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明細書 :アナログ符号化システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4765054号 (P4765054)
公開番号 特開2005-333386 (P2005-333386A)
登録日 平成23年6月24日(2011.6.24)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
公開日 平成17年12月2日(2005.12.2)
発明の名称または考案の名称 アナログ符号化システム
国際特許分類 H04K   1/00        (2006.01)
H04L   9/18        (2006.01)
H03M   7/30        (2006.01)
H04N   1/41        (2006.01)
H04N   1/44        (2006.01)
FI H04K 1/00 Z
H04L 9/00 651
H03M 7/30 A
H04N 1/41 Z
H04N 1/44
請求項の数または発明の数 2
全頁数 20
出願番号 特願2004-149608 (P2004-149608)
出願日 平成16年5月19日(2004.5.19)
審査請求日 平成19年2月27日(2007.2.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】松藤 信哉
【氏名】棚田 嘉博
【氏名】田中 幹也
【氏名】山口 静馬
【氏名】浜本 義彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100111132、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 浩
審査官 【審査官】金沢 史明
参考文献・文献 特表2004-506379(JP,A)
特開平11-088857(JP,A)
特開平10-257012(JP,A)
特開平04-129344(JP,A)
特開平05-048906(JP,A)
特開平06-161355(JP,A)
特開平05-041800(JP,A)
特開平10-304323(JP,A)
特開平04-349488(JP,A)
特開平10-155151(JP,A)
特開平11-112985(JP,A)
特開2002-094780(JP,A)
特開2002-209112(JP,A)
特開2007-129409(JP,A)
特開2004-221715(JP,A)
藤本亜希、松藤信哉、棚田嘉博、末広直樹,多次元直交系列を用いた直交変換,第25回情報理論とその応用シンポジウム予稿集,2002年12月10日,pp.675-678
松藤信哉、高興、松元隆博、末広直樹、棚田嘉博,雑音への耐性を考慮したアナログ暗号化方式の提案,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2005年 7月 8日,Vol. 105、No. 175,pp.7-10
調査した分野 H04K 1/00
H03M 7/30
H04L 9/00- 9/38
H04N 1/44
G09C 1/00
H04J 11/00
H04J 13/00-13/22
H04N 7/24- 7/68
特許請求の範囲 【請求項1】
多階調で量子化されたデジタルデータに係る1次元又は2次元のアナログデータが入力される入力部と、
この入力されたアナログデータをn(nは前記アナログデータの次数よりも高い次数,以下同じ。)次元アナログデータに写像変換する第1の写像変換部と、
初期値が入力されることで乱数を発生する乱数発生部と、
この乱数発生部において発生された乱数を用いてn次元直交系列を生成する多次元直交系列発生部と、
前記多次元直交系列発生部から前記n次元直交系列を読みだして、前記第1の写像変換部によって写像変換されたn次元アナログデータを、前記n次元直交系列を用いてn次元直交変換することにより暗号化した変換データを生成する多次元直交変換部と、
前記初期値を鍵として前記乱数発生部が前記乱数の発生を再現し,前記再現された乱数を用いて前記多次元直交系列発生部が前記n次元直交系列を再生成し,前記再生成されたn次元直交系列を用いて前記変換データをn次元直交逆変換することにより前記n次元アナログデータを復元する多次元直交逆変換部と、
前記n次元アナログデータを前記1次元又は2次元のアナログデータに写像変換する第2の写像変換部と、
を有することを特徴とするアナログ符号化システム。
【請求項2】
多階調で量子化されたデジタルデータに係る1次元又は2次元のアナログデータが入力される入力部と、
この入力されたアナログデータをn次元アナログデータに写像変換する第1の写像変換部と、初期値が入力されることで乱数を発生する乱数発生部と、
この乱数発生部において発生された乱数を用いてn次元直交系列を生成する多次元直交系列発生部と、
前記多次元直交系列発生部から前記n次元直交系列を読みだして、前記第1の写像変換部によって写像変換されたn次元アナログデータを、前記n次元直交系列を用いてn次元直交変換することにより暗号化した変換データを生成する多次元直交変換部と、
前記変換データを量子化によって前記変換データを圧縮して圧縮データを生成するデータ圧縮部と、
前記初期値を鍵として前記乱数発生部が前記乱数の発生を再現し,前記再現された乱数を用いて前記多次元直交系列発生部が前記n次元直交系列を再生成し,前記再生成されたn次元直交系列を用いて、前記圧縮データをn次元直交逆変換することにより前記n次元アナログデータを復元する多次元直交逆変換部と、
前記n次元アナログデータを前記1次元又は2次元のアナログデータに写像変換する第2の写像変換部と、を有することを特徴とするアナログ符号化システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は離散多値のアナログ情報の保護を考慮したアナログ符号化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユビキタスネットワーク社会を迎えつつあり、情報伝送や保存においては、音声や動画像などのマルチメディア情報(多値情報)を他人から容易に見られないように保護でき、雑音などに対する耐性が強く、しかも品質をできるだけ保障できるようなデータ圧縮可能な符号化方式やシステムが益々必要となっている。
このような状況下において、近年様々な符号化方式やシステムに関する発明が開示されている。
例えば、特許文献1には、情報秘匿システムの一つである単位ブロック毎に変換を行なうブロック型の符号変換方式において、次数の小さいラテン方陣Lを複数並べて段を構成し、この段を複数設け、前段の各ラテン方陣Lから後段の少なくとも二つのラテン方陣Lに変換したデータを入力させて、入力データAの各ビットが出力データBの全てのビットに影響を与えるようにして秘匿性を高めた符号化方式の開示がある。
この符号化方式によれば、秘匿性の高い符号変換を簡単にかつ正確に得ることができる。
【0003】
また、特許文献2には、画像データに低域フィルタ及び高域フィルタを用いてフィルタリングしてフィルタ係数を生成し、当該生成したフィルタ係数を量子化して量子化係数を生成し、その量子化係数を所定の符号化方式で符号化 処理して算術符号データを生成した後、当該算術符号データの少なくとも一部にスクランブル処理を施すと共に、算術符号データに基づいて符号化処理に関する所定の符号化情報を生成し、当該生成した符号化情報を格納して生成したヘッダデータにスクランブル処理を施した算術符号データを付加してパケットデータを生成する符号化装置が開示されている。
このような符号化装置によれば、算術符号データにスクランブル処理を施す分、量子化係数を符号化したときのデータ量の増加を防止することができ、画像データの圧縮率の低下を防止できる。
【0004】
さらに、特許文献3には、コンテンツのストリームを記録再生するストリーム記録再生装置が開示されているが、そのストリーム記録再生装置において、アナログ放送波等によって伝送されて入力されたアナログ映像音声信号からディジタルストリームを生成する符号化手段が開示されている。
このようなアナログからデジタルに変換することによって、圧縮化あるいは多重化が可能となっている。
【0005】

【特許文献1】特開2000-19957号公報
【特許文献2】特開2002-135594号公報
【特許文献3】特開2003-163889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1乃至3に開示された発明においては、いずれもアナログ情報(離散多値情報)を対象とし、情報保護と信頼性向上を念頭に入れた符号化方式では、アナログ情報をデジタル情報に直し、それをスクランブル技術、暗号化技術、誤り訂正符号化技術などを組み合わせた符号化方式が一般的である。また、データ圧縮を行う場合は高い周波数成分をカットするような離散コサイン変換やウエーブレット変換を組み込んだシステムとなる。
また、アナログ情報は、ある一部が雑音、妨害、加工などによって大きく変形することよりも、全体的に少しずつ異なっているほうが、その品質は保障される。しかし、上記のようにデジタルに一度直して符号化する方式は、最上位ビットと最下位ビットにおける情報量のばらつきも生じるので、品質を保障し、かつ効率のよいアナログ符号化法とは言えない可能性があるという課題があった。
【0007】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、多次元直交系列を使用した多次元直交変換を実行することにより、簡単な構成で容易に取り扱うことができ、しかも高い品質を担保可能で秘匿性が高いアナログ符号化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載のアナログ符号化システムにおいては、上述の課題を解決するため、多階調で量子化されたデジタルデータに係る1次元又は2次元のアナログデータが入力される入力部と、この入力されたアナログデータをn(nはアナログデータの次数よりも高い次数,以下同じ。)次元アナログデータに写像変換する第1の写像変換部と、初期値が入力されることで乱数を発生する乱数発生部と、この乱数発生部において発生された乱数を用いてn次元直交系列を生成する多次元直交系列発生部と、多次元直交系列発生部からn次元直交系列を読みだして、第1の写像変換部によって写像変換されたn次元アナログデータを、n次元直交系列を用いてn次元直交変換することにより暗号化した変換データを生成する多次元直交変換部と、初期値を鍵として乱数発生部が乱数の発生を再現し,再現された乱数を用いて多次元直交系列発生部がn次元直交系列を再生成し,再生成されたn次元直交系列を用いて変換データをn次元直交逆変換することによりn次元アナログデータを復元する多次元直交逆変換部と、n次元アナログデータを1次元又は2次元のアナログデータに写像変換する第2の写像変換部とを有するものである。
【0009】
また、請求項2に記載のアナログ符号化システムにおいては、多階調で量子化されたデジタルデータに係る1次元又は2次元のアナログデータが入力される入力部と、この入力されたアナログデータをn次元アナログデータに写像変換する第1の写像変換部と、初期値が入力されることで乱数を発生する乱数発生部と、この乱数発生部において発生された乱数を用いてn次元直交系列を生成する多次元直交系列発生部と、多次元直交系列発生部からn次元直交系列を読みだして、第1の写像変換部によって写像変換されたn次元アナログデータを、n次元直交系列を用いてn次元直交変換することにより暗号化した変換データを生成する多次元直交変換部と、変換データを量子化によって変換データを圧縮して圧縮データを生成するデータ圧縮部と、初期値を鍵として乱数発生部が乱数の発生を再現し,再現された乱数を用いて多次元直交系列発生部がn次元直交系列を再生成し,再生成されたn次元直交系列を用いて、圧縮データをn次元直交逆変換することによりn次元アナログデータを復元する多次元直交逆変換部と、n次元アナログデータを1次元又は2次元のアナログデータに写像変換する第2の写像変換部とを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアナログ符号化システムにおいては、乱数発生関数に初期値を与えて乱数を発生させ、その乱数を基に多次元直交系列を生成させて、それを用いてアナログデータに多次元直交変換を施し、これを逆変換する際に、先の乱数発生関数の初期値を鍵としてアナログデータに復元する。受信者側では予め送信者側と同一の乱数発生関数を備えておけば、乱数発生関数の初期値さえ入手すれば、容易に乱数の発生の再現を実行することができる。このような乱数発生関数とその初期値を利用することで、鍵の送受信を容易にすることができるとともに、受信側の逆変換によるアナログデータの復元も容易となる。
さらに、多次元直交変換を施すことによれば、アナログデータの一部に雑音や妨害要素あるいは加工要素が含まれたとしても、それらは変換後のデータに均一に分散され、しかも逆変換される場合にも均一に分散されたままとなるため、例えば音声データのような一次元データや画像データのような二次元データの場合には、雑音などが分散されて復元されるので耳や目にはその雑音などが感知できない程度にまで低減することができる。すなわち、局所的に雑音などが現れるよりも一定の品質が担保される。
【0011】
また、特に請求項2に記載のアナログ符号化システムにおいては、多次元直交変換後に、圧縮データを生成することができるので多量のデータの送信を行なうことが可能であり、しかも前述のとおり品質の劣化は復元データの全体に亘るため、全体的には一定の品質を担保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態に係るアナログ符号化システムについて図1乃至図8を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るアナログ符号化システムの構成図である。アナログ符号化システムは、大きく入力部1、演算部2、出力部3及びデータベース4から構成されている。入力部1は、データベース4に格納されている各種データが入力されたり、演算部2に対してデータを入力する際に使用されるユーザーとのインターフェースである。
データベース4には、秘匿性の高いアナログ情報である生アナログデータ12が格納されている。この生アナログデータ12の例としては、一次元データとしては音声データ、二次元データとしては画像データがある。また、動画像は静止画像が時間的に連続するものであるため三次元データとして認識される場合がある。この生アナログデータ12は、予めデータベース4に格納されてもよいが、入力部1から演算時に演算部2の第1写像変換部5に入力されてもよい。
生アナログデータ12は演算部2に含まれる第1写像変換部5によって写像変換され、n次元アナログデータ13となる。例えば、一次元の音声データや2次元の画像データを3次元のアナログデータに写像変換されたものである。n次元のnは、秘匿性を考慮すれば生アナログデータ12の次元よりも高い次数を表現するものであり、生アナログデータ12が一次元の音声データであれば、nは2次以上となり、生アナログデータ12が二次元の画像データであればnは3次以上となる。但し、一般的には1以上の任意の数を意味するものである。図1では、n次元アナログデータ13もデータベース4に格納されているが、格納されずに第1写像変換部5に留めておいてもよい。
【0013】
データベース4には、乱数発生関数データ15が格納されており、同じく格納されている乱数発生関数初期値14を用いることによって、乱数を発生させることができる。具体的には、演算部2の乱数発生部7によって乱数発生関数初期値14と乱数発生関数データ15が読み出され、乱数発生関数初期値14によって乱数を発生させる。但し、乱数発生関数データ15は予めデータベース4に格納することなく乱数発生部7の内部に格納しておいてもよい。また、乱数発生関数初期値14もデータベース4に予め格納されるのではなく、入力部1を介して乱数発生部7に入力されるようにしておいてもよい。
発生した乱数は演算部2の多次元直交系列発生部6によって乱数発生部7から読み出され、多次元直交系列データ16が一義的に生成される。生成された多次元直交系列データ16はデータベース4に格納されるようにしておくとよい。また、この多次元直交系列データ16は、多次元直交変換部8によってデータベース4から読み出され変換データ17に変換される。この変換データ17もデータベース4に格納される。さらに、演算部2の圧縮部9は、情報格納装置4から変換データ17を読みだして圧縮し、圧縮データ18を生成し、データベース4に格納する。圧縮部9は、多量のデータを送信などする際に設けられるものであるが、多量で重いデータを取り扱う必要がない場合には、必ずしも設けなくともよい。

【0014】
変換データ17あるいは圧縮データ18は、演算部2の多次元直交逆変換部10によって逆変換される。この逆変換の内容については後述するが、逆変換の際には、先に多次元直交変換部8で用いられた多次元直交系列データ16が必要となる。そこで、この多次元直交系列データ16を生成する際に、先の乱数発生関数初期値14を用いて乱数の発生を再現して多次元直交変換時の多次元直交系列を再生成する。
多次元直交逆変換部10によって逆変換されて得られたn次元アナログデータは、さらに第2写像変換部11によって生アナログデータに変換される。
この演算部2における演算結果をはじめとして、入力部1から入力されるデータやデータベース4に格納されているデータは、出力部3によって他の装置やシステムに対して出力されたり、あるいは出力部3自身に表示される。
【0015】
なお、データベース4には、演算部2内部で演算されたデータがそれぞれ格納されるが、演算部2の各要素において演算した後にデータベース4に格納されることなく、下流側の要素に送信されるようにしておいてもよいし、下流側にデータ送信を行なうと同時に並行してデータベース4に格納するようにしてもよい。
【0016】
次に、本発明の第2の実施の形態について図2を参照しながら説明する。図2は、第2の実施の形態に係るアナログ符号化システムの構成図である。図2において、図1と同一部分については同一の符号を付し、その構成の説明は省略する。
本実施の形態においては、送信側演算部19において、変換データ17あるいは圧縮データ18を生成し、それを受信側演算部20へ送信して復元するものである。従って、多次元直交変換部8によって生成された変換データ17あるいは圧縮部9によって生成された圧縮データ18は送信部21によって、受信側演算部20の受信部22へ送信される。
受信部22は、受信した変換データ17あるいは圧縮データ18を多次元直交逆変換部10によって復元するが、その際に用いられる多次元直交系列データ16が必要となる。多次元直交系列データ16は、受信側演算部20の乱数発生部24によって発生される乱数を用いて、多次元直交系列発生部23によって生成される。乱数の発生には、乱数発生関数データ26が用いられるが、その乱数発生関数の初期値を鍵とするため、この初期値を送信部21から受信部22へ伝送する必要がある。あるいは、乱数発生関数とその初期値を鍵として伝送してもよい。

【0017】
受信部22によって受信された乱数発生関数の初期値は鍵とされ、乱数発生部24に送信され、さらに乱数発生部24は、第1データベース25から乱数発生関数データ26を読み出して乱数を発生させる。このときに発生される乱数は、送信側演算部19によって発生された乱数と値、順序において同じものとなる。
乱数発生部24で発生された乱数を用いて多次元直交系列発生部23では、送信側演算部19と同様に多次元直交系列を生成する。さらに、第2データベース27に格納された圧縮データ28あるいは変換データ29を読み出して受信側演算部20の多次元直交逆変換部10では逆変換を実施する。この逆変換によって、n次元アナログデータ30が得られ、このn次元アナログデータ30は第2データベース27に格納される。さらに、第2写像変換部11は、第2データベース27をデータベース4から読み出して写像変換を行い、送信側演算部19によって写像変換された生アナログデータ31を生成し、第2データベース27に格納する。なお、第2データベース27には、受信部22で受信された圧縮データ28及び変換データ29が格納されているが、必ずしも格納せずとも、受信部22で受信されたそれぞれを多次元直交逆変換部10が受信して逆変換を実行してもよい。また、多次元直交逆変換部10によって生成される多次元直交系列については、第2データベース27に格納されていないが、生成した後に第2データベース27に格納するようにしてもよい。
【0018】
このように構成される本願発明の実施の形態における多次元直交系列を用いた多次元直交変換の方法について詳細に説明する。
次元数をn、周期N=N・・・Nとする多次元(n次元)複素系列aを、式(1)のように与える。
【0019】
【数1】
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【0020】
ただし、系列要素の添え字iは、各次元の周期Nを法とする整数値であり、式(2)を示す。
【0021】
【数2】
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【0022】
また、系列の要素の2乗和は式(3)として議論する。
【0023】
【数3】
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【0024】
多次元(n次元)直交系列aは、位相シフトτ・・・τにおける周期自己相関関数が式(4)で表される性質を持つ系列である。
【0025】
【数4】
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【0026】
つまり、周期自己相関関数が位相が完全に一致しているときは、その要素の大きさ(電力)に比例したピーク値を取り、少しでも不一致であれば、零となるような1次元以上のベクトルであらわされる系列である。ただし、*は複素共役を示し、式(5)に示される関係を満足するものである。
【0027】
【数5】
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【0028】
ここで、簡単に議論するために、式(6)としておいた周期N=Nのn次元直交系列で考える。
【0029】
【数6】
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【0030】
実際には、各次元の周期が異なるように拡張することは容易である。
周期N=Nのn次元直交系列の一般解は、式(7)、(8)で表せる。
【0031】
【数7】
JP0004765054B2_000008t.gif

【0032】
とする。
ここで、実数系列となる条件は、式(9)で表せる。
【0033】
【数8】
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【0034】
特別な場合として。周期N=4のn次元2値直交系列が存在し、式(10)で表せる。
【0035】
【数9】
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【0036】
たとえば、周期16の2次元直交系列で、式(11)のように与えられ、2値直交系列も式(12)のように生成させることができる。
【0037】
【数10】
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【0038】
【数11】
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【0039】
また、これらを周期2のn次元2値直交系列に変換することもできる。
さらに、同じようにして、周期2のn次元3値直交系列が発生でき、またそれを周期4のn次元3値直交系列に変換できる。
今、n次元情報を式(13)で示すものとする。
【0040】
【数12】
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【0041】
これらの多次元情報は、一次元情報など、それよりも低次元の情報から容易に作ることができる。ここで、直交系列をもちいることより次の多次元直交変換を定義できる。
【0042】
【数13】
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【0043】
また、多次元直交系列の直交性より、次の逆変換が成り立つ。
【0044】
【数14】
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【0045】
式(15)におけるアスタリスク*は、前述のとおり複素共役を示すものである。
【0046】
図3は、第1の実施の形態において、テキストや音楽などの1次元データを3次元直交系列を用いて直交変換する場合を示す概念図である。図3では、データのみに着目する。図3に示されるように、1次元データ32を多次元直交変換前に何らかの方法により写像し、3次元データ33とし、その後、多次元直交変換を行う。一般には、これらを1次元データに直したりして、加工しやすいデータに符号化し、それを記録したり通信する。また、復号では、逆の操作を行い、容易に情報を取り出すことができる。具体的には、多次元直交逆変換を行い逆変換データ35を得て、さらに写像変換によって1次元データ36を得るものである。
ここで、多次元直交変換は次のような2つの性質を有する。第一に、変換後はどのようなデータでもその出力値はガウス分布に近づくので性質の良いスクランブルが可能であるという性質、第二には、局所的な雑音が入ったとしても逆変換後はその雑音は全体に散らばるので誤差の少ない誤り補正が可能な符号化が実現できるという性質である。
【0047】
本実施の形態においては、直交変換を実施して伝送し、それを復元することによれば、雑音を全体に散らばらせることが可能であるため、局所的な劣化は認められず、全体的に影響が希釈化されるため、全体的には、一定の品質を担保することができる。
さらに、本実施の形態においては、多次元直交系列は無数に存在するのでそれを鍵とすることで、多次元的に情報を複雑に変換できるので秘話性の高い暗号的符号化が可能であると考えられる。
アナログ符号化等の応用には、多次元複素直交系列での直交変換は、実数情報が複素数に変わるために実部と虚部の値を取り扱わなければならない。それゆえ、一般には、複素系列を取り扱うことはデータ量が増え好ましくない。
【0048】
本実施の形態では、鍵となる多次元直交系列を乱数により与えるものである。
式(7)に示すように適当な関数f(λ・・・λ)を与えればよいが、一般には、数多くの異なる関数を与えるのは容易でない。特に実数直交系列である条件式(9)を満たす関数を見つけることは容易でない。ここでは、以下のように関数を与える。
[1]適当な乱数発生法Gを選択する。例えば、合同法やTLP乱数発生などである。今、Gでの初期条件をxとしてi(i≧1)番目の値をx=G(x,i)とする。ここでは、x(0≦x≦1)とし、式(8)の関係よりy=Nxとして議論することにする。
[2]そのまま、乱数の値yを順に関数f(λ・・・λ)の出力値として決めていけば多次元複素直交系列が簡単に発生できる。ここで、式(9)を満足するように関数を与えれば実数系列となる。以下、式(9)の制限がある多次元実数直交系列を乱数より発生させる方法を述べる。たとえば、式(16)に示すとおりで、
【0049】
【数15】
JP0004765054B2_000016t.gif

【0050】
の順に、
【0051】
【数16】
JP0004765054B2_000017t.gif

【0052】
なので、
【0053】
【数17】
JP0004765054B2_000018t.gif

【0054】
として決めていく。ただし、
【0055】
【数18】
JP0004765054B2_000019t.gif

【0056】
の場合は、yの代わりに0となる。
【0057】
このような例を具体的に示すために図4を参照しながら説明する。図4は、ランダムに多次元実数直交系列を生成する手法を示す概念図であり、上述の理論において、N=3、n=2とする場合を示している。ここで、m~mは乱数発生関数より発生される乱数である。
n=2であることから、λはλとλの2つが存在し、最上行にそのλとλ及び-λと-λ、さらにf(λ,λ)の表示をして、その下の欄にそれぞれ0,1,2を入れると、例えば、2行目のλとλのそれぞれが0の場合は、式(19)から0となる。
また、λが1でλが2の場合、すなわち7行目の場合は、-λと-λは、それぞれ-1と-2となるが、式(17)より-1=(3-1)=2、-2=(3-2)=1となるので、それぞれ2,1が記入されている。このようなλとλの場合には、f(λ,λ)は、f(1,2)となり、これをmとすれば、f(2,1)は、式(18)から-f(1,2)となり、従ってf(2,1)=-mとなる。
【0058】
従って、容易に式(7)で示される多次元直交系列を求めることができる。従って送信側において生成した多次元直交系列は、同じ乱数発生関数を備えた受信側では、乱数の初期値を鍵として、同じ多次元直交系列を生成することが可能である。従って、多次元直交変換は、多次元実数直交系列の鍵として、登録されている中の一つの乱数発生関数とその初期値G(x0, )を与えることで、暗号的アナログ符号化が構築できる。
ここで、さらに多次元直交変換の性質よりデータ圧縮を考える。図5(a)に示すように、先ず、アナログデータを多次元直交変換する。実際には、[0056]で述べたように、アナログデータはn次元アナログデータへ1度変換されそれを直交変換する。ここでは視覚的に見て分かりやすいようにアナログデータは画像を用いて考えることにする。変換データは、スクランブルされてまったく原画像(アナログデータ)と異なっていることが分かるように、直交変換したn次元アナログデータを原画像と同じ2次元データに直したものを載せている。その変換データを荒く量子化することにより情報圧縮するものである。これは図1,2の圧縮部9において実行されるものである。図5(b)では、圧縮されたn次元データを逆変換することより情報データに戻す。このとき、量子化ビット数は、原画像(アナログデータ)に近くすることより、なめらかな画像を得ることができる。
【0059】
多次元直交変換を用いたデータ圧縮を画像に適用すると、データ量が少なく、復号時には視覚的に見て良好な画像が得られると予想された。そこでこの方式の有効性を調べるために、1画素を8ビットで表す図6に示す濃淡画像を用いて4ビットに量子化のみを行った場合と多次元直交変換を適用した場合の画像の比較を行った。多次元直交変換を適用せず量子化した場合を図7に、多次元実数直交系列で変換を行い圧縮した場合を図8に示す。
図7と図8は、一見同じように見えるが、詳細に画像を検討した結果、次の2点の知見が得られた。第1に、量子化のみを行った場合は,量子化ビットが減るにつれ,段差が目立つ画像となること、また、第2に、直交変換を適用した場合は,量子化ビットが減るにつれ全体的に雑音が現れるものの段差はないことである。
【0060】
以上説明したとおり、本実施の形態に係るアナログ符号化システムにおいては、乱数発生関数に初期値を与えて乱数を発生させ、それを用いて容易に多次元直交系列を生成させ、さらにそれを用いてアナログデータに多次元直交変換を施し、これを逆変換する際に、先の乱数発生関数の初期値を鍵としてアナログデータに復元することができる。従って、受信者側では予め送信者側と同一の乱数発生関数を備えておき、乱数発生関数の初期値さえ入手すれば、容易に乱数の発生の再現を実行することができる。このような乱数発生関数とその初期値を利用することで、鍵の送受信を容易にすることができるとともに、受信側の逆変換によるアナログデータの復元も容易となる。
また、多次元直交変換は、アナログデータの一部に雑音や妨害要素あるいは加工要素が含まれたとしても、それらは変換後のデータに均一に分散される性質を備えており、しかも逆変換される場合にも均一に分散されたままとなるため、雑音などが感知できない程度にまで低減させることができ、一定の品質が維持することができる。
さらに、圧縮部を備えることによれば、多次元直交変換後に、圧縮データを生成することができるので多量のデータの送信を行なうことが可能であり、しかも前述のとおり品質の劣化は復元データの全体に亘るため、全体的には一定の品質を担保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るアナログ符号化システムは、秘匿性の高いネットワーク構築や、音声、画像、情報信号などを伝送する際の暗号化システムとして金融システム、情報通信システム、行政システム、移動体通信システム、放送システム、セキュリティシステム、防衛システムなど汎用性の高いニーズが見込めるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1の実施の形態に係るアナログ符号化システムの構成図である。
【図2】第2の実施の形態に係るアナログ符号化システムの構成図である。
【図3】第1の実施の形態において、テキストや音楽などの1次元データを3次元直交系列を用いて直交変換する場合を示す概念図である。
【図4】ランダムに多次元直交系列を生成する手法を示す概念図である。
【図5】(a)、(b)は、情報データを直交変換した後に量子化によって圧縮し、復元した後に直交逆変換を施す場合の概念図である。
【図6】1画素を8ビットで表現する画像の一例である。
【図7】多次元直交変換を適用せず量子化して4ビットとした場合の画像である。
【図8】多次元直交変換を適用して量子化して4ビットとした場合の画像である。
【符号の説明】
【0063】
1…入力部 2…演算部 3…出力部 4…データベース 5…第1写像変換部 6…多次元直交系列発生部 7…乱数発生部 8…多次元直交変換部 9…圧縮部 10…多次元直交逆変換部 11…第2写像変換部 12…生アナログデータ 13…n次元アナログデータ 14…乱数発生関数初期値 15…乱数発生関数データ 16…多次元直交系列データ 17…変換データ 18…圧縮データ 19…送信側演算部 20…受信側演算部 21…送信部 22…受信部 23…多次元直交系列発生部 24…乱数発生部 25…第1データベース 26…乱数発生関数データ 27…第2データベース 28…圧縮データ 29…変換データ 30…n次元アナログデータ 31…生アナログデータ 32…1次元データ 33…3次元データ 34…変換データ 35…逆変換データ 36…1次元データ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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