TOP > 国内特許検索 > 直鎖状高分子を有する低摩擦ハイドロゲルおよびその製造方法 > 明細書

明細書 :直鎖状高分子を有する低摩擦ハイドロゲルおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5048183号 (P5048183)
公開番号 特開2002-212452 (P2002-212452A)
登録日 平成24年7月27日(2012.7.27)
発行日 平成24年10月17日(2012.10.17)
公開日 平成14年7月31日(2002.7.31)
発明の名称または考案の名称 直鎖状高分子を有する低摩擦ハイドロゲルおよびその製造方法
国際特許分類 C08L  33/26        (2006.01)
C08L  29/04        (2006.01)
C08F   2/44        (2006.01)
C08F  20/56        (2006.01)
C08G  81/00        (2006.01)
C08J   5/16        (2006.01)
FI C08L 33/26
C08L 29/04 C
C08F 2/44 C
C08F 20/56
C08G 81/00
C08J 5/16 CEY
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2001-013617 (P2001-013617)
出願日 平成13年1月22日(2001.1.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成12年9月28日東北大学において開催された社団法人高分子学会第49回高分子討論会で発表
審査請求日 平成20年1月17日(2008.1.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】長田 義仁
【氏名】グン チェンピン
個別代理人の代理人 【識別番号】100102842、【弁理士】、【氏名又は名称】葛和 清司
審査官 【審査官】一宮 里枝
参考文献・文献 特開平05-168909(JP,A)
特開平06-287392(JP,A)
特開2002-071689(JP,A)
特開昭62-127307(JP,A)
特開平07-216101(JP,A)
特開平05-156203(JP,A)
特開平04-202455(JP,A)
特開平08-143782(JP,A)
特開平11-140193(JP,A)
特開2000-143463(JP,A)
特開昭63-228053(JP,A)
特開平02-022555(JP,A)
特開昭51-016395(JP,A)
特開平09-249720(JP,A)
T.Narita et al.,Substrate Effects of Gel Surfaces on Cell Adhesion and Disrupution,Biomacromolecules,米国,2000年 9月 4日,Vol.1, No.2,第162-167頁
調査した分野 C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/16
特許請求の範囲 【請求項1】
アクリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの誘導体からなる群から選択される1種または2種以上のモノマーにより構成される高分子ゲルに対し、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの誘導体からなる群から選択される1種または2種以上のモノマーにより構成される直鎖状高分子が混合されている低摩擦ハイドロゲル。
【請求項2】
高分子ゲルを構成するモノマーと直鎖状高分子を構成するモノマーとが同種のモノマーであることを特徴とする、請求項1に記載の低摩擦ハイドロゲル。
【請求項3】
摩擦係数が0.01以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の低摩擦ハイドロゲル。
【請求項4】
低摩擦ハイドロゲル全重量に対する直鎖状高分子の含有率が2~300重量%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の低摩擦ハイドロゲル。
【請求項5】
高分子ゲルがイオン性ゲルであることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の低摩擦ハイドロゲル。
【請求項6】
低摩擦ハイドロゲルを製造する方法であって、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの誘導体からなる群から選択される1種または2種以上のモノマーにより構成される高分子ゲルに、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの誘導体からなる群から選択される1種または2種以上のモノマーにより構成される直鎖状高分子又は直鎖状高分子を形成するモノマーを混合し、重合することにより、高分子ゲルに直鎖状高分子を含有させることを特徴とする、前記低摩擦ハイドロゲルを製造する方法。
【請求項7】
低摩擦ハイドロゲルを製造する方法であって、高分子ゲルを形成するモノマーであるアクリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの誘導体ならびにポリビニルアルコールからなる群から選択される1種又は2種以上とともに、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびそれらの誘導体からなる群から選択される1種または2種以上のモノマーにより構成される直鎖状高分子を混合し、重合することにより、高分子ゲルに直鎖状高分子を含有させることを特徴とする、前記低摩擦ハイドロゲルを製造する方法。
【請求項8】
高分子ゲルを形成するモノマーと直鎖状高分子を形成するモノマーとが同種のモノマーであることを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直鎖状高分子を有する低摩擦のハイドロゲルおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
低摩擦で機械運動を実現するにはボールベアリングを使うか、シリコーンオイルやグリセリンなどの潤滑剤存在下で滑り摩擦を実現する方法が通常取られる。前者の場合には、装置が複雑になるだけでなく、低速下では摩擦が増大するという欠点を有する。後者の場合には潤滑剤の脱離、溶出のため逐次補給をしなければならず、効果の持続性に問題がある。潤滑剤無しの低摩擦運動はこれまでにあまり例がなく、唯一超高分子量ポリエチレンやテフロンを使った例があるのみで、これらの場合でも、摩擦係数は0.01以下とすることは困難である。
【0003】
一方、高分子ハイドロゲルは、他の固体物質などに比べて表面の摩擦係数が10-2~10-3と非常に小さいことを発明者らは世界に先駆けて明らかにしており(J.Phys.Chem.B,101,5487-5489(1997)、J.Chem.Phys.,109,8062-8068(1998)、J.Phys.Chem.B,103,6001-6006(1999)、J.Phys.Chem.B,103,6007-6014(1999)、The Japan Academy,75,122-126(1999)J.Phys.Chem.B,104,3423-3428(2000)、)、生体関節の摩擦機構の解明や、さらには人工関節などへの応用が期待されている。
【0004】
特表平10-500038には、関節等の負傷箇所の修復および表面仕上げに用いる、シリコーンポリマー等のポリマーマトリックスと水和ゲルを含有する硬化性材料が記載されている。水和ゲルは、親水性で水不溶性の高分子からなり表面の摩擦力を下げる。
特開平8-19599には、医療用具の表面に、反応性官能基を有する水溶性、水膨潤性高分子と抗血栓剤からなる湿潤時にハイドロゲルを形成する層を有する医療用具が記載されている。カテーテル等の医療用具表面に固定化したハイドロゲル層が潤滑層となり摩擦を低減している。
特開平6-71818には、繊維基布と水溶性アルギン酸塩を含有した樹脂皮膜からなる複合シートを用いた、水に対する摩擦抵抗の小さい水中衣料が記載されている。
このように、医療用具等の開発において、材料表面の摩擦抵抗の小さい材料の開発がなされているが、人工関節等への応用を考えた場合、関節の摩擦係数は0.001~0.03であり、生体内並みの低摩擦の材料また低速度下での低摩擦の実現という点では、満足できるものは得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、前記の要求を満足すべく、さらなる低摩擦材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、魚や海藻の表面や内臓には、ある種の高分子が分泌されており、これが水からの抵抗や食物などを飲み込む際の摩擦の低減に大きな役割を果たしていることに着目し、高分子ゲルに直鎖状高分子を含有させることにより、さらに低摩擦のハイドロゲルが得られることを見出した。そしてさらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、高分子ゲルに対し、直鎖状高分子が混合されているか、またはグラフト重合されてなる低摩擦ハイドロゲルに関する。
また本発明は、直鎖状高分子が、高分子ゲルの表面にグラフト重合されている、前記の低摩擦ハイドロゲルに関する。
さらに本発明は、高分子ゲルを構成するモノマーと直鎖状高分子を構成するモノマーとが同種のモノマーであることを特徴とする、前記の低摩擦ハイドロゲルに関する。
また本発明は、摩擦係数が0.01以下であることを特徴とする、前記の低摩擦ハイドロゲルに関する。
さらに本発明は、低摩擦ハイドロゲル全重量に対する直鎖状高分子の含有率が2~300重量%であることを特徴とする、前記の低摩擦ハイドロゲルに関する。
また本発明は、高分子ゲルがイオン性ゲルであることを特徴とする、前記の低摩擦ハイドロゲルに関する。
【0008】
さらに本発明は、前記の低摩擦ハイドロゲルの、固体および生体組織表面に対する使用に関する。
また本発明は、低摩擦ハイドロゲルを製造する方法であって、高分子ゲル又は高分子ゲルを形成するモノマーに、直鎖状高分子又は直鎖状高分子を形成するモノマーを混合し、及び/又はグラフト重合させることを特徴とする、前記の方法に関する。
さらに本発明は、高分子ゲルに直鎖状高分子を混合し、直鎖状高分子鎖を後重合グラフトさせることを特徴とする、前記の方法に関する。
また本発明は、高分子ゲルに1種または2種以上の直鎖状高分子を形成するモノマーを混合し、重合することにより、高分子ゲルに直鎖状高分子を含有させることを特徴とする、前記の方法に関する。
さらに本発明は、高分子ゲルを形成するモノマーの1種又は2種以上とともに直鎖状高分子を混合し、重合することにより、高分子ゲルに直鎖状高分子を含有させることを特徴とする、前記の方法に関する。
また本発明は、高分子ゲルを形成するモノマーの1種又は2種以上と、直鎖状高分子を形成するモノマーの1種又は2種以上とを混合し、重合することにより、高分子ゲルに直鎖状高分子をグラフトさせることを特徴とする、前記の方法に関する。
さらに本発明は、高分子ゲルを形成するモノマーと直鎖状高分子を形成するモノマーとが同種のモノマーであることを特徴とする、前記の低摩擦ハイドロゲルに関する。
また本発明は、低摩擦ハイドロゲルを製造する方法であって、疎水性基板上で、高分子ゲルを形成するモノマーを重合することを特徴とする、前記方法に関する。
【0009】
本発明に用いられる高分子ゲルを構成するモノマーは、3次元網目構造を有するハイドロゲルを形成するモノマーであれば限定されないが、典型的にはアクリル酸やメタクリル酸およびそれらの誘導体、2-ヒドロキシエチルアクリラート、2-ヒドロキシエチルメタクリラート、アクリルアミドやメタクリルアミドおよびそれらの誘導体、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルリン酸、ビニルピリジン、塩酸トリメチルビニルピリジニム、3-アクリルロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩酸、3-ジメチルメタクリロイロキシエチルアンモニウムプロパンスルホン酸等が挙げられる。好ましいのは、アクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、スチレンスルホン酸等である。
これらの単量体を架橋する架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリラート、ジビニルベンゼン等である。
【0010】
本発明に用いられる直鎖状高分子を形成するモノマーとしては、上記記載のいずれのモノマーの2成分または3成分を用いることができるが、上記高分子ゲルを構成するモノマーと同種のモノマーを用いることもできる。
また、上記の高分子ゲル以外で、ジェランゲル、κ-カラギーナンゲル、アガロースゲル、カルボキシメチルセルロースゲル等の多糖類ゲル、ゼラチン、コラーゲン等のタンパク質ゲル、DNA、RNA等の核酸ゲル、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、ポリエチレンイミン、凍結解凍ゲル等の高分子ゲルを用いることもできる。
【0011】
低摩擦ハイドロゲル全重量に対する直鎖状高分子の含有率は、摩擦力の低減効果の点から、2~300重量%、特に5~100重量%が好ましい。
本発明の低摩擦ハイドロゲルには、(1)高分子ゲルに対し直鎖状高分子が混合された低摩擦ハイドロゲル、または(2)高分子ゲルに対し直鎖状高分子がグラフト重合された低摩擦ハイドロゲルがある。
【0012】
前記(1)のハイドロゲルの製造方法、即ち、高分子ゲルに対し直鎖状高分子が混合されたハイドロゲルを製造する方法としては、高分子ゲルに直鎖状高分子を混合できる方法あれば、どのような方法を用いてもよいが、典型的には次のような方法が挙げられる。
a. 高分子ゲルに直鎖状高分子を物理的に混合させる。
b. 高分子ゲル形成後、高分子ゲルを直鎖状高分子を形成するモノマー溶液に十分浸漬させ、ゲル中にモノマーを拡散させた後、モノマーを重合する。
c. 高分子ゲルを形成する際、モノマー等の材料とともに直鎖状高分子を混合し、重合してゲルを形成する。
【0013】
一方、前記(2)のハイドロゲルの製造方法、即ち、高分子ゲルに対し直鎖状高分子がグラフト重合されたハイドロゲルを製造する方法としては、高分子ゲルに直鎖状高分子をグラフト重合する方法であれば、どのような方法を用いてもよいが、典型的には次のようなものが挙げられる。
d. 形成した高分子ゲルに直鎖状高分子を混合し、後重合グラフトする。
e. 高分子ゲルを形成するモノマーの1種又は2種以上と、直鎖状高分子を形成するモノマーの1種又は2種以上とを混合し、重合することにより、高分子ゲルに直鎖状高分子をグラフトさせる。
f. 高分子ゲルの重合を疎水性基板で挟んで重合する。
【0014】
とくに上記f.の方法は、本発明者らが独自に開発した新規ゲル合成法である(J. Phys. ChemB, 103, 6069-6074(1999), Biomacromolecules, 1, 162-167 (2000), 高分子学会予稿集48巻10号2603-2604(1999), 高分子学会予稿集49巻12号3689-3692(2000)参照)。従来行なわれていたガラス基板等の親水性の基板上でのゲルの重合に代えて、テフロン板、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の疎水性基板を用いることで、重合の際、疎水性基板付近で親水性のモノマー溶液の濃度勾配が生じ、ゲルの架橋密度が疎になり、結果的に表面にグラフト鎖を有するゲルが形成される。この方法は、一段階で他の試薬等を用いることなく、疎水性の基板のみで所望のゲルを簡便に形成することができることから、とくに好適である。
【0015】
以上のような各方法により得られた直鎖状高分子を有する高分子ゲルは、親水性の高分子鎖をゲル中または表面に含むことから、ゲルの含水率がさらに高まり、含水したゲルまたは表面で含水した高分子鎖が固体との界面で潤滑層として働き、低摩擦の高分子ハイドロゲルを得ることができる。さらに、低摩擦ハイドロゲルがイオン性ゲルであって、イオン性の直鎖状高分子鎖を用いた場合の低摩擦ハイドロゲルを固体表面に適用すると、固体との間に静電的な反発力が生じ、中性のゲルと比較して摩擦界面にさらに厚い水層が形成されるため、最も優れた摩擦効果が得られる。
【0016】
本発明によるハイドロゲルは、十分な低摩擦効果を得るには、多量の水分を含んでいるのが好ましく、その含水率は、好ましくは50重量%以上であり、特に好ましくは100重量%以上である。
また、得られるハイドロゲルの摩擦係数は、好ましくは、0.01以下であり、特に好ましくは0.005以下である。
【0017】
本発明によるハイドロゲルの形態としては、直鎖状高分子鎖を高分子ゲル中または高分子ゲル表面に含む形態であればいずれでもよいが、低摩擦力をより効果的に実現するには、ゲルの表面に直鎖状高分子を有するものが好ましく、さらに、高分子鎖が表面でグラフト重合されているものが好ましい。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の低摩擦ハイドロゲルについて、実施例、比較例および試験例によって、さらに詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
(実施例1)
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を20g含む水溶液(AMPS)100mlに架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド8%、光増感剤としてαケトグルタル酸0.1%、予め合成した分子量25万のポリ(AMPS)4g含有させ、400W紫外線照射を行い、直鎖状高分子を含有するAMPSゲルをガラス板上で作成した。
【0019】
(実施例2)
実施例1の分子量25万のポリ(AMPS)を4gの代わりに8g含有させる以外は、実施例1と同様にして直鎖状高分子を含有するAMPSゲルを作成した。
【0020】
(比較例1)
分子量25万のポリ(AMPS)を含有しない以外は、実施例1と同様にして直鎖状高分子を含有しないPAMPSゲルを作成した。
一辺2cmの正立方体に切り出した実施例1、2および比較例1のゲルをガラス板の上に置き、ガラス板を種々の速度で回転させた際の応力を測定することにより、水中で摩擦力を測定した。その結果を表1に示す。表2は、ガラス板上でなく、実施例2および比較例1のゲルをそれぞれ同じゲルの上に乗せて測定した摩擦力の結果を示す。
【0021】
【表1】
JP0005048183B2_000002t.gif【0022】
【表2】
JP0005048183B2_000003t.gif【0023】
(実施例3)
実施例1で用いたAMPSの代わりにジメチルアクリルアミド(DMAA)を、分子量25万のポリ(AMPS)の代わりに分子量12万の直鎖状ポリ(DMAA)2gを用いて、実施例1と同様に直鎖状高分子を含有するDMAAゲルを合成した。
【0024】
(比較例2)
実施例3の分子量12万の直鎖状ポリ(DMAA)を含有しない以外は、実施例3と同様にして直鎖状高分子を含有しないDMAAゲルを作成した。
実施例3および比較例2のゲルを用いて、実施例1と同様にゲル-ガラス間の摩擦力の測定の結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
JP0005048183B2_000004t.gif【0026】
(実施例4)
比較例1の通常のAMPSゲルの合成の際、ガラス板上でなく、メタクリル樹脂板上で重合し、ゲル表面に自由末端ポリ(AMPS)鎖をもつグラフトゲルを作成した。得られたゲルを水中に膨潤させ、実施例1と同様にゲル-ガラス間の摩擦力を測定した。比較例1と比較した結果を表4に示す。
【0027】
【表4】
JP0005048183B2_000005t.gif【0028】
(実施例5)
比較例1で合成したPAMPSゲル10gを予め合成した分子量10万のポリ(DMAA)4gを含む水溶液200ml中に室温で一週間放置したところ、ポリ(DMAA)0.6gを含むPAMPSゲルが得られた。
こうして得られたゲルを純水で平衡膨潤後、粘弾性試験機(ARES,Rheometric Scientific,Inc.)を用いて摩擦力を測定したところ、ポリ(DMAA)を含有しないものに対し摩擦力が1/12に低下していた。
【0029】
(実施例6)
分子量12万のポリ(アクリルアミド)3g、分子量8万のポリビニルアルコール7g、架橋剤としてエチレングリコールグリシジルエーテル2gを含有する水溶液100mlを70℃で24時間加熱することにより、ポリ(アクリルアミド)を含有するポリビニルアルコールゲルが得られた。このゲルを1cm×1cm×1cmの立方体に切り、実施例5で記述した方法により摩擦力を測定したところ、その値はポリ(アクリルアミド)を含まないものの値の15%であった。
【0030】
(試験例1)
AMPS10g含む水溶液100mlに架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド0.5g、光増感剤としてαケトグルタル酸0.1g含有させ、400W紫外線照射を行いAMPSゲルをガラス板上で作成する。得られたゲルを4gAMPSモノマーを含む水溶液100mlに一週間浸漬させ、内部にモノマーを拡散させた後、400W紫外線照射し、内部でポリマーを重合することによって、直鎖状高分子鎖を含有するゲルを作成した。
別に、上述のゲルと同様の組成でAMPSゲルを重合する際、ガラス板のかわりにポリスチレン上で重合し、表面にポリ(AMPS)のグラフト鎖を有するゲルを作成した。
【0031】
ゲルのガラス板に対する摩擦力を実施例5で記した方法により測定した結果を図1に示す。
同図が示すとおり、ガラス板で作成した通常のAMPSゲルは摩擦力が10~10Nm-2のオーダーであるのに対し、直鎖状高分子を含有するゲルは10~10-2Nm-2、ポリスチレンを基板として作成した表面に直鎖状グラフト鎖を有するゲルは10-1~10-3Nm-2とさらに小さな摩擦力を示した。これらの値から摩擦係数を計算するとそれぞれ10-2~10-3、10-3~10-4、10-4~10-5となる。相対速度が小さい領域では直鎖状高分子が存在することで二桁以上摩擦力が下がった。
【0032】
(試験例2)
速度を0.01rad/sに固定し、摩擦力の荷重依存性を測定した結果を図2に示す。
同図から、直鎖状高分子を含有するゲルおよび表面にグラフト鎖を有するゲルはどちらも一桁以上摩擦力が通常のゲルより小さくなっており、特に低荷重領域においてその効果は著しく、二桁以上も摩擦力を下げることがわかった。
表面にグラフト鎖を有するゲルの摩擦力は大きく下がり、特に低速度・低荷重の領域においてその効果が著しかった。
【0033】
(試験例3)
DMAA7g含む水溶液50mlに架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド1重量%、光増感剤としてαケトグルタル酸0.5重量%含有させ、200W紫外線照射を行いDMAAゲルをガラス板上で作成する。同様の方法により、AMPSゲルを作成した。一方、エチレングリコールジグリシジルエーテル2g、ポリビニルアルコール10g含む水溶液100mlを80℃、24時間反応させて架橋を行いポリビニルアルコール(PVA)ゲルを作成する。得られたそれぞれのゲルを1.0MのDMAAモノマー水溶液または1.0MのAMPSモノマー水溶液に一週間浸漬させ、内部にモノマーを拡散させた後、400W紫外線照射し、内部でポリマーを重合することによって、直鎖状高分子鎖を含有するゲルを作成した。それぞれの摩擦係数を測定した結果を図3に示す。
同図は、DMAAゲルにポリ(DMAA)あるいはポリ(AMPS)を含有させたゲルの結果を、下図は、ポリビニルアルコール(PVA)ゲル、AMPSゲルにポリ(AMPS)含有させたゲルの結果である。
DMAAゲルでは、直鎖状高分子鎖を含有することで、摩擦係数が最大10分の1以下に、AMPSゲルにポリ(AMPS)含有させたものでは、最大100分の1以下に、PVAゲルにポリ(AMPS)含有させたものでは、最大1000分の1以下にまで摩擦係数が下がった。
【0034】
(試験例4)
試験例3のDMAAおよびAMPSのゲルの合成の際、ガラス板でなく、テフロン板に挟んで重合し、ゲル表面に自由末端グラフト鎖をもつゲルを作成した。
それぞれの摩擦係数を測定した結果を図4に示す。
同図中、DMAAはガラス板で挟んで重合したゲル、DMAAgraftはテフロン板で挟んで重合した、表面にグラフト鎖を有するゲル、PAMPSはガラス板で挟んで重合したAMPSゲル、PAMPSgraftはテフロン板で挟んで重合した、表面にグラフト鎖を有するAMPSゲルを示す。
DMAAゲルでは自由末端グラフト鎖が表面に存在することで、摩擦係数が最大10の1、AMPSゲルでは、最大1000分の1となり、摩擦係数が6×10-5というこれまでに得られない低い値を示した。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、これまでにない程の低摩擦の材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】AMPSゲルのガラス板に対する摩擦力の回転速度依存性の結果を示す。
【図2】速度0.01rad/sの時の摩擦力の荷重依存性の結果を示す。
【図3】DMAAゲル、AMPSゲルおよびPVAゲルのガラス板に対する摩擦係数の結果を示す。
【図4】DMAAゲルおよびAMPSゲルのガラス板に対する摩擦係数の結果を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3