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明細書 :信号処理装置、方法およびプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4035120号 (P4035120)
公開番号 特開2006-050429 (P2006-050429A)
登録日 平成19年11月2日(2007.11.2)
発行日 平成20年1月16日(2008.1.16)
公開日 平成18年2月16日(2006.2.16)
発明の名称または考案の名称 信号処理装置、方法およびプログラム
国際特許分類 H03H  17/00        (2006.01)
H03H  17/02        (2006.01)
H03M   1/08        (2006.01)
H03M   1/66        (2006.01)
FI H03H 17/00 621E
H03H 17/02 601G
H03M 1/08 B
H03M 1/66 A
請求項の数または発明の数 35
全頁数 20
出願番号 特願2004-231091 (P2004-231091)
出願日 平成16年8月6日(2004.8.6)
審査請求日 平成16年8月6日(2004.8.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】寅市 和男
【氏名】袁 浩
【氏名】中村 浩二
個別代理人の代理人 【識別番号】100103171、【弁理士】、【氏名又は名称】雨貝 正彦
審査官 【審査官】田中 庸介
参考文献・文献 国際公開第99/44290(WO,A1)
国際公開第99/38090(WO,A1)
調査した分野 H03H 17/00-17/08
H03M 1/66
H03M 1/08
特許請求の範囲 【請求項1】
補間演算の対象となる着目点を挟んで存在する前後2個合計4個の離散データを抽出する離散データ抽出手段と、前記離散データ抽出手段によって抽出された前記4個の離散データのそれぞれについて前記着目点と各離散データまでの距離をtとして標本化関数φ(t)の値を計算する標本化関数処理手段と、前記標本化関数処理手段によって計算された前記4個の離散データのそれぞれに対応する前記標本化関数の値を加算して畳み込み演算を行うことより、前記着目点の値を計算する畳み込み演算手段とを有する信号処理装置において、
前記標本化関数処理手段は、
標本間隔τよりも広い局所的な範囲が0以外の値に、それ以外の範囲の値が0となる少なくとも1回以上微分可能な基本波形について、前記着目点に対応する値を計算する基本波形計算手段と、
前記基本波形の極性を反転させるとともに利得調整し、さらに前記基本波形の前後に所定のシフト量でシフトさせた前後2つの補助波形について、前記着目点に対応する値を計算する補助波形計算手段と、
前記基本波形計算手段および前記補助波形計算手段の各計算結果を加算する加算手段とを有し、
前記シフト量を可変設定するシフト量設定手段をさらに備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記基本波形は、3階Bプライン関数に対応する波形であることを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記基本波形は、全範囲で1回だけ微分可能な凸形状の波形であることを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記局所的な範囲は、標本間隔τの2倍以上3倍以下の幅Wに対応する範囲であり、
前記シフト量設定手段によって設定されるシフト量は、(4τ-W)/2と同じかそれ以下の時間であることを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記基本波形に対して前にシフトされる前記補助波形のシフト量と、後にシフトされる前記補助波形のシフト量とが等しい関係を維持しながら前記シフト量設定手段による前記シフト量の可変設定が行われることを特徴とする信号処理装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記基本波形に対して前にシフトされる前記補助波形の利得調整値と、後にシフトされる前記補助波形の利得調整値とが等しい関係を維持しながらシフト量設定手段による前記シフト量の可変設定が行われることを特徴とする信号処理装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記利得調整値は、前記シフト量に応じて値が変化し、
前記補助波形計算手段は、前記シフト量設定手段によって設定された前記シフト量に応じて前記利得調整値を計算することを特徴とする信号処理装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかにおいて、
前記シフト量設定手段による前記シフト量の設定は、前記加算手段から出力されるデータの周波数特性を調整するシフトパラメータの値を可変設定することにより行うことを特徴とする信号処理装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記シフトパラメータの値に連動させて前記補助波形計算手段による前記基本波形に対する前記補助波形の利得調整値およびシフト量を調整することにより、前記加算手段から出力されるデータの周波数特性を調整することを特徴とする信号処理装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかにおいて、
前記距離tを所定の時間間隔で更新する更新手段とをさらに備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記離散データ抽出手段は、前記標本間隔τに対応する周期Tで入力される前記離散データを4個分保持し、同時に保持された4個分の前記離散データを出力するとともに、前記離散データが入力される毎に保持対象となる4個分の前記離散データの組み合わせを更新し、
前記更新手段は、前記周期Tの1/Nの周期で前記距離tを更新することを特徴とする信号処理装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記周期Tの1/Nの周期で値が更新されて前記畳み込み演算手段から出力される演算結果データをアナログ信号に変換するとともに平滑するデジタル-アナログ変換手段をさらに備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項13】
補間演算の対象となる着目点を挟んで存在する前後2個合計4個の離散データを抽出する離散データ抽出ステップと、前記離散データ抽出ステップにおいて抽出された前記4個の離散データのそれぞれについて前記着目点と各離散データまでの距離をtとして標本化関数φ(t)の値を計算する標本化関数処理ステップと、前記標本化関数処理ステップにおいて計算された前記4個の離散データのそれぞれに対応する前記標本化関数の値を加算して畳み込み演算を行うことより、前記着目点の値を計算する畳み込み演算ステップとを有する信号処理方法において、
前記標本化関数処理ステップは、標本間隔τよりも広い局所的な範囲が0以外の値に、それ以外の範囲の値が0となる少なくとも1回以上微分可能な基本波形について、前記着目点に対応する値を計算する基本波形計算ステップと、前記基本波形の極性を反転させるとともに利得調整し、さらに前記基本波形の前後に所定のシフト量でシフトさせた前後2つの補助波形について、前記着目点に対応する値を計算する補助波形計算ステップと、前記基本波形計算ステップおよび前記補助波形計算ステップの各計算結果を加算する加算ステップとを有し、
前記シフト量を可変設定するシフト量設定ステップをさらに備えることを特徴とする信号処理方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記基本波形は、3階Bプライン関数に対応する波形であることを特徴とする信号処理方法。
【請求項15】
請求項13において、
前記基本波形は、全範囲で1回だけ微分可能な凸形状の波形であることを特徴とする信号処理方法。
【請求項16】
請求項13~15のいずれかにおいて、
前記局所的な範囲は、標本間隔τの2倍以上3倍以下の幅Wに対応する範囲であり、
前記シフト量設定ステップによって設定されるシフト量は、(4τ-W)/2と同じかそれ以下の時間であることを特徴とする信号処理方法。
【請求項17】
請求項13~16のいずれかにおいて、
前記基本波形に対して前にシフトされる前記補助波形のシフト量と、後にシフトされる前記補助波形のシフト量とが等しい関係を維持しながら前記シフト量設定ステップによる前記シフト量の可変設定が行われることを特徴とする信号処理方法。
【請求項18】
請求項13~16のいずれかにおいて、
前記基本波形に対して前にシフトされる前記補助波形の利得調整値と、後にシフトされる前記補助波形の利得調整値とが等しい関係を維持しながらシフト量設定ステップによる前記シフト量の可変設定が行われることを特徴とする信号処理方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記利得調整値は、前記シフト量に応じて値が変化し、
前記補助波形計算ステップは、前記シフト量設定ステップによって設定された前記シフト量に応じて前記利得調整値を計算することを特徴とする信号処理方法。
【請求項20】
請求項13~19のいずれかにおいて、
前記シフト量設定ステップによる前記シフト量の設定は、前記加算ステップにおいて出力されるデータの周波数特性を調整するシフトパラメータの値を可変設定することにより行うことを特徴とする信号処理方法。
【請求項21】
請求項20において、
前記シフトパラメータの値に連動させて前記補助波形計算ステップにおける前記基本波形に対する前記補助波形の利得調整値およびシフト量を調整することにより、前記加算ステップにおいて出力されるデータの周波数特性を調整することを特徴とする信号処理方法。
【請求項22】
請求項13~21のいずれかにおいて、
前記距離tを所定の時間間隔で更新する更新ステップとをさらに備えることを特徴とする信号処理方法。
【請求項23】
請求項22において、
前記離散データ抽出ステップは、前記標本間隔τに対応する周期Tで入力される前記離散データを4個分保持し、同時に保持された4個分の前記離散データを出力するとともに、前記離散データが入力される毎に保持対象となる4個分の前記離散データの組み合わせを更新し、
前記更新ステップは、前記周期Tの1/Nの周期で前記距離tを更新することを特徴とする信号処理方法。
【請求項24】
請求項23において、
前記周期Tの1/Nの周期で値が更新されて前記畳み込み演算ステップから出力される演算結果データをアナログ信号に変換するとともに平滑するデジタル-アナログ変換ステップをさらに備えることを特徴とする信号処理方法。
【請求項25】
コンピュータを、補間演算の対象となる着目点を挟んで存在する前後2個合計4個の離散データを抽出する離散データ抽出手段と、前記離散データ抽出手段によって抽出された前記4個の離散データのそれぞれについて前記着目点と各離散データまでの距離をtとして標本化関数φ(t)の値を計算する標本化関数処理手段と、前記標本化関数処理手段によって計算された前記4個の離散データのそれぞれに対応する前記標本化関数の値を加算して畳み込み演算を行うことより、前記着目点の値を計算する畳み込み演算手段として機能させる信号処理プログラムにおいて、
前記標本化関数処理手段は、
標本間隔τよりも広い局所的な範囲が0以外の値に、それ以外の範囲の値が0となる少なくとも1回以上微分可能な基本波形について、前記着目点に対応する値を計算する基本波形計算手段と、
前記基本波形の極性を反転させるとともに利得調整し、さらに前記基本波形の前後に所定のシフト量でシフトさせた前後2つの補助波形について、前記着目点に対応する値を計算する補助波形計算手段と、
前記基本波形計算手段および前記補助波形計算手段の各計算結果を加算する加算手段とを有し、
コンピュータを、さらに、前記シフト量を可変設定するシフト量設定手段として機能させる信号処理プログラム。
【請求項26】
請求項25において、
前記基本波形は、3階Bプライン関数に対応する波形であることを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項27】
請求項25において、
前記基本波形は、全範囲で1回だけ微分可能な凸形状の波形であることを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項28】
請求項25~27のいずれかにおいて、
前記局所的な範囲は、標本間隔τの2倍以上3倍以下の幅Wに対応する範囲であり、
前記シフト量設定手段によって設定されるシフト量は、(4τ-W)/2と同じかそれ以下の時間であることを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項29】
請求項25~28のいずれかにおいて、
前記基本波形に対して前にシフトされる前記補助波形のシフト量と、後にシフトされる前記補助波形のシフト量とが等しい関係を維持しながら前記シフト量設定手段による前記シフト量の可変設定が行われることを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項30】
請求項25~28のいずれかにおいて、
前記基本波形に対して前にシフトされる前記補助波形の利得調整値と、後にシフトされる前記補助波形の利得調整値とが等しい関係を維持しながらシフト量設定手段による前記シフト量の可変設定が行われることを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項31】
請求項30において、
前記利得調整値は、前記シフト量に応じて値が変化し、
前記補助波形計算手段は、前記シフト量設定手段によって設定された前記シフト量に応じて前記利得調整値を計算することを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項32】
請求項25~31のいずれかにおいて、
前記シフト量設定手段による前記シフト量の設定は、前記加算手段から出力されるデータの周波数特性を調整するシフトパラメータの値を可変設定することにより行うことを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項33】
請求項32において、
前記シフトパラメータの値に連動させて前記補助波形計算手段による前記基本波形に対する前記補助波形の利得調整値およびシフト量を調整することにより、前記加算手段から出力されるデータの周波数特性を調整することを特徴とする信号処理プログラム。
【請求項34】
請求項25~33のいずれかにおいて、
コンピュータを、さらに、前記距離tを所定の時間間隔で更新する更新手段として機能させる信号処理プログラム。
【請求項35】
請求項34において、
前記離散データ抽出手段は、前記標本間隔τに対応する周期Tで入力される前記離散データを4個分保持し、同時に保持された4個分の前記離散データを出力するとともに、前記離散データが入力される毎に保持対象となる4個分の前記離散データの組み合わせを更新し、
前記更新手段は、前記周期Tの1/Nの周期で前記距離tを更新することを特徴とする信号処理プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、入力されたデジタルデータを用いた補間処理やオーバーサンプリング処理等を行う信号処理装置、方法およびプログラムに関する。なお、本明細書においては、関数の値が局所的な領域で0以外の有限の値を有し、それ以外の領域で0となる場合を「有限台」と称して説明を行うものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル信号をアナログ信号に変換して再生する際にはシャノンの標本化定理に基づいて導出されたシャノンの標本化関数が広く用いられてきた。しかしながら、シャノンの標本化関数は、その振動が無限に続くため実現不可能であって有限の範囲のみを用いると打ち切り誤差が発生するという問題や、再生されるアナログ信号が帯域制限されてしまうという問題があった。このような不都合を回避するために、打ち切り誤差がなく、しかも、高次の帯域成分までも再生可能な、有限の範囲で集束する標本化関数が考え出されている(例えば、特許文献1参照。)。この標本化関数は、原点から前後2個先の標本点で0に集束するため、少ない計算量で信号再生を行うことができ、しかも、高周波まで帯域を有することが確かめられている。

【特許文献1】国際公開第99/38090号パンフレット(第4-9頁、図1-4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した特許文献1に開示された標本化関数を用いた補間処理によってオーバーサンプリング処理等を行うことにより、高周波までの帯域成分を再生することができ、この帯域成分の信号レベルを可変する方法は知られておらず、周波数特性を調整することができないという問題があった。補間処理の間隔を変更すれば周波数特性全体が大きく変化してしまうため好ましくなく、高周波の帯域成分のみを調整可能な方法が望まれている。特に、上述した標本化関数を用いて音声のデジタル-アナログ変換器を構成する場合を考えると、この標本化関数を用いた場合に特有な高周波成分が音質向上に寄与していることはわかっている。したがって、高周波成分のみを調整することができれば、音楽の聴取者毎に最適な聴感上の特性を実現することができるようになるため、オーディオ装置の商品価値を高めることが可能になる。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、周波数特性を調整することができる信号処理装置、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の信号処理装置は、補間演算の対象となる着目点を挟んで存在する前後2個合計4個の離散データを抽出する離散データ抽出手段と、離散データ抽出手段によって抽出された4個の離散データのそれぞれについて着目点と各離散データまでの距離をtとして標本化関数φ(t)の値を計算する標本化関数処理手段と、標本化関数処理手段によって計算された4個の離散データのそれぞれに対応する標本化関数の値を加算して畳み込み演算を行うことにより、着目点の値を計算する畳み込み演算手段とを有しており、標本化関数処理手段は、標本間隔τよりも広い局所的な範囲が0以外の値に、それ以外の範囲の値が0となる少なくとも1回以上微分可能な基本波形について、着目点に対応する値を計算する基本波形計算手段と、基本波形の極性を反転させるとともに利得調整し、さらに基本波形の前後に所定のシフト量でシフトさせた前後2つの補助波形について、着目点に対応する値を計算する補助波形計算手段と、基本波形計算手段および補助波形計算手段の各計算結果を加算する加算手段とを有し、シフト量を可変設定するシフト量設定手段をさらに備えている。
【0006】
また、本発明の信号処理方法は、補間演算の対象となる着目点を挟んで存在する前後2個合計4個の離散データを抽出する離散データ抽出ステップと、離散データ抽出ステップにおいて抽出された4個の離散データのそれぞれについて着目点と各離散データまでの距離をtとして標本化関数φ(t)の値を計算する標本化関数処理ステップと、標本化関数処理ステップにおいて計算された4個の離散データのそれぞれに対応する標本化関数の値を加算する畳み込み演算を行って、着目点の値を計算する畳み込み演算ステップとを有しており、標本化関数処理ステップは、標本間隔τよりも広い局所的な範囲が0以外の値に、それ以外の範囲の値が0となる少なくとも1回以上微分可能な基本波形について、着目点に対応する値を計算する基本波形計算ステップと、基本波形の極性を反転させるとともに利得調整し、さらに基本波形の前後に所定のシフト量でシフトさせた前後2つの補助波形について、着目点に対応する値を計算する補助波形計算ステップと、基本波形計算ステップおよび補助波形計算ステップの各計算結果を加算する加算ステップとを有し、シフト量を可変設定するシフト量設定ステップをさらに備えている。
【0007】
また、本発明の信号処理プログラムは、コンピュータを、補間演算の対象となる着目点を挟んで存在する前後2個合計4個の離散データを抽出する離散データ抽出手段と、離散データ抽出手段によって抽出された4個の離散データのそれぞれについて着目点と各離散データまでの距離をtとして標本化関数φ(t)の値を計算する標本化関数処理手段と、標本化関数処理手段によって計算された4個の離散データのそれぞれに対応する標本化関数の値を加算する畳み込み演算を行って、着目点の値を計算する畳み込み演算手段として機能させるものであり、標本化関数処理手段は、標本間隔τよりも広い局所的な範囲が0以外の値に、それ以外の範囲の値が0となる少なくとも1回以上微分可能な基本波形について、着目点に対応する値を計算する基本波形計算手段と、基本波形の極性を反転させるとともに利得調整し、さらに基本波形の前後に所定のシフト量でシフトさせた前後2つの補助波形について、着目点に対応する値を計算する補助波形計算手段と、基本波形計算手段および補助波形計算手段の各計算結果を加算する加算手段とを有し、コンピュータを、さらに、シフト量を可変設定するシフト量設定手段として機能させる。
【0008】
これにより、基本波形と補助波形を合成して標本化関数の値を計算する際にこれらの波形の相対的なシフト量をずらすことができるため、この標本化関数を用いてデータ補間等を行う際の周波数特性を調整することが可能になる。
【0009】
また、上述した基本波形は、3階Bプライン関数に対応する波形であることが望ましい。これにより、なだらかに信号レベルが変化する標本化関数波形を得ることが可能になる。
【0010】
また、上述した基本波形は、全範囲で1回だけ微分可能な凸形状の波形であることが望ましい。これにより、十分に自然現象を近似できると考えられる滑らかに変化する標本化関数波形を生成することが可能になる。
【0011】
また、上述した局所的な範囲は、標本間隔τの2倍以上3倍以下の幅Wに対応する範囲であり、シフト量設定手段(あるいはシフト量設定ステップ)によって設定されるシフト量は、(4τ-W)/2と同じかそれ以下の時間であることが望ましい。これにより、中央位置を挟んで前後2つずつの標本位置と同じかそれよりも狭い範囲において標本化関数波形の値を0に収束させることが可能になるため、この標本化関数を用いてデータ補間等を行う際に、着目位置の前後2つずつ(合計4つ)のデータを用いるだけでよくなり、処理負担の軽減が可能になる。
【0012】
また、上述した基本波形に対して前にシフトされる補助波形のシフト量と、後にシフトされる補助波形のシフト量とが等しい関係を維持しながらシフト量設定手段(あるいはシフト量設定ステップ)によるシフト量の可変設定が行われることが望ましい。また、上述した基本波形に対して前にシフトされる補助波形の利得調整値と、後にシフトされる補助波形の利得調整値とが等しい関係を維持しながらシフト量設定手段(あるいはシフト量設定ステップ)によるシフト量の可変設定が行われることが望ましい。これにより、標本化関数波形を左右対称形状にすることが可能になり、この標本化関数を用いたデータ補間等において発生するひずみを低減することができる。
【0013】
また、上述した利得調整値は、シフト量に応じて値が変化し、補助波形計算手段は、シフト量設定手段によって設定されたシフト量に応じて利得調整値を計算することが望ましい。あるいは、上述した利得調整値は、シフト量をパラメータとして含んでおり、補助波形計算ステップは、シフト量設定ステップによって設定されたシフト量に応じて利得調整値を計算することが望ましい。これにより、シフト量を可変して基本波形と補助波形の重複の度合いを変更した際の合成後の波形の形状を調整して標本化関数としての条件を満たすようにすることが可能になる。
【0014】
また、上述したシフト量設定手段によるシフト量の設定は、加算手段から出力されるデータの周波数特性を調整するシフトパラメータの値を可変設定することにより行うことが望ましい。あるいは、シフト量設定ステップによるシフト量の設定は、加算ステップにおいて出力されるデータの周波数特性を調整するシフトパラメータの値を可変設定することにより行うことが望ましい。
【0015】
また、上述したシフトパラメータの値に連動させて補助波形計算手段による基本波形に対する補助波形の利得調整値およびシフト量を調整することにより、加算手段から出力されるデータの周波数特性を調整することが望ましい。あるいは、上述したシフトパラメータの値に連動させて補助波形計算ステップにおける基本波形に対する補助波形の利得調整値およびシフト量を調整することにより、加算ステップにおいて出力されるデータの周波数特性を調整することが望ましい。
【0016】
また、上述した距離tを所定の時間間隔で更新する更新手段(あるいは更新ステップ)とをさらに備えることが望ましい。これにより、離散データの間を複数のデータで滑らかにつなぐオーバーサンプリング処理を行うことが可能になる。
【0017】
また、上述した離散データ抽出手段は、標本間隔τに対応する周期Tで入力される離散データを4個分保持し、同時に保持された4個分の離散データを出力するとともに、離散データが入力される毎に保持対象となる4個分の離散データの組み合わせを更新し、更新手段は、周期Tの1/Nの周期で距離tを更新することが望ましい。また、上述した離散データ抽出ステップは、標本間隔τに対応する周期Tで入力される離散データを4個分保持し、同時に保持された4個分の離散データを出力するとともに、離散データが入力される毎に保持対象となる4個分の離散データの組み合わせを更新し、更新ステップは、周期Tの1/Nの周期で距離tを更新することが望ましい。これにより、入力される離散データの周波数をN倍にするオーバーサンプリング処理を行うことが可能となる。
【0018】
また、上述した周期Tの1/Nの周期で値が更新されて畳み込み演算手段から出力される演算結果データをアナログ信号に変換するとともに平滑するデジタル-アナログ変換器をさらに備えることが望ましい。また、上述した周期Tの1/Nの周期で値が更新されて畳み込み演算ステップから出力される演算結果データをアナログ信号に変換するとともに平滑するデジタル-アナログ変換ステップをさらに備えることが望ましい。これにより、入力される離散データの間を滑らかにつなぐアナログ信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を適用した一実施形態の信号処理装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
(1)標本化関数の改良
本出願の発明者によって提案された従来の標本化関数(以後、この標本化関数を「Cタイプ標本化関数」と称する)は、以下の(1)式で定義される2次の区分的多項式をτ/2シフトさせることによって得られる関数系(関数の集合)の線形結合により、(2)式で表される関数として導出されている。但し、τは標本間隔を表す。
【0021】
【数1】
JP0004035120B2_000002t.gif

【0022】
【数2】
JP0004035120B2_000003t.gif

【0023】
ここで、(2)式における3[c]ψ(t)は、標本化関数として以下に示す条件式を満足する必要がある。
【0024】
【数3】
JP0004035120B2_000004t.gif
この条件式を解くと、
【0025】
【数4】
JP0004035120B2_000005t.gif
を得る。
【0026】
また、Cタイプ標本化関数の周波数特性をΨ(f)とすれば、Ψ(f)は3[c]ψ(t)をフーリエ変換することにより、
【0027】
【数5】
JP0004035120B2_000006t.gif
として表される。但し、(5)式においてfS=1/τとしている。
【0028】
ところで、(2)式で表されるようにCタイプ標本化関数は、二次の区分的多項式のシフト間隔を標本間隔の1/2とすることにより実現できたものであると考えられる。しかしながら、これまでに(2)式におけるシフト間隔の一般性については議論されていない。(5)式でも示されるように、標本間隔は周波数特性と関連があるパラメータであると考えることができるため、標本化関数を構成する際のシフト間隔を変化させていくことにより、様々な周波数特性を持つ標本化関数を設計できると考えられる。そこで、以下では、シフト間隔を変化させることによって設計される標本化関数とその周波数特性について検討する。
【0029】
区分的多項式のシフト間隔を一般化したCタイプ標本化関数をφα(t)表すことにすると、φα(t)は、
【0030】
【数6】
JP0004035120B2_000007t.gif

【0031】
と表すことができる。ここで、α(0<α≦1/2)をシフトパラメータと呼ぶことにする。関数φα(t)が標本化関数であるためには上述したCタイプ標本化関数と同様に、(3)式の条件を満たす必要がある。すなわち、
【0032】
【数7】
JP0004035120B2_000008t.gif

【0033】
この条件に基づき、(6)式における展開係数βk(k=-1,0,1)を求めると、(6)式と(7)式により以下の連立方程式が立てられる。
【0034】
【数8】
JP0004035120B2_000009t.gif
ところで、3[c]ψ(t)は以下に示す区分多項式として表すことができる。
【0035】
【数9】
JP0004035120B2_000010t.gif
(9)式の値を(8)式に代入することにより、以下の式が得られる。
【0036】
【数10】
JP0004035120B2_000011t.gif
これを解くことにより、展開係数が以下のように求められる。
【0037】
【数11】
JP0004035120B2_000012t.gif
したがって、シフトパラメータを持つ標本化関数は、
【0038】
【数12】
JP0004035120B2_000013t.gif

【0039】
として表すことができる。ここで、0<α≦1/2となっているが、α=1/2のときは上述したCタイプ標本化関数に一致する。すなわち、
【0040】
【数13】
JP0004035120B2_000014t.gif
となる。
【0041】
また、φα(t)の周波数特性をΦα(f)と表すことにすると、Φα(f)は(12)式をフーリエ変換することにより、以下のように求められる。
【0042】
【数14】
JP0004035120B2_000015t.gif
ここで、fSは(5)式と同様にfS=1/τである。
【0043】
次に、シフトパラメータαを変化させることによる標本化関数の周波数特性について検討する。図1は、シフトパラメータαを変化させた場合の標本化関数の波形を示す図である。また、図2はシフトパラメータαを変化させた場合の標本化関数の周波数特性を示す図である。図1に示すように、改良された標本化関数は、シフトパラメータαが1/2よりも小さくなるにつれて中心部分の幅が太くなるが、t=±0.5τを超えるとその減衰が急峻になり、t=±τ以降のアンダーシュートが大きくなっていることが確認できる。また、図2に示すように、改良された標本化関数の周波数特性は、αの値が変化しても主極バンド(メインローブ)についてはあまり大きな変化は見られないが、αが小さくなると第1サイドローブの振幅が大きくなり、副極降下速度が遅くなっていることが確認できる。別の見方をすれば、シフトパラメータαを変化させてもメインローブの特性をほぼ変化させることなく高調波成分を調整することができる。
【0044】
(2)信号処理装置
図3は、図1に示す改良された標本化関数を用いた信号処理装置の構成を示す図である。図3に示す信号処理装置は、入力される離散データに基づいて離散データ間の値の補間処理を行うものであり、離散データ抽出部10、標本化関数処理部20、畳み込み演算部30、補間位置設定部40、シフト量設定部50、D/A(デジタル-アナログ)変換器60、LPF(ローパスフィルタ)70を含んで構成されている。
【0045】
離散データ抽出部10は、順に入力される離散データの中から直前の4つを抽出し、次に新たな離散データが入力されるまでこの4つの離散データを保持する。これら4つの離散データは、次段に接続された標本化関数処理部20に向けて出力される。標本化関数処理部20は、データ補間位置bが指定されたときに、このデータ補間位置bと各離散データとの距離に基づいて標本化関数の値を計算する。離散データ抽出部10から出力される4つの離散データのそれぞれについて標本化関数の値が計算される。畳み込み演算部30は、標本化関数処理部20によって演算された4つの標本化関数の値のそれぞれに各離散データの値を乗算し、その結果を加算することにより4つの離散データに対応する畳み込み演算を行う。この畳み込み演算によって得られる値が、2番目の離散データと3番目の離散データとの間の所定の補間位置における補間値となる。補間位置設定部40は、標本化関数処理部20による演算に用いられるデータ補間位置bを設定する。このデータ補間位置bは、所定の時間間隔、具体的には離散データの入力間隔に対応する周期Tの1/Nの周期(=T/N)毎にその値が更新される。
【0046】
シフト量設定部50は、標本化関数処理部20において用いられる標本化関数の形状を決定するために必要なシフト量を可変設定するためのものであり、シフト量を標本間隔で正規化したシフトパラメータαを設定する。シフトパラメータαについては後述する。D/A変換器60は、畳み込み演算部30から周期T/Nで補間データが入力され、対応するアナログ電圧に変換して出力する。LPF70は、D/A変換器60の出力信号に対して平滑処理を行って、電圧が滑らかに変化する信号を出力する。
【0047】
図4は、4つの離散データと着目点との位置関係を示す図である。例えば、滑らかに変化する連続的な信号を一定の時間間隔で標本化し、これを量子化することにより標本データとしての離散データが得られる。図4では、標本位置t1、t2、t3、t4のそれぞれに対応して順番に入力される離散データd1、d2、d3、d4の値をY(t1)、Y(t2)、Y(t3)、Y(t4)とし、標本位置t2とt3の間の所定位置t0(t2から距離b)に対応した補間値yを求める場合を考える。
【0048】
本実施形態で用いる標本化関数φα(t)は、t=±(3/2+α)τにおいて収束する。ここで、0<α≦1/2であるため、この標本化関数φα(t)は、最大でもt=±2τの範囲内で0以外の値を有するだけであり、t=±2τまでの離散データを考慮に入れればよい。したがって、図4に示す補間値yを求める場合には、t=t1、t2、t3、t4に対応した4つの離散データd1~d4のそれぞれの値Y(t1)、Y(t2)、Y(t3)、Y(t4)のみを考慮すればよいことになり、処理量を削減することができる。しかも、t=±3τ以上の各離散データについては、本来考慮すべきであるが処理量や精度等を考慮して無視しているというわけではなく、理論的に考慮する必要がないため、打ち切り誤差は発生しない。
【0049】
図5は、本実施形態の信号処理装置による標本化関数を用いたデータ補間処理の概略を示す図である。データ補間処理の内容としては、図5(A)~(D)に示すように、各標本位置毎に、図1に示した標本化関数φα(t)のt=0(中心位置)におけるピーク高さを一致させ、このときの補間位置t0におけるそれぞれの標本化関数φα(t)の値を求めることになる。
【0050】
図5(A)に示すt1における離散データd1の値Y(t1)に着目すると、補間位置t0と標本位置t1との距離はτ+bとなる。したがって、標本位置t1に標本化関数φα(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における標本化関数の値はφα(τ+b)となる。実際には、離散データの値Y(t1)に一致するように標本化関数φα(t)の中心位置のピーク高さを合わせるため、上述したφα(τ+b)をY(t1)倍した値φα(τ+b)・Y(t1)が求めたい値となる。φα(τ+b)は標本化関数処理部20によって計算され、φα(τ+b)にY(t1)を乗算する計算は畳み込み演算部30によって行われる。
【0051】
同様に、図5(B)に示すt2における離散データd2の値Y(t2)に着目すると、補間位置t0と標本位置t2との距離はbとなる。したがって、標本位置t2に標本化関数φα(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における標本化関数の値はφα(b)となる。実際には、離散データの値Y(t2)に一致するように標本化関数φα(t)の中心位置のピーク高さを合わせるため、上述したφα(b)をY(t2)倍した値φα(b)・Y(t2)が求めたい値となる。φα(b)は標本化関数処理部20によって計算され、φα(b)にY(t2)を乗算する計算は畳み込み演算部30によって行われる。
【0052】
図5(C)に示すt3における離散データd3の値Y(t3)に着目すると、補間位置t0と標本位置t3との距離はτ-bとなる。したがって、標本位置t3に標本化関数φα(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における標本化関数の値はφα(-τ+b)となる。実際には、離散データの値Y(t3)に一致するように標本化関数φα(t)の中心位置のピーク高さを合わせるため、上述したφα(-τ+b)をY(t3)倍した値φα(-τ+b)・Y(t3)が求めたい値となる。φα(-τ+b)は標本化関数処理部20によって計算され、φα(-τ+b)にY(t3)を乗算する計算は畳み込み演算部30によって行われる。
【0053】
図5(D)に示すt4における離散データd4の値Y(t4)に着目すると、補間位置t0と標本位置t4との距離は2τ-bとなる。したがって、標本位置t4に標本化関数φα(t)の中心位置を合わせたときの補間位置t0における標本化関数の値はφα(-2τ+b)となる。実際には、離散データの値Y(t4)に一致するように標本化関数φα(-2t+b)の中心位置のピーク高さを合わせるため、上述したφα(-2τ+b)をY(t4)倍した値φα(-2τ+b)・Y(t4)が求めたい値となる。φα(-2τ+b)は標本化関数処理部20によって計算され、φα(-2τ+b)にY(t4)を乗算する計算は畳み込み演算部30によって行われる。
【0054】
このようにして、補間位置t0の着目点に対応して得られた4つの値φα(τ+b)・Y(t1)、φα(b)・Y(t2)、φα(-τ+b)・Y(t3)、φα(-2τ+b)・Y(t4)を畳み込み演算部30によって加算することにより、着目点に対応する補間値yが計算される。
【0055】
次に、標本化関数処理部20の詳細について説明する。図6は、標本化関数処理部20の詳細構成を示す図である。図6に示すように、標本化関数処理部20は、4つの標本化関数計算部22、24、26、28を有している。標本化関数計算部22は、離散データ抽出部10によって抽出された4つの離散データの中の第1の離散データ(図4に示す離散データd1)に対応するものであり、基本波形計算部22-1、補助波形計算部22-2、22-3、加算部22-4を含んで構成されている。同様に、標本化関数計算部24は第2の離散データd2に、標本化関数計算部26は第3の離散データd3に、標本化関数計算部28は第4の離散データd4にそれぞれ対応している。標本化関数計算部24、26、28のそれぞれは、標本化関数計算部22と基本的に同じ構成を有しており、以下では、代表して標本化関数計算部22について詳細な動作を説明する。
【0056】
標本化関数計算部22では、図5(A)に示すように標本化関数の中央を離散データd1の位置に合わせたときに、この第1の離散データから距離tの位置にある着目点に対応する標本化関数の値を計算する処理を行っている。
【0057】
基本波形計算部22-1は、標本化関数に対応する標本間隔τよりも広い局所的な範囲が0以外の値に、それ以外の範囲で0となる少なくとも1回以上微分可能な基本波形について、着目点に対応する値を計算する。一方の補助波形計算部22-2は、基本波形の極性を反転させるとともに利得調整を行い、さらに基本波形の前側に所定のシフト量でシフトさせた第1の補助波形について、着目点に対応する値を計算する。他方の補助波形計算部22-3は、基本波形の極性を反転させるとともに利得調整を行い、さらに基本波形の後側に所定のシフト量でシフトさせた第2の補助波形について、着目点に対応する値を計算する。
【0058】
図7は、基本波形計算部22-1で用いられる基本波形と、補助波形計算部22-2、22-3で用いられる第1および第2の補助波形との関係を示す図である。図7において、Aが基本波形を、Bが第1の補助波形を、Cが第2の補助波形をそれぞれ示している。
基本波形Aは、上述した(12)式の右辺第2項に対応する関数の波形であり、3階Bスプライン関数3[b]ψ(t)に(1+4α2)τ/(4α2)を乗算することにより得られる。なお、この3階Bスプライン関数3[b]ψ(t)は(9)式で定義されており、-3τ/2≦t≦+3τ/2の局所的な範囲で0以外の値に、それ以外の範囲で0となる1階だけ微分可能な波形である。
【0059】
第1の補助波形Bは、(12)式の右辺第1項に対応する関数の波形であり、3階Bスプライン関数3[b]ψ(t)に-τ/(8α2)を乗算することにより得られる。第2の補助波形Bは、(12)式の右辺第3項に対応する関数の波形であり、3階Bスプライン関数3[b]ψ(t)に-τ/(8α2)を乗算することにより得られる。これら、第1の補助波形Bと第2の補助波形Cのそれぞれは、基本波形Aの極性を反転するとともに利得調整を行い、さらに所定のシフト量で前あるいは後にシフトさせた波形である。このときのシフト量は、(12)式の右辺第1項および右辺第3項から明らかなようにατで表すことができ、標本間隔τで正規化した(標本間隔τを1とする)シフトパラメータαで特定することができる。0<α≦1/2であるため、シフト量は最大でτ/2となる。
【0060】
基本波形計算部22-1は、離散データd1に対応する基本波形Aについて、着目点の位置t0に対応する値を計算する。基本波形Aと2つの補助波形B、Cを合成することにより本実施形態の標本化関数φα(t)が生成されるため、標本化関数の中央位置を離散データd1の位置に一致させた場合の基本波形Aと着目点の位置t0の位置関係は図7に示すようになる。したがって、基本波形計算部22-1は、(12)式の右辺第2項を用いて、((1+4α2)τ/(4α2))・3[b]ψ(τ+b)の計算を行うことにより、基本波形Aについて着目点の位置t0に対応する値を計算する。
【0061】
同様に、一方の補助波形計算部22-2は、(12)式の右辺第1項を用いて、(-τ/(8α2))・3[b]ψ(τ+b+ατ)の計算を行うことにより、補助波形Bについて着目点の位置t0に対応する値を計算する。なお、図7からわかるように、この値は0となる。他方の補助波形計算部22-3は、(12)式の右辺第3項を用いて、(-τ/(8α2))・3[b]ψ(τ+b-ατ)の計算を行うことにより、補助波形Cについて着目点の位置t0に対応する値を計算する。
【0062】
加算部22-4は、基本波形計算部22-1、補助波形計算部22-2、22-3のそれぞれによって計算された着目点に対応する値を加算する。このようにして、標本化関数計算部22によって、離散データd1について着目点に対応する標本化関数の値φα(τ+b)が計算される。
【0063】
同様にして、標本化関数計算部24によって、離散データd2について着目点に対応する標本化関数の値φα(b)が計算される。標本化関数計算部26によって、離散データd3について着目点に対応する標本化関数の値φα(-τ+b)が計算される。標本化関数計算部28によって、離散データd4について着目点に対応する標本化関数の値φα(-2τ+b)が計算される。
【0064】
上述した離散データ抽出部10が離散データ抽出手段に、標本化関数計算部20が標本化関数処理手段に、畳み込み演算部30が畳み込み演算手段に、基本波形計算部22-1が基本波形計算手段に、補助波形計算部22-2、22-3が補助波形計算手段に、加算部22-4が加算手段に、シフト量設定部50がシフト量設定手段に、補間位置設定部40が更新手段に、D/A変換器60、LPF70がデジタル-アナログ変換手段にそれぞれ対応する。
【0065】
次に、本実施形態の信号処理装置の全体動作を説明する。図8は、本実施形態の信号処理装置の全体動作を示す流れ図である。
【0066】
まず、シフト量設定部50によるシフト量の設定が行われる(ステップ100)。設定方法としては、複数の選択候補の中から利用者の操作によってシフトパラメータαを選択する場合が考えられる。例えば、図1および図2に示すように、シフトパラメータαの値として1/2、1/4、1/8、1/16の4種類をあらかじめ選択候補として用意しておいて、一つの選択候補を利用者に選択させる。あるいは、別の設定方法としては、0<α≦1/2の範囲内で利用者がシフトパラメータαの値を直接入力する場合が考えられる。
【0067】
次に、離散データ抽出部10は、所定間隔Tで順番に入力される離散データの中から4つの離散データd1~d4を抽出、保持して出力する(ステップ101)。また、補間位置設定部40は、補間位置t0を設定する(ステップ102)。次に、標本化関数処理部20は、4つの離散データd1~d4のそれぞれについて補間位置t0の着目点に対応する基本波形Aの値と補助波形B、Cの値を計算し(ステップ103、104)、これらを各離散データ毎に加算して基本波形標本化関数の値φα(τ+b)、φα(b)、φα(-τ+b)、φα(-2τ+b)を計算する(ステップ105)。次に、畳み込み演算部30は、標本化関数計算部20によって各離散データ毎に計算された標本化関数の値φα(τ+b)、φα(b)、φα(-τ+b)、φα(-2τ+b)と各離散データの値Y(t1)、Y(t2)、Y(t3)、Y(t4)を用いた畳み込み演算(Y(t1)・φα(τ+b)+Y(t2)・φα(b)+Y(t3)・φα(-τ+b)+Y(t4)・φα(-2τ+b))を行って、着目点に対応する補間データを出力する(ステップ106)。
【0068】
D/A変換器60は、この補間データの値(補間値y)に対応するアナログ電圧を生成し(ステップ107)、このアナログ電圧をLPF70に通すことで滑らかに変化するアナログ信号が出力される(ステップ108)。
【0069】
また、補間位置設定部40では、補間位置t0と離散データの位置が一致したか否かを判定しており(ステップ109)、一致しない場合には否定判断を行った後、ステップ102に戻って補間位置を更新する。以後、ステップ103以降の処理が繰り返される。一方、補間位置が離散データの位置と一致した場合には肯定判断が行われ、ステップ101に戻って、組み合わせが更新された新たな離散データの抽出が行われる。
【0070】
上述したステップ100がシフト量設定ステップに、ステップ101が離散データ抽出ステップに、ステップ102が更新ステップに、ステップ103~105が標本化関数処理ステップに、ステップ103が基本波形計算ステップに、ステップ104が補助波形計算ステップに、ステップ105が加算ステップに、ステップ106が畳み込み演算ステップに、ステップ107、108がデジタル-アナログ変換ステップにそれぞれ対応する。
【0071】
このように、本実施形態の信号処理装置では、基本波形Aと補助波形B、Cを合成して標本化関数の値を計算する際にこれらの波形の相対的なシフト量(ατ)をずらすことができるため、この標本化関数を用いてデータ補間等を行う際の周波数特性を調整することが可能になる。
【0072】
また、基本波形Aとして、全範囲で1回だけ微分可能な凸形状の波形、具体的には3階Bプライン関数に対応する波形を用いることにより、十分に自然現象を近似できると考えられる滑らかに値が変化する標本化関数波形を得ることが可能になる。
【0073】
また、合成対象となる基本波形Aの値が0以外になる局所的な範囲Wは、標本間隔τの2倍以上3倍以下の幅Wに対応する範囲であり、補助波形B、Cのシフト量は(4τ-W)/2と同じかそれ以下の時間に設定されている。これにより、中央位置を挟んで前後2つずつの標本位置と同じかそれよりも狭い範囲において標本化関数波形の値を0に収束させることが可能になるため、この標本化関数を用いてデータ補間等を行う際に、着目位置の前後2つずつ(合計4つ)のデータを用いるだけでよくなり、処理負担の軽減が可能になる。本実施形態の基本波形Aは局所的な範囲Wが3τに、補助波形B、Cのそれぞれのシフト量が±ατに設定されており、上記の関係を満たしている。なお、基本波形Aの範囲が3τ未満になるように設定してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、基本波形Aに対して前にシフトされる補助波形Bのシフト量と、後にシフトされる補助波形Cのシフト量とが等しい関係を維持しながらシフト量設定部50によるシフト量の可変設定が行われている。さらに、基本波形Aに対して前にシフトされる補助波形Bの利得調整値(-τ/(8α2))と、後にシフトされる補助波形Cの利得調整値(-τ/(8α2))とが等しい関係を維持しながらシフト量設定部50によるシフト量の可変設定が行われている。これにより、標本化関数波形を左右対称形状にすることが可能になり、この標本化関数を用いたデータ補間等において発生するひずみを低減することができる。
【0075】
また、上述した利得調整値はシフト量に応じて値が変化し、補助波形計算部22-2、22-3は、シフト量設定部50によって設定されたシフト量に応じて利得調整値を計算している。これにより、シフト量を可変して基本波形Aと補助波形Bの重複の度合いを変更した際の合成後の波形の形状を調整して標本化関数としての条件を満たすようにすることが可能になる。
【0076】
また、本実施形態の信号処理装置では、補間位置設定部40によって着目点までの距離を所定の時間間隔T/Nで更新しており、離散データの間を複数のデータで滑らかにつなぐオーバーサンプリング処理を行うことが可能になる。さらに、本実施形態の信号処理装置では、周期T/Nの周期で値が更新されて畳み込み演算部30から出力される演算結果データ(補間データ)をアナログ信号に変換するとともに平滑するD/A変換器60およびLPF70を備えており、入力される離散データの間を滑らかにつなぐアナログ信号を得ることができる。
【0077】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、順番に入力された離散データに対応するアナログ信号を出力するデジタル-アナログ変換器として動作する信号処理装置について説明したが、畳み込み演算部30の計算によって得られる補間データを信号処理装置から出力するようにしてもよい。この場合の信号処理装置は、オーバーサンプリング処理装置として動作する。
【0078】
また、順番に入力される離散データを用いる代わりに、既にメモリ等に記録されている離散データの中から処理対象となる4つの離散データを読み出して同様の処理を行うようにしてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態の信号処理装置の動作を、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータによって実施するようにしてもよい。この場合には、ROMやRAMあるいはその他の記憶装置(ハードディスク装置等)格納された信号処理プログラム(図8に示す各ステップを実行したり、図3に示すD/A変換器60よりも前段の各部の機能を実現するためのプログラム)をCPUで実行すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】シフトパラメータαを変化させた場合の標本化関数の波形を示す図である。
【図2】シフトパラメータαを変化させた場合の標本化関数の周波数特性を示す図である。
【図3】図1に示す改良された標本化関数を用いた信号処理装置の構成を示す図である。
【図4】4つの離散データと着目点との位置関係を示す図である。
【図5】本実施形態の信号処理装置による標本化関数を用いたデータ補間処理の概略を示す図である。
【図6】標本化関数処理部の詳細構成を示す図である。
【図7】基本波形計算部で用いられる基本波形と補助波形計算部で用いられる補助波形との関係を示す図である。
【図8】本実施形態の信号処理装置の全体動作を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0081】
10 離散データ抽出部
20 標本化関数処理部
22、24、26、28 標本化関数計算部
22-1 基本波形計算部
22-2、22-3 補助波形計算部
22-4 加算部
30 畳み込み演算部
40 補間位置設定部
50 シフト量設定部
60 D/A(デジタル-アナログ)変換器
70 LPF(ローパスフィルタ)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7