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明細書 :箔及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4605361号 (P4605361)
公開番号 特開2006-124805 (P2006-124805A)
登録日 平成22年10月15日(2010.10.15)
発行日 平成23年1月5日(2011.1.5)
公開日 平成18年5月18日(2006.5.18)
発明の名称または考案の名称 箔及びその製造方法
国際特許分類 C25F   3/14        (2006.01)
C25F   3/04        (2006.01)
C23F   1/00        (2006.01)
H01G   9/00        (2006.01)
H01G   9/04        (2006.01)
B41J   2/01        (2006.01)
FI C25F 3/14
C25F 3/04 A
C23F 1/00 101
H01G 9/24 B
H01G 9/04 304
B41J 3/04 101Z
請求項の数または発明の数 10
全頁数 11
出願番号 特願2004-317216 (P2004-317216)
出願日 平成16年10月29日(2004.10.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年9月6日 社団法人表面技術協会発行の「第110回 講演大会 講演要旨集」に発表
審査請求日 平成19年4月27日(2007.4.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】益田 秀樹
【氏名】西尾 和之
【氏名】福島 達郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
【識別番号】100069958、【弁理士】、【氏名又は名称】海津 保三
審査官 【審査官】市枝 信之
参考文献・文献 特開2002-305169(JP,A)
特開平08-207390(JP,A)
特開昭56-066089(JP,A)
特開昭63-194388(JP,A)
特開昭63-157882(JP,A)
特開2004-266024(JP,A)
特開2003-272960(JP,A)
調査した分野 C23F 1/00 ~ 4/04
C25F 1/00 ~ 7/02
H01L 21/304
H01L 21/306~21/308
H01L 21/465~21/467
H05K 3/02 ~ 3/08
B23H 1/00 ~ 11/00
B41J 2/01
H01G 9/00
H01G 9/04
特許請求の範囲 【請求項1】
インクに箔のエッチングを促進させる成分を含有させる工程と
次に、上記インクに含有されている成分により上記パターンの下部の上記箔を促進してエッチングする工程と、を備え、
上記箔にピットを形成することにより、上記箔に拡面処理を施すことを特徴とする、拡面処理された箔の製造方法。
【請求項2】
前記成分は、前記箔又は前記箔の酸化膜を溶解するアルカリ又は酸であることを特徴とする、請求項1に記載の拡面処理された箔の製造方法。
【請求項3】
前記成分は、前記箔よりも電気化学的に貴な、金属のコロイド又はイオンであることを特徴とする、請求項1に記載の拡面処理された箔の製造方法。
【請求項4】
前記成分は、前記箔を化学的に不安定にする基により改質された樹脂または該樹脂のエマルジョンであることを特徴とする、請求項1に記載の拡面処理された箔の製造方法。
【請求項5】
前記箔は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする、請求項1に記載の拡面処理された箔の製造方法。
【請求項6】
前記エッチングは、電解エッチングであることを特徴とする、請求項1に記載の拡面処理された箔の製造方法。
【請求項7】
前記箔に形成されるピットが、さらに、前記箔の裏面に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の拡面処理された箔の製造方法。
【請求項8】
前記箔に形成されるピットが、前記箔の表面及び裏面に点状に配列されていることを特徴とする、請求項1に記載の拡面処理された箔の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載の箔の製造方法によって製造したことを特徴とする、拡面処理された箔。
【請求項10】
前記箔が、電解コンデンサ用電極箔であることを特徴とする、請求項9に記載の拡面処理された箔。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用電極などに利用可能な、とくに拡面処理された箔及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサ用電極に用いるアルミニウム箔は、静電容量を増大する目的で電気化学エッチング、あるいは化学エッチングによる電極表面積の拡大処理、即ち拡面処理が施される。アルミニウム箔の最も効率的な拡面処理を実現するためには、電解エッチングや、化学エッチングによってアルミニウム箔表面から内部へ垂直に発生するトンネル状ピットを所望の間隔で最密配列させることが必要である。
【0003】
特許文献1及び2には、ピットの分布を均一にする手段として、フォトレジストをアルミニウム箔に塗布する方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、エッチング核を均一、且つ、高密度に形成させる方法が開示されている。この方法においては、1μm程度の大きさを有する微粒子が混入された被覆剤をアルミニウム箔の表面に塗布し、微粒子が溶解する溶液中で微粒子の溶解除去処理を行い、電解エッチング液に対して耐性を有し、且つ、エッチング核を形成すべき多数の微細孔の形成された耐性皮膜をアルミニウム箔表面に一体的に付着形成させている。
ここで、微粒子としては、金属微粒子又はカーボン微粒子などの非金属微粒子が用いられている。また、被覆剤としては、フォトマスク用レジスト剤が使用されている。
【0005】
特許文献4には、アルミニウム箔の表面に、エッチング核形成用としてアルミニウムよりも貴な金属微粒子、あるいは、Al2 3 などの金属酸化物微粒子を圧延などにより埋め込む方法が開示されている。
【0006】
特許文献5及び6には、理想的なピット配列を構築するための生産的な手法として、網点を有する版を用いた印刷により、エッチング耐性を有するインキあるいはエッチング誘導性を有する金属インキのパターンを、アルミニウム箔表面に形成させる方法が開示されている。
【0007】
特許文献7には、アルミニウム箔の表面に、樹脂球からなる固体粒子を静電的に吸着させた後に加熱し、エッチング時のマスクとする方法が開示されている。
【0008】
特許文献8には、アルミニウム表面に突起配列を有する母型を押し込むことにより物理的にくぼみの配列を形成し、各くぼみを電解エッチング時のピット形成点とする手法が開示されている。この手法により、理想的なピットの配列が実現されている。
【0009】

【特許文献1】特開昭61-51817号公報
【特許文献2】特開昭63-34919号公報
【特許文献3】特開昭61-51818号公報
【特許文献4】特開昭63-124406号公報
【特許文献5】特開昭63-62888号公報
【特許文献6】特開昭63-62890号公報
【特許文献7】特開平8-138977号公報
【特許文献8】特開平11-074162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び2の方法は、アルミニウム箔へのレジストの均一な塗布及び加熱、レジスト材への光露光、露光後の現像処理などの工程数の増加及びそのための設備が必要であり、製品のコストが現状と比較して大幅に増加するという課題がある。
【0011】
特許文献3及び4の方法は、微粒子をアルミニウム箔の表面に等間隔で均一に分散付着させることはきわめて困難であり、上記の方法により得られるアルミニウム箔においてピットの分散性は必ずしも良好ではないという課題がある。
【0012】
特許文献5及び6の方法においては、印刷機に使用されるインキはアルミニウム箔へ転写される時点でも流動性を有しており、電解コンデンサのピットに対応するミクロンスケールの微細領域では、インキの微点配列をアルミニウム箔上に再現することは困難であるという課題がある。
また、網点印刷に通常使用されるオフセット印刷方式では、湿し水によるインキの乳化が必然的に生じ、更には印刷板からゴムローラー、ゴムローラーからアルミニウム箔への2回の網点転写による形状の歪みなどにより、ピット配列の制御性が大幅に低下する。
【0013】
特許文献7の方法においては、製造ライン上で、連続的に固体粒子を、アルミニウム箔表面に規則配列させるのが困難である。
【0014】
特許文献8の方法においては、母型をアルミニウム箔に押し込む工程を繰り返すことにより突起の脱落や摩耗が生じることから、規則的なピット配列を有する電極箔を連続的に生産することが困難である。
このように特許文献1乃至8の従来技術においては、電解コンデンサ用電極箔のピット形成位置を、高密度に配列させるための簡便な方法がないという課題がある。
【0015】
上記課題に鑑み、本発明は、電解コンデンサ用電極等に用いられる箔のピット形成位置を高密度に配列させ、単位体積当たりの拡面率の大きい、箔及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、電解コンデンサ用電極等に用いられる箔に関し、この箔の表面にマスクパターンを印刷することにより、ピットの形成位置を制御する手段について鋭意、実験的検討を行った。その結果、インクジェット方式の印刷機を用いてマスクパターンを印刷し、このマスクパターンに基づくエッチング後に所望の配置を有するトンネルピットを形成することにより、箔の拡面処理が一層容易に得られるとの知見を得て、本発明に至ったものである。
【0018】
上記目的を達するため、本発明の拡面処理された箔の製造方法は、インクに箔のエッチングを促進させる成分を含有させる工程と、インクジェット方式の印刷機を用いて箔表面にインクからなるパターンを印刷する工程と次に、インクに含有されている成分によりパターンの下部の箔を促進してエッチングする工程と、を備え、箔にピットを形成することにより、箔に拡面処理を施すことを特徴とする。
上記構成において、エッチング促進成分は、好ましくは、箔又は箔の酸化膜を溶解するアルカリ又は酸である。また、上記成分は、好ましくは、箔よりも電気化学的に貴な、金属のコロイド又はイオンである。また、上記成分は、好ましくは、箔を化学的に不安定にする基により改質された樹脂またはこの樹脂のエマルジョンである。
上記製造方法によれば、迅速、安価にエッチング開始位置の制御された、高い拡面率を有する箔を、安定的にかつ連続して低コストで製造することができる。
【0019】
上記構成において、好ましくは、箔はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる。
上記製造方法によれば、箔がアルミニウム又はアルミニウム合金であるので、拡面処理された電解コンデンサ用アルミニウム箔などを低コストで製造することができる。
【0022】
上記構成において、好ましくは、エッチングは電解エッチングである。箔の所定の領域を高密度で電解エッチングすることにより、拡面処理された箔を精度良く製造することができる。
【0023】
上記構成において、好ましくは、箔に形成されるピットは、さらに、箔の裏面に形成されている。また、好ましくは、箔に形成されるピットが、箔の表面及び裏面に点状配列されている。箔の裏面にもピットが形成されると、拡面率は約2倍の拡面処理された箔を提供することができる。
【0024】
また、本発明の箔は、上記の製造方法で得られる箔であることを特徴とする。この箔は電解コンデンサ用電極箔に好適である。この構成によれば、拡面用のピットが高密度に配列した箔を提供することができる。この箔を、例えば、電解コンデンサ用電極箔に適用すれば、単位体積当たりの静電容量を大きくできる。そして、拡面率が大きいので、同一容量の電解コンデンサをより小型にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、迅速に且つ安価にエッチング開始位置の制御された、高い拡面率を有する箔を、安定的に連続して、しかも低コストで製造することができる。
本発明の箔は、拡面率が大きく、かつ、機械強度が強いので、例えば大容量の電解コンデンサ用電極箔を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
最初に、本発明の第一の実施の形態による箔の製造方法について、図1に模式的に示す部分斜視図を参照して説明する。
図示するように、箔2には、インクジェット方式を用いた印刷機により、網目状のマスクパターン3が印刷される。網目状のマスクパターンにおいて、丸状の孔部分が、インクが印刷されていない開口部3aとなっている。
ここで、インクは、後述する箔2のエッチングに用いる薬品にはエッチングされない材料からなっており、熱あるいは紫外線により硬化する樹脂、半重合体、モノマーのいずれかあるいは複数を含むインク、または無機系のゾル分散液を用いることが好ましい。
なお、本発明においては、マスクは、インクが印刷されたマスクパターン3とインクが印刷されない開口部3aとから構成されているが、インクが印刷された部分を、適宜マスクパターン3と呼ぶことにする。
【0027】
次に、上記のマスクパターン3が印刷された箔2が、化学エッチング又は電解エッチングにより所定の厚みだけエッチングされる。引き続き、化学エッチング又は電解エッチングに用いたエッチング液が水洗により除去される。
ここで、箔2としては、インクジェット方式を用いた印刷機によりマスクパターン3が印刷できるものであればなんでもよく、例えば、電極となる金属、半導体、高分子材料、有機半導体などが挙げられる。箔2は、膜状やフィルム状であれば良い。このような箔2としては、電解コンデンサ用電極箔がその一例となる。電解コンデンサ用電極箔2の場合には、金属の薄い箔からなり、安価で抵抗の小さいアルミニウム又はアルミニウム合金箔を用いることが好適である。アルミニウム合金箔としては、例えば、Pb(鉛)を所定量添加した合金などを使用することができる。
このアルミニウム箔2の電解エッチングには、塩化物イオンを含む電解液中で、アルミニウム箔2を陽極として行うことができる。以下の説明においては、適宜、箔2を電解コンデンサ用電極箔2として説明する。
【0028】
次に、箔2上のマスクパターン3がインクの溶剤により除去される。
【0029】
図2は、本発明の第一の実施の形態による箔の製造方法により製作される、拡面処理された箔を模式的に示す部分斜視図である。
図示するように、拡面処理された箔1には、上記の網目状のマスクパターン3により、マスクパターンが印刷されていない開口部3aで箔の溶解を誘導し、箔2がエッチングされ、表面から所定の深さに形成されたピット4(孔部、以下、適宜トンネルピットとも呼ぶ)が多数形成されていることが分かる。
特に、箔2として、アルミニウムの電解コンデンサ用電極箔2の場合には、図示するように、アルミニウムの異方性エッチングにより、角柱状のトンネルピット4が得られる。このトンネルピット4の形状は、箔2が結晶である場合にはその結晶面やエッチング方式により所望の形状にできる。
【0030】
本発明の拡面処理された箔1の製造方法の特徴は、インクジェット方式によりマスクパターン3を印刷することにより、インクジェットノズルから吐出されるインク以外に、箔2と接触するものがないために、例えば、圧延筋などの粗さを有する従来の電極用アルミニウム箔の表面に対して、微細なパターンを均一に形成することができる。
このようなインクジェット方式を用いたマスクパターンの印刷は、印刷版あるいはゴムローラーが箔と接する他の印刷方式では困難である。
【0031】
上記マスクパターン3のデータは、CAD(Computer Aided Design)ソフトウェアにより作成することができる。このマスクパターン3のデータがインクジェット方式印刷機に転送され、箔2に印刷される。インクジェット方式は他の方法と比較して装置が簡単であり、目的に合わせてマスクパターン3を、容易に変更することができる。
【0032】
本発明で使用されるインクジェット方式印刷機は、多数のノズルを有するヘッドを固定する方式、あるいは、箔2の送り方向に対して垂直に移動させる方式の何れを用いても構わない。
【0033】
インクの吐出方式は、熱によりインクを吐出させる手法、圧電素子によりインクを吐出させる手法、帯電させたインクを吐出させる手法などの、何れの手法を用いてもよい。
【0034】
インクジェット方式の印刷機により形成されるマスクパターン3の最小サイズは、吐出されるインクジェットのドット径で決まる。このドット径は、直径約1μm~数μmとすれば、例えば、電解コンデンサ用電極箔2に形成したマスクパターン3毎に、一つのトンネルピット4を形成することができる。
【0035】
これにより、本発明の第一の実施形態による拡面処理された箔1の製造方法によれば、インクジェット方式の印刷機を用いて、箔2の表面にマスクパターン3を印刷し、その後に電解エッチングを行い、マスクパターンの開口部3aによりピット4の形成位置が高度に制御され、高い拡面効率を有する、拡面処理された箔1を製造することができる。
したがって、本発明を、例えば電解コンデンサ用電極箔の製造に適用すれば、迅速に、且つ安価にエッチング開始位置の制御された、高い拡面率を有する電解コンデンサ用電極箔1を、安定的に、かつ、連続してしかも低コストで製造することができる。この場合には、拡面率が大きく、かつ、機械強度が強いので、大容量の電解コンデンサを製造することができる。そして、拡面率が大きいので、同一容量の電解コンデンサをより小型にすることができる。
【0036】
次に、本発明の第二の実施形態による箔の製造方法について説明する。
図3は、本発明の第二の実施の形態による箔の製造方法を模式的に示す部分斜視図である。図示するように、箔2には、インクジェット方式を用いた印刷機により、網点状のパターン5が印刷される。
インクは、上記本発明の第一の実施の形態による箔1の製造方法のインクとは異なり、箔2に形成したパターン5でのエッチングを促進させる成分を含有している。ここで、箔2に形成したパターン5でのエッチングを促進させる成分を含有しているインクとしては、箔2やその表面に存在する箔2の酸化膜を溶解する酸性、アルカリ性の水系インクが挙げられる。
また、箔2よりも電気化学的に貴な、金属のコロイド又はイオンが含まれているインクを使用することができる。例えば、上記箔2として、アルミニウムを用いた場合には、アルミニウムよりも電気化学的に貴な金属コロイドのパターン5をアルミニウム箔2に形成すると、電解液に浸漬した際にコロイドと接したアルミニウムの溶解を引き起こし、ピット4の形成を誘導することが可能になる。
さらに、箔2の表面を化学的に不安定にするインクなども使用することができる。このような成分としては、箔2の表面を化学的に不安定にする基により改質された樹脂又はこの樹脂のエマルジョンなどである。このような樹脂としては、カルボキシル基やスルホ基により改質をした樹脂や、そのエマルジョンを使用することができる。
【0037】
このようなインクを用いて、箔2にパターン5を形成すると、箔2あるいはその酸化膜の界面に化学的に不安定な層が形成される。このため、電解エッチングの際に、優先的にパターン5下部の箔2を溶解し、エッチングすることができる。
これにより、エッチングを誘導させるインクを使用する場合には、個々に独立した網点
のパターン5を箔2の表面に形成させることにより、網点に対応した位置でトンネルピット4を形成し、規則的な配列を得ることができる。この際、パターン5の形成されていない箔2はエッチングされない。このようにして形成される拡面処理された箔1の形状は、本発明の第一の実施形態による、拡面処理された箔1と同様である(図2参照)。
【0038】
これにより、インクジェット方式の印刷機を用いて、箔2の表面にパターン5を印刷し、パターン5を形成するインクの作用により箔2が選択的にエッチングされ、エッチングにより形成されるピット4の形成位置が高度に制御される。したがって、高い拡面効率を有する、拡面処理された箔1を製造することができる。
この箔1を電解コンデンサ用電極箔1に適用すれば、箔1の拡面率が大きく、かつ、機械強度が強いので、大容量の電解コンデンサ用電極箔1となる。さらに、本発明の電解コンデンサ用電極箔1は拡面率が大きいので、同一容量の電解コンデンサをより小型にすることができる。
【0039】
本発明の第三の実施形態による拡面処理された箔の製造方法について説明する。
図3及び図4は、本発明の第三の実施の形態による箔の製造方法を模式的に示す部分斜視図である。
最初に、図3に示すように、箔2には、インクジェット方式を用いた印刷機により、網点状のマスクパターン5が印刷される。この網点状のマスクパターン5は、上記第二の実施形態におけるマスクパターンと同じである。また、この網点状のマスクパターン5としては、マスクパターン3の所謂反転マスクパターンを用いることができる。
【0040】
次に、上記のマスクパターン5が印刷された箔2を陽極酸化し、所定の厚さの酸化膜6を形成する。
ここで、陽極酸化膜6のマスクは、上記箔2との接着性に優れ、また耐熱性、耐酸性も良好であることから、電解エッチングに対して優れたマスクとして機能する。この箔2の陽極酸化膜6は、アジピン酸アンモニウムやほう酸アンモニウムに代表されるほぼ中性の電解液中で形成されるバリヤー型陽極酸化膜、あるいは、硫酸や蓚酸(しゅう酸)に代表される酸性電解液中で形成されるポーラス型陽極酸化膜を用いることができる。陽極酸化膜6の緻密さ及びその膜厚制御性からは、バリヤー型陽極酸化膜を形成することが好ましい。
【0041】
図4は、本発明の第三の実施形態による箔2の表面に形成された、酸化膜6を示す部分斜視図である。図において、箔2上に陽極酸化膜6が網目状に形成され、陽極酸化膜6の開口部6aにおいては、箔2が露出している。
この箔2が酸化され難い材料の場合には、箔2の露出面には、酸化膜が形成されない。一方、この箔2が酸化され易い材料の場合において、箔2の露出面に酸化膜が形成される場合であっても、陽極酸化膜6よりも充分に薄い膜であればよい。
【0042】
次に、上記の箔2上の陽極酸化膜6をマスクとして、陽極酸化膜6の開口部6aに対応する箔2が、化学エッチング又は電解エッチングにより所定の厚みだけエッチングされる。引き続き、化学エッチング又は電解エッチングに用いたエッチング液が、水洗されて、拡面処理された箔1が製造される。
ここで、箔2が電解コンデンサ用電極箔2である場合には、安価で抵抗の小さい、アルミニウム箔2を用いることが好適である。このアルミニウム箔2の電解エッチングには、塩化物イオンを含む電解液中で、アルミニウム箔2を陽極として行うことができる。また、この場合には、陽極酸化膜6は、酸化アルミニウム膜となり、アルミニウム箔2との接着性に優れ、また耐熱性、耐酸性も良好であることから、電解エッチングに対して優れたマスクとして機能する。
【0043】
このようにして形成される拡面処理された箔1の形状は、その表面に陽極酸化膜6のパターンが形成されている以外は、本発明の第一の実施形態による、拡面処理された箔1と同様である(図2参照)。
【0044】
上記の製造方法の場合には、マスクパターン5に用いるインク材料が、箔2の陽極酸化に対して安定であればよい。この場合には、箔2の化学エッチング又は電解エッチングの前に、インクをその溶剤などでエッチングし、除去してもよい。
一方、インクが、化学エッチング又は電解エッチングに対して充分な耐性を示さない場合でも、電解コンデンサ用電極箔2の陽極酸化に対して安定であれば、陽極酸化膜6のマスクを形成するためのパターンとして使用することができる。この場合には、化学エッチング又は電解エッチングによりインクがエッチングされるので、箔2の化学エッチング又は電解エッチングの前に、インクをエッチングする必要がない。
【0045】
このように、本発明の第三の実施の形態による拡面処理された箔の製造方法によれば、上記の第一又は第二の実施の形態に、さらに、箔2に陽極酸化膜6を形成する工程の追加により、陽極酸化膜6をマスクとし、マスクされていない電極箔2をエッチングすることで、ピット形成位置が高度に制御され、高い拡面効率を有する拡面処理された箔1を製造することができる。
【0046】
したがって、本発明によれば、迅速、安価にエッチング開始位置の制御された、高い拡面率を有する箔1を、安定的にかつ連続して、低コストで製造することができる。この箔1を、電解コンデンサ用電極箔1に適用した場合には、拡面率が大きく、かつ、機械強度が強いので、大容量の電解コンデンサ用電極箔となる。また、拡面率が大きいので、同一容量の電解コンデンサをより小型にすることができる。
【0047】
次に、本発明の箔のピット形成について説明する。
図5は、本発明の箔のピットを模式的に示す部分斜視図である。図示するように、箔2には、裏面にもピット4が形成されている。この裏面のピット4は、本発明の第一乃至第三の実施の形態による箔1の製造方法により形成することができる。
このように、箔2の裏面にも、その表面と同様にピット4を形成すれば、箔2の表面だけにピット4を形成した場合の約2倍の拡面率が得られる。裏面のピット4の配列をエッチング又は誘導するマスクパターンは、本発明の第一乃至第三の実施の形態によるマスクパターンを使用することができ、網目状又は網点状のマスクパターン3,5を使用することができる。したがって、このように拡面処理された箔1を電解コンデンサ用電極箔1とすれば、裏面にも拡面処理されているので、同一面積の箔では、約2倍の静電容量が実現できる。
【実施例1】
【0048】
以下、実施例により更に本発明を詳細に説明する。
市販の油性インクジェットプリンタを用いて、厚さ110μm、純度99.9%、(100)面占有率95%以上のアルミニウム箔2に、直径約10μmの点部(ドット部)配列からなる開口部3aを有する網目状のマスクパターン3を印刷した。
次に、このマスクパターン3が印刷されたアルミニウム箔2を、60℃に維持した塩酸10%、硫酸30%の水溶液中において、150mA/cm2 の電流密度で30秒間の電解エッチングを行い、電解コンデンサ用電極箔1を製作した。この電解コンデンサ用電極箔1を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、マスクパターンの印刷されていない開口部3aが形成された領域のみで、トンネル状ピット4の形成が確認された。
【実施例2】
【0049】
グリセリン8%、ポリビニルアルコール1%、酢酸5%、純水85%からなるインクを使用し、市販のインクジェットプリンタを用いて、厚さ110μm、純度99.9%、(100)面占有率95%以上のアルミニウム箔に、直径約10μmの点部(ドット部)配列から網点状パターン5を印刷した。
次に、このパターン5が印刷されたアルミニウム箔を、30℃に維持した塩酸10%、硫酸30%の水溶液中において、150mA/cm2の電流密度で、30秒間の電解エッチングを行った。実施例2で用いたインクは、酢酸を含んでおり、インクが印刷された網点下部のアルミニウム箔2の電解エッチングを誘導し、パターン5が形成されていないアルミニウム箔2部分がエッチングされなかった。この試料を走査型電子顕微鏡で観察したところ、アルミニウム箔2に印刷した点部に対応した領域のみで、トンネルピット4の形成が確認された。
【実施例3】
【0050】
インクに1%のポリビニルアルコールを加えた以外は、実施例1と同様に、市販のインクジェットプリンタを用いて、厚さ110μm、純度99.9%、(100)面占有率95%以上のアルミニウム箔2に、直径約10μmの点部(ドット部)配列からなる網点状マスクパターン5を印刷した。
次に、ホットプレートを使用し、マスクパターン5が印刷されたアルミニウム箔2を、150℃で20秒間加熱した。
続いて、0.05モルの四ほう酸アンモニウム中で5V,10秒間の陽極酸化を行い、マスクパターン5の開口部以外の領域に陽極酸化膜6を形成した。引き続き、マスクパターン5のインクをエッチング液により除去した。
次に、陽極酸化膜6のマスクパターンが形成されたアルミニウム箔2を、30℃に維持した塩酸10%、硫酸30%の水溶液中において、150mA/cm2 の電流密度で、30秒間の電解エッチングを行った。この試料を走査型電子顕微鏡で観察したところ、最初にアルミニウム箔2に印刷したドット位置に対応した陽極酸化膜6の開口部6aで、トンネルピット4の形成が確認された。
【0051】
上記結果から、本発明の箔の製造方法によれば、微細なトンネルピット4を有する拡面処理された箔1を精度良く製造できることが分かった。この箔1は拡面処理されたアルミニウム箔であるので、拡面処理された電解コンデンサ用電極箔1として使用できる。
【0052】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。例えば、上記実施の形態において、箔の材質はアルミニウムに限らない。また、マスクパターンやインクなどは所望の拡面率に応じて適宜に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一の実施の形態による箔の製造方法を模式的に示す部分斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態による箔の製造方法により製作される、拡面処理された箔を模式的に示す部分斜視図である。
【図3】本発明の第二及び第三の実施の形態による箔の製造方法を模式的に示す部分斜視図である。
【図4】本発明の第三の実施の形態による箔の表面に形成された、酸化膜を示す部分斜視図である。
【図5】本発明の箔のピットを模式的に示す部分斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1:拡面処理された箔(拡面処理された電解コンデンサ用電極箔)
2:箔(アルミニウム箔)
3:網目状のマスクパターン
3a:網目状のマスクパターンの開口部
4:ピット(トンネルピット)
5:網点状のパターン
6:酸化膜(陽極酸化膜)
6a:酸化膜(陽極酸化膜)の開口部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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