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明細書 :深穴計測装置および深穴計測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4230408号 (P4230408)
公開番号 特開2005-315814 (P2005-315814A)
登録日 平成20年12月12日(2008.12.12)
発行日 平成21年2月25日(2009.2.25)
公開日 平成17年11月10日(2005.11.10)
発明の名称または考案の名称 深穴計測装置および深穴計測方法
国際特許分類 G01B   5/20        (2006.01)
G01B  21/20        (2006.01)
FI G01B 5/20 D
G01B 21/20 D
請求項の数または発明の数 16
全頁数 18
出願番号 特願2004-136557 (P2004-136557)
出願日 平成16年4月30日(2004.4.30)
審査請求日 平成18年3月3日(2006.3.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】甲木 昭雄
【氏名】鬼鞍 宏▲猷▼
【氏名】佐島 隆生
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】大和田 有軌
参考文献・文献 特開2003-159607(JP,A)
特開2000-241133(JP,A)
特開平07-190734(JP,A)
特開平11-230714(JP,A)
特開2000-246593(JP,A)
特開平07-043119(JP,A)
特開平07-167634(JP,A)
特開平11-051946(JP,A)
調査した分野 G01B 5/00 - 5/30
G01B 11/00 - 11/30
G01B 21/00 - 21/32
特許請求の範囲 【請求項1】
被加工物に形成された穴に挿入された状態で、当該穴の加工精度を計測する深穴計測プローブを備えている深穴計測装置において、
上記深穴計測プローブの端部には、回転の中心軸方向に対して直交する方向に突出し、かつその先端が穴壁に接触した状態で、穴壁の表面に対して直交方向に可動する針状部材が、前記被加工物に対して前記中心軸の周りに回転可能に備えられているとともに、
さらに、上記針状部材へのレーザ光の照射により当該針状部材の動きを検出するレーザ照射検出手段が、上記穴の外部に設けられており、
上記針状部材には、上記針状部材の可動方向に沿って入射する上記レーザ光を受光して上記可動方向に沿って反射するレーザ光反射部材が設けられており、
上記深穴計測プローブの端部の前面には、上記レーザ光を受光して上記レーザ光反射部材側に向かって上記可動方向に沿って上記中心軸から離れる方向にレーザ光の進路を曲げるとともに、当該レーザ光反射部材により反射されたレーザ光を受光して入射側にレーザ光の進路を曲げるレーザ光中間受光部材が、上記針状部材と一体に前記中心軸の周りに回転可能に設けられていることを特徴とする深穴計測装置。
【請求項2】
上記レーザ照射検出手段は、レーザ光反射部材からの反射光から、上記針状部材の動きを検出することを特徴とする請求項1に記載の深穴計測装置。
【請求項3】
上記針状部材は、上記中心軸方向に対して直交する方向に突出しており、
上記レーザ光中間受光部材およびレーザ光反射部材により形成されるレーザ光の入反射の経路は、全ての曲げ方向が直角方向となっていることを特徴とする請求項1に記載の深穴計測装置。
【請求項4】
上記針状部材は、リニアブシュにより回転の中心軸方向に対して直交する方向に可動するように支持されていることを特徴とする請求項3に記載の深穴計測装置。
【請求項5】
上記レーザ光中間受光部材が直角プリズムミラーであることを特徴とする請求項3または4に記載の深穴計測装置。
【請求項6】
上記レーザ光反射部材がコーナーキューブプリズムであることを特徴とする請求項3、4または5に記載の深穴計測装置。
【請求項7】
さらに、上記針状部材の動きを数値化して、加工精度情報として生成するレーザ検出結果解析手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の深穴計測装置。
【請求項8】
上記レーザ検出結果解析手段は、上記穴の横断面の中心を通過して横断する方向をX方向、このX方向に直交する方向をY方向とし、上記針状部材の動きをこれらX方向および/またはY方向への移動距離として数値化することを特徴とする請求項7に記載の深穴計測装置。
【請求項9】
上記レーザ検出結果解析手段は、さらに、穴の深さ方向をZ方向として、上記針状部材の位置をZ方向への移動距離として数値化することを特徴とする請求項8に記載の深穴計測装置。
【請求項10】
上記レーザ光検出結果解析手段は、針状部材の動きを、X、YおよびZ方向のうち少なくとも1方向についての軌跡として表示可能とするように、加工精度情報を生成することを特徴とする請求項8または9に記載の深穴計測装置。
【請求項11】
上記加工精度として、穴の真直度、横断面の真円度、円筒度、横断面の直径、および穴の深さの少なくとも何れかを計測することを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の深穴計測装置。
【請求項12】
さらに、深穴計測プローブの姿勢を検出する姿勢検出手段と、当該姿勢検出手段により検出された深穴計測プローブの姿勢の乱れを修正する姿勢修正手段とを備えていることを特徴とする請求項1ないし11の何れか1項に記載の深穴計測装置。
【請求項13】
被加工物に形成された穴に深穴計測プローブを挿入した状態で、当該穴の加工精度を計測する深穴計測方法において、
上記深穴計測プローブの端部に、回転の中心軸方向に対して直交する方向に突出し、かつその先端が穴壁に接触した状態で、穴壁の表面に対して直交方向に可動する針状部材を、被加工物に対して前記中心軸の周りに回転可能に設けるとともに、
この針状部材にレーザ光を照射することで当該針状部材の動きを検出して数値化することにより加工精度を計測する深穴計測方法であって、
上記針状部材には、上記針状部材の可動方向に沿って入射する上記レーザ光を受光して上記可動方向に向かって反射するレーザ光反射部材が設けられており、
上記深穴計測プローブの端部の前面には、上記レーザ光を受光して上記レーザ光反射部材側に向かって上記可動方向に沿って上記中心軸から離れる方向にレーザ光の進路を曲げるとともに、当該レーザ光反射部材により反射されたレーザ光を受光して入射側にレーザ光の進路を曲げるレーザ光中間受光部材が、上記針状部材と一体に前記中心軸の周りに回転可能に設けられていることを特徴とする深穴計測方法。
【請求項14】
穴の横断面の中心を通過して横断する方向をX方向としたときに、このX方向に直交する方向をY方向とし、上記針状部材の動きをこれらX方向および/またはY方向への移動で数値化することを特徴とする請求項13に記載の深穴計測方法。
【請求項15】
さらに、穴の深さ方向をZ方向として、上記針状部材の位置をZ方向への移動で数値化することを特徴とする請求項14に記載の深穴計測方法。
【請求項16】
上記加工精度として、穴の真直度、横断面の真円度、円筒度、横断面の直径、および穴の深さの少なくとも何れかを計測することを特徴とする請求項13、14または15に記載の深穴計測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、深穴の各種加工精度を計測する深穴計測装置および深穴計測方法に関するものであり、特に、航空機のエンジンやランディングギア、加速器、新幹線の車軸、プラスチック射出成形機、印刷機の巻取りシリンダ、火器、ドリルカラ等のように、精度を要する深穴加工全般に好適に適用することができる深穴計測装置および深穴計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種産業用機器、輸送機は高機能化が進んでいるため、これら機器やその部品等においては、その高機能化に伴い、高精度の製造や加工が要求されている。このような機械加工のうち、深穴加工(穴深さ/穴径の比が大きい穴の加工)では、深穴の加工精度を向上させるために、形成される穴の真円度や真直度等を計測することが重要となる。
【0003】
上記深穴加工において、加工精度を計測する技術としては、例えば、本発明者らによって提案されている深穴評価装置および深穴評価方法を挙げることができる(特許文献1参照)。
【0004】
上記技術では、先端部分を被加工物に対して回転させ、該回転の中心軸から被加工物の内壁までの半径方向の距離を計測する深穴評価プローブを用いている。すなわち、この技術で用いられている深穴評価装置は、被加工物の深穴内部に存在し、深穴の形成方向に回転して移動可能な深穴評価プローブと、被加工物の外部に存在し、深穴評価プローブから得られた計測データを計測結果として生成し出力する本体部とを備える構成であるということができる。
【0005】
上記深穴評価装置では、上記平面における深穴評価プローブの位置ずれと中心軸を中心とする円方向における深穴評価プローブの傾きとをそれぞれ検出するようになっている。ここで、上記位置ずれおよび傾きを示す成分にお互いの干渉成分が含まれているため、実際の深穴評価プローブの位置ずれ、傾きとは異なる検出結果となる。それゆえ、上記技術では、中心軸方向に対する垂直な平面上に位置する2点において、正常位置からの位置ずれと、中心軸を中心とする円方向における正常位置からの傾きとを検出し、検出結果に含まれる干渉成分を除去している。これにより、正確に検出された位置ずれおよび傾きを修正することで、従来よりも高精度な深穴精度計測を実現することが可能となる。
【0006】
なお、上記技術では、それまで知られていた深穴評価・計測技術とは異なり、真直度、真円度、円筒度、直径等を包括的に計測することが可能となっている。従来技術では、真円度は真円度測定器、真直度はオートコリメータ、直径はシリンダゲージにより計測している。
【0007】
また、レーザを用いた変位計測技術としては、三角測量法を応用したレーザ変位計が知られている(非特許文献1参照)。この技術では、レーザの使用により変位を高精度に計測するが可能となっている。
【0008】
ところで、上記のような深穴評価装置や深穴計測装置の構成は、一般に、深穴評価プローブ等の回転体と、上記本体部等の静止体とからなっている。上記回転体から静止体へ各種信号を送付する技術としては、無線式のものが知られている。具体的には、例えば、非特許文献2に開示されている無線式電子マイクロインジケーターでは、約18MHzの搬送周波数帯域で信号を送信している。なお、この技術では有線による送信も可能となっている。

【特許文献1】特開2003-159607(平成15(2003)年6月3日公開)
【非特許文献1】KEYENCE、測定器総合カタログ’92、48頁(1992年発行)
【非特許文献2】株式会社小笠原小型ホブ研究所、無線式電子マイクロインジケーターESM-05L型カタログ(1980年頃発行、改訂なし)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の技術では、より深い深穴について、その加工精度を高倍率で計測することが困難となっている。
【0010】
具体的には、従来技術では、個別の測定器で深穴の加工精度を測定している。例えば、真直度はオートコリメータで測定したり、超音波測定器で穴壁の厚みを計測することで測定したりしている。また、真円度は真円度測定器で測定している。真円度測定器の最大測定長は1m程度となっている。したがって、従来技術では、1m以上になると、真円度、円筒度等の精密測定は非常に困難か不可能になる。1m以上の深さの深穴になると、サンプルを切断せざるをえなくなる。
【0011】
また、上記非特許文献1に開示されているような三角測量法を用いる技術では、高倍率での測定が可能であるが、測定時に測定器の傾きや偏心量も拡大する。それゆえ、真円度等の加工精度を高倍率で計測することはほとんど不可能であった。また、この測定器は、偏心量等の拡大に加えて形状も大きいため、例えば、深穴の直径が110mm程度であっても、測定ユニットとして深穴に挿入して使用することはできない。なお、非特許文献1には、測長器方法の変位計も開示されているが、分解能が低く、±0.5mm程度となっている。
【0012】
さらに、上記非特許文献1に開示されている技術では、レーザ光を測定面に直接照射するようになっている。このように、レーザ光を穴壁に直接当てて穴壁までの距離を測る方法では、穴壁の材質、表面粗さ、油膜等の汚れにより、計測精度に大きな影響が生じる。したがって、やはり深穴の深さがより一層大きい場合や、より高倍率で加工精度を計測したい場合には十分に対応できない。
【0013】
また、回転体により得られた計測データを本体部に送信するとき、上記非特許文献2に開示されているような無線方式を採用する場合、すなわち、計測データを信号として電波で送信する場合には、穴の深さ(長さ)がより深いと、当該電波が深穴の内壁に吸収されてしまう。そのため、実用上は、回転体の送信アンテナと静止体の受信アンテナとの間距離を数cm程度しか離すことができない。
【0014】
ここで、上記特許文献1に開示されている技術では、包括的な深穴評価・計測が可能であるとともに、従来よりも高精度な深穴精度計測を実現することが可能となっている。しかしながら、特許文献1の技術では、回転体により得られた計測データを本体部に送信するときに、電波で計測データを送信しているとともに、電気マイクロメータ(無線式マイクロメータ)で変位を測定している。そのため、深穴の深さがある程度までであれば、深穴の評価・計測を有効に行うことができるものの、深穴の深さがより一層大きい場合や、より高倍率で加工精度を計測したい場合には十分に対応できない場合がある。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、より深い深穴について、その加工精度を高倍率で計測することが可能な深穴計測装置および深穴計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、レーザ光を用いて深穴の各種加工精度を計測する際に、回転体に加工精度を物理的に読み出す手段を設け、この手段の位置をレーザ光で検出することにより、回転体から静止体へ計測データを効率的かつ確実に送信するとともに、加工精度そのものの計測に必ずしもレーザ光を用いないことで、穴壁の材質や表面粗さ等による計測精度の影響を回避し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明にかかる深穴計測装置は、上記課題を解決するために、被加工物に形成された穴に挿入された状態で、当該穴の加工精度を計測する深穴計測プローブを備えている深穴計測装置において、上記深穴計測プローブの端部には、被加工物に対して回転可能に設けられ、回転の中心軸方向に対して交差する方向に突出し、かつその先端が穴壁に接触した状態で、穴壁の表面に沿って交差方向に可動する針状部材が備えられているとともに、さらに、上記針状部材へのレーザ光の照射により当該針状部材の動きを検出するレーザ照射検出手段が、上記穴の外部に設けられていることを特徴としている。
【0018】
上記深穴計測装置においては、上記針状部材には、上記レーザ光を受光して入射側へ反射するレーザ光反射部材が設けられており、上記レーザ照射検出手段は、レーザ光反射部材からの反射光から、上記針状部材の動きを検出することが好ましい。また、上記深穴計測プローブの端部の前面には、上記レーザ光を受光して上記レーザ光反射部材側にレーザ光の進路を曲げるとともに、当該レーザ光反射手段により反射されたレーザ光を受光して入射側にレーザ光の進路を曲げるレーザ光中間受光部材が設けられていることが好ましい。
【0019】
上記深穴計測装置においては、上記針状部材(例えばスタイラス)は、上記中心軸方向に対して直交する方向に突出しており、上記レーザ光中間受光部材およびレーザ光反射部材により形成されるレーザ光の入反射の経路は、全ての曲げ方向が直角方向となっている例を挙げることができる。このとき、上記針状部材は、リニアブシュにより交差方向に可動するように支持されており、上記レーザ光中間受光部材が直角プリズムミラーであり、上記レーザ光反射部材がコーナーキューブプリズムである例を挙げることができる。
【0020】
上記深穴計測装置においては、さらに、上記針状部材の動きを数値化して、加工精度情報として生成するレーザ検出結果解析手段を備えていることが好ましい。このレーザ検出結果解析手段は、上記穴の横断面の中心を通過して横断する方向をX方向、このX方向に直交する方向をY方向とし、上記針状部材の動きをこれらX方向および/またはY方向への移動距離として数値化することが可能になっており、さらに、穴の深さ方向をZ方向として、上記針状部材の位置をZ方向への移動距離として数値化することも可能になっている。したがって、上記レーザ光検出結果解析手段は、針状部材の動きを、X、YおよびZ方向のうち少なくとも1方向についての軌跡として表示可能とするように、加工精度情報を生成することができる。
【0021】
上記深穴計測装置においては、計測される加工精度は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、穴の真直度、横断面の真円度、円筒度、横断面の直径、および穴の深さの少なくとも何れかを挙げることができる。
【0022】
上記深穴計測装置においては、さらに、深穴計測プローブの姿勢を検出する姿勢検出手段と、当該姿勢検出手段により検出された深穴計測プローブの姿勢の乱れを修正する姿勢修正手段とを備えていることが好ましい。
【0023】
本発明にかかる深穴計測方法は、被加工物に形成された穴に深穴計測プローブを挿入した状態で、当該穴の加工精度を計測する方法において、上記深穴計測プローブの端部に、被加工物に対して回転可能に設けられ、回転の中心軸方向に対して交差する方向に突出し、かつその先端が穴壁に接触した状態で、穴壁の表面に沿って交差方向に可動する針状部材を設けるとともに、この針状部材にレーザ光を照射することで当該針状部材の動きを検出して数値化することにより加工精度を計測することを特徴としている。
【0024】
上記深穴計測方法においては、穴の横断面の中心を通過して横断する方向をX方向としたときに、このX方向に直交する方向をY方向とし、上記針状部材の動きをこれらX方向および/またはY方向への移動で数値化することが好ましく、さらに、穴の深さ方向をZ方向として、上記針状部材の位置をZ方向への移動で数値化することがより好ましい。また、上記加工精度としては、穴の真直度、横断面の真円度、円筒度、横断面の直径、および穴の深さの少なくとも何れかを計測することが可能となっている。
【0025】
また、本発明にかかる他の深穴計測装置は、上記深穴計測プローブの端部には、被加工物に対して回転可能に設けられ、レーザ光を受光して回転の中心軸方向に対して交差する方向に当該レーザ光の進路を曲げて、レーザ光を穴壁に照射するとともに、穴壁から反射されたレーザ光を受光して入射側にレーザ光の進路を曲げるレーザ光中間受光部材が備えられているとともに、さらに、上記レーザ光中間受光部材へのレーザ光の照射および反射光の受光により、穴の加工精度を計測するレーザ照射検出手段が、上記穴の外部に設けられている構成を挙げることができる。したがって、本発明には、上記深穴計測プローブの端部に、被加工物に対して回転可能に設けられるレーザ光中間受光部材により、レーザ光を受光して回転の中心軸方向に対して交差する方向に当該レーザ光の進路を曲げて、レーザ光を穴壁に照射するとともに、穴壁から反射されたレーザ光を受光して入射側にレーザ光の進路を曲げることで、穴の加工精度を計測する深穴計測方法も含まれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、以上のように、穴に挿入される回転体(深穴計測プローブまたはその先端の計測ユニット)に、穴の内壁(穴壁)に当接するように突出する針状部材を設け、この針状部材の動きをレーザ光により検出することで、穴の加工精度を計測する。すなわち、本発明では、深穴の形状を物理的な接触により読み出して一次情報とし、この一次情報をレーザ光により遠隔位置の静止体(レーザ照射検出手段)から検出することで、二次情報として読み出すことになる。
【0027】
そのため、穴壁の材質や表面粗さ、汚れ等による影響をほとんど受けることなしに、一次情報を読み出すことができるとともに、読み出した一次情報を、レーザ光により検出して二次情報として読み出すので、電波による信号の送信で生じるような問題を有効に回避することができる。その結果、従来、困難または不可能であった回転体から静止体への有効な信号の伝達を可能にできるとともに、物理的接触による一次情報をレーザ光で読み出して二次情報化することから、計測時の倍率を上げても穴の傾きや偏芯等の拡大を有効に回避することができ、高倍率で深穴を計測・評価することが可能となる。しかも、加工精度はレーザ光により二次情報化されるため、サブミクロンレベルでの計測も可能となる。
【0028】
それゆえ、本発明は、より深い深穴の加工精度をより精度良く計測・評価することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の一実施形態について図1ないし図3に基づいて説明すると以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
本発明にかかる深穴計測装置は、被加工物に形成された穴に挿入された状態で、当該穴の加工精度を計測する深穴計測プローブを備えているものであり、その具体的な一例を挙げると、図1に示すように、深穴計測プローブ5、テーブル(送り台)6、各種光学検出系、測長器16等を備える構成の深穴計測装置10を挙げることができる。
【0031】
<深穴計測プローブ>
上記深穴計測プローブ5は、計測ユニット8と圧電アクチュエータ(姿勢修正手段)15を備える圧電アクチュエータ保持部とを含んで構成される。圧電アクチュエータ保持部は回転することなく、深穴計測中において深穴計測プローブ5の姿勢(変位および傾き)を検出し、正常位置からのずれを修正する。なお、姿勢の検出や修正の詳細に関しては、各種光学検出系の項で詳述する。
【0032】
上記圧電アクチュエータ15は、本実施の形態では、深穴計測プローブ5の側面に3個1組として前後に2組備えられており、各組の圧電アクチュエータ15は、深穴計測プローブ4の側面における、鉛直方向上頂点に1個、鉛直方向下底から左右に45°ずつの位置に2個配置されている。これにより、両方の組みの圧電アクチュエータ15を連動して動かすことにより、深穴計測プローブ5の中心軸方向からの変位と傾きとを修正することができる。
【0033】
上記圧電アクチュエータ15は、深穴計測プローブ5への取付け側から深穴3の半径方向に向かって伸縮することができ、計測中は、被加工物4の内壁へ当接することによって深穴計測プローブ5を深穴3の半径方向に移動させたり、前後両方の組みの圧電アクチュエータ15を動作させて、深穴計測プローブ5を深穴3内において平行移動させたりすることができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、姿勢修正手段として上記圧電アクチュエータ15を採用しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、カムやリニアアクチュエータ等を用いることもできる。
【0035】
上記深穴計測プローブ5は、当該深穴計測プローブ5を支持する計測バー1と接続されている。これら深穴計測プローブ5と計測バー1との接続手段は特に限定されるものではなく、本実施の形態では、フレックスカップリング2を介して接続されている。このフレックスカップリング2は、回転方向のトルクに対して十分剛性を有するものである。
【0036】
具体的には、上記フレックスカップリングは、計測バー1と深穴計測プローブ5との距離を一定に保ちつつ、深穴計測プローブ5のアクチュエータ保持部に接続されている。接続手段としてフレックスカップリング2を用いることにより、圧電アクチュエータ保持部のローリングを防止することができるとともに、計測バー1の中心軸方向の荷重に対する剛性を計測バー1に持たせることが可能となる。なお、本実施の形態では、深穴計測プローブ5においては、計測中に計測バー1の位置と、深穴計測プローブ5との間隔は変化せず、フレックスカップリング2は移動しない。
【0037】
上記深穴計測プローブ5の先端部分に取り付けられた計測ユニット8は、計測バー1の中心軸7に沿った誘導軸線を中心として回転する。なお、計測ユニット8の詳細については後述する。深穴計測プローブ5内にはステッピングモータ9が設けられており、ベルト11を介してステッピングモータ9の回転駆動が計測ユニット8に与えられる。これにより、計測ユニット8を回転させることができる。なお、上記中心軸7は、実質的にはボーリングバーの中心軸に対応するため、本発明では、上記中心軸7をボーリングバーの中心軸と代替して表現してもよい。
【0038】
本実施の形態では、深穴3を加工された被加工物4に対して、上記のようにして計測ユニット8を回転させながら、被加工物4を固定したテーブル6を、深穴計測プローブ5に向かって前進させることで深穴3の計測を行う。テーブル6の構成は特に限定されるものではなく、被加工物4を安定して固定しつつ深穴計測プローブ5に向かって移動させることができるものであればよい。したがって、被加工物4の材質や形状に応じて適切な構成の送り台を選択して用いればよい。
【0039】
<計測ユニット>
上記深穴計測プローブ5には、その先端に計測ユニット8が設けられている。計測ユニット8は、図2に示すように、スタイラス(針状部材)31、コーナーキューブプリズム32、直角プリズムミラー33、リニアブシュ34等を備える構成となっている。上記スタイラス31は、被加工物4に対して回転可能に設けられており、回転の中心軸(計測バーの中心軸7)方向に対して交差する方向に突出し、かつその先端が穴壁に接触した状態で、穴壁の表面に沿って交差方向に可動するようになっている。
【0040】
スタイラス31は、深穴3の穴壁(表面)に物理的接触することで当該深穴3の表面形状を物理的に読み出す針状部材となっている。このスタイラス31の具体的な種類は特に限定されるものではなく、公知の針状部材を好適に用いることができる。また、被加工物4の材質によって異なる材質や形状のスタイラス31を用いてもよい。例えば、スタイラス31の先端として、被加工物4の材質に応じて鋭利なものを選択してもよいし、丸みを帯びたものを選択してもよい。
【0041】
スタイラス31の突出方向は、中心軸方向に交差する方向であればよい。すなわち、回転しながら深穴3の穴壁を全体的に走査できるように突出していればよい。一般的には、スタイラス31は、上記中心軸方向に対して直交する方向(便宜上、直交方向と称する)に突出していることが好ましい。これにより、計測ユニット8の回転に伴い、穴壁の表面を中心軸周りに沿ってより正確に走査することができる。スタイラス31を交差方向(特に直交方向)に可動させる手段については特に限定されるものではないが、例えば、本実施の形態では、リニアブシュ34を採用している。
【0042】
本発明では、深穴3の外部から上記スタイラス31へレーザ光を照射することで当該スタイラス31の動きを検出することにより、深穴3の加工精度を計測している。このとき、スタイラス31の交差方向(特に直交方向)の動きをより効率的に検出するためには、上記スタイラス31に対して上記レーザ光を受光して入射側へ反射するレーザ光反射部材を設けることが好ましい。このレーザ光反射部材は特に限定されるものではないが、本実施の形態では、コーナーキューブプリズム32を採用している。
【0043】
このように、レーザ光反射部材をスタイラス31に設けることで、当該レーザ光反射部材からの反射光から当該スタイラスの動きを検出することになる。つまり、穴壁の凹凸によるスタイラス31の変位がコーナーキューブプリズム32の変位となり、この変位をレーザ光で計測することになる。そのため、大部分がリニアブシュ34により支持されて隠れた状態となっているスタイラス31に直接レーザ光を照射するよりも、効率的にスタイラス31の動きを検出することが可能となる。
【0044】
さらに本発明では、上記深穴計測プローブ5の端部の前面、すなわち計測ユニット8の全面に、上記レーザ光を受光して上記コーナーキューブプリズム32側にレーザ光の進路を曲げるとともに、当該コーナーキューブプリズム32により反射されたレーザ光を受光して入射側にレーザ光の進路を曲げる直角プリズムミラー33が設けられている。この直角プリズムミラー33は、レーザ光中間受光部材として機能する。
【0045】
このようなレーザ光中間受光部材を設けることにより、光源(測長器16)から出射されるレーザ光をより大きな受光面積で受け、これをコーナーキューブプリズム(レーザ光反射部材)32に向けて反射させることになるので、より効率的にスタイラス31の動きを検出することが可能となる。
【0046】
なお、コーナーキューブプリズム32等のレーザ光反射部材をスタイラス31に固定化する手法は特に限定されるものではないが、直角プリズムミラー33からの反射光を良好に受けることができるような位置に固定化することが好ましい。本実施の形態では、図2に示すように、平板状の固定部材35を用いている。この固定部材35は、一方の端部にスタイラス31を貫通させるとともに、他方の端部にコーナーキューブプリズム32を載置して固定した状態としている。これにより、上記スタイラス31の軸方向に直交する方向で、かつ、上記中心軸方向に沿った方向に突出し、コーナーキューブプリズム32の受光および反射部位を中心軸方向に向かうように配置することになり、直角プリズムミラー33からの反射光を効率的に受けることができる。
【0047】
本実施の形態では、図2に示すように、スタイラス31が上記中心軸方向に対して直交する方向に突出しており、直角プリズムミラー(レーザ光中間受光部材)33およびコーナーキューブプリズム(レーザ光反射部材)32により形成されるレーザ光の入反射の経路は、全ての曲げ方向が直角方向となっている。
【0048】
より具体的には、直角プリズムミラー33は、レーザ光の進路を中心軸7から外部側へ直角方向に曲げ、かつ、直角方向に曲げられたレーザ光を上記コーナーキューブプリズム32に直接入射させる。上記コーナーキューブプリズム32は、入射したレーザ光を直角プリズムミラー33側に反射し、直角プリズムミラー33は、これを深穴3の外部に存在する受光部(測長器16)側に反射する。これによって、測長器16では、反射光からスタイラス31の動きを検出する。
【0049】
<測長器・加工精度の計測>
本実施の形態では、図1および図3に示すように、上記スタイラス31へのレーザ光の照射により当該スタイラス31の動き(変位)を、深穴3の外部に設けられている測長器(レーザ照射検出手段)16で検出する。本実施の形態では、直角プリズムミラー33を介してコーナーキューブプリズム(レーザ光反射部材)32からの反射光から、上記スタイラス31の動きを検出することになる。
【0050】
上記測長器16は、深穴3内部のスタイラス31(本実施の形態では、直角プリズムミラー33を介してコーナーキューブプリズム32)に対してレーザ光を照射するとともに、これらから反射されるレーザ光を受光することで、スタイラス31の動きを検出できるレーザ照射検出手段であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態では、具体的には、例えば、(株)小野測器製、型式LV9100Aを採用している。
【0051】
本実施の形態では、図3に示すように、上記測長器16で検出されたスタイラス31の動きを数値化して、加工精度情報として生成する検出結果解析部17を備えている。この検出結果解析部17の具体的な構成は特に限定されるものではないが、例えば、上記深穴3の横断面の中心を通過して横断する方向をX方向、このX方向に直交する方向をY方向とし、上記スタイラス31の動きをこれらX方向およびY方向への移動距離として数値化する構成、並びに、穴の深さ方向をZ方向として、穴の開口部を基準として上記針状部材の位置をZ方向への移動距離として数値化する構成を挙げることができる。
【0052】
上記のように、スタイラス31の動きをX、YおよびZ方向の3方向についてそれぞれ数値化することができれば、これら3方向のうち1方向を選択すれば、深穴3の直径や深穴3の深さ(長さ)を加工精度情報として生成することができ、2方向を選択することで、スタイラス31の軌跡から深穴3の加工精度を2次元の加工精度情報として生成することができる。さらに、3方向全てを選択すれば、スタイラス31の軌跡から深穴3の加工精度を3次元すなわち立体の加工精度情報として生成することができる。
【0053】
本発明で計測する加工精度は特に限定されるものではないが、本実施の形態では、穴の真直度、横断面の真円度、円筒度、横断面の直径、および穴の深さの少なくとも何れかを挙げることができる。穴の真直度は、X-Z方向および/またはY-Z方向の2次元情報、さらには、X-Y-Z方向の3次元情報として生成することができる。また、横断面の真円度はX-Y方向の2次元情報として生成することができる。円筒度もX-Y-Z方向の3次元情報として生成することができる。横断面の直径はX方向またはY方向のみの情報として生成することができる。また、穴の深さはZ方向のみの情報として生成することができる(後述する実施例参照)。
【0054】
上記検出結果解析部17の具体的な構成は特に限定されるものではなく、従来公知の演算手段、具体的には、コンピュータの中央処理装置(CPU)等であり、その動作はコンピュータプログラムにしたがって実行される構成であればよい。
【0055】
本発明かかる深穴計測装置においては、他に出力部22や図示しない入力部、記憶部等が設けられていてもよい。出力部22としては、計測結果(加工精度情報)を何らかの形で出力できる手段であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、公知のCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ等といった各種表示装置や、公知のインクジェットプリンタやレーザープリンタ等の画像形成装置を挙げることができる。
【0056】
また、図示しない入力部としては、上記深穴計測装置10の動作に関わる情報等を入力可能とするものであれば特に限定されるものではない。具体的には、キーボードやタブレット等、従来公知の入力手段を好適に用いることができる。同様に、図示しない記憶部としては、上記深穴計測装置10で利用される各種情報を記憶する手段であれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、RAMやROM等の半導体メモリ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD-ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系等、従来公知の各種記憶手段を好適に用いることができる。
【0057】
<各種光学検出系>
本発明にかかる深穴計測装置は、上記のように、穴に挿入される回転体(深穴計測プローブ5)の端部に、深穴3の内壁(穴壁)に当接するように突出するスタイラス31を設け、このスタイラス31の動き(変位)をレーザ光により検出することで、深穴3の加工精度を計測している。さらに、本発明にかかる深穴計測装置においては、各種光学検出系を設け、深穴3の計測中において深穴計測プローブ5の姿勢(変位および傾き)を検出し、姿勢の正常位置からのずれを修正するようになっていることが好ましい。
【0058】
具体的には、図1に示すように、本実施の形態では、深穴評価装置10は、上記光学検出系として、深穴計測プローブ5そのものの姿勢(変位および傾き)を検出する姿勢検出用半導体レーザ(発光手段)12および2次元PSD(Position-Sensitive Detector、姿勢検出手段)13・14、ミラー19、ビームスプリッタ21を備えている。
【0059】
深穴計測プローブ5の姿勢が乱れた場合、換言すれば、深穴計測プローブ5の回転の中心軸が、計測バー1の中心軸方向から深穴計測プローブ5に変位または傾きが生じた場合には、当該深穴計測プローブ5の側面に備えられた圧電アクチュエータ(姿勢修正手段)15によって適正な姿勢、位置に修正される。
【0060】
さらに、深穴計測装置10は、上記光学検出系として、ローリング検出用半導体レーザ(発光手段)18、1次元PSD(姿勢検出手段)20を備えており、深穴計測プローブ5のローリングを検出し、ローリングの値を測定し、補正することにより深穴計測プローブの真の姿勢を算出することができる。なお、フレックスカップリング2を含めたローリング防止装置は十分な剛性を有しており、アクチュエータ保持部にローリングはほとんど生じない。仮に、ローリングが発生しても上記のように補正することが可能である。
【0061】
なお、ここでいうローリングとは、深穴計測プローブ5が計測中に姿勢の修正を行う際に、深穴計測プローブ5における圧電アクチュエータ保持部が、計測ユニット8の回転方向あるいはその反対方向にずれてしまうことを指す。そして、このローリングが原因となって、深穴計測プローブ5の姿勢を修正する際に、姿勢の検出にローリングに起因する誤差が含まれてしまうため、深穴計測プローブ5の姿勢を適正に修正できず、計測精度が低下してしまうことが知られている。
【0062】
本実施の形態では、深穴計測プローブ5の先端部分の計測ユニット8を回転させて、深穴の加工精度を計測している間、姿勢の乱れ(変位・傾き等)を検出して深穴計測プローブ5を適正な位置に戻すように修正するが、このときに生じる深穴計測プローブ5のローリングも最小限に抑えることができる。これにより、ローリングによる誤差が検出された姿勢の乱れに混入しないため、圧電アクチュエータ15によって適正な姿勢の修正が可能になり、従来の深穴計測装置よりも高精度の深穴計測が可能になる。
【0063】
上記姿勢の乱れを検出する各種光学検出系の具体的な構成は特に限定されるものではなく、公知の様々な構成を利用することができる。また、本実施の形態において、各種光学検出系で用いられている上記半導体レーザ12、2次元PSD13・14、ローリング検出用半導体レーザ18、ミラー19、1次元PSD20、ビームスプリッタ21等の各部材や手段の具体的な構成も特に限定されるものではなく、公知の半導体レーザやPSD、光学部材を好適に用いることができる。
【0064】
本発明では、上述したように、深穴3の形状をスタイラス31による物理的な接触で読み出して一次情報とし、この一次情報をレーザ光により遠隔位置の静止体(測長器16)で検出することで、二次情報として読み出している。そのため、穴壁の材質や表面粗さ、汚れ等による影響をほとんど受けることなしに、一次情報を読み出すことができるが、上記各種光学検出系を備えることにより、さらに正確な一次情報を読み出すことができる。すなわち、スタイラス31が設けられている深穴計測プローブ5そのものの姿勢の乱れも検出し、圧電アクチュエータ15等の姿勢修正手段により修正すれば、一次情報に深穴計測プローブ5の姿勢の乱れに伴う誤差が混入することを回避することが可能になるため、より正確な加工精度を計測することができる。
【0065】
<深穴計測方法>
本発明にかかる深穴計測方法は、上述した深穴計測装置により実現される方法である。すなわち、本実施の形態では、上記深穴計測プローブ5の端部に、被加工物4に対して回転可能に設けられ、回転の中心軸方向に対して交差(好ましくは直交)する方向に突出し、かつその先端が穴壁に接触した状態で、穴壁の表面に沿って交差方向(好ましくは直交方向)に可動するスタイラス31を設け、この深穴計測プローブ5を深穴3に挿入した状態で、当該深穴3の加工精度を計測する。このとき、上記スタイラス31に、好ましくはコーナーキューブプリズム32等を介して間接的にレーザ光を照射することで、当該スタイラスの動きを検出して数値化することにより加工精度を計測する。さらにこのとき、深穴3に挿入された深穴計測プローブの姿勢の乱れを検出し、これを修正することが好ましい。
【0066】
本実施の形態における深穴計測方法について説明すると、まず、テーブル6に深穴3が加工形成された被加工物4を固定する。次に、テーブル6を深穴計測プローブ5に向かって前進させ、深穴3内に深穴計測プローブ5を挿入する。図1に示す構成の深穴計測装置10では、前方の圧電アクチュエータ15のサポーティングパッド(圧電アクチュエータと内壁とが接する個所)の距離は、後述の実施例では、深さ133mmになっている。
【0067】
挿入後に計測ユニット8を回転させるとともに、必要に応じてテーブル6を前進させることで深穴3の加工精度の計測を開始する。計測ユニット8には、上述したようにスタイラス31が設けられており、穴壁に当接しているので、計測ユニット8の回転によりスタイラス31も深穴3内を回転する。さらに、テーブル6を前進させた場合には、相対的に見れば、深穴3内を深穴計測プローブ5が進んでいく状態となる。
【0068】
したがって、スタイラス31は、少なくとも深穴3内で回転し、さらに奥に進む方向の動きも必要に応じて加えることになり、回転という2次元の動きだけでなく、奥への進入というもう1次元の動きを加えることも可能となる。それゆえ、深穴3の横断面の中心を通過して横断する方向をX方向としたときに、このX方向に直交する方向をY方向とし、上記スタイラス31の動きはこれらX方向および/またはY方向への移動で数値化することができるとともに、深穴3の深さ方向(奥へ進入する方向)をZ方向として、上記スタイラス31の位置をZ方向への移動で数値化することができる。その結果、深穴3の横断面の直径や穴の深さ等については、X、YまたはZ方向の1次元情報として数値化でき、穴の真直度、横断面の真円度、円筒度等については、X-Y、Y-Z、またはX-Z方向の2次元情報、あるいはX-Y-Z方向の3次元情報として数値化することができる。
【0069】
なお、加工精度の計測の基準は特に限定されるものではなく、深穴計測装置10の構成や被加工物4、深穴3の形状等に応じて適宜設定すればよい。例えば、深穴計測プローブ5の計測をガイドブシュの位置から始めることで可能である。ガイドブシュの穴の形状を基準とし、計測対称となる深穴3の加工精度を計測することもできる。
【0070】
<本発明の他の構成>
上述したように、本発明では、スタイラス31により深穴3の加工精度を計測するようになっているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、少なくとも、レーザ光を用いて、回転体から静止体へ計測データを効率的かつ確実に送信するようになっていればよい。
【0071】
すなわち、前述したように、レーザ光を穴壁に直接当てて穴壁までの距離を測る方法では、穴壁の材質、表面粗さ、油膜等の汚れにより、計測精度に大きな影響が生じる場合が多い。しかしながら、例えば、穴壁の仕上げ面が光を反射できるような状態であれば、レーザ光を穴壁に直接当てても問題が生じない。そこで、本発明にかかる他の深穴計測装置としては、上記スタイラス31(およびコーナーキューブプリズム32)を備えない構成であってもよい。
【0072】
具体的には図示しないが、例えば、図1に示す構成を参照して説明すると、深穴計測プローブ5の端部に設けられる計測ユニット8には、直角プリズムミラー(レーザ光中間受光部材)33のみが設けられる構成であってもよい。この構成では、測長器16から照射されるレーザ光を受光して回転の中心軸方向に対して交差する方向に当該レーザ光の進路を曲げて、レーザ光を穴壁に照射するとともに、穴壁から反射されたレーザ光を受光して入射側にレーザ光の進路を曲げるようになっている。そして、測長器16では、直角プリズムミラー33を経由して穴壁から反射される反射光の受光により、穴の加工精度を計測する。
【0073】
上記構成では、レーザ光により読み出した一次情報をそのまま深穴3の外部に送信するので、電波による信号の送信で生じるような問題を有効に回避することができる。その結果、従来、困難または不可能であった回転体から静止体への有効な信号の伝達を可能にできるとともに、計測時の倍率を上げても穴の傾きや偏芯等の拡大を有効に回避することができ、高倍率で深穴を計測・評価することが可能となる。したがって、本発明では、物理的接触により穴の加工精度を計測する構成は必ずしもなくてもよい。
【実施例】
【0074】
本発明について、実施例および比較例、並びに図4ないし図6に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0075】
〔実施例1〕
まず、被加工物4としてジュラルミン材(JIS 2017T-4)を用い、深穴加工装置を用いて深さ500mmの深穴3を形成した。この深穴3の曲がりの度合い、すなわち穴の曲がりを、前述し穴計測装置10を用いて計測した。計測時の条件は、テーブル6の送り速度を100mm/分とし、前方の圧電アクチュエータ15のサポーティングパッドが、深穴の深さh=133mmの位置で深穴3の穴壁に当接するようにして、深穴計測プローブ5を当該深穴3に挿入した。
【0076】
そして、深穴3の内壁について、+X方向壁面と-X方向壁面とを走査してその動きをレーザ光で検出し、両者を平均して穴中心の曲がりXとした。Y方向についても同様とした。その結果を図4(a)・(b)に示す。
【0077】
〔比較例1〕
実施例1において、深穴計測プローブ5の先端に、本発明の計測ユニット8の代わりに、ダイヤルゲージスタンドおよび電気マイクロメータを取り付けた以外は同様にして、固定軸から深穴の中心位置Xの軌跡を計測し、深穴3の穴の曲がりを評価した。その結果を図4(c)・(d)に示す。
【0078】
このように、本発明にかかる深穴計測装置による計測誤差を算出すると、ミクロンオーダーで対応しており、μm単位の高精度計測が可能になったことがわかる。
【0079】
〔実施例2〕
被加工物4として工作物YR2および工作物J6を用いて、実施例1と同様の方法で深さ500mmの深穴3を形成した。これら各被加工物4の深穴について、前述した深穴計測装置10を用いて真円度を計測・評価した。なお、計測は送りを止めて行った。工作物YR2の結果を図5(a)に、工作物J6の結果を図5(c)に示す。工作物YR2に形成した深穴3の真円度は63.3μmであり、工作物J6の真円度は8.6μmであった。
【0080】
〔比較例2〕
市販の真円度測定器(テーラーホブソン社製、タリロンド100型)を用いた以外は、実施例2と同様にして真円度を計測・評価した。なお、計測は送りを止めて行った。YR2の結果を図5(b)に、J6の結果を図5(d)に示す。YR2に形成した深穴3の真円度は75.1μmであり、J6の真円度は5.9μmであった。
【0081】
〔実施例3〕
実施例1で計測した深穴3について、さらに、前述した深穴計測装置10を用いて誘導しながら穴壁をらせん状に走査した。その結果を図6(a)に示す。なお、同図に示す結果では、100mmまでの深さを表示しているが、実際の計測は487mm(工作物の全長)まで可能であった。また、図6(b)に、ZY面における計測結果を示す。+Yの頂点をたどれば+Y方向の穴壁面の変位となり、-Y方向をたどれば-Y方向の穴壁面の変位となる。なお、実施例1の場合は、+Y方向、-Y方向の壁面をZ軸方向へ走査している。図6(a)のらせんピッチを小さくすれば、図4(a)・(b)に示す結果と同じとなる。図6(a)・(b)に示す結果から明らかなように、本発明にかかる深穴計測装置を用いれば、より高精度な深穴計測が可能になったことがわかる。


【0082】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明では、より深い深穴の加工精度をより精度良く計測・評価することができるので、航空機のエンジンやランディングギア、加速器、新幹線の車軸、プラスチック射出成形機、印刷機の巻取りシリンダ、火器、ドリルカラ等、深穴の加工を行う各種機械加工分野に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明にかかる深穴計測装置の一例を示す部分断面図である。
【図2】図1に示す深穴計測装置の深穴計測プローブ5の先端に設けられている計測ユニットの構成の一例を示す部分断面図である。
【図3】図1に示す深穴計測装置の測長器の一例を示す模式図である。
【図4】(a)・(b)は、図1に示す深穴計測装置の深穴計測プローブによる穴の曲がりの計測結果((a)がX-Z方向、(b)がY-Z方向)を示すグラフであり、(c)・(d)は、固定軸からの真直度の計測結果((c)がX-Z方向、(d)がY-Z方向)を示すグラフである。
【図5】(a)・(c)は、図1に示す深穴計測装置の深穴計測プローブによる真円度の計測結果((a)が工作物YR2、(c)が工作物J6)を示すグラフであり、(b)・(d)は、市販の真円度測定器による真円度の計測結果((b)が工作物YR2、(d)が工作物J6)を示すグラフである。
【図6】(a)は、図1に示す深穴計測装置の深穴計測プローブに送りをかけてらせん状に走査した結果得られた穴壁の形状を3次元で示すグラフであり、(b)は、(a)に示すグラフをZY方向の2次元から見た結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1 計測バー
2 カップリング
3 深穴
4 被加工物
5 深穴計測プローブ
6 テーブル(送り台)
7 計測バーの中心軸
8 計測ユニット(回転体)
9 ステッピングモータ
10 深穴計測装置
11 ベルト
12 半導体レーザ(発光手段)
13 2次元PSD(Position-Sensitive Detector)(姿勢検出手段)
14 2次元PSD
15 圧電アクチュエータ(姿勢修正手段)
16 測長器(レーザ照射検出手段、静止体)
17 検出結果解析部(レーザ検出結果解析手段)
18 ローリング検出用半導体レーザ(発光手段)
19 ミラー
20 1次元PSD
21 ビームスプリッタ
22 出力部
31 スタイラス(針状部材)
32 コーナーキューブプリズム
33 直角プリズムミラー
34 リニアブシュ
35 固定部材

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5