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明細書 :スクリーニング用溶液の作製方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4314364号 (P4314364)
公開番号 特開2005-077255 (P2005-077255A)
登録日 平成21年5月29日(2009.5.29)
発行日 平成21年8月12日(2009.8.12)
公開日 平成17年3月24日(2005.3.24)
発明の名称または考案の名称 スクリーニング用溶液の作製方法及び装置
国際特許分類 G01N  33/68        (2006.01)
B01D   9/02        (2006.01)
G01N   1/28        (2006.01)
FI G01N 33/68
B01D 9/02 601L
B01D 9/02 602E
B01D 9/02 608
B01D 9/02 620
G01N 1/28 J
請求項の数または発明の数 17
全頁数 24
出願番号 特願2003-308422 (P2003-308422)
出願日 平成15年9月1日(2003.9.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年5月31日に発行された「第3回日本蛋白質科学会年会 プログラム・要旨集」に発明者の発表要旨が掲載されている。
審査請求日 平成18年3月23日(2006.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】森本 幸生
【氏名】阿部 真琴
【氏名】鈴木 雅洋
【氏名】梅名 泰史
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100099988、【弁理士】、【氏名又は名称】斎藤 健治
審査官 【審査官】海野 佳子
参考文献・文献 特表2000-511629(JP,A)
国際公開第03/014732(WO,A1)
実開平02-032931(JP,U)
特開2003-156481(JP,A)
特開平04-204373(JP,A)
特表2002-541442(JP,A)
特表2003-502652(JP,A)
調査した分野 G01N 33/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも2種類の特性を有する溶液について各特性の値を漸次的に変化させマトリクス状に組み合わせた複数のスクリーニング用溶液の作製方法であって、
各種類の特性の上限及び下限の性質を有する上限溶液及び下限溶液を準備し、
前記上限溶液及び下限溶液を各々収容するタンクと、各タンクに接続された導出路と、該導出路の途中に介在する供給量調節機能付きの送液手段と、前記導出路の先端に接続されたミキサーと、該ミキサーから排出される混合溶液を複数の受け部に順次収容するフラクションコレクターとを備えた装置を用い、
上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液とを前記導出路及び送液手段を用いて供給割合を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給する操作を、複数種類の特性の各特性値を漸次的に変化させたマトリクス状組み合わせが得られるように、順次行ない、
該供給操作に並行して前記ミキサーから混合溶液を順次排出し、
排出された混合溶液を前記フラクションコレクターの前記複数の受け部に順次収容することを特徴とするスクリーニング用溶液の作製方法。
【請求項2】
前記マトリクス状組み合わせを得る供給操作が、第1番目から第n番目までの特性の溶液について行なわれ、該供給操作は、低い番数の特性の漸次的変化を繰り返しながら、その都度、より順位の高い番数の特性を漸次的に変化させるように行なわれ、該漸次的変化の繰り返しが第n番目まで行われ、且つ、より高い番数の特性が変化する毎に所定番数の特性から漸次的変化が繰り返される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スクリーニング用溶液が生体高分子結晶化最適条件のスクリーニング用溶液である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
複数種類の特性の各特性値を漸次的に変化させたマトリクス状組み合わせを得るために、上限溶液と下限溶液との供給割合及び前記各受け部に収容される混合溶液量を漸次的に変化させる請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2種類の特性を有する溶液について各特性値を漸次的に変化させマトリクス状に組み合わせた複数の溶液の中から、生体高分子結晶化最適溶液をスクリーニングする方法であって、
各種類の特性の上限及び下限の性質を有する上限溶液及び下限溶液を準備し、
前記上限溶液及び下限溶液を各々収容するタンクと、各タンクに接続された導出路と、該導出路の途中に介在する供給量調節機能付きの送液手段と、前記導出路の先端に接続されたミキサーと、該ミキサーから排出される混合溶液を複数の受け部に順次収容するフラクションコレクターとを備えた装置を用い、
上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液とを前記導出路及び送液手段を用いて供給割合を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給する操作を、複数種類の特性の各特性値を漸次的に変化させたマトリクス状組み合わせが得られるように、順次行ない、
該供給操作に並行して前記ミキサーから混合溶液を順次排出し、
排出された混合溶液を前記フラクションコレクターの複数の受け部に順次収容し、
前記複数の受け部に対し結晶化される生体高分子を添加し、結晶化条件下に置いた後、結晶化最適溶液を選択することを特徴とする生体高分子結晶化最適溶液のスクリーニング方法。
【請求項6】
前記マトリクス状組み合わせを得る供給操作が、第1番目から第n番目までの特性の溶液について行なわれ、該供給操作は、低い番数の特性の漸次的変化を繰り返しながら、その都度、より順位の高い番数の特性を漸次的に変化させるように行なわれ、該漸次的変化の繰り返しが第n番目まで行われ、且つ、より高い番数の特性が変化する毎に所定番数の特性から漸次的変化が繰り返される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
複数種類の特性の各特性値を漸次的に変化させたマトリクス状組み合わせを得るために、上限溶液と下限溶液との供給割合及び各受け部に収容される混合溶液量を漸次的に変化させる請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2種類の特性を有する溶液について各特性の特性値を漸次的に変化させマトリクス状に組み合わせた複数のスクリーニング用溶液の作製装置であって、
各種類の特性の上限及び下限の性質を有する上限溶液及び下限溶液を各々収容するタンクと、
各タンクに接続された導出路と、
前記導出路の先端に接続されたミキサーと、
前記導出路の途中に介在し、前記上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液との供給割合を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給する供給量調節機構付きの送液手段と、
前記ミキサーから排出される混合溶液を複数の受け部に順次収容するフラクションコレクターとを備え、
前記送液手段は、第1番目から第n番目までの特性について、低い番数の特性の漸次的変化を繰り返しながら、その都度、より順位の高い番数の特性を漸次的に変化させ、該漸次的変化の繰り返しが第n番目まで行われ、且つ、より高い番数の特性が変化する毎に所定番数の特性から漸次的変化を繰り返すように、各特性の上限溶液と下限溶液との供給割合を調節する供給量調節機構を備えていることを特徴とする作製装置。
【請求項9】
前記送液手段が、上限溶液及び下限溶液の供給割合及び各受け部に収容される混合溶液量を調節する供給量調節機構を備えており、前記上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液との供給割合及び各受け部に収容される混合溶液量を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給するものである請求項8に記載の作製装置。
【請求項10】
前記送液手段が、前記各導出路の途中に介在する流量調節ポンプを備え、前記供給量調節機構が、各導出路のポンプの流量調節部及び該流量調節部に結合された制御装置により構成されている請求項8又は9に記載の作製装置。
【請求項11】
前記送液手段が、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクに接続された導出路に介在する流量調節弁と、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンク毎に流量調節弁の下流側に接続された1台のポンプとを備えており、前記供給量調節機構が、前記流量調節弁及び該流量調節弁に結合された制御装置により構成されている請求項8又は9に記載の作製装置。
【請求項12】
前記送液手段が、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクに接続された導出路に介在する流量調節弁と、これらの流量調節弁の下流側に接続された1台のポンプとを備え、前記供給量調節機構が、前記流量調節弁及び該流量調節弁に結合された制御装置により構成されている請求項8又は9に記載の作製装置。
【請求項13】
前記送液手段が、各タンクに接続された各導出路に介在する1台のポンプであって各導出路の流量を調節する機能を有するものを備え、前記供給量調節装置が、前記ポンプの流量調節部及び該流量調節部に結合された制御装置により構成されている請求項8又は9に記載の作製装置。
【請求項14】
前記送液手段が、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクに接続された導出路に介在する流量調節弁と、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンク毎に流量調節弁の下流側に接続された1台のポンプとを備えており、前記供給量調節機構が、前記流量調節弁、前記ポンプの流量調節部及びこれらに結合された制御装置により構成されている請求項8又は9に記載の作製装置。
【請求項15】
前記送液手段が、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクに接続された導出路に介在する流量調節弁と、これらの流量調節弁の下流側に接続された1台のポンプとを備え、前記供給量調節機構が、前記流量調節弁、前記ポンプの流量調節部及びこれらに結合された制御装置により構成されている請求項8又は9に記載の作製装置。
【請求項16】
スクリーニング用溶液が生体高分子結晶化最適条件のスクリーニング用溶液である請求項8~15のいずれかに記載の作製装置。
【請求項17】
前記複数の受け部に対し結晶化される生体高分子を添加する機構を備える請求項16に記載の作製装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質のような生体高分子の結晶化条件などのスクリーニングのための溶液の作製方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の結晶構造解析のためには、X線回折実験に適した良質な結晶が必要である。タンパク質分子の電荷分布、コンフォメーションに影響を及ぼす条件としては、そのタンパク質の濃度、温度、塩の種類及び濃度、沈殿剤の種類及び濃度、pHなどが挙げられる。タンパク質の種類によって結晶化のためのこれらの条件の最適な組み合わせが存在する。
【0003】
従来は、手作業で大まかな最適条件の組み合わせを見出し、次いでその組み合わせを中心にして各結晶化条件を少しずつ変化させることにより、厳密な結晶化最適条件の組み合わせを見出すいわゆるグリッドスクリーニングを行っている。具体的には、例えば、塩の種類及び濃度、沈殿剤の種類及び濃度、並びに、pHが互いに異なる多数の溶液を用意して、ロボットを用いて各溶液とタンパク質とを混合することにより、微結晶又は針状晶などが形成される条件の溶液を見出す。次いで、その溶液条件を中心として塩濃度を細かく変化させた溶液とタンパク質とを同様にして混合することにより、最も結晶化し易い塩濃度を見出す。さらにその溶液条件を中心として沈殿剤濃度を細かく変化させた溶液とタンパク質とを混合することにより、最も結晶化し易い沈殿剤濃度を見出す。最適pHも同様にして定める。
【0004】
このように、タンパク質を結晶化させるための条件のスクリーニングには膨大な手間がかかるため、X線結晶解析において結晶成長条件のスクリーニングが最も大きなネックとなっている。近年のタンパク質の網羅的な結晶構造解析に伴い、タンパク質の結晶化最適条件を効率的に見出すことが強く求められている。
【0005】
このため、例えば特許文献1は、細管内に充填された固体支持体に複数種類のタンパク質沈殿剤を固定したタンパク質結晶化条件スクリーニング用試薬を提案している。この試薬にタンパク質含有試料を接触させることにより、結晶化最適条件を検出できるとしている。しかし、この方法でスクリーニングできるのは1種類の特性の最適値であり、複数の特性について最適条件の組み合わせを簡単に検出できるわけではない。

【特許文献1】特開平9-89898(請求項1~11等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数の特性の最適な組み合わせを効率的に選択できるスクリーニング用溶液の作製方法及び装置を提供することを第1の課題とする。
【0007】
また本発明は、生体高分子結晶化のための複数の特性の最適な組み合わせを効率的に選択できる生体高分子結晶化最適溶液のスクリーニング方法を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね以下の知見を得た。
(i) 例えば生体高分子の結晶化最適条件をスクリーニングするための溶液であって、少なくとも2種類の特性を漸次的に変化させマトリクス状に組み合わせた複数の溶液の作製方法において、
各種類の特性の上限及び下限の性質を有する上限溶液及び下限溶液を準備し、
各種類の特性の上限及び下限の性質を有する上限溶液及び下限溶液を各々収容するタンクと、各タンクに接続された導出路と、前記導出路の先端に接続されたミキサーと、前記導出路の途中に介在し、前記上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液との供給割合を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給する供給量調節機構付きの送液手段と、前記ミキサーから排出される混合溶液を複数の受け部に順次収容するフラクションコレクターとを備え、前記送液手段は、第1番目から第n番目までの特性について、低い番数の特性の漸次的変化を繰り返しながら、その都度、より順位の高い番数の特性を漸次的に変化させ、該漸次的変化の繰り返しが第n番目まで行われ、且つ、より高い番数の特性が変化する毎に所定番数の特性から漸次的変化を繰り返すように、各特性の上限溶液と下限溶液との供給割合を調節する供給量調節機構を備えている装置を用い、
上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液とを前記導出路及び送液手段を用いて供給割合を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給する操作を、複数種類の特性の各特性値を漸次的に変化させたマトリクス状組み合わせが得られるように、順次行ない、
該供給操作に並行して前記ミキサーから混合溶液を順次排出し、
排出された混合溶液を前記フラクションコレクターにより前記複数の受け部に順次収容することにより、非常に効率的にスクリーニング用溶液を作製できる。
(ii) 比較的多量に入手できる対象物質のスクリーニング用溶液を作製する場合は、上記方法に供される装置が各フラクションに対して対象物質を添加する機構を備えることにより、作製された溶液セットと対象物質とを別途混合する手間が省ける。
【0009】
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下のスクリーニング用溶液の作製方法および装置、並びに、生体高分子結晶化最適溶液のスクリーニング方法を提供する。
【0010】
項1. 少なくとも2種類の特性を有する溶液について各特性の値を漸次的に変化させマトリクス状に組み合わせた複数のスクリーニング用溶液の作製方法であって、
各種類の特性の上限及び下限の性質を有する上限溶液及び下限溶液を準備し、
前記上限溶液及び下限溶液を各々収容するタンクと、各タンクに接続された導出路と、該導出路の途中に介在する供給量調節機能付きの送液手段と、前記導出路の先端に接続されたミキサーと、該ミキサーから排出される混合溶液を複数の受け部に順次収容するフラクションコレクターとを備えた装置を用い、
上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液とを前記導出路及び送液手段を用いて供給割合を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給する操作を、複数種類の特性の各特性値を漸次的に変化させたマトリクス状組み合わせが得られるように、順次行ない、
該供給操作に並行して前記ミキサーから混合溶液を順次排出し、
排出された混合溶液を前記フラクションコレクターの前記複数の受け部に順次収容することを特徴とするスクリーニング用溶液の作製方法。
【0011】
項2. 前記マトリクス状組み合わせを得る供給操作が、第1番目から第n番目までの特性の溶液について行なわれ、該供給操作は、低い番数の特性の漸次的変化を繰り返しながら、その都度、より順位の高い番数の特性を漸次的に変化させるように行なわれ、該漸次的変化の繰り返しが第n番目まで行われ、且つ、より高い番数の特性が変化する毎に所定番数の特性から漸次的変化が繰り返される項1に記載の方法。
【0012】
項3. スクリーニング用溶液が生体高分子結晶化最適条件のスクリーニング用溶液である項1又は2に記載の方法。
【0013】
項4. 複数種類の特性の各特性値を漸次的に変化させたマトリクス状組み合わせを得るために、上限溶液と下限溶液との供給割合及び前記各受け部に収容される混合溶液量を漸次的に変化させる項1、2又は3に記載の方法。
【0014】
項5. 少なくとも2種類の特性を有する溶液について各特性値を漸次的に変化させマトリクス状に組み合わせた複数の溶液の中から、生体高分子結晶化最適溶液をスクリーニングする方法であって、
各種類の特性の上限及び下限の性質を有する上限溶液及び下限溶液を準備し、
前記上限溶液及び下限溶液を各々収容するタンクと、各タンクに接続された導出路と、該導出路の途中に介在する供給量調節機能付きの送液手段と、前記導出路の先端に接続されたミキサーと、該ミキサーから排出される混合溶液を複数の受け部に順次収容するフラクションコレクターとを備えた装置を用い、
上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液とを前記導出路及び送液手段を用いて供給割合を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給する操作を、複数種類の特性の各特性値を漸次的に変化させたマトリクス状組み合わせが得られるように、順次行ない、
該供給操作に並行して前記ミキサーから混合溶液を順次排出し、
排出された混合溶液を前記フラクションコレクターの複数の受け部に順次収容し、
前記複数の受け部に対し結晶化される生体高分子を添加し、結晶化条件下に置いた後、結晶化最適溶液を選択することを特徴とする生体高分子結晶化最適溶液のスクリーニング方法。
【0015】
項6. 前記マトリクス状組み合わせを得る供給操作が、第1番目から第n番目までの特性の溶液について行なわれ、該供給操作は、低い番数の特性の漸次的変化を繰り返しながら、その都度、より順位の高い番数の特性を漸次的に変化させるように行なわれ、該漸次的変化の繰り返しが第n番目まで行われ、且つ、より高い番数の特性が変化する毎に所定番数の特性から漸次的変化が繰り返される項5に記載の方法。
【0016】
項7. 複数種類の特性の各特性値を漸次的に変化させたマトリクス状組み合わせを得るために、上限溶液と下限溶液との供給割合及び各受け部に収容される混合溶液量を漸次的に変化させる項5又は6に記載の方法。
【0017】
項8. 少なくとも2種類の特性を有する溶液について各特性の特性値を漸次的に変化させマトリクス状に組み合わせた複数のスクリーニング用溶液の作製装置であって、
各種類の特性の上限及び下限の性質を有する上限溶液及び下限溶液を各々収容するタンクと、
各タンクに接続された導出路と、
前記導出路の先端に接続されたミキサーと、
前記導出路の途中に介在し、前記上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液との供給割合を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給する供給量調節機構付きの送液手段と、
前記ミキサーから排出される混合溶液を複数の受け部に順次収容するフラクションコレクターとを備え、
前記送液手段は、第1番目から第n番目までの特性について、低い番数の特性の漸次的変化を繰り返しながら、その都度、より順位の高い番数の特性を漸次的に変化させ、該漸次的変化の繰り返しが第n番目まで行われ、且つ、より高い番数の特性が変化する毎に所定番数の特性から漸次的変化を繰り返すように、各特性の上限溶液と下限溶液との供給割合を調節する供給量調節機構を備えていることを特徴とする作製装置。
【0018】
項9. 前記送液手段が、上限溶液及び下限溶液の供給割合及び各受け部に収容される混合溶液量を調節する供給量調節機構を備えており、前記上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液との供給割合及び各受け部に収容される混合溶液量を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給するものである項8に記載の作製装置。
【0019】
項10. 前記送液手段が、前記各導出路の途中に介在する流量調節ポンプを備え、前記供給量調節機構が、各導出路のポンプの流量調節部及び該流量調節部に結合された制御装置により構成されている項8又は9に記載の作製装置。
【0020】
項11. 前記送液手段が、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクに接続された導出路に介在する流量調節弁と、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンク毎に流量調節弁の下流側に接続された1台のポンプとを備えており、前記供給量調節機構が、前記流量調節弁及び該流量調節弁に結合された制御装置により構成されている項8又は9に記載の作製装置。
【0021】
項12. 前記送液手段が、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクに接続された導出路に介在する流量調節弁と、これらの流量調節弁の下流側に接続された1台のポンプとを備え、前記供給量調節機構が、前記流量調節弁及び該流量調節弁に結合された制御装置により構成されている項8又は9に記載の作製装置。
【0022】
項13. 前記送液手段が、各タンクに接続された各導出路に介在する1台のポンプであって各導出路の流量を調節する機能を有するものを備え、前記供給量調節装置が、前記ポンプの流量調節部及び該流量調節部に結合された制御装置により構成されている項8又は9に記載の作製装置。
【0023】
項14. 前記送液手段が、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクに接続された導出路に介在する流量調節弁と、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンク毎に流量調節弁の下流側に接続された1台のポンプとを備えており、前記供給量調節機構が、前記流量調節弁、前記ポンプの流量調節部及びこれらに結合された制御装置により構成されている項8又は9に記載の作製装置。
【0024】
項15. 前記送液手段が、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクに接続された導出路に介在する流量調節弁と、これらの流量調節弁の下流側に接続された1台のポンプとを備え、前記供給量調節機構が、前記流量調節弁、前記ポンプの流量調節部及びこれらに結合された制御装置により構成されている項8又は9に記載の作製装置。
【0025】
項16. スクリーニング用溶液が生体高分子結晶化最適条件のスクリーニング用溶液である項8~15のいずれかに記載の作製装置。
【0026】
項17. 前記複数の受け部に対し結晶化される生体高分子を添加する機構を備える項16に記載の作製装置。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、装置について説明し、次にその装置を用いた方法について説明する。
(I)スクリーニング用溶液の作製装置
本発明のスクリーニング用溶液の作製装置は、少なくとも2種類の特性を有する溶液について各特性の特性値を漸次的に変化させマトリクス状に組み合わせた複数のスクリーニング用溶液の作製装置であって、
各種類の特性の上限及び下限の性質を有する上限溶液及び下限溶液を各々収容するタンクと、各タンクに接続された導出路と、前記導出路の先端に接続されたミキサーと、前記導出路の途中に介在し、前記上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液との供給割合を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給する供給量調節機能付きの送液手段と、前記ミキサーから排出される混合溶液を順次複数の受け部に収容するフラクションコレクターとを備え、
前記送液手段は、第1番目から第n番目までの特性の溶液について、低い番数の特性の漸次的変化を繰り返しながら、その都度、より順位の高い番数の特性を漸次的に変化させ、該漸次的変化の繰り返しが第n番目まで行われ、且つ、より高い番数の特性が変化する毎に所定番数の特性から漸次的変化を繰り返すように、各特性の上限溶液と下限溶液との供給量を調節する供給量調節機構を備えている装置である。
【0028】
本発明において「マトリクス状組み合わせ」とは、2種類以上の特性についてそれらの値をそれぞれ漸次的に変化させた場合の、全ての特性の値の組み合わせをいう。
スクリーニングの対象
スクリーニング用溶液としては、タンパク質、ペプチド、核酸、多糖類などの生体高分子の結晶化最適条件のスクリーニング用溶液が挙げられる。特に、従来膨大な作業を要していたタンパク質の結晶化最適条件のスクリーニング用溶液が好適である。タンパク質の種類は特に限定されずどのようなタンパク質でも対象にすることができる。但し、膜タンパク質は水に不溶であるため、タンパク質が添加される溶液にSDS、n-オクチル-β-グルコピラノシドスクロースモノラウレート等の界面活性剤を添加しておくことを条件に対象にすることができる。
特性
スクリーニングの対象がタンパク質又はペプチドの結晶化最適条件である場合の溶液の特性としては、塩濃度、沈殿剤濃度、pH、タンパク質濃度を変化させるための液量、界面活性剤濃度などが挙げられる。界面活性剤濃度は一般に膜蛋白質の結晶化に影響を与える特性であるが、水溶性蛋白質又はペプチドの結晶化にも影響を与える場合がある。
【0029】
またスクリーニングの対象が核酸の結晶化最適条件である場合の溶液の特性としては、塩濃度、沈殿剤濃度、pH、核酸濃度を変化させるための液量、場合により界面活性剤濃度などが挙げられる。またスクリーニングの対象が多糖類の結晶化最適条件である場合の溶液の特性としては、塩濃度、沈殿剤濃度、pH、多糖類濃度を変化させるための液量などが挙げられる。
【0030】
通常、特性は、上限溶液と下限溶液との混合比率を漸次的に変化させることにより漸次的に変化させることができる。また、例えば生体高分子の濃度の最適条件を見出すための溶液特性は液量である。生体高分子濃度は、得られた各溶液と生体高分子との混合比率を変化させることにより変化させ得るが、各受け部に収容される液量を漸次的に変化させる場合は、得られた溶液セットに等量づつ生体高分子を添加することによって生体高分子濃度を変化させることができる。
タンク
本発明の装置は、マトリクス状に組み合わせられる特性のうち、2種類の溶液の混合比率により漸次的に変化させる特性について、それぞれ上限値を示す溶液を収容するタンク及び下限値を示す溶液を収容するタンクを備えている。
【0031】
以下、タンパク質結晶化最適条件のスクリーニング用溶液を作製する場合を例にとって説明する。
【0032】
タンパク質結晶化最適条件のスクリーニング用溶液を作製する場合は、塩濃度、沈殿剤濃度、界面活性剤濃度、pH等は、2液の混合比率の調節により変化させることができる。これらの特性のマトリクス状組み合わせを得る場合は、特性ごとに上限溶液用タンクおよび下限溶液用タンクが備えられる。
<塩濃度>
対象となるタンパク質の種類及び塩の種類によって異なるが、本発明装置を用いて作製される溶液セットの塩濃度勾配は概ね0~4M程度とすればよい。また、この中のより狭い範囲の塩濃度勾配を設けることもできる。上限溶液及び下限溶液を用いて漸次変化させられる特性が2種類以上である場合は、合計4個以上のタンクから連続的に液が導出されるため、例えば最終的に0~4Mの塩濃度勾配を設けるときは、塩濃度調節用の下限溶液濃度は0M程度とすればよいが、上限溶液濃度は、各タンクからの液導出量に応じて定められる4M以上の所定濃度とすればよい。
【0033】
また塩濃度を調整するための上限溶液と下限溶液との合計流量を一定に保ちつつ、上限溶液と下限溶液との流量比率を変化させることにより、最終的な塩濃度を調節すればよい。
塩の種類は、タンパク質結晶化溶液用の公知の塩を制限なく使用できる。このような公知の塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム等が挙げられる。これらは水和物であってもよい。
<沈殿剤濃度>
対象となるタンパク質の種類及び沈殿剤の種類によって異なるが、本発明装置を用いて作製される溶液セットにおける沈殿剤濃度勾配は概ね0~50重量%程度とすればよい。また、この中のより狭い範囲の沈殿剤濃度勾配を設けることもできる。上限溶液及び下限溶液を用いて漸次変化させられる特性が2種類以上である場合は、合計4個以上のタンクから連続的に液が導出されるため、例えば最終的に0~50重量%の沈殿剤濃度勾配を設けるときは、沈殿剤濃度調節用の下限溶液濃度は0重量%程度とすればよいが、上限溶液濃度は、各タンクからの液導出量に応じて定められる50重量%以上の所定濃度とすればよい。
【0034】
また沈殿剤濃度を調整するための上限溶液と下限溶液との合計流量を一定に保ちつつ、上限溶液と下限溶液との流量比率を変化させることにより、最終的な沈殿剤濃度を調節すればよい。
【0035】
沈殿剤としては、タンパク質結晶化溶液用の公知の沈殿剤を制限なく使用できる。このような公知の沈殿剤として、例えばポリエチレングリコール、硫酸アンモニウム、2-メチル-ペンタンジオール、酢酸ナトリウム、リン酸2水素アンモニウム、イソプロパノール等が挙げられる。これらは水和物であってもよい。
<pH>
対象となるタンパク質の種類及び沈殿剤の種類によって異なるが、本発明装置を用いて作製される溶液セットにおけるpH勾配は概ね3~12程度とすればよい。またこの中のより狭い範囲でpH勾配を設けることもできる。例えばpH5.5~9程度、特にpH6~8程度の勾配を設けるのが好ましい。
【0036】
比較的狭い範囲でpHを変化させるための下限溶液と上限溶液との組み合わせとしては、酸水溶液を下限溶液に使用し、弱酸及びその塩で調製されたバッファーを上限溶液として使用する組み合わせ;弱塩基及びその塩で調製されたバッファーを下限溶液に使用し、塩基水溶液を上限溶液として使用する組み合わせ等が挙げられる。
【0037】
バッファーとしては、変化させるpH範囲に適した公知のバッファーを制限なく使用できる。具体的な下限溶液と上限溶液との組み合わせとしては、塩酸と酢酸-酢酸ナトリウムバッファーとの組み合わせ、塩酸とCIEXバッファー(0.15Mリン酸1水素ナトリウム、0.15Mギ酸ナトリウム、0.3M酢酸ナトリウム)との組み合わせ、塩酸とHEPES-Naバッファーとの組み合わせ、塩酸とクエン酸-クエン酸ナトリウムバッファーとの組み合わせ、塩酸とトリスバッファーとの組み合わせ、AIEXバッファーと水酸化ナトリウム水溶液との組み合わせ等が挙げられる。その他、下限溶液としてのリン酸2水素ナトリウムと上限溶液としてのリン酸水素2ナトリウムとの組み合わせ等も挙げられる。
【0038】
上限溶液及び下限溶液を用いて漸次変化させられる特性が2種類以上である場合は、合計4個以上のタンクから連続的に液が導出されるため、上限溶液濃度及び下限溶液濃度は、各タンクからの溶液導出量に応じて、最終的に得られる溶液セットにおいてpHの所定の勾配が得られるように定めればよい。
【0039】
またpHを調整するための上限溶液と下限溶液との合計流量を一定に保ちつつ、上限溶液と下限溶液との流量比率を変化させることにより、最終的に得られるpHを調節すればよい。なお下限溶液として酸水溶液を使用し、又は、上限溶液として塩基水溶液を使用する場合は、酸水溶液又は塩基水溶液の添加量の微細な変化により、混合液のpHが大きく変化するため、最終的に得られる溶液のpHを下限溶液のpHから上限溶液のpHまで変化させることは少ない。実際は、一方の溶液供給量をほぼ一定に保ち、他方の酸水溶液又は塩基水溶液を漸次的に変化させながら微量供給すればよい。
<界面活性剤濃度>
界面活性剤は、蛋白質結晶化用の公知の界面活性剤を制限なく使用できる。このような公知の界面活性剤として、例えばSDS、n-オクチル-β-グルコピラノシドスクロースモノラウレート等が挙げられる。
【0040】
本発明の装置を用いて作製される溶液セットの界面活性剤濃度の勾配は、蛋白質の種類及び界面活性剤の種類によって異なるが、概ね0.1~5重量%程度とすればよい。またこの中のより狭い範囲で勾配を設けることもできる。
<タンパク質濃度>
タンパク質濃度を漸次的に変化させるためには、最終的に得られる溶液セットの各溶液量を漸次的に変化させればよい。このようにして作製された溶液セットの全溶液に対して同濃度のタンパク質溶液を同量添加すれば、タンパク質濃度の勾配が設けられることになる。後述するように、送液手段による送液量を変化させること又はフラクションコレクターによる各受け部への混合溶液収容量を変化させることにより、溶液セット中の各溶液量を変化させることができるため、タンパク質濃度勾配を設けるためのタンクは不要である。これにより、タンクの数を増やす必要がなく、またタンパク質添加量の調節機構を設ける必要もないため、装置構造および操作が簡単になる。結晶化最適条件のスクリーニングの対象となるタンパク質は、通常大量には入手できないため、溶液量を変化させることにより最終的なタンパク質濃度を変化させる場合は、各受け部に収容される溶液量をその分少なくすればよい。
【0041】
ここではタンパク質を例に挙げて説明したが、ペプチド、核酸、多糖類などの場合も同様にして上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとを用意すればよい。
ミキサー
ミキサーは、各タンクから送液手段により送られてくる溶液を混合して排出するものであればよい。排出流量は通常送液手段による送液流量と同じにすればよい。
送液手段
送液手段は、第1番目から第n番目までの特性について、低い番数の特性を所定範囲で漸次的変化させることを繰り返しながら、その都度、より順位の高い番数の特性を漸次的に変化させ、該漸次的変化の繰り返しが第n番目まで行われ、且つ、より順位の高い番数の特性を変化させる毎に所定番数の特性から同様の順次変化を繰り返すように、各特性の上限溶液と下限溶液との供給比率を調節する供給量調節機構を備えている。
【0042】
即ち、特性がn個ある場合に、第1の特性を所定範囲で漸次的、特に直線的に変化させるように上限溶液と下限溶液との供給比率を徐々に変化させ、その間他の特性の上限溶液と下限溶液との供給比率は一定にする。第1の特性が所定範囲で1回変化すれば、第2の特性の値を1段階変化させるように、第2特性調整用の上限溶液と下限溶液との供給比率を変化させる。このようにして、第1特性値を所定範囲で直線的に変化させる毎に、第2特性値を1段階づつ漸次的に(詳しくは段階的に)増加させる。このようにして第2特性値が所定範囲で変化すれば、第3特性値を1段階変化させるように、第3特性調整用の上限溶液と下限溶液との供給比率を変化させる。
【0043】
このようにして、n番目の特性まで所定範囲で漸次的に変化させる。このとき、ある番数の特性値を1段階づつ変化させる毎に、第1特性から順次変化させてもよく、より高い番数の特性から順次変化させてもよい。即ち、上記の供給量調節機構において、所定番数が第1番目であれば、全ての特性について、全範囲のマトリクス状の組み合わせが得られるが、必ずしも第1番目の特性から同様の漸次的変化を繰り返さなくてもよい。但し、所定番数を1番目として、全ての特性について漸次的変化を繰り返すことが、各特性について完全なマトリクス状組み合わせを有する溶液セットが得られる点で好ましい。
【0044】
また、各特性について、同じ範囲で勾配を設けることを繰り返してもよいが、繰り返さなくてもよい。但し、各特性について同じ範囲で勾配を設けるのを繰り返すことが、各特性について完全なマトリクス状組み合わせを有する溶液セットが得られる点で好ましい。
【0045】
具体例を挙げて詳しく説明すれば、スクリーニングの対象がタンパク質の結晶化最適溶液である場合は、例えば第1順位の特性を塩濃度とし、第2順位の特性を沈殿剤濃度とし、第3順位の特性をpHとすると、先ず塩濃度について所定範囲での直線的勾配を設けることを繰り返す。塩濃度の所定範囲の直線的勾配を1回設けるごとに、沈殿剤濃度を1段階ずつ増加させるように段階的勾配を設ける。ここで、沈殿剤濃度の各段階において、塩濃度は最初と同じ範囲で勾配を設けてもよいが、最初と同じ範囲で勾配を設けなくてもよい。
【0046】
このようにして、所定範囲での沈殿剤濃度の勾配を設ける度にpHを1段階ずつ増加させるように段階的勾配を設ける。即ち、pHを1段階づつ増加させる毎に、各pH値について所定範囲で沈殿剤濃度の段階的勾配を設け、各沈殿剤濃度について所定範囲で塩濃度の直線的勾配を設ける。結果としてpHの段階的勾配が設けられる。これにより、塩濃度、沈殿剤濃度及びpHをマトリクス状に組み合わせた溶液セットが得られる。ここで、pHの各段階において、沈殿剤濃度及び塩濃度の勾配を設けてもよく、沈殿剤濃度の勾配のみ設けてもよく、塩濃度勾配のみ設けてもよい。また、塩濃度及び沈殿剤濃度は、最初と同じ範囲で勾配を設けることを繰り返してもよく、又は、異なる範囲で勾配を設けることを繰り返してもよい。
【0047】
送液手段の具体的構成を説明すると、送液手段は、導出路の途中に介在し、上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクからそれぞれ排出される上限溶液と下限溶液との供給比率を漸次的に変化させつつミキサーに供給する供給量調節機構を備えている。これにより、上限溶液と下限溶液との混合比率で調整できる特性を漸次的に変化させることができる。
【0048】
また送液手段は、上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液との供給比率だけでなく、各受け部に収容される混合液量を漸次的に変化させるように、ミキサーに各溶液を供給する供給量調節機構を有するものであることが好ましく、これにより、各特性の上限溶液と下限溶液との供給比率及び各受け部に収容される混合溶液量の双方を調節することができる。ミキサーに供給する溶液量を漸次的に変化させる場合は、各タンクからの溶液供給量の変化に影響を及ぼさないようにする。即ち、各特性ごとの上限溶液と下限溶液との合計液量を全て同じ比率で変化させる。これにより、その他の特性の変化に影響を及ぼさずに液量の勾配を設けることができる。
【0049】
タンパク質結晶化条件の一つとして最終的にタンパク質濃度を漸次的に変化させることができる溶液セットを作製する場合は、このような送液手段を用いて各受け部に収容される混合溶液の量を漸次的に変化させればよく、このようにして調製された全ての溶液フラクションに同濃度の同じタンパク質溶液を同量づつ分注することにより、最終的にタンパク質濃度を漸次的に変化させることができる。なお、前述したように、得られた各溶液にタンパク質溶液を添加する場合は、各受け部に収容される溶液量をせいぜい10μl程度にするのが現実的である。
【0050】
また、タンパク質結晶化の条件をスクリーニングするにあたり、タンパク質の種類等により異なるが、タンパク質濃度の勾配は、概ね2~50mg/ml程度とすればよい。またこの中のより狭い範囲で勾配を設けることもできる。
【0051】
具体的には、例えば以下のような送液手段を用いることにより、このようなマトリクス状組み合わせを設けることができる。
<第1の送液手段>
第1の送液手段は、各導出路の途中に介在する流量調節ポンプを備え、供給量調節機構が、各導出路のポンプの流量調節部及び該流量調節部に結合された制御装置により構成されている。
【0052】
詳述すれば、各タンクからミキサーまでの各導出路に一つづつ流量調節ポンプが介在している。各ポンプは流量調節部を有することにより流量を任意に変化させることができるものであり、制御装置に予め設定したプログラムに従って流量を漸次的に変化させることができる。これにより、上限溶液と下限溶液との供給比率を調節しつつ、これらの溶液をミキサーに供給することができる。
【0053】
また流量調節ポンプは、上限溶液と下限溶液との供給比率を調整するだけでなく、各タンクからの溶液供給量ひいては各受け部に収容される混合液量も調整できる。
<第2の送液手段>
第2の送液手段は、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクに接続された導出路に介在する流量調節弁と、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンク毎に流量調節弁の下流側に接続された1台のポンプとを備えており、供給量調節機構は、流量調節弁及びこれに結合された制御装置により構成されている。
【0054】
流量調節弁は、タンク対ごとに1つ設けられていてもよく、各タンクごとに1つ設けられていてもよい。タンク対ごとに1つ設けられている場合の流量調節弁としては、各流路の液量を調節することにより上限溶液と下限溶液との供給比率を調節するものや、単位時間当たりに上限溶液流通時間と下限溶液流通時間とを交互に設けてその時間比率を調節することにより上限溶液と下限溶液との供給比率を調節するもの等が挙げられる。
【0055】
また流量調節弁は、各流路の流量を調節することにより、各タンクからの溶液供給量を調節できる。これにより、最終的にフラクションコレクターの各受け部に収容される液量を漸次的に変化させることができ、流量調節弁を用いて液量勾配を設けることができる。
【0056】
また第2の送液手段は、流量調節弁により各流路の流量を調節するとともに、ポンプにより各タンク対からの溶液供給速度を調節することにより、最終的に各受け部に収容される混合液量を変化させることができるものであってもよい。この場合の供給量調節機構は、流量調節弁、ポンプの流量調節部及びこれらに接続された制御装置により構成されたものとすればよい。
<第3の送液手段>
第3の送液手段は、各対の上限溶液収容タンク及び下限溶液収容タンクに接続された導出路に介在する流量調節弁と、これらの流量調節弁の下流側に接続された1台のポンプとを備え、前記供給量調節機構が、流量調節弁及びこれに結合された制御装置により構成されている。
【0057】
流量調節弁は、タンク対ごとに1つ設けられていてもよく、各タンクごとに1つ設けられていてもよい。タンク対ごとに1つ設けられている場合の流量調節弁の流量調節機構は、第2の送液手段について述べた通りである。
【0058】
第3の送液手段は、流量調節弁を用いて各流路の流量を調節することにより、上限溶液と下限溶液との供給比率を調節することができるとともに、各タンクからの溶液供給量を調節することができる。
【0059】
また第3の送液手段は、ポンプを用いて各タンク対からの溶液供給速度を調節することにより、最終的に各受け部に収容される混合溶液量を変化させることができるものであってもよい。この場合の供給量調節機構は、流量調節弁、ポンプの流量調節部及びこれらに接続された制御装置により構成されたものとすればよい。
<第4の送液手段>
第4の送液手段は、各タンクに接続された各導出路に介在する1台のポンプであって各導出路の流量を調節する機能を有するものを備え、前記供給量調節機構が、前記ポンプの流量調節部及びこれに結合された制御装置により構成されている。
【0060】
3以上の導出路の流量を調節できる弁は、第2の送液手段について述べた通りである。
【0061】
第4の送液手段は、ポンプを用いて、各タンク対において上限溶液と下限溶液との流量比率を調節できる。また各タンクからの流路の流量も調節できる。
【0062】
この送液手段は、制御装置に予め設定したプログラムに従って、1台のポンプを用いて各タンクからの溶液の供給比率を調節し、又はさらに各タンクからの溶液供給量を調節しながら、各タンク中の溶液をミキサーに供給できる。
フラクションコレクター
フラクションコレクターは分注ノズルと複数の受け部とを有し、これらの相対的移動により、ミキサーから排出される混合溶液を分注部から各受け部に順次収容する。
【0063】
フラクションコレクターは、通常、各受け部に同量づつ混合液を収容するものであればよい。混合液を同量づつ収容する機構としては、分注部からの液滴数、各受け部の増加重量、分注ノズルと各受け部との対向時間などを感知して、分注ノズルと各受け部とを同時間対向させるように、分注ノズルと受け部とが相対的に移動する公知の機構を採用すればよい。
【0064】
また、フラクションコレクターは、これに接続された制御部により、分注ノズルと各受け部との対向時間を調節できるものであってもよい。これにより、各タンクからの供給液量の比率を一定に保ちながら各受け部に収容される混合液の量を変化させることができる。
対象物質添加機構
本発明の装置は、種々のスクリーニング用溶液の作製のために使用できるが、特に生体高分子の結晶化最適条件のスクリーニング用溶液、中でも、従来膨大な手間を要していたタンパク質結晶化最適条件のスクリーニング用溶液の作製に一層好適に用いることができる。
【0065】
この場合の本発明の装置は、上述したような溶液セットを作製するだけのものであってもよいが、フラクションコレクターの受け部の各フラクションに対して対象となる物質を添加する機構を備えるものであれば、対象物質の分注を別途行う必要がなく便利である。この場合は、試薬として市販されている物質又は合成できる物質のように、十分量が入手できる物質を添加するものとすればよい。このような比較的多量を入手できる物質として、多糖類、ペプチド等が挙げられる。また、十分量を入手できることが希であるようなタンパク質を添加するものである場合は、フラクションコレクターにより各受け部に収容する溶液量をその分少なく、例えば10μl以下程度とすればよい。
【0066】
対象物質添加機構は、混合溶液が収容される前又は後の各フラクションに対象物質を分注するものであってもよく、ミキサーからフラクションコレクターへの流路に対象物質溶液を添加するものであってもよい。
【0067】
また対象物質添加機構は、各フラクションに対して対象物質を同量づつ添加するものであってもよく、予め設定されたプログラムに従って溶液中の最終対象物質濃度を漸次的に変化させるように、フラクション毎に添加量を調節できるものであってもよい。
【0068】
具体的には対象物質添加機構は、対象物質貯留部と、貯留部に接続された対象物質導出路と、導出路の途中に介在されたポンプとを有する。対象物質導出路の先端はミキサーからフラクションコレクターへの導出路に接続されていてもよく;又は対象物質導出路の先端に分注ノズルを備え、ノズルがフラクションコレクターの各受け部に対して相対的に移動することにより、各受け部に対象物質を分注できるものであってもよい。
【0069】
各受け部に対する対象物質供給量を変化させ得るものである場合は、ポンプは流量調節部及びこれに接続された制御部を備えるものとすればよい。
(II)スクリーニング溶液の作製方法
本発明の方法は、少なくとも2種類の特性を有する溶液について各特性の特性値を漸次的に変化させマトリクス状に組み合わせた複数のスクリーニング用溶液の作製方法であって、
各種類の特性の上限及び下限の性質を有する上限溶液及び下限溶液を準備し、
前記上限溶液及び下限溶液を各々収容するタンクと、各タンクに接続された導出路と、該導出路の途中に介在する供給量調節機能付きの送液手段と、前記導出路の先端に接続されたミキサーと、該ミキサーから排出される混合溶液を受複数の受け部に順次収容するフラクションコレクターとを備えた装置を用い、
上限溶液収容タンクと下限溶液収容タンクとから排出される上限溶液と下限溶液とを前記導出路及び送液手段を用いて供給割合を漸次的に変化させつつ前記ミキサーに供給する操作を、複数種類の特性の各特性値を漸次的に変化させたマトリクス状組み合わせが得られるように、順次行ない、
該供給操作に並行して前記ミキサーから混合溶液を順次排出し、
排出された混合溶液を前記フラクションコレクターにより前記複数の受け部に順次収容する方法である。
マトリクス状組み合わせを得る供給操作
前記マトリクス状組み合わせを得る供給操作が、第1番目から第n番目までの特性の溶液について行なわれ、該供給操作は、低い番数の特性の漸次的変化を繰り返しながら、その都度、より順位の高い番数の特性を漸次的に変化させるように行なわれ、該漸次的変化の繰り返しが第n番目の特性まで行われ、且つ、より高い番数の特性が変化する毎に所定番数から漸次的変化が繰り返されるようにして行えばよい。
【0070】
具体的方法は、スクリーニング溶液の作製装置について説明した通りである。特性の1つとして液量を漸次的に変化させる場合は、送液手段により受け部への混合溶液収容量を漸次的に変化させるように各溶液の送液速度を変化させるか、又はフラクションコレクターのノズルと各受け部との対向時間を変化させることにより、得られる溶液セットにおいて液量勾配を設ければよい。
対象物質の添加
本発明により溶液セットを作製した後、各溶液と対象物質とを別途混合すればよいが、本発明方法においては、各受け部に溶液を収容した後、さらに各受け部に対して対象物質を添加することが好ましい。この場合の対象物質は、ミキサーより下流の導出路内に添加してもよく、各受け部に分注してもよい。
【0071】
対象物質が生体高分子であり、その結晶化最適条件をスクリーニングするための溶液セットを作製する場合は、本発明方法は、生体高分子結晶化最適溶液のスクリーニング方法でもある。
【0072】
例えば対象物質がタンパク質である場合の添加量は、タンパク質の種類によっても異なるが、溶液中のタンパク質濃度が最終的に2~50mg/ml程度になるようにすればよい。なお、前述したように、通常対象タンパク質は大量には入手できないため、各受け部に溶液を通常10μl程度まで収容すればよい。タンパク質を添加した後は、通常4℃~室温程度の温度下で1~3日間程度静置すればよい。
【0073】
次いで、最もタンパク質が結晶化し易いと思われる溶液を選択すればよい。具体的には、通常、目視により又は光学顕微鏡を用いて、タンパク質の結晶や微結晶が形成されている溶液を選択したり、これらが観察されない場合は、結晶に近いと考えられるものが形成されている溶液を選択すればよい。また、偏光顕微鏡を用いて結晶の有無を検出したり、電気泳動により目的タンパク質の結晶が形成されていることを確認したり、タンパク質染色用溶液を添加することにより結晶と考えているものがタンパク質であることを確認したりすることもできる。
【0074】
その他の生体高分子の結晶化条件をスクリーニングする場合も上記説明したタンパク質の結晶化の場合と同様にして行えばよい。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、複数の特性の最適な組み合わせを効率的に選択できるスクリーニング用溶液の作製方法及び装置が提供された。また本発明によれば、生体高分子結晶化のための複数の特性の最適な組み合わせを効率的に選択できる生体高分子結晶化最適溶液のスクリーニング方法が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
以下、本発明を図面を参照してより詳細に説明する。
【0077】
図1は、本発明の1実施形態であるスクリーニング用溶液の作製装置の概略構成を示す図である。この装置は、下限溶液収容タンク111~11n及び上限溶液収容タンク121~12nとミキサー3とを備え、タンク111~11n及び121~12nとミキサー3とは、導出チューブ511~51n及び521~52nにより連通している。導出チューブ511~51n及び521~52nの途中には、それぞれ流量調節ポンプ211~21n及び221~22nが配設されている。ミキサー3の下流側にはフラクションコレクター4が接続されている。各流量調節ポンプ211~21n及び221~22nの流量調節部には、制御部6が接続されている。
【0078】
フラクションコレクター4は、分注ノズル41と複数のウェル42wを有する受け皿42とを備えている。ウェルに代えて複数の試験管が載置されていてもよい。
【0079】
この装置を用いて、例えばタンパク質結晶化最適条件のスクリーニングのための溶液を作製するにあたっては、第1順位の特性を調節するための下限溶液及び上限溶液をタンク対111及び121に収容し、より高い順位の特性調製用の溶液を順に112及び122、113及び123・・・に収容するようにし、最も高い順位の特性を調製する溶液をタンク対11n及び12nに収容しておく。
【0080】
次いで、予め制御部に設定されたプログラムに従って、ポンプ211及び221の流量を調節することにより、タンク対111と121とのからの溶液供給量の比率を次第にタンク121からの供給量の比率が多くなるように直線的に変化させてミキサー3に送られる溶液の第1特性の値を漸次的に増加させる。この間、他の全てのポンプは一定速度で運転することにより、ミキサー3に供給される混合液中の他の特性値は一定に保たれるようにする。
【0081】
ミキサー3に供給される混合液の第1特性値が下限溶液値から上限溶液値まで直線的に変化したら、次いで、制御部6からの指示によりポンプ212と222とからの溶液供給量の比率を、ミキサー3に供給される混合液の第2順位の特性値が1段階高くなるように変化させる。第2特性値の増加ごとに前述したようにして第1特性の直線的勾配を設ける。より上位の順位の特性についても同様にして段階的勾配を設ける。
【0082】
この間フラクションコレクター4のノズル41又は/及び受け皿42を一定速度で移動させることにより、ノズル41と各ウェル42wとの対向時間を同じにする。ポンプによる送液速度を一定にすることにより、全てのウェル42wに同量づつ混合溶液が滴下により分注される。これにより、複数ウェル42wに分注された複数の溶液は、第1順位から第n順位の特性までのマトリクス状組み合わせを有するものとなる。
【0083】
対象物質濃度の最適値のスクリーニングも行う場合は、ウェル42wに収容される混合液の液量を変化させる。この場合、制御部6の指示により全てのポンプによる流量を同じ比率で増加させてればよい。これにより、全てのタンクからの流量の比率を変化させることなく流量のみを増大させることができるため、液量の変化によりそれ以外の溶液特性を変化させることがない。
【0084】
なお図示しないが、pH勾配を設ける場合は、通常、ミキサー3より下流側のいずれかの溶液のpHを監視するモニターが設けられ、pHを監視しつつ下限溶液及び上限溶液の供給量が定められる。
【0085】
この他、図示しないが、図1の装置において制御部6をフラクションコレクター4にも接続し、ノズル41と各ウェル42wとの対向時間を直線的又は段階的に変化させることによっても、液量勾配を設けることができる。
【0086】
また図2は本発明の他の実施形態であるスクリーニング用溶液の作製装置の概略構成を示す図である。この装置は、図1の装置において、さらに対象物質供給装置7を備えている。ここでの供給装置7は、フラクションコレクター4の受け皿42との間の相対的移動により各ウェル42wに対象物質溶液を一定量づつ分注できるものである。その他の構成は図1の装置と同様であり、同じ部分には同じ符号を付している。この装置を用いれば、溶液セットを作製するだけでなく、各ウェル内に対象物質溶液を分注することができ、この装置だけで結晶化最適溶液を選択できる。
【0087】
また図示しないが、対象物質添加装置は、制御部が接続されて添加量を変化させることができるものであってもよい。これにより、ウェル42wに供給する混合液の液量を変化させることなく、最終的に得られる対象物質溶液中に対象物質の濃度勾配を設けることができる。
【0088】
図3は、本発明のさらに他の実施形態であるスクリーニング溶液作製装置の概略構成を示す図である。
【0089】
この装置は、図1の装置において、タンク対111及び121~タンク対11n及び12nまでのn個のタンク対に対して、それらの下流側に、それぞれ流量調節弁81~8n及びポンプ21~2nが一つづつ設けられている。制御部6は流量調節弁81~8nに接続されて、弁81~8nによるタンク対111~11nとタンク121~12nとの溶液供給比率を制御する。その他の構成は図1の装置と同様であり、同じ部分には同じ参照符号を付している。
【0090】
この装置を用いて、スクリーニング用溶液を作製するにあたっては、制御部6の指示に従い、弁81~8nにより各流路の断面積又は開閉時間を調節し、これによりミキサー3に供給される混合液中の各特性値を変化させる。ポンプ21~2nはそれぞれ所定の一定流量で送液する。図1について説明したと同様にしてミキサーに供給される混合液について各特性を順次変化させることにより、各特性のマトリクス状組み合わせを有する複数の溶液がフラクションコレクター4のウェル42w内に収容される。
【0091】
なお図示しないが、pH勾配を設ける場合は、通常、弁81~8nより下流側のいずれかの溶液のpHを監視するモニターが設けられ、pHを監視しつつ下限溶液及び上限溶液の供給量が定められる。
【0092】
図3の装置において、各タンク対ごとに設けられた弁81~8nに代えて、図1の装置と同様に全てのタンクに一つづつ流量調節弁を設けることもできる。
【0093】
また図示しないが、制御部6は弁81~8nの他に、ポンプ21~2nにも接続されていてもよい。この装置を用いて、各タンクからの溶液供給量を同じ比率で変化させることにより、ミキサー3に供給される混合液において、液量以外の特性に影響を及ぼすことなく液量を変化させることができる。この装置を用いれば、対象物質濃度の最適値のスクリーニングも行える溶液セットが得られる。
【0094】
この他、図示しないが、図3の装置において制御部6はフラクションコレクター4にも接続されていてもよい。この場合は、制御部6により、ノズル41と各ウェル42wとの対向時間を直線的又は段階的に変化させることにより、ウェル42wに収容される複数の溶液に液量勾配を設けることができる。
【0095】
また図示しないが、図3の装置は、さらに対象物質添加装置7を備えていてもよい。添加装置7は図2に示した通りであり、その動作も同様である。この装置を用いれば、溶液セットを作製するだけでなく、各ウェル42w内に対象物質溶液を分注することができる。
【0096】
図4は、本発明のさらに他の実施形態であるスクリーニング溶液作製装置の概略構成を示す図である。
【0097】
この装置は、図3の装置において、タンク対毎に設けられたポンプ21~2nに代えて、全てのタンクからの導出路に一つのポンプ2が配設されたものである。その他の構成は図3の装置と同様であり、同じ部分には同じ参照符号を付している。この装置を用いて、スクリーニング用溶液を作製するにあたっては、図3の装置と同様にし、但し各タンクからの溶液導出量は1台のポンプ2により調節する。
【0098】
なお、図4の装置においても、タンク対ごとに設けられた弁81~8nに代えて、各タンクに一つづつ流量調節弁が設けられていてもよい。
【0099】
また、図示しないが、pH勾配を設ける場合は、通常、弁81~8nより下流側のいずれかの溶液のpHを監視するモニターが設けられ、pHを監視しつつ下限溶液及び上限溶液の供給量が定められる。
【0100】
また、図示しないが、制御部6は弁81~8nの他にポンプ2にも接続されていてもよい。この装置を用いる場合は、制御部6によりポンプ2による送液量を変化させることができ、ミキサー3に供給される混合液において液量以外の溶液特性に影響を及ぼすことなく、液量勾配を設けることができる。
【0101】
この他、図示しないが、図4の装置において制御部6をフラクションコレクター4にも接続し、制御部6の指示によりノズル41と各ウェル42wとの対向時間を直線的又は段階的に変化させることによっても、液量勾配を設けることができる。
【0102】
また図示しないが、図4の装置は、さらに対象物質添加装置7を備えていてもよい。
【0103】
図5は、本発明のさらに他の実施形態であるスクリーニング溶液作製装置の概略構成を示す図である。
【0104】
この装置は、図1の装置において、タンク対ごとに設けられた流量調節ポンプ211及び221~21n及び22nに代えて、1台の流量調節ポンプであって各導出チューブ511及び521~51n及び52nの流量を調節できる機能を備えたポンプ2'を備えたものである。その他の構成は図1の装置と同様であり、同じ部分には同じ参照符号を付している。
【0105】
この装置を用いて、スクリーニング用溶液を作製するにあたっては、図4の装置と同様にし、但し各タンクからの溶液導出比率は一つのポンプ2'を用いて各導出チューブの流量を調節することにより調節し、これによりミキサー3に供給される混合液中の各特性値を変化させる。
【0106】
なお図示しないが、pH勾配を設ける場合は、通常、流量調節ポンプ2'より下流側のいずれかの溶液のpHを監視するモニターが設けられ、pHを監視しつつ下限溶液及び上限溶液の供給量が定められる。
【0107】
また、図示しないが、制御部6は流量調節ポンプ2'の他に、フラクションコレクター4にも接続されていてもよい。5の装置は、さらに対象物質添加装置7を備えていてもよい。
【実施例1】
【0108】
図5において二つのタンク対を備えた装置を用いて、リゾチーム結晶化最適条件のスクリーニング溶液セットを作製した。
【0109】
第1特性は塩濃度であり、下限溶液として蒸留水を用い、上限溶液として3M 塩化ナトリウムを用いた。第2特性はpHであり、下限溶液として0.5M HClを用い、上限溶液としてCIEXバッファー(0.15M NaHPO4、0.15M 蟻酸ナトリウム、0.3M酢酸ナトリウム)を用いた。
【0110】
各導出チューブの流量を調節できる流量調節ポンプ2により、第1特性を調節するためのタンク対111及び121からの合計流量を2ml/分間とし、第2特性を調節するためのタンク対112及び122からの合計流量を2ml/分間とした。また、ポンプ2'により、下限溶液と上限溶液との供給比率を変化させることにより、塩濃度について0.15~1.5Mの範囲でリニアグラジエントを設け、pHについて3、4、4.5、5、6及び7のステップグラジエントを設けた。フラクションコレクターの各ウェルには1mlづつ混合液を分取した。得られた溶液セットは、pH及び塩濃度のマトリクス状組み合わせを有していた。各ウェルに得られた各溶液特性を図6に示す。
【0111】
さらに、これらの各溶液及び50mg/mlのリゾチーム水溶液を、それぞれ結晶化ロボットIMPAX(ダグラスインストルメンツ社)を用いて、容量比1:1で、エッペンドルフチューブに分注し、20°Cで2日間静置した。各チューブ内の溶液を光学顕微鏡観察した。溶液の外観を図7に示す。pH3かつ塩化ナトリウム濃度1.5M付近でリゾチームの結晶が形成されたことが分かる。
【実施例2】
【0112】
実施例1において、第1特性の下限溶液として2MのHClを用い、上限溶液として0.1Mの酢酸ナトリウムを用い、第2特性の下限溶液として0.5M塩化ナトリウムを用い、上限溶液として1.5M塩化ナトリウムを用いた。その他の操作は実施例1と同様にした。
【0113】
各チューブ内の溶液を光学顕微鏡観察した。溶液の外観を図8に示す。pH5.0付近かつ塩化ナトリウム濃度1.2M付近でリゾチームの結晶化が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のスクリーニング用溶液の作製方法及び装置、並びに、生体高分子結晶化最適溶液のスクリーニング方法は、タンパク質、ペプチド、核酸、多糖類などの生体高分子の結晶化の最適条件を見出すための溶液のクスリーニングに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、本発明の1実施形態であるスクリーニング用溶液の作製装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態であるスクリーニング用溶液の作製装置の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明のさらに他の実施形態であるスクリーニング用溶液の作製装置の概略構成を示す図である。
【図4】図4は、本発明のさらに他の実施形態であるスクリーニング用溶液の作製装置の概略構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明のさらに他の実施形態であるスクリーニング用溶液の作製装置の概略構成を示す図である。
【図6】図6は、実施例1により得られた溶液の特性のマトリクスを示す図である。
【図7】図7は、実施例1により得られた溶液の外観を示す図である。
【図8】図8は、実施例2により得られた溶液の外観を示す図である。
【符号の説明】
【0116】
111、121……11n、12n タンク
2、2'、21~2n、211、221……21n、22n 流量調節ポンプ
3 ミキサー
4 フラクションコレクター
41 分注ノズル
42 受け皿
42w ウェル又は試験管
511、521……51n、52n 導出チューブ
6 制御部
7 対象物質添加装置
81…8n、811、821……81n、82n 流量調節弁
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7