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明細書 :結晶化ガラスおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4714856号 (P4714856)
公開番号 特開2006-027910 (P2006-027910A)
登録日 平成23年4月8日(2011.4.8)
発行日 平成23年6月29日(2011.6.29)
公開日 平成18年2月2日(2006.2.2)
発明の名称または考案の名称 結晶化ガラスおよびその製造方法
国際特許分類 C03C  10/12        (2006.01)
C03C  10/06        (2006.01)
C03C  10/10        (2006.01)
C04B  35/16        (2006.01)
H01B   1/06        (2006.01)
FI C03C 10/12
C03C 10/06
C03C 10/10
C04B 35/16 C
H01B 1/06 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2004-204105 (P2004-204105)
出願日 平成16年7月12日(2004.7.12)
審査請求日 平成19年7月9日(2007.7.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】樽田 誠一
審査官 【審査官】増山 淳子
参考文献・文献 特開昭58-199742(JP,A)
特開昭61-158840(JP,A)
特開平04-254439(JP,A)
D.U.Tulyaganov et al.,Synthesis and characterization of synthetic F-mica containing glass-ceramics in the system SiO2・Al2O3・B2O3・CaO・MgO・Li2O・(K,Na)2O・F,J. Mater. Res.,2004年 4月,Vol.19, No.4,p.1234-1242
調査した分野 C03C 1/00 - 14/00
特許請求の範囲 【請求項1】
重量%で表示して4~5%のLiO、14~20%のMgO、9~13%のAl、48~56%のSiO、14~20%のMgFの組成からなり、イオン伝導性及び透光性を備え、リチウムイオンが層間イオンである雲母結晶を主結晶相とする結晶化ガラス
【請求項2】
重量%で表示して4~5%のLiO、14~20%のMgO、9~13%のAl、48~56%のSiO、14~20%のMgFの組成からなる原料組成物を混合し、
この原料組成物を500~950℃で加熱して原料中の無機塩を分解し、
無機塩を分解した後の原料組成物を容器に封入して溶融した後、
550~650℃で熱処理して歪み抜きし、さらに600~700℃で熱処理して雲母を結晶化させることを特徴とする、イオン伝導性及び透光性を備え、リチウムイオンが層間イオンである雲母結晶を主結晶相とする結晶化ガラスの製造方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンが層間イオンである雲母結晶が主結晶相で、リチウムイオンがキャリアーとなることでイオン伝導性を示し、熱的に安定で、機械加工が容易である結晶化ガラスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
層間イオンが主としてカリウムイオンである雲母結晶を主結晶相とした焼成体および結晶化ガラスは機械加工が容易な快削性セラミックスとして知られており、また、電気的には絶縁材料として公知され、電気的絶縁材料としての利用が検討されている。(例えば特許文献1参照)また、本発明で採り上げるリチウムイオン、ナトリウムイオンあるいはカルシウムイオンが層間イオンである雲母結晶は膨潤性雲母として知られ、その中でもナトリウムイオンが層間イオンである膨潤性雲母はイオン交換体としての応用が検討されている(特許文献2参照)が、いずれのイオンが層間イオンであっても電気的にイオン伝導性を示すことは全く知られていない。また、それらの膨潤性雲母結晶を焼成体あるいは結晶化ガラスのようにバルク状にすると、その膨潤性のゆえに、層間に空気中の水分をも取り入れ、自然崩壊してしまう。
【0003】
現在、ガラスのイオン伝導体の中で伝導率が室温で10‐3S/cmを超えるものとしては、リンを含む酸化物ガラス(例えば特許文献3参照)および硫化物ガラス(例えば特許文献4参照)が知られている。しかし、ケイ酸塩系のガラスが室温で10‐3S/cmを超える伝導率を示した例はない。
【0004】

【特許文献1】特開平5-294669号公報
【特許文献2】特開平11-199224号公報
【特許文献3】特開2000-26135号公報
【特許文献4】特開2003-208919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来から知られているリチウムイオン、ナトリウムイオンあるいはカルシウムイオンが層間イオンである膨潤性雲母結晶が主結晶相の焼成体および結晶化ガラスが電気的にイオン伝導体であることを示す。そして、イオン伝導性およびバルク状にしても自然崩壊しないような高い耐水性を有する焼成体および結晶化ガラス並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、(0005)に記載した結晶化ガラスのなかで、イオン伝導性およびバルク状にしても自然崩壊しないような高い耐水性に加え、快削性および透光性を有する結晶化ガラス並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
さらに、(0005)に記載した結晶化ガラスと同組成で、リチウムイオンあるいはカルシウムイオンがキャリアーとなり、伝導率が5×10‐3S/cmを超える高いイオン伝導性を示す透明なフッ素含有ケイ酸塩ガラス並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る結晶化ガラスは、重量%で表示して4~5%のLiO、14~20%のMgO、9~13%のAl、48~56%のSiO、14~20%のMgFの組成からなり、イオン伝導性及び透光性を備え、リチウムイオンが層間イオンである雲母結晶を主結晶相とすることを特徴とする。なお、イオン伝導性は、伝導率を四端子法で測定したことによって見出された。
【0009】
請求項2に係る結晶化ガラスの製造方法は、重量%で表示して4~5%のLiO、14~20%のMgO、9~13%のAl、48~56%のSiO、14~20%のMgFの組成からなる原料組成物を混合し、この原料組成物を500~950℃で加熱して原料中の無機塩を分解し、無機塩を分解した後の原料組成物を容器に封入して溶融した後、550~650℃で熱処理して歪み抜きし、さらに600~700℃で熱処理して雲母を結晶化させることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明に係る結晶化ガラスおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0019】
チウムイオン伝導性を示すガラスの組成は重量%で表示して3~6%のLiO、12~22%のMgO、7~13%のAl、47~64%のSiO、10~23%のMgFの組成で、それらの組成範囲内でガラスが得られ、それよりも各組成が多い場合でも、少ない場合でもガラスは得られない。
【0020】
上記(0019)に記載した組成として原料組成物を混合後、500~950℃で加熱して原料中の無機塩を分解する。加熱した後の原料組成物を容器に封入し、高温で溶融する。この原料組成物の封入は溶融の際に起こる原料の揮散を防ぐためのものである。溶融して得られたガラスを歪み抜きするために、550~650℃で熱処理する。このようにしてリチウムイオン伝導性を示すガラスが得られる。
【0021】
上記(0020)に記載した方法で得られるイオン伝導性を示すガラスを650~800℃で再び熱処理すると、雲母がガラスから析出する。650℃より低い温度での熱処理では雲母は析出せず、800℃より高い温度での熱処理ではアルミノケイ酸リチウムなどの雲母ではない結晶の析出量が非常に多くなる。このようにしてリチウムイオン伝導性を示す結晶化ガラスが得られる。また、この結晶化ガラスは快削性を示す。
【0022】
上記(0019)に記載した組成のなかで、特に、重量%で表示して4~5%のLiO、14~20%のMgO、9~13%のAl、48~56%のSiO、14~20%のMgFの組成として(0020)に記載した方法により作製するガラスは無色透明であり、このガラスは透明なリチウムイオン伝導体となる。また、その無色透明なガラスを600~700℃で0~4時間の熱処理で雲母を結晶化させて得られる結晶化ガラスは透明性を保つ。このようにして得られる結晶化ガラスは水中でも崩壊しないような高い耐水性、高いイオン伝導率、快削性および透光性を有する。
【0023】
参考例として、ナトリウムイオン伝導性を示す焼成体は重量%で表示して0~21%のNaO、17~32%のMgO、12~35%のAl、12~45%のSiO、0~26%のNaF、0~17%のMgFの組成で、それよりも各組成が多い場合でも、少ない場合でも焼成体の主結晶相であるナトリウム雲母が生成しない。
【0024】
上記(0023)に記載した組成として原料粉末を混合後、成形して成形体とし、その成形体を容器に封入し、800~1200℃で加熱し、原料の固相反応によって雲母が生成する。成形体を容器に封入するのは焼成の際に起こる原料の揮散を防ぐためのものである。800℃より低い温度での熱処理では雲母は生成せず、1200℃より高い温度での熱処理では原料が溶融、あるいは雲母ではない他の結晶が生成し雲母が十分に生成しない。このようにしてナトリウムイオン伝導性を示す焼成体が得られる。
【0025】
上記(0023)に記載した組成として原料組成物を混合後、500~950℃で加熱して原料中の無機塩を分解する。加熱した後の原料組成物を容器に封入し、高温で溶融する。原料組成物を封入するには溶融の際に起こる原料の揮散を防ぐためである。溶融して得られたガラスを粉末状とした後、成形して成形体とする。そのガラス粉末成形体を、650~1000℃で熱処理して、雲母結晶を析出させる。650℃より低い温度での熱処理では雲母は生成せず、1000℃より高い温度での熱処理では原料が溶融、あるいは雲母ではない他の結晶が多量に生成し、雲母が十分に生成しない。このようにしてナトリウムイオン伝導性を示す結晶化ガラスが得られる。
【0026】
参考例として、カルシウムイオン伝導性を示す結晶化ガラスおよび請求項7に記載されたカルシウムイオン伝導性を示すガラスの組成は重量%で表示して6~10%のCaO、18~20%のMgO、11~18%のAl、38~45%のSiO、15~24%のMgFの組成で、それらの組成範囲内でガラスが得られ、それよりも各組成が多い場合でも、少ない場合でもガラスは得られない。
【0027】
上記(0026)に記載した組成として原料組成物を混合後、500~950℃で加熱して原料中の無機塩を分解する。加熱した後の原料組成物を容器に封入し、高温で溶融する。この原料組成物の封入は溶融の際に起こる原料の揮散を防ぐためのものである。溶融して得られたガラスを歪み抜きするために、600~800℃で熱処理する。このようにしてカルシウムイオン伝導性を示すガラスが得られる。また、このガラスは透明である。
【0028】
上記(0027)に記載した方法で得られるイオン伝導性を示す透明なガラスをさらに750~1000℃で再び熱処理すると、雲母がガラスから析出する。750℃より低い温度での熱処理では十分に雲母は析出せず、1000℃より高い温度での熱処理では、雲母が熱分解する。このようにしてカルシウムイオン伝導性を示す結晶化ガラスが得られる。また、この結晶化ガラスは快削性を示す。
【0029】
上記(0028)に記載した熱処理条件で、特に、750~800℃で熱処理して得られる雲母を主結晶相とした結晶化ガラスはイオン伝導性および快削性だけではなく、水中でも崩壊しないほどの高い耐水性を有する。また、上記(0028)に記載した熱処理条件で、特に、800~850℃で熱処理して得られる雲母を主結晶相とした結晶化ガラスはイオン伝導性および快削性だけではなく、空気中では自然崩壊しない耐水性を有する。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
リチウムイオン伝導性を示す結晶化ガラスおよびガラスに関わる実施組成例、雲母が結晶化する熱処理条件例および物性例を表1に示す。これらの結晶化ガラスおよびガラスは原料として酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸リチウムおよびフッ化マグネシウムを用い、それらを表1に示す組成になるように秤取して混合し、炭酸リチウムを分解して炭酸ガスを放出させるために900℃で1時間加熱する。その後、原料混合物を白金容器中に封入し、1450℃で2時間溶融し、炉外放冷して無色透明のガラスとする。それを示差熱分析によって求めたガラス転移温度よりも約20℃高い温度(550~650℃)で加熱することにより、ガラスのひずみ抜きを行う。このようにして作製した無色透明のガラスが表1のNo.1および No.2である。さらに、得られたガラスを結晶化させるために650~900℃で2~4時間熱処理する。このようにして作製した結晶化ガラスが表1のNo.3~No.6である。No.1および No.2のガラスは室温で10‐2S/cmを超える高い伝導率を示す。また、No.4は水中でも崩壊しないような高い耐水性、3×10‐3S/cm(50℃において)を超える高いイオン伝導率、快削性および透光性を有する結晶化ガラスである。
(表1)
【0031】
JP0004714856B2_000002t.gif
【実施例2】
【0032】
ナトリウムイオン伝導性を示す焼成体および結晶化ガラスに関わる実施組成例、雲母が生成あるいは結晶化する熱処理条件例および物性例を表2に示す。焼成体は原料として酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素およびフッ化ナトリウムを用い、それらを表2のNo.7およびNo.8に示す組成になるように秤取して混合し、その原料混合物を静水圧成形によって成形体とする。それを白金容器中に封入した後、800~1200℃で焼成することによってナトリウム雲母(Na2Mg6Al2Si6O20F4あるいはNa4Mg6Al4Si4O20F4など)が生成し、雲母結晶焼成体となる。また、結晶化ガラスおよびガラスは原料として酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸ナトリウムおよびフッ化マグネシウムを用い、それらを表2のNo.9およびNo.10に示す組成になるように秤取して混合し、炭酸ナトリウムを分解して炭酸ガスを放出させるために900℃で1時間加熱する。その後、原料混合物を白金容器中に封入し、1550℃で2時間溶融し、氷水中に投入して急冷することでガラスとする。このガラスを細かく粉砕して微粉末とし、それを静水圧成形によって成形体とする。それを白金容器中に封入した後、650~1000℃で2時間熱処理して雲母を結晶化させ、結晶化ガラスとする。表2のNo.7~No.10はすべて室温で3×10‐3S/cmを超える高い伝導率を示す。また、その中のNo.9は水中でも崩壊しないほどの耐水性を示す。
(表2)
【0033】
JP0004714856B2_000003t.gif
【実施例3】
【0034】
カルシウムイオン伝導性を示す結晶化ガラスおよびガラスに関わる実施組成例、雲母が結晶化する熱処理条件例および物性例を表3に示す。これらの結晶化ガラスおよびガラスは原料として酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウムおよびフッ化マグネシウムを用い、それらを表3に示す組成となるように秤取して混合し、炭酸カルシウムを分解して炭酸ガスを放出させるために900℃で1時間加熱する。その後、原料混合物を白金容器中に封入し、1450℃で2時間溶融し、炉外放冷して無色透明のガラスとする。それを示差熱分析によって求めたガラス転移温度よりも約20℃高い温度(600~650℃)で加熱することにより、ガラスのひずみ抜きを行う。このようにして作製した無色透明のガラスが表3のNo.11およびNo.12である。さらに、得られたガラスを750~1000℃で2時間熱処理して雲母を結晶化させる。このようにして作製した結晶化ガラスが表3のNo.13およびNo.14である。No.11~No.14は5×10‐3S/cmを超える高い伝導率を示し、特に、No.14は水中でも崩壊しないような高い耐水性、高いイオン伝導率および快削性を有する結晶化ガラスである。
(表3)

【0035】
JP0004714856B2_000004t.gif

【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように本発明で提供されるリチウム、ナトリウムあるいはカルシウムがキャリアーとなりイオン伝導性を示す焼成体、結晶化ガラスおよびガラスは固体電解質として電池やセンサーの材料として利用できる。そのなかで快削性を示す結晶化ガラスは他のセラミックスあるいはガラスの電解質と異なり機械加工が容易であるため、機械加工に必要とするコストを大幅に低減できる。さらに、そのなかで透明な結晶化ガラスは、エレクトロクロミックディスプレイの固体電解質などディスプレイ材料として、また、機械加工が容易な光学材料として利用できる。