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明細書 :サバイビン由来のHLA-A24結合性癌抗原ペプチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4602006号 (P4602006)
公開番号 特開2006-008638 (P2006-008638A)
登録日 平成22年10月8日(2010.10.8)
発行日 平成22年12月22日(2010.12.22)
公開日 平成18年1月12日(2006.1.12)
発明の名称または考案の名称 サバイビン由来のHLA-A24結合性癌抗原ペプチド
国際特許分類 C07K   7/06        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C12N   5/07        (2010.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61K  39/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI C07K 7/06 ZNA
C07K 14/47
C12N 5/00 202
A61K 37/02
A61K 39/00 H
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2004-191478 (P2004-191478)
出願日 平成16年6月29日(2004.6.29)
審査請求日 平成19年4月4日(2007.4.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】307014555
【氏名又は名称】北海道公立大学法人 札幌医科大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 昇志
【氏名】鳥越 俊彦
【氏名】廣橋 良彦
【氏名】井手之上 里美
【氏名】小林 淳一
個別代理人の代理人 【識別番号】100082005、【弁理士】、【氏名又は名称】熊倉 禎男
【識別番号】100084009、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 信夫
【識別番号】100084663、【弁理士】、【氏名又は名称】箱田 篤
【識別番号】100093300、【弁理士】、【氏名又は名称】浅井 賢治
【識別番号】100119013、【弁理士】、【氏名又は名称】山崎 一夫
審査官 【審査官】高堀 栄二
参考文献・文献 特開2002-284797(JP,A)
特表2006-517529(JP,A)
Cancer Res.,Vol.61,No.3(2001)p.869-872
Clin.Cancer Res.,Vol.8,No.6(2002)p.1731-1739
調査した分野 CA/REGISTRY(STN)
BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる、HLA-A24抗原と結合して癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導しうるペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドを含む癌ワクチン。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチドを含む抗癌剤。
【請求項4】
癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞をインビトロ誘導するための請求項1に記載のペプチドの使用。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチドにより誘導された細胞傷害性T細胞。
【請求項6】
請求項に記載の細胞傷害性T細胞を含む抗癌剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞(以下、CTLという)を誘導することができるペプチドに関する。
また本発明は、前記ペプチドを含む癌ワクチン及び抗癌剤に関する。
更に本発明は、癌細胞を標的とするCTLを誘導するための前記ペプチドの使用、得られたCTL及び前記CTLを含む抗癌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における免疫学と分子生物学の進歩は、腫瘍免疫の進歩に多大の影響を与えている。ヒトでインフルエンザウイルス感染が起きた場合に、その感染に対して免疫が成立して感染症から離脱するという事象は以下の細胞性免疫により説明することができる。インフルエンザウイルスに感染した上皮細胞は、その細胞表面にある主要組織適合抗原複合体HLA分子上にウイルスゲノム由来の9~10のポリペプチドを提示する。このHLA-ウイルスペプチド複合体を提示する感染細胞は強烈なアロジェニック反応を惹起し、感染細胞は末梢血中に存在するCD8陽性CTLにより特異的に認識され、積極的に排除される。この細胞性免疫のメカニズムは自己の細胞が腫瘍化して生じた癌細胞に対しても同様に働くと理解される。このことは、ベルギーのThierry Boonらによる悪性黒色腫からの腫瘍抗原MAGE遺伝子の単離により証明された(例えば、非特許文献1参照)。
T細胞が認識する癌抗原の同定方法としては、T細胞を用いてヒト癌由来のcDNAライブラリーをスクリーニングする方法が既に開発されており、この方法を用いて前記のMAGE遺伝子が単離された。それ以後、悪性黒色腫を初めとした癌細胞表面上のクラスI分子に提示されてT細胞に認識される癌由来癌抗原ペプチドが複数同定され、これらのいくつかを用いた臨床治験が開始されており、既に一定の成果が得られている。例えば、癌患者の血清中に存在する抗体により認識される分子として食道癌より同定されたNY-ESO-1分子は、その合成ペプチドがCTLの誘導能を有することが認識されている(例えば、非特許文献2及び3参照)。
【0003】

【非特許文献1】Van der Bruggenら、Science, 254, 1643-1647 (1991)
【非特許文献2】Chen, YT.ら,Proc. Natl. Acad. USA, 94, 1914-1918 (1997)
【非特許文献3】Jager, E.ら,J. Exp. Med., 187, 265-270(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、臨床的に癌の大部分を占める大腸癌、胃癌、乳癌、肺癌、膀胱癌等の上皮癌では癌抗原がほとんど同定されておらず、癌抗原を標的とした免疫療法は確立されていない。そこで本発明は、癌の免疫療法に使用しうる癌ワクチン及び抗癌剤を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、免疫学的なヒト癌拒絶が主にCTL、特にCD8(+)CTLにより担われていることに着目した。CD8(+)CTLは癌細胞上の主要組織適合抗原複合体(ヒトではHLA)と当該HLA上に提示された癌抗原ペプチドとからなる複合体を認識して活性化する。そして、活性化されたCTLはその細胞表面上のT細胞抗原レセプターを介して癌細胞を認識し、これを攻撃する。したがって、癌抗原ペプチドが同定されれば、これを癌ワクチン及び抗癌剤として使用し、CTLを効率的に誘導して、癌を予防及び治療することができる。
サバイビン(Survivin)はアポトーシスインヒビター(IAP)ファミリーに属するタンパク質であり、強い抗アポトーシス能を有する。サバイビンは肺癌、膀胱癌等の多くの癌で発現するが、正常組織での発現は胎児組織と成人胸腺、精巣等に限られていることが報告されている(Ambrosini, G.ら,Nat. Med., 3, 917-921 (1997))。
本発明者等は、種々のサバイビン由来のペプチドについて癌抗原性、すなわちCTL誘導能について鋭意検討を重ね、CTLを誘導することができる特定のペプチドを見出している(特開2002-284797)。本発明者等がさらに検討を重ねたところ、サバイビン遺伝子によりコードされる142個からなるアミノ酸配列内にもHLA-A24結合モチーフが存在し、このなかの特定のペプチドがCTLを誘導することができることを見いだした。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、HLA-A24抗原と結合して癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導しうるペプチド;
(2)配列番号1に示されるアミノ酸配列の第2位がチロシン、フェニルアラニン、メチオニン及びトリプトファンから選択されるアミノ酸残基に置換され、及び/又は配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端のアミノ酸残基がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン及びメチオニンから選択されるアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、HLA-A24抗原と結合して癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導しうるペプチド;
(3)前記(1)又は(2)のペプチドを含む癌ワクチン;
(4)前記(1)又は(2)のペプチドを含む抗癌剤;
(5)癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導するための前記(1)又は(2)のペプチド使用;
(6)前記(1)又は(2)のペプチドにより誘導された細胞傷害性T細胞及び、
(7)前記(6)の細胞傷害性T細胞を含む抗癌剤
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のペプチドは、本発明のペプチドを提示していると考えられるHLA-A24陽性サバイビン陽性の癌細胞を傷害するCTLを誘導することができる。HLA-A24の発現率は高く、欧米人では20~30%、日本人では50%以上が陽性である。したがって、本発明の癌抗原ペプチドは世界中で、さまざまな種類のサバイビン陽性の悪性腫瘍に対して有用な癌ワクチン及び抗癌剤として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のペプチドは、以下の配列:
Phe Phe Cys Phe Lys Glu Leu Glu Gly Trp(配列番号1)
で示されるアミノ酸配列を含み、HLA-A24抗原と結合して癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導しうるペプチドである。
前記本発明のペプチドは、HLA-A24抗原と結合して癌細胞を標的とする細胞傷害性T細胞を誘導する活性を保持する範囲内で、適宜改変されていてもよい。ここで、アミノ酸残基の「改変」とは、アミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は付加(ペプチドのN末端、C末端へのアミノ酸の付加も含む)を意味し、好ましくはアミノ酸残基の置換が挙げられる。アミノ酸残基の置換に係る改変の場合、置換されるアミノ酸残基の数及び位置は、癌抗原ペプチドとしての活性を有する限り任意であるが、通常、HLA-A24抗原に結合するペプチドの長さが8~11アミノ酸であることから、1個から数個の範囲が好ましい。
当該置換に係るアミノ酸残基の改変においては、HLA-A24抗原に対する結合モチーフ構造を有するペプチドにおける第2位及び/又はC末端のアミノ酸残基の置換が好ましい。
このような本発明の置換に係るペプチドの具体的な態様としては、配列番号1に示されるアミノ酸配列の第2位及び/又はC末端のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列からなるペプチドであって、HLA-A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。
前記置換においては、HLA-A24抗原の結合モチーフ構造を保持するアミノ酸残基への置換が好ましい。すなわち本発明の置換に係るペプチドの好ましい態様としては、配列番号1に示されるアミノ酸配列の第2位がチロシン、フェニルアラニン、メチオニン及びトリプトファンから選択されるアミノ酸残基に置換され、及び/又は配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端のアミノ酸残基がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン及びメチオニンから選択されるアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列からなり、HLA-A24抗原と結合してCTLにより認識されるペプチドが挙げられる。
【0008】
本発明のペプチドの同定は、以下の工程:
(1)ヒト主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスIであるHLA-A24の
結合モチーフに対応する配列を有するサバイビン由来ペプチドを提供する工程、
(2)前記のペプチドを、HLA-A24を発現する抗原提示細胞に添加しHLA-A24により前記ペプチドを提示している抗原提示細胞を得る工程、
(3)前記抗原提示細胞でT細胞を刺激してCTLを誘導する工程、及び、
(4)誘導されたCTLの癌細胞傷害能を測定する工程、
を含む方法により行うことができる。
本発明のペプチドはアミノ酸数が10と小さいので、一般的なアミノ酸の化学合成法、例えばFmoc法により合成することができる。市販のアミノ酸合成装置を使用して合成することもできる。また、本発明のペプチドはサバイビンに由来するので、癌患者の癌細胞から文献(Suzuki, K.ら,J. Immunol., 163, 2783-2791 (1999))に記載の方法に従いサバイビンを単離して、該当するペプチドを得ることもできる。
【0009】
本発明のペプチドを使用して癌細胞を標的とするCTLを誘導することができる。誘導されたCTLは癌細胞を認識して、これを攻撃する。したがって、本発明のペプチドは癌ワクチン及び抗癌剤として使用することができる。
本発明の癌ワクチン及び抗癌剤を適用しうる癌は、本発明のペプチドをHLA-A24により提示している癌細胞からなる癌、例えば上皮癌である。上皮癌としては、肺癌、胃癌、大腸癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、乳癌等が挙げられる。また、サバイビンを発現している非上皮癌、例えば腎細胞癌、肝細胞癌、悪性リンパ腫、骨肉腫、滑膜肉腫等が挙げられる。
本発明のペプチドを癌ワクチン及び抗癌剤として使用する場合、本発明のペプチドは、それ自身で又は補助剤と共に使用することができ、更に医薬的に許容しうる担体を適宜含有させることができる。
補助剤としては、免疫応答の強化を目的とするアジュバント、例えばフロイドの不完全(完全)アジュバント、アルミニウムアジュバント等が挙げられる。
医薬的に許容しうる担体としては、例えばPBS、蒸留水等の希釈剤、生理食塩水等が挙げられる。
本発明の癌ワクチン及び抗癌剤は、当該技術分野において周知の方法により、液剤、油剤、エマルジョン、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、錠剤、顆粒剤、固形剤等の形態にすることができる。
本発明の癌ワクチン及び抗癌剤は、その使用形態に応じて経口、非経口又は経皮投与することができる。例えば、静注投与、筋注投与、皮下投与、皮内投与等が挙げられる。本発明のペプチドの投与量は、通常、患者の体重、疾患の性質及び状態に依存して変化するが、成人に使用する場合、1日あたり最大で5~10mgである。例えば、成人癌患者に皮下注射により使用する場合、1週間あたり0.1~10mgであり、好ましくは100~1000μgである。
【0010】
また、本発明のペプチドを、癌細胞を標的とするCTLを誘導するために使用することができる。誘導は、例えば文献(Nabeta, Y.ら,Jpn. J. Cancer Res, 91, 616-621 (2000))に記載の方法に従い行うことができる。
具体的には以下の工程:
HLA-A24を発現している細胞を提供する工程、
前記細胞に本発明のペプチドを添加して、HLA-A24上に提示させる工程、
前記ペプチドをHLA-A24により提示している細胞でT細胞を刺激し、前記T細胞を癌細胞標的CTLへ誘導する工程、
を含む方法を使用することができる。
HLA-A24を発現する細胞は癌患者から採取したものでもよいが、非HLA-A24発現細胞に、HLA-A24をコードする遺伝子を導入して作成してもよい。
得られたCTLは癌細胞を標的とするので、これを抗癌剤として使用することができる。この場合、前記の本発明のペプチドを含む抗癌剤と同様に、適宜医薬的に許容しうる担体を含み、かつ種々の形態をとることができる。
本発明のCTLを含む抗癌剤は、本発明のペプチドを含む癌ワクチン及び抗癌剤と同様に非経口投与することができる。
本発明のCTLの投与量は、通常、患者の体重、疾患の性質及び状態に依存して変化するが、成人に使用する場合、1日あたり最大で5×109個である。例えば、成人癌患者に静脈内注射により使用する場合、1週間あたり1×107個~5×109個であり、好ましくは1×108個~1×109個である。
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0011】
実施例1 本発明のサバイビン由来癌抗原ペプチドの製造
以下のアミノ酸配列:
Phe Phe Cys Phe Lys Glu Leu Glu Gly Trp(配列番号1)
を有するペプチドを合成した。ペプチドは、9-フルオレニルメチルオキジカルボニル(Fmoc)戦略に基づいて固相同時多重ペプチド合成機PSSM-8(島津製作所)を使用して合成し、次いでC18逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(Millipore)により精製した。ペプチドの純度及び同一性は、それぞれ分析用HPLC及び質量分析により測定した。ペプチドを、ジメチルスルホキシド中に濃度1.5mg/mlで溶解し、-80℃で保存した。
【0012】
実施例2 本発明のサバイビン由来癌抗原ペプチドのHLA-A24結合性
T2-A24細胞はヒトリンパ芽球様細胞T2細胞にHLA-A2402遺伝子を導入して発現させた細胞株である。この細胞の細胞表面には低レベルのHLA-A24分子が発現しており、HLA-A24特異的単クローン抗体とFlow cytometerを用いて検出することができる。発現レベルは、mean fluorescence intensity(MFI)として定量化される。この細胞に試験管内で合成ペプチドを添加すると、添加したペプチドがHLA-A24分子と結合する場合、結合親和性と相関して細胞表面HLA-A24発現レベルが増加する。この実験系を用いて、実施例1で製造した本発明のサバイビン由来癌抗原ペプチド(サバイビンCペプチド)のHLA-A24結合親和性を解析した。
T2-A24細胞にサバイビンCペプチドまたはHLA-A24と結合することが既に証明されている3種類のペプチド(サイトメガロウイルスCMV-pp65由来ペプチド、エイズウイルスHIV-env由来ペプチド、サバイビン2Bペプチド)、HLA-A24とは結合しないペプチド(VSVウイルス由来VSV8ペプチド)の各ペプチドを終濃度100μg/mlとなるように添加した。その直後の細胞表面HLA-A24発現レベルを単クローン抗HLA-A24抗体とFITC標識抗マウスIgG抗体とで染色し、Flow cytometer (FACScan, Becton Dickinson)で解析した。発現レベルはMFI値によって定量化し、
(MFI shift)=(ペプチド添加後のMFI値)-(ペプチド添加前のMFI値)
として、発現変化の程度を定量化した。
図1に示すように、本発明のサバイビンCペプチドは、HIV-envペプチドにほぼ匹敵する程度の結合親和性を有している。
【0013】
実施例3 本発明のサバイビン由来癌抗原ペプチドを用いたCTLのin vitro誘導
ヒトの末梢血とフィコール・コンレイ密度勾配中で遠心分離して末梢血単核球(PBMC)を集め、次いで接着細胞と非接着細胞とに分離した。接着細胞をAIM-V(Gibco Co.)中、100ng/mlのGM-CSF(Novartis Pharma ceuticals)及び10IU/mlのIL-4(小野薬品)と共にインキュベートした。この細胞を抗原提示細胞(APC)として使用した。非接着細胞をAIM-V中、30~100IU/mlの組換えIL-2(味の素)と共にインキュベートした。5~6日目に、本発明のペプチド(終濃度30μg/ml)をAPCに添加し、放射線を照射した後、このAPCと自家非接着細胞から分離したCD8陽性細胞とを、IL-2(武田薬品工業)を終濃度50~100IU/mlで添加したAIM-V培養液中で共培養した。14日目以後はT細胞マイトジェンであるPHAで刺激した自家PHAブラスト(PHA刺激T細胞)に本発明のペプチド(終濃度30μg/ml)を添加し、放射線を照射した細胞をAPCとして用い、7日毎にCD8陽性細胞を刺激した。刺激毎に、培養に50~100IU/mlのIL-2を含む新鮮培地を追加した。28日目(4回刺激後)のCTLを以下の活性試験に使用した。
【0014】
実施例4 本発明のペプチドを用いて誘導されたCTLの細胞傷害性
(1)試験方法
CTLの細胞傷害能を51Cr細胞傷害試験により評価した。CTLの標的細胞を100μCiのクロム酸ナトリウム(51Cr)を用いて37℃で2時間標識し、洗浄し、再懸濁した。試験ペプチドが提示された標識標的細胞は、前記の標的細胞(5×105細胞/ml)を51Crで標識し、30μg/mlの試験ペプチドと室温で2時間インキュベートすることにより得た。エフェクター細胞(CTL)をV字底マイクロタイタープレートCostar3894(Corning Incorporated)の各ウェルに入れ、ここに前記標識標的細胞を濃度5×103細胞/ウェルで添加し、容量0.2mlとした。6時間のインキュベート後、0.1mlの上清を集め、自動化ガンマカウンター(LKB Wallac)により51Crの放出を測定した。測定は3重に行い標準偏差を計算した。特異的細胞傷害能の百分率は、特異的51Cr放出の百分率を下記の式:
[(実験値)-(自発的放出値)/(最大放出値)-(自発的放出値)]×100
を用いて計算することにより決定した。自発的放出値は、標的細胞をエフェクター細胞の非存在下で単独インキュベートしたときの放出値より得た。最大放出値は界面活性剤である10%Nonidet-P40(ナカライケミカルCo.)と共にインキュベートしたときの最大放出量により得た。
【0015】
(2)CTLのペプチド特異的細胞傷害性
1名のHLA-A24陽性の乳癌患者Aの末梢血を用いて、実施例3と同様の方法により本発明のペプチドを用いてCTLを誘導した。
CTLの標的細胞として、HLA-A2402遺伝子を持っていないT2細胞株(ATCCより入手)にHLA-A2402遺伝子を導入し、HLA-A24分子を細胞表面に発現させたT2-A24細胞と、同じくHLA-A2402遺伝子を持っていないC1R細胞株(ATCCより入手)にHLA-A3101遺伝子を導入したC1R-A31細胞、HLAを全く発現していないK562細胞を用いた。前記(1)の試験法にしたがい、各標的細胞に試験ペプチドを添加して標的細胞上にペプチドを提示させ、これを試験に使用した。試験ペプチドには、本発明のサバイビンCペプチドの他に、HLA-A24によって提示される滑膜肉腫抗原SYT-SSXペプチドを用いた。
CTLの51Cr細胞傷害試験の結果を図2-Aに示す。縦軸は標的細胞の融解の百分率を、横軸は図に示した各標的細胞におけるE/T比(エフェクター細胞(CTL)/標的細胞)を示す。本発明のペプチド(サバイビンC)により誘導されたCTLは、HLA-A24を発現しているT2-A24細胞にサバイビンCペプチドを添加した標的細胞(A24+SUVwild)のみを傷害し、ペプチドを何も添加しない細胞(T2A24, C1RA31)、SYT-SSXペプチドを添加した細胞(T2A24+SYT)、HLA-A24を発現していないC1R-A31細胞にサバイビンCペプチドを添加した細胞(A31+SUVwild)、HLAを発現していないK562細胞はほとんど傷害しなかった。
これらの結果は、本発明のペプチドにより誘導されたCTLが、HLA-A24陽性かつサバイビンCペプチドを細胞表面に有する細胞を特異的に認識し、高い細胞傷害活性を発揮することを示している。
【0016】
(3)本発明のペプチドで誘導されたCTLの癌細胞傷害性
前記(2)の乳癌患者Aの末梢血から本発明のペプチドによって誘導されたCTLについて、さまざまなヒト癌細胞を標的として細胞傷害性を試験した。標的細胞として用いた4種類の癌細胞株はいずれもサバイビン蛋白を発現している癌細胞株であるが、HMC2細胞とHMC1細胞は細胞表面にHLA-A24を発現している癌細胞株で、MCF7細胞とK562細胞はHLA-A24陰性の癌細胞株である。51Cr細胞傷害試験の結果を図2-Bに示す。試験は1種の標的細胞につき、3つのE/T比(10、3及び1)で行った。本発明のペプチドで誘導されたCTLは、HLA-A24陽性の癌細胞株だけを傷害した。
次に前記(2)とは別のHLA-A24陽性の口腔癌患者Bの末梢血を用いて、実施例3と同様の方法により本発明のペプチドを用いてCTLを誘導した。このCTLについて、HLA-A24陽性の癌細胞とHLA-A24陰性の癌細胞とを標的として細胞傷害性を試験した。標的細胞として用いた3種類の癌細胞株はいずれもサバイビン蛋白を発現している癌細胞株である。OSC20細胞はHLA-A24遺伝子を持っていない口腔扁平上皮癌細胞株で、OSC20A24細胞はOSC20細胞にHLA-A2402遺伝子を導入して発現させた細胞株である。51Cr細胞傷害試験の結果を図3に示す。試験は1種の標的細胞につき、3つのE/T比(30、10及び3)の条件で行った。本発明のペプチドで誘導されたCTLは、HLA-A24陽性の癌細胞株だけを傷害した。
これらの実験より、本発明のペプチドにより誘導されたCTLが、細胞外からサバイビンCペプチドを添加した細胞だけでなく、HLA-A24陽性かつ細胞内でサバイビンを発現している癌細胞を特異的に認識し、高い細胞傷害性を発揮することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のサバイビンCペプチドとHLA-A24分子との結合性を試験した結果を表すグラフである。
【図2】本発明のサバイビンCペプチドを用いて誘導した細胞傷害性T細胞(CTL)についての標的細胞傷害試験の結果を示すグラフである。図Aと図Bとは、同じ癌患者から誘導されたCTLを用いて試験された。
【図3】本発明のサバイビンCペプチドを用いて図2とは別の癌患者末梢血から誘導した細胞傷害性T細胞(CTL)についての標的細胞傷害試験の結果を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2