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明細書 :磁界センサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4732705号 (P4732705)
公開番号 特開2005-315812 (P2005-315812A)
登録日 平成23年4月28日(2011.4.28)
発行日 平成23年7月27日(2011.7.27)
公開日 平成17年11月10日(2005.11.10)
発明の名称または考案の名称 磁界センサ
国際特許分類 G01R  33/04        (2006.01)
FI G01R 33/04
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2004-136530 (P2004-136530)
出願日 平成16年4月30日(2004.4.30)
審査請求日 平成19年4月13日(2007.4.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】笹田 一郎
【氏名】臼井 崇
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査官 【審査官】堀 圭史
参考文献・文献 特開平04-032787(JP,A)
特開2003-215220(JP,A)
特開2000-098012(JP,A)
特開平08-285929(JP,A)
特開昭48-058815(JP,A)
調査した分野 G01R 33/02-10
15/14-26
H01L 43/00-14
特許請求の範囲 【請求項1】
所定長さの磁性体からなる磁心と、当該磁心に巻回される検出コイルとを備え、前記磁心に励磁電流を流して前記検出コイルに誘起される誘起電圧により微小磁界を検出する直交フラックスゲートに基づく磁界センサにおいて、
前記磁心が、2本の磁性体を平行状態で配設され、当該2本の磁性体における一端側の端部同士を直列接続して形成され、
前記検出コイルが、前記2本の各磁性体に各々巻回して形成され、
前記2本の磁性体に各々巻回される検出コイルが、励磁電流による励磁磁界によって発生する誘起電圧を相殺するように各々極性を逆にして直列接続して形成され、
前記磁心には交流電流の振幅の大きさより大きい電流値の直流電流で当該交流電流をバイアスされた励磁電流を流し、
前記検出コイルは、前記磁心に印加される被検出磁界が存在せず、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに発生する誘起電圧を相殺し、前記磁心に印加される被検出磁界が存在し、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに当該被検出磁界で誘起される誘起電圧を出力することを
特徴とする磁界センサ。
【請求項2】
所定長さの磁性体からなる磁心と、当該磁心に巻回される検出コイルとを備え、前記磁心に励磁電流を流して前記検出コイルに誘起される誘起電圧により微小磁界を検出する直交フラックスゲートに基づく磁界センサにおいて、
前記磁心が、所定長さの磁性体を略U字状に屈曲形成し、当該略U字状の磁性体の平行部分に各々検出コイルを巻回され
前記磁性体の平行部分に各々巻回される検出コイルが、励磁電流による励磁磁界によって発生する誘起電圧を相殺するように各々極性を逆にして直列接続して形成され、
前記磁心には交流電流の振幅の大きさより大きい電流値の直流電流で当該交流電流をバイアスされた励磁電流を流し、
前記検出コイルは、前記磁心に印加される被検出磁界が存在せず、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに発生する誘起電圧を相殺し、前記磁心に印加される被検出磁界が存在し、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに当該被検出磁界で誘起される誘起電圧を出力することを
特徴とする磁界センサ。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の磁界センサにおいて、
前記磁心が、断面円形状の磁性体で形成されることを
特徴とする磁界センサ。
【請求項4】
所定長さの磁性体からなる磁心と、当該磁心に巻回される複数の検出コイルとを備え、前記磁心に励磁電流を流して前記検出コイルに誘起される誘起電圧により微小磁界を検出する直交フラックスゲートに基づく磁界センサにおいて、
前記磁心が、2本の磁性体を平行状態で配設され、当該2本の磁性体における一端側の端部同士を直列接続して形成され、
前記検出コイルが、前記2本の各磁性体に極性を異ならせて各々巻回して形成され、
前記磁心には交流電流の振幅の大きさより大きい電流値の直流電流で当該交流電流をバイアスされた励磁電流を流し、
前記複数の検出コイルは、前記磁心に印加される被検出磁界が存在せず、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに発生する誘起電圧を各々出力し、減算器は、当該誘起電圧に対応した信号に基づいて各直流の誘起電圧の差分を求め、
前記複数の検出コイルは、前記磁心に印加される被検出磁界が存在し、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに発生する誘起電圧を各々出力し、前記減算器は、当該被検出磁界で誘起される各誘起電圧に対応した信号に基づいて各直流の誘起電圧の差分を求め、
前記減算器は、前記磁心に印加される被検出磁界が存在しない場合に求めた各直流の誘起電圧の差分と、前記磁心に印加される被検出磁界が存在する場合に求めた各直流の誘起電圧の差分とに基づき、前記被検出磁界の値を直流出力として検出することを
特徴とする磁界センサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、検出コイルが巻回された磁性体に電流を流して磁界を検出する直交フラックスゲート型の磁気センサに関し、特に磁性体の磁気異方性に基づく検出精度の低下を防止して微弱磁界を高感度且つ高安定に検出する磁気センサに関する。
【0002】
一般に磁気センサは、研界を情報媒体とするセンシング技術の基本となる構成要素であり、アクティブ磁気シールド、磁気による異物検出、環境磁気アセスメント、磁気による交通量計測、磁気非破壊検査、磁気モーションキャプチャ等に利用されている。
【背景技術】
【0003】
従来、この種の背景技術として特開2003-215220号公報に開示されているものがあり、これを図11に従来の磁界センサの原理回路構成図として示す。同図において従来の磁気センサは、磁性ワイヤ101と磁性ワイヤ101に巻回された検出コイル201を持ち、磁性ワイヤ101に発振器401から出力される極性が交番する電流に直流電源501からのバイアス電流を重畳させる直交フラックスゲート磁界センサであって、前記バイアス電流を直列電源501から供給して第1のスイッチ601によりこのバイアス電流の極性を周期的に切り換えて感度の正負を反転し、その差を求めることによってオフセットがほぼ完全に除去された出力を得る回路構成とし、励磁電流を直流を含むパルス列とし、このパルス列の極性を周期的に反転させるように構成される。
【0004】
前記構成に基づく従来の磁気センサは、細長い磁性体からなる磁性ワイヤ101に巻回された検出コイル201を持ち、前記細長い磁性体からなる磁性ワイヤ101に極性が交番する電流にバイアス電流を重畳させる直交フラックスゲートの磁界センサとし、前記バイアス電流の極性を切換えて感度の正負を反転できるようにしたことにより、感度は大きさを保ちその極性を反転するが、オフセットはその大きさを保ちながら極性も不変に保つ。これにより、直流バイアス電流を正に設定し励磁磁界Hexに対し得た出力と、次に励磁磁界Hexが変化しない内に直流バイアス電流の極性を反転させ、同じように得た出力の差を取ることにより、オフセットがほぼ完全に除去された出力を得るものである。

【特許文献1】特開2003-215220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術に係る従来の磁界センサは以上のように構成されていたことから、被検出磁界が存在しない場合であっても、励磁電流による励磁磁界が存在するときには検出コイル201に誘起電圧が現れ、磁界センサのオフセットを生じる原因となるばかりでなく、温度と共に変動すればドリフトを生じるという課題を有していた。
【0006】
即ち、従来の磁界センサにおける検出コイルの誘起電圧説明図を図12に示し、同図においてKuは磁気異方性の大きさ、Jsはアモルファスワイヤの磁化、Hdcは励磁磁界の直流成分、Hacは交流成分を各々表している。ここで、Ku=0或いは、このKuと外部磁界Hdc+Hacsin(2πft)とのなす角α=0でない時は、Jsは被検出磁界Hex=0であっても、円周方向から角θ傾き、励磁磁界が最大となる時には角θは最小、励磁磁界が最小となる時には角θは最大となって交流励磁の周期で図12中に示す(1)及び(2)のように振動することとなる。
【0007】
このように被検出磁界Hexがない場合でも、励磁電流を流すと励磁磁界が磁性ワイヤ101の円周方向に発生するために、この磁性ワイヤ101内の磁化が交流電流と同じ周期で磁化容易軸方向と円周方向との間で振動する。この振動の結果、磁性ワイヤ101の長手方向に射影された磁化成分も周期的に変化し、検出コイル201に周期的に変動する磁束鎖交を与え、その時間微分が誘起電圧として検出コイル201の両端子間に現れる。
【0008】
特に、直流バイアスが極性を反転する時は大きな磁化反転を誘起し、スパイク状の過渡電圧が生じることとなる。これまでの従来技術では、被検出磁化Hexの情報をもった誘起電圧と、前記被検出磁化Hexが0の時に生じる誘起電圧及びスパイク状の電圧とを分離できないという課題を有していた。これによって、検出コイル201の後段に高利得増幅器を接続した場合には、この高利得増幅器を飽和させるのみならずオフセットを発生させ、且つドリフトの増加さらにはスイッチング雑音が生じる等の問題点が有った。
【0009】
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、簡略な構成で微弱磁界を高精度に検出できる磁界センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る磁界センサは、所定長さの磁性体からなる磁心と、当該磁心に巻回される検出コイルとを備え、前記磁心に励磁電流を流して前記検出コイルに誘起される誘起電圧により微小磁界を検出する直交フラックスゲートに基づく磁界センサにおいて、前記磁心が、2本の磁性体を平行状態で配設され、当該2本の磁性体における一端側の端部同士を直列接続して形成され、前記検出コイルが、前記2本の各磁性体に各々巻回して形成され、前記2本の磁性体に各々巻回される検出コイルが、励磁電流による励磁磁界によって発生する誘起電圧を相殺するように各々極性を逆にして直列接続して形成され、前記磁心には交流電流の振幅の大きさより大きい電流値の直流電流で当該交流電流をバイアスされた励磁電流を流し、前記検出コイルは、前記磁心に印加される被検出磁界が存在せず、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに発生する誘起電圧を相殺し、前記磁心に印加される被検出磁界が存在し、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに当該被検出磁界で誘起される誘起電圧を出力するものである。
【0011】
このように本発明においては、検出コイルが巻回される磁心に交流電流の振幅の大きさ
より大きい電流値の直流電流で当該交流電流をバイアスされた励磁電流を流し、この磁心に印加される被検出磁界が存在しないときに検出コイルに発生する誘起電圧を相殺し、且つ前記被検出磁界が存在するときに検出コイルに発生する被検出磁界で誘起される誘起電圧を出力するようにしているので、真の検出対象である微弱磁界を磁心及び検出コイルの特性・構成に依存して発生する不用な誘起電圧の影響を受けることなく検出できることとなり、検出精度を向上させ、且つより安定した検出が実行できる。
また、本発明においては、検出コイルが各々巻回された磁性体を2本平行に配設し、2本の検出コイルが励磁電流による励磁磁界のないときに発生する誘起電圧を相殺するように接続されることから、平行に配設された各磁性体の鎖交する磁束が同一条件で均等に透過されることとなり、励磁電流による励磁磁界によって発生する誘起電圧を極力抑制して高精度且つ高安定な検出ができる。
【0017】
本発明に係る磁界センサは、所定長さの磁性体からなる磁心と、当該磁心に巻回される検出コイルとを備え、前記磁心に励磁電流を流して前記検出コイルに誘起される誘起電圧により微小磁界を検出する直交フラックスゲートに基づく磁界センサにおいて、前記磁心が、所定長さの磁性体を略U字状に屈曲形成し、当該略U字状の磁性体の平行部分に各々検出コイルを巻回され、前記磁性体の平行部分に各々巻回される検出コイルが、励磁電流による励磁磁界によって発生する誘起電圧を相殺するように各々極性を逆にして直列接続して形成され、前記磁心には交流電流の振幅の大きさより大きい電流値の直流電流で当該交流電流をバイアスされた励磁電流を流し、前記検出コイルは、前記磁心に印加される被検出磁界が存在せず、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに発生する誘起電圧を相殺し、前記磁心に印加される被検出磁界が存在し、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに当該被検出磁界で誘起される誘起電圧を出力するものである。
このように本発明においては、検出コイルが巻回される磁心に交流電流の振幅の大きさより大きい電流値の直流電流で当該交流電流をバイアスされた励磁電流を流し、この磁心
に印加される被検出磁界が存在しないときに検出コイルに発生する誘起電圧を相殺し、且つ前記被検出磁界が存在するときに検出コイルに発生する被検出磁界で誘起される誘起電圧を出力するようにしているので、真の検出対象である微弱磁界を磁心及び検出コイルの特性・構成に依存して発生する不用な誘起電圧の影響を受けることなく検出できることとなり、検出精度を向上させ、且つより安定した検出が実行できる。
また、本発明においては、所定長さの磁性体を略U字状に屈曲して磁心を形成し、このU字状の磁性体の平行部分に検出コイルを各々巻回しているので、より磁気異方性の特性が近似する一対の磁性体で形成できることから、励磁磁界のないときに発生する誘起電圧をより確実に相殺できることとなり、高精度且つ高安定な検出ができる。
【0019】
本発明に係る磁界センサは必要に応じて、磁心が、断面円形状の磁性体で形成されるものである。このように本発明においては、磁心を形成する磁性体の断面を円形状とすることにより、磁性体の外周を均等に磁化させ、部分的な磁気ヒステリシスの残留を防止して、検出精度を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る磁界センサは、所定長さの磁性体からなる磁心と、当該磁心に巻回される複数の検出コイルとを備え、前記磁心に励磁電流を流して前記検出コイルに誘起される誘起電圧により微小磁界を検出する直交フラックスゲートに基づく磁界センサにおいて、前記磁心が、2本の磁性体を平行状態で配設され、当該2本の磁性体における一端側の端部同士を直列接続して形成され、前記検出コイルが、前記2本の各磁性体に極性を異ならせて各々巻回して形成され、前記磁心には交流電流の振幅の大きさより大きい電流値の直流電流で当該交流電流をバイアスされた励磁電流を流し、前記複数の検出コイルは、前記磁心に印加される被検出磁界が存在せず、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに発生する誘起電圧を各々出力し、減算器は、当該誘起電圧に対応した信号に基づいて各直流の誘起電圧の差分を求め、前記複数の検出コイルは、前記磁心に印加される被検出磁界が存在し、且つ励磁電流による励磁磁界が存在するときに発生する誘起電圧を各々出力し、前記減算器は、当該被検出磁界で誘起される各誘起電圧に対応した信号に基づいて各直流の誘起電圧の差分を求め、前記減算器は、前記磁心に印加される被検出磁界が存在しない場合に求めた各直流の誘起電圧の差分と、前記磁心に印加される被検出磁界が存在する場合に求めた各直流の誘起電圧の差分とに基づき、前記被検出磁界の値を直流出力として検出するものである。
【0023】
このように本発明においては、検出コイルが巻回される磁心に交流電流の振幅の大きさ
より大きい電流値の直流電流で当該交流電流をバイアスされた励磁電流を流し、この磁心に印加される被検出磁界が存在しないときに検出コイルに発生する前記励磁電流による誘起電圧に対応した信号に基づいて各直流の誘起電圧の差分を求め、且つ前記被検出磁界が存在するときに検出コイルに発生する被検出磁界で誘起される誘起電圧に対応する信号に基づいて各直流の誘起電圧の差分を求め、磁心に印加される被検出磁界が存在しない場合に求めた各直流の誘起電圧の差分と、前記磁心に印加される被検出磁界が存在する場合に求めた各直流の誘起電圧の差分とに基づき、前記被検出磁界の値を直流出力として検出しているので、真の検出対象である微弱磁界を磁心及び検出コイルの特性・構成に依存して発生する不用な誘起電圧の影響を受けることなく検出できることとなり、検出精度を向上させ、且つより安定した検出が実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る磁界センサを図1ないし図5に基づいて説明する。この図1は本実施形態に係る磁界センサの回路構成図、図2は図1における磁界センサの被検出磁界が存在しない場合の各磁界ベクトル態様図、図3は図2における磁界センサの誘起電圧相殺タイミングチャート、図4は図1における磁界センサの被検出磁界が存在する場合の各磁界ベクトル態様図、図5は図4における磁界センサの誘起電圧相殺タイミングチャートを示す。
【0025】
前記各図において本実施形態に係る磁界センサは、所定長さからなる2本の磁性体11、12を平行に配設され、この磁性体11、12を電線13にて直列に接続して形成される磁心1と、この磁心1の各磁性体11、12に極性を異ならせて巻回される検出コイル21、22からなり、この検出コイル21、22を直列に接続してこの直列接続の各端を出力端子23、24とする検出出力部2と、前記磁性体11、12の直列回路に直列に接続され、この磁性体11、12に対して交流電流ACを直流電流DCでバイアスされた励磁電流iを供給する電源部3とを備える構成である。
【0026】
次に、前記構成に基づく本実施形態の動作について説明する。まず、微弱磁界である被検出磁界Hexが存在しない場合において、前記励磁電流iを磁性体11、12の直列回路に供給すると図2に示すような各磁界ベクトル態様となる。
【0027】
同図において、Hexcは前記励磁電流iにより誘起される励磁磁界の方向、Kuは仮定された一軸磁気異方性の大きさ、両側矢頭の線分はその容易軸方向、Jsは磁性体11、12の磁化方向を示す。この磁化JsはこのKuの方向と平行に向くのが最もエネルギー状態が低い、つまり平行になろうとするものである。これらの磁界方向態様は180度対称性がある。
【0028】
前記検出コイル21、22の巻線の方向は、磁性線である磁性体11、12に流れる励磁電流iの方向に磁性体11、12端面から見込めば、右方は反時計方向、左方は時計方向にある。
被検出磁界Hex=0の時は、磁化Jsの磁性線方向の方向成分Jsoは磁性体11、12で各々逆向きである。この方向成分Jsoの大きさが磁性体11、12の中の磁性体11、12の軸方向磁束成分を表す。そして、これらの極性はいずれも、励磁電流iと同一方向であることが解る。このように、図示の方向に誘起電圧を観測すると図3のようになる。
【0029】
前記図3(A)、(B)に示すように、検出コイル21からは誘起電圧V1が誘起され、検出コイル22からは誘起電圧V2が誘起されることとなる。前記磁心1の磁性体11、12の特性及び検出コイル21、22の巻回条件が一致していると、検出コイル21、22を直列に接続することにより加算され、出力端子23、24からは前記誘起電圧V1、V2が各々相殺されて出力が「0」となる(図3(C)を参照)。
【0030】
また、微弱磁界である被検出磁界Hexが存在する場合において、前記励磁電流iを磁性体11、12の直列回路に供給すると図4に示すような各磁界ベクトル態様となる。同図において被検出磁界Hexが印加されて磁性体11、12に透過すると、この被検出磁界Hexの影響を磁性体11、12の各磁化Jsが受けることとなる。また、この磁性体11、12の軸方向(長手方向)をZ軸とした場合に前記磁化JsのZ軸方向における磁化成分がJs21、Js22である
磁性体11においては、被検出磁界Hexと励磁磁界Hexcとが略直角であり、この略直角の範囲外に一軸磁気異方性の大きさKuが位置することから、励磁磁界Hexcに対して小さい角度θ1で変化する。他方、磁性体12においては被検出磁界Hexと励磁磁界Hexcとが略直角であり、この略直角の範囲内に一軸磁気異方性の大きさKuが位置することから、励磁磁界Hexcに対して大きい角度θ2(θ2>θ1)で変化する。
【0031】
この磁化Jsの変化する角度θ1と角度θ2との差異により、図5に示すように検出コイル21からは前記角度θ1に応じた誘起電圧V1が出力され(同図(A)を参照)、検出コイル22からは前記角度θ2に応じた誘起電圧V2が出力される(同図(B)を参照)。これらの各誘起電圧V1、V2は検出コイル21、22が直列接続されていることから加算されて同図(C)のような加算結果として出力端子23、24より出力されることとなる。
【0032】
(本発明の第2の実施形態)
図6及び図7に基づいて本実施形態に係る磁界センサを説明する。この図6は本実施形態に係る磁界センサの全体回路構成図、図7は図6に記載の磁界センサにおける誘起電圧相殺タイミングチャートを示す。
前記各図において本実施形態に係る磁界センサは、前記図1記載の第1の実施形態に係る磁界センサと同様に磁性体11、12からなる磁心1と、検出コイル21、22からなる検出出力部2と、電源部3とを備え、前記検出出力部2の検出コイル21、22が直列接続されることなく各々出力端子23a・23b、24a・24bを有し、この各出力端子23a・23b、24a・24bに増幅器41、42及び包絡線演算部51、52を接続し、この包絡線演算部51、52の各出力の差分を求める減算器6を接続する構成である。
【0033】
次に、前記構成に基づく本実施形態の動作について説明する。まず、前記第1の実施形態と同様に被検出磁界Hexが存在する場合及び存在しない場合のいずれも検出コイル21、22から誘起電圧V1、V2が出力されることとなる(図7(A)、(B)を参照)。
【0034】
この出力された誘起電圧V1、V2が増幅器41、42に入力されて所定の増幅率で増幅され、この増幅された誘起電圧V1、V2を包絡線演算部51、52が半波整流して各々包絡線の各直流の誘起電圧V1d、V2d演算する(図7(C)(D)を参照)。この直流の誘起電圧V1d、V2dが減算器6により差分が求められ、減算器6は、磁心1に印加される被検出磁界Hexが存在しない場合に求めた各直流の誘起電圧V1d、V2dの差分と、磁心1に印加される被検出磁界Hexが存在する場合に求めた各直流の誘起電圧V1d、V2dの差分とに基づき、被検出磁界Hexの値を直流出力として検出できることとなる。


【0035】
なお、前記各実施形態においては、検出コイル21、22を直列接続することなく、各出力端子23a・23b、24a・24bから増幅器41、42、包絡線演算部51、52、減算器6から直流出力で得る構成としたが、前記第1の実施形態と同様に検出コイル21、22を直列接続し、この直列回路の端子から出力される交流出力を励磁電流iの交流励磁周波数に同期した同期整流(位相検波)を行うことにより被検出磁界Hexを検出する構成とすることもできる。
【0036】
(本発明の第3の実施形態)
図8ないし図10に基づいて本実施形態に係る磁界センサを説明する。この図8は、本実施形態に係る磁界センサの回路構成図、図9は図8に記載する磁界センサにおける誘起電圧の出力波形図、図10は図8に記載する磁界センサにおける出力誘起電圧の雑音特性図を示す。
【0037】
前記各図において本実施形態に係る磁界センサは、1本の磁性体10を二つに均等に屈曲して平行な直線部分10a、10bを有するU字形状からなる磁心1と、この磁心1の直線部分10a、10bに逆方向に各々巻回される検出コイル21、22を直列に接続して形成される検出出力部2と、前記磁心1の磁性体10に励磁電流iを直接供給する電源部3とを備える構成である。
【0038】
前記磁心1は、断面円形状のCo基アモルファス磁性ワイヤで磁性体10を形成し、この磁性体10の直線部分10a、10bにグラスパイプ10c、10dが装着される構成である。前記検出出力部2の検出コイル21、22は、直線部分10a、10bにグラスパイプ10c、10dを介して巻回される構成である。前記電源部3は、交流電流ACにこの交流電流ACより十分大きな電流値の直流電流DCを重畳して励磁電流iを生成して出力する構成である。
【0039】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係る磁界センサの動作について説明する。まず、電源部3から励磁電流iを磁性体10に供給すると、磁心1に流れる励磁電流iが励磁磁界を発生させる。この励磁磁界が検出コイル21、22と鎖交して検出コイル21、22に誘起電圧V1、V2を各々発生(図8中に実線矢印方向)させることとなるが、検出コイル21と検出コイル22とは相互に逆向きに巻回されていることから、各誘起電圧V1、V2が相互に打消し合って相殺されることとなる。
【0040】
他方、外部に被検出磁界Hexが存在し、この被検出磁界Hexが磁性体11、12に透過するとこの被検出磁界Hexで誘起される誘起電圧V1H、V2Hを各々発生(図8中に破線矢印方向)させることとなり、各誘起電圧V1H、V2Hが加算されて出力することとなるが、この出力には被検出磁界Hexが存在しない(Hex=0)ときの誘起電圧を含ませることなく微弱磁界の被検出磁界Hexを高精度に検出できることとなる。
【0041】
さらに、本実施形態に係る磁界センサの動作を前記図12をも参照して詳細に説明する。この図12に示した関係で被検出磁界Hex=0の時に生じる誘起電圧V1、V2はほぼ同等であるために引き算でほぼキャンセルできる。図9に簡易磁気シールド内での外部磁界を低減して誘起電圧を調べた結果を示す。同図(A)は、検出コイル21、22を接続することなく分離し、一方の検出コイル21から出力される誘起電圧V1を観測したものである。同図(B)はV1+V2となるように結線して観測したものである。この観測において励磁電流iは、50kHzの交流電流に1kHzの振幅の大きな矩形波電流が重畳されており、バイアスする直流電流DCがスイッチングされた場合を示している。正弦波様の誘起電圧の大幅な低減は、図12で説明した被検出磁界Hex=0の時の誘起電圧がキャンセルできていることが解る。また、スパイク状電圧の低減はバイアス切替えに伴う過渡現象の抑制効果を示している。
【0042】
次に、被検出磁界Hexに対する応答は、検出コイル21、22の接続関係によってキャンセルされないことを説明する。この被検出磁界Hexに対する感度の正・負は、バイアスされる直流電流DCの向きと1対1対応であることは、前記従来技術において既に知られている。U字状に曲げられた磁心1の検出コイル21、22が施された直線部分10a、10bに平行な被検出磁界Hexに対して磁気感度を持つので、被検出磁界Hexの方向は直線部分10a、10bと平行なものに限定する。被検出磁界Hexの向きが、検出コイル21、22を巻回された右方の直線部分10aでバイアスの直流電流DCの向きと同一であれば左方の直線部分10bでは正反対となる。
【0043】
従って、右方の直線部分10aで感度が正であれば、左方の直線部分10bで感度は負となる。
【0044】
これによって、検出コイル21、22を各々極性に逆にして直列に結線することによって一個の検出コイル21(又は22)の場合の2倍の出力を得ることができる。即ち、磁界センサとしての動作に悪影響を及ぼす不要な磁束鎖交の影響は、キャンセルされることとなり被検出磁界Hexに起因する有用な磁束変化のみを2倍の感度で検出することができることとなる。
【0045】
さらに、本実施形態においては、検出コイル21、22で誘起される誘起電圧を増幅する高利得増幅器を後段に設けた場合に、この高利得増幅器の飽和を回避できるので磁界センサを高感度・低雑音にすることができ、オフセットの要因となる被検出磁界Hex=0の時の誘起電圧を抑制できるので高安定化が図れる。このような作用効果を、図9及び図10に試験データに基づく各特性図として示す。この図9は簡易磁気シールド内で外部磁界を低減して誘起電圧を調べた出力波形図である。同図(A)において、磁性体を分離し、この磁性体に各々検出コイルを巻回し、この検出コイルから出力される誘起電圧V1(又はV2)を同図(A)にその波形図として示す。また同図(B)において、平行に配設された磁性体に各々検出コイルを巻回し、この検出コイルを極性を逆にして直列接続し、この各検出コイルからの誘起電圧(V1+V2)を同図(B)にその波形図として示す。この(A)、(B)の各出力波形を比較すると明らかに、雑音電圧レベル及びスパイク状電圧の影響が減衰されていることが解る。
【0046】
前記図10(A)、(B)は、約1mV/1nTの高感度にしたときの雑音特性、また、図9(B)に示すようにドリフトは4時間の観測において0.5nT以下である。このように本実施形態によって高感度・高安定な磁界センサが実現できることとなる。
【0047】
(本発明の他の実施形態)
本発明の他の実施形態に係る磁界センサの磁心は、薄板状の磁性体(例えばアモルファス磁性薄帯等)を円筒状にロール形成し、このロール形成された磁性体の円筒体に導電線を挿通し、この円筒体及び導電線の間に充填材(例えば、エポキシ樹脂等)を充填して構成することもできる。
【0048】
また、他の実施形態に係る磁界センサの磁心は、導電線(例えば、円柱状の銅線等)の周囲を磁性体(例えば、パーマロイ等)を鍍金して形成することもできる。この磁性体の鍍金以外に、予めパーマロイ等の磁性体を中空円柱状に成形して導電線と一体化して磁心を形成することもできる。
【0049】
さらに、本発明の他の実施形態に係る磁界センサは、細長い強磁性体とそれに巻回された1つの検出コイルからなる磁心偶数個を互いに平行に(便宜上Z軸に平行とする)配置し、前記磁性体には共通の励磁電流を流し、この磁心を2つのグループに分け、一方のグループの前記磁性体にはZ軸の正方向に励磁電流を流し、他方のグループの前記磁性体にはZ軸の負方向に励磁電流を流し、周期的スイッチングによりバイパス電流の極性を周期的に切替える構成とすることもできる。この細長い磁性体は、アモルファス磁性ワイヤを用いることができる。この細長い磁性体は、大きさや磁気的な性質が対をなすように2つのグループに振分けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁界センサの回路構成図である。
【図2】図1における磁界センサの被検出磁界が存在しない場合の各磁界ベクトル態様図である。
【図3】図2における磁界センサの誘起電圧相殺タイミングチャートである。
【図4】図1における磁界センサの被検出磁界が存在する場合の各磁界ベクトル態様図である。
【図5】図4における磁界センサの誘起電圧相殺タイミングチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る磁界センサの全体回路構成図である。
【図7】図6に記載の磁界センサにおける誘起電圧相殺タイミングチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る磁界センサの回路構成図である。
【図9】図8に記載する磁界センサにおける誘起電圧の出力波形図である。
【図10】図10の上の図は従来の磁界センサの雑音特性です.下の図が今回のものです.縦軸は共にnT/√Hzで、1 Hz当たりの雑音出力の実効値です.横軸は周波数です. 図8に記載する磁界センサにおける出力誘起電圧の雑音特性図である。
【図11】従来の磁界センサの原理回路構成図である。
【図12】従来の磁界センサにおける検出コイルの誘起電圧説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 磁心
2 検出出力部
3 電源部
6 減算器
10、11、12 磁性体
10a、10b 直線部分
10c、10d グラスパイプ
21、22 検出コイル
23、24、23a・23b、24a・24b 出力端子
41、42 増幅器
51、52 包絡線演算部
101 磁性ワイヤ
201 検出コイル
401 発振器
501 直流電源
601 スイッチ
i 励磁電流
V1、V2、V1H、V2H 誘起電圧(V1H, V2Hの図示はありません)
V1d、V2d 直流の誘起電圧
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
11