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明細書 :シリカ粒子を含有する放射線感光性色素組成物の10Gy以下の低線量の放射線の測定への使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4586191号 (P4586191)
公開番号 特開2006-010589 (P2006-010589A)
登録日 平成22年9月17日(2010.9.17)
発行日 平成22年11月24日(2010.11.24)
公開日 平成18年1月12日(2006.1.12)
発明の名称または考案の名称 シリカ粒子を含有する放射線感光性色素組成物の10Gy以下の低線量の放射線の測定への使用
国際特許分類 G01T   1/04        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
G01T   1/02        (2006.01)
FI G01T 1/04
C09K 3/00 Y
G01T 1/02 A
請求項の数または発明の数 10
全頁数 14
出願番号 特願2004-190421 (P2004-190421)
出願日 平成16年6月28日(2004.6.28)
審査請求日 平成19年6月13日(2007.6.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000012
【氏名又は名称】株式会社テクノネットワーク四国
【識別番号】000180368
【氏名又は名称】四国電力株式会社
発明者または考案者 【氏名】三好 弘一
個別代理人の代理人 【識別番号】100102314、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 阿佐子
【識別番号】100123984、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 晃伸
審査官 【審査官】木下 忠
参考文献・文献 特開2000-241548(JP,A)
特開2001-242249(JP,A)
特開2000-346946(JP,A)
特開平02-008260(JP,A)
特開2003-270154(JP,A)
米国特許第5254473(US,A)
M.A. Bero, 外2名,Radiochromic gel dosemeter for three-dimensional dosimetry ,Radiation Physics and Chemistry,2001年,Vol. 61,pp. 433-435
三好弘一, Dan Meisel,シリカナノバブル中のメチルビオロゲンラジカルの放射線分解的生成,日本化学会第81春季年会-講演予稿集I,社団法人日本化学会,2002年,pp. 473
O.A. Zaporozhets, L. Ye. Tsyukalo,Xylenol orange adsorbed on silica surface as a solid phase reagent for lead determination using diffuse reflectance spectroscopy,Talanta,2002年,Vol. 58,pp. 861-868
C. Barter, C.D. Wagner,Generation of Acidity in Silica Gel by Ionizing Radiation,Journal of Physical Chemistry,1964年,Vol. 68,pp. 2381-2383
Timothy Schatz, 外2名,Charge carrier transfer across the silica nanoparticle/water interface,Journal of Physical Chemistry B,1998年,Vol. 102,pp. 7225-7230
Olga V. Makarova, 外4名,Adsorption and Encapsulation of Fluorescent Probes in Nanoparticles,Journal of Physical Chemistry B,1999年,Vol. 103,pp. 9080-9084
調査した分野 G01T1/00-7/12
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の(1)乃至()からなる群より選ばれる、10Gy以下の放射線により目視で分かる色変化を生ずる、シリカ粒子を含有する放射線感光性色素組成物の10Gy以下の低線量の放射線の測定への使用。

)キシレノールオレンジ分子をシリカ粒子内に内包した物質の水溶液と硫酸アンモニウム鉄(II)溶液とゼラチンの混合物
)シリカ粒子と塩化金酸カリウムの混合水溶液
)シリカ粒子と塩化金酸カリウムとイソプロパノールとゼラチンの混合物
)キシレノールオレンジ分子をシリカ粒子内に内包した物質の水溶液と硫酸アンモニウム鉄(II)溶液との混合物
【請求項2】
前記の放射線の測定への使用が、医療被曝評価用への使用である請求項1の使用。
【請求項3】
前記の放射線の測定への使用が、管理区域実験室レベルの汚染検出への使用である請求項1または2の使用。
【請求項4】
前記の放射線の測定への使用が、放射性物質に係る汚染管理用への使用である請求項1の使用。
【請求項5】
前記の放射線の測定への使用が、放射線に係る積算線量測定用への使用である請求項1の使用。
【請求項6】
前記の放射線の測定への使用が、放射線に係る個人被ばく管理用への使用である請求項1の使用。
【請求項7】
前記の放射線の測定への使用が、原子力防災用への使用である請求項1の使用。
【請求項8】
前記の放射線の測定への使用が、原子力広報(PA)用への使用である請求項1の使用。
【請求項9】
前記の放射線の測定への使用が、放射線がX線及びγ線の場合、0.1Gy~10Gy程度の検出への使用である請求項1の使用。
【請求項10】
前記の放射線の測定への使用が、放射線がβ線、γ線の場合、ポリエチレンろ紙として検出用への使用である請求項1の使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシリカ粒子を含有する放射線感光性色素組成物およびX線、β線、γ線、中性子線等の放射線により変色する、特に被曝が10Gy以下の低線量でも簡単に変色する放射線着色性物質(Enhanced Radiochromic Materials)の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線等の放射線発生装置の取扱者や原子炉等の作業者や研究者等の放射線障害予防の目的で種々の線量計が用いられている。その中で特に取扱が簡単なものの一つとしてバッジ型の金属製又はプラスチック製のケースの中に白黒写真フィルムを納めたものであって、取扱者の胸につけ、一定日数たった後にフィルムを現像し得られた画像の写真濃度を求めてフィルムの受けた放射線線量を算出するフィルムバッジがある。このシステムは、バッジ自体をコンパクトに作ることができ、取扱が簡単で且つ記録を永久的に保存できるという利点があるが、画像を得るのにすべて現像所に送り、ここで一定の条件で現像、乾燥等を施さなければならず、被曝結果をその場で直ちに知ることはできず、かなりの時間がかかる欠点があった。
【0003】
そこで、特許文献1のインスタント写真カラーフィルムをX線に曝し、このフィルムを現像した場合特殊な色の画像を生じ、この色調が被曝量に応じて順次変わってくる現象を利用して上記の如き欠点の伴わない放射線被曝量の測定方法が発明された。すなわち、1枚の感光性カラーフィルムとこのフィルムを現像処理するためにローラー等の押圧によりフィルム上に処理液を展開することが可能な処理液ポットが遮光紙により遮光状態にパックされた少なくとも1組のインスタント写真カラーフィルムを放射線に曝した後に、処理液をフィルム感光面に展開して現像し、得られた画像の色調を予め作成された同種のインスタント写真フィルム画像の標準色調と比較することによって被曝線量を測定することを特徴とする放射線被曝線量の測定方法である。
【0004】
2001年に、X線等の放射線計測方法の一つとして、シート状の自己現像型の反射フィルムが米国ISP(International Specialty Products)社から発売された。GAFCHROMICシリーズである。680nmにピークを有する色素を使用している。組成は不明である。特にGAFCHROMIC XR Type R,と Type Tについて、Type Rが反射光を測定するタイプ、TypeTが透過光を測定するタイプで、それぞれ、感度は、TypeRが、デンシトメーターの強度が0.26 at 0.75Gy, 0.58 at 2Gy, 1.27 at 6Gy, 1.58 at 10Gy、Type Tでは、0.40 at 1Gy, 0.80 at 2Gy, 1.75 at 5Gy, 3.00 at 10Gyである。例えば、Type Rの場合、X線照射では、0~10Gy程度までの吸収線量に対して、色変化を起こし目視においてその線量を確認できるが、低線量部、すなわち、1Gy以下の線量では、デンシトメータによって測定する必要があるなどの欠点がある。従って、本製品は、10Gy前後での使用に最適であり、1Gy以下の線量でも明確に目視できるというものとは、異なるものである。

【特許文献1】特公平7—104412
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規な色素組成物の用途を提供することを課題とする。
本発明は、X線、β線、γ線、中性子線等の放射線により変色する、特に被曝が10Gy以下の低線量でも簡単に変色するシリカ粒子を含有する放射線感光性色素組成物、および低線量放射線着色性物質(Enhanced Radiochromic Materials)の10Gy以下の低線量の放射線の測定への使用を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の(1)乃至(10)の放射線により変色するシリカ粒子を含有する放射線感光性色素組成物の10Gy以下の低線量の放射線の測定への使用を要旨とする。
(1)下記の()乃至()からなる群より選ばれる放射線により変色するシリカ粒子を含有する放射線感光性色素組成物の低線量の放射線の測定への使用。

)キシレノールオレンジ分子をシリカ粒子内に内包した物質の水溶液と硫酸アンモニウム鉄(II)溶液とゼラチンの混合物
)シリカ粒子と塩化金酸カリウムの混合水溶液
)シリカ粒子と塩化金酸カリウムとイソプロパノールとゼラチンの混合物
)キシレノールオレンジ分子をシリカ粒子内に内包した物質の水溶液と硫酸アンモニウム鉄(II)溶液との混合物
)前記の放射線の測定への使用が、医療被曝評価用への使用である上記(1)の使用。
)前記の放射線の測定への使用が、管理区域実験室レベルの汚染検出への使用である上記(1)の使用。
)前記の放射線の測定への使用が、放射性物質に係る汚染管理用への使用である上記(1)の使用。
)前記の放射線の測定への使用が、放射線に係る積算線量測定用への使用である上記(1)の使用。
)前記の放射線の測定への使用が、放射線に係る個人被ばく管理用への使用である上記(1)の使用。
)前記の放射線の測定への使用が、原子力防災用への使用である上記(1)の使用。
)前記の放射線の測定への使用が、原子力広報(PA)用への使用である上記(1)の使用。
)前記の放射線の測定への使用が、放射線がX線及びγ線の場合、0.1Gy~10Gy程度の検出への使用である請求項1の使用。
10)前記の放射線の測定への使用が、放射線がβ線、γ線の場合、ポリエチレンろ紙として検出用への使用である上記(1)の使用。
【発明の効果】
【0009】
新規な「混合した色素」の用途(低線量の放射線の測定への使用)を提供することができる。
X線、β線、γ線、中性子等の放射線による被曝により簡単に変色する、特に被曝が低線量でも簡単に変色するシリカ粒子を含有する放射線感光性色素組成物、および放射線着色性物質(Enhanced Radiochromic Materials)の用途(10Gy以下の低線量の放射線の測定への使用)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において対象となる放射線は、γ線として治療用60-Coγ線照射装置により空気吸収線量として10Gyのもの、X線としてX線診断用装置にて発生させた1Gy~2Gyのもの、低線量の密封線源として、γ線は、60-Coγ線 74kBq、137-Csγ線3.7MBq、β線は、90-Sr/90-Yβ線74kBqのものなどが例示される。
【0011】
シリカ粒子を含有する低線量放射線変色性物質は、低線量の放射線により目視で分かる色変化を生ずる形態で放射線感光性色素とシリカ粒子を含有する材料であれば特に制限はなく、固体として粉末、ろ紙に含ませた液体試料を透明テープで保護した試料、ゼラチンを用いて1cm角の4ml容積のプラスチックセル固化させた試料、同液体試料が例示される。

【0012】
本発明においてシリカ粒子を含有する放射線感光性色素として、放射線照射により目視で分かる色変化を生ずるもので、例えば以下の例の中で、3)から6)のものが採用される。
1)プルシアンブルー(Prussian Blue)を利用した試薬
β線、γ線感光性色素としてプルシアンブルー(Purssian Blue)の青色の発色を利用する。プルシアンブルーは一般的な調製法を用い、放射線照射により還元作用を有する2,5-ジヒドロキシ-パラ-ベンゾキノン(dhqH2)水溶液を、塩化第二鉄水溶液とフェロシアン化カリウム水溶液の混合物とある割合で混合して試薬とする。使用方法は、この試薬を水分が約10%含まれている状態でろ紙に塗布し使用する。例えば、水分が蒸発しないように市販のメンディングテープでカバーして、その上から、密封線源γ線源として60-Co,β線源として90-Srをのせてそれぞれ放射線を照射すると、約1時間ぐらいで、その線源の形に色が少し褪色する。その色変化により放射線が照射されたことを判別することができることを特徴とする。放射線感光性色素を含有する試薬が塗布されて、当該色素は、放射線照射により目視で分かる色変化を生ずるものである。
これは、β線、γ線検出用でポリエチレンろ紙等に塗布して使用し、管理区域実験室レベルの汚染を検出しようとするものである。

【0013】
2)X線誘起蛍光体をベースにした白色粉末
X線誘起蛍光体 CaWO4 をベースにした白色粉末の調製時にヨウ素をある割合(Na2WO4とCaCl2とKIから1:2:2として調製)で混合して得られた白色沈殿物CaWO4:Iである。
使用方法は、2枚の透明な両面テープにこの粉末試料を挟み込んで使用するか、ペレット状に成形して用いる。X線照射後に照射裏面が黄色に着色する。この色変化によりX線が照射されたことを判別することができることを特徴とする。これはX線検出用で0.1Gy~10Gy程度の検出に用いることができる医療被曝評価のための材料であり、X線照射により色変化を生ずるX線誘起蛍光体を備えた医療被曝評価のための材料を一体的に取着して医療器具を構成し、X線照射済み表示を、上記X線誘起蛍光体の色変化で判別するものである。
【0014】
3)Fe2+/キシレノールオレンジ/SiO2試薬
文献(Radiation Physics and Chemistry,61(2001)433-435)で報告されているFe2+/キシレノールオレンジ/ゼラチン試薬を改良し、キシレノールオレンジをシリカ(SiO2)ナノ(粒子径 約30nm)粒子に含有させた物を用いる。これにより、シリカナノ粒子内に、キシレノールオレンジを高濃度に濃縮することで感度を上げることが期待される。キシレノールオレンジ/SiO2水溶液にFe2+を有する化合物の混合溶液にγ線照射することによりFe2+が酸化されて生成したFe3+がキシレノールオレンジに配位することで黄色から紫色へと色変化が起こる。Fe2+を有する化合物については反応に影響を及ぼさない公知のものを広く使用できるが、好ましくは硫酸アンモニウム鉄(II)である。
この色変化によりγ線が照射されたことを判別することができることを特徴とする。
【0015】
)Fe2+/キシレノールオレンジ/SiO2/ゼラチン試薬
文献(Radiation Physics and Chemistry,61(2001)433-435)で報告されているFe2+/キシレノールオレンジ/ゼラチン試薬を改良し、キシレノールオレンジをシリカ(SiO2)ナノ(粒子径 約30nm)粒子に含有させた物を用いる。これにより、シリカナノ粒子内に、キシレノールオレンジを高濃度に濃縮することで感度を上げることが期待される。キシレノールオレンジ/SiO2/ゼラチン水溶液にFe2+を有する化合物の混合溶液にγ線照射することによりFe2+が酸化されて生成したFe3+がキシレノールオレンジに配位することで黄色から紫色へと色変化が起こる。Fe2+を有する化合物については反応に影響を及ぼさない公知のものを広く使用できるが、好ましくは硫酸アンモニウム鉄(II)である。
この色変化によりγ線が照射されたことを判別することができることを特徴とする。

【0016】
)高密度シリカナノ粒子に分散塩化金酸カリウム溶液から金微粒子生成による発色試薬
市販されている高密度シリカナノ粒子に KAuCl4を加えて混合して試料とする。これに、ガンマ線(10Gy)照射すると、Au微粒子の生成と思われる赤色を呈する。この色変化によりγ線が照射されたことを判別することができることを特徴とする。

【0017】
)高感度発色試薬(増感剤を含むシリカナノ粒子分散塩化金酸カリウム溶液から金微粒子生成による)
また、市販されている高密度シリカナノ粒子にKAuCl4、増感剤として、イソプロパノールとゼラチンを加えて混合して試料とする。これに、γ線を照射すると、Au微粒子の生成と思われる赤色を呈する。この色変化によりγ線が照射されたことを判別することができることを特徴とする。

【0018】
塗布方法は、塗布する試料溶液を一定量採取し、ピペット等で塗布した後、自然乾燥させる。
【0019】
ろ紙への塗布方法は、塗布する試料溶液を一定量採取し、ピペット等で塗布した後、水分を約10%残して自然乾燥させる。
【0020】
用途について、たとえば放射性同位元素使用実験室での放射性同位元素による汚染検出のロールペーパーとしての使用することができる。
【0021】
本発明の放射線感光性色素組成物や低線量放射線着色性物質は、以下の用途に用いることができる。
(a)放射性物質に係る汚染管理用
例えば、原子力発電所などに設備されたバルブ、ポンプ、配管等については、保守、点検、補修、または除染などの作業が定期的にあるいは臨時に行なわれている。安全、正確かつ効率良く作業を行なうことができるように作業現場の汚染管理は重要であり、こうした放射性物質に係る汚染管理に本発明の放射線感光性色素組成物や低線量放射線着色性物質を用いることができる。
(b)放射線に係る積算線量測定用
燃料製造加工施設や原子力発電関連施設等の周辺監視区域内外においては、該当区域内における放射線の空間線量率を測定するための計測器やモニター表示器および当該計測器から得られた移動平均値、積算値、瞬時値等のデーターを管理事務所に伝送するための設備が適宜設置されている。本発明の低線量放射線着色性物質を用いて、低い線量レベルでの線量を監視することができる。
(c)放射線に係る個人被ばく管理用
原子力発電所などの管理区域内で作業を行う作業者は、管理区域内における放射線被ばく線量値と作業時間を管理することが義務づけられている。放射線に係る個人被ばく管理用には、時々刻々変化する作業現場の環境線量率をリアルタイムに監視する設備があるがそれらを補完するものとして、目視により放射線の存在を注意させる本発明の放射線感光性色素組成物や低線量放射線着色性物質を用いることができる。
(d)原子力防災用
原子力発電所や燃料製造加工施設においては事故が起きないようなシステムとなっているが、万が一、1999年9月30日にJCO社にて発生した臨界事故のような原子力災害が発生した場合、周辺住民の被ばく線量を判断する材料の1つとして目視により放射線の存在を注意させる本発明の放射線感光性色素組成物や低線量放射線着色性物質を用いることができる。
(e)原子力広報(PA)用
原子力を安全に利用することは、子供から大人まで地域住民をはじめ世界中から理解される必要がある。目視により放射線の存在を注意させる本発明の放射線感光性色素組成物や低線量放射線着色性物質によって、放射線管理区域での作業者の被曝線量管理は、許容線量を超えないようにすることはもちろん、各作業者の被曝線量をできるだけ低く保ち、かつ無用の被曝が避けられるように管理されることを知らせることで、原子力が安全に利用されていることを知ってもらうことができる身近な教材となる。
【0022】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例1および実施例2は参考例である。
【実施例1】
【0023】
プルシアンブルーは塩化第二鉄水溶液1mMとフェロシアン化カリウム水溶液1mMの混合物とする。次に、放射線照射により還元作用を有する2,5-ジヒドロキシ-パラ-ベンゾキノン(dhqH2)水溶液1mMを、塩化第二鉄水溶液1mMとフェロシアン化カリウム水溶液1mMの混合物と1:1:0.3で混合して試薬とし、この試薬を水分が約10%含まれている状態でろ紙に塗布する。水分が蒸発しないように市販のメンディングテープでカバーして、その上から、密封線源(74kBq)γ線源として60-Co,β線源として90-Srをのせてそれぞれ放射線を照射すると、約1時間ぐらいで、その線源の形に色が少し褪色する(図1)。同条件での再現性は確認済みである。
【実施例2】
【0024】
蒸留水3mlにCaCl2・2H2O 0.5gとKI 1.13gを溶解した後、蒸留水2mlに0.51gのNa2WO4を溶解した溶液をこれに混合して白色沈殿物CaWO4:Iを得る。その後、蒸留水で数回洗浄し、乾燥して使用する。2枚の透明な両面テープにこの粉末試料を挟み込み、約2GyのX線照射(管電圧80kV, 管電流200mA,照射時間2secを10回行った)後に照射裏面が黄色に着色した(図2)。
【実施例3】
【0025】
キシレノールオレンジ約7mgとイソシアネートプロピルシリケート260μlを2ml DMSO中に加え1時間撹拌する。その後、その溶液に6mlのエタノール、6mgキシレノールオレンジ、テトラエチルオルソシリケート0.3ml, 濃アンモニア水2mlを加えて1日室温で撹拌する。その後、Amicon社YM-100のフィルターを用いて限外ろ過を行い洗浄してキシレノールオレンジ/SiO2水溶液約2mlを得る。
このキシレノールオレンジ/シリカ粒子水溶液0.4mlと10mMの硫酸アンモニウム鉄(II)(1N)水溶液0.1ml,1N 硫酸0.1mlを混合しFe2+/キシレノールオレンジ/SiO2試薬を得る。Fe2+/キシレノールオレンジ/SiO2試薬では、キシレノールオレンジは高濃度にシリカ粒子に固定されているが、キシレノールオレンジ水溶液と同様に溶液のpHにより色が変化し、キシレノールオレンジ水溶液にFe3+の水溶液を加えると、Fe3+がキシレノールオレンジに配位することによる黄色から紫色への色変化も確認できた。
このFe2+/キシレノールオレンジ/SiO2試薬水溶液に、室温でγ線約10Gy照射(60-Coγ線照射装置で30分間照射)することにより水溶液中のFe2+が酸化されて生成したFe3+がキシレノールオレンジに配位したと思われる黄色から紫色への色変化が観測された(図3)。この色変化は、600nmでその試薬の吸光度がγ線照射されることによって約0.15増大することがわかった(図4)。このことから、キシレノールオレンジをシリカナノ粒子に固定して、γ線照射に伴う、吸光度変化が初めて観測された。
【実施例4】
【0026】
キシレノールオレンジ/シリカ粒子水溶液0.4mlまたは0.2mlと10mMの硫酸アンモニウムて鉄(II)(1N)水溶液0.1ml, 1N硫酸0.1ml,蒸留水0.6-2.4mlを混合してFe2+/キシレノールオレンジ/SiO2試薬を調製した後、ゼラチン量を0.2g/mlを3mlから1mlまで減少させて、これらの水溶液にγ線約10Gy照射した。(60-Coγ線照射装置で30分間照射)その結果、照射されたγ線によりFe2+が酸化されて生成したFe3+がキシレノールオレンジに配位することで起こる黄色から紫色への色変化が観測できた。これらの吸光度測定結果から、ゼラチン量が1mlのときに紫色の吸光度が最大に変化することを確認した。ゼラチン量が1mlのときに、586nmで1.329の吸光度を得た。この値から文献(Radiation Physics and Chemistry, 61 (2001) 433-435))の約1.2倍の感度が得られたことがわかった。(図5)
【実施例5】
【0027】
市販されている高密度シリカナノ粒子のうち、粒子サイズが12nmのものを約36wt%として、これに0.5mM KAuCl4を0.4ml加えて混合して試料とする。これに、γ線(10Gy)照射すると、Au微粒子の生成と思われる赤色を呈する(図6、図7)。シリカナノ粒子/KAuCl4系への約10Gyのガンマ線照射により溶液が赤く着色することがわかった。この現象は、粒子サイズが12nmのもので最大(12nm>7nm>22nm)であり、加えるKAuCl4の濃度により溶液の吸光度が変化することを確認した。また、溶液のpHにより、着色速度に差がでることがわかった。さらに、イソプロパノール添加により感度が著しく上昇した。そして、ゼラチンの微量添加により生成する金微粒子のサイズを調整することが可能であることがわかった。すなわち、ゼラチンを加えなければ、凝集により粒子サイズが大きくなった紫色を示し、ゼラチンを微量加えると、凝集のない赤色の金微粒子が生成した。
【実施例6】
【0028】
市販コロイド状シリカナノ粒子(LUDOX(R) HS-40 colloidal silica、重量% 40wt%, 粒子径が12nm)を2ml, H2O 1ml, 10mM KAuCl4を1ml,イソプロパノール0.2mlを1cm角型ディスポセル中で混合した後、約100度の湯浴中で1分間加熱した。その後、すでに加熱して溶液状態としたゼラチン(0.2g/1ml)10μlを角型ディスポセル中に混合してゼラチンを均一に溶解させた。このように調製した試料に、137-Cs(3.7MBq)から放出されるγ線(0.002849Gy/h,137-Csの照射線量率0.0770μGym2MBq-1h-1を用い、これに3.7MBq,0.01mの距離として計算した)を60.5時間照射すると、約0.17Gyの吸収線量となり、このときAuイオンが還元されて生成したAu微粒子により溶液が赤色を呈した。
上記の最適条件を検討するために、ゼラチン、イソプロパノール、シリカ粒子径、シリカ粒子含有量を変更し吸光度(520nm)を測定した。吸光度は島津株式会社製UV-1700にて角型ディスポセルをそのまま用いて測定した。ゼラチン含有量を変更し吸光度(520nm)を測定した結果を表1に、イソプロパノール含有量を変更し吸光度(520nm)を測定した結果を表2に、シリカ粒子径を変更し吸光度(520nm)を測定した結果を表3に、シリカ粒子含有量を変更し吸光度(520nm)を測定したを結果を表4に、それぞれ示す。
【0029】
【表1】
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【0030】
【表2】
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【0031】
【表3】
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【0032】
【表4】
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【0033】
(ゼラチンの添加量 vs 金粒子のサイズ径or金粒子の色のグラフ)を図8に示す。
ゼラチンの添加量については、最も感度の高いHS-40のみで行った。
よって条件は、市販のコロイド状シリカ粒子(LUDOX(R) HS-40 colloidal silica、重量% 40wt%, 粒子径12nm)を2ml, H2O 1ml, 10mM KAuCl4を1ml,イソプロパノール0.2mlを1cm角ディスポセル中で混合して、約100度の湯浴中で1分間加熱し、加熱して溶液状態としたゼラチン(0.2g/1ml)2μlを混合してゼラチンを均一に溶解させることである。
またこの条件にて溶液をガラス板に薄く塗布し、放射線照射の時間による吸光度変化を測定した。結果を表5および図9に示す。
【0034】
【表5】
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【0035】
シリカナノ粒子は、LUDOXのHS-30(粒子径7nmのSiO230wt%水溶液)、 HS-40(粒子径12nmのSiO240wt%水溶液)TM-50(粒子径22nmのSiO250wt%水溶液)をそのまま使用して、蒸留水により希釈して用いた。ネットワーク構造の調製は、シランカップリング試薬として、Aldrich社製のtetraethyl orthosilicate (TEOS), 3-aminopropylsilicate (APS), isothiocyano-propylsilicate (CNS) 溶液を使用して上記サイズの異なる3種類のシリカナノ粒子溶液に添加し、撹拌しながら1日放置して行った。
このようにして調製した試料水溶液3.5mlに、10mM KAuCl4水溶液0.5mlを添加し、さらに収率を高めるため、イソプロパノールを約5%添加して、日本原子力研究所高崎研究所の60-Coγ線を空気の吸収線量で~1kGyとなるように、空気または窒素雰囲気下、室温で照射した。いずれの場合も溶液は、赤色を呈しており、凝集は起らなかった。TEOSならびにAPS-CNSの濃度変化(シリカナノ粒子が白色沈澱となる濃度まで)とこのAu微粒子の生成量との関係から、TEOSによるネットワーク構造化の方が、APS-CNSのネットワーク構造化よりもAu微粒子の生成量が多いことがわかった。APS-CNSでは、[APS-CNS]/[SiO2]pが約3.6を超えると、APS-CNSのそれぞれ2つのシリケート基の間に9個の原子を有している約1.14nm鎖部分が互いに絡み合ってシリカナノ粒子の凝集を容易に引き起こし、塊となって粒子径そのものが変化してしまったと考えられる。HS-40(粒子径12nm)とHS-30(粒子径7nm)について確認され、特に、粒子径7nmのHS-30で著しかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
(1)金イオンを用いた実施例4では、197-Auが中性子線に対する放射化断面積が大きく、197Au(n, γ)198Auにより半減期が2.695日で0.412MeVのγ線を放出する198-Auが生成することが予想される。この中性子線によって生成する198-Auのガンマ線をGe検出器で測定することにより、中性子線の検出をも行うことができる。
(2)現在、施行例が増加しているインターベンショナルラジオロジーにおいて、施行中に線量を目視で確認することができ、患者の過剰被曝を防ぐことができる。
(3)原子力発電所の室の壁に塗布することで、目視により放射線の存在を注意させることができる。
(4)金微粒子が室温で調製できるため、その製造方法が簡単になる。また、シリカ粒子に分散されているため、加工がしやすい。
以上の通りであり、以下の用途に用いることができる。
(a)放射性物質に係る汚染管理用
(b)放射線に係る積算線量測定用
(c)放射線に係る個人被ばく管理用
(d)原子力防災用
(e)原子力広報(PA)用
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】プルシアンブルー/dhqH2試薬への低線量放射線照射後の色変化(丸い形で色が抜けている部分が照射部分)を示す図面に代わる写真である。
【図2】CaWO4/I白色粉末へのX線照射(約1Gy)後黄色に変色したことを示す図面に代わる写真である。
【図3】Fe2+/キシレノールオレンジ/SiO2 試薬へのガンマ線照射(10Gy)の色変化(照射後左から2番目の色から左端のような色に変色。吸収スペクトル変化参照。)を示す図面に代わる写真である。
【図4】Fe2+/キシレノールオレンジ/SiO2 試薬へのγ線10Gy照射前後の吸収スペクトル変化。aが照射後でbが照射前である。
【図5】Fe2+/キシレノールオレンジ/SiO2/ゼラチン試薬の吸収スペクトル変化。実線が照射後で破線が照射前である。約10Gy照射。
【図6】シリカナノ粒子/KAuCl4試薬へのガンマ線照射(10Gy)の色変化(条件によって着色の程度が異なる)を示す図面に代わる写真である。
【図7】シリカナノ粒子/KAuCl4試薬へのガンマ線照射(10Gy)のスペクトル変化。aが照射後でbが照射前である。
【図8】シリカナノ粒子/KAuCl4試薬/ゼラチン/イソプロパノール試料へのガンマ線照射(0.2Gy)前後の吸収スペクトル変化。
【図9】シリカナノ粒子/KAuCl4試薬/ゼラチン/イソプロパノール試料へのガンマ線照射(0.2Gy)前後の吸収スペクトル変化。
図面
【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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