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明細書 :LKP2部分cDNAを用いた遺伝子導入による植物体の種子収量、乾燥重量の制御

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4452876号 (P4452876)
公開番号 特開2005-052114 (P2005-052114A)
登録日 平成22年2月12日(2010.2.12)
発行日 平成22年4月21日(2010.4.21)
公開日 平成17年3月3日(2005.3.3)
発明の名称または考案の名称 LKP2部分cDNAを用いた遺伝子導入による植物体の種子収量、乾燥重量の制御
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
C07K  14/415       (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01H 5/00 A
C07K 14/415
請求項の数または発明の数 11
全頁数 29
出願番号 特願2003-288291 (P2003-288291)
出願日 平成15年8月6日(2003.8.6)
審査請求日 平成18年8月3日(2006.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】清末 知宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100108084、【弁理士】、【氏名又は名称】中野 睦子
審査官 【審査官】飯室 里美
参考文献・文献 The Plant Cell,2001年,Vol.13,p.2659-2670
Database DDBJ/EMBL/GenBank [online],2002年 1月 8日,Accessin No. AB038797,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sviewer/viewer.fcgi?18146957:OLD03:5076255
調査した分野 C12N 15/09
A01H 5/00
C07K 14/415
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
LKP2のLOV domain、F-boxおよびKelch repeatよりなる群から選択される1または2の機能領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む、植物体重量または葉数の増加因子であって、当該機能領域がLKP2のLOV domainとKelch repeatの2つを組み合わせたものか、またはF-box の1つからなることを特徴とする増加因子。
【請求項2】
LKP2のLOV domainが、配列番号1に記載するアミノ酸配列からなる機能領域であるか、または配列番号2に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、請求項1記載の増加因子。
【請求項3】
LKP2のF-boxが、配列番号3に記載するアミノ酸配列からなる機能領域であるか、または配列番号4に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、請求項1または2に記載の増加因子。
【請求項4】
LKP2のKelch repeatが、配列番号5に記載するアミノ酸配列からなるものであるか、または配列番号6に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、請求項1乃至3のいずれかに記載の増加因子。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載の増加因子、並びに該増加因子に作動可能に結合した塩基配列を含む、植物における遺伝子発現用カセット。
【請求項6】
増加因子に作動可能に結合した塩基配列が、プロモーター及び/又はターミネーターである請求項に記載する遺伝子発現用カセット。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載の増加因子を含むプラスミド。
【請求項8】
請求項またはに記載の遺伝子発現用カセットを含むプラスミド。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれかに記載の増加因子、または請求項またはに記載の遺伝子発現用カセットを含むトランスジェニック植物。
【請求項10】
植物のゲノムDNAに、発現可能に、LKP2のLOV domainとKelch repeatのアミノ酸配列をコードする塩基配列、またはLKP2のF-boxのアミノ酸配列をコードする塩基配列を導入し、形質転換する工程を含む、植物体重量または葉数が増加してなるトランスジェニック植物の作製方法。
【請求項11】
植物のゲノムDNAに、発現可能に、LKP2のLOV domainとKelch repeatのアミノ酸配列をコードする塩基配列、またはLKP2のF-boxのアミノ酸配列をコードする塩基配列を導入し、形質転換する工程を含む、当該植物体について植物体重量または葉数を増加させる方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シロイヌナズナLKP2(LOV kelch protein 2)の部分cDNAを用いて、植物の開花日数を制御し、また植物個体当たりの種子収量、植物体重量、或いは葉数を増加制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高等植物であるマメ科植物の葉に日周期で開閉する就眠(昼夜)運動が観察されており、このことから植物にも生物時計が存在することが示唆されている。かかる日周期の就眠運動は恒常条件下でも数日間続き、気孔の開閉、呼吸、及び光合成などの他、遺伝子の発現においても多数確認されている概日リズム(circadian rhythm)の一つとされている。こうした概日リズムを示す植物の現象は、気孔の開閉、呼吸、及び光合成などの他、遺伝子の発現においても多数確認されている。
【0003】
概日リズムは、環境の変化を排除した恒常状態のもとにおいて、概ね(circa)1日の(-dian)周期で変動する生命現象である。また、概日リズムは自律性と24時間に近い自由継続周期(free-running period)に加え、環境周期に対する同調性と自由継続周期の温度補償性(temperature compensation)を要件とすることもある。(例えば、非特許文献1等参照のこと)。これら概日リズムは生物時計と密接な関係があることが分かっているものの、そのメカニズムは解明されていない。
【0004】
シロイヌナズナArabidopsis thaliana(Columbia ecotype, Col)のLKP2(LOV kelch protein 2)は、生物時計との関わりが推測されている611アミノ酸残基からなる66KDaのタンパク質因子である。かかるLKP2は、N末端からLOV domain(light oxygen voltage domain)、F-box、kelch repeatという3つの機能領域を有している(図1参照)。
【0005】
ここでLOV domain〔時計遺伝子産物:Period(非特許文献2等参照のこと)、ダイオキシン受容体:Aryl hydrocarbon receptor(非特許文献3等参照のこと)、及び中枢神経発生の制御因子:Single-minded(非特許文献4等参照のこと)に共通したアミノ酸配列に因んで、各々の各頭文字をとって「PASドメイン」とも呼ばれる〕は、タンパク質間の相互作用ドメインとして機能するほか、発色団や電子受容体を保持することがあり、外界からの刺激応答にも働くと考えられている(例えば、非特許文献5等参照のこと)。
【0006】
またF-boxは、SKP1が結合するサイクリンF中のアミノ酸ドメインとして見いだされた領域である。かかるSKP1が結合するアミノ酸ドメインは、ほかの遺伝子産物中にも共通類似配列として見出され、これらを総称して「F-box」と呼ばれている。後にSkp1p-Cdc53p-F-boxタンパク質複合体(SCF複合体)が、E3ユビキチンリガーゼとして機能することが示され、F-boxはユビキチン/プロテアソーム経路のタンパク質分解制御に関わるアミノ酸ドメインであると考えられている(例えば、非特許文献6等参照のこと)。
【0007】
kelchリピートは、ショウジョウバエのkelchタンパク質中にある約50アミノ酸の反復配列として見出された領域である。後の立体構造解析から、kelchリピートは4つのβシートを1つの単位とするβプロペラ構造をとり、合計6枚前後のβプロペラ構造からなる特徴的な3次構造を示すことが明らかにされた。kelchリピートは、タンパク質間相互作用ドメインとして機能すると考えられている(例えば、非特許文献6等参照のこと)。
【0008】
シロイヌナズナには、こうしたLKP2以外に、LKP1(LOV kelch protein 1)(ZTL1/ADO1 [ZEITLUPE 1/ADAGIO 1])、及びLKP3(LOV kelch protein 3)(FKF1/ADO3 [Flavin-binding:kelch repeat:F-box 1/ADAGIO 3])というアミノ酸配列が良く似たタンパク質因子(LKPファミリー)が存在している(例えば、非特許文献7及び8等参照のこと)。これらはアミノ酸レベルで、LKP1とLKP2とは73.02%、LKP1とLKP3とは62.62%、LKP2とLKP3とは59.20%のホモロジーを有している〔Takeishi K, Gotoh O. (1982) Computer analysis of the sequence relationships among 4.5S RNA molecular species from various sources. J Biochem (Tokyo). 92(4) :pp.1173-7 に基づくGENETYX-MAC Maximum Matching(ソフトウエア開発)により計算。なお、Lipman-Pearson法(Lipman DJ, Pearson WR. (1985) Rapid and sensitive protein similarity searches. Science. 22; 227 (4693): pp.1435-41.)に基づいたGENETYX-MAC Amino Acid Sequence Homology Data(ソフトウエア開発)で計算するとLKP1とLKP2とのホモロジーは図1に示すように74.1%となる。〕。各機能領域毎のアミノ酸レベルの相同性をみると、LOV domainに関してはLKP2に対してLKP1が77%及びLKP3が67%、F-boxに関してはLKP2に対してLKP1が66%及びLKP3が63%、kelch repeatに関してはLKP2に対してLKP1が80%及びLKP3が62%である(例えば、非特許文献9等参照のこと)。
【0009】
しかし、これらのLKPファミリーの役割、並びにこれらのファミリーが共通して有する上記機能領域(LOV domain、F-box、及びkelch repeat)の個々の役割は十分に解明されていない。
【0010】
LKPファミリーに関して、現在判明していることは、LKP1の過剰発現体(カリフラワーモザイクウィルス(CaMV:cauliflower mosaic virus)の35SプロモーターにLKP1をつなげたコンストラクトを導入した形質転換植物;[CaMV35S::LKP1 plants]において、細胞伸長、胚軸伸長、長日条件下での開花遅延、並びに本葉の増加が認められること(例えば、非特許文献10等参照のこと)、LKP2の過剰発現体(カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)の35SプロモーターにLKP1をつなげたコンストラクトを導入した形質転換植物;[CaMV35S::LKP2 plants]において、概日リズムの消失、胚軸伸長、長日条件下での開花遅延、本葉の増加が認められること(例えば、非特許文献9等参照のこと)、LKP3の欠損変異体において、長日条件下での開花遅延、ジベレリン処理と低温処理による開花遅延の回復が認められること(例えば、非特許文献11等参照のこと)である。しかし、LOV domain、F-box及びkelch repeatのどの機能領域がこの結果をもたらしているのか、全ての機能領域が必要なのか、どれか1つの機能領域で十分なのか、この点の解析は行われていない。

【非特許文献1】岩波生物学辞典 第4版、「概日リズム」欄、 1996年、岩波書店
【非特許文献2】Reddy,P., Jacquier,A.C., Abovich,N., Peterson,G., Rosbash,M., (1986) The period clock of D.melanogaster codes for a proteoglycan. Cell, 46, p.53‐61
【非特許文献3】Hoffman,E.C., Reyes,H., Chu,F.F., Sander,F., Conley,L.H., Brooks,B.A., Hankinson,O., (1991) Cloning of a factor required for activity of the Ah(dioxin) receptor. Science, 252, p.954‐958
【非特許文献4】Crews,S,T., Thomas,J,B., Goodman,C,S., (1988) The Drosophila single-minded gene encodes a nuclear protein with sequence similarity to the per gene product. Cell, 5, p.143‐151
【非特許文献5】Barak,S., Tobin,E.M., Andronis,C., Sugano,S., Green,R.M., (2000) All in good time:the Arabidopsis circadian clock. Trends Plant Sci, 5, p.517‐522
【非特許文献6】小林恭士,荒木崇、 (2000)「生物時計と花成制御」 植物細胞工学シリーズ, 13, p.166‐170
【非特許文献7】Somers,D.E., Schultz,T.F., Milnsmow,M.and Kay,S.A., (2000) ZEITLUPE encodes a novel clock-associated PAS protein from Arabidopsis. Cell, 101, p. 319‐329
【非特許文献8】Jarillo,J.A., Capel.J., Tang,R.H., Yang,H.Q., Alonso,J.M., Ecker,J.R., Cashmore,A.R.,(2001) An Arbidopsis circadian clock component interacts with both CRY1 and phyB. Nature, 410, p.487‐490
【非特許文献9】Schultz,T.F., Kiyosue,T., Yanovsky,M., Wada,M.and Kay,S.A. (2001) A role for LKP2 in the circadian clock of Arabidopsis. Plant Cell, 13, p.2659‐2670
【非特許文献10】Kiyosue,T.and Wada,M. (2000) LKP1(LOV kelch protein 1): a factor involved in the regulation of flowering time in Arabidopsis. The Plant Journal, 23(6), p.807‐815
【非特許文献11】Nelson,D.C., Lasswell,J., Rogg,L.E., Cohen,M.A.and Bartel,B., (2000) FKF1, a Clock-Controlled Gene that Regulates the Transition to Flowering in Arabidopsis. Cell, 101, p.331‐340
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、シロイヌナズナのLKP2の各機能領域(LOV domain、F-box、及びkelch repeat)が植物体の開花日数(開花にかかる日数)、種子収量、葉数、及び植物体重量に対して果たす役割を解明し、その応用(用途)を提供することを目的とするものである。より具体的には、本発明の目的は、上記解明した事実に基づいて、LKPファミリーの各機能領域(LOV domain、F-box、及びkelch repeat)の1または2をコードするcDNAを、植物体の開花日数、種子収量、葉数、または植物体重量の制御因子として提供すること、これらの制御因子を利用して、植物体の開花日数、種子収量、葉数、または植物体重量を制御する方法を提供すること、さらに開花日数、種子収量、葉数、または植物体重量が制御されてなるトランスジェニック植物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として、LOV domain、F-box、及びkelch repeatの各機能領域を各々単独あるいは組み合わせたコンストラクト(7通り)を、カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターの下流に置かれたオワンクラゲ蛍光タンパク質であるGreen Fluorescent Protein(GFP)をコードするcDNA(CaMV35S::GFP)にin-frameで結合して人工遺伝子(GLFK、GL、GF、GK、GLF、GLK、GFK)を作成し、これをシロイヌナズナに遺伝子導入して作成した各T1植物体(形質転換植物)を用いて、開花日数や本葉枚数、植物体乾燥重量や種子収量に及ぼす影響を調べていたところ、いずれのコンストラクトを用いた場合でも、開花が遅延し、また本葉枚数、植物体乾燥重量及び種子収量が増加する個体が見いだされた。さらに本発明者らは、これらの知見から、開花の遅延、または本葉枚数、植物体乾燥重量や種子収量の増加に優位に働く機能領域を見いだし、これらの機能領域が植物全般において、開花日数(開花にかかる日数)、本葉枚数、植物体乾燥重量または種子収量の制御因子となり得ること、またこうした制御因子を利用することによって花卉や園芸植物の開花時期を制御したり、農作物や森林木材の葉数や植物体重量、並びに種子(果実)収量を制御することが可能であると考え、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記項1~7に掲げる、植物における植物体重量、葉数、種子収量または開花日数の制御因子である。
項1. LOV domain、F-box及びKelch repeatよりなる群から選択される1または2の機能領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む、植物体重量、葉数、種子収量または開花日数の制御因子。
項2. LOV domainが、下記(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなる機能領域である、項1記載の制御因子:
(a)配列番号1に記載するアミノ酸配列
(b)配列番号1に記載するアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、LKP2のLOV domainの機能を実質的に有するアミノ酸配列。
項3. LOV domainが、下記(c)または(d)に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、項1記載の制御因子:
(c)配列番号2に記載する塩基配列
(d)配列番号2に記載する塩基配列と相補的な塩基配列と、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLKP2のLOV domainの機能を実質的に有するアミノ酸配列をコードする塩基配列。
項4. F-boxが、下記(e)または(f)に記載するアミノ酸配列からなる機能領域である、項1乃至3のいずれかに記載の制御因子:
(e)配列番号3に記載するアミノ酸配列
(f)配列番号3に記載するアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、LKP2のF-boxの機能を実質的に を有するアミノ酸配列。
項5. F-box が、下記(g)または(h)に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、項1乃至3のいずれかに記載の制御因子:
(g)配列番号4に記載する塩基配列
(h)配列番号4に記載する塩基配列と相補的な塩基配列と、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLKP2のF-boxの機能を実質的に有するアミノ酸配列をコードする塩基配列。
項6. Kelch repeatが、下記(i)または(j)に記載するアミノ酸配列からなるものである、項1乃至5のいずれかに記載の制御因子:
(i)配列番号5に記載するアミノ酸配列
(j)配列番号5に記載するアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、LKP2のKelch repeat の機能を実質的に有するアミノ酸配列。
項7. Kelch repeatが、下記(k)または(l)に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、項1乃至5のいずれかに記載の制御因子:
(k)配列番号6に記載する塩基配列
(l)配列番号6に記載する塩基配列と相補的な塩基配列と、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLKP2のKelch repeat の機能を実質的に有するアミノ酸配列をコードする塩基配列。
【0014】
また本発明は、下記に掲げる植物における遺伝子発現用カセット、プラスミド、並びにこれらの遺伝子発現用カセットまたはプラスミドを含むトランスジェニック植物である:
項8. 項1乃至7のいずれかに記載の制御因子、並びに該制御因子に作動可能に結合した塩基配列を含む、植物における遺伝子発現用カセット。
項9. 制御因子に作動可能に結合した塩基配列が、プロモーター及び/又はターミネーターである項8に記載する遺伝子発現用カセット。
項10. 項1乃至7のいずれかに記載の制御因子を含むプラスミド。
項11. 項8または9に記載の遺伝子発現用カセットを含むプラスミド。
項12. 項1乃至7のいずれかに記載の制御因子、または項8または9に記載の遺伝子発現用カセットを含むトランスジェニック植物。
【0015】
さらに本発明は、下記項13に掲げる、植物体重量、葉数若しくは種子収量が増加するか、または開花日数が遅延してなるトランスジェニック植物の作製方法である:
項13. 植物のゲノムDNAに、発現可能に、LOV domain、F-box及びKelch repeatよりなる群から選択される1または2の機能領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を導入し、形質転換する工程を含む、植物体重量、葉数若しくは種子収量が増加するか、または開花日数が遅延してなるトランスジェニック植物の作製方法。
【0016】
なお、かかるトランスジェニック植物の作製方法方法には下記の態様が含まれる:
(13-1) LOV domainが、下記(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなる機能領域である、項13記載の制御因子:
(a)配列番号1に記載するアミノ酸配列
(b)配列番号1に記載するアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、LKP2のLOV domainの機能を実質的に有するアミノ酸配列。
(13-2) LOV domainが、下記(c)または(d)に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、項13記載の制御因子:
(c)配列番号2に記載する塩基配列
(d)配列番号2に記載する塩基配列と相補的な塩基配列と、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLKP2のLOV domainの機能を実質的に有するアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(13-3) F-boxが、下記(e)または(f)に記載するアミノ酸配列からなる機能領域である、項13に記載の制御因子:
(e)配列番号3に記載するアミノ酸配列
(f)配列番号3に記載するアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、LKP2のF-boxの機能を実質的に を有するアミノ酸配列。
(13-4) F-box が、下記(g)または(h)に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、項13に記載の制御因子:
(g)配列番号4に記載する塩基配列
(h)配列番号4に記載する塩基配列と相補的な塩基配列と、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLKP2のF-boxの機能を実質的に有するアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(13-5) Kelch repeatが、下記(i)または(j)に記載するアミノ酸配列からなるものである、項13に記載の制御因子:
(i)配列番号5に記載するアミノ酸配列
(j)配列番号5に記載するアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、LKP2のKelch repeat の機能を実質的に有するアミノ酸配列。
(13-6) Kelch repeatが、下記(k)または(l)に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、項13に記載の制御因子:
(k)配列番号6に記載する塩基配列
(l)配列番号6に記載する塩基配列と相補的な塩基配列と、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLKP2のKelch repeat の機能を実質的に有するアミノ酸配列をコードする塩基配列。
【0017】
さらにまた本発明は、下記項14に掲げる、植物体について植物体重量、葉数、種子収量または開花日数を制御する方法である:
項14. 植物のゲノムDNAに、発現可能に、LOV domain、F-box及びKelch repeatよりなる群から選択される1または2の機能領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を導入し、形質転換する工程を含む、当該植物体について植物体重量、葉数、種子収量または開花日数を制御する方法。
【0018】
なお、かかる制御方法には下記の態様が含まれる:
(14-1) LOV domainが、下記(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなる機能領域である、項14記載の制御因子:
(a)配列番号1に記載するアミノ酸配列
(b)配列番号1に記載するアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、LKP2のLOV domainの機能を実質的に有するアミノ酸配列。
(14-2) LOV domainが、下記(c)または(d)に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、項14記載の制御因子:
(c)配列番号2に記載する塩基配列
(d)配列番号2に記載する塩基配列と相補的な塩基配列と、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLKP2のLOV domainの機能を実質的に有するアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(14-3) F-boxが、下記(e)または(f)に記載するアミノ酸配列からなる機能領域である、項14に記載の制御因子:
(e)配列番号3に記載するアミノ酸配列
(f)配列番号3に記載するアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、LKP2のF-boxの機能を実質的に を有するアミノ酸配列。
(14-4) F-box が、下記(g)または(h)に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、項14に記載の制御因子:
(g)配列番号4に記載する塩基配列
(h)配列番号4に記載する塩基配列と相補的な塩基配列と、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLKP2のF-boxの機能を実質的に有するアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(14-5) Kelch repeatが、下記(i)または(j)に記載するアミノ酸配列からなるものである、項14に記載の制御因子:
(i)配列番号5に記載するアミノ酸配列
(j)配列番号5に記載するアミノ酸配列において、1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、LKP2のKelch repeat の機能を実質的に有するアミノ酸配列。
(14-6) Kelch repeatが、下記(k)または(l)に記載する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列からなるものである、項14に記載の制御因子:
(k)配列番号6に記載する塩基配列
(l)配列番号6に記載する塩基配列と相補的な塩基配列と、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLKP2のKelch repeat の機能を実質的に有するアミノ酸配列をコードする塩基配列。
【0019】
以下に、本発明を詳細に説明する。
(1)開花日数(開花にかかる日数)、葉数、植物体重量、または種子収量の制御因子
本発明は、植物体の開花日数、葉数、植物体重量、または種子収量を制御する因子に関する。より詳細には、開花時期を遅延させる因子、葉数、植物体乾燥重量、または種子収量を増加させる因子に関する。
【0020】
本発明の制御因子は、LOV domain、F-box及びkelch repeatよりなる群から選択される1または2の機能領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むことを特徴とする。
【0021】
ここでLOV domain、F-box及びkelch repeatは、シロイヌナズナのLKPファミリー(タンパク質因子:LKP1、LKP2、LKP3)において共通して見いだされている機能領域(アミノ酸領域)である。なお、図2に示すように、LKP1、LKP2、及びLKP3の各機能領域(LOV domain、F-box及びkelch repeat)のアミノ酸配列は公知であり(例えば、上記の非特許文献7~11参照)、その配列に基づいて各機能領域の機能が種々推定されている(例えば、上記の非特許文献7~11参照)。
【0022】
なお、シロイヌナズナは、アブラナ科の植物で、短日条件でも長日条件でも開花するが長日条件の方がより開花が促進される植物(量的長日植物)である。世代時間は短く(約2ヶ月)、一年の間でそのライフサイクルが終了する一年生草本植物である。ゲノムの全塩基配列は既に決定されており、ゲノムサイズは約125メガベースペア、染色体数は5対、遺伝子数は25498個であることが知られている(かずさDNA研究所. (2001)「シロイヌナズナ・ゲノムの完全解読について」 KAZUSA information, 33, 1‐5)。
【0023】
シロイヌナズナのLKP2の全長アミノ酸配列及びそれをコードするcDNAの塩基配列をそれぞれ配列番号7及び8に、LKP1の全長アミノ酸配列及びそれをコードするcDNAの塩基配列をそれぞれ配列番号9及び10に、さらにLKP3の全長アミノ酸配列及びそれをコードするcDNAの塩基配列をそれぞれ配列番号11及び12に記載する。
【0024】
図3にLKP2の全長cDNAとコード領域(ORF)の塩基配列、及び対応するアミノ酸配列を、図4にLKP1の全長cDNAとコード領域(ORF)の塩基配列、及び対応するアミノ酸配列を、図5にLKP3の全長cDNAとコード領域(ORF)の塩基配列、及び対応するアミノ酸配列を、それぞれ示す。
【0025】
LKP2に関して、LOV domainはN末端からアミノ酸番号47~153(図3において、5'末端から塩基番号368~688)、F-boxはN末端からアミノ酸番号198~246(図3において、5'末端から塩基番号821~967)、及びKelch repeatはN末端からアミノ酸番号280~611(図3において、5'末端から塩基番号1067~2062)にそれぞれ位置する。
【0026】
またLKP1に関して、LOV domainはN末端からアミノ酸番号47~154(図4において、5'末端から塩基番号273~596)、F-boxはN末端からアミノ酸番号197~245(図4において、5'末端から塩基番号723~869)、及びKelch repeatはN末端からアミノ酸番号279~609(図4において、5'末端から塩基番号969~1961)にそれぞれ位置する。
【0027】
さらにLKP3に関して、LOV domainはN末端からアミノ酸番号56~164(図5において、5'末端から塩基番号166~489)、F-boxはN末端からアミノ酸番号212~260(図5において、5'末端から塩基番号631~777)、及びKelch repeatはN末端からアミノ酸番号292~620(図5において、5'末端から塩基番号871~1857)にそれぞれ位置する。
【0028】
LKP2の全長アミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子(cDNA)の塩基配列(ORF領域の塩基配列)をそれぞれ配列番号7及び8に、LKP1の全長アミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子(cDNA)の塩基配列(ORF領域の塩基配列)をそれぞれ配列番号9及び10に、さらにLKP3の全長アミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子(cDNA)の塩基配列(ORF領域の塩基配列)をそれぞれ配列番号11及び12に記載する。
【0029】
本発明の制御因子は、これらのLOV domain、F-boxまたはkelch repeatの各機能領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)からなるか、若しくはこれらの各塩基配列とともに任意の塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)であっても、また上記各機能領域を任意に2つ組み合わせてなるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)からなるか、若しくは当該塩基配列とともに任意の塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)であってもよい。なお、ここで任意の塩基配列は、本発明の制御因子の作用・効果を妨げないことを限度として塩基数やその配列に特に制限されるものではない。
【0030】
機能領域の2つの組み合わせ例としては、LOV domainとF-boxの組み合わせ(LOV domain/F-box)、LOV domainとkelch repeatの組み合わせ(LOV domain/kelch repeat)、及びF-boxとkelch repeatの組み合わせ(F-box/kelch repeat)を挙げることができる。なお、ここで機能領域の2つの組み合わせ態様は特に制限されず、かかる各機能領域がタンデムに結合してなるものであっても(各機能領域の結合順序も問わない)、また一方の機能領域ともう一方の機能領域とが任意のアミノ酸配列を介して結合してなるもの(各機能領域の結合順序も問わない)であってもよい。なお、ここで各機能領域の間に位置するアミノ酸配列は、本発明の効果を妨げないことを限度としてアミノ酸数や配列に特に制限されるものではない。
【0031】
後述する実施例で示すように、開花時期(開花に要する日数)の制御(遅延)には、LOV domainそのもの、並びにF-boxとkelch repeatの組み合わせ(F-box/kelch repeat)が優位に働く。このことから、少なくともLOV domainをコードする塩基配列からなるか若しくは他の塩基配列に加えて当該塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)〔LOV domain/F-box、またはLOV domain/kelch repeatをコードする塩基配列からなる遺伝子(cDNA)も含まれる〕、及びF-box/Kelch repeat をコードする塩基配列からなるか若しくは他の塩基配列に加えて当該塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)は、特に開花時期(開花に要する日数)の制御因子、好ましくは開花時期(開花に要する日数)の遅延因子として有用である。
【0032】
また同様に後述する実施例で示すように、本葉数の制御(増加)には、LOV domain及びF-boxが優位に働く。このことから、少なくともLOV domainをコードする塩基配列からなるか若しくは他の塩基配列に加えて当該塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)〔LOV domain/F-box、またはLOV domain/kelch repeatをコードする塩基配列からなる遺伝子も含まれる〕、並びに少なくともF-boxをコードする塩基配列からなるか若しくは他の塩基配列に加えて当該塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)〔F-box/LOV domain、またはF-box/kelch repeatをコードする塩基配列からなる遺伝子も含まれる〕は、特に本葉数の制御因子(好ましくは本葉数の増加因子)として有用である。
【0033】
さらに後述する実施例で示すように、植物体重量の制御(増加)には、F-boxそのもの、並びにLOV domainとkelch repeatの組み合わせ(LOV domain/kelch repeat)が、優位に働くことから、少なくともF-boxをコードする塩基配列からなるか若しくは他の塩基配列に加えて当該塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)〔F-box/LOV domain、またはF-box/kelch repeatをコードする塩基配列からなる遺伝子(cDNA)も含まれる〕、及びLOV domain/kelch repeat をコードする塩基配列からなるか若しくは他の塩基配列に加えて当該塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)は、特に植物体の重量制御因子(好ましくは植物体の重量増加因子)として有用である。
【0034】
さらにまた後述する実施例で示すように、種子収量の制御(増加)には、F-boxそのもの、並びにLOV domainとF-box の組み合わせ(LOV domain/F-box)が、優位に働く。このことから、少なくともF-boxをコードする塩基配列からなるか若しくは他の塩基配列に加えて当該塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)〔F-box/LOV domain、またはF-box/Kelch repeatをコードする塩基配列からなる遺伝子も含まれる〕、及びLOV domain/F-boxをコードする塩基配列からなるか若しくは他の塩基配列に加えて当該塩基配列を有する遺伝子(cDNAを含む)は、特に種子収量の制御因子(好ましくは種子収量の増加因子)として有用である。
【0035】
なお、上記LOV domainとして、好適には、配列番号1に記載するアミノ酸配列からなるアミノ酸領域を挙げることができる。なお、当該アミノ酸領域は、LKP2のLOV domainに相当するものであり、このアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号2に記載する。
【0036】
また、上記LOV domainは、LKP2、LKP1及びLKP3のLOV domainのほか、これらの機能的同等物であってもよい。かかる機能的同等物としては、好適にはLKP2のLOV domain のアミノ酸配列(配列番号1)において1又は数個~複数個のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、且つLKP2のLOV domainの機能(少なくとも開花日数、葉数、植物体重量、種子収量などの制御機能)を実質的に備えるものを例示することができる。また、かかる機能的同等物には、LKP2のLOV domain をコードする塩基配列(配列番号2)の相補的な塩基配列に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するものであって、且つLKP2のLOV domainの機能(少なくとも開花日数、葉数、植物体重量、種子収量などの制御機能)を実質的に備えるものも含まれる。なお、ここでストリンジェントな条件としては、1×SSC、0.1%w/wSDS中、50℃以上で1時間の条件を挙げることができる。
【0037】
また、上記F-boxとして、好適には、配列番号3に記載するアミノ酸配列からなるアミノ酸領域を挙げることができる。なお、当該アミノ酸領域は、LKP2のF-boxに相当するものであり、このアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号4に記載する。
【0038】
さらに、上記F-boxは、LKP2、LKP1及びLKP3のF-boxのほか、これらの機能的同等物であってもよい。かかる機能的同等物としては、好適にはLKP2のF-boxのアミノ酸配列(配列番号3)において1又は数個~複数個のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、且つLKP2のF-boxの機能(少なくとも開花日数、葉数、植物体重量、種子収量などの制御機能)を実質的に備えるものを例示することができる。また、かかる機能的同等物には、LKP2のF-box をコードする塩基配列(配列番号4)の相補的な塩基配列に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するものであって、且つLKP2のF-boxの機能(少なくとも開花日数、葉数、植物体重量、種子収量などの制御機能)を実質的に備えるものが含まれる。なお、ここでストリンジェントな条件としては、1×SSC、0.1%w/wSDS中、50℃以上で1時間の条件を挙げることができる。
【0039】
また、上記kelch repeatとして、好適には、配列番号5に記載するアミノ酸配列からなるアミノ酸領域を挙げることができる。なお、当該アミノ酸領域は、LKP2のkelch repeatに相当するものであり、このアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号6に記載する。
【0040】
さらに、上記kelch repeatは、LKP2、LKP1及びLKP3のkelch repeatのほか、これらの機能的同等物であってもよい。かかる機能的同等物としては、好適にはLKP2のkelch repeatのアミノ酸配列(配列番号5)において1又は数個~複数個のアミノ酸を欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、且つLKP2のkelch repeatの機能(少なくとも開花日数、葉数、植物体重量、種子収量などの制御機能)を実質的に備えるものを例示することができる。また、かかる機能的同等物には、LKP2のkelch repeatをコードする塩基配列(配列番号6)の相補的な塩基配列に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するものであって、且つLKP2のkelch repeatの機能(少なくとも開花日数、葉数、植物体重量、種子収量などの制御機能)を実質的に備えるものも含まれる。なお、ここでストリンジェントな条件としては、1×SSC、0.1%w/wSDS中、50℃以上で1時間の条件を挙げることができる。
【0041】
本発明の制御因子は、植物機能性プロモーターや植物機能性ターミネーター等の当該因子の発現に必要な機能性DNA配列に作動可能に結合することができ、さらに該機能性DNA配列を結合した制御因子は、必要に応じて、植物体に導入する所望の遺伝子配列(導入遺伝子配列〔外来遺伝子配列を含む〕)に作動可能に結合することもできる。
【0042】
なお、本発明において「作動可能に結合する」とは、制御因子が、上記各種の機能性DNA配列または導入遺伝子配列に対して、挿入位置及び方向に係わらず、これらの配列に影響を及ぼし得るに十分な程度に該配列の近傍に位置することを意味する。
【0043】
なお、上記導入遺伝子としては植物中での発現が所望されるDNAを、該植物に対して同種若しくは異種の如何を問わず、挙げることができる。かかる導入遺伝子には、例えばβ-グルクロニダーゼをコードする遺伝子;抗生物質耐性遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子等);殺虫及び殺菌タンパク質毒素をコードする遺伝子;耐病原菌化合物;過敏応答化合物、例えばペルオキシダーゼ、グルカナーゼ、及びキチナーゼ、並びにフィトアレキシンを合成する遺伝子;農薬、除草剤及び殺菌剤耐性遺伝子;植物酵素(例えばタンパク質、スターチ、糖及び脂肪の含量又はその質に関連した酵素)を合成する遺伝子及びそれらの調節因子遺伝子;植物酵素阻害剤、例えばプロテアーゼ及びアミラーゼ阻害剤に関する遺伝子;植物ホルモン合成に係わる遺伝子;昆虫ホルモン及びフェロモンの合成に係わる遺伝子;医薬及び栄養化合物、例えばβ-カロチンやビタミン合成に係わる遺伝子;並びに植物中に存在するヌクレオチド配列に干渉するアンチセンス転写物質が含まれるが、それらに何ら限定されるものではない(TRANSGENIC PLANT, 第1巻、Academic Press 1993)。
【0044】
(2)遺伝子発現用カセット
本発明は、前述する制御因子、並びにそれに作動可能に結合してなるDNA配列を含む、植物への適用に適した遺伝子発現用カセットに関する。なお、本発明で遺伝子発現用カセットとは、植物に導入するために用いられるプラスミド並びにそのサブフラグメントを意味する。
【0045】
ここで制御因子に作動可能に結合してなるDNA配列としては、プロモーター又はターミネーター等の機能性DNA配列を挙げることができ、さらに前述する導入遺伝子配列を含めることもできる。
【0046】
ここでプロモーターとは、該プロモーターの下流に目的とするタンパク質の構造遺伝子を連結した場合、該タンパク質の植物細胞内における発現を制御する能力を有するDNA配列を包含するものであり、植物の形質転換のために当業界で用いられているあらゆる植物機能性プロモーターが含まれる。従来から植物の形質転換用に多数のプロモーターが用いられており、これらには例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)から単離されるプロモーターである、オクトピンシンターゼ(ocs)プロモーター(L.Comai et al.,1985;C.Waldron et al.,1985)、マンノピンシンターゼ(mas)プロモーター、及びノパリンシンターゼ(nos)プロモーターが含まれる。また、カリフラワーモザイクウイルス(Cauliflower Mosaic Virus)35Sプロモーターは、双子葉類の形質転換に汎用されているプロモーターであり、本発明においても好適に使用できる。また35Sプロモーターの改変物、例えば2つの並列35Sプロモーター(R.Kay et al.,1987)およびmas-35Sプロモーター(L.Comai etal., 1990)なども用いることができる。さらに、カリフラワーモザイクウイルス19Sプロモーター(J.Paszkowski et al.,1984;)やゴマノハグサモザイクウイルス由来の34Sプロモーター(M.Sanger et al.,1990)をも含めることもできる。また、植物由来のプロモーターであるアクチン・プロモーター、リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ小サブユニット(rbcS)プロモーター等も例示できる。
【0047】
またターミネーターとは、植物細胞内で目的の構造遺伝子を効率よく転写終結させる能力を有するDNA配列を包含するものであり、植物の形質転換のために当業界で用いられているあらゆる植物機能性ターミネーターが含まれる。具体的には、例えばノパリンシンターゼ(nos)ターミネーターを代表的なものとして挙げることができる。
【0048】
本発明の制御因子を含む本発明の遺伝子発現用カセットは、広く植物一般に対して、導入された遺伝子(制御因子を含む)の該植物内での発現誘導もしくは発現調節に用いることができる。
【0049】
かかる植物としては、特に制限はされないが、特に農業上有用な植物を、単子葉植物と双子葉植物の別なく、挙げることができる。例えば単子葉類には、トウモロコシ、イネ、小麦、大麦、モロコシ、カラス麦、ライ麦、キビ等の穀物類作物、ユリ、ラン、アヤメ、ヤシ、チューリップ、スゲなどの各種観葉植物が含まれる。また双子葉類には、シロイヌナズナ、キク、キンギョソウ、カーネーション、モクレン、ケシ、キャベツ、バラ、エンドウ、ポインセチア、ワタ、サボテン、ニンジン、コケモモ、ハッカ、ヒマワリ、トマト、ニレ、オーク、カエデ、ポプラ、ダイズ、メロン、テンサイ、ナタネ、ジャガイモ、レタスなどが含まれる。
【0050】
(3)トランスジェニック植物及びその作製方法
さらに本発明は、前述する本発明の制御因子、または該因子を含む本発明の遺伝子発現用カセットを発現可能に含むことによって、当該導入された制御因子またはその発現産物の作用によって、開花日数(開花に要する日数)、葉数、植物体重量または種子収量が制御されてなるトランスジェニック植物を提供する。好ましくは開花時期(開花に要する日数)が遅延されてなるトランスジェニック植物、本葉数、植物体重量または種子収量が増加されてなるトランスジェニック植物である。このなお、当該トランスジェニック植物には、これら植物の子孫も包含される。
【0051】
なお、ここで「植物」とは、完全な植物体のみならず、例えば葉、種子、球根、さし穂などの植物体の一部を包含する趣旨で用いられ、さらにはプロトプラスト、植物カルス及びメリクロン増殖体などの植物細胞をも包含するものである。
【0052】
かかるトランスジェニック植物を作成する方法は、特に制限されず、当業界で慣用されている任意のDNA導入方法を使用することができる。具体的には、本発明の制御因子、または該因子を含む遺伝子発現用カセットを含む発現プラスミドを用いて植物細胞にDNAを導入する方法であり、例えば、アグロバクテリウム法、電気的導入法(エレクトロポーレーション)、パーティクルガン法などの公知の方法を挙げることができる。
【0053】
かくして得られる本発明の制御因子、該因子を含む遺伝子発現用カセット、または発現プラスミドを含有する植物細胞は、例えば、S.B.Gelvin,R.A.Schilperoot adn D.P.S.Verma著:Plant Molecular Biology Manual (1991)、Kluwer Academic Publishers や Valvekens et al. Proc Natl. Acad. Sci., 85:5536-5540 (1988) に記載される植物組織培養技術で用いられる通常の方法に準じて再生することにより、該植物細胞に由来する植物体またはその一部を得ることができる。
【0054】
なお、本発明の発現プラスミドは、プロモーターやターミネーター等の機能性DNA配列とともに本発明の制御因子、また必要に応じて植物細胞に導入する所望のDNA配列(導入遺伝子)を含むものであればよいが、これらのDNA配列が互いに作動可能に結合されていることが好ましい。なお、ここで作動可能に結合しているとは、プラスミドが意図された目的のために作用することを意味する。具体的には、当該プラスミドが植物細胞内に導入された場合に、該プラスミドに含まれるプロモーターが不活性化されることなく、本発明の制御因子が発現され(また必要に応じて導入遺伝子もまた発現され)、またその発現がターミネーターの働きによって効率よく転写終結されることを包含する。
【0055】
また本発明は、植物中で導入遺伝子(制御因子)を発現させる方法を包含する。かかる方法は、少なくとも、前述するような制御因子を組み込んだ遺伝子発現用カセットを植物に導入する工程、及び該植物において前記制御因子を発現させる工程によって行うことができる。なお、植物への遺伝子発現用カセット(DNA)の導入並びに導入した遺伝子の発現は、いずれも当業界における公知方法を用いて行うことができる(Plant Molecular Biology Manual 1991, Kluwer AcademicPublishers)。
【0056】
また上記トランスジェニック植物の作製方法は、別の観点から、導入した制御因子を植物中で発現させることによって、当該植物について植物体重量、葉数、種子収量または開花日数(開花に要する日数)を制御する方法といえる。当該方法は、好ましくは植物について植物体重量、葉数、または種子収量を増加させる方法であり、また植物について開花日数(開花に要する日数)を遅延する方法である。かかる方法は、少なくとも、前述するような制御因子を組み込んだ遺伝子発現用カセットを植物に導入する工程、及び該植物において前記制御因子を発現させる工程によって行うことができる。なお、植物への遺伝子発現用カセット(DNA)の導入並びに導入した遺伝子の発現は、いずれも当業界における公知方法を用いて行うことができる(Plant Molecular Biology Manual 1991, Kluwer AcademicPublishers)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明で用いられる遺伝子工学的技術並びに分子生物学的実験操作(制限酵素処理条件,ライゲーション反応条件,大腸菌へのトランスフォーメーション方法等)は、一般に広く用いられている方法、例えばJ.,Sambrook, E., F., Frisch,T.,Maniatis著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド・スプリング・ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory press)発行、1989年、及びD.,M.,Glover著、DNAクローニング、IRL発行、1985年などに記載されている方法に従って行うことができる。
【0058】
実施例1
(1)形質転換に使用するコンストラクト及び発現ベクターの作成
図6に示すように、LKP2のLOV domain、F-box、kelch repeatの各機能領域を各々単独または組み合わせたcDNA断片(コンストラクト)(7通り:LFK [LOV domain/F-box/Kelch repeat]、L[LOV domain]、F[F-box]、K[Kelch repeat]、LF[LOV domain/F-box]、LK[LOV domain/Kelch repeat]、FK[F-box/Kelch repeat])を作成し、これらのコンストラクトを、NPT II遺伝子(NPT II)、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35Sprom)、及びGreen Fluorescent Protein(GFP)遺伝子を有する植物発現用ベクターにGFPのC末端にin-frameで結合し、各コンストラクト(GLFK,GL,GF,GK,GLF,GLK.GFK,G)を発現する発現ベクターを作成した。
【0059】
(1-1)形質転換に使用するコンストラクトの作成
具体的には、シロイヌナズナのゲノムDNAから5'-CATAAGCAAATCAATGACTAAAGAGAGTAG-3'及び5'-GGAGACTTCGATTACCTACAGATATCAGAT-3'をプライマーとし、シロイヌナズナのゲノムDNAを組み込んだ細菌人工染色体(BAC)F19F24のDNAを鋳型として増幅したLKP2遺伝子を含む4.26KbのPCR断片をプローブに用いて、プラークハイブリダーゼーション法(Maniatis et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1982) pp.2, 108-1117)により、シロイヌナズナのcDNAライブラリー(cDNA libraries[CD4-13(0.5-1kb), CD4-14(1-2kb),CD4-15(2-3kb),CD4-16(3-6kb)](Kieber et al, Cell (1993) 72, pp.427-441))をスクリーニングした。
【0060】
LKP2の全長をコードするcDNAを単離し、その塩基配列を確認した。次いで、その単離したcDNAを鋳型に用いてPCR法により各コンストラクトを作成した。用いたプライマーは以下の通りである。
【0061】
L:LOV/Fプライマー(AGGATCCATGCAAAATCAAATGGAGTGG)、LOV/Rプライマー(AGGATCCTCTAGGAATTTCTTTTGCAGATA)
F:Fbox/Fプライマー(TGGATCCATATCTCGCTCATTTACTTCTG)、Fbox/Rプライマー(TGGATCCCCTTTTTGCACCGGGAACACTCT)
K:kelch/Fプライマー(TAGATCTATTGGTTGGGTGCGACTGGCC)、kelch/Rプライマー(TGGATCCTCAAGTACTTGCAGTGGTAGAAG)
LF:LOV/Fプライマー(AGGATCCATGCAAAATCAAATGGAGTGG)、Fbox/Rプライマー(TGGATCCCCTTTTTGCACCGGGAACACTCT)
FK: Fbox/Fプライマー(TGGATCCATATCTCGCTCATTTACTTCTG)、kelch/Rプライマー(TGGATCCTCAAGTACTTGCAGTGGTAGAAG)
LFK:LOV/Fプライマー(AGGATCCATGCAAAATCAAATGGAGTGG)、kelch/Rプライマー(TGGATCCTCAAGTACTTGCAGTGGTAGAAG)。
【0062】
得られたPCR断片はpCR2或いはpCR4(Invitrogen社)に組み込み、塩基配列を決定し、PCRによる誤りがないクローンを選抜した。pBE2113/GFPに組み込む際にはこれらのプラスミドのBamHI断片(LFK, L, F, LF, FK)或いは、BglII/BamHI断片(K)を用いた。
【0063】
LKについてはLのBamHI断片をpCR4に組み込んだKのBglIIサイトに組み込みんだ後、シークエンスにより方向の確認を行い、正しい方向で入ったプラスミドからLK部分をBamHIで切り出し用いた。
【0064】
(1-2)コンストラクトを有する発現ベクターの作成
別途、オワンクラゲの蛍光タンパクであるGFP(green fluorescent protein)(Chiu W, Niwa Y, Zeng W, Hirano T, Kobayashi H, Sheen J. (1996) Engineered GFP as a vital reporter in plants. Curr Biol. 1;6(3):325-30. Sheen J, Hwang S, Niwa Y, Kobayashi H, Galbraith DW. (1995) Green-fluorescent protein as a new vital marker in plant cells. Plant J. 8(5):777-84.)を鋳型にBgl/GFP/Fプライマー(TAGATCTTCCATGGTGAGCAAGGGCGAGGA)とGFP/Bam/TAA/Bgl/Rプライマー(TAGATCTTTAGGATCCCTTGTACAGCTCGTCCATGCCGT)を用いてPCRを行い、増幅されたDNA断片をpCR2に組み込み、塩基配列を決定し、PCRによるエラーがないクローンを選抜した。次いで得られたクロ?ンからGFPcDNAを含む断片をBglIIで切り出し、それを、NPTII遺伝子(NPT II)とカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S promoter)を含む発現ベクターpBE2113(Mitsuhara et al., Plant Cell Physiol.,(1996) 37, pp.49-59)の、CaMV35S promoterの下流に位置するMCS(マルチクローニングサイト)のBamHIの位置に組み込み、pBE2113-GFP発現ベクター(G)を作成した。
【0065】
得られたpBE2113-GFP発現ベクターのBamHIサイトにGFPとフレームが合うように、上記の各コンストラクト(LFK[LOVdomain/F-box/Kelch repeat]、L[LOV domain]、F[F-box]、K[Kelch repeat]、LF[LOV domain/F-box]、LK[LOV domain/Kelch repeat]、FK[F-box/Kelch repeat])をそれぞれ挿入し、各コンストラクトを有する7種類の発現ベクターを取得した。
【0066】
(2)形質転換体の作成
この7種類の発現ベクターをそれぞれアグロバクテリウム法によりシロイヌナズナに導入した。
【0067】
また対照試験用に、上記発現ベクターに代えて、このベクターの構築に利用した植物発現用ベクター(pBE2113-GFP)(コンストラクト含まず)も同様にシロイヌナズナ植物体に導入した。なお、アグロバクテリウム法による遺伝子導入は、単純化されたインプランタ・インフィルトレーション法(Plant J, 16, p.735-743 (1998))に従って行った。アグロバクテリウム感染後の植物は23℃16時間明8時間暗の長日条件下で生育させ、開花、結実後、得られたT1(transgenic plants 1)種子を回収した。
【0068】
なお、以下各コンストラクトを導入した発現ベクターで形質転換した個体(植物体及び種子を含む。以下同じ)を、用いた各コンストラクトに対応して、GLFK( [LOV domain/F-box/Kelch repeat]導入)、GL([LOV domain]導入)、GF([F-box]導入)、GK([Kelch repeat]導入)、GLF([LOV domain/F-box]導入)、GLK([LOV domain/Kelch repeat]導入)、及びGFK([F-box/Kelch repeat]導入)と称する。また、対照試験用に、コンストラクトを導入しない発現ベクター(pBE2113-GFP)で形質転換した個体をGFPと称する。
【0069】
得られたT1種子を次亜塩素酸ナトリウムで無菌処理後、50mg/l濃度でカナマイシンを含むMS培地〔1.47g/l MS[Murasige & Skoog SIGMA CHEMICAL CO]、1重量% スクロース、0.8重量% 寒天:KOHでpH5.7に調整〕に播種した。播種した種子は、発芽促進のために4℃の暗下に3日間置き、その後22℃、長日条件(16時間light/8時間Dark)、光子量約100~200μmol・m-2・s-1(測定域400~700nm)下で生育させた。播種後、光下に放置して5日後に、根が伸長し双葉が緑色であることを指標としてカナマイシン耐性個体を選抜し(なお、カナマイシン非耐性個体は根が伸長せずに双葉が黄色である)、新しいMS培地に1プレートあたり5個体ずつ移植した。これを形質転換植物育成室にて、上記の条件(22℃、長日条件(16時間light/8時間Dark)、光子量約100~200μmol・m-2・s-1)で生育させ、播種から30日を経過した時点で、スクリーニングしたカナマイシン耐性個体を鉢上げし、土壌改良剤バーミキュライト(珪石;旭工業(株)製)入り培養土(鉢入れ)に移植し、再び上記条件下で生育させた。但し、鉢挙げ後10日間は、植物体を外気に順化するために、鉢入れの入ったトレーに1000希釈した液体肥料HYPONEX(N:P:K=5:10:5、HYPONEX-JAPN)を入れ、トレーに孔を開けたラップをかけてトレー内を高湿度に保ち、弱光下(光子量約30μmol・m-2・s-1)で栽培した。なお、水分は1週間に2回の割合で、1000倍希釈した液体肥料HYPONEXを与えた。
【0070】
(3)形質転換体の観察と測定方法
各個体(形質転換体)の生育を観察して、それぞれのコンストラクト導入個体〔GLFK( [LOV domain/F-box/Kelch repeat]導入個体、個体数43)、GL([LOV domain]導入、個体数48)、GF([F-box]導入、個体数138)、GK([Kelch repeat]導入、個体数111)、GLF([LOV domain/F-box]導入、個体数38)、GLK([LOV domain/Kelch repeat]導入、個体数57)、及びGFK([F-box/Kelch repeat]導入、個体数49)、ならびにコンストラクト非導入個体(GFP、個体数70)について、下記の方法に従って開花日数(開花に要する日数)、本葉数、植物体の乾燥重量、及び種子収量を測定した。
【0071】
(3-1) 開花日数(開花に要する日数)の測定
各個体について、最初の花が開いた時点での日数(を測定した。
【0072】
(3-2) 葉数の測定
各個体について、最初の花が開いた時点での本葉の枚数を測定した。
【0073】
(3-3) 植物体の乾燥重量、種子収量の測定
結実し、サヤの一部が黄色くなった時点で水分の供給を停止し、しばらく放置して、サヤ及び植物体を乾燥した。完全に乾燥した時点で、個体毎に植物体(種子を除いた地上部)と種子とを分離して、それぞれ植物体の乾燥重量と種子収量を測定した。
【0074】
(4)結果
(4-1) 開花日数
図7に各コンストラクト導入個体の開花平均日数を示す。図に示すように対照植物(GFP)(開花平均日数:40日)と比較して、全てのコンストラクト導入個体で開花の遅延が認められた。特に開花の遅延が認められたのは、LOV domainを有するコンストラクト導入個体(GLFK、GL、GLF、GLK)、並びにF-boxとKelch repeatの両方を有するコンストラクト導入個体(GLFK、GFK)であった。
【0075】
(4-2) 本葉の枚数
図8に各コンストラクト導入個体の開花時における本葉の枚数を示す。図に示すように対照植物(GFP)(開花平均日数:約12枚)と比較して、全てのコンストラクト導入個体で葉数の増加が認められた。特に葉数の増加が認められたのは、F-boxを有するコンストラクト導入個体(GLFK、GF、GLF、GFK)、並びにLOV domainを有するコンストラクト導入個体(GL、GLK)であった。
【0076】
(4-3) 植物体(種子を除いた地上部)の乾燥重量
図9に各コンストラクト導入個体の平均乾燥重量を示す。図に示すように対照植物(GFP)の乾燥重量(約350mg)と比較して、全てのコンストラクト導入個体で植物体乾燥重量の増加が認められた。特に重量の増加が認められたのは、F-boxを有するコンストラクト導入個体(GLFK、GF、GLF、GFK)、並びにLOV domainとkelch repeatの両方を有するコンストラクト導入個体(GLFK、GLK)であった。
【0077】
(4-4) 種子収量
図10に各コンストラクト導入個体の種子の平均収量を示す。図に示すように対照植物(GFP)の種子収量(約100mg)と比較して、全てのコンストラクト導入個体で種子収量の増加が認められた。特に種子収量の増加が認められたのは、F-boxを有するコンストラクト導入個体(GLFK、GF、GLF、GFK)であった。一方、LOV domainを有するコンストラクト導入個体のうちGL及びGLKは種子収量が低下していた。しかし、LOV domainを有するコンストラクト導入個体のうちF-boxを有するコンストラクト導入個体(GLFK及びGLF)は種子収量が増加していたことから、F-boxはLOV domainに対して種子収量増大に関しては優位に働くことがわかった。
【0078】
以上のことを総合すると、以下のことがいえる:
(1) LOV domainを含むコンストラクトか、またはF-boxとKelch repeatの両方を含むコンストラクトを導入することによって開花遅延を生じるトランスジェニック植物体が作成できること、
(2) F-box を含むコンストラクトか、またはLOV domainを含むコンストラクトを導入することによって本葉の枚数の増加を生じるトランスジェニック植物体が作成できること、
(3) F-box を含むコンストラクトか、またはLOV domainとKelch repeatの両方を含むコンストラクトを導入することによって植物体重量の増加を生じるトランスジェニック植物体が作成できること、
(4) F-box を含むコンストラクトを導入することによって種子収量の増加を生じるトランスジェニック植物体が作成できること。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の制御因子によれば、所望の植物について、その開花時期が遅延するように制御することができ、またそれによって植物単位あたりの植物体重量(植物体乾燥重量)、葉数、及び種子収量を増加させることができる。具体的には、本発明の制御因子によれば、所望の植物について日長や温度制御することなく開花を遅らせることができ、照明費や設備費を削減することが可能になる。
【0080】
本発明の制御因子で形質転換された、長日条件下で生育するトランスジェニック植物によれば、開花の遅延により、野生型が花芽形成を行っている間に更に栄養生長を続け、結果として1個体あたりに多くのロゼッタ葉をつける。この現象を農作物(特に葉野菜など)や園芸品種に応用することにより、日長に関係なく開花を遅延させて単位植物あたりの葉生産量を向上させることが期待できる。また、長期の温暖な気候を有する地域で生育する短期の植物に応用することにより、単位植物あたりの葉、花、種子、果実の生産量増大が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】シロイヌナズナのLKP1(LOV kelch protein 1)とLKP2(LOV kelch protein 2)の各機能領域(LOV domain, F-box, Kelch repeat)を示した図である。
【図2】シロイヌナズナのLKP1、LKP2及びLKP3について、アミノ酸配列と各機能領域(LOV domain, F-box, Kelch repeat)の存在位置を示す図である。
【図3】シロイヌナズナのLKP2のアミノ酸配列、及びそれをコードする遺伝子の全長配列を示す図である。
【図4】シロイヌナズナのLKP1のアミノ酸配列、及びそれをコードする遺伝子の全長配列を示す図である。
【図5】シロイヌナズナのLKP3のアミノ酸配列、及びそれをコードする遺伝子の全長配列を示す図である。
【図6】シロイヌナズナの形質転換に用いるベクターと、それに組み込むコンストラクトを示す図である(実施例1(1))。
【図7】実施例1において各コンストラクトを導入した植物体について観察された開花平均日数を示す図である。
【図8】実施例1において各コンストラクトを導入した植物体について観察された開花時における本葉の枚数を示す図である。
【図9】実施例1において各コンストラクトを導入した植物体について求められた植物体の乾燥重量を示す図である。
【図10】実施例1において各コンストラクトを導入した植物体について得られた種子収量を示す図である。

【配列表フリ-テキスト】
【0082】
<210> 13
<223> LKP2をコードする塩基配列を有するDNA領域をPCRにより増幅するために使用したプライマー
<210> 14
<223> LKP2をコードする塩基配列を有するDNA領域をPCRにより増幅するために使用したプライマー
<210> 15
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(LOV/Fプライマー)
<210> 16
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(LOV/Rプライマー)
<210> 17
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(Fbox/F プライマー)
<210> 18
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(Fbox/R プライマー)
<210> 19
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(kelch/F プライマー)
<210> 20
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(kelch/Rプライマー)
<210> 21
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(LOV/Fプライマー)
<210> 22
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(Fbox/R プライマー)
<210> 23
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(FK:Fbox/Fプライマー)
<210> 24
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(kelch/Rプライマー)
<210> 25
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(LFK:LOV/Fプライマー)
<210> 26
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(kelch/Rプライマー)
<210> 27
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(Bgl/GFP/Fプライマー)
<210> 28
<223> コンストラクトを取得するために、LKP2をコードするcDNAを鋳型とするPCRで使用したプライマー(GFP/Bam/TAA/Bgl/Rプライマー)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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