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明細書 :冷温水用腐食抑制性流れ促進剤および冷温水熱媒における腐食抑制流れ促進方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4719873号 (P4719873)
公開番号 特開2006-083247 (P2006-083247A)
登録日 平成23年4月15日(2011.4.15)
発行日 平成23年7月6日(2011.7.6)
公開日 平成18年3月30日(2006.3.30)
発明の名称または考案の名称 冷温水用腐食抑制性流れ促進剤および冷温水熱媒における腐食抑制流れ促進方法
国際特許分類 C09K   3/00        (2006.01)
C09K   5/08        (2006.01)
C23F  11/12        (2006.01)
FI C09K 3/00 Q
C09K 5/00 E
C23F 11/12 101
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2004-267845 (P2004-267845)
出願日 平成16年9月15日(2004.9.15)
審査請求日 平成19年5月23日(2007.5.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】佐伯 隆
審査官 【審査官】森 健一
参考文献・文献 特開昭58-185692(JP,A)
特開昭59-046246(JP,A)
特開2002-080820(JP,A)
特開平11-061093(JP,A)
特開2004-231833(JP,A)
調査した分野 C09K 3/00
C09K 5/08
C23F 11/12
特許請求の範囲 【請求項1】
ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドまたはオレイルビスヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライドからなるカチオン系界面活性剤と対イオン剤のパラハロゲン化安息香酸とよりなる流体用流れ促進剤。
【請求項2】
請求項1記載の流れ促進剤に防錆剤を添加することを特徴とする冷温水用腐食抑制流れ促進剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の流れ促進剤に消泡剤を添加することを特徴とする冷温水用腐食抑制流れ促進剤。
【請求項4】
ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドまたはオレイルビスヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライドからなるカチオン系界面活性剤50~1500ppm、対イオン剤のパラハロゲン化安息香酸50~5000ppmを流体に添加混合することを特徴とする冷温水熱媒における腐食抑制流れ促進方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、閉路循環系、地域冷暖房システム、各種工場の循環系、コージェネレーションシステムなどに使用する水などの熱媒流体中に粘弾性特性を持たせる添加剤を添加することによって抗力減少効果を誘起させ、乱流を層流化させるようにした冷温水用腐食抑制性流れ促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプなどの管内を流れる流体には、流体相互や該流体と管の壁面との境界のところで生ずる摩擦抵抗や、その抵抗に伴う乱流などが生ずることが知られ、それにより該流体の管内での流れに抗する力が働くこと、そしてそうした流体の中に僅かな量の特定の物質を添加することにより、該流体の管内での流れがよりスムーズになるあるいは該流体の管内での流れに抗する力を低下せしめることができることが知られている。こうした作用効果を持つ物質は、当該分野では、配管内流体用、「流れ促進剤」、「抗力減少剤」、「摩擦抵抗低減剤」、「DR剤」などと呼ばれている。オフィスビル、工場、病院、デパート、ホテル、公共施設等では空調設備が欠かせない。そうした空調などには、冷暖房用熱媒移送システムが使用される。こうした熱媒移送システム等においては、普通、配管の長さは長距離にわたり、配管内を流れる流体にかかる管内抵抗なども大きなものとなり、流体搬送動力も大きなものが必要となり、配管設備コストも膨大なものになる。さらにはランニングコストも増大する。
【0003】
設備コストを削減し、流体搬送動力を低減させる有利な方法として、配管内を流れる水などの流体の配管抵抗を低減させる「流れ促進剤」を使用することが提案されてきている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、空調設備等の冷温水配管は、防錆剤等を使用して水管理をしないと、管内に錆等を生じさせ、配管内部を閉塞させたり、配管自体を破損させて、トラブルを生じさせる恐れがあることから、従来より、様々な防錆、管理手段が取られている。特に大規模な空調施設(例えば、地域冷暖房、高層ビル空調など)、半導体工場での空調設備では、配管の延命が重要視されており、そうした目的で腐食抑制剤が多く利用されているのも事実である。密閉冷温水経路内に防錆として-般的に多く利用されている防錆剤としては、亜硝酸塩系の防錆剤が多いと言われている。
【0005】

【特許文献1】特開2002-80820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記したように、近年、棒状ミセルを形成する界面活性剤を添加した冷温水を冷熱媒移送管及び放熱器内に流通せしめ、省エネルギーを図る手段が注目を浴び、その利用の一層の促進が求められているが、そういった流れ促進剤は、空調設備等の冷温水配管系は鋼管やその亜鉛メッキ管、ステンレス管を含み、さらに熱交換装置には銅管が使用されることが多い。これらの金属の腐食を抑えるためには個々の金属の腐食を抑える添加剤を混合添加することがなされている。
【0007】
これらの防食剤は水中でイオンの形で存在する。一方、流れ促進剤として使用される界面活性剤と対イオン剤もイオン性の物質であり、これが複数の防錆剤と混合されることによって、流れ促進効果が低下したり、流れ促進効果が得られる上限温度が低下したり、場合によっては腐食が進むといった問題があった。また、流れ促進剤を単独で使用した場合では、パイプ内の腐食は不可避であると予想され、錆等の発生により、パイプ壁面が凹凸となる恐れがある。パイブの内壁に生じた凹凸で流れが乱されることとなり、パイプ内を流れる流体と管壁との間の摩擦抵抗が増大し、流量が低下することが考えられる。
【0008】
また、パイプ内を流れる流体の流動抵抗低減には、熱媒に添加される流れ促進剤が、棒状ミセルを形成することがひとつの鍵であると考えられるが、こうした配管内の汚れ、錆などは、流動抵抗低減に対しそれを阻害する大きな要因の一つとなる。
【0009】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、対イオン剤の存在下で棒状ミセルを形成するカチオン系界面活性剤に対し、金属の腐食の原因となるオルト位に基を持つベンゼン環型対イオン剤ではなく、メタ位やパラ位に基を持つ対イオン剤を使用することによって、腐食を抑制するとともに、高温域での棒状ミセルの形成を安定せしめることによって、広範囲で使用可能な冷温水用腐食抑制性流れ促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明では、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドまたはオレイルビスヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライドからなるカチオン系界面活性剤と対イオン剤のパラハロゲン化安息香酸とよりなるようにした。
【0011】
第2の発明は、第1発明の流れ促進剤に防錆剤を添加することを特徴とする冷温水用腐食抑制流れ促進剤に関する。また、第3の発明は、第1の発明および第2の発明の流れ促進剤に消泡剤を添加することを特徴とする冷温水用腐食抑制流れ促進剤に関する。さらに、第4の発明では、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドまたはオレイルビスヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライドからなるカチオン系界面活性剤50~1500ppm、対イオン剤のパラハロゲン化安息香酸50~5000ppmを流体に添加混合することにより冷温水熱媒における腐食抑制流れを促進するようにした。
【発明の効果】
【0012】
閉路循環系、地域冷暖房システム、各種工場の循環系、コージェネレーションシステムなどに使用する水などの熱媒流体中に、カチオン系界面活性剤にメタ位またはパラ位にある対イオン剤を添加混合することにより、高温域での棒状ミセルの形成を安定せしめ、乱流を層流化させることにより、長期的に安定した抗力減少効果を誘起させ、広範囲で使用可能な熱媒流体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書中、「流体用流れ促進剤」とは、流体の管内での流れがよりスムーズになるあるいは該流体の管内での流れに抗する力を低下せしめることができる機能を有する物質あるいは組成物を指し、公知のもののうちから選ばれることができるが、好ましくは界面活性剤を成分として含有するものが挙げられ、より好ましくは少なくとも界面活性剤と対イオン剤とを含有するものが挙げられる。該界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤として当業者に知られたもののうちから選ばれることができ、特に好ましくは流体中で棒状ミセルを形成する界面活性剤が挙げられ、例えば、長鎖を有する第4アンモニウム塩等である。これらのうち、特に、炭素数16~18のアルキル基を有する第4アンモニウム塩が好ましい。
【0014】
好適に使用されるカチオン系界面活性剤としては、ステアリルトリメチルアンモニウウクロライド、オレイルビスヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0015】
また、第4級アンモニウム塩を構成するマイナスイオンは、特に限定されず、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン等であってもよいが、塩素イオンが一般的である。次に、対イオン剤としては、メタまたはパラ位に置換基を有する安息香酸である。特に、メタハロゲン化安息香酸あるいはパラハロゲン化安息香酸が有利であり、なかでもパラクロロ安息香酸が優れた効果を示す。
本発明の特徴の一つは、該対イオン剤として用いられる安息香酸は、オルト位に置換基を持たないことにある。
【0016】
本発明において、カチオン系界面活性剤と対イオン剤との使用割合は、特に厳密ではないが、好適な範囲として重量比で1~3対1~10の割合で用いられる。また、本発明の流体用流れ促進剤は対象となる熱媒、特に水または水を主体とする水溶液に対して、カチオン系界面活性剤を50~1500ppm、対イオン剤を50~5000ppmとなる範囲で用いるのが好ましい。これらカチオン系界面活性剤および(または)対イオン剤を更に大量に用いることは、かえって熱媒の粘度の上昇を来たし、流体の流れを阻害する方向になる。また上記範囲よりも低濃度で用いたのでは、流れ促進効果が十分に発揮されない。
【実施例1】
【0017】
亜鉛引き配管を想定して、500mlのビーカーに試験水を用意し、これに予め秤量した亜鉛板(30×50×1mm)を12日間浸透させ、この間、ホットマグネットスターラーを用いて攪拌しながら55℃の条件に保った。その後、亜鉛板を再び秤量して減量を求め、下記の式により亜鉛板の腐食速度(MDD)を算出した。
【0018】
【化1】
JP0004719873B2_000002t.gif

【0019】
その結果、腐食速度に顕著な差異のあるデータが得られた。すなわち、比較例として水道水500mlにカチオン系界面活性剤(Arquad18-63)500ppmとサリチル酸ナトリウム500ppmを添加混合して上述した条件で腐食速度を測定した結果、22.1(MDD)であった。因みに、一般にMDD値が10以下であると防食できたと判断される。さらに、本発明に基づき、カチオン系界面活性剤(Arquad18-63)500ppmとパラクロロ安息香酸500ppmを添加混合し、上記条件下で実験を行い亜鉛板の腐食速度を測定し、前記式(化1)によって腐食速度を算出したところ、0.1(MDD)となり、腐食速度が極めて小さいことが判明した。因みに、水道水500mlのみの場合では、0.5(MDD)であった。
【0020】
これに対して、既存の技術では、鉄の腐食防止はモリブデン酸ナトリウムや亜硝酸ナトリウムを添加し、銅の腐食防止はベンゾトリアゾール系腐食抑制剤を添加すればよいが、亜鉛の場合は腐食が抑えられず、ほとんど効果が無かった。しかしながら、抗力減少剤の対イオン剤をサリチル酸ナトリウムからパラクロロ安息香酸に替えたことにより、亜鉛に対する腐食が改善した。さらに、パラクロロ安息香酸の添加によって、抗力減少効果はサリチル酸ナトリウムによるものと同レベルであるばかりでなく、抗力減少を維持する上限温度を上昇することかできる。
【0021】
本発明の流体用流れ促進剤は、さらに防錆剤を併せ用いることも極めて効果的であり、冷温水用の腐食抑制流れ促進剤となる。これら併用される防錆剤は、特に制限されることなく、市販の防錆剤が使用可能であり、例えば、モリブデン酸ナトリウム塩、モリブデン酸カリウム塩、モリブデン酸リチウム塩、モリブデン酸カルシウム塩、モリブデン酸アンモニウム塩などが挙げられ、特に好適にはモリブデン酸ナトリウムあるいはモリブデン酸リチウムである。また、亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウムなどが挙げられる。本発明の腐食抑制性流れ促進剤には、さらにベンゾトリアゾール系腐食抑制剤を含有せしめることもできる。
【0022】
モリブデン酸塩は、通常の腐食抑制剤として一般的に利用されてはいるが、高価であり、また単独での使用だと高い添加量を必要とするため、従来は、何種類かの腐食抑制剤と併用することによってそのモリブデン酸塩の腐食抑制活性を利用してきたに止まる。モリブデン酸塩を流れ促進剤と併用しての腐食抑制の原理としては、モリブデン酸塩がパイプ管内に酸化皮膜を形成せしめて、腐食抑制を行い、かつ、界面活性剤の吸着の相乗効果により、腐食機能をもたらしていると思われる。流体用流れ促進剤をモリブデン酸塩と併用することにより、常に腐食抑制されることになりパイプ内部の腐食進行がなくなり、長期的に流れ促進機能を維持できるのである。
【0023】
本発明は、さらに前記流体用流れ促進剤に防錆剤に代えてあるいは、防錆剤に併せて消泡剤を添加することも極めて有効である。この場合用いられる消泡剤は市販のものが何ら制限なく使用することができる。例えば、シリコン系消泡剤や鉱物油系消泡剤が市販されており、それらを有効量併せ用いればよい。
【0024】
本発明の代表的な冷温水式の空調システムでは、熱源地点と放熱地点との間の直径約5~1000mm、好ましくは約10~500mmの熱媒移送管内に、液温約-30~120℃、好ましくは約-20~100℃、より好ましくは約2~80℃であり、また対イオン剤成分としてパラメタクロロ安息香酸成分あるいはメタクロロ安息香酸をそれぞれ約50~5000ppm、好ましくは約100~3000ppm、さらに好ましくは約200~2000ppm含有し、さらにモリブデン酸塩又は亜硝酸塩を含有する防錆剤を含有している冷温水を壁面せん断速度約5~3000γ(1/s)で流通せしめることになる。
本発明では、液温を約-30~120℃に限定したのは、次の理由による。すなわち、-30℃以下になると、溶解度が低下して、一旦溶解したものが溶出してくる。また、120℃以上になると棒状ミセルを形成しないか、あるいは不安定な状態になり易い。
【0025】
なお、0℃以下の場合熱媒が凍ることがあるが、その場合には、ポリエチレングリコールやアルコール類を加えた溶液が用いられるが、本発明の流体流れ促進剤はかかる溶液に対しても有効である。さらに、100℃を超えた高温の場合、当然高圧となるが同様に本発明の流体用流れ促進剤は適用可能である。しかしながら、本発明の流れ促進剤が最も有効に作用する範囲は前述のとおり2~80℃である。
【0026】
熱媒としての冷温水の移送管の直径は、好ましくは約5~1000mm、さらに好ましくは約10~500mmであり、この範囲より小さい場合は熱媒の送水能力に不足を生じ十分な熱媒の供給が困難となり、さらにこの範囲を越えると配管コストが高くなりすぎるという問題が生じる。
【0027】
図2は縦軸を最大DR%(%)で表し、横軸をカチオン系界面活性剤濃度(ppm)で表す。図2において、本発明の流体用流れ促進剤であるカチオン系界面活性剤(界面活性剤成分)は約50~1500ppm、好ましくは約100~1200ppm、さらに好ましくは約200~1500ppm含有せしめることができ、この範囲より少ないと、抗力減少効果が不満足となり、またこの範囲を越えると熱媒の粘度上昇によって抗力減少効果の割りには熱量が増加せず、またそれの使用量の増大によるコスト上昇が問題となる。
【0028】
さらに、図3は縦軸を最大DR%(%)で表し、横軸を対イオン濃度(ppm)で表す。図3において、対イオン濃度の好適な範囲は、約50~5000ppmであり、より好ましい範囲は約100~3000ppmとなる。この範囲より少ないと、抗力減少効果が不満足となり、またこの範囲を越えると熱媒の粘度上昇によって抗力減少効果の割りには熱量が増加せず、またそれの使用量の増大によるコスト上昇が問題となる。
【0029】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【実施例2】
【0030】
図1を用いて実施例1を説明する。図1に冷温水式の空調システムを示す。図1では、冷温水発生機(ヒートポンプ)1と高架タンク2とを熱媒移送配管3で結んで、熱媒(冷温水)の抗力減少化効果及び腐食性向上についてテストした。図1に示された装置には、電磁流量計4及び差圧計測器(U字管マノメーター)5が設けられ、それぞれ各流量の測定及びタップ間直管部区間Lの圧力損失を測定できる。循環ポンプ6をインバータ7で周波数を変化させて、各流量、各温度及び添加された流体用流れ促進剤とモリブデン酸塩又は亜硝酸塩を含有する防錆剤の影響を調べた。図中、8は調温装置、T.Cは温度計である。冷温水発生機(熱源)1としては、吸収式冷温水発生機(ヒートポンプ)を使用した。循環ポンプ6は、S型片吸込渦巻きポンプ1.5kwを使用し、熱媒移送配管3のパイプ径は20mmのものを使用した。熱媒移送配管3のパイプの総延長は220mであった。該空調システム中の保有水量はおおよそ1.54立方メートルである。インバーター7は汎用インバーター2.2kwのものを使用し、冷温水の温度範囲は冷水7~10℃とし、温水80℃とした。
【0031】
水道水に、流体用流れ促進剤としてオレイルビスヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド(「エソカード(Ethoquard O/12)」、商品名:ライオン(株)社製の界面活性剤)を500ppm、そして対イオン剤成分としてパラクロロ安息香酸を500ppmの同量添加した。得られたEthoquard O/12+パラクロロ安息香酸に、防錆剤としてモリブデン酸ナトリウムを添加し、抗力低減効果(drag
reduction:DR)に及ぼす影響を調べた。
【0032】
実験は、先ず最初に水道水を使用し、実際に稼働している状態として運転し、インバーターによるモーターの回転数制御を行い、各周波数毎のポンプのモーターの回転数制御を行い、ポンプの各回転数毎のポンプの吐出圧力、熱媒(冷温水)の温度、流速(u[m/s])を測定した。次に流体用流れ促進剤を添加した水道水、流体用流れ促進剤とモリブデン酸ナトリウムを添加したもので同様に測定した。またインバーターを用いて周波数を下げて行き、流速が水道水の時と同じになるように設定し、その時の電流値を比較し、節減量を求めた。
【0033】
得られた結果を、図4~5に示す。図4及び図5は縦軸を抗力低減効果(以下、DR%で表し、Drag Reduction Rateの略称である)とし、横軸を温度(℃)で表す。ここで抗力減少率DR%(%)を導入した。流体摩擦係数fとレイノズル数Reとの関係から、水(ニュートン流体)を流したときの流体摩擦抵抗fwと、流れ促進剤を流したときの流体摩擦抵抗fsを算出しておき、抗力減少率DR(%)を以下のように定義する。
抗力減少率DR%(%)=[(fw—fs)/fs]×100
【0034】
すなわち、抗力減少が起きていないときは抗力減少率DR(%)=0%となり、抗力減少率DR%(%)が大きいほど抗力減少効果が大きい。図4と図5を比較すると、図4の場合は、カチオン系界面活性剤〔Ethoquard O/12;塩化オレイルビスヒドロキシエチルメチルアンモニウム;C1835N(COH)CHCl〕500ppmにサリチル酸ナトリウム(HOCCOONa)を添加して、温度を室温から徐々に上昇させた後に抗力減少率DR%(%)を測定した結果、流体の温度が65℃を超えると抗力減少率DR%(%)が低下し始め、抗力減少率DR%(%)が50%を切るときの上限温度は69℃になった。
【0035】
これに対して、図5の場合は、カチオン系界面活性剤(Ethoquard O/12;塩化オレイルビスヒドロキシエチルメチルアンモニウム;C1835N(COH)CHCl〕500ppmにパラクロロ安息香酸(ClCCOOH)を添加したときの結果である。温度が70℃を超えると抗力減少率DR%(%)が低下し始め、76℃で抗力減少率DR%=50%となった。これにより、対イオン剤をオルト位のサリチル酸ナトリウムからパラ位のパラクロロ安息香酸に替えたことで、上限温度が7℃上昇したことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ヒートポンプを使用したDR効果評価の為に使用される装置の概説図である。
【図2】最大DR%(%)とカチオン系界面活性剤濃度との関係を示すグラフ図である。
【図3】最大DR%(%)と対イオン濃度との関係を示すグラフ図である。
【図4】流体の上限温度が69℃を超えると抗力減少率DR%(%)が低下し始める場合のグラフ図である。
【図5】流体の上限温度が76℃を超えると抗力減少率DR%(%)が低下し始める場合のグラフ図である。
【符号の説明】
【0037】
1 冷温水発生機(ヒートポンプ)
2 高架タンク
3 熱媒移送配管
4 電磁流量計
5 差圧計測器
6 循環ポンプ
7 インバータ
8 調温装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4