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明細書 :結晶の対掌性識別方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3637394号 (P3637394)
公開番号 特開2004-333461 (P2004-333461A)
登録日 平成17年1月21日(2005.1.21)
発行日 平成17年4月13日(2005.4.13)
公開日 平成16年11月25日(2004.11.25)
発明の名称または考案の名称 結晶の対掌性識別方法
国際特許分類 G01N 23/20      
FI G01N 23/20
請求項の数または発明の数 28
全頁数 10
出願番号 特願2003-165776 (P2003-165776)
出願日 平成15年5月6日(2003.5.6)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年3月27日発行の「日本金属学会講演概要」に発表
審査請求日 平成15年5月7日(2003.5.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】乾 晴行
【氏名】田中 克志
【氏名】藤井 昭宏
【氏名】坂本 宙樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100100125、【弁理士】、【氏名又は名称】高見 和明
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100124280、【弁理士】、【氏名又は名称】大山 健次郎
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
【識別番号】100110180、【弁理士】、【氏名又は名称】阿相 順一
審査官 【審査官】▲高▼場 正光
参考文献・文献 H.Inui 外5名,“Defect Structures in TaSi2 thin films produced by co-sputtering”,Acta Materialia,2003年 5月 7日,Vol.51,pp.2285-2296
H. Sakamoto 外5名,“Identification of Chirality of Enantiomorphic TaSi2 Crystallites by Convergent-Beam Electron...”,Materials Science Forum,2003年 6月17日,Vols. 426-432,pp.1783-1788
P.GOODMAN, A.JOHNSON,“Identification of Enantiomorphically-Related Space Groups by Electron-Diffraction - a Second...”,ACTA CRYSTALLOGRAPHICA SECTION A,1977年,Vol.33, No.6,pp.997
S.Sato 外2名,“Determination of Absolute Configurations of Light-Atom Molecules by Means of Direct Detection...”,Enantiomer,2002年,Vol.7,pp.271-281
調査した分野 G01N23/00-23/227
JICSTファイル(JOIS)
Web of Science
特許請求の範囲 【請求項1】
結晶に対して所定方向から電子線を入射させる工程と、
前記電子線の回折を利用したバイフット対反射を得る工程と、
前記バイフット対反射の強度を比較することにより、前記結晶の対掌性を識別する工程と、
を具えることを特徴とする、結晶の対掌性識別方法。
【請求項2】
前記バイフット対反射は、前記結晶の中心軸m-m’の右側における第1の反射と、前記結晶の中心軸m-m’の左側における第2の反射とから構成され、前記バイフット対反射の強度比較は、前記第1の反射の強度と前記第2の反射の強度とを比較することを特徴とする、請求項1に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項3】
前記第1の反射及び前記第2の反射は、中心軸m-m’に対し、位相角分布において反転の関係にあることを特徴とする、請求項2に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項4】
前記結晶はキラル結晶であることを特徴とする、請求項3に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項5】
前記結晶は点群1に属し、前記電子線は任意の晶帯軸方向に入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項6】
前記結晶の、第1ラウエゾーンに属する{hkl}反射及び{-h-k-l}反射における強度を比較することを特徴とする、請求項5に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項7】
前記結晶は点群2に属し、前記電子線は前記結晶の〈h0l〉方向に沿って入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項8】
前記結晶の、{hkl}反射及び{-hk-l}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-l}反射及び{h-kl}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較することを特徴とする、請求項7に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項9】
前記結晶は点群222に属し、前記電子線は〈hk0〉方向、〈0kl〉方向又は〈h0l〉方向に沿って入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項10】
前記結晶の、{hkl}反射、{h-k-l}反射、{-hk-l}反射及び{-h-kl}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-l}反射、{-hkl}反射、{h-kl}反射及び{hk-l}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較することを特徴とする、請求項9記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項11】
前記結晶は点群4に属し、前記電子線は〈hk0〉方向に沿って入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項12】
前記結晶の、{hkl}反射、{-khl}反射、{-h-kl}反射及び{k-hl}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-l}反射、{k-h-l}反射、{hk-l}反射及び{-hk-l}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較することを特徴とする、請求項11に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項13】
前記結晶は点群422に属し、前記電子線は、〈hk0〉方向、〈h0l〉方向又は〈hhl〉方向に沿って入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項14】
前記結晶の、{hkl}反射、{-khl}反射、{-h-kl}反射、{k-hl}反射、{h-k-l}反射、{-k-h-l}反射、{-hk-l}反射、及び{kh-l}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-l}反射、{k-h-l}反射、{hk-l}反射、{-kh-l}反射、{-hkl}反射、{khl}反射、{h-kl}反射及び{-k-hl}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較することを特徴とする、請求項13に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項15】
前記結晶は点群3に属し、前記電子線は前記結晶の任意の晶帯軸方向に入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項16】
前記結晶の、第1のラウエゾーンに属する{hkil}反射及び{-h-k-i-l}反射における強度を比較することを特徴とする、請求項13に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項17】
前記結晶は点群321に属し、前記電子線は前記結晶の〈h-h0l〉方向に沿って入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項18】
前記結晶の、{hkil}反射及び{hik-l}反射の少なくとも一方における強度と、{-h-k-i-l}反射及び{-h-i-kl}反射の少なくとも一方における強度とを比較することを特徴とする、請求項17に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項19】
前記結晶は点群312に属し、前記電子線は前記結晶の〈hh-2hl〉方向に沿って入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項20】
前記結晶の、{hkil}反射及び〈-h-i-k-l〉反射の少なくとも一方における強度と、{-h-k-i-l}反射及び{hikl}反射の少なくとも一方における強度とを比較することを特徴とする、請求項19に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項21】
前記結晶は点群6に属し、前記電子線は前記結晶の〈hki0〉方向に沿って入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項22】
前記結晶の、{hkil}反射及び{-h-k-il}反射の少なくとも一方における強度と、{-h-k-i-l}反射及び{hki-l}反射の少なくとも一方における強度とを比較することを特徴とする、請求項21に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項23】
前記結晶は点群622に属し、前記電子線は前記結晶の〈h-h0l〉方向、〈hh-2hl〉方向又は〈hki0〉方向に沿って入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項24】
前記結晶の、{hkil}反射、{-h-k-il}反射、{hik-l}反射及び{-h-i-k-l}反射の少なくとも一方における強度と、{-h-k-i-l}反射、{hki-l}反射、{-h-i-kl}反射及び〈hikl〉反射の少なくとも一方における強度とを比較することを特徴とする、請求項23に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項25】
前記結晶は点群23に属し、前記電子線は前記結晶の〈hk0〉方向に沿って入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項26】
前記結晶の、{hkl}反射、{h-k-l}反射、{-hk-l}反射及び{-h-kl}反射の少なくとも一方における強度と、{-h-k-l}反射、{-hkl}反射、{h-kl}反射及び{hk-l}反射の少なくとも一方における強度とを比較することを特徴とする、請求項23に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項27】
前記結晶は点群432に属し、前記電子線は前記結晶の〈hk0〉方向又は〈hhl〉方向に沿って入射させることを特徴とする、請求項4に記載の結晶の対掌性識別方法。
【請求項28】
前記結晶の、{hkl}反射、{h-k-l}反射、{-hk-l}反射、{-h-kl}反射、{-hlk}反射、{h-lk}反射、{hl-k}反射、及び{-h-l-k}反射の少なくとも一方における強度と、{-h-k-l}反射、{-hkl}反射、{h-kl}反射、{hk-l}反射、{h-l-k}反射、{-hl-k}反射、{-h-lk}反射、及び{hlk}反射の少なくとも一方における強度とを比較することを特徴とする、請求項27に記載の結晶の対掌性識別方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品などの研究開発及び製造などにおける、薬物の対掌性識別方法などとして好適に用いることのできる結晶の対掌性識別方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医薬品の研究開発及び製造過程においては、薬物の対掌性を識別することが重要となる。従来、このような対掌性識別は、ミリメータサイズの大型かつ良質の単結晶を準備し、これに対してX線を照射し、異常分散効果を利用したX線回折により得たバイフット対の強度比較を行うことにより実施していた。
【0003】
しかしながら、上述したような大型かつ良質の単結晶を準備することは極めて困難であり、またX線回折データの解析には相当の時間と熟練とを要するため、医薬品になる可能性がありながら、研究対象から外れた数多くの薬物が存在する。サリドマイド惨禍などに代表されるように、薬物は鏡像異性体間で生理活性が異なる場合があり、この生理活性の違いによって副作用などの薬害を生ぜしめる場合がある。したがって、薬物などに使用する物質の対掌性を識別することは極めて重要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、結晶の対掌性を簡易に識別することができる新規な方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、
結晶に対して所定方向から電子線を入射させる工程と、
前記電子線の回折を利用したバイフット対反射を得る工程と、
前記バイフット対反射の強度を比較することにより、前記結晶の対掌性を識別する工程と、
を具えることを特徴とする、結晶の対掌性識別方法に関する。
【0006】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を実施した。従来、X線以外の放射線や電磁波などは、異常分散効果を十分に発揮することができないこと、及び取り扱いが危険かつ繁雑であるなどの理由から、これら放射線や電磁波などを用いた結晶の対掌性識別を実現することはできないと考えられてきた。しかしながら、電子線を用いた場合においては、上述した異常分散効果は示さないものの、電子線回折による多重回折(散乱)を実現することができ、結晶の所定方向から電子線を入射させるとバイフット対反射を得ることができ、各反射強度を比較することによって前記結晶の対掌性を識別することができるようになることを見出した。
【0007】
例えば、キラル結晶などの中心対称を有しない結晶に対して所定方向から電子線を入射させると、電子線回折の結果、前記結晶からは多数のバイフット対反射が得られるようになる。そして、各バイフット対反射を構成する反射の位相角の分布は中心軸m-m’に関して反転するようになる。その結果、前記バイフット対反射を構成する前記反射の強度分布も中心軸m-m’に関して反転するようになる。
【0008】
したがって、バイフット対反射を構成する中心軸m-m’の右側における所定の反射(第1の反射)の強度と、中心軸m-m’の左側において、前記第1の反射と位相角分布において反転の関係にある所定の反射(第2の反射)の強度とを比較し、その強度の大小関係を調べることにより、前記キラル結晶の対掌性(右手系あるいは左手系など)を評価することができるようになる。
【0009】
このように本発明の識別方法によれば、電子線を用いているため微小な結晶を準備すれば足りるので、大型かつ良質の単結晶を作製する必要がない。したがって、簡易に結晶の対掌性を評価することができる。また、電子線を用いているため、ナノ領域の解析を行うことができる。さらに、所定のバイフット対反射の強度を比較するのみであるので、瞬時に目的とする結晶の対掌性を識別することができる。また、電子線を利用した多重回折を利用して結晶の対掌性を識別するため、条件を適宜に設定することにより、対掌性を持ち得る総ての結晶の識別を行うことができる。
【0010】
なお、上述した「キラル結晶」とは、点群1、2、222、4、422、3、321、312、6、622、23及び432のいずれかに属する結晶を言う。このような結晶は左右の区別が必要となるため、本発明の識別方法を好ましく用いることができ、対掌性(右手系あるいは左手系など)を識別できるようになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、結晶に対して所定方向から電子線を入射させた場合に得られるバイフット対反射ディスクの一例を示す図である。なお、図中の白丸部分はバイフット対反射スポットを示している。
【0012】
このように、所定の結晶に対して電子線を入射させると、例えば図1に示すようなバイフット対反射のディスクを得ることができる。上述したように、バイフット対反射を構成する反射の位相角の分布は中心軸m-m’の左右の側で反転するので、中心軸m-m’に対して互いに反転の関係にある反射をバイフット対反射として選択し、これらの強度の大小関係を調べることにより、前記結晶の対掌性を識別することができる。
【0013】
図2は、本発明の識別方法を説明するためのバイフット対反射ディスクの具体例を示す図である。図2においては、空間群P321及びP321に属する結晶に対するバイフット対反射ディスクを示している。
【0014】
図2から明らかなように、前記結晶は中心軸m-m’に対して位相角分布が反転している。したがって、空間群P321及びP321に属する結晶の場合、バイフット対反射を構成する、例えば中心軸m-m’の右側における{-2-46-1}反射の強度と、中心軸m-m’の左側における{42-6-1}反射の強度とを比較する、あるいは中心軸m-m’の右側における{-4-371}反射の強度と、中心軸m-m’の左側における{34-71}反射の強度とを比較する、又は中心軸m-m’の右側における{-5-163}反射の強度と、中心軸m-m’の左側における{15-63}反射の強度とを比較し、それらの大小関係を調べることによって、前記結晶の対掌性を識別することができる。
【0015】
一方、図1及び図2に示すように、中心m-m’に対して対称的に多数の等価なバイフット対反射を得るためには、前記電子線の入射方向を前記結晶に対して適切に設定することが必要となる。前記電子線の適切な入射方向は前記結晶が属する結晶点群の種類によって異なる。例えば、上述したキラル結晶について、それが属する結晶点群毎に適切な電子線の入射方向をまとめると表1のようになる。
【0016】
また、表1には、適切な電子線の入射方向を設定した場合の、強度比較すべき反射の指数を併せて示した。
【0017】
【表1】
JP0003637394B2_000002t.gif【0018】
表1から明らかなように、前記結晶が点群1に属する場合、前記電子線は前記結晶の任意の晶帯軸方向から入射させることができる。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、第1ラウエゾーンに属する{hkl}反射及び{-h-k-l}反射における強度を比較する。
【0019】
前記結晶が点群2に属する場合、前記電子線は前記結晶の〈h0l〉方向に沿って入射させることが好ましい。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、{hkl}反射及び{-hk-l}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-l}反射及び{h-kl}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較する。
【0020】
前記結晶が点群222に属する場合、前記電子線は〈hk0〉方向、〈0kl〉方向又は〈h0l〉方向に沿って入射させることが好ましい。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、{hkl}反射、{h-k-l}反射、{-hk-l}反射及び{-h-kl}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-l}反射、{-hkl}反射、{h-kl}反射及び{hk-l}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較する。
【0021】
前記結晶が点群4に属する場合、前記電子線は〈hk0〉方向に沿って入射させることが好ましい。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、{hkl}反射、{-khl}反射、{-khl}反射及び{k-hl}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-l}反射、{k-h-l}反射、{hk-l}反射及び{-kh-l}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較する。
【0022】
前記結晶が点群422に属する場合、前記電子線は、〈hk0〉方向、〈h0l〉方向又は〈hhl〉方向に沿って入射させることが好ましい。この場合、前記結晶の、バイフット対を構成する、{hkl}反射、{-khl}反射、{-h-kl}反射、{k-hl}反射、{h-k-l}反射、{-k-h-l}反射、{-hk-l}反射、及び{kh-l}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-l}反射、{k-h-l}反射、{hk-l}反射、{-kh-l}反射、{-hkl}反射、{khl}反射、{h-kl}反射及び{-k-hl}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較する。
【0023】
前記結晶が点群3に属する場合、前記電子線は前記結晶の任意の晶帯軸方向から入射させることができる。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、第1ラウエゾーンに属する{hkil}反射及び{-h-k-i-l}反射における強度を比較する。
【0024】
前記結晶が点群321に属する場合、前記電子線は前記結晶の〈h-h0l〉方向に沿って入射させることが好ましい。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、{hkil}反射及び{hik-l}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-i-l}反射及び{-h-i-kl}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較する。
【0025】
前記結晶が点群312に属する場合、前記電子線は前記結晶の〈hh-2hl〉方向に沿って入射させることが好ましい。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、{hkil}反射及び{-h-i-k-l}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-i-l}反射及び{hikl}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較する。
【0026】
前記結晶が点群6に属する場合、前記電子線は前記結晶の〈hki0〉方向に沿って入射させることが好ましい。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、{hkil}反射及び{-h-k-il}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-i-l}反射及び{hki-l}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較する。
【0027】
前記結晶が点群622に属する場合、前記電子線は前記結晶の〈h-h0l〉方向、〈hh-2hl〉方向又は〈hki0〉方向に沿って入射させることが好ましい。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、{hkil}反射、{-h-k-il}反射、{hik-l}反射及び{-h-i-k-l}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-i-l}反射、{hki-l}反射、{-h-i-kl}反射及び{hikl}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較する。
【0028】
前記結晶が点群23に属する場合、前記電子線は前記結晶の〈hk0〉方向に沿って入射させることが好ましい。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、{hkl}反射、{h-k-l}反射、{-hk-l}反射及び{-h-kl}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-l}反射、{-hkl}反射、{h-kl}反射及び{hk-l}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較する。
【0029】
前記結晶が点群432に属する場合、前記電子線は前記結晶の〈hk0〉方向又は〈hhl〉方向に沿って入射させることが好ましい。この場合、前記結晶の、バイフット対反射を構成する、{hkl}反射、{h-k-l}反射、{-hk-l}反射、{-h-kl}反射、{-hlk}反射、{h-lk}反射、{hl-k}反射、及び{-h-l-k}反射の少なくとも一つにおける強度と、{-h-k-l}反射、{-hkl}反射、{h-kl}反射、{hk-l}反射、{h-l-k}反射、{-hl-k}反射、{-h-lk}反射、及び{hlk}反射の少なくとも一つにおける強度とを比較する。
【0030】
【実施例】
図3は、グルタミン酸のバイフット対反射ディスクを示すものである。上側がグルタミン酸結晶の〈013〉方向に沿って電子線を入射させた場合であり、下側が〈310〉方向に沿って電子線を入射させた場合である。L-グルタミン酸とD-グルタミン酸とでは、中心軸m-m’に対して左右に位置する白矢印で示すバイフット対反射と黒矢印で示すバイフット対反射の強度とが逆転している。
【0031】
したがって、例えば、バイフット対反射を構成する、中心軸m-mの右側に位置する反射Aの強度が、左側に位置する反射Bの強度と比較して大きいか小さいかにより、L-グルタミン酸あるいはD-グルタミン酸の識別を行うことができる。今の場合、反射Aの強度が反射Bの強度より大きい場合はL-グルタミン酸であり、逆の場合はD-グルタミン酸であることが分かる。
【0032】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、結晶の対掌性を簡易に識別することができる新規な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 結晶に対して所定方向から電子線を入射させた場合に得られるバイフット対反射ディスクの一例を示す図である。
【図2】 本発明の識別方法を説明するためのバイフット対反射ディスクの具体例を示す図である。
【図3】 グルタミン酸のバイフット対反射ディスクを示すものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2