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明細書 :含塩素樹脂を含む廃棄プラスチック混合物の無害化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4565259号 (P4565259)
公開番号 特開2006-131652 (P2006-131652A)
登録日 平成22年8月13日(2010.8.13)
発行日 平成22年10月20日(2010.10.20)
公開日 平成18年5月25日(2006.5.25)
発明の名称または考案の名称 含塩素樹脂を含む廃棄プラスチック混合物の無害化方法
国際特許分類 C08J  11/16        (2006.01)
C10B  53/00        (2006.01)
C10L   5/48        (2006.01)
C08L  23/06        (2006.01)
C08L  23/12        (2006.01)
C08L  25/06        (2006.01)
C08L  27/06        (2006.01)
C08L  27/08        (2006.01)
C08L  67/02        (2006.01)
FI C08J 11/16 ZAB
C10B 53/00
C10L 5/48
C08L 23:06
C08L 23:12
C08L 25:06
C08L 27:06
C08L 27:08
C08L 67:02
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2004-318689 (P2004-318689)
出願日 平成16年11月2日(2004.11.2)
審査請求日 平成19年10月16日(2007.10.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
【識別番号】502188848
【氏名又は名称】直富商事株式会社
発明者または考案者 【氏名】三島 彰司
【氏名】小須田 崇
個別代理人の代理人 【識別番号】100088306、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮 良雄
【識別番号】100126343、【弁理士】、【氏名又は名称】大西 浩之
審査官 【審査官】増田 健司
参考文献・文献 特開2004-269652(JP,A)
特開平11-092589(JP,A)
特開平11-222534(JP,A)
特開2001-172427(JP,A)
特開平11-124463(JP,A)
特開平06-128408(JP,A)
特開2000-297178(JP,A)
調査した分野 C08J 11/16
C10B 53/00
C10L 5/48
C08L 23/06
C08L 23/12
C08L 25/06
C08L 27/06
C08L 27/08
C08L 67/02
特許請求の範囲 【請求項1】
廃棄プラスチック混合物に酸化亜鉛を混合して200~300℃の範囲で熱処理して熱分解することにより,このプラスチック混合物中に含まれる含塩素樹脂のみを選択的に脱塩素無害化することを繰り返すものであって、前記熱分解のあとで、前記廃棄プラスチック混合物を前記熱処理した熱処理混合物中の酸化亜鉛および生成物の1つである塩化亜鉛を酸性水溶液に溶解した後,pHを調節して沈殿として分離し,酸化亜鉛に再変換して,前記繰り返す際に,廃棄プラスチック混合物に混合する酸化亜鉛として,再使用することを特徴とする廃棄プラスチック混合物の無害化処理法。
【請求項2】
前記廃棄プラスチック混合物,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,若しくはポリエチレンテレフタレート,またはこれらの何れかの混合物と,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデンおよびこれらの共重合体から選ばれる含塩素樹脂含むものであることを特徴とする請求項1に記載の廃棄プラスチック混合物の無害化処理法。
【請求項3】
前記酸化亜鉛が、前記含塩素樹脂に含有される塩素の少なくとも当量であることを特徴とする請求項1に記載の廃棄プラスチック混合物の無害化処理法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,廃棄プラスチックの分解・再資源化技術の分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物や家庭ゴミとして多量に排出されるプラスチック廃棄物は,ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレートなどとポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン等の含塩素樹脂との混合物である場合が多い。このようなプラスチック廃棄物は,熱分解処理や焼却処理の際に有害な塩化水素ガスを発生するのみならずダイオキシンなどの有毒塩素化合物を副生する可能性がある。このため,含塩素樹脂を含むプラスチック混合物の処理は埋め立てが主流であった。しかし,廃棄物の埋立地が飽和してきている現在,含塩素樹脂混入廃棄プラスチック混合物の無害化および再資源化は,我国が直面する緊急かつ重要課題となっている。このため,プラスチック廃棄物を無害化処理するための多様な分解再資源化技術の開発が試みられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】

【特許文献1】特開2004-269652号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
含塩素樹脂混入廃棄プラスチック混合物の処理方法として,比重分離法や溶媒による選択的溶解法による含塩素樹脂と他のプラスチックを分離することが試みられている。しかしながら,これらの方法では含塩素樹脂と他の樹脂との分離が完全でなかったり,多量の溶媒が必要となるなどの問題点が考えられる。ところで,ポリ塩化ビニル樹脂の場合,酸化亜鉛と反応させることにより脱塩素無害化する方法が試みられている。この方法は約200℃という低温で進行することが知られている。この方法を廃棄プラスチック混合物に応用し,含まれる含塩素樹脂のみを選択的に脱塩素無害化することができれば,もはや埋め立て処理の必要がなくなり,資源の有効利用,環境保全の観点から極めて望ましい。ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1の発明は,廃棄プラスチック混合物に酸化亜鉛(ZnO)を混合して常圧下,低温(200~300℃)で熱処理して熱分解することにより,このプラスチック混合物中に含まれる含塩素樹脂のみを選択的に脱塩素無害化することを繰り返すものであって、前記熱分解のあとで、前記廃棄プラスチック混合物を前記熱処理した熱処理混合物中の酸化亜鉛および生成物の1つである塩化亜鉛を酸性水溶液に溶解した後,pHを調節して沈殿として分離し,酸化亜鉛に再変換して,前記繰り返す際に,廃棄プラスチック混合物に混合する酸化亜鉛として,再使用することを特徴とする廃棄プラスチック混合物の無害化処理法であり,含塩素樹脂混入した廃棄プラスチック混合物の脱塩素無害化方法である。
【0006】
請求項2の発明は,前記廃棄プラスチック混合物が,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,若しくはポリエチレンテレフタレート,またはこれらの何れかの混合物と,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデンおよびこれらの共重合体から選ばれる含塩素樹脂と,含むものであることを特徴とする廃棄プラスチック混合物の無害化処理法である。このような含塩素樹脂を含む多様な廃棄プラスチック混合物の無害化処理を特徴としている。
【0007】
請求項3の発明は,前記酸化亜鉛が、前記含塩素樹脂に含有される塩素の少なくとも当量であることを特徴とする請求項1に記載の廃棄プラスチック混合物の無害化処理法である。上記の方法で含塩素樹脂混入廃棄プラスチック混合物を無害化処理した際に生成する塩化亜鉛(ZnCl2)を酸化亜鉛に再生して繰り返し使用することにより,環境汚染の原因となる亜鉛化合物を環境への排出させない方法である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1~3の発明により,含塩素樹脂混入廃棄プラスチック混合物に必要量(含有する塩素当量以上)の酸化亜鉛を混合し,低温で脱塩素処理して得た炭素質固体(炭化水素)は実質上塩素を含まないので,そのままサーマルリサイクルするか,既存の熱分解油化技術を用いて油化,再資源化できるので,埋め立ての必要がなくなる。また,請求項2の発明により,多種類の廃棄プラスチック混合物に適用できるので,実用的意義は極めて大きい。請求項1~3の発明により,廃棄プラスチック混合物の無害化に用いた酸化亜鉛の未反応分および副生成物である塩化亜鉛は希塩酸等で一旦溶解し,水酸化ナトリウム,水酸化カルシウム等のアルカリ水溶液を用いて中和すると亜鉛成分は水酸化亜鉛として沈殿する。該沈殿を300℃以上で加熱乾燥すると酸化亜鉛に戻るので回収,再使用でき,環境汚染の原因とならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に,本発明の実施形態について,図面に基づいて説明する。図1中の1は廃棄プラスチック混合物と酸化亜鉛の混合槽であって,廃棄プラスチックと酸化亜鉛は投入口1aから投入され,攪拌機などにより均一に混合される。
【0010】
該混合物は分解槽である脱塩素反応槽2へ送られ,攪拌しながらヒーター等で200~300℃に加熱される。これにより,含塩素樹脂が選択的に熱分解され,塩素および水素が1:1の割合で除去され,炭素質固体(炭化水素)に変換されると共に塩化亜鉛と水を生じる。
【0011】
生じた熱処理混合物は洗浄・分離槽3に送られ,攪拌機3cで攪拌しながら酸溶液(酸化亜鉛溶解用)3a,続いて水(塩化亜鉛溶解用)3bで十分洗浄した後,フィルター3dで固体と洗浄液が分離される。洗浄液中には塩化亜鉛と未反応の酸化亜鉛が溶解している。固体成分は取り出し口3eから取り出されるの固体成分,含塩素樹脂混入廃棄プラスチック混合物から,塩素分を含まないプラスチック混合物に変換されている。
【0012】
一方,洗浄液はポンプ3fにより中和槽4に送られる。中和槽4では該洗浄液を攪拌機4bで攪拌しながら苛性ソーダ,水酸化カルシウムなどのアルカリ4cを添加し,pHメーター4dでモニターしながら中和(pH=7)する。この処理により,洗浄液中の亜鉛成分は実質上全て水酸化亜鉛の沈殿となる。この反応液はポンプ4eにより,ろ過・乾燥塔5に送られる。ろ過・乾燥塔5では固体成分(水酸化亜鉛)がフィルター5aにより分離され,乾燥後取出口5bから取り出される。該水酸化亜鉛は熱処理により酸化亜鉛に戻され,再利用される。
【0013】
残った液相(塩化ナトリウム,塩化カルシウム等の塩水溶液)は廃液タンク6に送られる。該廃液から蒸発乾固法で塩化ナトリウムや塩化カルシウム等が容易に得られるが,これらは工業原料として再利用できる。
【実施例1】
【0014】
酸化亜鉛共存下におけるプラスチック混合物の熱分析
【0015】
つぎに,本発明を具体的に実施した結果について説明する。ポリ塩化ビニル(PVC),酸化亜鉛(ZnO),およびポリエチレン(PE)(または,ポリスチレン(PS),ポリプロピレン(PP),ポリエチレンテレフタレート(PET))を重量比1:1:1の割合で混合し,熱分析装置を用いて分解特性を測定した。図2~4に結果の一例を示す。図2はPVC/ZnO混合物の熱分析結果を示している。190~300℃の領域で重量減少を伴う発熱ピークが観測され,PVCの脱塩化水素反応進行することが示唆される。また,380℃以上で再度重量減少を伴う発熱ピークが観測されるが,炭素-炭素結合の開裂による分解反応(主鎖開裂反応)進行することを示している。図3はPE/ZnO混合物の熱分析結果を示している。400℃以上で重量減少を伴う吸熱反応が生じており,炭素-炭素結合の開裂によるポリエチレンの分解反応(主鎖開裂反応)進行することを示している。また,この温度以下では重量減少が認められないことから,400℃以下ではポリエチレンは分解しないことがわかる。図4はPVC/ZnO/PE混合物の熱分析結果を示している。図2と比較することにより,200~310℃付近の重量減少を伴う発熱ピークはPVCの脱塩化水素反応に対応することがわかる。また,400℃以上における重量減少は主鎖開裂反応の進行を示唆している。
【0016】
酸化亜鉛共存下におけるポリ塩化ビニルと各種プラスチックとの混合物の分解結果を表1にまとめた。いずれの混合物においても脱塩素反応は190~330℃、好ましくは200~300℃で進行することが明らかとなった。一方,炭素-炭素結合の開裂による分解反応(主鎖開裂反応)は330℃以上で進行することが明らかとなった。したがって,PVC含有廃プラスチック混合物を200~300℃の適当な温度で熱処理すると,共存プラスチックを分解することなくポリ塩化ビニルの選択的脱塩素処理が可能であることがわかる。
【0017】
【表1】
JP0004565259B2_000002t.gif

【実施例2】
【0018】
次に,ポリ塩化ビニル,酸化亜鉛,およびポリスチレン(またはポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエレンテレフタレート)を重量比1:1:1の割合で混合し,窒素雰囲気下200℃で熱処理し,生成した熱処理物を希薄酸溶液および水で洗浄して得た炭素質固体のフーリエ変換赤外分光光度計による赤外線吸収ペクトル測定結果の一例を図5に示す。曲線Aは未処理混合物のスペクトルであるが,曲線Dが示すポリスチレンと曲線Eが示すPVCのスペクトルが合成されたスペクトルとなっている。曲線Bで示される200℃処理物ではAとは異なるスペクトルが得られており,曲線Cで示される熱処理後洗浄した試料では実質上ポリスチレンに由来するスペクトルのみが観測されている。したがって,200℃熱処理でPVC中の塩素は塩化亜鉛として除去されていることが結論される。PVCと他のプラスチック混合物の熱処理後の赤外線吸収スペクトルにおいても類似の結果が得られた。したがって,PVC含有廃プラスチック混合物を200~300℃の適当な温度で熱処理することにより,共存プラスチックを分解することなくポリ塩化ビニルの選択的脱塩素処理が可能であることが明らかとなった。
【実施例3】
【0019】
次に,ポリ塩化ビニル,酸化亜鉛,およびポリスチレンを重量比1:1:1の割合で混合し,窒素雰囲気下で昇温分解した場合に生成する有機物の分析を実施し,ポリスチレンのみを昇温分解した場合と比較した。結果を図6に示す。該混合物の昇温分解では350℃以下では有機物は生成していない。したがって,脱塩素反応(200-300℃)では実質上有機物は生成しないことが明らかとなった。この結果は,脱塩素反応時には有害な有機塩素化合物は実質上生成しないことを示唆する点で重要である。一方,350℃以上になるとスチレン,トルエン等の有機物が生成してくる。これらの有機物は,ポリスチレンやPVCの主鎖分解により生成することが知られているので,350℃以上ではポリスチレンおよび脱塩素化されたPVCの熱分解が進行することを示している。
【0020】
以上の結果より, PVC含有廃プラスチック混合物を200~300℃の適当な温度で熱処理することにより,共存プラスチックを分解することなくポリ塩化ビニルの選択的脱塩素処理が可能であることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】発明を実施するための最良の装置の概要を示している。
【図2】ポリ塩化ビニル-酸化亜鉛混合物の熱分析結果を示している。
【図3】ポリエチレン-酸化亜鉛混合物の熱分析結果を示している。
【図4】ポリ塩化ビニル-ポリエチレン-酸化亜鉛混合物の熱分析結果を示している。
【図5】酸化亜鉛-プラスチック混合物の熱分解生成物の赤外線吸収スペクトルを示している。
【図6】酸化亜鉛共存下でのプラスチック混合物の昇温分解生成物の分析結果を示している。
【符号の説明】
【0022】
1・・・廃棄プラスチックと酸化亜鉛の混合槽
2・・・脱塩素反応槽
3・・・洗浄・分離槽
4・・・中和槽
5・・・ろ過・乾燥槽
6・・・廃液タンク
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5