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明細書 :細胞培養装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4820979号 (P4820979)
公開番号 特開2006-109707 (P2006-109707A)
登録日 平成23年9月16日(2011.9.16)
発行日 平成23年11月24日(2011.11.24)
公開日 平成18年4月27日(2006.4.27)
発明の名称または考案の名称 細胞培養装置
国際特許分類 C12M   3/00        (2006.01)
FI C12M 3/00 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2004-297582 (P2004-297582)
出願日 平成16年10月12日(2004.10.12)
審査請求日 平成19年10月10日(2007.10.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】末田 泰二郎
【氏名】宮崎 政則
個別代理人の代理人 【識別番号】100121795、【弁理士】、【氏名又は名称】鶴亀 國康
審査官 【審査官】伊達 利奈
参考文献・文献 国際公開第2003/080139(WO,A1)
特開2003-000225(JP,A)
特開平11-225751(JP,A)
特開2002-112763(JP,A)
特開2003-070458(JP,A)
特表2002-522468(JP,A)
特表平09-508224(JP,A)
特開平09-182582(JP,A)
特開2004-049185(JP,A)
特開平08-038157(JP,A)
特開平03-010672(JP,A)
特開2004-097007(JP,A)
特開2003-047461(JP,A)
特開平10-108673(JP,A)
特開平04-300619(JP,A)
特開2006-000105(JP,A)
調査した分野 C12M 3/00-3/10

PubMed
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
細胞の培養を行う培養室、培養液の一時貯留を行う培養液槽、培養液中の酸素及び二酸化炭素分圧の調整を行うガス交換手段、培養液の加温手段並びに前記培養室に培養液を供給する培養液供給手段が導管により連結されてなり、
前記ガス交換手段は、酸素及び二酸化炭素分圧が所定値に保持されたガス室と、そのガス室内に収容され前記導管に連通したシリコンチューブとを有し、そのシリコンチューブを介して前記培養室及び培養液槽に供給される培養液中の酸素及び二酸化炭素分圧を調整することができ、
前記培養液供給手段は、ポンプと、該ポンプの最大吐出量が制御できるとともに吐出量が周期的に変化するように制御することができるファンクションゼネレータと、前記導管内を流れる培養液の流量を制御することができる流量調整弁と、を備えてなる細胞培養装置。
【請求項2】
ポンプは、遠心ポンプであることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養装置に係り、特に拍動を与えながら細胞培養を行う細胞培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓冠動脈や末梢動脈の閉塞疾患に対するバイパス手術において、患者の内皮細胞により被覆された血栓が形成されにくい合成繊維製の人工血管を使用する外科治療が注目されている。そのような人工血管を多くの人が利用できるようにするために、血管を構成する種々の細胞を効率的に培養することができるような細胞培養装置が求められている。
【0003】
細胞培養を効率的に行うには、血液の流れや血圧などの生体環境を模した条件下で細胞培養を行うことが好ましく、そのため拍動を与えながら細胞培養を行うことができる細胞培養装置が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、動物の心臓血管領域を形成しうる細胞または組織を収容する培養槽と、ポンプから機械弁を介して緩衝槽へ培養液が供給されるのに連動して、前記緩衝槽から前記培養槽に培養液を供給するための緩衝手段と、前記培養槽から排出される培養液を導管を通して貯蔵槽に流入させて、該培養液を、大気圧下で貯蔵槽に一時的に貯蔵するための回収貯蔵手段と、前記ポンプにより、前記貯蔵槽から機械弁を介してポンプに培養液を吸引させるとともに、該吸引に連動して前記緩衝槽に培養液を加圧して間欠的に供給するための加圧手段とを備える細胞培養装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、生物の細胞を培養する細胞培養装置に於いて、循環する培養液の流量を制御する流量制御手段と、上記培養液の流量を測定する流量測定手段と、上記培養液の圧力を制御する圧力制御手段と、上記培養液の圧力を測定する圧力測定手段と、制御目標となる流量と圧力の波形情報が供給される制御手段とを具備し、上記圧力制御手段と上記流量制御手段との相互の干渉を相殺する様に制御目標に到達させる様に上記制御手段を介して制御して成る細胞培養装置が提案されている。
【0006】

【特許文献1】特開2004-49185号公報
【特許文献2】特開平9-313166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に提案された細胞培養装置は、バルーンの膨張・収縮により拍動を与えるバルーンポンプ等のポンプを使用するものであるから、ポンプの送り出し側及び戻り側に開閉弁を設けなければならず、また、緩衝槽等のサージ圧吸収手段を設けなければならない。さらに、バルーンポンプ制御のために高価・大容積の制御装置を設けなければならない。
【0008】
特許文献2に提案された細胞培養装置は、培養液の拍動流と拍動圧を制御するために高価・複雑な装置を設けなければならない。このように従来の細胞培養装置は、構造が複雑で高価な装置になり易いという問題があった。また、操作及び維持管理が難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる従来の細胞培養装置の問題点に鑑み、拍動を与えながら細胞培養を行うことができ、簡単でコンパクトな構造をなし操作や維持管理が容易な細胞培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る細胞培養装置は、細胞の培養を行う培養室、培養液の一時貯留を行う培養液槽、培養液中の酸素及び二酸化炭素分圧の調整を行うガス交換手段、培養液の加温手段及び前記培養室に培養液を供給する培養液供給手段が導管により連結されてなり、前記培養液供給手段は、ポンプと、該ポンプの最大吐出量が制御できるとともに吐出量が周期的に変化するように制御することができるポンプ制御装置と、前記導管内を流れる培養液の流量を制御することができる流量調整弁と、を備えてなる。
【0011】
上記発明において、ポンプは遠心ポンプを用いるのが好ましく、ポンプ制御装置はファンクションゼネレータを用いるのが好ましい。また、ガス交換手段は、酸素及び二酸化炭素分圧が所定値に保持されるガス室及び該ガス室内に収容されたシリコンチューブからなるものが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る細胞培養装置は、拍動を与えながら細胞培養を行うことができ、簡単でコンパクトな構造をなし操作が容易である。また、簡単な構造であるから維持管理に特別の工数を要しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る細胞培養装置の実施形態を図に基づいて説明する。図1は、本細胞培養装置の一実施例のレイアウトを説明する模式図である。本細胞培養装置は、図1に示すように、培養室10、培養液槽15、ガス交換手段20、加温手段30及び培養液供給手段40を有し、それらが導管60で連結されて閉回路を構成してなる。
【0014】
本細胞培養装置は、培養液供給手段40により所要の拍動流及び拍動圧が与えられる構成になっている。すなわち、培養液供給手段40はポンプ41、ポンプ制御装置43及び流量調整弁45を備え、ポンプ制御装置43によりポンプ41の最大吐出量を制御するとともに吐出量を周期的に変化させ、さらに、流量調整弁45により導管60内を流れる培養液の流量を制御することにより、所要の拍動流及び拍動圧を得ることができる。
【0015】
ポンプ41は、安定した流量を供給することができ信頼性の高い定常流型のポンプを用いるのがよい。例えば遠心ポンプは、弁が不要で血栓発生の可能性が少なく、比較的吐出量が多い割に小型で信頼性が高いので好適である。
【0016】
ポンプ制御装置43は、上述のようにポンプの最大吐出量が制御できるとともに吐出量が周期的に変化するように制御できるものを用いる。そのようなポンプ制御装置43として、ファンクションゼネレータを使用するのがよい。これによれば、例えば、任意の振幅及び周波数の正弦波状の電圧をポンプ41に印加することができ、適当な振幅V及び周波数fを選択することにより、ポンプの吐出量を周期的に変動させるとともにその吐出量の最大値及び周波数を容易に制御することができる。
【0017】
流量調整弁45は、導管60のいずれかの部分に設置し、導管60内を流れる培養液の流量を容易かつ微細に調整することができるものがよい。例えばフローコントロールピンチバルブを使用することができる。フローコントロールピンチバルブは簡単な構造で容易かつ微細な流量調整ができるので好適である。
【0018】
本細胞培養装置における培養室10は、公知のものを使用することができる。培養室10の内部を拍動する培養液が円滑に流れ、その培養液が培養室10の内部に設置した人工血管に適切に供給されるような培養室であればよい。なお、培養室はその内部を容易に観察することができるような、例えば、透明なアクリル製とするのがよい。
【0019】
培養液槽15は、培養液中に含有される空気の排出(空気抜き)を行うため、培養液を一時貯留するためのものである。従って、培養液槽15は、密封可能で貯留培養液16の表面上に空間部17を有し、貯留培養液16に含まれる空気が十分に抜ける程度の大きさを有するものであればよい。なお、培養液槽15には、本細胞培養装置を組み立てた当初に該装置内に残留する空気を抜くため、フィルター18及び開閉弁19を設けるのがよい。また、培養液槽15は、培養液の温度を所定温度に維持するために、例えば所定温度に保持されたウォーターバスに浸漬させておくのがよい。
【0020】
ガス交換手段20は、公知のものを使用することができる。しかしながら、ガス交換手段20は、図1に示すように、導管60に連結されたシリコンチューブ22を酸素及び二酸化炭素分圧が所定値に保持されたガス室21、例えば公知のCO2インキュベータ内に収容し、シリコンチューブ22を介してガス交換をさせる構造のものがよい。このガス交換手段20に用いるシリコンチューブ22は、実験用に使用される公知のもので足りるが、ガス交換を十分に行うためには、ガス室21内を通すシリコンチューブ22の長さを1m以上、好ましくは1.5~2mとするのがよい。
【0021】
係るガス交換手段20により、従来のような細胞培養装置全体をCO2インキュベータ内に収容した構造のものと異なり、細胞培養装置を構成する培養室10及び培養液槽20の配置や大きさの自由度が増し、コンパクトな細胞培養装置を構成することができる。例えば、培養室10内の培養細胞の状態をリアルタイムに顕微鏡で観察することができる培養室10をCO2インキュベータの外に設けた細胞培養装置を容易に構成することができる。また、多数の培養室10を並列させてなる細胞培養装置を容易に構成することがでる。さらに、本細胞培養装置の組み立ては、先ず、CO2インキュベータのない無菌室で各構成部品と導管60からなる閉回路を構成し、次に、シリコンチューブ22をCO2インキュベータのサンプルポートからその内部に入れ込んで装置全体を組み立てることができるので、容易に本装置を組み立てることができる。また、一つの細胞培養装置でCO2インキュベータを使用中であっても、新たな細胞培養装置を容易に組み立てることができる。高価な中空糸人工肺を用いたガス交換装置を用いなくても、安価にガス交換手段20を構成することができるという利点もある。
【0022】
加温手段30は、培養液の温度を所定温度に加温できるものであればよい。例えば、図1に示すように培養液が流れる螺旋状の塩化ビニールで構成された熱交換器32を恒温槽31内に設けた構造のものを使用することができる。恒温槽31には、所定温度に保持されたウォーターバスを使用することができる。
【0023】
加温手段30は、それ自体が独立した図1に示すような構造のものでなくてもよい。例えば、培養液槽15内の培養液を所定温度に加温することができる構造のものでもよい。しかしながら図1のような螺旋状の塩化ビニールで構成された熱交換器32を恒温槽31内に設けた構造のものは、培養液の加温を迅速に行うことができ、装置全体がコンパクトになり使用する培養液の量を少なくすることができるので好ましい。
【0024】
以上本発明に係る細胞培養装置は、簡単かつコンパクトな構造で培養液に所要の拍動流及び拍動圧を与えることができる。また、簡単な構造であるから容易に操作、調整することができ、維持管理にも特別の工数を要しない。さらに、各機能部分を導管60で連結して閉回路を構成しているので、各構成部品の滅菌、補修、交換等を安価かつ容易に行うことができる。なお、本細胞培養装置には、図1に示すように、培養液の流量及び圧力を調整するための流量計51、圧測定器53、温度管理のための温度計55及び培養液の交換を行うための開閉弁47を設けるのがよい。
【実施例1】
【0025】
図1に示した構造の細胞培養装置を組み立て、培養液に拍動を与えた場合の圧力及び流量測定試験を行った。各構成部品は、それぞれエチレンオキサイドガスで滅菌した後、無菌室内で組み立てて細胞培養装置を構成した。培養室10はアクリル樹脂製の内容積が3.6ml(長さ×幅×高さが10×0.6×0.6cm)、培養液槽15は円筒型アクリル樹脂製の内容積が140ml(半径×高さが2.5×7cm)のものを用いた。ガス交換手段20はCO2インキュベータ(三洋電機バイオメディカ株式会社製MCO-17AIC型)内に長さ1.8m、外径8mm、内径6mmの実験用シリコンチューブを収容することによって構成し、CO2インキュベータ内は空気95vol%、二酸化炭素5vol%、湿度100%の環境に保った。加温手段30は塩化ビニール製コイル状チューブを37℃に保持したウォーターバス(アズワン株式会社製サーマルロボ)に浸漬することによって構成した。培養液供給手段40は、遠心ポンプ(株式会社イワキ製マグネットポンプMD-15R)、ファンクションゼネレータ(菊水電子工業株式会社製FGE3250)及びフローコントロールピンチバルブから構成した。さらに圧測定器(日本光電工業株式会社製LIFEKIT POLYGRAPH SYSTEM)、流量計(日本光電工業株式会社製ELECTROMAGNETIC BLOOD FLOWMETER)、温度計(アズワン株式会社製デジタル温度計)を用いた。導管60には外径8mm、内径6mmの塩化ビニールチューブを用いた。培養液は、Medium 199(GIBCO Invitrogen社製)、10%胎児ウシ血清(Hyclone Laboratories 社製)を用いた。
【0026】
図2は、遠心ポンプに正弦波状の電圧を印加し周波数1Hzの拍動が得られるように調整した場合の回路内の圧力及び流量の変化状態を示す。図2(a)は、収縮期血圧/拡張期血圧が120/70mmHg、流量が平均100mL/minに調整されている状態を示す。図2(b)は収縮期血圧/拡張期血圧が120/70mmHg、流量が平均10mL/minに調整されている状態を示し、図2(c)は収縮期血圧/拡張期血圧が40/20mmHg、流量が平均100mL/minに調整されている状態を示す。
【0027】
図3は、3日間にわたる培養液の酸素分圧と二酸化炭素分圧の変化の状態(図3(a))、pHの変化の状態(図3(b))、温度の変化の状態(図3(c))を示す。図3より、培養液は、酸素分圧が約160mmHg、二酸化炭素分圧が35~45mmHg、pHが7.35~7.34、温度が37℃に維持されていることが分かる。これらの数値は生体の平均的な値であり、一般に培養液が3日間ごとに交換されることを考慮すると、本細胞培養装置によれば生体を模した環境下で細胞培養を行うことができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る細胞培養装置のレイアウトを説明する模式図である。
【図2】拍動を与えた培養液の圧力と流量の変化の状態を示すグラフである。
【図3】3日間にわたる培養液の酸素分圧と二酸化炭素分圧の変化の状態、pHの変化の状態、温度の変化の状態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0029】
10 培養室
15 培養液槽
16 貯留培養液
17 空間部
18 フィルター
19 開閉弁
20 ガス交換手段
21 ガス室
22 シリコンチューブ
30 加温手段
31 恒温槽
32 熱交換器
40 培養液供給手段
41 ポンプ
43 ポンプ制御装置
45 流量調整弁
51 流量計
53 圧測定器
55 温度計
60 導管
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2