテナ12、14のアンテナ出力信号22、24間を相互に差し引いた差信号となるΔ信号28とを、出力側から出力するようになっている。
【0027】
以上より、本実施の形態では、2基の開口面アンテナ12、14から一対のアンテナ出力信号22、24が広帯域ハイブリッド回路16に入力された後、この広帯域ハイブリッド回路16が一対のアンテナ出力信号22、24の和信号となるΣ信号26及び差信号となるΔ信号28を出力することになる。
【0028】
さらに、この広帯域ハイブリッド回路16は、広帯域受信機18、19に接続されており、広帯域ハイブリッド回路16がこれらΣ信号26及びΔ信号28を広帯域受信機18、19に出力することで、Σ信号26に基づいて角度θに沿ったΣパターンP1とΔ信号28に基づいて角度θに沿ったΔパターンP2とを図3に示すように得ることができる。
【0029】
そして、このΔパターンP2の値をΣパターンP1の値で除して正規化したときの値が極小値となる方向とされる、図3に示すΣパターンP1の極大値とΔパターンP2の極小値とが一致する方向を、図4に示すように例えば0°の角度θとして、広帯域信号源30からの信号が到来する到来方向と推定する。
【0030】
具体的には、信号到来方向推定装置10の2基の開口面アンテナ12、14を中心軸CL廻りで回転させ、各角度において時間領域または周波数領域におけるデータを和信号出力と差信号出力を別個の広帯域受信機18、19に接続することによって測定し、このデータを時間領域または周波数領域で積分することで各々の角度における総受信電力を求め、超広帯域信号に対するΣパターンP1とΔパターンP2を広帯域受信機18、19で得る。
【0031】
そして、このようにして得られたΣパターンP1及びΔパターンP2を基にして、広帯域受信機18、19に接続された計算機20によってΔ/Σの絶対値を算出し、また、ΣパターンP1の極大値とΔパターンP2の極小値とが一致してこの図3に示すグラフにおいて極小値となる方向が、信号の到来方向と推定できる。
【0032】
次に、単一波源からの広帯域信号の到来方向を推定する為に、図5に示すように、単一波源となる広帯域信号源30と信号到来方向推定装置10との間の距離Lを3000mmとし、角度θが-4度となる方向から直接波TSが到来するように設置した実施環境での推定結果を以下に説明する。
【0033】
この際、まず信号到来方向推定装置10の2基の開口面アンテナ12、14を中心軸CL廻りで360度回転させて、1度ごとにおける周波数領域のデータを測定し、周波数についてこのデータを積分することで、各々の角度における総受信電力を求める。
【0034】
図5で示す実施環境で得られた広帯域信号におけるΣパターンP1の特性曲線及びΔパターンP2の特性曲線を図6のグラフに示す。このグラフにおいて、横軸は角度を示し、縦軸は総受信電力(アンテナゲイン)を示す。この図6のグラフでは、ΣパターンP1の極大値となる箇所X1とのΔパターンP2の極小となる箇所X2とが、角度θを-4度とした方向で一致しているので、-4度の方向から超広帯域信号が到来していると推定できる。
【0035】
さらに、各角度毎に差信号となるΔ信号28を和信号となるΣ信号26で除して各角度毎にΔ/Σの絶対値を得ると共に、このΔ/Σの絶対値を基にして、開口面アンテナ12、14の回転方向に沿ったΔ/Σパターンをそれぞれ作成し、このΔ/Σの絶対値の特性曲線となるΔ/Σパターンを図7に示す。
【0036】
この図7のグラフにおいて、Δ/Σパターンが形成する特性曲線の落ち込み部分が角度θを-4度とした方向に発生している為、-4度の方向から超広帯域信号が到来していると、このグラフから推定できる。尚、この図7のグラフでは、角度θを+45度付近とした箇所及び-53度付近とした箇所にも落ち込みが発生しているものの、これはスプリアス(間違った解)であり、正しい到来方向ではない。
【0037】
そこで、このスプリアスと真の到来方向を見わける為に、図9のフローチャートに示すような手順を採用し、以下にこの手順を説明する。
まず、ステップS1において信号到来方向推定装置10の広帯域受信機18、19がΣ信号26及びΔ信号28を得た後、ステップS2においてnを2と設定する。さらに、ステップS3において、これらΣ信号26及びΔ信号28の周波数帯域幅をn個である2個の帯域であるサブバンドに等分割する。
【0038】
この後、ステップS4で、各サブバンドにおいて周波数について積分して、各サブバンドにおける総受信電力を計算機20で計算することで、各サブバンドにおけるΔ/Σの絶対値をこの計算機20によってそれぞれ算出し、このΔ/Σの絶対値を基にしてΔ/Σパターンを作成する。
【0039】
次に、ステップS5では、各サブバンドの開口面アンテナ12、14の回転方向に沿ってΔ/Σパターンが形成する曲線の落ち込む部分が一致しているかを判断し、一致していなければ、ステップS6に移ってnに1を加えた値を新たにnとして、ステップS3以下の処理を再実行する。
【0040】
そして、各サブバンドのΔ/Σパターンが形成する曲線における落ち込み部分及びその数が一致して、落ち込み部分に変化がなくなる結果、ステップS5でこの落ち込み部分が一致していると判断されるまで、周波数帯域幅を逐次分割する。この後、ステップS7に移って、Δ/Σパターンが形成する曲線の落ち込み部分が最終的に一致する方向を超広帯域信号の真の到来方向と推定する。
【0041】
図8は、各周波数におけるΔパターンを示したグラフであり、超広帯域信号の真の到来方向では周波数が変化しても、角度θが-4度の方向でΔパターンの極小値の位置は変化しないことがこの図8により確認できる。この為、複数のサブバンドに等分割したときのΔ/Σパターンが形成する各曲線の落ち込み部分も真の到来方向では変化しないことになる。よって、複数のサブバンドに分割することで、到来方向を推定可能なことが理解できる。
【0042】
一方、図10は、信号の周波数帯域を2つのサブバンドに分割したときのΔ/Σの絶対値に基づくΔ/Σパターンのグラフであり、図11は、信号の周波数帯域を3つのサブバンドに分割した時のΔ/Σの絶対値に基づくΔ/Σパターンのグラフである。図10に示す2つのサブバンドに分割した場合から図11に示す3つのサブバンドに分割数を増やした場合でも、それぞれ落ち込み部分が角度θを-4度とした方向の一箇所で、落ち込み部分の数に変化がなかった。
【0043】
つまり、この際の信号の周波数帯域幅をサブバンドに分割するときの分割数は、2つ或いは3つとなるが、それぞれの場合において、これら各サブバンドのΔ/Σパターンが形成する曲線の落ち込み部分は、角度θを-4度とした方向でそれぞれ一致している為、この方向を超広帯域信号の真の到来方向と推定できる。
【0044】
次に、図12に示す反射板32を設置した実施環境における反射波HSと直接波TSの到来方向の推定を前述と同様の測定方法で行った。尚、この際の広帯域信号源30と信号到来方向推定装置10との間の距離Lを3000mmとし、角度θが0度となる方向から直接波TSが到来すると共に、反射板32からの反射による反射波HSの到来方向の角度θを+36度となるように設定した。さらに、本実施環境でも上記と同様に360度分の測定することで、超広帯域信号におけるΣパターンとΔパターンが前述と同様に得られる。
【0045】
ここで、この図12に示す実施環境において、信号の周波数帯域を2つのサブバンドに分割したときのΔ/Σの絶対値に基づくΔ/Σパターンのグラフを図13に示し、同じく図12に示す実施環境において、信号の周波数帯域を3つのサブバンドに分割したときのΔ/Σの絶対値に基づくΔ/Σパターンのグラフを図14に示す。
【0046】
この実施環境においても、信号の周波数帯域を図13に示す2つのサブバンドから図14に示す3つのサブバンドに分割数を逐次増やしていく形で、各回毎において信号の周波数帯域幅を複数の帯域にそれぞれ等分割したとき、各サブバンドのΔ/Σパターンが形成する曲線における落ち込み部分の角度θ及び数に変化がなかった。この為、サブバンドへの逐次分割は図14に示す3つまでとした。
【0047】
この際の各帯域である各サブバンドのΔ/Σパターンが形成する曲線における落ち込み部分を具体的に見たとき、0度及び+36度とした角度θの方向で一致する形でそれぞれ落ち込んでいる。この二つの落ち込みを比較したとき、0度方向の落ち込みのほうが+36度よりも大きい。これは0度の方向から到来する信号強度が強いため、Δパターンの落ち込みが急峻となり、Δ/Σパターンの落ち込みが大きくなる。これより、0度の方向は直接波TS、そして+36度の方向からは0度からの到来波の光路長よりも長い光路長を経由した為、信号強度が直接波TSよりも弱くなった反射板32からの反射波HSの到来方向と推定できる。つまり、本実施環境のように直接波TSのほかに反射波HSが生じる場合においても、上記のようにサブバンドに逐次分割することで、信号の到来方向を正確に推定できることになる。
【0048】
尚、図13に示す2つのサブバンドに分割した際に、角度θが-40°とされる付近で各サブバンドのΔ/Σパターンが形成する曲線が落ち込んでいるものの、図14に示す3つのサブバンドに分割した際には、Δ/Σパターンが形成する曲線がこの部分で全て落ち込んでいるわけでないので、スプリアス(間違った解)と解釈できる。そして、上記実施の形態では、信号の周波数帯域幅を複数の帯域であるサブバンドにそれぞれ等分割したが、等分割でなく単に複数の帯域に分割するのみであっても良い。
【0049】
この一方、本実施の形態の変形例として、開口面アンテナ12、14をそれぞれリッジドウェーブガイドホーンアンテナとするだけでなく、これら開口面アンテナ12、14に共通の反射鏡であるパラボラアンテナ等を取り付けて、この反射鏡に対して給電を行うような構造を採用しても良い。
【0050】
つまりこの結果として、共通の反射鏡に対して給電を行う2基のリッジドウェーブガイドホーンアンテナを開口面アンテナ12、14として用いたことで、信号の到来方向をより高分解能で推定可能となる。
【0051】
さらに、横に2列、縦に2列配列した信号の周波数帯域幅と同等以上に広い動作帯域幅を有する計4基の開口面アンテナと、このアンテナと同等の動作帯域幅を有する4つのハイブリッド回路を図15に示す形で接続した信号到来方向推定装置を用いれば、水平方向と垂直方向の2次元における超広帯域信号の到来方向推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態に係る信号到来方向推定装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る信号到来方向推定装置により得られた放射パターンの重ね合わせを示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る信号到来方向推定装置によるΣパターン及びΔパターンを示す図である。
【図4】ΔパターンをΣパターンで正規化(Δ/Σ)した特性曲線を表すグラフを示す図である。
【図5】単一波源からの広帯域信号の到来方向推定の実施環境を示す図である。
【図6】図5の実施環境でのΣパターン及びΔパターンを表すグラフを示す図である。
【図7】図5の実施環境でのΣパターン及びΔパターンより求められたΔ/Σパターンを表すグラフを示す図である。
【図8】各周波数におけるΔパターンを表すグラフを示す図である。
【図9】信号の周波数帯域幅をサブバンドに逐次分割する手順を表したフローチャートである。
【図10】図5の実施環境において、信号の周波数帯域幅を2つのサブバンドに分割したものについてのΣパターン及びΔパターンより求められたΔ/Σパターンを表すグラフを示す図である。
【図11】図5の実施環境において、信号の周波数帯域幅を3つのサブバンドに分割したものについてのΣパターン及びΔパターンより求められたΔ/Σパターンを表すグラフを示す図である。
【図12】反射波と直接波の到来方向推定の実施環境を示す図である。
【図13】図12の実施環境において、信号の周波数帯域幅を2つのサブバンドに分割したものについてのΣパターン及びΔパターンより求められたΔ/Σパターンを表すグラフを示す図である。
【図14】図12の実施環境において、信号の周波数帯域幅を2つのサブバンドに分割したものについてのΣパターン及びΔパターンより求められたΔ/Σパターンを表すグラフを示す図である。
【図15】本発明の一実施の形態に係る信号到来方向推定装置の変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
10 信号到来方向推定装置
12 開口面アンテナ
14 開口面アンテナ
16 広帯域ハイブリッド回路
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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