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明細書 :気体分子の整列保持方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4217776号 (P4217776)
公開番号 特開2004-196594 (P2004-196594A)
登録日 平成20年11月21日(2008.11.21)
発行日 平成21年2月4日(2009.2.4)
公開日 平成16年7月15日(2004.7.15)
発明の名称または考案の名称 気体分子の整列保持方法
国際特許分類 C01B  13/00        (2006.01)
C07D 241/12        (2006.01)
C07D 241/24        (2006.01)
C07F   1/08        (2006.01)
FI C01B 13/00
C07D 241/12
C07D 241/24
C07F 1/08 C
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2002-367343 (P2002-367343)
出願日 平成14年12月18日(2002.12.18)
審査請求日 平成17年4月20日(2005.4.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】北川 進
【氏名】小林 達生
個別代理人の代理人 【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
審査官 【審査官】宮澤 尚之
参考文献・文献 特開2000-210559(JP,A)
特開平09-227572(JP,A)
調査した分野 C01B 13/00-13/36
B01J 20/22
特許請求の範囲 【請求項1】
遷移金属カチオンとそれを連結する有機架橋配位子によって多孔性3次元構造を構成して細孔内に、常温常圧で気体の分子を、収容することができる配位高分子のその細孔内に気体分子を収容する際、有機架橋配位子の種類を選択して細孔入口寸法を所望する数値に設計することで気体分子を規則性を持って収容し、細孔内の空間を利用して気体分子を整列保持させる方法であって、配位高分子として遷移金属カチオンと第1有機架橋配位子から構成される2次元シートが層をなし、2座配位可能な第2有機架橋配位子が各層に存在する遷移金属カチオンに配位することで隣接するシートとシートを連結させ、その間に細孔が形成されている構造を有するものを用い、細孔入口寸法を3~7Å×3~7Åに、シートとシートの間隔を決定しているピラー配位子としての第2有機架橋配位子のピッチを3Å~6Åに設計し、配位高分子と気体分子を冷却しながら行う方法
【請求項2】
2座配位可能な第2有機架橋配位子がピラジンまたはその誘導体である請求項記載の方法。
【請求項3】
配位高分子が、遷移金属カチオンとしての銅イオン(2価金属イオン)と第1有機架橋配位子としての2,3-ピラジンジカルボン酸(pzdc)から構成される2次元シートが層をなし、2座配位可能な第2有機架橋配位子としてのピラジン(pyz)が各層に存在する銅イオンに配位することで隣接するシートとシートを連結させ、その間に細孔が形成されている構成を有するCu(pyz)(pzdc)である請求項記載の方法。
【請求項4】
気体分子が2原子分子である請求項1記載の方法。
【請求項5】
2原子分子が酸素分子である請求項記載の方法
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温常圧(25℃1気圧)で気体の分子の整列保持方法関する。
【0002】
【従来の技術】
気体分子は、我々の身の回りに無尽蔵にある物質である。最近では、酸素などに圧力を加えて固体にすると超伝導になることなどがわかってきた。この様に、気体という物質は、我々にとって、未踏の新材料である。気体を新材料として実用化するためには何らかの方法で気体分子を整列させて低次元構造化する必要がある。例えば、酸素を考えた場合、-218℃以下にまで冷却すると分子は固体となり一定の配列を持つ構造となるので新材料としての期待が持たれるが、このような温度は実用上あまりにも多くの制約を伴う。また、走査型プローブ顕微鏡(SPM)のような物理的手法を用いて分子を整列させる方法もあるが、この手法では分子を基盤に1個ずつおいていくようなものなので、一時に大量に整列させることができないし、材料としての汎用性に欠ける。また、多数の分子(数千~数百万個)を1次元に整列させるためには強制力を必要とするため、容易に実現できるものではない。
【0003】
そこで、考えられることは、気体分子が整列保持されるような言わば「器」のようなものを利用して気体分子を整列保持できないかということである。このような器になりえる材料として容易に思いつくことができるのは、ゼオライトなどの無機材料や、活性炭、カーボンナノチューブなどの炭素材料などの多孔性材料である。しかし、これらの多孔性材料は、孔の大きさが、気体分子を整列させて保持するには大きすぎたり不均一であったりするとともに、チャンネル形状(孔の入口の形状)が収容する気体分子に適していなかったりするので、とにかく保持できればよいといった要求には応えることができるが、整列させて保持するという要求には応えることができない。
【0004】
ところで、本発明者らは、ナノメートルの大きさを持つ細孔を規則正しく並べた物質を、あたかもブロックを組むようにデザインし、化学的に合成する研究をこれまで精力的に行ってきた。その研究成果として、遷移金属カチオンとそれを連結する有機架橋配位子によって多孔性3次元構造を構成して細孔内に、常温常圧で気体の分子を、収容することができる配位高分子の合成に成功している。この配位高分子は、遷移金属カチオンと有機架橋配位子が分子レベルで直接交互に結合した有機・無機の複合物質であり、その特徴としては、常に均一な構造を保つこと、自在に分子レベルから設計し、単に室温、1気圧で混ぜるだけで合成することができること(自己集合)、数グラムでバスケットボールコートからサッカーグラウンドまでの表面積を持つといったことが挙げられ、ガス貯蔵材料として期待されている。
このような配位高分子の一例としては、遷移金属カチオンと第1有機架橋配位子から構成される2次元シートが層をなし、2座配位可能な第2有機架橋配位子が各層に存在する遷移金属カチオンに配位することで隣接するシートとシートを連結させ、その間に細孔が形成されている構造を有するものがあり、その具体例として、遷移金属カチオンとしての銅イオン(2価金属イオン)と第1有機架橋配位子としての2,3-ピラジンジカルボン酸(pzdc)から構成される2次元シートが層をなし、2座配位可能な第2有機架橋配位子としての4,4’-ビピリジル(bpy)が各層に存在する銅イオンに配位することで隣接するシートとシートを連結させ、その間に細孔が形成されている構成を有するCu2(bpy)(pzdc)2がメタンの貯蔵能力に優れることを明らかにしている(下記の特許文献1や非特許文献1を参照)。
【0005】
上記の研究成果は、配位高分子をガス貯蔵材料として利用することを目的として得られたものであり、これまで、ガス貯蔵材料としての配位高分子の設計は、いかに多量のガスを貯蔵させるかという視点に基づいて行われてきた。従って、配位高分子を利用して気体分子を配列させるためにはどのような設計を行えばよいか、意図したように配位高分子を設計できたとしても、気体分子を思い通りに配列させることができるかといった点については未知の領域であった。
【0006】
【特許文献1】
特開平9-227572号公報
【非特許文献1】
北川進,「ナノ金属錯体によるナノサイエンス」,化学工業,第53巻,第11号,2002年,p808-815
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、遷移金属カチオンとそれを連結する有機架橋配位子によって多孔性3次元構造を構成して細孔内に、常温常圧で気体の分子を、収容することができる配位高分子のその細孔内の空間を利用して気体分子を整列保持させる方法提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の点に鑑みて種々の検討を行った結果、配位高分子を構成する有機架橋配位子の種類を選択して細孔入口寸法を所望する数値に設計し、なおかつその分子が規則正しく繰り返し結合するピッチを決定した場合、気体分子は細孔入口寸法とピッチに応じた配列形態で収容されることを見いだした。
【0009】
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、本発明の気体分子の整列保持方法は、請求項1記載の通り、遷移金属カチオンとそれを連結する有機架橋配位子によって多孔性3次元構造を構成して細孔内に、常温常圧で気体の分子を、収容することができる配位高分子のその細孔内に気体分子を収容する際、有機架橋配位子の種類を選択して細孔入口寸法を所望する数値に設計することで気体分子を規則性を持って収容し、細孔内の空間を利用して気体分子を整列保持させる方法であって、配位高分子として遷移金属カチオンと第1有機架橋配位子から構成される2次元シートが層をなし、2座配位可能な第2有機架橋配位子が各層に存在する遷移金属カチオンに配位することで隣接するシートとシートを連結させ、その間に細孔が形成されている構造を有するものを用い、細孔入口寸法を3~7Å×3~7Åに、シートとシートの間隔を決定しているピラー配位子としての第2有機架橋配位子のピッチを3Å~6Åに設計し、配位高分子と気体分子を冷却しながら行う方法である
た、請求項記載の方法は、請求項記載の方法において、2座配位可能な第2有機架橋配位子がピラジンまたはその誘導体である。
また、請求項記載の方法は、請求項記載の方法において、配位高分子が、遷移金属カチオンとしての銅イオン(2価金属イオン)と第1有機架橋配位子としての2,3-ピラジンジカルボン酸(pzdc)から構成される2次元シートが層をなし、2座配位可能な第2有機架橋配位子としてのピラジン(pyz)が各層に存在する銅イオンに配位することで隣接するシートとシートを連結させ、その間に細孔が形成されている構成を有するCu(pyz)(pzdc)である。
また、請求項記載の方法は、請求項1記載の方法において、気体分子が2原子分子である。
また、請求項記載の方法は、請求項記載の方法において、2原子分子が酸素分子である
【0010】
【発明の実施の形態】
遷移金属カチオンとそれを連結する有機架橋配位子によって多孔性3次元構造を構成して細孔内に、常温常圧で気体の分子を、収容することができる配位高分子としては、例えば、上記の特許文献1や非特許文献1により公知の遷移金属カチオンと第1有機架橋配位子から構成される2次元シートが層をなし、2座配位可能な第2有機架橋配位子が各層に存在する遷移金属カチオンに配位することで隣接するシートとシートを連結させ、その間に細孔が形成されている構造を有するものが挙げられる。このような配位高分子の細孔入口寸法は、シートとシートの間隔を決定しているピラー配位子としての第2有機架橋配位子の種類に基づき、この細孔入口は気体分子の1次元チャンネル断面として機能する。
細孔入口寸法は、第2有機架橋配位子の分子長が長くなればなるほどシートとシートの間隔が長くなるので大きくなる。従って、第2有機架橋配位子の分子長を長くすることは、多量のガスを貯蔵させるという目的においては有利であるが、こうすると細孔内での気体分子の自由度が増すので気体分子を整列保持させるという目的においては不利である。本発明者らの研究によれば、気体分子を整列保持させるための細孔入口寸法の上限は1nm×1nmであり、この細孔入口寸法は、第2有機架橋配位子としてピラジンを選択することにより設計することができる。ピラジンの側鎖に低級アルキル基などが置換したピラジン誘導体を第2有機架橋配位子として選択すれば、側鎖の嵩高さにより細孔入口寸法をより小さくすることができるので、気体分子はその細孔入口寸法に応じた配列形態で収容される。また、気体分子をさらに密に1次元に配列させるためには、ピラー配位子のピッチを3~6Åにすることで達成される。
【0011】
細孔内ではその空間寸法が気体分子の寸法に近いこともあり、細孔内に侵入した気体分子は壁(2次元シートおよび第2有機架橋配位子)の存在を強く感じるようになる。このため、ファンデルワールス力のような弱い相互作用であっても、相対する細孔壁のポテンシャルが重なり合い、気体分子はこの強いポテンシャルを感じながら制限された空間にできるだけ多く詰まろうとするため、配位高分子とともに気体を冷却すれば分子は細孔内に容易に侵入し、バルクの状態とは異なる特異的な凝集状態を形成する。
【0012】
常温常圧で気体の分子としては、例えば、酸素分子、一酸化炭素分子、一酸化窒素分子などの2原子分子や、二酸化炭素分子などの3原子分子が挙げられる。このうち、酸素は最小の磁性分子で、電子の授受が容易に行える気体分子でもあるため、配位高分子の細孔内において酸素分子を整列保持させて特異的な凝集状態を形成させた本発明の酸素分子保持材料は、磁性材料や伝導材料として期待される。また、一酸化炭素分子や一酸化窒素分子は双極子モーメントを持っているので、これらを配位高分子の細孔内において1次元整列させれば誘電鎖を形成するので、本発明の一酸化炭素分子保持材料や一酸化窒素分子保持材料は誘電材料として期待される。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
【0014】
配位高分子としてCu2(pyz)(pzdc)2(M.Kondo et al., Angew Chem., Int. Ed. Engl, 38, 140-143(1999))(以下CPL-1:coordination polymer 1 with pillared layer structure(柱で支持された層構造を有する配位高分子)と称する)を用いて以下の実験を行った。CPL-1の単結晶解析データから決定した3次元構造を図1に示す(水分子は省略)。図1はa軸に沿って下方を見た図であり、銅イオン(図略)と2,3-ピラジンジカルボン酸1から構成される2次元シートが層をなし、ピラジン2が各層に存在する銅イオンに配位することで隣接するシートとシートを連結させ、その間に細孔が形成されている構成を有する。a軸に沿ったその細孔寸法入口は4Å×6Åであり、ピラジンのピッチは約5Åである。
【0015】
減圧下にてCPL-1を加熱することで細孔内の水分子を除去した後、冷却しながら80KPaの酸素加圧下で酸素分子を細孔内(ナノチャンネル)に吸蔵させた。合成したCPL-1、80KPaの酸素加圧下で冷却する過程での無水CPL-1、それに続く90Kから300Kへの温度領域でのCPL-1のぞれぞれについて測定したin situ粉末X線回折パターンを図2に示す。パターンの変化は3つの段階に分類できる。即ち、(1)減圧下で加熱して水分子を除去する段階、(2)130Kと150Kの間での冷却段階、(3)90Kから300Kへの再加熱段階である。酸素加圧を行わなかった場合には全温度範囲で何らの変化もなかったが、図2の粉末回折データのLeBailフィッティングは、セル容積の収縮(1)と伸張(2)と再収縮(3)を明らかにした。これは水分子の脱離(1)と酸素分子の吸蔵(2)と酸素分子の脱離(3)に起因したCPL-1の骨組みの柔軟性から引き起こされた構造的ひずみによるものであると思われた。
【0016】
酸素分子を吸蔵していない120Kにおける無水CPL-1の結晶構造を、53.3°(d>0.89Å)までの粉末データのRietveld分析により決定したことで判明した事実は、水分子が除去された多孔性構造は、わずかな構造的ひずみを伴った合成直後のCPL-1と一致するということであった。構造因子に基づく信頼性因子RFが1.6%である無水CPL-1のMEM(マキシマムエントロピー法)電子密度分布図(図3A)から、細孔内には水分子が存在しないことがわかった。
【0017】
90Kにおける80KPaの酸素加圧下で冷却する過程での無水CPL-1の空間群(図2G)は、酸素を吸蔵していないCPL-1と同じ空間群P21/cであった。Rietvelt分析によりセルパラメータをa=4.68759(4)Å、b=20.4373(2)Å、c=10.9484(1)Å、β=96.9480(6)と決定した。MEM/Rietveld分析(財団法人高輝度光科学研究センター保有の大型放射光施設Spring-8を用いたin situ高分解シンクロトンX線粉末回折測定:M. Takata, E. Nishobori, M. Sakata, Z. Kristallogr. 216, 71-86(2001)他)のためのプレRietveld分析おいて、酸素を吸蔵していないCPL-1のために図3Aに相当する構造モデルを初期モデルとして用いた。RwpとRIはそれぞれ18.5%と54.2%であった。しかし、細孔内において酸素密度特徴を示すMEM電子密度が観察された。電子密度に基づく修正を行った後、Rietveldの精密性は劇的に改善され、最終的なRietveldフィッティングにおけるRwpとRIはそれぞれ2.1%と3.9%になった。信頼性因子RFが1.5%であるMEMによって得られた最終的な電子密度は、単結晶データと一致する3次元柱支持層構造を示した。図3Bより、規則正しく並んだ細孔の一つ一つに、酸素分子が一列に並んでいることが世界ではじめて明らかにされた。(図中の符号1は2,3-ピラジンジカルボン酸を示し符号2はピラジンを示し符合3は酸素分子を示す)。
【0018】
酸素分子によるものと考えられるピーナツ型の電子密度を細孔内に明確に認識することができた。MEMの結果に基づいた計算によると、全部で15.8(1)の電子が存在したが、これは事実上、酸素分子の数に相当するものであった。それ故、シートとシートの間に存在するピーナツ型の電子密度は酸素分子を表すこと、1銅原子あたり1酸素分子が吸蔵されていること、その吸蔵においては、酸素分子と酸素分子の間や酸素分子と細孔を形成する壁の間で電子移動がないことを推論した。
【0019】
77Kにおける酸素分子の等温式は、1銅原子あたり1.02の酸素分子の飽和吸蔵量を伴うタイプIの等温式を示した。これは、MEM/Rietveld分析によく合致するものであった。原子変位パラメータ[B4.1(2)Å]が比較的小さな値であることと酸素分子の無秩序さがないことは、細孔内に吸蔵された酸素分子が90Kにおいて、液体状態よりは固体状態に近似していることを示すものであった。これは大気圧下での酸素の凝固点である54.4Kよりもはるかに高温である。この事態は、細孔による強い閉じ込め効果に帰するものである。以上の分析に基づいた全体の結晶構造と酸素分子の幾何図形的配置子を図4(A図はa軸に沿って下方を見た図でありB図とC図はそれぞれb軸とc軸に沿って下方を見た図である:図中の符号は前記と同義)に示す。興味深いことに、2つの酸素分子がa軸に沿って11.8°の斜角を持ってお互い並行に整列しており、分子間距離は3.28(4)Åであり、これはLennard-Jonesポテンシャルの最小値Re3.9Åよりもはるかに小さい値であった。この分子間距離は24Kよりも低い温度において安定である個体α-酸素における隣接距離に似通った値である。この結果は、細孔内に吸蔵された酸素分子は、ファンデルワールス2量体(O22を形成しており、この見事な構造特性を以下に説明する。各々のダイマーは、a軸に沿って整列し、1次元はしご状構造を形成している。吸蔵された酸素分子の酸素原子間の距離は1.245(50)Åであることがわかった。
【0020】
吸蔵され酸素分子の特性を調べるために、温度に依存した磁化率とラマン分光の測定を行った。酸素を吸蔵していないCPL-1の磁化率(A)と酸素を吸蔵したCPL-1の磁化率(B)の相違(C)は、温度が低くなるにつれてゼロに近づき、非磁性の基底状態を示した(図5)。これに対応して、強磁場磁化過程において、酸素を吸蔵していないCPL-1(A)と酸素を吸蔵したCPL-1(B)とでは、50Tより強磁場でその違いを観察することができた(図5における挿入図)。CPL-1の磁化過程は、通常の常磁性銅イオンが与える銅原子1ヶにつき1μBの飽和モーメントを伴う磁化曲線を示した。酸素を吸蔵したCPL-1は低磁場領域では小さな違いしか示さなかったが、50Tを超えると急激な増加を示した。これは酸素を吸蔵したCPL-1が非磁性状態から磁性状態に磁気相転移したことを示すものであった。この磁化過程は、反強磁性的2量体または結合交替を伴う1次元反強磁性的鎖の振る舞いによるものとして理解することができる。CPL-1に吸蔵されている酸素分子の構造情報に基づけば、非磁性の基底状態は反強磁性的2量体を支持するものである。反強磁性的相互作用は、J/kBが約~-50Kと見積もることができた。この値はα相のJ/kB~-30Kよりも大きなものである。酸素を吸蔵したCPL-1と酸素を吸蔵していないCPL-1についての90K付近でのラマンスペクトルを図6に示す。酸素を吸蔵したCPL-1のスペクトル(B)においては、酸素を吸蔵していないCPL-1のスペクトル(A)には存在しない吸蔵された酸素分子の伸縮運動による鋭いピークが1561cm-1に観察された。これは周囲から圧力を受けている液体酸素や固体酸素のピークよりも僅かに高いポイントである。これは、2GPaの圧力を受けているα相の伸縮運動と同程度の圧力下にあることを示す。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、遷移金属カチオンとそれを連結する有機架橋配位子によって多孔性3次元構造を構成して細孔内に、常温常圧で気体の分子を、収容することができる配位高分子のその細孔内の空間を利用して気体分子を整列保持させる方法提供される。本発明によれば、ボトムアップ手法による配位高分子の細孔のデザイン(チャンネル形状やピッチの設計)を行うことで、大量の気体分子を固体中に瞬時に整列保持させることができることから、これまでにないまったく新しい概念の機能材料として作り上げられた本発明の気体分子保持材料は、次世代のエネルギーや環境科学のフロンティア物質として期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で使用したCPL-1の構造図。
【図2】 実施例におけるin situ粉末X線回折パターンを示す図。
【図3】 同、MEM電子密度を示す図。
【図4】 同、90Kにおける酸素を吸蔵したCPL-1の模式表示図。
【図5】 同、磁化率を示す図。
【図6】 同、ラマンスペクトルを示す図。
【符号の説明】
1 2,3-ピラジンジカルボン酸
2 ピラジン
3 酸素分子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5