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明細書 :血小板凝集抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4649632号 (P4649632)
公開番号 特開2006-111564 (P2006-111564A)
登録日 平成22年12月24日(2010.12.24)
発行日 平成23年3月16日(2011.3.16)
公開日 平成18年4月27日(2006.4.27)
発明の名称または考案の名称 血小板凝集抑制剤
国際特許分類 A61K  36/28        (2006.01)
A61P   7/02        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
FI A61K 35/78 T
A61P 7/02
A61P 9/10
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2004-300047 (P2004-300047)
出願日 平成16年10月14日(2004.10.14)
審査請求日 平成19年1月11日(2007.1.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
【識別番号】591224788
【氏名又は名称】大分県
【識別番号】593127201
【氏名又は名称】株式会社ファインド・ニューズ
発明者または考案者 【氏名】望月 聡
【氏名】山本 展久
【氏名】高野 済
個別代理人の代理人 【識別番号】100105728、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 敦子
【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
審査官 【審査官】菊池 美香
参考文献・文献 特開2002-125616(JP,A)
特開2004-75602(JP,A)
食品と技術,2000年,No.351,p.10-12
調査した分野 A61K 36/28
A61P 7/02
A61P 9/10
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/NAPRALERT(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ステビアの抽出物を有効成分とすることを特徴とする、血小板凝集抑制剤。
【請求項2】
前記抽出物は、低級アルコール抽出物である、請求項に記載の血小板凝集抑制剤。
【請求項3】
前記抽出物、熱水、水、あるいは水・有機溶媒混液抽出物である、請求項1又は2に記載の血小板凝集抑制剤。
【請求項4】
前記植物として、収穫後乾燥前の植物を用いる、請求項1~3のいずれかに記載の血小板凝集抑制剤。
【請求項5】
前記血小板凝集抑制剤は、アデノシン2リン酸(ADP)を凝集惹起物質として発現される血小板凝集抑制作用を奏する、請求項1~4のいずれかに記載の血小板凝集抑制剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の血小板凝集抑制剤を有効量含有する、血小板凝集抑制用の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物あるいはその抽出物を有効成分とする血小板凝集抑制剤に関し、特に、ハーブあるいはその抽出物を有効成分とする血小板凝集抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板は通常、出血を止め、血管損傷の修復等に重要な役割を果たす血液中において不可欠な細胞である一方、血小板凝固作用は、血栓症、それによる脳梗塞や心筋梗塞、血管拡張後の再狭窄などの各種の疾患や症状を引き起こす原因ともなっている。近年、食事の高脂肪化に伴ってこれらの疾患等の発症率が増大してきており、これら疾患の予防、治療などのための抗血小板剤の需要が急増してきている。
【0003】
アスピリンは血小板の凝集を引き起こすトロンボキサンの産生を抑制し、血小板凝集抑制作用を有することから、抗血小板剤として広く用いられている。しかしながら、アスピリンには胃腸障害などの副作用があることが知られている。
【0004】
また、近年、ハーブなどの植物抽出物に血小板凝集抑制作用があることが見出されてきている(特許文献1、非特許文献1)。ハーブなど日常的に容易に摂取可能な食用材料に血小板凝集抑制作用があれば、これらを含む食事から血小板凝集抑制作用を有する化合物を摂取でき、血栓症等の予防や治療に有効である。また、機能性食品や栄養補助食品として摂取を一層容易にかつ吸収等を効率化させることもできる。

【特許文献1】特開平8-73365号公報
【非特許文献1】食品と技術、2000年、9号、p.10-12
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、植物など天然物からの抽出成分である血小板凝集抑制作用についてはその作用機構は明らかでないものが多い。また、十分に血小板凝集抑制作用を有する天然由来の血小板凝集抑制剤が未だ見出されていないのが現状である。
【0006】
そこで、本発明は、ハーブ由来の血小板凝集抑制剤を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、ハーブ由来の血小板凝集抑制剤を含有する食品組成物及び医薬組成物を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、食用材料として、植物であるハーブに着目し、広い範囲にわたってハーブの血小板凝集抑制作用についてスクリーニングしたところ、ハーブの有する血小板凝集抑制作用は、ハーブの種類ごとに大きく異なっていることを見出すとともに、特定のハーブにおいて高い血小板凝集抑制作用を備えていることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0008】
本発明の一つの形態によれば、ルビーバジル(Ruby Basil)、サマーラベンダー(Summer Lavender)、ヒッドコートラベンダー(Hidcote Lavender)、フレンチストエカスラベンダー(French Stoechas Lavender)、アップルミント(Apple Mint)、オレンジミント(Orange Mint)、ウォーターミント(Water Mint)、クールミント(Cool Mint)、スペアミント(Spear Mint)、ペパーミント(Pepper Mint)、ローズマリートスカナブルー(Rosemary Tuscanablue)、ローズマリードリーミィブルー(Rosemary Dreamy blue)、レモンタイム(Lemon Thyme)、レモンバーム(Lemon Balm)、オレガノ(Oregano)、ベルガモット(Bergamot)、ヒソップ(Hyssop)、チェリーセージ(Cherry Sage)、アップルユーカリ(Apple Eucalyptus)、レモンユーカリ(Lemon Eucalyptus)、ワイルドストロベリー(Wild Strawberry)、サラダバーネット(Salad Burnet)、スウィートハーブメキシカン(Sweet Herb Mexican)、ステビア(Stevia)、ローマンカモミール(Roman Chamomile)、コモンヤロー(Common Yarrow)、ロシアンタラゴン(Russian Tarragon)及びコモンソープウァート(Common Soapwort)からなる群から選択される1種あるいは2種以上の植物あるいはその抽出物を有効成分とする、血小板凝集抑制剤が提供される。
【0009】
この形態においては、前記植物は、ヒッドコートラベンダー(Hidcote Lavender)、ベルガモット(Bergamot)、ヒソップ(Hyssop)、アップルユーカリ(Apple Eucalyptus)、レモンユーカリ(Lemon Eucalyptus)、サラダバーネット(Salad Burnet)、ステビア(Stevia)及びコモンソープウァート(Common Soapwort)から選択されることが好ましい態様である。
【0010】
また、本発明の血小板凝集抑制剤においては、前記植物は、ルビーバジル(Ruby Basil)、サマーラベンダー(Summer Lavender)、ヒッドコートラベンダー(Hidcote Lavender)、フレンチストエカスラベンダー(French StoechasLavender)、アップルミント(Apple Mint)、オレンジミント(Orange Mint)、ウォーターミント(Water Mint)、クールミント(Cool Mint)、スペアミント(Spear Mint)、ペパーミント(Pepper Mint)、ローズマリートスカナブルー(Rosemary Tuscanablue)、ローズマリードリーミィブルー(Rosemary Dreamy blue)、レモンタイム(Lemon Thyme)、レモンバーム(Lemon Balm)、オレガノ(Oregano)、ベルガモット(Bergamot)、ヒソップ(Hyssop)、チェリーセージ(Cherry Sage)から選択されるシソ科植物であることも好ましい態様であり、前記植物は、ヒッドコートラベンダー(Hidcote Lavender)、ベルガモット(Bergamot)及びヒソップ(Hyssop)から選択されることがさらに好ましい態様である。
【0011】
また、本発明の血小板凝集抑制剤においては、前記植物は、ワイルドストロベリー(Wild Strawberry)及びサラダバーネット(Salad Burnet)から選択されることも好ましい態様である。さらに、前記植物は、アップルユーカリ(Apple Eucalyptus)及びレモンユーカリ(Lemon Eucalyptus)から選択されることも好ましい態様である。さらにまた、本発明の血小板凝集抑制剤においては、前記植物はスウィートハーブメキシカン(Sweet Herb Mexican)であることも好ましい態様であり、前記植物はステビア(Stevia)であることも好ましい態様である。
【0012】
これらのいずれかの血小板凝集抑制剤は、前記抽出物が低級アルコール抽出物であることが好ましい態様であり、好ましい抽出溶媒はエタノールである。また、前記抽出物は、熱水、水、あるいは水・有機溶媒混液抽出物であることが好ましい。さらに、前記植物として、収穫後乾燥前の植物を用いることが好ましい態様である。
【0013】
また、これらのいずれかの血小板凝集抑制剤は、アデノシン2リン酸(ADP)を凝集惹起物質として発現される血小板凝集抑制作用を奏することが好ましい態様である。
【0014】
本発明の他の一つの形態によれば、食品組成物であって、上記いずれかの血小板凝集抑制剤を含有する、食品組成物が提供される。また、本発明のさらに他の一つの形態によれば、上記いずれかの血小板凝集抑制剤を有効量含有する、血小板凝集抑制作用が有効な疾患の治療用あるいは予防用の医薬組成物も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の血小板凝集抑制剤は、ルビーバジル(Ruby Basil)、サマーラベンダー(Summer Lavender)、ヒッドコートラベンダー(Hidcote Lavender)、フレンチストエカスラベンダー(French StoechasLavender)、アップルミント(Apple Mint)、オレンジミント(Orange Mint)、ウォーターミント(Water Mint)、クールミント(Cool Mint)、スペアミント(Spear Mint)、ペパーミント(Pepper Mint)、ローズマリートスカナブルー(Rosemary Tuscanablue)、ローズマリードリーミィブルー(Rosemary Dreamy blue)、レモンタイム(Lemon Thyme)、レモンバーム(Lemon Balm)、オレガノ(Oregano)、ベルガモット(Bergamot)、ヒソップ(Hyssop)、チェリーセージ(Cherry Sage)、アップルユーカリ(Apple Eucalyptus)、レモンユーカリ(Lemon Eucalyptus)、ワイルドストロベリー(Wild Strawberry)、サラダバーネット(Salad Burnet)、スウィートハーブメキシカン(Sweet Herb Mexican)、ステビア(Stevia)、ローマンカモミール(Roman Chamomile)、コモンヤロー(Common Yarrow)、ロシアンタラゴン(Russian Tarragon)及びコモンソープウァート(Common Soapwort)及びからなる群から選択される1種あるいは2種以上の植物の抽出物を有効成分とすることを特徴としている。
【0016】
本発明の血小板凝集抑制剤は、上記特定の植物あるいはその抽出物から選択される有効成分を含有している。これらの植物はいずれもハーブである。これらの特定の植物に血小板凝集抑制作用があることあるいは優れた血小板凝集抑制作用があるという報告はこれまでになされていない。これらの特定の植物は、本発明者らが、広い範囲でスクリーニングを行ったところ見出した植物であり、これらのスクリーニングからは同時に優れたハーブと同一科内あるいは同一属内にある他のハーブが血小板凝集抑制作用を有するかは予測できないということも見出された。
【0017】
本発明の血小板凝集抑制剤は、食用材料ともなるこれらの特定の植物の抽出物を有効成分とするため、持続的かつ予防的な食事からの摂取あるいは薬剤としての投与に適した血小板凝集抑制剤が提供されることになる。なお、これらの特定の植物の抽出物による血小板凝集抑制作用における機構は明らかではないが、いずれもADPを凝集惹起物質とする血小板凝集の抑制作用に優れている点において共通しているといえる。
【0018】
以下、本発明の一形態である血小板凝集抑制剤について説明するとともに、該血小板凝集抑制剤を含有する組成物ならびにその用途について説明する。
【0019】
(植物)
本血小板凝集抑制剤に用いられる植物(ハーブ)は、上記において特定された植物の群から選択される。これらの植物は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(シソ科メボウキ属:バジル)
ルビーバジル(学名Ocimum basilicum ‘Ruby’)は、シソ科植物であり、同属のハーブとして、スウィートバジル(学名Ocimum basilicum)、ダークオパールバジル(学名Ocimum basilicum ‘Dark Opal’)、レタスバジル(学名Ocimum basilicum ‘Crispum’)、シナモンバジル(学名Ocimum basilicum ‘Cinnamon’)、リコリスバジル(学名Ocimum basilicum ‘Licorice’)、パープルラッセルバジル(学名Ocimum basilicum ‘Purple Ruffles’)、ブッシュバジル(学名Ocimum basilicum ‘Minimum’)、レモンバジル(学名Ocimum basilicum ‘Lemon’)がある。ルビーバジルは、これらのバジルの中で最も高い血小板凝集抑制活性を有している。
【0021】
(シソ科ラバンジュラ属:ラベンダー)
ヒッドコートラベンダー(学名Lavandula angustifolia ‘Hidcote’)、サマーラベンダー(学名Lavandula angustifolia ‘Summer’)、フレンチラベンダー(学名Lavandula stoechas f.leucantha)及びフレンチストエカスラベンダー(学名Lavandula stoechas )は、シソ科植物であり、同属ハーブには、イエローフラワーラベンダー(学名Lavandula angustifolia ‘Yellow Flower’)、スパイクラベンダー(学名Lavandula latifolia)、イングリッシュラベンダー(学名Lavandula angustifolia)などがある。これらの中で、ヒッドコートラベンダー、サマーラベンダー、フレンチラベンダー、フレンチストエカスラベンダーは良好な血小板凝集抑制活性を備えており、フレンチストエカスラベンダー及びヒッドコートラベンダーがより優れており、なかでも、ヒッドコートラベンダーが最も高い血小板凝集抑制活性を備えている。
【0022】
(シソ科ハッカ属:ミント)
アップルミント(学名Mentha suaveolens)、ウォーターミント(学名Mentha aquatica)、オレンジミント(学名Mentha × piperita var citorata ‘Orange’)、クールミント(学名Mentha arvensis var agrestis)、スペアミント(学名Mentha spicata)、ペパーミント(学名Mentha × piperita)は、シソ科植物であり、同属のハーブとして、オーデコロンミント(学名Mentha × piperita ‘Citrata’)、パイナップルミント(学名Mentha suaveolens ‘Variegata’)などがある。これらの中で、アップルミント、ウォーターミント、オレンジミント、クールミント、スペアミント、ペパーミントは、良好な血小板凝集抑制活性を備えている。すなわち、オーデコロンミント、パイナップルミントがほとんど血小板凝集抑制活性を示さない一方、これらのミントはいずれも良好な血小板凝集抑制活性を示し、なかでも、アップルミント、ウォーターミント、クールミントが優れた血小板凝集抑制活性を備えている。
【0023】
(シソ科マンネンロウ属:ローズマリー)
ローズマリードリーミィブルー(学名Rosmarinus officinalis ‘Dreamyblue’)、ローズマリートスカナブルー(学名Rosmarinus officinalis ‘Tuscan Blue’)は、シソ科植物であり、同属のハーブとして、ローズマリーウッド(学名Rosmarinus officinalis ‘Wood’)がある。マンネンロウ属では、ローズマリードリーミィブルー、ローズマリートスカナブルーが良好な血小板凝集抑制活性を有しており、なかでも、ローズマリードリーミィブルーが優れている。
【0024】
(その他のシソ科植物)
レモンタイム(学名Thymus × citriodorus)、レモンバーム(学名Melissa officinalis)、オレガノ(学名Origanum vulgare)、ベルガモット(学名Monarda didyma)、ヒソップ(学名Hyssopus officinalis)、チェリーセージ(学名Salvia greggii)はいずれもシソ科植物である。スウィートマジョラム(学名Origanum majorana)、パイナップルセージ(学名Salvia elegans ‘Scarlet Pineapple’)、アメジストセージ(学名Salvia leucantha)、クラリーセージ(学名Salvia sclarea)など数あるシソ科植物の中でも、これらは優れた血小板凝集抑制活性を備えており、特に、ベルガモット、ヒソップは顕著に優れた血小板凝集抑制活性を備えている。
【0025】
(フトモモ科ユーカリ属:ユーカリ)
アップルユーカリ(学名Eucalyptus cinerea)、レモンユーカリ(学名Eucalyptus citriodora)は、いずれもフトモモ科植物であるが、いずれも良好な血小板凝集抑制活性を備えている。なかでも、レモンユーカリが顕著な血小板凝集抑制活性を備えている。
【0026】
(キク科植物)
ステビア(学名Stevia rebaudiana)、ローマンカモミール(学名Chamaemelum nobile)、コモンヤロー(学名Achillea millefolium)、ロシアンタラゴン(学名Artemisia dracunculoides)は、いずれもキク科植物である。同科ハーブには、エキナセア(学名Echinacea purpurea)、チコリ(学名Cichorium intybus)などがあるが、これらのハーブが微弱な血小板凝集抑制活性しか示さないかあるいは反対に血小板凝集促進作用を有するのに対して、ステビア、ローマンカモミール、コモンヤロー、ロシアンタラゴンは、良好な血小板凝集抑制活性を示している。なかでも、ロシアンタラゴン及びステビアが優れており、ステビアがさらに優れている。
【0027】
(バラ科植物)
ワイルドストロベリー(学名Fragaria vesca)やサラダバーネット(学名Sanguisorba minor)はバラ科植物であり、いずれも良好な血小板凝集抑制作用を有するが、なかでもサラダバーネットが優れた血小板凝集抑制活性を備えている。
【0028】
(クマシズラ科植物)
スウィートハーブメキシカン(学名Lippia dulcis)は、クマシズラ科植物であり、同科ハーブには、レモンバーベナ(学名Lippia citriodora)がある。スウィートハーブメキシカンは優れた血小板凝集抑制作用を有している。
【0029】
(ナデシコ科植物)
コモンソープウァート(学名Saponaria officinalis)は、ナデシコ科植物であり優れた血小板凝集抑制活性を備えている。
【0030】
本発明の血小板凝集抑制剤の有効成分は、これら特定の植物の抽出物である。有効成分が抽出物中に含まれる形態で原料であるこれらの植物に含まれている限り、原料であるハーブの全部あるいは一部を有効成分とすることもできる。
【0031】
したがって、本発明の血小板凝集抑制剤の一形態は、有効成分として、これらの植物の全体あるいはその一部である果実、種子、種皮、花、茎、葉、根および/または根茎をそのまま、あるいはこれらを粉砕、乾燥等の処理を施した処理物を含有することができる。なお、植物においては、通常、葉を用いることが好ましい。さらに、本血小板凝集抑制剤の有効成分は、こうした植物の全体、その一部あるいは処理物を原料とする植物の抽出物あるいは該抽出物から得られる画分とすることもできる。
【0032】
原料としての植物は、収穫後乾燥前の植物(フレッシュハーブ)のほか乾燥植物(乾燥ハーブ)も用いることができるが、フレッシュハーブを用いることが好ましい。なお、本明細書において、収穫後乾燥前の植物(フレッシュハーブ)とは、通常の方法によって収穫後14日間経過する前のものであって特に乾燥を施していないものを意味し、収穫後14日間経過前に凍結後,期間を問わずに解凍したものも含めるものとする。より好ましくは、収穫後72時間経過前のものである。なお、ここで、「乾燥」とは、天日乾燥や装置による乾燥など、いわゆる保存あるいは貯蔵状態以外の状態で積極的に水分を除去する操作を意味している。
【0033】
植物からの有効成分の抽出は、例えば、植物を細断したうえ抽出溶媒と混合攪拌したり、抽出溶媒とともに粉砕あるいは摩砕したりすることができる。フレッシュハーブを用いる場合、これを細断した上、直ちにあるいは速やかに適当な抽出溶媒と混合攪拌しさらに粉砕あるいは摩砕して抽出する。抽出溶媒は、特に限定されず、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、アミルアルコールの低級1級アルコール類、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの低級アルキルエステル類、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタンなどの溶媒を用いることができる。これらの溶媒は、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい有機溶媒としては、低級アルコール類であり、なかでもエタノールが挙げられる。また、抽出溶媒としては、水、熱水あるいは上記有機溶媒と水との混液を好ましく用いることができ、水、熱水をより好ましく用いることができる。なお、抽出原料に対する抽出溶媒の比率は特に限定しないで適宜決定することができる。
【0034】
抽出方法は特に限定されず、これらの植物の原料を抽出溶媒に浸漬し、あるいは必要に応じこれを室温、加温下あるいは冷却下で抽出し、ろ過等して固形分を除去することにより抽出液を得ることができる。なお、加温あるいは冷却下での抽出は、抽出溶媒が液体状態を維持できる範囲で行うことができるが、必要に応じて還流装置などを用いて行うこともできる。こうして得られた抽出液をそのまま用いることもできるが、必要により濃縮あるいは乾固することもできる。さらに必要に応じてカラムなどを用いた通常の精製手段を用いて精製することもできる。
【0035】
こうして得られた抽出物は、溶液、ペースト、粉末等の各種形態を有するが、血小板凝集抑制作用を有している。血小板凝集抑制作用は、ADP、コラーゲン、アラキドン酸など通常用いられる凝集惹起剤を用いて、各種の方法で測定することができるが、本血小板凝集抑制剤としては、少なくともADPによる血小板凝集を抑制することが好ましい。
【0036】
本発明の血小板凝集抑制剤は、血小板凝集抑制作用が関連し、血小板凝集抑制作用が有効であるとされるヒトあるいは非ヒト動物の脳、心臓、末梢など各種の血管系疾患やその他の疾患に対する予防目的あるいは症状の改善目的で投与あるいは摂取される形態の用途に好ましく用いられる。特に、本血小板凝集抑制剤は、食品因子由来であるため、持続的に投与あるいは摂取される形態の用途に好ましく用いられる。また、ひいてはヒトあるいは非ヒト動物の健康維持目的あるいは健康改善目的において持続的に摂取される用途に好ましく用いられる。
【0037】
本血小板凝集抑制剤は、研究用用途のほか、医薬品、医薬部外品、食品、飲料、栄養補助食品(サプリメント)、飼料および動物用医薬品あるいはこれらの原材料として有用である。
【0038】
(組成物)
本血小板凝集抑制剤を含有する組成物は、用途に応じた各種の形態を備えることができる。
(医薬組成物)
本血小板凝集抑制剤によれば、医薬組成物が提供される。本血小板凝集抑制剤を含有する医薬組成物によれば、血小板凝集抑制が有効であるとされる、ヒトあるいは非ヒト動物の脳、心臓、抹消など各種の血管系疾患やその他の疾患の治療薬ないし予防薬が提供される。本医薬組成物は、いわゆる抗血小板剤として使用でき、対象疾患としては、血栓症などによる心筋梗塞、狭心症などの虚血性心疾患、脳梗塞などの脳卒中を含む脳血管障害、抹消動脈などにおける抹消血管障害、エコノミークラス症候群ならびに血栓症に伴う炎症、さらに冠動脈再狭窄などが挙げられる。
【0039】
本医薬組成物は、本血小板凝集抑制剤と許容される公知の医薬用担体とを組み合わせて製剤化することにより得ることができる。製剤化は、本血小板凝集抑制剤を薬学的に許容できる液状又は固体状の担体と配合し、所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤とすることにより達成される。また、使用時において適当な添加によって液状となし得る用時溶解性の固形品とすることもできるし、外用剤とすることもできる。
【0040】
医薬用担体は、本医薬組成物の投与形態及び剤型に応じて選択することができる。経口剤の場合は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が利用される。また経口剤の調製に当っては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を配合することもできる。一方、非経口剤の場合は、常法に従い、本血液凝集抑制剤を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等に溶解ないし懸濁させ、必要に応じ、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を加えることにより調製することができる。あるいは、用時においてこれらの希釈剤によって溶解可能な用時溶解の注射剤等の非経口剤として提供することもできる。
【0041】
本発明の医薬組成物はその剤型に応じて、内用、外用、注射、点滴、注入、吸引等の適切な投与形態で投与される。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与し得、外用剤には座剤等も包含される。また、例えば、直接、皮下の疾患あるいは変性部位に塗布、散布、注入等により供給することにより本組成物を投与することができる。
【0042】
本医薬組成物を治療目的あるいは予防目的で投与する場合の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的及びこれに適用される患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが一般には製剤中に含有される本発明で使用される血小板凝集抑制剤の量(抽出物の乾燥固形分)として、成人1日当り好ましくは0.01~400mg/kg体重であり、より好ましくは0.2~200mg/kg体重である。抽出物乾燥固形分量の約10倍量が乾燥植物重量であり、同約100倍量が乾燥前植物重量に相当する。なお、投与量は、使用する血小板凝集抑制剤の種類のほか種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
【0043】
なお、これらの本医薬組成物の形態は、外用剤、飲料形態の経口剤等を含む医薬部外品の各種形態に適用される。
【0044】
(食品組成物)
本血小板凝集抑制剤は、食用あるいは栄養補給用として摂取させるための食品組成物とすることができる。本食品組成物によれば、容易に持続的に本血液凝集抑制剤を摂取することができるため、血小板凝集が関連する血栓症をはじめとする各種疾患の患者に対しては、該血栓症の進行の抑制、症状の改善、QOLの向上に有効である。また、健常者に対しては、各種血管系疾患の予防、健康維持あるいは改善に有効である。なお、ここでいう各種血管系疾患とは、医薬組成物において述べたのと同様の各種の血管系疾患を含んでいる。
【0045】
本食品組成物は、各種形態を採ることができる。すなわち、従来公知の各種食品(加工食品を含む)、飲料、調味料等の形態あるいはその原材料の形態を採ることができる他、散剤、粒剤、錠剤、カプセル剤、エキス剤、液剤(飲料を含む)など主として経口栄養剤であるサプリメント形態あるいはその原材料、チューブ等を介して胃や腸、血管に供給する経管栄養剤形態あるいはその原材料を採ることができる。
【0046】
本食品組成物における本血液凝集抑制剤の含有量(抽出物の乾燥固形分)は特に限定されないが、好ましくは0.000001重量%以上、より好ましくは0.00001~100重量%とすることができる。また、本食品組成物は、好ましくは、それらに含有される有効成分が、例えば成人1日当たり好ましくは0.0001~100mg/kg体重、より好ましくは0.001~10mg/kg体重となるように摂取されうる。なお、摂取量は、使用する血液凝集抑制剤の種類のほか種々の条件によって変動するので、上記摂取量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは上記範囲を超えて必要な場合もある。
【0047】
(治療方法又は予防方法等)
以上説明した本血小板凝集抑制剤、本医薬組成物、本食品組成物の使用形態に基づけば、本発明の別の形態として、本血小板凝集抑制剤、本医薬組成物および本食品組成物のいずれかを、ヒトに投与あるいは摂取させる本血小板凝集抑制剤の供給工程を有する、血栓症あるいはこれによる各種の血管系疾患を予防あるいは治療する方法が提供される。
【0048】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0049】
図1及び図2に示す74種類のフレッシュハーブ(収穫後24時間内に抽出操作を開始した。)について、特に記載のない場合はそれぞれ葉部を、特にカッコ書きで記載ある場合にはその特定部位を5gを秤量し、エタノールとともにホモジナイザーで十分に攪拌し磨砕し、ろ過した後、残渣をエタノールで洗浄し、ろ液と洗液とをあわせて50mlとした。このエタノール抽出液(フレッシュハーブ100mg/ml)を用いて血小板凝集抑制能について試験した。
【0050】
血小板凝集抑制能の測定は、ヒト血液を用いておこなった。クエン酸採血したヒト血液200μl4本に、ハーブ抽出液を被験液としてそれぞれ20μl添加して、37℃で3分間攪拌した。攪拌後、凝集惹起物質としてADPを血液の状態に応じて異なる4種類の終濃度(例えば、ADP濃度は、1,2,4,8,12,16μMから選択される。)となるように添加し、2分後に血液をマイクロメッシュフィルターで吸引して吸引圧を測定した。なお、測定には、全血対応吸引式血小板凝集能測定装置(WBAアナライザー、エム・シー・メディカル株式会社製)を用いた。なお、クエン酸採血は、3.13%のクエン酸溶液0.5mlが予め充填されたシリンジに4.5mlの血液を採取することにより行った。
【0051】
血小板凝集抑制能の判定は、図3に示す血液凝集曲線と横軸(ADP濃度)とで囲まれた範囲の面積値(A)を利用した。採血者の個人差を排除するために、各採血者からの血液毎にアスピリン溶液(5mM)20μlによる前記面積値(Aasp)を測定し、血小板凝集抑制標準物質であるアスピリンの血小板凝集抑制率〔(A-Aasp)/A×100(%)、ただしAは、凝集抑制物質非添加時の血液凝集曲線における前記面積値〕を求め、アスピリンの血小板凝集抑制率(%)を算出した。次に,サンプルとした各ハーブ抽出液の血小板凝集抑制率(%)を前記と同様に面積値から求めた。ハーブの血小板凝集抑制能はアスピリンの血小板凝集抑制率を100とした割合で算出した。なお、各ハーブの血小板凝集抑制能は3回繰り返し試験を行った結果である。これらの結果を図1および図2に併せて示す。
【0052】
図1および図2に示すように、ハーブの血小板凝集抑制能は、同一科内においても、同一属内においても一様でなく品種によって異なっていた。バジルを含むシソ科メボウキ属では、ルビーバジルのみが突出して優れていた。また、ラバンジュラ属では、サマーラベンダー、ヒッドコートラベンダー、フレンチラベンダー、フレンチストエカスラベンダーが優れた血小板凝集抑制作用を示したが、イエローフラワーラベンダー、スパイクラベンダー、イングリッシュラベンダーについてはほとんど血小板凝集抑制作用を示さなかった。
【0053】
また、ハッカ属では、アップルミント、ウォーターミント、オレンジミント、クールミント、スペアミント、ペパーミントの各種ミントにおいては血小板凝集抑制作用を示したが、オーデコロン及びパイナップルでは凝集抑制作用は示さなかった。また、ハッカ属ではないが、ミントの香りを有するシソ科のブッシュミント(プロスタンテラ属)は血小板凝集抑制作用を示した。
【0054】
マンネンロウ属のローズマリーでは、ローズマリートスカナブルー、ローズマリードリーミィブルーのいずれも良好な血小板凝集抑制作用を示した。
【0055】
その他のシソ科ハーブでは、レモンタイム、レモンバーム、オレガノ、ベルガモット(葉)、ヒソップ(葉)、チェリーセージが良好な血小板凝集抑制作用を示す一方、スウィートマジョラム、ラムズイヤー、ベルガモット(花)、ヒソップ(花)、パイナップルセージ、アメジストセージ、クラリーセージは弱いかあるいは極めて弱い血小板凝集抑制作用あるいは血小板凝集促進作用を示した。
【0056】
また、フトモモ科ユーカリ属では、アップルユーカリ、レモンユーカリがいずれも良好な血小板凝集抑制作用を示し、バラ科では、ワイルドストロベリー、サラダバーネットが良好であった。
【0057】
キク科では、ステビア、ローマンカモミール、コモンヤロー、ロシアンタラゴンが良好であったが、エキナセア(葉、茎、根)、チコリは、ほとんど血小板凝集抑制作用がないかかえって凝集を促進した。また、ナデシコ科のコモンソープウァートが良好であった。クマシズラ科ではスウィートハーブメキシカンが良好であったが、レモンバーベナには血小板凝集抑制作用はなかった。
【0058】
また、イネ科(レモングラス)、セリ科(ディル、フェンネル、チャービル)、ノウゼンハレン科(ナスターティウム)、アオイ科(コモンマロー、ブラックマロー)、ユリ科(チャイブ、チャイブ(根))、タデ科(ルバーブ)、ムラサキ科(コモンコンフリー)、アブラナ科(ワイルドロケット)、ゴマノハグサ科(コモンマーレイン(葉、実))、フクロソウ科(ローズゼラニウム)は良好な血小板凝集抑制作用を示さなかった。
【0059】
以上の結果から、ハーブ抽出物における血小板凝集抑制作用は品種毎に大きく異なっており、同属内においても、品種によっては血小板凝集抑制作用を奏するハーブがある一方、血小板凝集抑制作用がほとんどないか血小板凝集促進作用を奏するハーブがある場合もあった(シソ科、特に、メボウキ属、ラバンジュラ属、ハッカ属及びキク科など)。これらのことから、ある品種のハーブの抽出物の血小板凝集抑制作用が認められても、その品種が包含される属あるいは科に含まれる品種のハーブが血小板凝集抑制作用を有するとはいえないことがわかった。
【実施例2】
【0060】
実施例2では、実施例1の結果に基づいて、良好な血小板凝集抑制作用を呈した23種のハーブについて、それぞれの抽出液をエタノールで2倍希釈して希釈液について同様の条件で血小板凝集抑制能を測定した。結果を図4に示す。
【0061】
図4に示すように、これらの23種のなかでも、ヒッドコートラベンダー、レモンユーカリ、ステビア、ベルガモット、ヒソップ、コモンソープウァート及びサラダバーネットが他に比べて優れた血小板凝集抑制能を呈した。以上のことから、実施例1の74種のなかでもこれら7種のハーブにはより強い血小板凝集抑制能があることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1に用いたハーブとその血小板凝集抑制能を示す表。
【図2】実施例1に用いたハーブとその血小板凝集抑制能を示す表。
【図3】血液凝集曲線の一例を示す図。
【図4】実施例2に用いたハーブとその血小板凝集抑制能を示す表。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図3】
3