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明細書 :ルテニウム錯体触媒及びα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4389024号 (P4389024)
公開番号 特開2005-279340 (P2005-279340A)
登録日 平成21年10月16日(2009.10.16)
発行日 平成21年12月24日(2009.12.24)
公開日 平成17年10月13日(2005.10.13)
発明の名称または考案の名称 ルテニウム錯体触媒及びα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法
国際特許分類 B01J  31/22        (2006.01)
C07C  67/347       (2006.01)
C07C  69/608       (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/22 Z
C07C 67/347
C07C 69/608
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 19
全頁数 20
出願番号 特願2004-093650 (P2004-093650)
出願日 平成16年3月26日(2004.3.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年11月17日 社団法人石油学会発行の「創立45周年記念大阪大会 特別講演 招待講演 第33回石油・石油化学討論会 講演要旨集」に発表
特許法第30条第1項適用 平成16年3月11日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第84春季年会講演予稿集2」に発表
審査請求日 平成19年3月22日(2007.3.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】光藤 武明
【氏名】浦 康之
【氏名】近藤 輝幸
【氏名】和田 健司
【氏名】辻田 寛
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100085279、【弁理士】、【氏名又は名称】西元 勝一
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
【識別番号】100109324、【弁理士】、【氏名又は名称】美濃 好美
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開平11-209314(JP,A)
特開2000-297063(JP,A)
特開平01-110638(JP,A)
特開2003-117402(JP,A)
特開平07-206733(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸エステルとの共二量化反応に用いるルテニウム錯体触媒であって、0価、2価、3価、又は4価のルテニウムに多座配位子が配位したことを特徴とするルテニウム錯体触媒。
【請求項2】
前記多座配位子が、窒素原子によりルテニウムに配位する請求項1に記載のルテニウム錯体触媒。
【請求項3】
前記多座配位子が、置換若しくは無置換のターピリジンである請求項1又は2に記載のルテニウム錯体触媒。
【請求項4】
前記多座配位子が、置換若しくは無置換のビピリジンである請求項1又は2に記載のルテニウム錯体触媒。
【請求項5】
下記一般式(1)で表される請求項1乃至4のいずれか1項に記載のルテニウム錯体触媒。
【化1】
JP0004389024B2_000016t.gif
式中、Xはアニオン性配位子、Lmは多座配位子を表す。mは1又は2の整数を表し、nは0乃至4のいずれかの整数を表す。mが2のとき、2個のLmは互いに異なる多座配位子であってもよい。
【請求項6】
Ru(Cl)3(terpy)である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のルテニウム錯体触媒。
【請求項7】
0価のルテニウムに多座配位子が配位したルテニウム錯体触媒の存在下で、
歪みのある環状オレフィンと、α,β-不飽和カルボン酸エステルとを反応させて、
β位が置換されたα,β-不飽和カルボン酸誘導体を製造するα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【請求項8】
2価、3価、又は4価のルテニウムに多座配位子が配位したルテニウム錯体触媒、該ルテニウム錯体触媒に含有されるルテニウムを還元する還元剤、及び還元助剤として作用する溶媒の存在下で、
歪みのある環状オレフィンと、α,β-不飽和カルボン酸エステルとを反応させて、
β位が置換されたα,β-不飽和カルボン酸誘導体を製造するα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【請求項9】
前記還元剤は、亜鉛を含む請求項8に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【請求項10】
前記溶媒が、第1級アルコール又は第2級アルコールである請求項8又は9に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【請求項11】
前記歪みのある環状オレフィンが、3員環、4員環、及び5員環の少なくとも1種を含んで構成される請求項7乃至10のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【請求項12】
前記歪みのある環状オレフィンが、ビシクロ化合物である請求項7乃至10のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【請求項13】
前記歪みのある環状オレフィンが、下記一般式(2)で表されるノルボルネン類である請求項7乃至12のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【化2】
JP0004389024B2_000017t.gif
式中、R1~R6は、互いに独立して水素原子又は低級アルキル基を表す。
【請求項14】
前記歪みのある環状オレフィンが、下記一般式(3)で表されるノルボルナジエン類である請求項7乃至12のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【化3】
JP0004389024B2_000018t.gif
式中、R7~R12は、互いに独立して水素原子又は低級アルキル基を表す。
【請求項15】
前記α,β-不飽和カルボン酸エステルが、下記一般式(4)で表されるα,β-不飽和カルボン酸エステルである請求項7乃至14のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【化4】
JP0004389024B2_000019t.gif
式中、R13~R15は、互いに独立して水素原子又は低級アルキル基を表す。また、R16は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表す。
【請求項16】
前記α,β-不飽和カルボン酸エステルが、下記一般式(5)で表されるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである請求項7乃至15のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【化5】
JP0004389024B2_000020t.gif
式中、R15は、水素原子又は低級アルキル基を表す。また、R16は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表す。
【請求項17】
前記歪みのある環状オレフィンが、前記一般式(3)で表されるノルボルナジエン類である場合に、ホスフィンを更に添加する請求項14乃至16のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【請求項18】
前記ホスフィンが、第3級ホスフィンである請求項17に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
【請求項19】
前記α,β-不飽和カルボン酸エステルが、メチルエステル又はエチルエステルである請求項7乃至18のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム錯体触媒及びα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法に係り、特に、低原子価のルテニウム錯体触媒と、この触媒を用いて歪みのある環状オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸エステルとからβ位が置換されたα,β-不飽和カルボン酸誘導体を製造する製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
有機工業化学の分野では、石油原料から得られる安価なオレフィン類の二量化又は共二量化反応は、重要な研究課題の1つであり、種々の二量化又は共二量化反応が提案されている。
【0003】
石油原料から得られる安価なオレフィンの1つに、エチレンとシクロペンタジエンとから合成されるノルボルネンがある。このノルボルネンを出発物質として得られるノルボルネン誘導体は、橋かけ結合を有する特殊な構造により、種々の有用な機能を発現する可能性がある。そこで、発明者等は、金属錯体触媒を用いたノルボルネン類とα,β-不飽和カルボン酸誘導体との共二量化反応について検討を重ねてきた。
【0004】
従来、ノルボルネンのハイドロアルケニル化の方法として、パラジウム触媒下でのクロスカップリング反応を用いた合成手法が提案されている(非特許文献1)。この方法によれば、α,β-不飽和カルボン酸誘導体のβ位にノルボルニル基を導入して、エキソ(exo)体を高い選択率で得ることができる。
【0005】
また、鉄触媒下で光照射によりノルボルナジエンとアクリル酸エステルとを反応させて、アクリル酸エステルのβ位にノルボルネニル基を導入する反応が報告されている(非特許文献2)。

【非特許文献1】小沢文幸ら、「ノルボルネンのパラジウム触媒不斉ハイドロアルキル化反応」、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティ、ケミカル・コミュニケーション、p1323-1324、(1994)(Fumiyuki Ozawa, et al., J.Chem.Soc.,Chem.Comumun.,1994.p1323-1324.)
【非特許文献2】シュミットら、ヘルベチカ・ケミカル・アクタ、第61巻、p1427(1978)(H.Schmid,et al., Helv.Chim.Acta,61,1427(1987))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載された方法では、反応試薬がハロゲン原子やトリフラート等の脱離基を有しているため原料としてより高価である上、脱離により発生した当量の酸を反応後に中和し、中和により発生した多量の塩を除去する工程が更に必要になる、という問題がある。一方、非特許文献2に記載された反応は、略量論的な反応であり且つ低収率(8%又は27%)である。このため、従来、金属錯体触媒を用いたノルボルネン類とα,β-不飽和カルボン酸誘導体との共二量化反応は、工業的に実用化されていなかった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく成されたものであり、本発明の目的は、オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸エステルとの共二量化反応において、β位が置換されたα,β-不飽和カルボン酸誘導体を、高収率且つ高選択的に得ることができるルテニウム錯体触媒を提供することにある。
【0008】
また、本発明のもう1つの目的は、本発明の触媒を用いて、歪みのある環状オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸エステルとから、β位が置換されたα,β-不飽和カルボン酸誘導体を高収率且つ高選択的に製造することができ、塩の副生がなく目的化合物の単離が容易な、α,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討した結果、歪みのある環状オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸エステルとの共二量化には、0価、2価、3価、又は4価のルテニウムに多座配位子が配位したルテニウム錯体触媒が有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸エステルとの共二量化反応に用いるルテニウム錯体触媒であって、0価、2価、3価、又は4価のルテニウムに多座配位子が配位したことを特徴とするルテニウム錯体触媒を提供するものである。また、本発明は、本発明のルテニウム錯体触媒、該ルテニウム錯体触媒に含有されるルテニウムを還元する還元剤、及び溶媒の存在下で、歪みのある環状オレフィンと、α,β-不飽和カルボン酸エステルとを反応させて、β位が置換されたα,β-不飽和カルボン酸誘導体を製造するα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上説明した通り、本発明によれば、本発明のルテニウム錯体触媒を用いて共二量化を行うことで、歪みのある環状オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸エステルとから、β位が置換されたα,β-不飽和カルボン酸誘導体を、高収率且つ高選択的に製造することができる。
【0012】
例えば、歪みのある環状オレフィンとして、ノルボルネン類、ノルボルナジエン類を用いた場合には、β位にノルボルニル基、ノルボルネニル基が導入されたα,β-不飽和カルボン酸エステルを得ることができる。このエステルは、香料、重合モノマーとして有望である。このように、本発明によれば、工業的に有用な物質を、安価な石油化学原料から製造することができる。
【0013】
また、ヘック反応を利用した従来の触媒反応と異なり、本発明のルテニウム錯体触媒を用いた場合には、反応終了後に多量の塩が副生しない。このため、目的化合物の単離が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[発明の概要]
本発明は、歪みのある環状オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸エステルとを、後述するルテニウム錯体触媒の存在下で反応(共二量化)させて、β位が置換されたα,β-不飽和カルボン酸誘導体を製造するα,β-不飽和カルボン酸誘導体の製造方法を提供するものである。
【0015】
このような共二量化反応の典型的な例としては、下記の反応式(1)で表されるノルボルネンとアクリル酸エステルとの反応や、下記の反応式(2)で表されるノルボルナジエンとアクリル酸メチルとの反応が挙げられる。
【0016】
【化1】
JP0004389024B2_000002t.gif

【0017】
【化2】
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【0018】
[ルテニウム錯体触媒]
周期表の第8族遷移金属元素であるルテニウムは、多様な酸化状態を取ることが可能である。本発明では、ルテニウムの酸化状態が0価、2価、3価、又は4価のルテニウム錯体を触媒として使用する。3価及び4価のルテニウム錯体は、後述する通り、還元剤により2価又は0価に還元されて触媒として活性化される。
【0019】
本発明のルテニウム錯体の構成は、下記一般式(1)で表される。
【0020】
【化3】
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【0021】
式中、Xはアニオン性配位子、Lmは多座配位子、mは1又は2の整数を表す。また、nは0乃至4のいずれかの整数を表す。mが2のとき、2個のLmは互いに異なる多座配位子であってもよい。
【0022】
アニオン性配位子Xとしては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;水素原子;アセチルアセトネート等のジケトネート基;置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、置換基を有していてもよいアリル基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルキルスルフォネート基、アリールスルフォネート基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフォニル基及びアルキルスルフィニル基が挙げられる。これらの中でもハロゲン原子が好ましい。
【0023】
多座配位子Lmとしては、二座配位子又は三座配位子が好ましい。
【0024】
二座配位子としては、ビピリジン(略号bipy)、1,5-シクロオクタジエン(略号cod)、シッフ塩基、フェナントロリン、オルトベンゾキノン誘導体、核酸塩基、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノベンゼン、1,1'-ビナフチル-2,2'-ジアミン、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル、ビス(ジアリールホスフィノ)ベンゼン、ビス(ジアリールホスフィノ)フェロセン、2,2'-ビチオフェン、p-ベンゾキノン、アミノ酸誘導体等が挙げられる。
【0025】
上記二座配位子の中でも、ビピリジン、1,5-シクロオクタジエンが好ましく、窒素原子で配位するビピリジンが特に好ましい。ビピリジン、フェナントロリンは置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基、アルキルカルボニル基、アミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン基、アミノ基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の嵩高くない低級アルキル基が好ましい。
【0026】
三座配位子としては、ターピリジン(略号terpy)、1,3,5-シクロオクタトリエン(略号cot)、ジエチレントリアミン、シッフ塩基、トリアザシクロアルカン、テトラキス(2’-アミノエチル)-1,2-ジアミノプロパン、オクタアザビシクロ[6.6.6]アイコサン、シクロペンタジエニル基、ベンゼン誘導体(π配位)、2,6-ビス(イミノ)ピリジン、2,6-ビス(オキサゾリニル)ピリジン、トリス(ピラゾリル)ボレート、1,3-ビス(ホスフィノメチル)ベンゼン、ビス(ジアリールホスフィノエチル)アリールホスフィン、トリチアシクロアルカン等が挙げられる。
【0027】
上記三座配位子の中でも、ターピリジン、1,3,5-シクロオクタトリエンが好ましく、窒素原子で配位するターピリジンが特に好ましい。ターピリジンは置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルデヒド基、アルキルカルボニル基、アミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン基、アミノ基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の嵩高くない低級アルキル基が好ましい。
【0028】
反応試薬が配位する空配位座を生成するために、多座配位子の数mは1又は2とする。アニオン性配位子の数nは、ルテニウムの原子価、多座配位子の配位原子数、及び数mとに応じて決まり、例えば、2価のルテニウム錯体の場合、通常、八面体6配位構造をとるので、mが1、Lmが三座配位子とすると、nは3である。
【0029】
上記のルテニウム錯体としては、具体的には、RuCl3(terpy)、RuCl3(tri-t-butylterpy)、RuCl4(bipy)、Ru(cod)(cot)等が挙げられる。この中でも、触媒活性に優れる点で、RuCl3(terpy)、RuCl4(bipy)が好ましい。なお、tri-t-butylterpyの正式な名称は、4,4',4"-トリ-t-ブチル-2,2':6',2"-ターピリジン(4,4',4"-tri-t-butyl-2,2':6',2"-terpyridine)である。
【0030】
また、上記のルテニウム錯体は、塩化ルテニウム(III)三水和物(RuCl3・3H2O)を出発原料として合成される。例えば、RuCl3(terpy)は、塩化ルテニウム(III)三水和物とターピリジンとをメタノール中で還流することにより合成される。
[共二量化反応]
上述した共二量化反応は、上記のルテニウム錯体触媒、還元剤、及び溶媒の存在下で、歪みのある環状オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸エステルとを反応させるものである。この反応は、反応容器に、反応原料、ルテニウム錯体触媒、還元剤、及び溶媒を加え、得られた溶液を加熱攪拌することで進行する。反応終了後、溶媒を除去し、生成物を単離することで、目的化合物を得ることができる。
【0031】
なお、ルテニウム錯体触媒が0価のルテニウムを含む場合は、還元剤は不要である。
【0032】
(歪みのある環状オレフィン)
歪みのある環状オレフィンとは、環構造に歪みを有する環状オレフィンである。このような環状オレフィンには、単環の環状オレフィンの外、ノルボルネン類、ノルボルナジエン類等の橋頭炭素原子を有するビシクロ化合物が含まれる。
【0033】
単環の環状オレフィンとしては、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン等の炭素数が3~5の環状オレフィンを用いることができる。これら単環の環状オレフィンは置換されていてもよく、置換基としては、アルキル基、アリール基が挙げられる。
【0034】
ノルボルネン類としては、下記一般式(2)で表されるノルボルネン類を用いることができる。
【0035】
【化4】
JP0004389024B2_000005t.gif

【0036】
上記の式中、R1~R6は、互いに独立して水素原子又は低級アルキル基を表す。
【0037】
低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基等の炭素数が1~5のアルキル基が挙げられる。反応性の高さから、R1~R6としては、水素原子が特に好ましい。
【0038】
具体例としては、ノルボルネン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン等が挙げられる。
【0039】
ノルボルナジエン類としては、下記一般式(3)で表されるノルボルナジエン類を用いることができる。
【0040】
【化5】
JP0004389024B2_000006t.gif

【0041】
上記の式中、R7~R12は、互いに独立して水素原子又は低級アルキル基を表す。
【0042】
低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基等の炭素数が1~5のアルキル基が挙げられる。反応性の高さから、R7~R12としては、水素原子が特に好ましい。
【0043】
具体例としては、ノルボルナジエン、メチルノルボルナジエン、ジメチルノルボルナジエン、エチルノルボルナジエン等が挙げられる。
【0044】
(α,β-不飽和カルボン酸エステル)
α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、下記一般式(4)で表されるα,β-不飽和カルボン酸エステルを用いることができる。
【0045】
【化6】
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【0046】
上記の式中、R13~R15は、互いに独立して水素原子又は低級アルキル基を表す。また、R16は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基の炭化水素基を表す。
【0047】
13~R15を表す低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基等の炭素数が1~5のアルキル基が挙げられる。R13、R14としては、水素原子が好ましく、R15としては、水素原子又はメチル基が好ましい。即ち、α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが好ましい。
【0048】
16を表す炭化水素基は、直鎖状でも分岐していてもよい。R16を表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基等が挙げられる。R16を表すアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等が挙げられる。R16を表すアルキニル基としては、エチニル基、2-プロピニル基等が挙げられる。
【0049】
16を表すアリール基としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、メシチル基等が挙げられる。
【0050】
16を表す炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-ブチル基等の低級アルキル基が好ましい。
【0051】
(還元剤)
還元剤は、上記ルテニウム錯体に含有される3価又は4価のルテニウムを2価又は0価に還元して、ルテニウム錯体触媒を活性化させると推測される。このような還元剤としては、亜鉛、アルミニウム、鉄、亜鉛-銅合金(zinc-copper couple)等を用いることができる。この中でも、反応収率向上の観点から、亜鉛が特に好ましい。また、接触面積を大きくするため、粉末状の亜鉛を用いることがより好ましい。例えば、ナカライ社製の粉末状亜鉛を用いることができる。還元剤の添加量は、触媒に対して10当量程度とするのが好ましい。還元剤の添加量を上記の範囲とすることで、反応収率が向上する。
【0052】
(溶媒)
反応溶媒としては、上記の還元剤を使用する場合は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の第1級又は第2級のアルコールを用いる。これらのアルコールは、上記還元剤の還元作用を促進する還元助剤として機能する。例えば、メタノール、エタノール等の第1級アルコールが好適に使用される。
【0053】
一方、還元剤を使用しない場合には、アルコール系溶媒の外、n-ペンタン、n-ヘキサン、トルエン等の非極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等の塩素系溶媒を用いることができる。
【0054】
溶媒量は、溶媒中の触媒の濃度が0.017~0.05モル/リットル、好ましくは0.05モル/リットル程度となるように加減する。溶媒中の触媒の濃度を、上記の範囲とすることで、反応収率が向上する。
【0055】
(添加剤)
反応原料としてノルボルナジエン類を用いる場合には、反応溶液にホスフィンを添加することが好ましい。配位能力の高いホスフィンを添加することで、ノルボルナジエン類の二座配位を抑制し、ノルボルナジエン類の反応性の低下を防止することができる。
【0056】
ホスフィンとしては、反応収率向上の観点から、第2級又は第3級のホスフィンが好ましく、トリフェニルホスフィン等の第3級ホスフィンがより好ましい。
【0057】
また、ホスフィンの置換基としては、アルキル基又はアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。アルキル基としては、通常、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~4のアルキル基が用いられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アリール基としては、通常、炭素数6~24、好ましくは炭素数6~10のアリール基が用いられ、例えば、フェニル、ナフチル、トリル、キシリル等が挙げられる。
【0058】
具体的には、トリフェニルホスフィン、トリス(フルオロフェニル)ホスフィンの外、以下のホスフィンを用いることができる。
【0059】
ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニル(メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、ジトリルメチルホスフィン、ジトリルエチルホスフィン、ジ(フルオロフェニル)メチルホスフィン、ジ(クロロフェニル)メチルホスフィン、ジ(ブロモフェニル)メチルホスフィン、ジキシリルメチルホスフィン、ジ(メトキシフェニル)メチルホスフィン、ジナフチルメチルホスフィン、フェニルトリルメチルホスフィン、
【0060】
トリス(ハロフェニル)ホスフィン、ビス(ハロフェニル)フェニルホスフィン、ジフェニルハロフェニルホスフィン、トリス(メトキシフェニル)ホスフィン、ビス(メトキシフェニル)フェニルホスフィン、トリス(トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ビス(トリフルオロメチルフェニル)フェニルホスフィン、ジフェニル(トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリトリルホスフィン、ジトリルフェニルホスフィン、ジフェニルトリルホスフィン、トリス(ジメチルアミノフェニル)ホスフィン、ビス(ジメチルアミノフェニル)フェニルホスフィン、ジフェニル(ジメチルアミノフェニル)ホスフィン、等が挙げられる。
【0061】
ホスフィンの添加量は、触媒に対して10当量程度とするのが好ましい。ホスフィンの添加量を上記の範囲とすることで、反応収率がより向上する。
【0062】
(反応条件)
反応温度は、溶媒の沸点に応じて適宜設定されるが、反応収率、選択性の向上、反応時間の短縮等の観点から、反応温度を80~100℃の範囲とするのが好ましい。反応温度を上記の範囲とすることで、反応収率、選択性がより改善される。また、反応時間は、反応原料(基質)に応じて適宜設定されるが、反応収率向上の観点から、反応時間を1~12時間の範囲とするのが好ましい。反応容器としては、耐腐食性のガラス容器等を用いることが好ましい。
【0063】
ルテニウム錯体触媒は、一般に空気中では不安定であるため、反応は不活性ガスの雰囲気下で行うのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等を用いることができる。また、ルテニウム錯体触媒は、溶媒に均一に溶解し難いため、反応溶液を攪拌することが好ましい。攪拌方法としては、機械的な攪拌の他、超音波による攪拌が挙げられる。
【0064】
オレフィンのα,β-不飽和カルボン酸エステルに対する反応モル比は2~7倍が好ましい。反応モル比を上記の範囲とすることで、反応収率、選択性がより改善される。反応収率向上の観点から、反応モル比は5~7倍がより好ましい。
【0065】
(目的化合物の確認、単離)
上述した共二量化反応により、β位が置換されたα,β-不飽和カルボン酸エステルが高収率で生成する。反応原料としてノルボルネン類、ノルボルナジエン類を用いた場合には、オレフィンに対し橋頭と同じ側に置換基が導入されたエキソ-トランス(exo-trans)体を、高い選択率で得ることができる。
【0066】
目的化合物の確認、反応収率の確認は、気-液クロマトグラフィー(GLC)等、通常の分析手段を用いて行うことができる。反応終了後、反応溶液から溶媒を除去し、残渣から目的化合物を蒸留分離する。これにより、触媒と目的化合物とが分離される。なお、反応条件によっては、エキソ-トランス体以外の異性体が副生する。この異性体とエキソ-トランス体とは、例えばカラムクロマトグラフィーにより分離することができる。
【0067】
β位にノルボルニル基等が導入されたα,β-不飽和カルボン酸エステルは、フルーツ様の芳香を有しており、香料として有望である。また、β位にノルボルネニル基等が導入されたα,β-不飽和カルボン酸エステルは、2つの重合部位を有しており、異なるタイプの重合反応により2種類の重合体を得ることができる。従って、モノマーとしても有望である。
【0068】
例えば、下記に示すように、ノルボルニル基が導入されたアクリル酸エステル(1a)をエチレンと共重合させると、ノルボルニル基が側鎖に導入された重合体(1)を得ることができる。
【0069】
【化7】
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【0070】
一方、ノルボルネニル基が導入されたアクリル酸エステル(9a)では、ノルボルネン骨格のオレフィン部位の開環メタセシス重合により、主鎖に五員環構造とオレフィンとが導入された重合体(2)を得ることができる。
【0071】
【化8】
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【0072】
上記の重合体(1)及び(2)のように、主鎖又は側鎖に環状構造が導入された重合体は、機能性材料として注目されており、フォトレジスト材料等、種々の用途への応用が可能である。
【実施例】
【0073】
以下に本発明を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
下記に示す2-ノルボルネンとアクリル酸エチルの共二量化反応を行った。
【0074】
【化9】
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【0075】
アルゴン雰囲気下、2-ノルボルネン470 mg(5.0 mmol)、アクリル酸エチル100 mg(1.0 mmol)、RuCl3(terpy) 22 mg(0.050 mmol)、亜鉛粉末33 mg(0.50 mmol)およびエチルアルコール1.0 mlを三方コックと磁気回転子を備えたパイレックス(R)製の20 mlガラス反応容器に入れ、この混合物を90 ℃の温浴中にて1時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液をキューゲルロール蒸留器を用いて減圧蒸留した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:関東化学社製「シリカゲル60N」、球状、中性、40-50 μm; 溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=50/1)を行うことにより上記反応式に示すエキソ-トランス体122 mgを得た。得られたエキソ-トランス体は無色油状の液体であった。GLCピークより算出したエキソ-トランス体の反応収率は78%、単離収率は63%であった。生成した共二量体中、エキソ-トランス体が占める割合は93%と高選択率であった。結果を表1に示す。なお、表1において、反応温度はバス温度を表す。
【0076】
得られた共二量体の同定データを以下に示す。
exo-Ethyl(2E)-3-bicyclo[2.2.1]hept-2-ylprop-2-enoate.Bp 120-130 °C (10.0 mmHg), IR spectrum (neat): 1720, 1649 cm-1. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ6.85 (dd, J = 7.6, 15.6 Hz, 1H), 5.71 (dd, J = 1.0, 15.6 Hz, 1H), 4.17 (q, J = 6.8, 2H), 2.28-2.22 (m, 2H), 2.15 (s, 1H), 1.60-1.50 (m, 4H), 1.40-1.32 (m, 2H), 1.28 (t, J = 6.8, 3H), 1.25-1.15 (m, 2H). 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ167.27, 153.77, 118.69, 60.09, 44.59, 41.83, 36.89, 36.55, 35.79, 29.63, 28.87, 14.27. MS (EI) m/z 194 (M+). Anal. Calcd for C12H18O2: C, 74.19; H, 9.34. Found: C, 74.15; H, 9.16.
【0077】
GLCによる分析条件及び収率算出方法を以下に示す。
GLC装置:島津製作所社製、「Shimadzu GC-14B」
ガラスカラム:内径3.2 mm×3.0 m
充填剤:ジーエルサイエンス社製、「Silicone OV-17」
(2% on Chromosorb W(AW-DMCS), 60-80 mesh)
内部標準物質としてナフタレンを用い、内部標準法により定量し、収率を算出した。
【0078】
(実施例2~4)
表1に示す通り、触媒及び反応条件を種々変更し、実施例1と同様にして共二量化反応を行った。結果を表1に併せて示す。
【0079】
(比較例4~8)
表1に示す通り、触媒及び反応条件を種々変更し、実施例1と同様にして共二量化反応を行った。結果を表1に併せて示す。
【0080】
【表1】
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【0081】
表1から分るように、ターピリジンのように多座配位子を有するルテニウム錯体触媒を用いた場合(実施例1~4)は、高収率で反応が進行した。0価のルテニウムを含む触媒を用いた場合(実施例4)は、亜鉛等の還元剤やアルコール系溶媒を使用しなくても反応が進行した。一方、単座配位子しか有していない触媒を用いた場合(比較例1~4)は、非常に低収率若しくは反応が進行しなかった。
【0082】
(実施例5)
下記に示す2-ノルボルネンとアクリル酸メチルの共二量化反応を行った。
【0083】
【化10】
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【0084】
アルゴン雰囲気下、2-ノルボルネン470 mg(5.0 mmol)、アクリル酸メチル86 mg(1.0 mmol)、RuCl3(terpy) 22 mg(0.050 mmol)、亜鉛粉末33 mg(0.50 mmol)およびメチルアルコール1.0 mlを三方コックと磁気回転子を備えたパイレックス(R)製の20 mlガラス反応容器に入れ、この混合物を80 ℃の温浴中にて1時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液をキューゲルロール蒸留器を用いて減圧蒸留した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル: 関東化学 シリカゲル60N、球状、中性、40-50μm; 溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=50/1)を行うことにより上記反応式に示すエキソ-トランス体129 mgを得た。得られたエキソ-トランス体は無色油状の液体であった。GLCピークより算出したエキソ-トランス体の反応収率は85%、単離収率は70%であった。GLCによる分析条件及び収率算出方法は実施例1と同様である。結果を表2に示す。生成した共二量体中、エキソ-トランス体が占める割合は95%と高選択率であった。なお、表2において、反応温度はバス温度を表す。
【0085】
得られた共二量体の同定データを以下に示す。
exo-Methyl(2E)-3-bicyclo[2.2.1]hept-2-ylprop-2-enoate. Bp 110-120 °C (10.0 mmHg), IR spectrum (neat): 1727, 1652 cm-1. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ6.85 (dd, J = 7.8, 15.7 Hz, 1H), 5.72 (dd, J = 1.0, 15.7 Hz, 1H), 3.71 (s, 3H), 2.29-2.22 (m, 2H), 2.15 (s, 1H), 1.60-1.43 (m, 4H), 1.40-1.32 (m, 2H), 1.28-1.15 (m, 2H). 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ167.27, 153.88, 118.14, 51.39, 44.69, 41.94, 37.01, 36.66, 35.88, 29.74, 28.98. MS (EI) m/z 180 (M+). Anal. Calcd for C11H16O2: C, 73.30; H, 8.95. Found: C, 73.15; H, 9.16.
【0086】
(実施例6~9)
表2に示す通り、溶媒及びアクリル酸エステルのアルコール成分由来のアルキル基(R基)を種々変更した以外は、実施例1と同様にして共二量化反応を行った。結果を表2に併せて示す。
【0087】
(比較例5~7)
表2に示す通り、R=メチルとし、溶媒を変更した以外は、実施例1と同様にして共二量化反応を行った。結果を表2に併せて示す。
【0088】
【表2】
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【0089】
3価のルテニウムを含むRuCl3(terpy) 触媒を用いた場合は、亜鉛等の還元剤が必要となる。RuCl3(terpy) 触媒、亜鉛の存在下では、表2から分るように、溶媒として第1級アルコール又は第2級アルコールを用いた場合(実施例5~9)は、高収率で反応が進行した。これはα水素を有するアルコールが還元助剤として作用するためであると考えられる。アルコール溶媒中でエステルを反応させる場合、エステル交換反応が起きる可能性があるため、エステルのアルコール成分と同種のアルコール溶媒を使用するのが一般的であるが、R=t-ブチルとし、溶媒としてn-ブタノールを用いた場合(実施例9)も、エステル交換反応は起こらず、高収率で反応が進行した。一方、炭化水素系溶媒(比較例2)、エーテル系溶媒(比較例3)を用いた場合は反応しなかった。また、第3級アルコールを用いた場合(比較例1)も反応しなかった。
【0090】
(実施例10)
下記に示す2,5-ノルボルナジエンとアクリル酸メチルの共二量化反応を行った。
【0091】
【化11】
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【0092】
アルゴン雰囲気下、2,5-ノルボルナジエン644 mg(7.0 mmol)、アクリル酸メチル86 mg(1.0 mmol)、RuCl3(terpy) 22 mg(0.050 mmol)、亜鉛粉末33 mg(0.50 mmol)、トリス(p-フルオロフェニル)ホスフィン163 mg(0.50 mmol)およびメチルアルコール1.0 mlを三方コックと磁気回転子を備えたパイレックス(R)製の20 mlガラス反応容器に入れ、この混合物を80 ℃の温浴中にて12時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液をキューゲルロール蒸留器を用いて減圧蒸留した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル: 関東化学 シリカゲル60N、球状、中性、40-50μm; 溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=50/1)を行うことにより上記反応式に示すエキソ-トランス体103 mgを得た。得られたエキソ-トランス体は無色油状の液体であった。GLCピークより算出した反応収率は70%、単離収率は58%であった。GLCによる分析条件及び収率算出方法は実施例1と同様である。結果を表3に示す。生成した共二量体中、エキソ-トランス体が占める割合は97%と高選択率であった。なお、表3において、反応温度はバス温度を表す。
【0093】
得られた共二量体の同定データを以下に示す。
exo-Methyl(2E)-3-bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-ylprop-2-enoate. Bp 110-120 °C (10.0 mmHg), IR spectrum (neat): 1724, 1652, 1649 cm-1. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ6.98 (dd, J = 8.8, 15.6 Hz, 1H), 6.12 (t, J = 2.0 Hz, 2H), 5.83 (dd, J = 1.0, 15.6 Hz, 1H), 2.93 (s, 1H), 2.70 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 2.17 (ddd, J = 4.4, 8.8, 13.2 Hz, 1H), 1.47-1.36 (m, 4H). 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ167.00, 154.05, 137.36, 135.75, 119.40, 51.42, 47.81, 45.56, 42.37, 41.52, 32.60. MS (EI) m/z 178 (M+). Anal. Calcd for C11H14O2: C, 74.13: H, 7.92. Found: C, 74.13; H, 7.92.
【0094】
(実施例11~16)
表3に示す通り、添加剤とその添加量、及び反応時間を変更した以外は、実施例10と同様にして共二量化反応を行った。結果を表3に併せて示す。
【0095】
【表3】
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【0096】
表3から分るように、触媒に対し10当量のホスフィンを添加した場合(実施例10)は、高収率で反応が進行した。また、触媒に対し5当量の添加量で且つ短時間でも相当の反応が進行した(実施例11~16)。トリアリールホスフィンを用いた場合(実施例10、11、14)、特に電子吸引基を有するトリアリールホスフィンを用いた場合(実施例10、14)に収率が向上した。