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明細書 :非線形電磁超音波センサおよびこれを用いた微小傷検出装置並びに微小傷検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4500895号 (P4500895)
公開番号 特開2006-064529 (P2006-064529A)
登録日 平成22年4月30日(2010.4.30)
発行日 平成22年7月14日(2010.7.14)
公開日 平成18年3月9日(2006.3.9)
発明の名称または考案の名称 非線形電磁超音波センサおよびこれを用いた微小傷検出装置並びに微小傷検出方法
国際特許分類 G01N  29/04        (2006.01)
FI G01N 29/04 504
G01N 29/08 507
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2004-247299 (P2004-247299)
出願日 平成16年8月26日(2004.8.26)
審査請求日 平成19年8月24日(2007.8.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
発明者または考案者 【氏名】村山 理一
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
審査官 【審査官】西村 直史
参考文献・文献 特開2001-305109(JP,A)
牧山俊一,他4名,EMATを使った非破壊検査ロボットの開発,日本機械学会材料力学部門講演会講演論文集,2004年 7月20日,2004,P.553-554
村山理一,他2名,ラム波用電磁超音波センサを用いたオンサイト非接触応力測定システムの開発,日本機械学会材料力学部門講演会講演論文集,2004年 7月20日,2004,P.555-556
村山理一,電磁超音波探触子によるラム波発生条件の検討,日本機械学会機械力学・計測制御部門講演会論文集,2004年 1月16日,2003,Pt.10,P.1473-1477
牧山俊一,鋼管周溶接部用ラム波・SH板波交互励振型EMATの開発,日本機械学会九州支部講演論文集,2004年 4月19日,57th,P.421-422
調査した分野 G01N29/00-29/52
G01B17/00-17/08
A61B 8/00- 8/15
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
被検査材の直上に配置され電磁力を利用して表面波およびSH波をそれぞれ励振する超音波送信子と、この超音波送信子の駆動周波数に対して1倍および実数倍の受信特性を有する前記被検査材の直上に配置された複数の超音波受信子とから構成される非線形電磁超音波センサ。
【請求項2】
前記複数の超音波受信子は、前記超音波送信子に対して左右対称に配置したものである請求項1記載の非線形電磁超音波センサ。
【請求項3】
前記超音波送信子は、前記表面波およびSH波を交互に励振可能なものである請求項1または2に記載の非線形電磁超音波センサ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の非線形電磁超音波センサと、この非線形電磁超音波センサにより受信した電気信号を増幅する増幅器と、この増幅器による増幅後の電気信号に基づいて周波数解析を行う解析器とを有する微小傷検出装置。
【請求項5】
被検査材の直上に配置され電磁力を利用して超音波送信子から表面波およびSH波をそれぞれ送信し、
前記超音波送信子の駆動周波数に対して1倍および実数倍の受信特性を有する前記被検査材の直上に配置された複数の超音波受信子により前記被検査材を伝播した超音波信号をそれぞれ受信し、
前記複数の超音波受信子により受信した電気信号を増幅し、
この増幅後の電気信号に基づいて周波数解析を行う
微小傷検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非線形超音波を利用して固体中の100μm以下の微小傷を検出する非線形電磁超音波センサおよびこれを用いた微小傷検出装置並びに微小傷検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造材料表面は、応力、腐食環境、高温などにより最も損傷劣化を受けやすい。この劣化損傷を初期段階で検出できれば、主き裂伝播による大規模な事故を避けることができ、また供用条件の調整などにより構造の寿命を延長させることが可能となる。従来の非破壊検査法としては、線形超音波を利用した超音波探傷法が一般的に知られている。
【0003】
ところが、線形超音波を利用した超音波探傷法では、開口き裂の検出、評価は可能であるが、初期疲労き裂のようにほとんど閉じたき裂(擬閉口き裂)の検出は極めて困難である。すなわち、擬閉口き裂では入射超音波の一部がき裂面を部分的に通過するため、明瞭な反射波が得られない。また、溶接部介在物のように、見かけ上結合しているが、ほとんど結合強度のない部分、いわゆるキッシングボンド部の場合にも、同様の理由により反射波が得られない。線形超音波による傷検出限界は波長の1/10程度と言われている。
【0004】
ところで、近年では、従来の線形超音波では全く検知できなかった微小クラックに対するセンシングが可能になるという非線形超音波の利点が注目され、検討され始めている。非線形超音波とは、発生した超音波の波形が伝播の前後で歪む現象をいう。非線形超音波ではこの歪み現象の結果、発生した超音波を特徴付ける周波数と音速が変化する(図13参照。)。
【0005】
このような非線形超音波が発生する原因としての構造物は、図14および図15に示すように、この構造物を構成する粒子50とそれらをつなぐばね51の連続体として考えられる。すなわち、図14に示すように、超音波が線形に伝播する場合は、超音波の振幅が比較的小さく、ばね51の弾性限度内のため、入射した超音波の振動の様子がそのまま伝達される。これに対し、図15に示すように、大振幅の超音波を入射させた場合、ばね51が弾性限度を超えて伸び縮みするため、入射した超音波の振動の様子が、そのまま伝えられないことになる。
【0006】
なお、このような非線形超音波現象は、結合力の高い物質では起こりにくいとされており、気体、液体、固体の順番でより起こりにくくなっている。したがって、現状、非線形超音波の利用は医療分野に限られており、人体(実質、水と考えられる)の診断装置として普及しているだけである。一方、工業分野では、扱う対象が主に固体(金属)であるため、非線形現象が起こりにくく、利用されることはなかった。
【0007】
近年、固体材料で非線形超音波を発生する理由として、上記の原因と異なるものが提案され、検討されている。この非線形超音波現象は、接触型非線形超音波と呼ばれている。すなわち、超音波が、傷部(内部に空孔のある状態)に到達した場合、超音波の反射率は(Z物質-Z空気)/(Z物質+Z空気)で与えられる。Zは音響インピーダンスと言われ、音速×密度で定義される。空気の場合、Z空気=0.000428(Pa・s/m)、鋼の場合、Z物質=46.4(Pa・s/m)となり、代入するとほぼ100%反射されることになる。一般の超音波による非破壊検査はこの原理を利用して、反射される超音波の大きさを判断し、傷の有無を検出している。
【0008】
しかしながら、超音波が傷部に到着して、傷部を押したり引いたりした場合に、もし超音波振幅が傷部の空隙の幅よりも大きければ、傷部が押されたときに傷部の空隙がなくなる可能性が考えられる。このような場合、超音波は傷部を通過することになる。したがって、図16に示すように、入射超音波と波形の異なる超音波が伝播することになる。但し、通常、非破壊検査で用いられる超音波振幅は、nmからサブnm程度と言われており、傷部の空隙の幅がこの値より大きければ、上記の現象は発生しない。
【0009】
非線形超音波を用いたき裂検出システムとしては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。図17は非線形超音波の一般的な検出システムとして、2種類の材料の拡散接合部を評価する場合のセンサの配置図である。送信用超音波センサ52から、一定周波数の超音波を、接触媒質53を介して材料54,55中に入射し、拡散接合部56を通過した超音波を接触媒質57を介して反対側面の受信用超音波センサ58で受信している。受信側超音波センサ58は、非線形超音波が発生している場合、その主超音波成分は入射した超音波の主超音波成分とは大きく異なる場合が多いので、広い周波数帯域の超音波成分を受信できるように広帯域型を用いる場合が多い。これを用いれば、一定範囲の材料・接合条件のとき、2次高調波振幅を測定して接合強度の予測が可能になると言われている。
【0010】
なお、これらの従来の非線形超音波による非破壊検査評価では、超音波センサとして圧電振動子を用いている。また、この他の超音波センサとしては、例えば、特許文献2に記載のように電磁超音波センサも知られているが、電磁超音波センサは送信効率が悪く、発生する超音波強度(振幅)が小さいので、大強度の振幅が必要な非線形超音波検出は無理であるという常識がある。また、本発明者が開示した電磁超音波センサに関する文献として、例えば非特許文献1,2がある。
【0011】

【特許文献1】特開2001-305109号公報
【特許文献2】特開2001-13118号公報
【非特許文献1】村山理一,「電磁超音波センサの基礎」,非破壊検査,社団法人日本非破壊検査協会,平成14年2月,第51巻,第2号,p.62-67
【非特許文献2】村山理一、星原弘征、福重友紀,「ラム波、SH板波交互励振型電磁超音波探触子の開発」,第23回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム講演予稿集,超音波シンポジウム運営委員会,平成14年11月7日,p.173-174
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
圧電振動子型超音波センサでは、図18に示すように、センサ59の前面60から超音波ビームが発生するため、空中を伝播してから固体材料61に入射する必要がある(固体材料61表面はミクロな目で見ればμm程度の凹凸が存在するため、その面にセンサ59を置けば、空気層が必ずできる。)。しかし、前述のように、空気と固体の境界部では、超音波は100%反射するため、そのままでは超音波ビームが固体材料61に入射しない。そこで、水や油等の接触媒質62をセンサ59の前面60に塗布することが必須となる。
【0013】
しかし、接触媒質62を介して超音波ビームを固体材料61中に入射させた場合、接触媒質62の非線形性を考慮する必要がある。しかも、接触媒質62の非線形性は固体材料61に比べてはるかに大きい。したがって、得られた結果に対し、接触媒質62の非線形性を排除して固体材料61のみの非線形性を評価することは極めて困難である。また、接触媒質62の塗りむらによって誤差も生じる。
【0014】
そこで、本発明においては、接触媒質を使用することなく、非検査材の100μm以下の微小傷を検出することが可能な非線形電磁超音波センサおよびこれを用いた微小傷検出装置並びに微小傷検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、電磁超音波センサによる非線形超音波の検出は無理であるという常識について、塑性歪みに対する非線形超音波を議論する場合は正しいが、接触型で非線形超音波の検出を行う場合、非線形超音波が出るかどうかは傷の隙間と超音波振幅との相対関係で決まるということを見出した。したがって、より微小な100μm以下のクラックに限定されるが、傷の隙間より超音波振幅が大きければ、非線形超音波を検出することが可能となる。
【0016】
本発明の非線形電磁超音波センサは、被検査材の直上に配置され電磁力を利用して表面波およびSH(Share Horizontal)波をそれぞれ励振する超音波送信子と、この超音波送信子の駆動周波数に対して1倍および実数倍の受信特性を有する被検査材の直上に配置された複数の超音波受信子とから構成される。
【0017】
ここで、SH波とは、表面波の中で特に進行方向に対して面内で垂直方向(SH方向)に振動する成分を持つ波をいう。なお、SH波は、正式にはSH表面波であるが、一般的にこれを略してSH波という。また、通常、表面波という場合は、このSH波を除外したものをいう。すなわち、表面波とSH波とは、図1の(a),(b)に示すように超音波の進行方向に対して振動方向が90°異なる。なお、被検査材の板厚が超音波長と同程度あるいは波長の数倍程度の薄い板状の固体の場合には、表面波は板波(ラム波)、SH波はSH板波という。
【0018】
本発明の非線形電磁超音波センサでは、この表面波およびSH波をそれぞれ超音波送信子から励振することで、被検査材のスリット状の傷に対して超音波が垂直に入射する場合、表面波は傷開口部を密着させる作用があるが、SH波にはこのような作用はない。このとき、表面波の引っ張り振動時には傷の幅が拡がるので表面波は通過しないが、圧縮振動時には傷の幅が狭まるので表面波は通過する。これにより、高調波成分が発生し、非線形超音波を検出することができる。なお、SH波は、振動方向が傷の幅方向と垂直なため、傷の幅は不変であり、高調波成分の発生はない。一方、このスリット状の傷に対して平行に入射する場合は逆の作用がある。また、斜めに入射する場合は、中間的な作用がある。すなわち、本発明の非線形電磁超音波センサによれば、スリット状の傷の方向に対応した情報が得られる。
【0019】
本発明の電磁力を利用した非線形電磁超音波センサでは、スリット状の傷の長さより超音波振幅が大きくなる100μm以下の長さの微小な傷に限定されるが、非接触でも被検査材に超音波を励振することができることから非検査材と超音波送信子および超音波受信子との間に接触媒質が不要であるため、むしろ正確に微小クラックの有無の判定を行うことが可能となる。また、この非線形電磁超音波センサでは、接触媒質が不要なため、被検査材との間の姿勢さえ水平に一定になるようにすれば、自動走査を行うことは極めて簡単である。
【0020】
また、電磁超音波センサの場合、その駆動原理から一般的には超音波送信子から左右対称に超音波ビームが発生する。そこで、この特性を逆に利用し、超音波送信子に対して左右対称に複数の超音波受信子(以下、「超音波受信子群」と称す。)を配置することが望ましい。これにより、左右どちらかに傷が存在した場合、左右の超音波受信子群の受信信号特性が大きく変化することになり、傷の有無の判定が容易となる。このような傷の有無の判定方法は、圧電振動子型超音波センサでは実現不可能である。
【0021】
また、超音波送信子は、表面波およびSH波をそれぞれ別途励振可能な構成でも良いが、表面波およびSH波を交互に励振可能なものとするのが望ましい。表面波およびSH波を交互に励振可能であることにより、励振する超音波を切り替えるだけで、傷の有無の判定および傷の方向の判定を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
被検査材の直上に配置され電磁力を利用して表面波およびSH波をそれぞれ励振する超音波送信子と、この超音波送信子の駆動周波数に対して1倍および実数倍の受信特性を有する被検査材の直上に配置された複数の超音波受信子とから構成される非線形電磁超音波センサによれば、非接触でも被検査材に超音波を励振することができることから接触媒質は不要であり、従来全く不可能であったμmからサブμm領域の微小傷の有無およびその方向を検出することが可能となる。また、これにより、従来の線形超音波では実質破壊直前でしかできなかった余寿命評価を十分事前に予測することが可能となり、真の意味での構造物の安全保障を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施の形態1)
図2は本発明の第1実施形態における微小傷検出装置の概略構成図である。
図2において、本発明の第1実施形態における微小傷検出装置は、被検査材としての薄板Pの直上に配置された非線形電磁超音波センサを備える。非線形電磁超音波センサは、超音波送信子1および複数の超音波受信子2a,2bから構成される。超音波送信子1および複数の超音波受信子2a,2bは、導線をくし形状に巻いたコイルである。超音波受信子2a,2bは、超音波送信子1の駆動周波数f0を基本として、それぞれf0,2f0の周波数成分を受信する受信特性を有するものである。なお、超音波受信子は、超音波送信子1の駆動周波数f0に対して1倍および実数倍の受信特性を有するものであればよく、上記超音波受信子2a,2bに加えて、3f0,4f0・・・の周波数成分を受信する超音波受信子(図示せず。)を追加することも可能である。なお、これらの超音波受信子2a,2b等は、超音波送信子1を中心として左右対称に配置する。
【0024】
図3の(a)、(b)はそれぞれSH板波(SH波)およびラム波(表面波)の発生メカニズムを示す説明図である。
SH板波の場合、図3(a)に示すように超音波の伝播方向と垂直方向に静磁場をかけ、超音波送信子1のコイル電流による誘導磁場との複合磁場の方向を左右斜め方向に交互に切り替える。薄板Pが磁性材料の場合、この複合磁場の方向に磁歪(材料の伸び縮み)が発生し、その結果、超音波の伝播方向に対して垂直で面内の力が発生し、SH板波の駆動源となる。一方、ラム波の場合は、図3(b)に示すように超音波の伝播方向に印加された静磁場と同方向で一定間隔ごとに発生する誘導磁場による複合磁場変化が発生し、超音波の伝播方向の磁歪振動を起こし、ラム波に変換される。
【0025】
図2に示す本実施形態における微小傷検出装置では、この両モードの波の励振を1つの非線形電磁超音波センサで実現できるように、超音波送信子1および超音波受信子2a,2bの配置方向に対して、平行方向および垂直方向にそれぞれ静磁場が負荷できる構造となっている。すなわち、超音波送信子1および複数の超音波受信子2a,2bの上下左右にそれぞれ一対の電磁石3a,3b,4a,4bが配置され、電源5から供給する電力の切り替えスイッチ6により上下左右の電磁石3a,3b,4a,4bの駆動を切り替える。
【0026】
これにより、ラム波を発生させる場合は、切り替えスイッチ6によって左右の電磁石3a,3bが駆動され、超音波送信子1のコイル対して水平に静磁場が発生する。また、これと同時に、超音波送信子1に基本周波数f0の周波数成分を持つ高周波のパルス電気信号がパルサー7より与えられる。この両者の相互作用により薄板Pにラム波が発生する。この原理の場合、超音波送信子1に対して左右の区別はないため、左右対称にラム波が発生する。発生したラム波は、左右の超音波受信子2a,2bを通過したときに、それぞれ電気信号に変換される。
【0027】
超音波受信子2a,2bによって変換された電気信号は、切り替えスイッチ8を経て増幅器9により増幅され、周波数解析器10により周波数解析が行われる。もし、上記ラム波の伝播過程に傷があり、前述の非線形超音波発生条件に合致していれば、波形に歪みが発生することになり、周波数解析器10によりその情報が獲得できる。
【0028】
次に、SH板波を発生させる場合は、切り替えスイッチ6によって上下の電磁石4a,4bが駆動される。超音波送信子1は上述と同様に駆動されており、両者の相互作用によりSH板波が発生する。以下の過程は同じである。
【0029】
図4は図2の微小傷検出装置による微小クラックの評価手順を示している。
【0030】
(S101)
切り替えスイッチ6により左右の電磁石3a,3bを駆動し、ラム波モードで超音波送信子1より超音波(ラム波f0)を送信する。
(S102)
左右の超音波受信子2a,2b群によりこのラム波f0を検出する。
(S103)
超音波送信子1と超音波受信子2a,2bの各組み合わせで受信信号の周波数成分を解析する。基本周波数f0の1倍および実数倍2f0,3f0,・・・の周波数成分比を左側と右側それぞれで算出する。
(S104)
左右両側の算出値が同じであれば傷はどちら側にもないことになり、左右両側の算出値が異なれば超音波の伝播方向に対して垂直方向の微小傷が存在することになる。
【0031】
(S105)
切り替えスイッチ6により上下の電磁石4a,4bを駆動し、SH板波モードで超音波送信子1より超音波(SH板波f0)を送信する。
(S106)
左右の超音波受信子2a,2b群によりこのSH板波f0を検出する。
(S107)
超音波送信子1と超音波受信子2a,2bの各組み合わせで受信信号の周波数成分を解析する。基本周波数f0の1倍および実数倍2f0,3f0,・・・の周波数成分比を左側と右側それぞれで算出する。
(S108)
左右両側の算出値が同じであれば傷はどちら側にもないことになり、左右両側の算出値が異なれば超音波の伝播方向に対して平行方向の微小傷が存在することになる。
【0032】
このように、薄板P内に微小クラックが存在した場合、左側の超音波受信子2a,2b群と右側の超音波受信子2a,2b群とで、評価結果が大きく異なることになるので、信頼度の高いデータが得られる。
【0033】
(実施の形態2)
図5および図6は本発明の第2実施形態における微小傷検出装置の概略構成図である。
本発明の第2実施形態における微小傷検出装置では、非線形電磁超音波センサによりSH板波およびラム波をそれぞれ別々に発生させるため、図5に示すように電磁石3a,3bと図6に示すように電磁石4a,4bとをそれぞれ別構成としたものである。その他の構成については第1実施形態と同様である。
【0034】
このような構成であっても、第1実施形態と同様に、図5に示す電磁石3a,3bを駆動することでラム波を送信し、左右両側の超音波受信子2a,2bにより受信した信号の周波数成分を解析することで、超音波の伝播方向に対して垂直方向の傷の有無を検出することが可能である。また、図6に示す電磁石4a,4bを駆動することでSH板波を送信し、左右両側の超音波受信子2a,2bにより受信した信号の周波数成分を解析することで、超音波の伝播方向に対して平行方向の傷の有無を検出することが可能である。
【0035】
(実施の形態3)
図7および図8は本発明の第3実施形態における微小傷検出装置の概略構成図である。
本発明の第3実施形態における微小傷検出装置では、超音波送信子1の左右一方だけに超音波受信子2a,2bを配置したものである。その他の構成については第2実施形態と同様である。
【0036】
このような構成であっても、図7に示す電磁石3a,3bを駆動することでラム波を送信し、左右一方の超音波受信子2a,2bにより受信した信号の周波数成分を解析することで、超音波の伝播方向に対して垂直方向の傷の有無を検出することが可能である。また、図8に示す電磁石4a,4bを駆動することでSH板波を送信し、左右一方の超音波受信子2a,2bにより受信した信号の周波数成分を解析することで、超音波の伝播方向に対して平行方向の傷の有無を検出することが可能である。
【実施例】
【0037】
図9は超音波送信子1の駆動周波数を1MHz、超音波受信子2a,2bの受信特性を1MHz、2MHzとした場合のラム波モードによる評価結果を示している。本実施例では、薄板(鋼板)Pに微小スリットSを加工して評価した。ラム波は図9(a)に示すようにスリットSに対して垂直に入射した。なお、本発明の微小傷検出装置の適用範囲は本来さらにスリット幅の狭い範囲を狙ったものであるが、機械加工で可能な限り小さく加工した。また、表記しているスリット幅は開口部の幅であり、底部は極めて細くなっていることが予想される。
【0038】
図9(b)および(c)はスリット幅20μmの場合の受信信号を周波数解析した結果であり、それぞれの主周波数成分の強度比について、スリット幅ごとにプロットしたものが同図(d)である。この図から、スリット幅20~30μmの場合のスリット底部の幅が超音波振動の振幅と同程度となり、主周波数成分の強度比すなわち送信超音波の主周波数成分1MHzに対して主周波数成分2MHzが強く発生していることが分かる。
【0039】
図10はSH板波をスリットに対して垂直に入射した場合を示している。この場合は前述のように、SH板波がスリット幅を狭める効果がないため、有意差が生じていない。
【0040】
図11はラム波およびSH板波をスリットに対して平行に入射した場合の例である。この場合、前述のように、SH板波にスリット幅を狭める効果が生じるため、有意差が生じている。
【0041】
図12は本発明の非線形電磁超音波センサを用いた微小傷検出装置と従来の線形超音波センサを用いた微小傷検出装置とを比較した図である。
以上のように、本発明の非線形電磁超音波センサを用いた微小傷検出装置によれば、従来全く不可能であったμm~サブμm領域の微小傷を検出することが可能となる。その結果、例えば、図12に示すように従来の線形超音波センサを用いた場合の余寿命評価が実質破壊直前でしかできず、効果がなかったのに対し、本発明の非線形電磁超音波センサを用いた場合、充分に事前の予測が可能となり、真の意味での構造物の安全保障を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の非線形電磁超音波センサおよびこれを用いた微小傷検出装置並びに微小傷検出方法は、従来の線形超音波を用いた超音波試験で検出できない初期の疲労、クリープ損傷の検出、キッシングボンド、微小クラックを検出することで原子力発電所や火力発電所の安全確保のため極めて厳しい検査レベルを必要とする構造物の検査、燃料タンクやガス配管などの余寿命評価等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】表面波とSH波による非線形超音波発生のメカニズムの違いを示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態における微小傷検出装置の概略構成図である。
【図3】(a)はSH板波(SH波)の発生メカニズムを示す説明図、(b)はラム波(表面波)の発生メカニズムを示す説明図である。
【図4】図2の微小傷検出装置による微小クラックの評価手順を示すフロー図である。
【図5】本発明の第2実施形態における微小傷検出装置の概略構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態における微小傷検出装置の概略構成図である。
【図7】本発明の第3実施形態における微小傷検出装置の概略構成図である。
【図8】本発明の第3実施形態における微小傷検出装置の概略構成図である。
【図9】ラム波モードによる評価結果を示す図である。
【図10】SH板波をスリットに対して垂直に入射した場合の評価結果を示す図である。
【図11】ラム波およびSH板波をスリットに対して平行に入射した場合の評価結果を示す図である。
【図12】本発明の非線形電磁超音波センサを用いた微小傷検出装置と従来の線形超音波センサを用いた微小傷検出装置とを比較した図である。
【図13】非線形超音波の説明図である。
【図14】ばねの弾性限度内で超音波が伝播する様子を示す図である。
【図15】ばねの弾性限度を超えて超音波が伝播する様子を示す図である。
【図16】超音波振幅が傷の空隙の幅よりも狭い場合の超音波伝播の様子を示す図である。
【図17】非線形超音波の一般的な検出システムとして、2種類の材料の拡散接合部を評価する場合のセンサの配置図である。
【図18】圧電振動子型超音波センサによる超音波伝播の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 超音波送信子
2a,2b 超音波受信子
3a,3b,4a,4b 電磁石
5 電源
6,8 切り替えスイッチ
7 パルサー
9 増幅器
10 周波数解析器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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